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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044585
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】メモリシステム
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/22 20060101AFI20240326BHJP
   H10B 51/20 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
G11C11/22 270
G11C11/22 120
H01L27/11597
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150204
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜井 貴将
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】船附 里英子
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FR06
5F083GA10
5F083JA37
5F083JA39
5F083JA60
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させる。
【解決手段】一実施形態のメモリシステムは、各々が複数のメモリセルトランジスタを含む複数のブロックを含む不揮発性メモリと、メモリコントローラと、を備える。メモリコントローラは、第1ブロックに対して第1閾値以上の回数連続して第1処理が実行される場合、第1ブロックに対して第2処理を実行するように構成される。第2処理で第1ブロック内の複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印可される電圧の極性は、第1処理で第1ブロック内の複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印加される電圧の極性と異なる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数のメモリセルトランジスタを含む複数のブロックを含む不揮発性メモリと、
メモリコントローラと、
を備え、
前記メモリコントローラは、第1ブロックに対して第1閾値以上の回数連続して第1処理が実行される場合、前記第1ブロックに対して第2処理を実行するように構成され、
前記第2処理で前記第1ブロック内の前記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印可される電圧の極性は、前記第1処理で前記第1ブロック内の前記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印加される電圧の極性と異なる、
メモリシステム。
【請求項2】
前記メモリコントローラは、前記第1ブロックに対して前記第1閾値より低い第2閾値以上の回数連続して前記第1処理が実行された後に、第2ブロックに対して前記第1処理を実行する場合、前記第1ブロックに対して前記第2処理を実行するように構成された、
請求項1記載のメモリシステム。
【請求項3】
前記第1処理を連続して実行することは、
読出し処理を連続して実行すること、書込み処理を連続して実行すること、又は消去処理を連続して実行すること
を含む、
請求項2記載のメモリシステム。
【請求項4】
前記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲートは、
ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)を含む強誘電体膜と、
前記強誘電体膜に接する絶縁体膜と、
を含む、
請求項2記載のメモリシステム。
【請求項5】
前記強誘電体膜は、直方晶の結晶構造を有する、
請求項4記載のメモリシステム。
【請求項6】
前記不揮発性メモリは、ビット線を更に含み、
前記複数のブロックの各々は、第1選択ゲート線、第2選択ゲート線、ワード線、並びに各々が前記ビット線に接続された第1メモリストリング及び第2メモリストリングを含み、
前記第1メモリストリングは、
前記第1選択ゲート線に接続されたゲートを有する第1選択トランジスタと、
前記第1選択トランジスタと直列接続され、かつ前記ワード線に接続されたゲートを有する第1メモリセルトランジスタと、
を含み、
前記第2メモリストリングは、
前記第2選択ゲート線に接続されたゲートを有する第2選択トランジスタと、
前記第2選択トランジスタと直列接続され、かつ前記ワード線に接続されたゲートを有する第2メモリセルトランジスタと、
を含む、
請求項2記載のメモリシステム。
【請求項7】
前記第1閾値は、前記第1メモリストリング内で前記第1選択ゲート線に直列接続されるメモリセルトランジスタの数以上である、
請求項6記載のメモリシステム。
【請求項8】
前記第2閾値は、前記第1メモリストリング内で前記第1選択ゲート線に直列接続されるメモリセルトランジスタの数の5%以上である、
請求項6記載のメモリシステム。
【請求項9】
各々が複数のメモリセルトランジスタを含む複数のブロックを含む不揮発性メモリと、
メモリコントローラと、
を備え、
前記メモリコントローラは、連続して2回の第1処理が実行される場合、第1ブロックに対して1回目の第1処理を実行し、第2ブロックに対して2回目の第1処理を実行するように構成される、
メモリシステム。
【請求項10】
前記第1処理を連続して実行することは、
読出し処理を連続して実行すること、書込み処理を連続して実行すること、又は消去処理を連続して実行すること
を含む、
請求項9記載のメモリシステム。
【請求項11】
前記メモリコントローラは、無効データが記憶されている又は消去済みのメモリセルトランジスタがない第3ブロックの数が第3閾値以上の場合、第3処理を実行するように構成された、
請求項9記載のメモリシステム。
【請求項12】
前記第3処理は、前記第3ブロックに記憶される有効データを、第4ブロックに移動させることを含む、
請求項11記載のメモリシステム。
【請求項13】
前記第3処理は、前記複数のブロックに記憶される有効データの量を平準化することを含む、
請求項11記載のメモリシステム。
【請求項14】
前記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲートは、
ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)を含む強誘電体膜と、
前記強誘電体膜に接する絶縁体膜と、
を含む、
請求項9記載のメモリシステム。
【請求項15】
前記強誘電体膜は、直方晶の結晶構造を有する、
請求項14記載のメモリシステム。
【請求項16】
前記不揮発性メモリは、ビット線を更に含み、
前記複数のブロックの各々は、第1選択ゲート線、第2選択ゲート線、ワード線、並びに各々が前記ビット線に接続された第1メモリストリング及び第2メモリストリングを含み、
前記第1メモリストリングは、
前記第1選択ゲート線に接続されたゲートを有する第1選択トランジスタと、
前記第1選択トランジスタと直列接続され、かつ前記ワード線に接続されたゲートを有する第1メモリセルトランジスタと、
を含み、
前記第2メモリストリングは、
前記第2選択ゲート線に接続されたゲートを有する第2選択トランジスタと、
前記第2選択トランジスタと直列接続され、かつ前記ワード線に接続されたゲートを有する第2メモリセルトランジスタと、
を含む、
請求項9記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、メモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリとしてのNANDフラッシュメモリと、不揮発性メモリを制御するメモリコントローラと、を含むメモリシステムが知られている。不揮発性メモリは、各々がFeFET(Ferroelectric Field Effect Transistor)により構成された複数のメモリセルを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-175020号公報
【特許文献2】特許第5587156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信頼性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のメモリシステムは、各々が複数のメモリセルトランジスタを含む複数のブロックを含む不揮発性メモリと、メモリコントローラと、を備える。上記メモリコントローラは、第1ブロックに対して第1閾値以上の回数連続して第1処理が実行される場合、上記第1ブロックに対して第2処理を実行するように構成される。上記第2処理で上記第1ブロック内の上記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印可される電圧の極性は、上記第1処理で上記第1ブロック内の上記複数のメモリセルトランジスタの各々のゲート-チャネル間に印加される電圧の極性と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る不揮発性メモリの構成の一例を示すブロック図。
図3】第1実施形態に係るメモリセルアレイの構成の一例を示す回路図。
図4】第1実施形態に係るメモリセルアレイの閾値電圧分布の一例を示す図。
図5】第1実施形態に係るメモリセルアレイの平面レイアウトの一例を示す平面図。
図6】第1実施形態に係るメモリセルアレイのメモリ領域における平面レイアウトの一例を示す平面図。
図7】第1実施形態に係るメモリセルアレイのメモリ領域における断面構造の一例を示す、図6のVII-VII線に沿った断面図。
図8】第1実施形態に係るメモリピラーの断面構造の一例を示す、図7のVIII-VIII線に沿った断面図。
図9】第1実施形態に係るメモリシステムにおける読出し処理でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
図10】第1実施形態に係るメモリシステムにおけるデトラップ処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第1例を示す図。
図11】第1実施形態に係るメモリシステムにおけるデトラップ処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第2例を示す図。
図12】第1実施形態に係るメモリシステムにおける読出し処理及びデトラップ処理を含む一連の処理の一例を示すフローチャート。
図13】第2実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図。
図14】第2実施形態に係るブロック管理情報のデータ構造の一例を示す図。
図15】第2実施形態に係るメモリシステムにおける書込み処理でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
図16】第2実施形態に係るメモリシステムにおける消去処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第1例を示す図。
図17】第2実施形態に係るメモリシステムにおける消去処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第2例を示す図。
図18】第2実施形態に係るメモリシステムにおける書換え処理の順番の一例を示す図。
図19】第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行可否を判定する処理の一例を示すフローチャート。
図20】第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行前での書換え処理の順番の一例を示す図。
図21】第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行後での書換え処理の順番の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。
【0008】
以下では、負値は、“-”を付して正値と区別される。値を示す符号に“-”が付されない場合、特に断らない限り、当該符号は正値である。
【0009】
1.第1実施形態
1.1 構成
1.1.1 情報処理システム
第1実施形態に係る情報処理システムの構成について説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理システム1は、ホスト2及びメモリシステム3を含む。
【0011】
ホスト2は、メモリシステム3を使用してデータを処理するデータ処理装置である。ホスト2は、例えば、パーソナルコンピュータ又はデータセンタ内のサーバである。
【0012】
メモリシステム3は、ホスト2に接続されるように構成された記憶装置である。メモリシステム3は、例えば、SDTMカードのようなメモリカード、UFS(Universal Flash Storage)、SSD(Solid State Drive)である。メモリシステム3は、ホスト2からの要求に応じてデータの書込み処理、読出し処理、消去処理を実行する。メモリシステム3は、内部処理として書込み処理、読出し処理、及び消去処理を実行してもよい。内部処理として実行される書込み処理、読出し処理、及び消去処理の例としては、例えば、コンパクション処理が挙げられる。
【0013】
1.1.2 メモリシステム
第1実施形態に係るメモリシステムの内部構成について説明する。
【0014】
メモリシステム3は、メモリコントローラ10、不揮発性メモリ20、及び揮発性メモリ30を含む。
【0015】
メモリコントローラ10は、例えばSoC(System-on-a-Chip)のような集積回路で構成される。メモリコントローラ10は、ホスト2からの要求に基づいて、不揮発性メモリ20を制御する。
【0016】
具体的には、例えば、メモリコントローラ10は、ホスト2からの書込み要求に基づいて、書込みデータを不揮発性メモリ20に書き込む。また、メモリコントローラ10は、ホスト2からの読出し要求に基づいて、読出しデータを不揮発性メモリ20から読み出す。そして、メモリコントローラ10は、読出しデータに基づくデータをホスト2に送信する。
【0017】
不揮発性メモリ20は、例えば、NANDフラッシュメモリである。不揮発性メモリ20は、不揮発にデータを記憶する。
【0018】
揮発性メモリ30は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。揮発性メモリ30には、例えば、不揮発性メモリ20からデータを読み出す際に用いられる読出し電圧に関する情報等が記憶される。
【0019】
1.1.3 メモリコントローラ
次に、引き続き図1を参照して、メモリコントローラ10の内部構成について説明する。メモリコントローラ10は、制御回路11、不揮発性メモリインタフェース(NVMI/F)12、ホストインタフェース(ホストI/F)13、揮発性メモリインタフェース(VMI/F)14、及びカウンタ15を含む。以下に説明されるメモリコントローラ10の機能は、専用ハードウェア、プログラムを実行するプロセッサ、又はこれらの組合せのいずれでも実現可能である。
【0020】
制御回路11は、メモリコントローラ10の全体を制御する回路である。制御回路11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。
【0021】
不揮発性メモリインタフェース12は、メモリコントローラ10と不揮発性メモリ20との間の通信を司るハードウェアインタフェースである。不揮発性メモリインタフェース12は、メモリバスBUSを介して不揮発性メモリ20と接続される。メモリバスBUSは、例えば、SDR(single data rate)インタフェース、トグルDDR(double data rate)インタフェース、又はONFI(Open NAND flash interface)に準拠する。
【0022】
ホストインタフェース13は、メモリコントローラ10とホスト2との間の通信を司るハードウェアインタフェースである。ホストインタフェース13は、ホストバスを介してホスト2と接続される。ホストバスは、例えば、SDTMインタフェース、SAS(Serial Attached SCSI (Small Computer System Interface))、SATA(Serial ATA (Advanced Technology Attachment))、又はPCIeTM(Peripheral Component Interconnect express)に準拠する。
【0023】
揮発性メモリインタフェース14は、メモリコントローラ10と揮発性メモリ30との間の通信を司るハードウェアインタフェースである。揮発性メモリ30とメモリコントローラ10との間を接続するバスは、例えば、DRAMインタフェース規格に準拠する。
【0024】
カウンタ15は、例えば、カウント値を記憶するメモリである。カウンタ15は、制御回路11の指示に基づき、カウント値をインクリメントさせる。カウンタ15は、制御回路11の指示に基づき、カウント値を0にリセットさせる。
【0025】
1.1.4 不揮発性メモリ
次に、実施形態に係るメモリデバイスの内部構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る不揮発性メモリの構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
不揮発性メモリ20は、入出力回路21、ロジック制御回路22、レジスタ23、シーケンサ24、電圧生成回路25、ドライバセット26、メモリセルアレイ27、ロウデコーダモジュール28、及びセンスアンプモジュール29を備える。
【0027】
入出力回路21及びロジック制御回路22は、メモリコントローラ10との間で、メモリバスBUSを介して各種信号を送受信する。入出力回路21が送受信する信号は、例えば、信号DQ<0>、DQ<1>、…、及びDQ<7>(信号DQ<7:0>)、並びにDQS及びDQSnを含む。ロジック制御回路22が送受信する信号は、例えば、信号CEn、CLE、ALE、WEn、RE及びREn、WPn、並びにRBnを含む。本明細書において、信号の名称の末尾のnは、その信号が“L(Low)”レベルの場合にアサートされることを意味する。
【0028】
信号DQ<7:0>は、8ビットの信号である。信号DQ<7:0>は、不揮発性メモリ20とメモリコントローラ10との間で送受信されるデータDATの実体である。メモリコントローラ10から不揮発性メモリ20に送信される信号DQ<7:0>には、例えば、書込みデータDAT、アドレスADD、及びコマンドCMDが含まれる。不揮発性メモリ20からメモリコントローラ10に送信される信号DQ<7:0>には、例えば、読出しデータDATが含まれる。
【0029】
信号DQS及びDQSnは、ストローブ信号である。信号DQSnは、信号DQSの反転信号である。
【0030】
信号CEnは、不揮発性メモリ20をイネーブルにするための信号である。
【0031】
信号CLE及びALEは、信号DQ<7:0>がそれぞれコマンドCMD及びアドレスADDであることを不揮発性メモリ20に通知する信号である。
【0032】
信号WEnは、信号DQ<7:0>を不揮発性メモリ20に取り込ませるための信号である。
【0033】
信号RE及びREnは、不揮発性メモリ20から信号DQ<7:0>を読み出すための信号である。
【0034】
信号WPnは、書込み処理及び消去処理の禁止を不揮発性メモリ20に指示するための信号である。
【0035】
信号RBnは、不揮発性メモリ20がレディ状態であるか、それともビジー状態であるかを示す信号である。レディ状態は、不揮発性メモリ20がメモリコントローラ10からの命令を受信出来る状態である。ビジー状態は、不揮発性メモリ20がメモリコントローラ10からの命令を受信出来ない状態である。信号RBnは、“L”レベルがビジー状態を示す。
【0036】
入出力回路21は、信号DQ<7:0>内のアドレスADD及びコマンドCMD、並びに書込みデータDATを、それぞれレジスタ23及びセンスアンプモジュール29に送信する。入出力回路21は、信号DQ<7:0>内の読出しデータDATを、センスアンプモジュール29から受信する。
【0037】
ロジック制御回路22は、メモリコントローラ10から信号CEn、CLE、ALE、WEn、RE及びREn、並びにWPnを受信する。ロジック制御回路22は、信号RBnをメモリコントローラ10に送信する。
【0038】
レジスタ23は、アドレスADD及びコマンドCMDを記憶する。アドレスADDは、例えば、カラムアドレス、ブロックアドレス、及びページアドレスを含む。
【0039】
シーケンサ24は、レジスタ23に記憶されたコマンドCMDに基づき、不揮発性メモリ20全体の動作を制御する。
【0040】
電圧生成回路25は、書込み処理、読出し処理、消去処理等で使用される電圧を生成する。
【0041】
ドライバセット26は、電圧生成回路25によって生成された電圧を、メモリセルアレイ27、ロウデコーダモジュール28、及びセンスアンプモジュール29に供給する。
【0042】
メモリセルアレイ27は、複数のブロックBLK、複数のビット線、及び複数のワード線を含む。図2の例では、メモリセルアレイ27がn個のブロックBLK0、…、及びBLK(n-1)を含む場合が示される(nは、2以上の整数)。ブロックBLKは、例えば、消去処理におけるデータDATの消去単位である。各ブロックBLKは、複数のメモリセルを含む。各メモリセルは、ビット線及びワード線の組に関連付けられる。
【0043】
ロウデコーダモジュール28は、レジスタ23内のブロックアドレスに基づいて、ブロックBLK0~BLK(n-1)のいずれかを選択する。ロウデコーダモジュール28は、レジスタ23内のページアドレスに基づいて、選択されたブロックBLKにおけるワード線を更に選択する。
【0044】
センスアンプモジュール29は、レジスタ23内のカラムアドレスに基づいて、ビット線を選択する。センスアンプモジュール29は、データの書込み処理において、選択されたビット線を介して、書込みデータDATをメモリセルアレイ27に転送する。センスアンプモジュール29は、データの読出し処理において、選択されたビット線を介して、メモリセルの閾値電圧をセンスする。そして、センスアンプモジュール29は、センス結果に基づいて、読出しデータDATを生成する。
【0045】
1.1.5 メモリセルアレイ
次に、メモリセルアレイ27の構成について説明する。
【0046】
<回路構成>
図3は、第1実施形態に係るメモリセルアレイの構成の一例を示す回路図である。図3では、2個のブロックBLK0及びBLK1の構成が示される。2個のブロックBLK0及びBLK1は、同等の構成を有する。なお、図3で図示が省略された(n-2)個のブロックBLKについても、ブロックBLK0及びBLK1と同等の構成を有する。
【0047】
ブロックBLK0及びBLK1の各々は、例えば、4個のストリングユニットSU0~SU3を含む。図3では、ブロックBLK0のストリングユニットSU2及びSU3、並びにブロックBLK1のストリングユニットSU1、SU2、及びSU3の構成は簡略化して示される。
【0048】
各ストリングユニットSUは、ビット線BL0、BL1、…、及びBL(m-1)にそれぞれ関連付けられた複数のNANDストリングNSを含む(mは、3以上の整数)。NANDストリングNSは、例えば、8個のメモリセルトランジスタMT0~MT7、並びに選択トランジスタST1及びST2を含む。
【0049】
メモリセルトランジスタMT0~MT7の各々は、FeFET(Ferroelectric Field Effect Transistor)である。選択トランジスタST1及びST2の各々は、各種処理時におけるストリングユニットSUの選択に使用される。選択トランジスタST1及びST2の各々は、FeFETであってもよい。
【0050】
各NANDストリングNSにおいて、メモリセルトランジスタMT0~MT7は、直列接続される。直列接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の一端と、関連付けられたビット線BLとの間には、選択トランジスタST1が接続される。直列接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の他端には、選択トランジスタST2のドレインが接続される。選択トランジスタST2のソースには、ソース線SLが接続される。
【0051】
同一のブロックBLKにおいて、ストリングユニットSU0~SU3に含まれる複数の選択トランジスタST1の各々のゲートは、選択ゲート線SGD0~SGD3にそれぞれ接続される。複数のメモリセルトランジスタMT0~MT7の各々の制御ゲートは、ワード線WL0~WL7にそれぞれ接続される。複数の選択トランジスタST2の各々のゲートは、選択ゲート線SGSに接続される。
【0052】
ビット線BL0~BL(m-1)は、複数のブロックBLK0~BLK3で共有される。同じカラムアドレスに対応するNANDストリングNSには、同じビット線BLが接続される。ワード線WL0~WL7は、ブロックBLK0~BLK3の各々に個別に設けられる。ソース線SLは、例えば、複数のブロックBLK0~BLK3で共有される。
【0053】
1個のストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、例えばセルユニットCUと称される。セルユニットCUは、例えば、書込み処理におけるデータの書込み単位である。セルユニットCUは、例えば、消去処理におけるデータの消去単位であってもよい。例えば、それぞれが1ビットデータを記憶するメモリセルトランジスタMTを含むセルユニットCUの記憶容量が、「1ページデータ」として定義される。つまり、1ページデータは、セルユニットCU内のメモリセルトランジスタMTの数に応じた列数を有する1ビットデータ列のデータ領域である。1ページデータは、例えば、読出し処理におけるデータの読出し単位である。セルユニットCUは、メモリセルトランジスタMTが記憶するビットデータ数に応じて2ページデータ以上の記憶容量を有し得る。
【0054】
なお、以上で説明したブロックBLKの回路構成はあくまで一例であり、これに限定されない。例えば、ビット線BLの本数は、3本以上に限らず、1本又は2本でもよい。不揮発性メモリ20に含まれるブロックBLKの個数は、任意の個数に設計され得る。各ブロックBLKが含むストリングユニットSUの個数は、任意の個数に設計され得る。各NANDストリングNSが含むメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の各々の個数は、それぞれ任意の個数に設計され得る。
【0055】
<閾値電圧分布>
以下では、1個のメモリセルトランジスタMTが1ビットデータを記憶することができる場合について説明する。メモリセルトランジスタMTに1ビットのデータを記憶させる書込みモードは、SLC(Single Level Cell)モードとも呼ばれる。
【0056】
図4は、第1実施形態に係る複数のメモリセルトランジスタの閾値電圧分布の一例を示す模式図である。メモリセルトランジスタMTが1ビットのデータを記憶する場合、その閾値電圧の分布は2個に分けられる。この2個の閾値電圧分布を、閾値電圧が高いものから順に“Er”状態(ステート)及び“A”状態と呼ぶ。
【0057】
図4に示される電圧Vvrfは、読出し処理の際に“Er”状態と“A”状態とを区別するために用いられる。電圧Vreadは、閾値電圧分布が“Er”状態であるか“A”状態であるかに関わらず、メモリセルトランジスタMTをオン状態にする電圧である。これらの電圧値の関係は、0<Vvrf<VREADである。電圧Vvrfは、負値であってもよい。
【0058】
上述した閾値電圧分布のうち“Er”状態は、メモリセルトランジスタMTの消去状態に相当する。“Er”状態における閾値電圧は、電圧Vvrf以上かつ電圧Vread未満である。“A”状態における閾値電圧は、電圧Vvrf未満である。
【0059】
<平面レイアウト>
以下に、第1実施形態に係るメモリセルアレイの平面レイアウトの一例について説明する。なお、以下で参照される図面において、XY平面は、不揮発性メモリ20の形成に使用される半導体基板の表面に対応する。X方向及びY方向は、XY平面内で交差する方向である。Z方向は、XY平面と交差する方向である。
【0060】
図5は、第1実施形態に係るメモリセルアレイの平面レイアウトの一例を示す平面図である。図5では、4個のブロックBLK0~BLK3に対応する領域が示される。
【0061】
Z方向に見て、メモリセルアレイ27は、例えば、X方向に並ぶ引出領域HA1、メモリ領域MA、及び引出領域HA2に分割される。また、メモリセルアレイ27は、複数の部材SLT及びSHEを含む。
【0062】
メモリ領域MAは、引出領域HA1と引出領域HA2との間に配置される。メモリ領域MAは、複数のNANDストリングNSを含む領域である。引出領域HA1及びHA2のそれぞれは、積層配線(例えば、ワード線WL0~WL7、並びに選択ゲート線SGD及びSGS)と、ロウデコーダモジュール28との間の接続に使用される領域である。
【0063】
複数の部材SLTは、各々がX方向に延び、Y方向に並ぶ。各部材SLTは、隣り合うブロックBLKの間の境界領域において、X方向にメモリ領域MA並びに引出領域HA1及びHA2を横切る。また、各部材SLTは、例えば、絶縁体や板状のコンタクトが埋め込まれた構造を有する。そして、各部材SLTは、当該部材SLTを介して隣り合う積層配線を分断する。
【0064】
複数の部材SHEは、各々がX方向に沿って延び、Y方向に並ぶ。本例では、4つの部材SHEが、隣り合う部材SLTの間のそれぞれに配置されている。各部材SHEは、X方向にメモリ領域MAを横切る。各部材SHEの両端はそれぞれ、引出領域HA1及びHA2に含まれる。また、各部材SHEは、例えば、絶縁体が埋め込まれた構造を有する。そして、各部材SHEは、当該部材SHEを介して隣り合う選択ゲート線SGDを分断する。
【0065】
以上で説明されたメモリセルアレイ27の平面レイアウトでは、部材SLTによって区切られた領域のそれぞれが、1個のブロックBLKに対応する。また、部材SLT及びSHEによって区切られた領域のそれぞれが、1個のストリングユニットSUに対応する。そして、メモリセルアレイ27には、例えば図5に示されたレイアウトが、Y方向に繰り返し配置される。
【0066】
尚、第1実施形態に係るメモリセルアレイ27の平面レイアウトは、以上で説明されたレイアウトに限定されない。例えば、隣り合う部材SLTの間に配置される部材SHEの数は、任意の数に設計され得る。隣り合う部材SLTの間に形成されるストリングユニットSUの個数は、隣り合う部材SLTの間に配置された部材SHEの数に基づいて変更され得る。
【0067】
図6は、第1実施形態に係るメモリセルアレイのメモリ領域における詳細な平面レイアウトの一例を示す平面図である。図6では、1個のブロックBLK(すなわち、ストリングユニットSU0~SU3)を含む領域と、当該ブロックを挟む2個の部材SLTが示される。図6に示すように、メモリ領域MAにおいてメモリセルアレイ27は、複数のメモリピラーMP、複数のコンタクトCV、及び複数のビット線BLを含む。また、各部材SLTは、コンタクトLI及びスペーサSPを含む。
【0068】
メモリピラーMPの各々は、例えば1個のNANDストリングNSとして機能する。複数のメモリピラーMPは、隣り合う2個の部材SLTの間の領域において、例えば19列の千鳥状に配置される。そして、例えば、紙面の上側から数えて、5列目のメモリピラーMPと、10列目のメモリピラーMPと、15列目のメモリピラーMPとのそれぞれに、1個の部材SHEが重なっている。
【0069】
複数のビット線BLは、それぞれがY方向に延び、X方向に並ぶ。各ビット線BLは、ストリングユニットSU毎に、少なくとも1個のメモリピラーMPと重なるように配置される。図6の例では、2本のビット線BLが、1個のメモリピラーMPと重なるように配置される場合が示される。メモリピラーMPと重なる複数のビット線BLのうち1本のビット線BLと、対応する1個のメモリピラーMPとの間は、コンタクトCVを介して電気的に接続される。
【0070】
例えば、部材SHEと接触しているメモリピラーMPと、ビット線BLとの間のコンタクトCVは、省略される。言い換えると、異なる2本の選択ゲート線SGDに接したメモリピラーMPとビット線BLとの間のコンタクトCVは、省略される。隣り合う部材SLT間におけるメモリピラーMPや部材SHE等の個数及び配置は、図6を用いて説明された構成に限定されず、適宜変更され得る。各メモリピラーMPと重なるビット線BLの数は、任意の数に設計され得る。
【0071】
コンタクトLIは、XZ平面内に広がる導電体である。スペーサSPは、コンタクトLIの側面に設けられた絶縁体である。言い換えると、コンタクトLIは、平面視においてスペーサSPに囲まれる。
【0072】
<断面構造>
図7は、第1実施形態に係るメモリセルアレイのメモリ領域における断面構造の一例を示す、図6のVII-VII線に沿った断面図である。図7に示すように、メモリセルアレイ27は、半導体基板50、導電体層51~55、及び絶縁体層60~65を更に含む。
【0073】
半導体基板50は、例えばP型の半導体である。半導体基板50の上面上に、絶縁体層60が設けられる。半導体基板50及び絶縁体層60は、図示せぬ回路を含む。半導体基板50及び絶縁体層60に含まれる回路は、ロウデコーダモジュール28やセンスアンプモジュール29等に対応する。絶縁体層60の上面上には、導電体層51が設けられる。
【0074】
導電体層51は、例えばXY平面に沿って広がる板状の導電体である。導電体層51は、ソース線SLとして使用される。導電体層51は、例えばリンがドープされたシリコンを含む。
【0075】
導電体層51の上面上には、絶縁体層61及び導電体層52がこの順に積層される。導電体層52は、例えばXY平面に沿って広がった板状に形成される。導電体層52は、選択ゲート線SGSとして使用される。導電体層52は、例えばタングステンを含む。絶縁体層61は、例えば酸化シリコンを含む。
【0076】
導電体層52の上面上には、絶縁体層62及び導電体層53がこの順に交互に積層される。導電体層53は、例えばXY平面に沿って広がった板状に形成される。積層された複数の導電体層53は、半導体基板50側から順に、それぞれワード線WL0~WL7として使用される。導電体層53は、例えばタングステンを含む。絶縁体層62は、例えば酸化シリコンを含む。
【0077】
最上層の導電体層53の上面上には、絶縁体層63及び導電体層54がこの順に積層される。導電体層54は、例えばXY平面に沿って広がった板状に形成される。導電体層54は、選択ゲート線SGDとして使用される。導電体層54は、例えばタングステンを含む。絶縁体層63は、例えば酸化シリコンを含む。
【0078】
導電体層54の上面上には、絶縁体層64及び導電体層55がこの順に積層される。導電体層55は、例えばY方向に延びるライン状に形成され、ビット線BLとして使用される。つまり、図示せぬ領域において、複数の導電体層55が、X方向に並ぶ。導電体層55は、例えば銅を含む。絶縁体層64は、例えば酸化シリコンを含む。
【0079】
導電体層55の上面上には、絶縁体層65が設けられる。絶縁体層65は、例えば酸化シリコンを含む。
【0080】
各メモリピラーMPは、例えばコア膜70、半導体膜71、及び積層膜72を含む。コア膜70は、Z方向に延びる。例えば、コア膜70の上端は、導電体層54よりも上層に位置し、コア膜70の下端は、導電体層51と同層に位置する。半導体膜71は、コア膜70の周囲を覆う。半導体膜71の底部は、導電体層51に接する。積層膜72は、半導体膜71と導電体層51とが接触した部分を除いて、半導体膜71の側面及び底面を覆う。コア膜70は、例えば酸化シリコン等の絶縁体を含む。半導体膜71は、例えばシリコンを含む。
【0081】
メモリピラーMPと導電体層52とが交差した部分が、選択トランジスタST2として機能する。メモリピラーMPと1個の導電体層53とが交差した部分が、1個のメモリセルトランジスタMTとして機能する。メモリピラーMPと導電体層54とが交差した部分が、選択トランジスタST1として機能する。
【0082】
メモリピラーMP内の半導体膜71の上面には、柱状のコンタクトCVが設けられる。図示された領域には、部材SLT及びSHEによって区切られた断面領域のそれぞれにおいて2個のメモリピラーMPのうち、1個のメモリピラーMPにそれぞれ対応する1個のコンタクトCVが表示される。メモリ領域MAにおいて、部材SHEと重ならず、かつコンタクトCVが接続されていないメモリピラーMPには、図示されない領域において、対応するコンタクトCVが接続される。
【0083】
コンタクトCVの上面には、1個の導電体層55、すなわち1本のビット線BLが接する。1個の導電体層55は、部材SLT及びSHEによって区切られた空間のそれぞれにおいて、1個のコンタクトCVと接する。つまり、導電体層55の各々には、隣り合う部材SLT及びSHEの間に設けられたメモリピラーMPと、隣り合う2個の部材SHEの間に設けられたメモリピラーMPとが電気的に接続される。
【0084】
部材SLTは、導電体層52、53、及び54を分離する。部材SLT内のコンタクトLIは、スペーサSPに沿って設けられる。コンタクトLIの上端は、導電体層54と導電体層55との間の層に位置する。コンタクトLIの下端は、導電体層51と接する。スペーサSPは、コンタクトLIと導電体層52、53、及び54との間に設けられる。コンタクトLIと、導電体層52、53、及び54との間は、スペーサSPによって離隔及び絶縁される。
【0085】
部材SHEは、導電体層54を分離する。部材SHEの上端は、導電体層54と導電体層55との間の層に位置する。部材SHEの下端は、最上層の導電体層53と導電体層54との間の層に位置する。部材SHEは、例えば酸化シリコン等の絶縁体を含む。部材SHEの上端と部材SLTの上端とは、揃っていても良いし、揃っていなくても良い。また、部材SHEの上端とメモリピラーMPの上端とは、揃っていても良いし、揃っていなくても良い。また、導電体層52、53、及び54の各々は、任意の数を取り得る。例えば、導電体層54が複数設けられる場合、部材SHEの下端は、最上層の導電体層53と最下層の導電体層54との間に位置する。すなわち、部材SHEの下端は、導電体層54の数に応じて深くなる。
【0086】
図8は、第1実施形態に係るメモリピラーの断面構造の一例を示す、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。より具体的には、図8は、XY平面に平行且つ導電体層53を含む層におけるメモリピラーMPの断面構造を示す。図8に示すように、積層膜72は、例えば絶縁体膜73及び強誘電体膜74を含む。
【0087】
導電体層53を含む断面において、コア膜70は、例えばメモリピラーMPの中央部に設けられる。半導体膜71は、コア膜70の側面を囲む。絶縁体膜73は、半導体膜71の側面を囲む。強誘電体膜74は、絶縁体膜73の側面を囲む。導電体層53は、強誘電体膜74の側面を囲む。
【0088】
絶縁体膜73は、例えば、酸化シリコンを含む。強誘電体膜74は、例えば、主成分となる元素としてハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)を含む酸化物である。強誘電体膜74は、例えば、直方晶の結晶構造を有する。
【0089】
強誘電体膜74は、ブロック絶縁膜として機能すると共に、導電体層53に印加される電圧の大きさに応じて電気分極の向きを反転させ得る機能を有する。強誘電体膜74の電気分極の向きが反転すると、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化する。これによって、メモリセルトランジスタMTは、データ“1”及びデータ“0”のいずれか一方を記憶することができる。このため、メモリセルトランジスタMTは、FeFETとして機能し得る。
【0090】
半導体膜71は、メモリセルトランジスタMT0~MT7並びに選択トランジスタST1及びST2のチャネル(電流経路)として使用される。以上のような構成により、各メモリピラーMPは、1個のNANDストリングNSとして機能し得る。
【0091】
1.2 動作
次に、第1実施形態に係るメモリシステムにおける動作について説明する。
【0092】
1.2.1 読出し処理
図9は、第1実施形態に係るメモリシステムにおける読出し処理でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。図9では、読出し対象のブロックBLKのうち、ストリングユニットSU0~SU3の各々のNANDストリングNSが1個ずつ示される。図9では、読出し処理の際に読出し対象のブロックBLKに接続されるビット線BL、選択ゲート線SGD0~SGD3、及びSGS、並びにワード線WL0~WL7に印加される電圧が示される。
【0093】
また、図9では、ストリングユニットSU0のワード線WL3に接続されるセルユニットCUのメモリ領域である1ページデータが読出し対象である場合に印加される電圧が示される。すなわち、以下の説明では、選択ワード線WLとは、ワード線WL3を指す。非選択ワード線WLとは、ワード線WL0~WL2及びWL4~WL7を指す。選択ストリングユニットSUとは、ストリングユニットSU0を指す。非選択ストリングユニットSUとは、ストリングユニットSU1~SU3を指す。選択メモリセルMTとは、選択ストリングユニットSU内のセルユニットCUのうち、ワード線WL3に接続されるセルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTを指す。非選択メモリセルMTとは、選択メモリセルMTを除く全てのメモリセルトランジスタMTを指す。
【0094】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0及びSGSに電圧Vsgを印加する。電圧Vsgは、選択トランジスタST1及びST2をオン状態にする電圧である。ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD1~SGD3に電圧VSSを印加する。電圧VSSは、例えば、0Vである。ロウデコーダモジュール28は、非選択ワード線WLに電圧Vreadを印加する。電圧Vreadは、例えば、3Vである。ロウデコーダモジュール28は、選択ワード線WLに電圧Vvrfを印加する。
【0095】
これにより、非選択ストリングユニットSUの全てのNANDストリングNSは、ビット線BLから電気的に絶縁される。一方、選択ストリングユニットSUの全てのNANDストリングNSは、ビット線BLと電気的に接続される。
【0096】
センスアンプモジュール29は、ビット線BLに電圧VBLを印加する。これにより、選択メモリセルMTがオン状態の場合、選択メモリセルMTを含むNANDストリングNSには、有意な大きさの読出し電流が流れる。選択メモリセルMTがオフ状態の場合、選択メモリセルMTを含むNANDストリングNSには、有意な大きさの読出し電流が流れない。センスアンプモジュール29は、読出し電流の大きさに基づいて選択メモリセルMTの閾値電圧をセンスする。そして、センスアンプモジュール29は、センス結果に基づき、選択メモリセルMTに記憶されるデータを判定する。
【0097】
上述のような読出し処理において、選択ストリングユニットSUであるか非選択ストリングユニットSUであるかに関わらず、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTには、電圧Vreadが印加される。これにより、非選択メモリセルMTのうち、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTでは、絶縁体膜73と強誘電体膜74との界面に電荷が充電され得る。絶縁体膜73と強誘電体膜74との界面への電荷の充電が蓄積すると、消去済みのメモリセルトランジスタMTに対する電極反転と同等の効果が生じ得る。このため、読出し処理において、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTには、意図しない閾値電圧の低下、すなわち、意図しないデータの書込みが発生し得る。このような読出し処理における意図しないデータの書込みは、「リードディスターブ」とも呼ばれる。
【0098】
1.2.2 デトラップ処理
リードディスターブによって閾値電圧が低下したメモリセルトランジスタMTからは、誤ったデータが読み出される可能性があるため、好ましくない。そこで、第1実施形態では、絶縁体膜73と強誘電体膜74との界面に充電された電荷を放電させるデトラップ処理が実行される。デトラップ処理では、メモリセルトランジスタMTのゲート-チャネル間に、読出し処理と逆の極性の電圧が印加される。
【0099】
図10は、第1実施形態に係るメモリシステムにおけるデトラップ処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第1例を示す図である。図11は、第1実施形態に係るメモリシステムにおけるデトラップ処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第2例を示す図である。第1例は、各種配線に正の電圧が印加される場合に対応する。第2例は、各種配線に負の電圧が印加される場合に対応する。
【0100】
図10及び図11では、デトラップ対象のブロックBLKのうち、ストリングユニットSU0~SU3の各々のNANDストリングNSが1個ずつ示される。図10及び図11では、デトラップ対象のブロックBLKに接続されるビット線BL、選択ゲート線SGD0~SGD3、及びSGS、並びにワード線WL0~WL7に印加される電圧が示される。図10及び図11では、ブロックBLK内の全てのメモリセルトランジスタMTがデトラップ対象である場合に印加される電圧が示される。
【0101】
<第1例>
まず、図10を参照してデトラップ処理の第1例について説明する。
【0102】
センスアンプモジュール29は、ビット線BLに電圧Vdtpを印加する。電圧Vdtpは、例えば、3V程度である。
【0103】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0~SGD3に電圧VSSを印加する。これにより、デトラップ対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT1は、オン状態となる。
【0104】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGSに電圧Vsgsを印加する。これにより、デトラップ対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT2は、オフ状態となる。
【0105】
ロウデコーダモジュール28は、ワード線WL0~WL7に電圧VSSを印加する。これにより、メモリセルトランジスタMTのゲートに対してチャネル側の電位を高くすることができる。このため、メモリセルトランジスタMTの絶縁体膜73と強誘電体膜74との界面に充電された電荷をチャネル側に放電させることができる。
【0106】
<第2例>
次に、図11を参照してデトラップ処理の第2例について説明する。
【0107】
センスアンプモジュール29は、ビット線BLに電圧VSSを印加する。
【0108】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0~SGD3に電圧-Vsgdを印加する。これにより、デトラップ対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT1は、オン状態となる。
【0109】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGSに電圧-Vsgsを印加する。これにより、デトラップ対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT2は、オフ状態となる。
【0110】
ロウデコーダモジュール28は、ワード線WL0~WL7に電圧-Vdtpを印加する。これにより、メモリセルトランジスタMTのゲートに対してチャネル側の電位を高くすることができる。このため、メモリセルトランジスタMTの絶縁体膜73と強誘電体膜74との界面に充電された電荷をチャネル側に放電させることができる。
【0111】
1.2.3 読出し処理及びデトラップ処理を含む一連の処理
次に、読出し処理及びデトラップ処理を含む一連の処理について説明する。
【0112】
図12は、第1実施形態に係るメモリシステムにおける読出し処理及びデトラップ処理を含む一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【0113】
読出し条件が満たされると(開始)、メモリコントローラ10は、読出し対象のブロックBLKが直前の読出し処理における読出し対象のブロックBLKと一致するか否かを判定する(S11)。
【0114】
読出し条件が満たされることは、メモリコントローラ10が内部処理において実行する読出し処理の開始条件が満たされることを含む。また、読出し条件が満たされることは,メモリコントローラ10がホスト2からリード要求を受けることを含んでもよい。
【0115】
読出し対象のブロックBLKが直前の読出し処理における読出し対象のブロックBLKと一致する場合(S11;yes)、メモリコントローラ10は、カウンタ15のカウント値をインクリメントする(S12)。
【0116】
メモリコントローラ10は、カウンタ15のカウント値が第1閾値以上であるか否かを判定する(S13)。
【0117】
第1閾値は、例えば、ブロックBLK内のワード線WLの本数以上の数である。第1閾値は、ブロックBLK内のワード線WLの本数未満でもよい。
【0118】
カウンタ15のカウント値が第1閾値以上である場合(S13;yes)、メモリコントローラ10は、不揮発性メモリ20に、読出し対象のブロックBLKへのデトラップ処理を実行させる(S14)。
【0119】
S14のデトラップ処理の後、又はカウンタ15のカウント値が第1閾値未満である場合(S13;no)、メモリコントローラ10は、不揮発性メモリ20に、読出し対象のブロックBLKからの読出し処理を実行させる(S15)。
【0120】
読出し対象のブロックBLKが直前の読出し処理における読出し対象のブロックBLKと異なる場合(S11;no)、メモリコントローラ10は、カウンタ15のカウント値が第2閾値以上であるか否かを判定する(S16)。
【0121】
第2閾値は、第1閾値より低い数である。第2閾値は、例えば、ブロックBLK内のワード線WLの本数の5%以上の数でもよい。
【0122】
カウンタ15のカウント値が第2閾値以上である場合(S16;yes)、メモリコントローラ10は、不揮発性メモリ20に、読出し対象のブロックBLKへのデトラップ処理を実行させる(S17)。S17のデトラップ処理は、S14のデトラップ処理と同等の処理である。
【0123】
S17のデトラップ処理の後、又はカウンタ15のカウント値が第2閾値未満の場合(S17;no)、メモリコントローラ10は、カウンタ15のカウント値をリセットさせる(S18)。
【0124】
S18の処理の後、メモリコントローラ10は、不揮発性メモリ20に、読出し対象のブロックBLKからの読出し処理を実行させる(S15)。
【0125】
S15の読出し処理の後、読出し処理及びデトラップ処理を含む一連の処理は終了となる(終了)。
【0126】
1.3 第1実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、不揮発性メモリ20の信頼性の劣化を抑制できる。本効果について、以下に説明する。
【0127】
強誘電体膜74を含むメモリセルトランジスタMTであるFeFETは、電荷蓄積膜を含むメモリセルトランジスタと比較して、低電圧で高速な書込み処理及び消去処理を実行し得る反面、誤書込み及び誤消去が起こりやすい。例えば、FeFETでは、読出し処理において、非選択メモリセルMTのうち、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのゲート-チャネル間に3V程度(Vread)の電位差が印加されることにより、リードディスターブが発生し得る。リードディスターブの度合いは、読出し処理が同一のブロックBLKに連続して実行されることにより大きくなる。
【0128】
第1実施形態によれば、メモリコントローラ10は、同一の或るブロックBLKに対して連続して実行される読出し処理の数が第1閾値以上の場合、当該或るブロックBLKに対してデトラップ処理を実行する。これにより、連続して実行される読出し処理によってメモリセルトランジスタMTの強誘電体膜74と絶縁体膜73との界面に充電された電荷を放電させることができる。このため、リードディスターブの発生を抑制できる。
【0129】
また、メモリコントローラ10は、同一の或るブロックBLKに対して第2閾値以上の読出し処理が連続して実行された後に、他のブロックに対して読出し処理が実行される場合、当該或るブロックBLKに対してデトラップ処理を実行する。これにより、連続して実行される読出し処理によってメモリセルトランジスタMTの強誘電体膜74と絶縁体膜73との界面に充電された電荷を放電させることができる。このため、リードディスターブの発生を抑制できる。
【0130】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係るメモリシステムについて説明する。第2実施形態は、書込み処理及び消去処理の際に発生するディスターブを緩和する点において、第1実施形態と異なる。以下の説明では、第1実施形態と同等の構成及び動作については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0131】
2.1 メモリシステム
図13は、第2実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。図13は、第1実施形態における図1に対応する。図13におけるホスト2、メモリコントローラ10、及び不揮発性メモリ20の構成は、図1の場合と同等である。
【0132】
揮発性メモリ30は、ブロック管理情報31を記憶する。ブロック管理情報31は、不揮発性メモリ20内のブロックBLKの使用状況(メモリ領域に占める有効データの割合)を管理するための情報である。
【0133】
図14は、第2実施形態に係るブロック管理情報のデータ構造の一例を示す図である。
【0134】
ブロック管理情報31には、ブロックBLK毎に、有効データが記憶されていないセルユニットCUの数が、書換え可能セルユニット数として記憶される。有効データが記憶されていないセルユニットCUには、無効データが記憶されている、又はデータが記憶されていない。有効データとは、論理アドレスに紐付けられたデータである。無効データとは、論理アドレスに紐付けられていない(消去可能な)データである。
【0135】
なお、本明細書では、データを“書き換える”とは、有効データが記憶されていないメモリ領域に、新たな有効データを書き込むことを意味する。すなわち、書換え処理を実行することには、消去済みのメモリ領域に書込み処理を実行すること、及び無効データが記憶されているメモリ領域に消去処理を実行した後に、書込み領域を更に実行すること、のいずれもが含まれる。
【0136】
図14の例では、ブロックBLK0の書換え可能セルユニット数が“0”であり、…、ブロックBLK(n-1)の書換え可能セルユニット数が“32”である場合が示される。図14の例によれば、ブロック管理情報31を参照することにより、メモリコントローラ10は、ブロックBLK0には更なる有効データを書き込めないことを把握できる。また、メモリコントローラ10は、ブロックBLK(n-1)内の全てのページに有効データを書き込めることを把握できる。
【0137】
2.2 書換え処理
第2実施形態に係るメモリシステムにおける書換え処理について説明する。
【0138】
2.2.1 書込み処理
図15は、第2実施形態に係るメモリシステムにおける書込み処理でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。図15では、書込み対象のブロックBLKのうち、ストリングユニットSU0~SU3の各々のNANDストリングNSが1個ずつ示される。図15では、書込み処理の際に書込み対象のブロックBLKに接続されるビット線BL、選択ゲート線SGD0~SGD3、及びSGS、並びにワード線WL0~WL7に印加される電圧が示される。図15では、ストリングユニットSU0のワード線WL3に接続されるセルユニットCUが書込み対象である場合に印加される電圧が示される。
【0139】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0及びSGSに電圧Vsgを印加する。なお、書込み処理における電圧Vsgは、読出し処理における電圧Vsgとは異なっていてもよい。
【0140】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD1~SGD3に電圧VSSを印加する。
【0141】
センスアンプモジュール29は、データ“0”を書き込むメモリセルトランジスタMTに接続されるビット線BLに電圧VSSを印加する。センスアンプモジュール29は、データ“1”を書き込むメモリセルトランジスタMTに接続されるビット線BLに電圧VSSより高い電圧を印加する。
【0142】
以上のような電圧を印加することにより、非選択ストリングユニットSUのNANDストリングNSは、ビット線BLから電気的に絶縁される。選択ストリングユニットSUのうち、データ“0”を書き込むメモリセルトランジスタMTを含むNANDストリングNSは、ビット線BLと電気的に接続される。選択ストリングユニットSUのうち、データ“1”を書き込むメモリセルトランジスタMTを含むNANDストリングNSは、ビット線BLから電気的に絶縁される。
【0143】
ロウデコーダモジュール28は、選択ワード線WLに電圧Vpgmを印加する。電圧Vpgmは、例えば、7~8V程度である。
【0144】
ロウデコーダモジュール28は、非選択ワード線WLに電圧Vpassを印加する。電圧Vpassは、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧の高さによらず、メモリセルトランジスタMTをオン状態にする電圧である。電圧Vpassは、電圧Vpgmより低い。電圧Vpassは、例えば、3Vである。これにより、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対してVpass程度低くなる。
【0145】
なお、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSは、フローティング状態である。これにより、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSのチャネルの電位は、ワード線WLの多くを占める非選択ワード線WLの電圧Vpass程度にカップリングする。このため、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対して(Vpgm-Vpass)程度低くなる。
【0146】
このように、書込み処理では、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、のチャネルの電位は、ゲートに対して3V~5V程度低くなる。このため、書込み処理では、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTに対して、意図しないデータの書込みが発生し得る。このような書込み処理における意図しないデータの書込みは、「プログラムディスターブ」とも呼ばれる。
【0147】
2.2.2 消去処理
図16は、第2実施形態に係るメモリシステムにおける消去処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第1例を示す図である。図17は、第2実施形態に係るメモリシステムにおける消去処理でメモリセルアレイに印加される電圧の第2例を示す図である。第1例は、正の電圧が印加される場合に対応する。第2例は、負の電圧が印加される場合に対応する。
【0148】
図16及び図17では、消去対象のブロックBLKのうち、ストリングユニットSU0~SU3の各々のNANDストリングNSが1個ずつ示される。図16及び図17では、消去対象のブロックBLKに接続されるビット線BL、選択ゲート線SGD0~SGD3、及びSGS、並びにワード線WL0~WL7に印加される電圧が示される。図16及び図17では、ブロックBLK内のワード線WL3に接続されたセルユニットCUが消去対象である場合に印加される電圧が示される。
【0149】
<第1例>
まず、図16を参照して消去処理の第1例について説明する。
【0150】
センスアンプモジュール29は、ビット線BLに電圧Veraを印加する。電圧Veraは、例えば、7~8V程度である。
【0151】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0に電圧VSSを印加する。これにより、選択ストリングユニットSUの選択トランジスタT1は、オン状態となる。
【0152】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD1~SGD3に電圧Vsgdを印加する。これにより、非選択ストリングユニットSUの選択トランジスタT1は、オフ状態となる。なお、消去処理の第2例における電圧Vsgdは、デトラップ処理の第2例における電圧Vsgdとは異なっていてもよい。
【0153】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGSに電圧Vsgsを印加する。これにより、消去対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT2は、オフ状態となる。なお、消去処理の第2例における電圧Vsgsは、デトラップ処理の第2例における電圧Vsgsとは異なっていてもよい。
【0154】
ロウデコーダモジュール28は、選択ワード線WLに電圧VSSを印加する。これにより、選択メモリセルMTに書き込まれたデータが消去される。
【0155】
ロウデコーダモジュール28は、非選択ワード線WLに電圧Vpassを印加する。これにより、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対して(Vera-Vpass)程度高くなる。
【0156】
なお、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSは、フローティング状態である。これにより、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSのチャネルの電位は、大多数のワード線WLである非選択ワード線WLの電圧Vpass程度にカップリングする。このため、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対してVpass程度高くなる。
【0157】
<第2例>
次に、図17を参照して消去処理の第2例について説明する。
【0158】
センスアンプモジュール29は、ビット線BLに電圧VSSを印加する。
【0159】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD0に電圧-Vsgdを印加する。これにより、選択ストリングユニットSUの選択トランジスタT1は、オン状態となる。なお、消去処理の第1例における電圧-Vsgdは、デトラップ処理の第1例における電圧-Vsgdとは異なっていてもよい。
【0160】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGD1~SGD3に電圧VSSを印加する。これにより、非選択ストリングユニットSUの選択トランジスタT1は、オフ状態となる。
【0161】
ロウデコーダモジュール28は、選択ゲート線SGSに電圧-Vsgsを印加する。これにより、消去対象のブロックBLKの全ての選択トランジスタT2は、オフ状態となる。なお、消去処理の第1例における電圧-Vsgsは、デトラップ処理の第1例における電圧-Vsgsとは異なっていてもよい。
【0162】
ロウデコーダモジュール28は、選択ワード線WLに電圧-Veraを印加する。これにより、選択メモリセルMTに書き込まれたデータが消去される。
【0163】
ロウデコーダモジュール28は、非選択ワード線WLに電圧-Vpassを印加する。これにより、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対してVpass程度高くなる。
【0164】
なお、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSは、フローティング状態である。これにより、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSのチャネルの電位は、大多数のワード線WLである非選択ワード線WLの電圧-Vpass程度にカップリングする。このため、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち、選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルの電位は、ゲートに対して(Vera-Vpass)程度高くなる。
【0165】
このように、消去処理では、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、のチャネルの電位は、ゲートに対して3V程度高くなる。このため、消去処理では、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTと、非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTに対して、意図しないデータの消去が発生し得る。このような消去処理における意図しないデータの消去は、「イレースディスターブ」とも呼ばれる。
【0166】
2.2.3 書換え処理の順番
書換え処理では、上述した書込み処理、又は消去処理及び書込み処理の組が実行される。以下では、書換え処理の順番について説明する。
【0167】
図18は、第2実施形態に係るメモリシステムにおける書換え処理の順番の一例を示す図である。図18では、メモリセルアレイ27内の32n個のセルユニットCUに対して実行される書換え処理の順番の一例が示される。なお、図18では、メモリセルアレイ27内の全てのブロックBLKについて、全てのセルユニットCUが書換え可能である場合が示される。
【0168】
メモリコントローラ10は、第1~第n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU0及びワード線WL0の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0169】
メモリコントローラ10は、第(n+1)~第2n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU1及びワード線WL0の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0170】
メモリコントローラ10は、第(2n+1)~第3n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU2及びワード線WL0の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0171】
メモリコントローラ10は、第(3n+1)~第4n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU3及びワード線WL0の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0172】
メモリコントローラ10は、第(4n+1)~第5n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU0及びワード線WL1の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0173】
最終的に、メモリコントローラ10は、第(31n+1)~第32n番目の書換え処理では、ブロックBLK0~BLKnのストリングユニットSU3及びワード線WL7の組に対応づけられるセルユニットCUを順に選択する。
【0174】
第32n番目の書換え処理が終わると、メモリコントローラ10は、再び第1番目の書換え処理から順に書換え処理を実行する。
【0175】
なお、k番目に対応するセルユニットCUが書換え可能でない場合、メモリコントローラ10は、k番目の書換え処理を、k番目に対応するセルユニットCUと同じブロックBLK内の他のセルユニットCU(例えば、(k+n)番目に対応するセルユニットCU)に対して実行してもよい。
【0176】
このように、メモリコントローラ10は、或るブロックBLKの1個のセルユニットCUに対して書換え処理が実行されると、当該或るブロックBLKとは異なるブロックBLKの1個のセルユニットCUに対して、次の書換え処理を実行する。
【0177】
また、メモリコントローラ10は、或るブロックBLKに対する2回の書換え処理の間に、できるだけ多くの書換え処理が実行されるように、セルユニットCUを選択する。具体的には、ブロックBLK0に対する2回の書換え処理の間に、ブロックBLK1~BLK(n-1)に対する書換え処理が1回ずつ実行されるように、セルユニットCUを選択する。
【0178】
2.3 コンパクション処理
次に、第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理について説明する。コンパクション処理は、有効データが記憶されるメモリ領域を再割当てすることによって、メモリセルアレイ27の信頼性の劣化を抑制する処理である。
【0179】
図19は、第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行可否を判定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0180】
判定開始条件が満たされると(開始)、メモリコントローラ10は、ブロック管理情報31を参照することにより、書換え可能セルユニット数が0となるブロックBLKの数が第3閾値以上であるか否かを判定する(S21)。
【0181】
判定開始条件は、例えば、直前に実行された判定処理から所定の期間が経過したことであってもよい。判定開始条件は、例えば、所定の数の書込み処理が実行されることでもよい。
【0182】
第3閾値は、例えば、1以上(n-1)以下の整数である。
【0183】
書換え可能セルユニット数が0となるブロックBLKの数が第3閾値以上である場合(S21;yes)、メモリコントローラ10は、不揮発性メモリ20に対するコンパクション処理を実行する(S22)。
【0184】
S22の処理の後、又は書換え可能セルユニット数が0となるブロックBLKの数が第3閾値未満である場合(S21;no)、判定処理は終了となる(終了)。
【0185】
図20は、第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行前での書換え処理の順番の一例を示す図である。図21は、第2実施形態に係るメモリシステムにおけるコンパクション処理の実行後での書換え処理の順番の一例を示す図である。図20及び図21では、書換え不可の(すなわち、有効データが記憶されている)セルユニットCUがハッチングされる。
【0186】
図20に示されるように、コンパクション処理の実行前において、ブロックBLK0、BLK2、及びBLK3を含む第3閾値以上の数のブロックBLK内の全てのセルユニットCUが書換え不可であるとする。このような場合、或るブロックBLKに対する書換え処理の実行頻度は、(n-第3閾値)回に1回よりも高くなる。
【0187】
メモリコントローラ10は、図20に示されるようなメモリセルアレイ27に対してコンパクション処理を実行する。具体的には、メモリコントローラ10は、書換え不可のセルユニットCUの数がブロックBLK間で平準化されるように、有効データが記憶されるメモリ領域を再割当てする。
【0188】
これにより、図21に示されるように、コンパクション処理の実行後において、書換え不可のセルユニットCUの数は、ブロックBLK間で略等しくなる。言い換えると、書換え可能セルユニット数は、ブロックBLK間で略等しくなる。このため、或るブロックBLKに対する書換え処理の実行頻度を、n回に1回まで下げることができる。
【0189】
2.4 第2実施形態に係る効果
第2実施形態によれば、不揮発性メモリ20の信頼性の劣化を抑制できる。本効果について、以下に説明する。
【0190】
FeFETでは、書込み処理において、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMT、及び非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのゲート-チャネル間に3V程度(Vpass又は(Vpgm-Vpass))の電位差が印加されることにより、プログラムディスターブが発生し得る。同様に、FeFETでは、消去処理において、選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち非選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMT、及び非選択ストリングユニットSU内のメモリセルトランジスタMTのうち選択ワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTのゲート-チャネル間に3V程度(Vpass又は(Vera-Vpass))の電位差が印加されることにより、イレースディスターブが発生し得る。
【0191】
第2実施形態によれば、メモリコントローラ10は、連続して2回の書換え処理が実行される場合、或るブロックBLKに対して1回目の書換え処理を実行し、他のブロックに対して2回目の書換え処理を実行する。これにより、同一のブロックBLKに実行される書換え処理の頻度を下げることができる。このため、プログラムディスターブ及びイレースディスターブの発生を抑制できる。
【0192】
また、メモリコントローラ10は、無効データが記憶されている又は消去済みのメモリセルトランジスタMTが無いブロックの数が第3閾値以上の場合、コンパクション処理を実行する。コンパクション処理では、書換え処理が実行できないブロックBLKに記憶される有効データを、書換え処理が実行できるブロックBLKに移動させる。これにより、ブロックBLK間に記憶される有効データの量を平準化できる。このため、同一のブロックBLKに実行される書換え処理の頻度を下げることができる。このため、プログラムディスターブ及びイレースディスターブの発生を抑制できる。
【0193】
4. 変形例等
上述の第1実施形態及び第2実施形態は、上述の例に限られず、種々の変形が適用可能である。
【0194】
上述の第1実施形態では、同一のブロックBLK内で連続して実行される読出し処理に対してデトラップ処理を適用する場合について説明したが、これに限られない。例えば、同一のブロックBLK内で連続して実行される書込み処理に対してデトラップ処理を適用してもよい。また、例えば、同一のブロックBLK内で連続して実行される消去処理に対してデトラップ処理を適用してもよい。なお、消去処理に適用されるデトラップ処理は、読出し処理に適用されるデトラップ処理及び書込み処理に適用されるデトラップ処理とは極性が逆になる。
【0195】
また、上述の第2実施形態では、同一のブロックBLKに対する書換え処理の実行頻度を下げるための書換え処理の順番について説明したが、これに限られない。例えば、当該順番は、同一のブロックBLKに対する読出し処理について適用されてもよい。
【0196】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0197】
1…情報処理システム
2…ホスト
3…メモリシステム
10…メモリコントローラ
11…制御回路
12…不揮発性メモリインタフェース
13…ホストインタフェース
14…揮発性メモリインタフェース
15…カウンタ
20…不揮発性メモリ
21…入出力回路
22…ロジック制御回路
23…レジスタ
24…シーケンサ
25…電圧生成回路
26…ドライバセット
27…メモリセルアレイ
28…ロウデコーダモジュール
29…センスアンプモジュール
30…揮発性メモリ
31…ブロック管理情報
50…半導体基板
51,52,53,54,55…導電体層
60,61,62,63,64,65…絶縁体層
70…コア膜
71…半導体膜
72…積層膜
73…絶縁体膜
74…強誘電体膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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