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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044584
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】計測装置及び計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/28 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150203
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】501474450
【氏名又は名称】株式会社シーデックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】時田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 利幸
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028CG18
2G028CG20
2G028DH11
2G028HN12
(57)【要約】
【課題】ダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることが可能な計測装置及び計測システムを提供すること。
【解決手段】計測装置10は、入力信号a1と入力信号a2との振幅比及び位相差を計測する装置であって、入力信号a1が入力されるポートP1と、入力信号a2が入力されるポートP2と、電力計測用のポートP3~P6と、入力端子13a,13bを有する位相コリレータ13と、ポートP1をポートP3及び入力端子13aのいずれかと選択的に接続するスイッチ11と、ポートP2をポートP4及び入力端子13bのいずれかと選択的に接続するスイッチ12と、を備え、位相コリレータ13は、入力信号a1と入力信号a2とに基づいて、出力信号b5及び出力信号b6を生成し、出力信号b5をポートP5に出力するとともに、出力信号b6をポートP6に出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力信号と第2入力信号との振幅比及び位相差を計測する計測装置であって、
前記第1入力信号が入力される第1ポートと、
前記第2入力信号が入力される第2ポートと、
電力計測用の第3ポートと、
電力計測用の第4ポートと、
電力計測用の第5ポートと、
電力計測用の第6ポートと、
第1入力端子及び第2入力端子を有する位相コリレータと、
前記第1ポートを前記第3ポート及び前記第1入力端子のいずれかと選択的に接続する第1スイッチと、
前記第2ポートを前記第4ポート及び前記第2入力端子のいずれかと選択的に接続する第2スイッチと、
を備え、
前記位相コリレータは、前記第1入力信号と前記第2入力信号とに基づいて、前記位相差を計測するための第1出力信号及び第2出力信号を生成し、前記第1出力信号を前記第5ポートに出力するとともに、前記第2出力信号を前記第6ポートに出力する、計測装置。
【請求項2】
前記位相コリレータは、
前記第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、
前記第2入力信号の電力を分配することによって第1分割信号と第2分割信号とを生成する電力分配器と、
前記第1位相信号と前記第1分割信号とを合成することによって前記第1出力信号を生成する第1電力合成器と、
前記第2位相信号と前記第2分割信号とを合成することによって前記第2出力信号を生成する第2電力合成器と、
を備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記位相コリレータは、
前記第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、
前記第1出力信号及び前記第2出力信号を生成する電力合成器と、
前記第1位相信号及び前記第2位相信号を選択的に前記電力合成器に出力する第3スイッチと、
を備え、
前記電力合成器は、前記第3スイッチから前記第1位相信号が出力されている場合には、前記第1位相信号と前記第2入力信号とを合成することによって前記第1出力信号を生成し、前記第3スイッチから前記第2位相信号が出力されている場合には、前記第2位相信号と前記第2入力信号とを合成することによって前記第2出力信号を生成する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第1入力信号の信号レベルを調整する第1可変利得部を更に備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記第2入力信号の信号レベルを調整する第2可変利得部を更に備える、請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の計測装置と、
前記計測装置から出力される信号の電力を計測する電力計測器と、
前記計測装置及び前記電力計測器を制御する制御装置と、
を備える計測システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記第1スイッチに、前記第1ポートを前記第3ポートに接続させ、前記第2スイッチに、前記第2ポートを前記第4ポートに接続させた状態で、前記第3ポートから出力される前記第1入力信号の電力と前記第4ポートから出力される前記第2入力信号の電力とを前記電力計測器に計測させる振幅比計測処理と、
前記第1スイッチに、前記第1ポートを前記第1入力端子に接続させ、前記第2スイッチに、前記第2ポートを前記第2入力端子に接続させた状態で、前記第5ポートから出力される前記第1出力信号の電力と前記第6ポートから出力される前記第2出力信号の電力とを前記電力計測器に計測させる位相差計測処理と、
を実施する、請求項6に記載の計測システム。
【請求項8】
基準信号を生成する発振器と、
被測定物の一方のポートに接続される第1テストポートと、
前記被測定物の他方のポートに接続される第2テストポートと、
計測モードを切り替え可能な切替部と、
を更に備え、
前記切替部は、前記基準信号を前記第1ポート及び前記第1テストポートに供給するとともに、前記第2テストポートに入力された被測定信号を前記第2ポートに供給する第1計測モードと、前記基準信号を前記第2ポート及び前記第2テストポートに供給するとともに、前記第1テストポートに入力された被測定信号を前記第1ポートに供給する第2計測モードとを切り替える、請求項6に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基準信号と被測定信号との振幅比及び位相差を計測するための6ポート型コリレータが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載の6ポート型コリレータの振幅計測部は、電力分配器によって入力信号を出力ポートに分配することで、入力信号のみに依存する電力を計測可能に構成されている。位相計測部は、基準信号と被測定信号とを合成した2つの出力を電力計測する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】矢加部利幸,吉田信,花澤理宏,“簡明6ポートコリレータ-校正法および2ポート被測定デバイス計測法”,2021年7月8日発行,信学技報,vol.121,no.107,MW2021-14,pp.11-15
【非特許文献2】Kohei Fujiwara,Kouichi Tokita,Toshiyuki Yakabe,“Six-port typereflectometer based on reflection measurement system using a standing wavedetector in the V-band”,IEICE Electronics Express,Publicized September 1, 2021,Vol.18,No.19,1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の6ポート型コリレータでは、電力分配器において各信号の電力が半分に減衰されるので、振幅計測部及び位相計測部において計測される電力がノイズフロアに近づく。さらに、電力分配器において、他方の信号が漏れ込むことがある。したがって、計測精度が低下するおそれがあるので、ダイナミックレンジが制限され得る。
【0005】
本開示は、計測のダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることが可能な計測装置及び計測システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る計測装置は、第1入力信号と第2入力信号との振幅比及び位相差を計測する装置である。この計測装置は、第1入力信号が入力される第1ポートと、第2入力信号が入力される第2ポートと、電力計測用の第3ポートと、電力計測用の第4ポートと、電力計測用の第5ポートと、電力計測用の第6ポートと、第1入力端子及び第2入力端子を有する位相コリレータと、第1ポートを第3ポート及び第1入力端子のいずれかと選択的に接続する第1スイッチと、第2ポートを第4ポート及び第2入力端子のいずれかと選択的に接続する第2スイッチと、を備える。位相コリレータは、第1入力信号と第2入力信号とに基づいて、位相差を計測するための第1出力信号及び第2出力信号を生成し、第1出力信号を第5ポートに出力するとともに、第2出力信号を第6ポートに出力する。
【0007】
この計測装置では、第1スイッチによって第1ポートが第3ポートに接続され、第2スイッチによって第2ポートが第4ポートに接続される。したがって、各信号の電力がほとんど減衰されることなく、第1入力信号が第3ポートから出力され、第2入力信号が第4ポートから出力される。このため、第3ポートから出力される第1入力信号の電力及び第4ポートから出力される第2入力信号の電力がノイズフロアに近づく可能性を低減することができる。さらに、電力分配器と比較して、第1スイッチ及び第2スイッチでは信号の漏れ込みが軽減される。以上のことから、計測のダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態において、位相コリレータは、第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、第2入力信号の電力を分配することによって第1分割信号と第2分割信号とを生成する電力分配器と、第1位相信号と第1分割信号とを合成することによって第1出力信号を生成する第1電力合成器と、第2位相信号と第2分割信号とを合成することによって第2出力信号を生成する第2電力合成器と、を備えてもよい。この構成では、同じタイミングで第1位相信号及び第2位相信号が生成される。このため、第1入力信号の振幅が時間変動したとしても、同じ振幅値の第1入力信号を基準として、第1出力信号及び第2出力信号が生成され得る。したがって、計測精度を向上させることが可能となる。
【0009】
いくつかの実施形態において、位相コリレータは、第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、第1出力信号及び第2出力信号を生成する電力合成器と、第1位相信号及び第2位相信号を選択的に電力合成器に出力する第3スイッチと、を備えてもよい。電力合成器は、第3スイッチから第1位相信号が出力されている場合には、第1位相信号と第2入力信号とを合成することによって第1出力信号を生成してもよく、第3スイッチから第2位相信号が出力されている場合には、第2位相信号と第2入力信号とを合成することによって第2出力信号を生成してもよい。この構成では、第1位相信号と第2位相信号とが選択的に電力合成器に出力されることによって、第1出力信号と第2出力信号とを1つの電力合成器で生成することが可能となる。したがって、計測装置の回路規模を低減することが可能となる。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1入力信号の信号レベルを調整する第1可変利得部を更に備えてもよい。位相コリレータでは、第1入力信号と第2入力信号とに基づいて、第1出力信号及び第2出力信号が生成される。このため、第1入力信号の信号レベルと第2入力信号の信号レベルとの差が大きいと、計測精度が低下するおそれがある。上記構成によれば、第1入力信号の信号レベルが調整され得るので、第1入力信号の信号レベルと第2入力信号の信号レベルとの差を小さくすることができる。したがって、計測精度を向上させることが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態において、第2入力信号の信号レベルを調整する第2可変利得部を更に備えてもよい。この構成によれば、第2入力信号の信号レベルが更に調整され得るので、第1入力信号の信号レベルと第2入力信号の信号レベルとの差をより確実に小さくすることができる。したがって、計測精度を一層向上させることが可能となる。
【0012】
本開示の別の側面に係る計測システムは、上記計測装置と、計測装置から出力される信号の電力を計測する電力計測器と、計測装置及び電力計測器を制御する制御装置と、を備える。この計測システムは上記計測装置を備えているので、計測のダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることが可能となる。
【0013】
いくつかの実施形態において、制御装置は、第1スイッチに、第1ポートを第3ポートに接続させ、第2スイッチに、第2ポートを第4ポートに接続させた状態で、第3ポートから出力される第1入力信号の電力と第4ポートから出力される第2入力信号の電力とを電力計測器に計測させる振幅比計測処理と、第1スイッチに、第1ポートを第1入力端子に接続させ、第2スイッチに、第2ポートを第2入力端子に接続させた状態で、第5ポートから出力される第1出力信号の電力と第6ポートから出力される第2出力信号の電力とを電力計測器に計測させる位相差計測処理と、を実施してもよい。この構成によれば、振幅比計測処理と位相差計測処理とが独立に実施される。したがって、振幅の計測精度を向上させることができる。さらに、振幅比計測処理が実施されてから位相差計測処理が実施される場合には、振幅の情報を用いることで、位相の計算における未知数を削減することができる。したがって、計算負荷を軽減することが可能となる。
【0014】
いくつかの実施形態において、計測システムは、基準信号を生成する発振器と、被測定物の一方のポートに接続される第1テストポートと、被測定物の他方のポートに接続される第2テストポートと、計測モードを切り替え可能な切替部と、を更に備えてもよい。切替部は、基準信号を第1ポート及び第1テストポートに供給するとともに、第2テストポートに入力された被測定信号を第2ポートに供給する第1計測モードと、基準信号を第2ポート及び第2テストポートに供給するとともに、第1テストポートに入力された被測定信号を第1ポートに供給する第2計測モードとを切り替えてもよい。この構成によれば、被測定物を付け替えることなく、被測定物の一方のポートに基準信号を供給した場合の特性と、被測定物の他方のポートに基準信号を供給した場合の特性とを計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る計測装置を含む計測システムの概略構成図である。
図2図2は、図1に示される計測装置の概略構成図である。
図3図3は、図1に示される計測システムにおける計測方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係る計測装置の概略構成図である。
図5図5は、第3実施形態に係る計測装置の概略構成図である。
図6図6は、図5に示される可変利得部の構成例を示す図である。
図7図7は、図5に示される計測装置を含む計測システムにおける計測方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第4実施形態に係る計測装置の概略構成図である。
図9図9の(a)は、実施例1及び比較例の振幅計測結果を示す図である。図9の(b)は、実施例1及び比較例の位相計測結果を示す図である。
図10図10の(a)は、実施例2及び比較例の振幅計測結果を示す図である。図10の(b)は、実施例2及び比較例の位相計測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0018】
(第1実施形態)
まず図1を参照しながら、第1実施形態に係る計測装置を含む計測システムを説明する。図1は、第1実施形態に係る計測装置を含む計測システムの概略構成図である。図1に示される計測システム1は、被測定物(Device Under Test:DUT)2の透過特性及び反射特性を計測するシステムである。被測定物2の例としては、ケーブル、フィルタ、及び減衰器が挙げられる。計測システム1は、発振器OCと、スイッチSW1~SW3と、カプラCP1~CP4と、計測装置10と、パワーセンサ20と、制御装置50と、テストポートTP1,TP2と、を含む。
【0019】
テストポートTP1(第1テストポート)は、被測定物2のポート2a(一方のポート)に接続される。テストポートTP2(第2テストポート)は、被測定物2のポート2b(他方のポート)に接続される。
【0020】
発振器OCは、基準信号を生成する。基準信号としては、例えば、予め設定された周波数を有する正弦波が用いられる。発振器OCは、基準信号をスイッチSW1に出力する。
【0021】
スイッチSW1~SW3は、計測モードを選択的に切り替える回路要素である。スイッチSW1~SW3のそれぞれは、例えば、半導体スイッチである。スイッチSW1は、端子T1a~T1cを有する。端子T1aは、発振器OCに接続されている。端子T1bは、カプラCP1及びカプラCP2を介してテストポートTP1に接続されている。端子T1cは、カプラCP3及びカプラCP4を介してテストポートTP2に接続されている。スイッチSW1は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子T1aと端子T1bとが接続されている状態と、端子T1aと端子T1cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。
【0022】
スイッチSW2は、端子T2a~T2cを有する。端子T2aは、計測装置10のポートP1(第1ポート)に接続されている。端子T2bは、カプラCP1を介して端子T1bに接続されている。端子T2cは、カプラCP2を介してテストポートTP1に接続されている。スイッチSW2は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子T2aと端子T2bとが接続されている状態と、端子T2aと端子T2cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。
【0023】
スイッチSW3は、端子T3a~T3cを有する。端子T3aは、計測装置10のポートP2(第2ポート)に接続されている。端子T3bは、カプラCP3を介して端子T1cに接続されている。端子T3cは、カプラCP4を介してテストポートTP2に接続されている。スイッチSW3は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子T3aと端子T3bとが接続されている状態と、端子T3aと端子T3cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。
【0024】
つまり、スイッチSW1~SW3及びカプラCP1~CP4は、計測モードを切り替え可能な切替部を構成している。計測モードには、第1計測モードと第2計測モードが含まれる。第1計測モードは、基準信号をポートP1及びテストポートTP1に供給するとともに、テストポートTP2に入力された被測定信号をポートP2に供給する計測モードである。第2計測モードは、基準信号をポートP2及びテストポートTP2に供給するとともに、テストポートTP1に入力された被測定信号をポートP1に供給する計測モードである。
【0025】
計測装置10は、入力信号a1(第1入力信号)と入力信号a2(第2入力信号)との振幅比及び位相差を計測するための装置である。計測装置10は、6ポート型コリレータとも称される。計測装置10は、ポートP1~P6を有する。ポートP1は、スイッチSW2の端子T2aに接続されている。ポートP1には、入力信号a1が入力される。ポートP2は、スイッチSW3の端子T3aに接続されている。ポートP2には、入力信号a2が入力される。
【0026】
ポートP3~P6は、電力計測用のポートである。ポートP3(第3ポート)は、出力信号b3を出力する。ポートP4(第4ポート)は、出力信号b4を出力する。ポートP5(第5ポート)は、出力信号b5(第1出力信号)を出力する。ポートP6(第6ポート)は、出力信号b6(第2出力信号)を出力する。出力信号b3及び出力信号b4は、入力信号a1と入力信号a2との振幅比を計測するための信号である。出力信号b5及び出力信号b6は、入力信号a1と入力信号a2との位相差を計測するための信号である。計測装置10の詳細については後述する。
【0027】
パワーセンサ20は、計測装置10から出力される信号の電力を計測する電力計測器である。パワーセンサ20は、4チャネルのパワーセンサである。パワーセンサ20は、例えばスカラ型のセンサである。パワーセンサ20は、ポートP3~P6に接続されており、出力信号b3~b6の各電力を計測する。パワーセンサ20は、各電力の計測値を制御装置50に出力する。
【0028】
制御装置50は、計測システム1(発振器OC、スイッチSW1~SW3、計測装置10、及びパワーセンサ20)を統括制御する装置(コントローラ)である。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリと、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置と、ネットワークカード等の通信装置と、を含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御装置50の機能が実現される。
【0029】
制御装置50は、例えば、スイッチSW1~SW3に切替信号を出力することによって、計測モードを切り替える。制御装置50は、発振器OCに制御信号を出力することによって、基準信号の周波数の設定を行う。
【0030】
次に、図2を参照しながら、計測装置10を詳細に説明する。図2は、図1に示される計測装置の概略構成図である。図2に示されるように、計測装置10は、スイッチ11(第1スイッチ)と、スイッチ12(第2スイッチ)と、入力端子13a(第1入力端子)及び入力端子13b(第2入力端子)を有する位相コリレータ13と、を含む。
【0031】
スイッチ11は、ポートP1をポートP3及び入力端子13aのいずれかと選択的に接続する回路要素である。スイッチ11は、例えば、半導体スイッチである。スイッチ11は、端子11a~11cを有する。端子11aは、ポートP1に接続されている。端子11bは、ポートP3に接続されている。端子11cは、入力端子13aに接続されている。スイッチ11は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子11aと端子11bとが接続されている状態と、端子11aと端子11cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。端子11aと端子11bとが接続されている状態では、入力信号a1はポートP3に出力信号b3として供給される。端子11aと端子11cとが接続されている状態では、入力信号a1は、入力端子13aに供給される。
【0032】
スイッチ12は、ポートP2をポートP4及び入力端子13bのいずれかと選択的に接続する回路要素である。スイッチ12は、例えば、半導体スイッチである。スイッチ12は、端子12a~12cを有する。端子12aは、ポートP2に接続されている。端子12bは、ポートP4に接続されている。端子12cは、入力端子13bに接続されている。スイッチ12は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子12aと端子12bとが接続されている状態と、端子12aと端子12cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。端子12aと端子12bとが接続されている状態では、入力信号a2はポートP4に出力信号b4として供給される。端子12aと端子12cとが接続されている状態では、入力信号a2は、入力端子13bに供給される。
【0033】
位相コリレータ13は、入力端子13aに入力された信号(ここでは、入力信号a1)と、入力端子13bに入力された信号(ここでは、入力信号a2)と、に基づいて、出力信号b5及び出力信号b6を生成する。位相コリレータ13は、出力信号b5をポートP5に出力するとともに、出力信号b6をポートP6に出力する。位相コリレータ13は、位相差付き電力分配器31と、電力分配器32と、電力合成器33(第1電力合成器)と、電力合成器34(第2電力合成器)と、を含む。
【0034】
位相差付き電力分配器31は、入力信号a1から互いに位相が異なる位相信号a11(第1位相信号)及び位相信号a12(第2位相信号)を生成する回路要素である。本実施形態では、位相差付き電力分配器31は、90度ハイブリッドによって構成されている。この場合、位相信号a11は入力信号a1に対して90度遅れ、位相信号a12は入力信号a1に対して180度遅れる。したがって、位相信号a11と位相信号a12との位相差は90度である。位相信号a11の電力及び位相信号a12の電力は、入力信号a1の半分である。位相差付き電力分配器31は、位相信号a11を電力合成器33に出力し、位相信号a12を電力合成器34に出力する。
【0035】
電力分配器32は、入力信号a2の電力を分配することによって、分割信号a21(第1分割信号)と分割信号a22(第2分割信号)とを生成する回路要素である。電力分配器32としては、公知の電力分配器が用いられる。電力分配器32は、入力信号a2の電力を均等に分配する。分割信号a21の電力及び分割信号a22の電力は、入力信号a2の半分である。電力分配器32は、分割信号a21を電力合成器33に出力し、分割信号a22を電力合成器34に出力する。
【0036】
電力合成器33は、位相信号a11と分割信号a21とを合成することによって出力信号b5を生成する回路要素である。本実施形態では、電力合成器33は、90度ハイブリッドによって構成されている。電力合成器33は、出力信号b5をポートP5に出力する。
【0037】
電力合成器34は、位相信号a12と分割信号a22とを合成することによって出力信号b6を生成する回路要素である。本実施形態では、電力合成器34は、90度ハイブリッドによって構成されている。電力合成器34は、出力信号b6をポートP6に出力する。
【0038】
次に、図1図3を参照しながら、計測システム1における計測方法を説明する。図3は、図1に示される計測システムにおける計測方法の一例を示すフローチャートである。まず、ユーザが所望の周波数範囲及び計測粒度を制御装置50に設定する。周波数範囲としては、例えば、開始周波数と終了周波数とが設定される。計測粒度としては、例えば、単位周波数が設定される。ユーザによって上記設定が行われ、計測開始操作が行われると、図3に示される一連の処理が開始される。
【0039】
まず、制御装置50は、計測システム1を第1計測モードに設定する(ステップS1)。具体的には、制御装置50は、端子T1aと端子T1bとが接続され、端子T2aと端子T2bとが接続され、端子T3aと端子T3cとが接続されるように、スイッチSW1~SW3に切替信号を出力する。この設定により、基準信号がスイッチSW1、カプラCP1、及びスイッチSW2を順に通ってポートP1に供給される。さらに、基準信号がスイッチSW1、カプラCP1、及びカプラCP2を順に通って、被測定物2のポート2aに供給される。これにより、被測定物2のポート2bから被測定信号が出力され、カプラCP4及びスイッチSW3を順に通ってポートP2に供給される。つまり、第1計測モードでは、入力信号a1は、基準信号であり、入力信号a2は、被測定信号である。
【0040】
続いて、制御装置50は、発振器OCに制御信号を出力することによって、基準信号の周波数を開始周波数に設定する(ステップS2)。
【0041】
続いて、制御装置50は、振幅比計測処理を実施する(ステップS3)。具体的には、制御装置50は、端子11aと端子11bとが接続され、端子12aと端子12bとが接続されるように、スイッチ11,12に切替信号を出力する。この設定により、入力信号a1がポートP3に出力信号b3として供給されてポートP3から出力され、入力信号a2がポートP4に出力信号b4として供給されてポートP4から出力される。そして、制御装置50は、パワーセンサ20に計測指令を出力し、パワーセンサ20に出力信号b3及び出力信号b4の電力を同時に計測させる。すなわち、ステップS3において、制御装置50は、スイッチ11に、ポートP1をポートP3に接続させ、スイッチ12に、ポートP2をポートP4に接続させた状態で、ポートP3から出力される出力信号b3(入力信号a1)の電力とポートP4から出力される出力信号b4(入力信号a2)の電力とをパワーセンサ20に計測させる。そして、制御装置50は、出力信号b3の電力の計測値と出力信号b4の電力の計測値とから、振幅比Wを算出する。
【0042】
続いて、制御装置50は、位相差計測処理を実施する(ステップS4)。具体的には、制御装置50は、端子11aと端子11cとが接続され、端子12aと端子12cとが接続されるように、スイッチ11,12に切替信号を出力する。この設定により、入力信号a1が入力端子13aに供給され、入力信号a2が入力端子13bに供給される。そして、位相コリレータ13によって出力信号b5及び出力信号b6が生成され、出力信号b5がポートP5から出力され、出力信号b6がポートP6から出力される。そして、制御装置50は、パワーセンサ20に計測指令を出力し、パワーセンサ20に出力信号b5及び出力信号b6の電力を同時に計測させる。すなわち、ステップS4において、制御装置50は、スイッチ11に、ポートP1を入力端子13aに接続させ、スイッチ12に、ポートP2を入力端子13bに接続させた状態で、ポートP5から出力される出力信号b5の電力とポートP6から出力される出力信号b6の電力とをパワーセンサ20に計測させる。
【0043】
続いて、制御装置50は、基準信号の周波数が終了周波数であるか否かを判定する(ステップS5)。基準信号の周波数が終了周波数でないと判定された場合(ステップS5:NO)、制御装置50は、発振器OCに制御信号を出力することによって、基準信号の周波数を単位周波数だけ増加する(ステップS6)。そして、ステップS3~S5が再び実施される。
【0044】
ステップS3~S6が繰り返されることにより基準信号の周波数が終了周波数に達すると(ステップS5:YES)、制御装置50は、計測を終了するか否かを判定する(ステップS7)。例えば、フル2ポートでの計測が行われる場合には、制御装置50は、計測を終了しないと判定し(ステップS7:NO)、計測モードを切り替える(ステップS8)。ここでは、制御装置50は、計測システム1を第2計測モードに設定する。
【0045】
具体的には、制御装置50は、端子T1aと端子T1cとが接続され、端子T2aと端子T2cとが接続され、端子T3aと端子T3bとが接続されるように、スイッチSW1~SW3に切替信号を出力する。この設定により、基準信号がスイッチSW1、カプラCP3、及びスイッチSW3を順に通ってポートP2に供給される。さらに、基準信号がスイッチSW1、カプラCP3、及びカプラCP4を順に通って、被測定物2のポート2bに供給される。これにより、被測定物2のポート2aから被測定信号が出力され、カプラCP2及びスイッチSW2を順に通ってポートP1に供給される。つまり、第2計測モードでは、入力信号a1は、被測定信号であり、入力信号a2は、基準信号である。そして、ステップS2~S7が再び実施される。
【0046】
一方、ステップS7において、計測を終了すると判定された場合(ステップS7:YES)、図3に示される計測方法の一連の処理が終了する。
【0047】
以上説明した計測システム1及び計測装置10においては、スイッチ11によってポートP1がポートP3に接続され、スイッチ12によってポートP2がポートP4に接続され、ポートP3及びポートP4において電力が計測される。したがって、入力信号a1及び入力信号a2の電力がほとんど減衰されることなく、入力信号a1がポートP3から出力信号b3として出力され、入力信号a2がポートP4から出力信号b4として出力される。このため、出力信号b3及び出力信号b4の電力がノイズフロアに近づく可能性を低減することができる。さらに、電力分配器と比較して、スイッチ11及びスイッチ12では信号の漏れ込みが軽減される。具体的には、スイッチ11では、端子11bと端子11cとは電気的に分離されているので、端子11cからの信号が端子11bに漏れ込む可能性が低減される。同様に、スイッチ12では、端子12bと端子12cとは電気的に分離されているので、端子12cからの信号が端子12bに漏れ込む可能性が低減される。以上のことから、計測のダイナミックレンジを拡張しつつ、計測精度を向上させることが可能となる。
【0048】
位相コリレータ13において、入力信号a1から互いに位相が異なる位相信号a11及び位相信号a12が同じタイミングで生成される。このため、入力信号a1の振幅が時間変動したとしても、同じ振幅値の入力信号a1を基準として、出力信号b5及び出力信号b6が生成され得る。したがって、基準信号として高周波の信号が用いられたとしても、計測精度を向上させることが可能となる。
【0049】
計測システム1において、振幅比計測処理と位相差計測処理とが独立に実施される。したがって、振幅の計測精度を向上させることができる。さらに、振幅比計測処理が実施されてから位相差計測処理が実施されるので、振幅の情報を用いることで位相の計算における未知数を削減することができる。したがって、計算負荷を軽減することが可能となる。
【0050】
スイッチSW1~SW3及びカプラCP1~CP4は、第1計測モードと第2計測モードとを切り替え可能に構成されている。この構成によれば、テストポートTP1,TP2に対して被測定物2を付け替えることなく、被測定物2のポート2aに基準信号を供給した場合の特性と、被測定物2のポート2bに基準信号を供給した場合の特性とを計測することが可能となる。すなわち、いわゆるフル2ポートでの計測が可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
図4を参照しながら、第2実施形態に係る計測装置を説明する。図4は、第2実施形態に係る計測装置の概略構成図である。図4に示されるように、第2実施形態に係る計測装置10Aは、位相コリレータ13に代えて位相コリレータ13Aを含む点において、計測装置10と主に相違する。位相コリレータ13Aは、電力分配器32、電力合成器33、及び電力合成器34に代えて、スイッチ35(第3スイッチ)及び電力合成器36を含む点において、位相コリレータ13と主に相違する。なお、計測装置10Aでは、ポートP5とポートP6とは、電力合成器36の出力ポートに共通に接続されている。ポートP5とポートP6とは物理的に同一のポートであってもよい。
【0052】
スイッチ35は、位相信号a11及び位相信号a12を選択的に電力合成器36に出力する回路要素である。スイッチ35は、例えば、半導体スイッチである。スイッチ35は、端子35a~35cを有する。端子35aは、位相差付き電力分配器31の位相信号a11を出力する出力ポートに接続されている。端子35bは、位相差付き電力分配器31の位相信号a12を出力する出力ポートに接続されている。端子35cは、電力合成器36に接続されている。スイッチ35は、制御装置50からの切替信号に応じて、端子35aと端子35cとが接続されている状態と、端子35bと端子35cとが接続されている状態とを選択的に切り替える。端子35aと端子35cとが接続されている状態では、位相信号a11が電力合成器36に出力される。端子35bと端子35cとが接続されている状態では、位相信号a12が電力合成器36に出力される。
【0053】
電力合成器36は、出力信号b5及び出力信号b6を生成する回路要素である。本実施形態では、電力合成器36は、90度ハイブリッドによって構成されている。電力合成器36は、スイッチ35から位相信号a11が出力されている場合には、位相信号a11と入力信号a2とを合成することによって出力信号b5を生成する。電力合成器36は、スイッチ35から位相信号a12が出力されている場合には、位相信号a12と入力信号a2とを合成することによって出力信号b6を生成する。電力合成器36は、出力信号b5及び出力信号b6をポートP5,P6に出力する。
【0054】
次に、図3を更に参照しながら、計測装置10Aを含む計測システムにおける計測方法を説明する。計測装置10Aを含む計測システムにおける計測方法は、ステップS4における処理内容において、計測システム1における計測方法と主に相違する。なお、計測装置10Aを含む計測システムは、計測装置10に代えて計測装置10Aを含む点において計測システム1と主に相違する。
【0055】
具体的に説明すると、ステップS4において、まず、制御装置50は、端子11aと端子11cとが接続され、端子12aと端子12cとが接続されるように、スイッチ11,12に切替信号を出力する。そして、制御装置50は、端子35aと端子35cとが接続されるようにスイッチ35に切替信号を出力する。この設定により、位相信号a11が電力合成器36に供給され、電力合成器36によって出力信号b5が生成されて出力信号b5がポートP5から出力される。そして、制御装置50は、パワーセンサ20に計測指令を出力し、パワーセンサ20に出力信号b5の電力を計測させる。
【0056】
続いて、制御装置50は、端子35bと端子35cとが接続されるようにスイッチ35に切替信号を出力する。この設定により、位相信号a12が電力合成器36に供給され、電力合成器36によって出力信号b6が生成されて出力信号b6がポートP6から出力される。そして、制御装置50は、パワーセンサ20に計測指令を出力し、パワーセンサ20に出力信号b6の電力を計測させる。以上により、ステップS4の位相差計測処理が終了する。
【0057】
計測装置10Aにおいても、計測装置10と共通の構成については、計測装置10と同様の効果が奏される。さらに、計測装置10Aでは、位相信号a11と位相信号a12とが選択的に電力合成器36に出力されることによって、出力信号b5と出力信号b6とを1つの電力合成器36で生成することが可能となる。したがって、計測装置10A(位相コリレータ13A)の回路規模を低減することが可能となる。
【0058】
なお、計測装置10Aでは、出力信号b5と出力信号b6とが異なるタイミングで生成される。このため、入力信号a1及び入力信号a2の振幅が時間変動すると、出力信号b5と出力信号b6とが、互いに異なる振幅値の入力信号a1及び入力信号a2を基準として生成されることがある。この場合、位相の計測誤差が生じ得る。入力信号a1及び入力信号a2が安定している場合には、位相の計測誤差が抑えられる。
【0059】
(第3実施形態)
図5及び図6を参照しながら、第3実施形態に係る計測装置を説明する。図5は、第3実施形態に係る計測装置の概略構成図である。図6は、図5に示される可変利得部の構成例を示す図である。図5に示されるように、第3実施形態に係る計測装置10Bは、可変利得部14(第1可変利得部)を更に含む点において、計測装置10と主に相違する。
【0060】
可変利得部14は、入力信号a1の信号レベルを調整するための回路要素である。可変利得部14は、スイッチ11と入力端子13aとの間に設けられている。具体的には、端子11cに可変利得部14の入力端子14aが接続され、入力端子13aに可変利得部14の出力端子14bが接続されている。可変利得部14は、利得を変更可能に構成されている。本実施形態では、可変利得部14は、互いに異なる利得を有する複数のゲインパスを切り替えることにより、利得を変更する。
【0061】
図6に示されるように、可変利得部14は、ゲインパスGP1~GP3と、セレクタSL1,SL2と、を含む。ゲインパスGP1は、増幅器を含む。ゲインパスGP2は、配線を含む。ゲインパスGP3は、減衰器を含む。ゲインパスGP1~GP3は、互いに異なる利得を有する。ゲインパスGP2の利得は、1倍である。ゲインパスGP1,GP3の利得は、適宜設定される。
【0062】
セレクタSL1は、ゲインパスGP1~GP3のうち、入力端子14aと接続されるゲインパスを選択する回路要素である。セレクタSL2は、ゲインパスGP1~GP3のうち、出力端子14bと接続されるゲインパスを選択する回路要素である。セレクタSL1とセレクタSL2とは、同じゲインパスを選択するように、連動して動作する。セレクタSL1,SL2は、制御装置50によって制御される。
【0063】
なお、可変利得部14は、ゲインパスGP1~GP3のうち、いずれかのゲインパスを含んでいなくてもよい。可変利得部14は、互いに異なる利得を有する4つ以上のゲインパスを含んでもよい。ゲインパスGP1の増幅器は、可変増幅器であってもよく、ゲインパスGP3の減衰器は、可変減衰器であってもよい。
【0064】
次に、図7を更に参照しながら、計測装置10Bを含む計測システムにおける計測方法を説明する。図7は、図5に示される計測装置を含む計測システムにおける計測方法の一例を示すフローチャートである。図7に示されるように、計測装置10Bを含む計測システムにおける計測方法は、信号レベルを調整するステップ(ステップS9)を更に含む点において、計測システム1における計測方法と主に相違する。なお、計測装置10Bを含む計測システムは、計測装置10に代えて計測装置10Bを含む点において計測システム1と主に相違する。
【0065】
ステップS9では、制御装置50は、入力信号a1と入力信号a2との振幅比W(=a2/a1)に基づいて、入力信号a1の信号レベルを調整する。具体的には、制御装置50は、ステップS3において計測された出力信号b3の電力の計測値と出力信号b4の電力の計測値とから、振幅比Wを算出する。そして、制御装置50は、振幅比Wが所定範囲から外れている場合には、振幅比Wが1に近づくように可変利得部14の利得を設定する。例えば、振幅比Wが所定範囲の下限値よりも小さい場合(入力信号a1の信号レベルが入力信号a2の信号レベルよりも大きく、かつ、その差が所定値よりも大きい場合)には、制御装置50は、ゲインパスGP3を選択する。
【0066】
計測装置10Bにおいても、計測装置10と共通の構成については、計測装置10と同様の効果が奏される。さらに、計測装置10Bでは、以下の効果も奏される。
【0067】
位相コリレータ13では、入力信号a1と入力信号a2とに基づいて、出力信号b5及び出力信号b6が生成される。具体的には、入力信号a1から生成された位相信号a11と入力信号a2から生成された分割信号a21とが合成されることによって、出力信号b5が生成される。同様に、入力信号a1から生成された位相信号a12と入力信号a2から生成された分割信号a22とが合成されることによって、出力信号b6が生成される。このため、入力信号a1の信号レベルと入力信号a2の信号レベルとの差が大きいと、出力信号b5及び出力信号b6において信号レベルの大きい信号が支配的となる。その結果、入力信号a1と入力信号a2との位相差を正確に算出できなくなり、位相の計測精度が低下するおそれがある。上記構成によれば、入力信号a1の信号レベルが調整され得るので、入力信号a1の信号レベルと入力信号a2の信号レベルとの差を小さくすることができる。したがって、計測精度を向上させることが可能となる。
【0068】
(第4実施形態)
図8を参照しながら、第4実施形態に係る計測装置を説明する。図8は、第4実施形態に係る計測装置の概略構成図である。図8に示されるように、第4実施形態に係る計測装置10Cは、可変利得部15(第2可変利得部)を更に含む点において、計測装置10Bと主に相違する。
【0069】
可変利得部15は、入力信号a2の信号レベルを調整するための回路要素である。可変利得部15は、スイッチ12と入力端子13bとの間に設けられている。具体的には、端子12cに可変利得部15の入力端子15aが接続され、入力端子13bに可変利得部15の出力端子15bが接続されている。可変利得部15は、利得を変更可能に構成されている。本実施形態では、可変利得部15は、複数のゲインパスを切り替えることにより、利得を変更する。可変利得部15は、可変利得部14と同様の構成を有しているので、詳細な説明は省略する。
【0070】
次に、図7を更に参照しながら、計測装置10Cを含む計測システムにおける計測方法を説明する。計測装置10Cを含む計測システムにおける計測方法は、ステップS9における処理内容において、計測装置10Bを含む計測システムにおける計測方法と主に相違する。なお、計測装置10Cを含む計測システムは、計測装置10に代えて計測装置10Cを含む点において計測システム1と主に相違する。
【0071】
具体的に説明すると、制御装置50は、入力信号a1と入力信号a2との振幅比W(=a2/a1)に基づいて、入力信号a1及び入力信号a2の信号レベルを調整する。具体的には、制御装置50は、ステップS3において計測された出力信号b3の電力の計測値と出力信号b4の電力の計測値とから、振幅比Wを算出する。そして、制御装置50は、振幅比Wが所定範囲から外れている場合には、振幅比Wが1に近づくように可変利得部14及び可変利得部15の利得を設定する。
【0072】
例えば、振幅比Wが所定範囲の下限値よりも小さい場合(入力信号a1の信号レベルが入力信号a2の信号レベルよりも大きく、かつ、その差が所定値よりも大きい場合)には、制御装置50は、入力信号a2の信号レベルが閾値よりも大きいか否かを判定する。この閾値は、ノイズフロアに近いか否かを判定するための値であり、信号の信号レベルが閾値よりも小さい場合には当該信号はノイズフロアに近いと判定される。入力信号a2の信号レベルが閾値よりも大きい場合には、制御装置50は、入力信号a1を減衰させる。つまり、制御装置50は、可変利得部14のゲインパスとしてゲインパスGP3を選択し、可変利得部15のゲインパスとしてゲインパスGP2を選択する。一方、入力信号a2の信号レベルが閾値よりも小さい場合には入力信号a1を減衰するとノイズフロアに近づくので、制御装置50は、入力信号a2を増幅させる。つまり、制御装置50は、可変利得部14のゲインパスとしてゲインパスGP2を選択し、可変利得部15のゲインパスとしてゲインパスGP1を選択する。
【0073】
同様に、振幅比Wが所定範囲の上限値よりも小さい場合(入力信号a1の信号レベルが入力信号a2の信号レベルよりも小さく、かつ、その差が所定値よりも大きい場合)には、制御装置50は、入力信号a1の信号レベルが上記閾値よりも大きいか否かを判定する。入力信号a1の信号レベルが閾値よりも大きい場合には、制御装置50は、入力信号a2を減衰させる。つまり、制御装置50は、可変利得部14のゲインパスとしてゲインパスGP2を選択し、可変利得部15のゲインパスとしてゲインパスGP3を選択する。一方、入力信号a1の信号レベルが閾値よりも小さい場合には入力信号a2を減衰するとノイズフロアに近づくので、制御装置50は、入力信号a1を増幅させる。つまり、制御装置50は、可変利得部14のゲインパスとしてゲインパスGP1を選択し、可変利得部15のゲインパスとしてゲインパスGP2を選択する。
【0074】
計測装置10Cにおいても、計測装置10Bと共通の構成については、計測装置10Bと同様の効果が奏される。さらに、計測装置10Cでは、入力信号a1の信号レベルだけでなく、入力信号a2の信号レベルが更に調整され得るので、入力信号a1の信号レベルと入力信号a2の信号レベルとの差をより確実に小さくすることができる。したがって、計測精度を一層向上させることが可能となる。
【0075】
なお、本開示に係る計測装置及び計測システムは上記実施形態に限定されない。
【0076】
計測システム1は、フル2ポートでの計測を実施可能に構成されていなくてもよい。具体的には、計測システム1は、スイッチSW1~SW3及びカプラCP2~CP4を含んでいなくてもよい。発振器OCから出力された基準信号が、カプラCP1を介してポートP1とテストポートTP1とに供給され、テストポートTP2に入力された被測定信号がポートP2に供給されてもよい。
【0077】
計測装置10B,10Cは、位相コリレータ13に代えて位相コリレータ13Aを含んでもよい。
【0078】
可変利得部14は、可変減衰器であってもよい。可変利得部15は、可変減衰器であってもよい。
【0079】
可変利得部14は、ポートP1とスイッチ11との間に設けられてもよい。具体的には、ポートP1に可変利得部14の入力端子14aが接続され、端子11aに可変利得部14の出力端子14bが接続される。同様に、可変利得部15は、ポートP2とスイッチ12との間に設けられてもよい。具体的には、ポートP2に可変利得部15の入力端子15aが接続され、端子12aに可変利得部15の出力端子15bが接続される。
【実施例0080】
以下、実施例を用いて本開示を更に詳しく説明する。本開示はこれらの実施例に限定されない。
【0081】
実施例1,2及び比較例の計測装置を用いて、被測定物の振幅及び位相が計測された。比較例の計測装置としてはキーサイト・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザN5242Aが用いられた。実施例1の計測装置としては図2に示される計測装置10に相当する計測装置が用いられ、実施例2の計測装置としては図5に示される計測装置10Bに相当する計測装置が用いられた。実施例2の可変利得部14としては、ゲインパスGP2とゲインパスGP3とを含む可変利得部が用いられ、ゲインパスGP3の減衰器としては、20dBの減衰器が用いられた。被測定物としては、バンドパスフィルタが用いられた。
【0082】
実施例1の計測は、図3に示されるフローチャートに従い実施され、実施例2の計測は、図7に示されるフローチャートに従い実施された。開始周波数は8GHzに設定され、終了周波数は12GHzに設定され、単位周波数は0.01GHzに設定された。なお、比較例の計測装置は市販されているので、比較例の計測結果が被測定物の特性を示していると考えられる。図9の(a)、図9の(b)、図10の(a)及び図10の(b)に計測結果が示される。図9の(a)は、実施例1及び比較例の振幅計測結果を示す図である。図9の(b)は、実施例1及び比較例の位相計測結果を示す図である。図10の(a)は、実施例2及び比較例の振幅計測結果を示す図である。図10の(b)は、実施例2及び比較例の位相計測結果を示す図である。なお、各図には、重要な周波数帯である9.3GHz~10GHzのみ抜粋して示されている。
【0083】
図9の(a)、図9の(b)、図10の(a)及び図10の(b)に示されるように、実施例1,2の計測結果はいずれも比較例の計測結果をほぼ再現できることが確認された。さらに、位相計測結果においては、実施例1よりも実施例2の方が、比較例の計測結果に近づいていることが確認された。
【0084】
(付記)
[条項1]
第1入力信号と第2入力信号との振幅比及び位相差を計測する計測装置であって、
前記第1入力信号が入力される第1ポートと、
前記第2入力信号が入力される第2ポートと、
電力計測用の第3ポートと、
電力計測用の第4ポートと、
電力計測用の第5ポートと、
電力計測用の第6ポートと、
第1入力端子及び第2入力端子を有する位相コリレータと、
前記第1ポートを前記第3ポート及び前記第1入力端子のいずれかと選択的に接続する第1スイッチと、
前記第2ポートを前記第4ポート及び前記第2入力端子のいずれかと選択的に接続する第2スイッチと、
を備え、
前記位相コリレータは、前記第1入力信号と前記第2入力信号とに基づいて、前記位相差を計測するための第1出力信号及び第2出力信号を生成し、前記第1出力信号を前記第5ポートに出力するとともに、前記第2出力信号を前記第6ポートに出力する、計測装置。
【0085】
[条項2]
前記位相コリレータは、
前記第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、
前記第2入力信号の電力を分配することによって第1分割信号と第2分割信号とを生成する電力分配器と、
前記第1位相信号と前記第1分割信号とを合成することによって前記第1出力信号を生成する第1電力合成器と、
前記第2位相信号と前記第2分割信号とを合成することによって前記第2出力信号を生成する第2電力合成器と、
を備える、条項1に記載の計測装置。
【0086】
[条項3]
前記位相コリレータは、
前記第1入力信号から互いに位相が異なる第1位相信号及び第2位相信号を生成する位相差付き電力分配器と、
前記第1出力信号及び前記第2出力信号を生成する電力合成器と、
前記第1位相信号及び前記第2位相信号を選択的に前記電力合成器に出力する第3スイッチと、
を備え、
前記電力合成器は、前記第3スイッチから前記第1位相信号が出力されている場合には、前記第1位相信号と前記第2入力信号とを合成することによって前記第1出力信号を生成し、前記第3スイッチから前記第2位相信号が出力されている場合には、前記第2位相信号と前記第2入力信号とを合成することによって前記第2出力信号を生成する、条項1に記載の計測装置。
【0087】
[条項4]
前記第1入力信号の信号レベルを調整する第1可変利得部を更に備える、条項1~条項3のいずれか一項に記載の計測装置。
【0088】
[条項5]
前記第2入力信号の信号レベルを調整する第2可変利得部を更に備える、条項4に記載の計測装置。
【0089】
[条項6]
条項1~条項5のいずれか一項に記載の計測装置と、
前記計測装置から出力される信号の電力を計測する電力計測器と、
前記計測装置及び前記電力計測器を制御する制御装置と、
を備える計測システム。
【0090】
[条項7]
前記制御装置は、
前記第1スイッチに、前記第1ポートを前記第3ポートに接続させ、前記第2スイッチに、前記第2ポートを前記第4ポートに接続させた状態で、前記第3ポートから出力される前記第1入力信号の電力と前記第4ポートから出力される前記第2入力信号の電力とを前記電力計測器に計測させる振幅比計測処理と、
前記第1スイッチに、前記第1ポートを前記第1入力端子に接続させ、前記第2スイッチに、前記第2ポートを前記第2入力端子に接続させた状態で、前記第5ポートから出力される前記第1出力信号の電力と前記第6ポートから出力される前記第2出力信号の電力とを前記電力計測器に計測させる位相差計測処理と、
を実施する、条項6に記載の計測システム。
【0091】
[条項8]
基準信号を生成する発振器と、
被測定物の一方のポートに接続される第1テストポートと、
前記被測定物の他方のポートに接続される第2テストポートと、
計測モードを切り替え可能な切替部と、
を更に備え、
前記切替部は、前記基準信号を前記第1ポート及び前記第1テストポートに供給するとともに、前記第2テストポートに入力された被測定信号を前記第2ポートに供給する第1計測モードと、前記基準信号を前記第2ポート及び前記第2テストポートに供給するとともに、前記第1テストポートに入力された被測定信号を前記第1ポートに供給する第2計測モードとを切り替える、条項6又は条項7に記載の計測システム。
【符号の説明】
【0092】
1…計測システム、2…被測定物、2a…ポート(一方のポート)、2b…ポート(他方のポート)、10,10A,10B,10C…計測装置、11…スイッチ(第1スイッチ)、12…スイッチ(第2スイッチ)、13,13A…位相コリレータ、13a…入力端子(第1入力端子)、13b…入力端子(第2入力端子)、14…可変利得部(第1可変利得部)、15…可変利得部(第2可変利得部)、20…パワーセンサ(電力計測器)、31…位相差付き電力分配器、32…電力分配器、33…電力合成器(第1電力合成器)、34…電力合成器(第2電力合成器)、35…スイッチ(第3スイッチ)、36…電力合成器、50…制御装置、a1…入力信号(第1入力信号)、a2…入力信号(第2入力信号)、a11…位相信号(第1位相信号)、a12…位相信号(第2位相信号)、a21…分割信号(第1分割信号)、a22…分割信号(第2分割信号)、b3…出力信号、b4…出力信号、b5…出力信号(第1出力信号)、b6…出力信号(第2出力信号)、CP1~CP4…カプラ(切替部)、OC…発振器、P1…ポート(第1ポート)、P2…ポート(第2ポート)、P3…ポート(第3ポート)、P4…ポート(第4ポート)、P5…ポート(第5ポート)、P6…ポート(第6ポート)、SW1~SW3…スイッチ(切替部)、TP1…テストポート(第1テストポート)、TP2…テストポート(第2テストポート)。
図1
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図10