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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044580
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電子機器、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20240326BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240326BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J3/407
B41J29/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150196
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小金 孝行
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP10
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061HJ07
2C061HK11
2C061HN08
2C061HN15
(57)【要約】
【課題】本発明の少なくとも一の態様の目的は、低質な印刷を防止することである。
【解決手段】電子機器としての印刷装置1は、対象フィンガーが載置される台座21と、前記台座21の左に配置される第1フィンガーレスト26と、前記台座21の右に配置される第2フィンガーレスト27と、前記第1フィンガーレスト26の上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサー31と、前記第2フィンガーレスト27の上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサー32と、前記第1センサー31の出力信号及び前記第2センサー32の出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理部81と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象フィンガーが載置される台座と、
前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、
前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、
前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、
前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1センサー、前記第2センサーおよび前記台座は、略同一直線状に配置され、かつ、前記第1センサーおよび前記第2センサーは、検出対象の前記第1非対象フィンガーおよび前記第2非対象フィンガーのそれぞれに対応するように個別に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理部
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1センサーが、前記第1フィンガーレストの上に載置される前記第1非対象フィンガーの数を検出し、
前記第2センサーが、前記第2フィンガーレストの上に載置される前記第2非対象フィンガーの数を検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記処理部が、前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記台座に載置される対象フィンガーの種類を認識する認識部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記処理部が、前記認識部によって認識された前記対象フィンガーの種類が、使用者が選択した選択フィンガーの種類に一致するか否かを判定する判定部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記台座の上に配置され、前記対象フィンガーに印刷を施す印刷部を更に備え、
前記処理部が、前記判定部の判定結果が可である場合に、前記印刷部を動作させる印刷制御部を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
エラーの旨を報知する報知器を更に備え、
前記処理部が、前記判定部の判定結果が否である場合に、前記報知器を動作させる報知制御部を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項9】
コンピューターに、
対象フィンガーが載置される台座と、前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、を備える電子機器の前記第1センサー及び前記第2センサーから出力信号を取得し、
前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理を実行させるプログラム。
【請求項10】
対象フィンガーが載置される台座と、前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、プロセッサーと、を備える電子機器の前記第1センサー及び前記第2センサーから出力信号を取得し、
前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理を実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者が自身の指をホルダーにセットすると、プリンタがその指の爪に画像を印刷する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-194838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の印刷装置では、爪に印刷を適切に行う上では、画像が印刷される爪の指以外の指が印刷装置に対して適切に配置されていることが重要である。これに対して、特許文献1に記載の技術では、印刷対象以外の指が正しく載置されているかどうか判別することが出来なかった。
そこで、本発明の少なくとも一の態様は上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の少なくとも一の態様の目的は、印刷対象以外の指が適切に載置されていることを判別することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、対象フィンガーが載置される台座と、前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、を備えることを特徴とする電子機器が提供される。
【0006】
本発明の一態様によれば、コンピューターに、対象フィンガーが載置される台座と、前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、を備える電子機器の前記第1センサー及び前記第2センサーから出力信号を取得し、前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理を実行させるプログラムが提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、対象フィンガーが載置される台座と、前記台座の左に配置される第1フィンガーレストと、前記台座の右に配置される第2フィンガーレストと、前記第1フィンガーレストの上に載置される第1非対象フィンガーを検出する第1センサーと、前記第2フィンガーレストの上に載置される第2非対象フィンガーを検出する第2センサーと、プロセッサーと、を備える電子機器の前記第1センサー及び前記第2センサーから出力信号を取得し、前記第1センサーの出力信号及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記対象フィンガーに対する印刷の可否を決める処理を実行する方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の各態様によれば、印刷対象以外の指が適切に載置されていることを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、印刷装置及び端末装置を示す。
図2図2は、印刷装置及び端末装置の各ブロックを示す。
図3図3は、使用者の行為の流れと、印刷装置の処理部による処理の流れと、端末装置の処理部による処理の流れとを示す。
図4図4は、変形例における印刷装置及び端末装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0011】
[1. 印刷装置及び端末装置の概要]
図1は、印刷装置1及び端末装置101を示す斜視図である。図2は、印刷装置1及び端末装置101を示すブロック図である。
【0012】
以下の説明において、主走査方向Xとは、後述の第1モーター62の動力により後述のキャリッジ65及びインクジェットヘッド68a,69aが移動する方向をいう。副走査方向Yとは、後述の第2モーター63の動力により後述のキャリッジ65及びインクジェットヘッド68a,69aが移動する方向をいう。印刷装置1の幅方向は主走査方向Xに対して平行であり、主走査方向Xは左右方向ともいう。印刷装置1の奥行き方向は副走査方向Yに対して平行であり、副走査方向Yは前後方向ともいう。印刷装置1の高さ方向が主走査方向X及び副走査方向Yに対して垂直である。主走査方向X及び副走査方向Yに対して垂直な方向を上下方向ともいう。印刷装置1が水平面に載置された場合、主走査方向X及び副走査方向Yは水平である。
【0013】
電子機器としての印刷装置1は、インクジェットプリンターである。具体的には、印刷装置1は、使用者の爪に微細なインク滴を吐出することによってその爪に像を形成するネイルプリンターである。電子機器としての端末装置101は、例えばスマートフォン又はタブレット型パーソナルコンピューターシステムである。端末装置101は、例えばノート型パーソナルコンピューターシステム、据置型パーソナルコンピューターシステム及びゲーム装置のような情報処理装置であってもよい。
【0014】
使用者が印刷装置1を用いる際、使用者が自身の左手と右手のどちらかを選択して、その選択結果を端末装置101に入力する。そうすると、その選択結果が端末装置101から印刷装置1に転送される。更に、使用者は、選択された手の五指の中から何れか1つの指を選択してその選択結果を端末装置101に入力する。そうすると、その選択結果が端末装置101から印刷装置1に転送される。その後、使用者は、選択された指を印刷装置1にセットして、印刷開始のコマンドを印刷装置1に入力する。そうすると、印刷装置1が、選択された指に画像を形成する。それに対して、選択された指が印刷装置1に正確にセットされていない場合、又は、選択された指以外の指が印刷装置1にセットされた場合、使用者が印刷開始のコマンドを印刷装置1に入力しても、印刷装置1は印刷を開始しない。そのため、低質な印刷が防止される。
【0015】
以下では、使用者の両手のうち、使用者が印刷装置1にセットした自身の手のことを対象ハンドといい、もう一方の手のことを非対象ハンドという。対象ハンドの五指のうち、使用者が印刷装置1にセットした自身の指のことを対象フィンガーといい、それ以外の四指のことを非対象フィンガーという。
【0016】
印刷装置1は、筐体10、フィンガーホルダー20、左右のフィンガーレスト26,27、左右のセンサー31,32、基台50、印刷部60、撮像装置71、照明器72、入力部75、報知器76、通信部77及び制御部80を備える。
端末装置101は、入力部111、表示部112、通信部113及び制御部120等を備える。
以下、印刷装置1及び端末装置101の構成要素について詳細に説明する。
【0017】
[2. 印刷装置の構成要素]
(1) 筐体
筐体10は、箱状に形作られている。筐体10は、その内側に中空を有する。筐体10は、その前面に開口11,12を有する。第1開口11は、筐体10の前面の下部において、筐体10の幅方向全体にほぼ全体亘って切り欠くよう形成されている。第1開口11は、使用者が対象ハンドを差し入れたり引き抜いたりする出入り口である。第2開口12は、筐体10の前面の上部の中央部において、第1開口11の上部から上へ切り欠くように形成されている。第2開口12の下が第1開口11の上に連なっている。第2開口12は、後述の印刷ヘッド付きのカートリッジ68,69の着脱用の出入り口である。
【0018】
(2) フィンガーホルダー及びフィンガーレスト
フィンガーホルダー20は、筐体10の内側において筐体10に取り付けられている。フィンガーホルダー20の前端は第1開口11の幅方向における中央部に配置され、フィンガーホルダー20は第1開口11の幅方向における中央部から奥まって配置されている。フィンガーホルダー20は、対象フィンガーの爪を露出させた状態で対象フィンガーを保持する。
【0019】
フィンガーホルダー20は、台座21、カバー22、挿入口23及び開口24を有する。台座21及びカバー22は、筐体10の内側において筐体10に取り付けられている。台座21の上面は、指の腹の形状に合うよう凹面状に形成されている。カバー22は、台座21の上面から上に離れて台座21をその上から覆う。挿入口23は、台座21の前端とカバー22の前端によって囲われている。開口24は、カバー22に形成されてる。対象フィンガーが挿入口23に挿入されると、対象フィンガーが台座21の上に載置される。対象フィンガーの腹が台座21の上面に接し、対象フィンガーの爪が開口24を通じてカバー22の上方へ露出される。
【0020】
左のフィンガーレスト26は、筐体10の内側において筐体10に取り付けられている。フィンガーレスト26の前端は第1開口11の幅方向における左部に配置され、フィンガーレスト26は第1開口11の幅方向における中央部から奥まって配置されている。フィンガーレスト26は、フィンガーホルダー20の左方においてフィンガーホルダー20に隣接する。フィンガーレスト26は、フィンガーホルダー20から第1開口11の左縁まで及んでいる。
【0021】
右のフィンガーレスト27は、筐体10の内側において筐体10に取り付けられている。フィンガーレスト27の前端は第1開口11の幅方向における左部に配置され、フィンガーレスト27は第1開口11の幅方向における中央部から奥まって配置されている。フィンガーレスト27は、フィンガーホルダー20の右方においてフィンガーホルダー20に隣接する。フィンガーレスト27は、フィンガーホルダー20から第1開口11の右縁まで及んでいる。
【0022】
フィンガーレスト26と台座21とフィンガーレスト27は、左右に延びた同一直線に沿って、順に左から右へ配列されている。フィンガーレスト26,27は、台座21の上面よりも低い位置に配置されている。フィンガーレスト26,27の上にはスペース28,29がそれぞれ形成されており、スペース28,29は第1開口11により筐体10の外に通じている。フィンガーレスト26,27のどちらか一方又は両方には、非対象フィンガーが載置される。具体的には、次の表Iの通りである。
【0023】
【表1】
【0024】
非対象フィンガーが表Iの通りに正確に載置されていれば、台座21に載置された対象フィンガーの姿勢が良好である。ところが、非対象フィンガーが表Iの通りに正確に載置されていなければ、台座21に載置された対象フィンガーの姿勢が不良である。例えば、左手の中指が台座21に載置された場合、左手の人差し指がフィンガーレスト27から上に離れていると、その中指が左に傾いてしまう。そうした場合、画像が左手の中指の爪に印刷されたものとしても、その画像の質が低くなってしまったり、空白がその中指の爪の左領域に形成されてしまったりする虞がある。
【0025】
この印刷装置1では、非対象フィンガーが表Iのとおりに正確に載置されていれば、印刷が開始される。ところが、非対象フィンガーが表Iのとおりに正確に載置されていなければ、印刷が開始されない上、エラーの旨が使用者に報知される。そのため、低質な印刷が防止される。詳細については、後述する。
【0026】
(3) センサー
センサー31,32は、例えば静電容量センサー、圧力センサー、押しボタンスイッチ、反射型光センサー又は透過型光センサーである。センサー31,32は、制御部80に接続されている。
【0027】
左のセンサー31は、左のフィンガーレスト26の上面に取り付けられている。センサー31は、フィンガーレスト26の上面に沿ってその上面に広がって設けられてもよい。少なくとも1本の非対象フィンガーがフィンガーレスト26に載置された場合、センサー31が非対象フィンガーを検出するとともに、非対象フィンガーの検出の旨の信号を制御部80に出力する。非対象フィンガーがフィンガーレスト26に載置されない場合、センサー31が未検出の旨の信号を制御部80に出力する。
【0028】
右のセンサー32は、右のフィンガーレスト27の上面に取り付けられている。センサー32は、フィンガーレスト27の上面に沿ってその上面に広がって設けられてもよい。少なくとも1本の非対象フィンガーがフィンガーレスト27に載置された場合、センサー32が非対象フィンガーを検出するとともに、非対象フィンガーの検出の旨の信号を制御部80に出力する。非対象フィンガーがフィンガーレスト27に載置されない場合、センサー32が未検出の旨の信号を制御部80に出力する。
【0029】
センサー31と台座21とセンサー32は、左右に延びた同一直線に沿って、順に左から右へまっすぐに配列されている。
また、センサー31とセンサー32が、順に左から右へ直線状に配列されていてもよい。
【0030】
なお、センサー31が反射型光センサー又は透過型光センサーである場合、センサー31の配置はフィンガーレスト26の上面に限るものではない。例えば、反射型光センサー又は透過型光センサーとしてのセンサー31がフィンガーレスト26の上方、フィンガーレスト26の下方又はスペース28の横に配置されてもよい。センサー31がフィンガーレスト26の下方に配置される場合、センサー31から発した光がフィンガーレスト26を通過するように、フィンガーレスト26が透明であったり、光通過用の穴がフィンガーレスト26に形成されていたりする。
【0031】
(4) 基台
基台50は、筐体10の内側において筐体10に取り付けられている。基台50は、フィンガーレスト26,27から上に離れて配置されている。スペース28がフィンガーレスト26と基台50の間に形成され、スペース29がフィンガーレスト27と基台50の間に形成されている。基台50はその前部且つその下部に取り付けスペースを有し、フィンガーホルダー20がそのスペースに配置されている。基台50とフィンガーホルダー20とフィンガーレスト26,27は一体に組まれているか、一体に形成されている。
【0032】
(5) 印刷部
印刷部60は、基台50に組み付けられている。印刷部60は、対象フィンガーの爪に画像を印刷する。
【0033】
印刷部60は、駆動機構61、キャリッジ65、カートリッジ68,69を有する。キャリッジ65が駆動機構61に連結され、カートリッジ68,69がキャリッジ65に搭載されている。カートリッジ68,69は、キャリッジ65に対して着脱可能な消耗品である。駆動機構61は、キャリッジ65を主走査方向X及び副走査方向Yに移動させるよう、キャリッジ65を駆動する。
【0034】
駆動機構61は、ガイド、主走査方向伝動機構、副走査方向伝動機構、第1モーター62及び第2モーター63を有する。キャリッジ65がガイドに取り付けられ、ガイドがキャリッジ65を主走査方向X及び副走査方向Yに案内する。第1モーター62は、主走査方向駆動用のモーターである。第1モーター62が主走査方向伝動機構に連結され、主走査方向伝動機構がキャリッジ65に連結されている。第1モーター62が動力を主走査方向伝動機構に出力し、主走査方向伝動機構が第1モーター62の回転運動をキャリッジ65の主走査方向Xの直線運動に変換する。これにより、第1モーター62は、キャリッジ65を主走査方向Xに駆動する。第2モーター63は、副走査方向駆動用のモーターである。第2モーター63が副走査方向伝動機構に連結され、副走査方向伝動機構がキャリッジ65に連結されている。第2モーター63は動力を副走査方向伝動機構に出力し、副走査方向伝動機構が第2モーター63の回転運動をキャリッジ65の副走査方向Yの直線運動に変換する。これにより、第2モーター63は、キャリッジ65を副走査方向Yに駆動する。
【0035】
カートリッジ68は、複数のインクケース及び複数のインクジェットヘッド68a(図2参照)を有する。これら複数のインクジェットヘッド68aがこれら複数のインクケースの下端にそれぞれ設けられ、これらインクジェットヘッド68a及びインクケースが一体化されている。例えばシアン、マゼンタ及びイエロー等のような複数色のインクが複数のインクケースにそれぞれ貯留され、複数のインクジェットヘッド68aがそれぞれ複数のインクケースからインクの供給を受け、複数のインクジェットヘッド68aが複数色のインクをそれぞれ吐出する。
【0036】
カートリッジ69は、下地用又は被覆用のインクを貯留するインクケースと、そのインクケースの下端に設けられたインクジェットヘッド69a(図2参照)と、を有する。このインクジェットヘッド69aは、インクケースから下地用又は被覆用のインクの供給を受けて、インクを吐出する。
【0037】
(6) 撮像装置及び照明器
撮像装置71及び照明器72は、筐体10内において基台50に組み付けられている。撮像装置71及び照明器72は、フィンガーホルダー20の上方に配置されている。照明器72は、フィンガーホルダー20の開口24に向けて光を照射して、開口24を通じて対象フィンガーの爪を照明する。撮像装置71は、開口24を通じて対象フィンガーの爪を所定のフレームレートで周期的に撮像し、対象フィンガーの爪の像を含む画像を制御部80に撮像のたびに出力する。撮像装置71によって順次撮像される画像が時系列で配列した映像は、動画である。
【0038】
(7) 入力部
入力部75は、筐体10の上面に設けられている。入力部75は、押しボタンを有する。使用者が入力部75に対して例えば1回押し、複数回押し及び長押し等のようなジェスチャーをすることによって、入力部75がジェスチャーの内容に応じた信号を制御部80に出力する。これにより、使用者は、ジェスチャーを通じて、ジェスチャーの内容に応じた入力、情報又はコマンドを制御部80に与えられる。なお、ジェスチャーのことを操作ともいう。
【0039】
なお、入力部75は、押しボタンに加えて又は押しボタンに代えて、押しボタン以外の入力装置、例えばタッチパネル、スイッチ、キー、入力レバー、ジョイスティック、ダイヤル、マウス、トラックボール、スタライス、タッチパッド及びキーボードのうち1以上の入力装置を有してもよい。タッチパネルの場合、使用者がタッチパネルに対して1回タップ、複数回タップ、複数箇所タップ、ロングタップ、スワイプ、ピンチイン及びピンチアウト等のようなジェスチャーをすることによって、タッチパネルがジェスチャーの内容に応じた信号を制御部80に出力する。
【0040】
コマンドの種類としては、例えば電源オン、電源オフ、通信オン、通信オフ、印刷開始及び印刷の強制的中止等がある。
【0041】
(8) 報知器
報知器76は、筐体10の上面に設けられている。報知器76は、例えばLEDランプ、スピーカー、マトリックス表示器及びセグメント表示器のうち少なくとも1つを有する。後述の処理部81が報知器76を動作させると、報知器76がエラーの旨を報知する。エラーの旨の報知とは、例えば点灯、点灯色変更、点滅、警告音発生、音声発生又はエラー表示のことをいう。
【0042】
(9) 通信部
通信部77は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Ethernet(登録商標)又はUSB(Universal Serial Bus)の通信規格に従って、端末装置101の通信部113との間で無線通信又は有線通信をする通信回路である。通信部77が無線通信を行う場合、通信部77は少なくともアンテナ、送信機、受信機及びLSI(Large Scale Integration)を有する。
【0043】
(10) 制御部及び記憶部
制御部80は、コンピューターである。制御部80は、処理部81、記憶部82、RAM(Random Access Memory)及びメインボードなどを有する。メインボードは、バスコントローラー、バス、電力供給線、電力変換回路、モーター駆動用ドライバー、ヘッド駆動用ドライバー、照明器駆動用ドライバー、撮影映像処理回路及びインターフェース回路等を有する。処理部81は、CPU(Central Processing Unit)等のようなハードウェアプロセッサーを有する。処理部81は、メインボードを通じて、センサー31,32、モーター62,63、インクジェットヘッド68a,69a、撮像装置71、照明器72、入力部75、通信部77及び記憶部82の管理及び制御を行う。
【0044】
記憶部82は、半導体メモリー又はハードディスクドライブを有する。記憶部82は、処理部81が実行可能なプログラム82aが格納されている。処理部81は、記憶部82からプログラム82aを読み取って、プログラム82aをRAMに展開する。処理部81がプログラム82aを実行すると、プログラム82aが処理部81を入力認識部81a、通信制御部81b、撮影制御部81c、照明制御部81d、印刷制御部81e及び報知制御部81fに機能させる。これにより処理部81が印刷装置1の各部、つまりセンサー31,32、モーター62,63、インクジェットヘッド68a,69a、撮像装置71、照明器72、入力部75、通信部77及び記憶部82を統括的に管理して制御する。
【0045】
入力認識部81aは、入力部75が出力する信号に基づいて、使用者が制御部120に与えた入力、情報又はコマンドを認識して、入力、情報又はコマンドを取得する。入力認識部81aは、センサー31が出力する検出の旨の信号及び非検出の旨の信号を認識して、検出の旨及び非検出の旨を取得する。入力認識部81aは、センサー32が出力する検出の旨の信号及び非検出の旨の信号を認識して、検出の旨及び非検出の旨を取得する。
【0046】
通信制御部81bは、通信部77の動作を制御する。具体的には、通信制御部81bは、印刷装置1と端末装置101の間で各種のデータ等を送受信する際に通信部77の動作を制御する。例えば、爪に印刷するデザインが端末装置101の後述のデザインデータベース125に格納されており、通信制御部81bは通信部77の通信を制御し、通信部77を介して端末装置101からデザインを取得する。また、例えば、端末装置101が印刷データを生成して印刷装置1へ転送するところ、通信制御部81bは通信部77の通信を制御し、通信部77を介して端末装置101から印刷データを取得する。
【0047】
撮影制御部81cは、撮像装置71を制御して、映像の撮影を撮像装置71に実行させる。撮像装置71によって撮影された映像は撮像装置71から制御部80に転送され、撮影制御部81cはその映像を制御部80の通信部77から端末装置101へ転送する。撮影制御部81cは、映像中の所定のコマの画像を抽出して、RAMに記憶する。
【0048】
照明制御部81dは、照明器72を制御して、照明器72を点灯と消灯を行い、更に照明器72の照明強度を調整する。
【0049】
印刷制御部81eは、モーター62,63を制御して、主走査方向X及び副走査方向Yにおけるキャリッジ65の駆動をモーター62,63に実行させる。これにより、印刷制御部81eは主走査方向X及び副走査方向Yにおけるカートリッジ68,69及びキャリッジ65の位置を制御し、カートリッジ68,69及びキャリッジ65が所定の経路に沿って移動する。また、印刷制御部81eは、カートリッジ68,69及びキャリッジ65の移動に合わせて、インクジェットヘッド68a,69aのインク吐出タイミングを制御する。カートリッジ68,69及びキャリッジ65の所定の経路及びインクジェットヘッド68a,69aのインク吐出タイミングは、端末装置101から制御部80に転送される後述の印刷データによって決まる。
【0050】
報知制御部81fは、報知器76を制御する。
【0051】
[3. 端末装置の構成要素]
(1) 入力部
入力部111は、タッチパネルである。使用者が入力部111に対して1回タップ、複数回タップ、複数箇所タップ、ロングタップ、スワイプ、ピンチイン及びピンチアウト等のようなジェスチャーをすることによって、タッチパネルがジェスチャーの内容に応じた信号を制御部120に出力する。これにより、使用者がジェスチャーを通じてジェスチャーに応じた入力、情報又はコマンドを制御部120に与えられる。なお、入力部111は、タッチパネルに加えて又はタッチパネルに代えて、タッチパネル以外の入力装置、例えばボタン、キー、スイッチ、操作レバー、ジョイスティック、ダイヤル、マウス、トラックボール、スタライス、タッチパッド及びキーボードのうち1以上の入力装置を有してもよい。
【0052】
所定の使用場面において、使用者が入力部111を通じて与えられた入力、情報又はコマンドに応じた指示等の情報は、通信部113により印刷装置1の制御部80に送信される。これにより、端末装置101は、印刷装置1に対して入力、情報又はコマンドを与える入力装置としても機能する。
【0053】
(2) 表示部
表示部112は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のようなフラットディスプレイを有する。入力部111が有するタッチパネルが表示部112に重ねられ、タッチパネルと表示部112が一体化されてもよい。
【0054】
(3) 通信部
通信部113は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Ethernet(登録商標)又はUSB(Universal Serial Bus)の通信規格に従って、印刷装置1の通信部77との間で無線通信又は有線通信をする通信回路である。通信部113が無線通信を行う場合、通信部113は少なくともアンテナ、送信機、受信機及びLSIを有する。
【0055】
(4) 制御部及び記憶部
制御部120は、コンピューターである。制御部120は、処理部121、記憶部122、RAM及びメインボードなどを有する。メインボードは、バスコントローラー、バス、電力供給線、電力変換回路及びインターフェース回路等を有する。処理部121は、例えばCPU及びGPU(Graphics Processing Unit)等のようなハードウェアプロセッサーを有する。処理部121は、メインボードを通じて、入力部111、表示部112、通信部113及び記憶部122の管理及び制御を行う。
【0056】
記憶部122は、半導体メモリー又はハードディスクドライブを有する。記憶部122には、プログラム123、アプリケーションプログラム124及びデザインデータベース125が格納されている。デザインデータベース125は、爪に印刷する各種のデザインを有する。これらデザインは、予め用意された既存のデザインであってもよいし、使用者が自ら作成したデザインであってもよい。端末装置101が各種のネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能なサーバ装置等からダウンロードされたデザインがデザインデータベース125に格納されてもよい。
【0057】
プログラム123はオペレーションシステムを処理部121に実行させ、これにより処理部121は入力部111、通信部113及び記憶部122を統括的に管理して制御する。アプリケーションプログラム124はオペレーションシステムにインストールされている。
【0058】
処理部121は、記憶部122からアプリケーションプログラム124を読み取って、アプリケーションプログラム124をRAMに展開する。処理部121がアプリケーションプログラム124を実行すると、アプリケーションプログラム124が処理部121を入力認識部121a、通信制御部121b、表示制御部121c及び印刷データ生成部121dに機能させる。
【0059】
入力認識部121aは、入力部111が出力する信号に基づいて、使用者が制御部120に与えた入力、情報又はコマンドを認識して、入力、情報又はコマンドを取得する。
通信制御部121bは、通信部113を制御する。
表示制御部121cは、表示部112を制御して、表示部112に各種の表示画面を表示させる。
印刷データ生成部121dは、デザインデータベース125に格納されたデザインに基づいて印刷用データを生成する。例えば、印刷データ生成部121dは、使用者によって選択されたデザインの画像データを拡大、縮小、回転、平行移動及びトリミング等のような編集を行い、編集後の画像データを爪の大きさに合わせてフィットさせ、フィット後の画像データに基づいて印刷データを生成する。
【0060】
[4. 印刷装置及び端末装置の使用方法及び動作方法]
図3を参照して、印刷装置1及び端末装置101の使用方法について説明する。さらに、使用者が印刷装置1及び端末装置101を使用する際の印刷装置1及び端末装置101の動作について説明する。さらに、印刷装置1の処理部81が、プログラム82aに従って実行する処理の流れについて説明する。さらに、端末装置101の処理部121が、アプリケーションプログラム124に従って実行する処理の流れについて説明する。
【0061】
ここで、図3は、使用者の行為の流れと、印刷装置1の処理部81の処理の流れと、端末装置101の制御部120(特に処理部121)の処理の流れとを示したフローチャートである。
【0062】
(1) 電源オン及びプログラム起動
使用者が印刷装置1の入力部75に対してジェスチャーをすることによって電源オンのコマンドを処理部81に与えると(ステップS11)、処理部81がプログラム82aを開始する(ステップS41)。また、使用者が端末装置101の入力部111に対してジェスチャーをすることによってアプリケーションプログラム124の起動のコマンドを処理部121に与えると(ステップS12)、処理部121がアプリケーションプログラム124を開始する(ステップS71)。そして、印刷装置1の処理部81が通信制御部81bにより通信部77を制御し、処理部121が通信制御部121bにより通信部113を制御し、通信部77,113が互いに接続され、通信部77,133が互いに通信可能になる。これにより、センサー31,32が有効化されていれば、センサー31,32の出力信号は通信部77,133により印刷装置1から端末装置101に転送され、端末装置101の処理部121がセンサー31,32の出力信号を取得する。もちろん、印刷装置1の処理部81もセンサー31,32の出力信号を取得する。
【0063】
(2) 選択画面の表示
端末装置101の処理部121が、表示制御部121cによって選択画面を表示部112に表示させる(ステップS71)。選択画面では、両手のうちどちらの手の指を印刷するのかの問い合わせが表示される。さらに、印刷画面では、その手の五指のうちどの指に印刷するかの問い合わせが表示される。
【0064】
(3) 指の選択
使用者は、端末装置101の表示部112の選択画面を見ながら、自身の指の中から希望の指の種類を選択する(ステップS13)。指の種類とは、その指が左手の親指、左手の人差し指、左手の中指、左手の薬指、左手の小指、右手の親指、右手の人差し指、右手の中指、右手の薬指又は右手の小指であるかをいう。
【0065】
使用者は、端末装置101の入力部111に対してジェスチャーをすることによって、選択情報を端末装置101の処理部121に与える(ステップS14)。処理部121は、入力認識部121aにより、入力部111から入力した信号に基づいて選択情報を取得する(ステップS73)。選択情報は、上述のように使用者が選択した希望の指の種類を表す。
【0066】
その後、処理部121は、通信制御部121bにより通信部113を制御して、選択情報を印刷装置1へ送信することを通信部113に実行させる(ステップS74)。そうすると、印刷装置1の処理部81は、通信制御部81bにより通信部77を制御して、選択情報を受信することを通信部77に実行させる。これにより、処理部81は、選択情報を取得する(ステップS42)。
【0067】
なお、使用者が印刷装置1の入力部75に対してジェスチャーをすることによって、選択情報を印刷装置1の処理部81に与えてもよい。この場合、処理部81は、入力認識部81aにより、入力部75から入力した信号に基づいて選択情報を取得する(ステップS42)。
【0068】
処理部81は、選択情報の取得後、センサー31,32が指を検出できる状態にセンサー31,32を有効化する(ステップS43)。これにより、その後、処理部81,121がセンサー31,32の出力信号を継続的に取得する。
【0069】
以下では、選択情報が示す種類の指のことを選択フィンガーという。
【0070】
(4) デザインの編集
端末装置101の処理部121が、表示制御部121cによって編集画面を表示部112に表示させる(ステップS75)。使用者が編集画面を見ながら入力部111に対してジェスチャーをすることによってデザインの編集を行う(ステップS15)。そうすると、端末装置101の処理部121は、印刷データ生成部121dにより、デザインデータベース125の中から選択されたデザインの画像データを編集して、その画像データに基づいて印刷データを生成する(ステップS76)。さらに、処理部121は、通信制御部121bにより通信部113を制御して、印刷データを印刷装置1へ送信することを通信部113に実行させる(ステップS76)。そうすると、印刷装置1の処理部81は、通信制御部81bにより通信部77を制御して、印刷データを受信することを通信部77に実行させる。これにより、処理部81は、印刷データを取得する(ステップS43)。
【0071】
(5) 指のセット
印刷装置1の処理部81は、印刷データの取得後、撮影制御部81cにより、映像の撮影を撮像装置71に実行させる(ステップS45)。撮像装置71によって撮影された映像は、印刷装置1の制御部80から端末装置101の制御部120に転送される。端末装置101の処理部121は、転送された映像を表示制御部121eにより表示部112に表示させる(ステップS77)。
【0072】
使用者が自身の指を挿入口23に挿入すると、その指が表示部112に表示される。使用者は、表示部112を見ることによって自身の指の位置及び姿勢を確認しながら、自身の指を挿入口23に挿入するとともに台座21に置く(ステップS16)。上述のように、この指のことを対象フィンガーといい、その対象フィンガーの手のことを対象ハンドという。なお、対象フィンガーの種類と選択フィンガーの種類は必ずしも一致するものでない。つまり、使用者が、誤って、選択フィンガー以外の指を台座21に置くこともある。
【0073】
また、使用者は、対象ハンドの非対象フィンガーを表Iに従ってフィンガーレスト26、27の上に置く(ステップS16)。なお、対象フィンガーが親指である場合、使用者は、通常、非対象フィンガーをフィンガーレスト26,27に置かないが、誤って非対象フィンガーをフィンガーレスト26又は27に置いてしまうこともある。
【0074】
非対象フィンガーがフィンガーレスト26に置かれた場合、センサー31が非対象フィンガーを検出するとともに、非対象フィンガーの検出の旨の信号を制御部80に出力する。非対象フィンガーがフィンガーレスト26に置かれない場合、センサー31が未検出の旨の信号を制御部80に出力する。
非対象フィンガーがフィンガーレスト27に置かれた場合、センサー32が非対象フィンガーを検出するとともに、非対象フィンガーの検出の旨の信号を制御部80に出力する。非対象フィンガーがフィンガーレスト27に置かれない場合、センサー32が未検出の旨の信号を制御部80に出力する。
なお、センサー31,32の出力信号は、処理部81の通信制御部81bによる通信部77の制御と、処理部121の通信制御部121bによる通信部113の制御とによって、印刷装置1の制御部80から端末装置101の制御部120に転送されてもよい。
【0075】
(6) 印刷開始指令
使用者が端末装置101の表示部112に表示された対象フィンガーの位置及び姿勢を適切と判断したら、使用者が印刷装置1の入力部75に対してジェスチャーをすることによって印刷開始のコマンドを処理部81に与える(ステップS17)。処理部81は、入力認識部81aにより、入力部75から入力した信号に基づいて印刷開始のコマンドを取得する(ステップS73)。
【0076】
なお、使用者が端末装置101の入力部111に対してジェスチャーをすることによって印刷開始のコマンドを処理部121に与えてもよい。この場合、処理部121は、入力認識部121aにより、入力部111から入力した信号に基づいて印刷開始のコマンドを取得する。その後、処理部121は、通信制御部121bにより通信部113を制御して、印刷開始のコマンドを印刷装置1へ送信することを通信部113に実行させる。そうすると、印刷装置1の処理部81は、通信制御部81bにより通信部77を制御して、印刷開始のコマンドを受信することを通信部77に実行させる。これにより、処理部81は、印刷開始のコマンドを取得する(ステップS75)。
【0077】
処理部81は、印刷開始のコマンドの取得後、両方のセンサー31,32から入力した信号に基づいて、台座21に置かれた対象フィンガーの種類を認識する(ステップS47)。具体的には、センサー31,32から処理部81に入力される信号と認識結果の関係は、次の表IIの通りである。
【0078】
【表2】
【0079】
表IIから明らかなように、両方のセンサー31,32が検出の旨の信号を出力する場合には、処理部81が対象フィンガーの種類を左手又は右手の中指又は薬指と認識する。センサー31が検出の旨の信号を出力し、センサー32が未検出の旨の信号を出力する場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の人差し指又は右手の小指と認識する。センサー31が未検出の旨の信号を出力し、センサー32が検出の旨の信号を出力する場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の小指又は右手の人差し指と認識する。両方のセンサー31,32が未検出の旨の信号を出力する場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手又は右手の親指として認識する。
【0080】
その後、処理部81は、ステップS42において取得した選択情報と、ステップS47において認識した対象フィンガーの種類とを対比して、両者が一致するか否かを判定する(ステップS48)。
【0081】
両者が一致すると処理部81が判定した場合、処理部81は非対象フィンガーのセット状態が良好又は正確であると認識した上で、処理部81の処理がステップS49に移行する(ステップS48:YES)。ステップS49の処理の詳細については、後述する。
【0082】
両者が一致しないと処理部81が判定した場合(ステップS48:NO)、処理部81は非対象フィンガーのセット状態が不良又は不正確であると認識した上で、処理部81の処理がステップS51に移行する。ステップS51では、処理部81が報知制御部81fにより報知器76を動作させる。そうすると、報知器76がエラーの旨の報知を行う。更に、処理部81がエラー表示指令を送信することを通信部77に実行させた上で(ステップS51)、処理部81の処理がステップS45に戻る。端末装置101の処理部121は、エラー表示指令を受信することを通信部113に実行させる。その指令を受けた処理部121は、エラー画面を表示部112に表示させる(ステップS78)。エラー画面では、エラーの旨が表示される。より具体的には、誤った指がフィンガーホルダー2に保持されている旨が表示される。誤った指とは、使用者がステップS13,S14において選択して入力した希望の指以外の指のことをいう。
【0083】
使用者は、報知器76の報知に気づいたら、誤った指をフィンガーホルダー2に保持したことを認識する。使用者は、エラー画面を見たら、誤った指をフィンガーホルダー2に保持したのではないかと認識する。更に、使用者は、エラー画面を見たら、フィンガーレスト26,27への非対象フィンガーのセット状態が不良又は不正確ではないかと認識する。そのため、使用者は、正しい指、つまり、使用者がステップS13,S14において選択して入力した希望の指をフィンガーホルダー2に保持するようになる。また、使用者は、エラー画面を見たら、フィンガーレスト26,27に非対象フィンガーを良好且つ正確に置くようになる。そのため、使用者が印刷開始のコマンドを処理部81に再度与えたら(ステップS17)、処理部81がステップS47において再認識した対象フィンガーの種類が、ステップS42において取得した選択情報と一致することから、処理部81の処理がステップS49に移行する(ステップS48:YES)。
【0084】
なお、使用者がステップS17において端末装置101の入力部111に対してジェスチャーをすることによって印刷開始のコマンドを端末装置101の処理部121に与えた場合、その処理部121がステップS47の認識処理及びステップS48の判定処理と同様の処理を実行してもよい。この場合、端末装置101の処理部121が、印刷装置1から受信したセンサー31,32の出力信号に基づいて、台座21に置かれた対象フィンガーの種類を認識する。その後、処理部121は、ステップS48の判定処理と同様に、ステップS75において取得した選択情報と、認識した対象フィンガーの種類とを対比する。両者が一致する場合には、処理部121はエラー画面を表示部112に表示させる(ステップS78)。両者が一致する場合には、処理部121が、印刷開始指令を送信することを通信部113に実行させる。その指令を受けた印刷装置1の処理部81の処理がステップS45からステップS50に移行する。
【0085】
(7) 印刷
ステップS49では、処理部81は、センサー31,32が指を検出できない状態にセンサー31,32を無効化する。その後、処理部81は印刷データに基づいてモーター62,63及びインクジェットヘッド68a,69aを制御する(ステップS50)。そうすると、印刷部60が動作して、印刷部60が、フィンガーホルダー2に保持された指の爪に印刷を施す。印刷終了後、処理部81が、印刷終了の旨を送信することを通信部77に実行させる。端末装置101の処理部121が通信部113を介して印刷終了の旨を受信すると、処理部121が印刷終了画面を表示部112に表示させる(ステップS79)。
【0086】
[5. 変形例]
以下に上記実施形態から変更した点について説明する。
【0087】
(1) 上記実施形態では、センサー31が複数の指を個別に検出することができない。つまり、センサー31が1本の指を検出した場合のセンサー31の出力信号は、センサー31が2本以上の指を検出した場合のセンサー31の出力信号と同じである。センサー32についても同様である。
【0088】
それに対して、変形例(1)では、センサー31は、複数箇所の接触を個別に検出するタッチパネルである。つまり、センサー31は、1本又は複数本の指を個別に検出し、センサー31の出力信号の態様は、検出した指の本数に応じて異なる。従って、センサー31は、フィンガーレスト26に載置された指の本数を検出する。センサー32についても同様である。
【0089】
この場合でも、処理部81は、ステップS47において、両方のセンサー31,32から入力した信号に基づいて、台座21に置かれた対象フィンガーの種類を認識する。具体的には、センサー31,32が検出する指の本数と認識結果の関係は、次の表IIIの通りである。
【0090】
【表3】
【0091】
表IIIから明らかなように、センサー31が3本の対象フィンガーを検出し、センサー32が対象フィンガーを検出しない場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の人差し指又は右手の小指と認識する。センサー31が2本の対象フィンガーを検出し、センサー32が1本の対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の中指又は右手の薬指と認識する。センサー31が1本の対象フィンガーを検出し、センサー32が2本の対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の薬指又は右手の中指と認識する。センサー31が対象フィンガーを検出せず、センサー32が3本の対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の小指又は右手の人差し指と認識する。どちらのセンサー31,32も対象フィンガーを検出しない場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手又は右手の親指として認識する。以上のように、センサー31,32が指の本数を検出するため、処理部81によって認識される指の分類が多い。
【0092】
(2) 変形例(1)と同様に、変形例(2)においても、センサー31は、フィンガーレスト26に載置された指の本数を検出する。ただし、変形例(1)においては、センサー31がタッチパネルであるのに対して、変形例(2)においては、センサー31が3体の分割センサー311~313を有する。分割センサー311~313は、例えば静電容量センサー、圧力センサー、押しボタンスイッチ、反射型光センサー又は透過型光センサーである。分割センサー311~313は、フィンガーレスト26の上面において、幅方向に間隔を置いて配列されている。なお、分割センサー311~313が反射型光センサー又は透過型光センサーである場合、分割センサー311~313の配置はフィンガーレスト26の上面に限るものではない。例えば、反射型光センサー又は透過型光センサーとしての分割センサー311~313がフィンガーレスト26の上方又は下方に配置されてもよい。分割センサー311~313がフィンガーレスト26の下方に配置される場合、分割センサー311~313から発した光がフィンガーレスト26を通過するように、フィンガーレスト26が透明であったり、光通過用の穴がフィンガーレスト26に形成されていたりする。
【0093】
センサー31の場合と同様に、センサー32が3体の分割センサー321~323を有する。分割センサー311、分割センサー312、分割センサー313、台座21、分割センサー321、分割センサー322及び分割センサー323は、左右に延びた同一直線に沿って、順に左から右へまっすぐに配列されている。なお、分割センサー311~313及び分割センサー321~323は、順に左から右へ直線状に配列されていてもよい。
【0094】
この場合でも、処理部81は、ステップS47において、分割センサー311~313,321~323から入力した信号に基づいて、台座21に置かれた対象フィンガーの種類を認識する。具体的には、分割センサー311~313,321~323から処理部81に入力される信号と認識結果の関係は、次の表IVの通りである。
【0095】
【表4】
【0096】
表IVから明らかなように、分割センサー311~312の全てが対象フィンガーを検出し、分割センサー321~322の全てが対象フィンガーを検出しない場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の人差し指又は右手の小指と認識する。分割センサー311~312のうち2体が対象フィンガーを検出し、分割センサー321~322のうち1体が対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の中指又は右手の薬指と認識する。分割センサー311~312のうち1体が対象フィンガーを検出し、分割センサー321~322のうち2体が対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の薬指又は右手の中指と認識する。分割センサー311~312の全てが対象フィンガーを検出せず、分割センサー321~322の全てが対象フィンガーを検出した場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手の小指又は右手の人差し指と認識する。分割センサー311~312,321~323の全てが対象フィンガーを検出しない場合、処理部81が対象フィンガーの種類を左手又は右手の親指として認識する。以上のように、センサー31が分割センサー311~312を有するため、センサー31が指の本数を検出できる。センサー32が分割センサー321~323を有するため、センサー32が指の本数を検出できる。センサー31、32が指の本数を検出するため、処理部81によって認識される指の分類が多い。
【0097】
(3) 上述の実施の形態では、選択情報における指の種類は、使用者が印刷装置1の処理部81又は端末装置101の処理部121に与えたものである。それに対して、処理部81,121が、撮像装置71によって撮像された画像の中の指の像に基づいて、台座21に載置された指の種類を画像処理により認識してもよい。そのように認識された指の種類が選択情報として利用される。この場合、処理部81,121は、教師データにより予め深層学習された機械学習モデルに画像の中の指の像を入力して、機械学習モデルから指の種類を出力することにより指の種類を認識してもよい。
【0098】
(4) また、上述の実施の形態に限られず、センサー31,32の出力信号に基づいて単に非対象フィンガーのセット状態が不良又は不正確であるか否かを判断してもよい。また、非対象フィンガーが適切に載置されていないと判定した場合に非対象フィンガーが適切に配置されていない旨を報知したり、適切に配置されていない非対象フィンガーの種類を報知したりしてもよい。
【0099】
[6. まとめ]
(1) センサー31が、台座21の左のフィンガーレスト26に載置された非対象フィンガーを検出するように構成されている。センサー32が、台座21の右のフィンガーレスト27に載置された非対象フィンガーを検出するように構成されている。よって、対象フィンガーの種類に応じた非対象フィンガーのセット状態の良好性又は正確性を、センサー31,32の検出結果から把握できる。また、対象フィンガーが良好な姿勢で台座21に載置されたか否かを、センサー31,32の検出結果から把握できる。また、対象フィンガーの種類が正しいか否かを、つまり、対象フィンガーの種類が使用者により選択された選択フィンガーの種類に一致するか否かを、センサー31,32の検出結果から把握できる。
【0100】
(2) センサー31と台座21とセンサー32が略同一直線状に配置され、センサー31が、台座21の左にある非対象フィンガーに対応して個別に配置され、センサー32が、台座21の右にある非対象フィンガーに対応して個別に配置される。よって、台座21の左と右における非対象フィンガーの存否がセンサー31とセンサー32によってそれぞれ検出される。
【0101】
(3) 印刷装置1の処理部81が、ステップS47,S48のように、センサー31,32の出力信号に基づいて印刷の可否を決める。非対象フィンガーのセット状態が不良又は不正確である場合、或いは、使用者が誤って別の指を台座21に載置した場合、処理部81が印刷を否と判定するため、印刷が開始されない。そのため、低質な印刷が防止される。使用者が正しい指を台座21に載置するとともに、非対象フィンガーを良好にセットした場合、処理部81が印刷を可として判定するため、印刷が開始される。そのため、高品質な印刷が提供される。端末装置101の処理部121がステップS47,S48の処理と同様の処理を実行する場合についても、同様のことが言える。
【0102】
(4) 上述の変形例(1)及び(2)のように、センサー31,32がそれぞれフィンガーレスト26,27に載置された指の本数を検出するため、処理部81による認識結果が細分化される。
【0103】
(5) 処理部81が、ステップS47のように、センサー31,32の信号に基づいて、台座21に置かれた対象フィンガーの種類を認識する。よって、対象フィンガーの種類が使用者により選択された選択フィンガーの種類に一致するか否かの判定を行える。
【0104】
(6) 処理部81は、ステップS47において認識済みの対象フィンガーの種類が、使用者が選択した選択フィンガーの種類に一致するか否かを判定する(ステップS48)。よって、使用者が意識せずとも、対象フィンガーの種類が使用者により選択された選択フィンガーの種類に一致するか否かの判定を行える。
【0105】
(7) ステップS48において処理部81が印刷を可として判定すると、処理部81が印刷部60を制御する。よって、対象フィンガーが良好に台座21にセットされた場合に、印刷部60が対象フィンバーに印刷を施すため、高品質な印刷が提供される。
【0106】
(8) ステップS48において処理部81が印刷を否として判定すると、処理部81が報知器76を動作させる。報知器76による報知は、使用者が、非対象フィンガーのセット状態が不良又は不正確であること、或いは、誤った指を台座21にセットしたこと、を使用者に気づかせるきっかけとなる。
【0107】
(9) 本発明の1又は2以上の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0108】
1 印刷装置(電子機器)
20 フィンガーホルダー
21 台座
26 第1フィンガーレスト
27 第2フィンガーレスト
31 第1センサー
32 第2センサー
60 印刷部
75 入力部
76 報知器
77 通信部
81 処理部(プロセッサー)
81a 入力認識部
81e 印刷制御部
81f 報知制御部
101 端末装置(第2電子機器)
113 通信部(第2通信部)
121 処理部(プロセッサー)
311,312,313,321,322,323 分割センサー
図1
図2
図3
図4