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特開2024-44591作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044591
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/16 20060101AFI20240326BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240326BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F15B11/16 Z
E02F9/22 A
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150213
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥平
(72)【発明者】
【氏名】坂田 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 嵩之
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
3H089AA02
3H089AA20
3H089AA35
3H089AA60
3H089AA74
3H089BB15
3H089BB20
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB43
3H089EE05
3H089EE22
3H089EE36
3H089FF08
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業機械に負荷がかかる状態変化に対して、操作性を維持する作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の制御方法は、目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプ(511)が吐出する油の流量を制御し、複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を目標圧力に決定するものであり、複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータ(516a、516b)の操作に対して設定された設定圧が定常設定圧と、作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、 前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定することと、を有する作業機械の制御方法において、 前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される作業機械の制御方法。
【請求項2】
前記特定設定圧が前記定常設定圧に比べ高く設定される請求項1記載の作業機械の制御方法。
【請求項3】
前記特定のアクチュエータが走行モータである請求項2記載の作業機械の制御方法。
【請求項4】
前記特定設定圧が前記作業機械の登坂角度に応じて設定される請求項3記載の作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記設定圧が前記設定圧に対応する前記特定のアクチュエータの操作の操作量に応じて上昇するように設定されている請求項4記載の作業機械の制御方法。
【請求項6】
前記油圧ポンプの吐出する油の流量が前記操作量に応じて制御されている請求項5記載の作業機械の制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6記載の何れか1項に記載の建設機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための作業機械用制御プログラム。
【請求項8】
目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定する目標圧力決定部と、を備える作業機械用制御システムであって、
前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される作業機械用制御システム。
【請求項9】
前記作業機械の制御システムを備える請求項8記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、操作量の検出値に基づいて油圧ポンプの目標ポンプ容量を設定する目標ポンプ容量設定手段を有する作業機械の油圧ポンプのポンプ容量制御装置が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-240533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ショベル等の作業機械が傾斜面を登坂走行する場合、平地に比べて走行モータの負荷が上昇するため、平地での走行速度と同程度の速度を出すためには、走行レバーを平地での操作に比べて大きく前方へ傾倒させる必要がある。ある側面から見ると、操作中の作業機械に対する何かしらの負荷をかける状態変化に対して、操作者は、作業機械の動きを定常の状態で維持するために、何かしらの追加の操作を行う必要があり、操作性を損なうという問題が発生する。
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、その課題は、作業機械に負荷がかかる状態変化に対して、操作性を維持する作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定することと、を有する作業機械の制御方法において、前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される。
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械用制御プログラムは、前記作業機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させる。
【0008】
本発明の一態様に係る作業機械用制御システムは、目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定する目標圧力決定部と、を備える作業機械用制御システムであって、前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して、設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される。
【0009】
本発明の一態様に係る作業機械は、前記作業機械用制御システムを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業機械の負荷がかかる状態変化に対して、操作性を維持する作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと作業機械を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの傾斜角ごとに、走行レバーの操作量に応じて設定された設定圧の傾斜角マップの模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御装置の制御フローのフローチャート図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの走行負荷圧ごとに、走行レバーの操作量に応じて設定された設定圧の走行負荷マップの模式図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの制御装置の制御フローのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の代表例として油圧ショベル100を例に挙げ添付図面を参照しつつ本発明にかかる第1の実施形態について詳細に説明する。なお上部旋回体300に対して作業装置400が取り付けられている方向を前方としその反対方向を後方とする。
【0013】
図1で示すように油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、下部走行体200上に旋回可能に支持された上部旋回体300と、上部旋回体300の前方で上下に回動自在に支持された作業装置400を備えて構成されており、さらに図2の制御システム500をさらに備えている。
【0014】
下部走行体200は、センターフレーム210とセンターフレーム210に左右対称に対をなし前後方向に延びるサイドフレーム211を有しており、左右のサイドフレーム211の後端には走行モータ(516a,516b)により駆動する駆動輪212が設置され、前方に向け複数の遊動輪213が配置されており、そして駆動輪212と遊動輪213は、履帯214が巻装されている。そしてセンターフレーム前方には、排土装置220が装着され、排土装置220の排土板の裏面とセンターフレームをつなぐように装着されたブレードシリンダ221によって排土装置220は、上下に昇降する。
【0015】
上部旋回体300は、機体後端部に立設される2本の支柱に支持され、機体後方から前方に延びるキャノピー310の下方に配置された運転部320と、機体後端部から運転部の下方及び右側方に形成された機関室330と、機体前端の突設部に左右に回動自在に支持され、作業機400を上下に回動自在に支持するブームブラケット410から構成されている。
【0016】
作業装置400は、ブームブラケット410に上下に回動自在に支持されたブーム420と、ブーム420の先端に上下に回動可能に装着されたアーム430と、アーム430の先端に回動可能に装着されたバケット450と、上部旋回体300のフレーム内の右側方には、ブームブラケット410を水平に動かすスイングシリンダ(図示せず)が配置され、ブーム420の前方かつ下方に設置されたブーム420を上下に動かすブームシリンダ460と、ブーム420の上方に設置され、アーム430を前後に動かすアームシリンダ470と、アーム430の前方に設置され、バケットリンク440を介してバケット450を前後に動かすバケットシリンダ480により構成されている。
【0017】
機関室330には、エンジン(図示せず)と、エンジンにより駆動し、ブームシリンダ460やアームシリンダ470等の油圧ショベル100を動かす複数のアクチュエータに作動油を圧送する可変容量ポンプ511と、対応するアクチュエータを制御する方向切換弁の集合体であるコントロールバルブ514、とコントロールバルブ514に入力される制御信号圧(パイロット圧)及び可変容量ポンプ511の流量を制御するレギュレータ511aに入力されるパイロット圧の1次圧を生成するパイロットポンプ512等の複数の機器が配置されている。
【0018】
運転部320は、座席321と、座席321の下方のシートマウント322の下部前面から前方に向けて延びる床材323と、操作装置324等から形成される。
【0019】
操作装置324は、運転席321の前方に左右に列設され、床材323から突設された左走行レバー324a及び右走行レバー324bと、座席321の左右に配置されたコンソールボックスに立設された左操作レバー324cと、右操作レバー324dと、右操作レバー324dが立設するコンソールボックスの右側方から上方に延びるブレードレバー324eと、右走行レバー324bの右方に隣接して配置されたスイングペダル324fと、左走行レバー324aの左側方に隣接されたPTOペダル324g、から構成されている。
【0020】
操作装置324を操作することにより、対応するアクチュエータを動作させ油圧ショベル100に所定の動作をさせることができる。
【0021】
左操作レバー324cと、右操作レバー324dを所定の方向に傾倒させることにより、ブーム420の昇降、アーム480及びバケット450のクラウド、ダンプ動作さらに、上部旋回体300左右旋回動作をさせることができる。
【0022】
スイングペダル324fを左右方向に踏み込むことにより、作業機400を左右にスイングさせることができ、PTOペダル324gを前後に踏み込むことで、バケット450の代わりに装着したアタッチメントを操作することができ、ブレードレバー324eを前後方向に動かすことにより排土装置を上下に昇降させることができる。
【0023】
左走行レバー324a及び右走行レバー324bに対して傾倒させる操作を行うと、傾倒させる方向に対応する回転方向で、操作量に応じて、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの回転数は、増加する。左走行レバー324a及び右走行レバー324bを前方に同量傾倒させると油圧ショベル100は、前進し、逆に後方に同量傾倒させると油圧ショベル100は、後進する。さらに左走行レバー324a及び右走行レバー324bの操作量に差をつけて傾倒させると、操作量の小さい走行レバーの方向に油圧ショベル100は、緩旋回する。
【0024】
続いて、図2を用いて油圧ショベル100の制御システム500について説明する。
【0025】
制御システム500は、油圧回路510と、傾斜センサ520と、制御装置530と、操作装置324から構成されている。
【0026】
操作装置324は、各操作レバーの操作方向および操作量を操作信号として制御装置530に出力することにより、制御装置530は、電気信号を電磁比例弁517に出力し、電磁比例弁517は、パイロット圧をコントローバルブ514の入力ポートに出力し各アクチュエータを操作することができる。
【0027】
油圧回路510は、可変容量ポンプ511から延設される高圧の作動油配管を実線で表し、パイロットポンプ512から延設される低圧の作動油(パイロット圧)配管を点線で表す。
【0028】
油圧回路510は、電磁比例弁518から出力されたパイロット圧をレギュレータ511aに入力することにより吐出流量を制御する可変容量ポンプ511から延びるセンターバイパス流路513と、センターバイパス流路513から延びる油路とそれぞれ接続する各アクチュエータを制御する方向切換弁から構成されるコントールバルブ514からなり、油圧回路510は、方向切換弁のスプールの摺動位置にかかわらずセンターバイパス流路513からタンク515につながる流路は形成されないいわゆるクローズドセンター回路であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
油圧回路510の圧力は圧力センサ519によって検出され、検出結果は、制御装置530に送信される。
【0030】
圧力センサ519の検出結果に従い制御装置530は、操作条件ごとに設定した設定圧を目標圧として決定し、決定した目標圧以下になるように可変容量ポンプ511の吐出流量を制御している。
【0031】
制御装置530は、油圧ショベル100の操作性及び燃費を上げるため操作装置324の操作量に応じて可変容量ポンプ511の吐出流量を制御している。
【0032】
コントールバルブ514は、左走行モータ516aを制御する方向切換弁514aと、右走行モータ516bを制御する方向切換弁514bと、複数の他のアクチュエータ例えば、ブームシリンダ460、アームシリンダ470、バケットシリンダ480、ブレードシリンダ221、旋回モータ(図示せず)等をそれぞれ制御する複数の他の方向切換弁からなり、複数の他のアクチュエータと複数の他の方向切換弁については、油圧回路510には、記載を省略している。またコントールバルブ514を構成する方向切換弁のパイロット圧の入力ポートには、電磁比例弁517から操作装置324の操作量に応じたパイロット圧が入力される。
【0033】
方向切換弁514aのパイロット圧の入力ポート514a1は、左走行レバー324aの前方方向の傾倒操作の操作量に応じて電磁比例弁517a1からパイロット圧が入力される。そして方向切換弁514aのスプールが摺動し、対応するスプール
の開口量に応じた油が左走行モータ516aに流入し、流入した油の量に応じた速度で左走行モータ516aは、下部走行体200を前方へ進ませる方向へ回転する。
【0034】
方向切換弁514aのパイロット圧の入力ポート514a2は、左走行レバー324aの後方方向の傾倒操作の操作量に応じて電磁比例弁517a2からパイロット圧が入力される。そして方向切換弁514aのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が左走行モータ516aに流入し左走行モータ516aは、流入した油の量に応じた速度で下部走行体200を後方へ進ませる方向へ回転する。
【0035】
方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b1は、右走行レバー324bの前方方向の傾倒操作の操作量に応じて電磁比例弁517b1からパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が右走行モータ516bに流入し、右走行モータ516bは、流入した油の量に応じた速度で下部走行体200を前方へ進ませる方向へ回転する。
【0036】
方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b2は、右走行レバー324bの後方方向の傾倒操作の操作量に応じて電磁比例弁517b2からパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が右走行モータ516bに流入し右走行モータ516bは、流入した油の量に応じた速度で下部走行体200を後方へ進ませる方向へ回転する。
【0037】
ここで、油圧ショベル100を平地で仮にある速度で、前方に直進させるのに必要な左走行モータ516aと右走行モータ516bの回転数を確保するのに必要な方向切換弁514aと方向切換弁514bのスプールの開口で、傾斜地を登板させた場合、左走行モータ516aと右走行モータ516bの負荷は上昇し、油圧ショベル100は、負荷がかかった特定状態に変化する。
【0038】
油圧ショベル100が傾斜地を登板しているか否か、すなわち油圧ショベル100に負荷がかかった特定状態にあるか否かは、機関室330に取り付けられた傾斜センサ520によって検知された傾斜角度により検知され、検知された傾斜角度は、制御装置530に送信される。
【0039】
傾斜センサ520は、電解液式、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式、水晶式の傾斜センサでもよく、傾斜センサ530に替え、加速度センサを使用してもよい。また本実施例では、油圧ショベル100が特定状態に遷移したか否かを油圧ショベル100の姿勢を検知することによって判定しているが油圧ショベル100にかかる負荷を油圧回路510の圧力により検知することによって判定してもよい。
【0040】
制御装置530は、ECU(電子制御ユニット)であり、デジタル入力信号の信号レベルの変換を行う入力バッファ及びアナログ入力信号のデジタル変換を行うADコンバータと、各種入力信号から制御量の演算を行うマイコンからなる演算部531と、マイコンの出力信号に従いアクチュエータを駆動させる駆動信号の形態に変換させる出力ドライバと通信ドライバ,通信レシーバ等から構成される。
【0041】
制御装置530に入力される信号は、制御装置530に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現され、制御装置530から出力される信号は、信号が入力される機器に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現される。
【0042】
演算部531は、記憶部532と、目標圧力決定部533と、ポンプ流量演算部534を有する。
【0043】
記憶部532は、油圧ショベル100の傾斜角ごとに、走行レバー(516a,516b)の操作量に応じて設定された設定圧の傾斜角マップ(図3参照)が記憶されている。
【0044】
設定圧の傾斜角マップは、Y軸に設定圧をX軸に操作量を示している。
【0045】
傾斜角マップは、定常設定圧マップM1及び特定設定圧マップM2から構成されている。
【0046】
定常設定圧マップM1及び特定設定圧マップM2は、それぞれ走行レバーを後方に傾倒させた場合、どの傾斜角であっても、同じ線上で後方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1まで増加する。
【0047】
定常設定圧マップM1は、傾斜角がθ°が0°近傍を含む範囲で設定され、水平に近い傾斜角であり、走行時、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの負荷がそれほど上昇しない領域である。
【0048】
定常設定圧マップM1は、前方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1まで増加する。ここでマップM1の油圧ショベル100の状態は、油圧ショベル100に過剰な負荷がかかっていない状態いわゆる定常状態であり、定常設定圧マップM1で設定される圧力は定常設定圧と称する。
【0049】
特定設定圧マップM2は、傾斜角がθ°より大きい値で設定され、走行時、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの負荷が上昇する領域であり、特定設定圧マップM2は、前方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1より大きいP2まで増加する。
【0050】
ここで特定設定圧マップM2の油圧ショベル100の状態は、油圧ショベル100に過剰な負荷がかかっている状態いわゆる特定常状態であり、特定設定圧マップM2で設定される圧力は特定設定圧と称する。
【0051】
なお本実施形態では、傾斜角マップは、操作量に対して設定圧がなだらかに上昇するように最大値に至ることにより、自然な操作感を得ることができるが、操作と共に設定圧を最大値になるようしてもよく、その場合は操作に対する応答性が良くなる。また傾斜角と油圧ショベル100の走行方向により、油圧ショベル100が傾斜地を下っていると判定した場合、特定設定圧マップM2に基づく制御でなく、特定設定圧マップM1に基づく制御を強制的に行うことにより、操作性を高めることができる。さらに特定設定圧マップM1の操作量に基づく設定圧力の上昇勾配を上げることにより、特定設定圧マップM2とすることもできる。
【0052】
目標圧力決定部533は、傾斜センサ520の傾斜角の測定結果に基づき、記憶部532に記憶された傾斜角マップより1つのマップを選択し、選択されたマップを参照して左走行レバー324a及び右走行レバー324bの操作量に応じた設定圧を算出し、高い方の設定圧を、油圧回路510の最高圧である目標圧として決定する。
【0053】
ポンプ流量演算部534は、操作装置324の操作量から可変容量ポンプ511の吐出流量を演算し、圧力センサ519の圧力が、目標圧力決定部533によって決定された目標圧を越えないように吐出流量を補正する演算をし、電磁比例弁518に出力する信号を算出する。
【0054】
例えば、傾斜角センサ520が油圧ショベル100の走行中の傾斜角θ°を検知すると、記憶部532に記憶された定常設定圧マップM1と走行レバーの操作量によって目標圧力決定部533で定常設定圧を決定し、定常設定圧と操作装置324の操作量によってポンプ流量演算部534により演算された値で可変容量ポンプ511を制御する定常制御を実行する。
【0055】
また、傾斜角センサ520が油圧ショベル100の走行中の傾斜角を0°より大きい値で検知すると、記憶部532に記憶された特定設定圧マップM2と走行レバーの操作量によって目標圧力決定部533で特定設定圧を決定し、特定設定圧と操作装置324の操作量によってポンプ流量演算部534により演算された値で可変容量ポンプ511を制御する特定制御を実行する。
【0056】
ここで目標圧として決定される特定設定圧は、定常設定圧に比べ高く設定されている。この結果、油圧ショベル100が特定状態(傾斜地を登坂走行している状態)であっても、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの負荷上昇に応じて、可変容量ポンプ511の吐出流量が下がらないためスプールの開口量を定常状態より広げることなく(左走行レバー324a及び右走行レバー324bを平地で仮にある速度で、前方に直進走行している時よりも前方に傾倒させることなく)左走行モータ516a及び右走行モータ516bには、油圧ショベル100がある速度で傾斜地を登坂走行できる油が流入する。したがって油圧ショベル100の登坂走行のような負荷をかける状態変化に対して、平地での負荷がそれほどかからない油圧ショベル100の走行操作と同等な操作性を維持することができる。
【0057】
図4を用いて制御フローについて説明する。図4は制御方法に係るフローチャートである。
【0058】
左右走行レバー324a,324bを前方に傾倒させる。(S1)
【0059】
油圧ショベル100の傾斜角がθより大きい場合(S2:YES)、制御装置530は、特定制御を実行し(S3)フローを終了する。
【0060】
油圧ショベル100の傾斜角がθ以下の場合(S2:NO)、制御装置530は、定常制御を実行する。(S3)
【0061】
制御装置530は、定常制御を継続し(S4)、S2の処理を繰り返す。
【0062】
図4に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理を繰り返して実行してもよく、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0063】
続いて本発明の第2の実施形態につい説明するが、第1の実施形態と共通部分については、説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態では、図5で示すように、制御システム500は、傾斜センサ520に替え、油圧回路510の左走行モータ516aと方向切換弁514aを結ぶ一方の管路に接続された圧力センサ521と、油圧回路510の右走行モータ516bと方向切換弁514bを結ぶ一方の管路に接続された圧力センサ522を備えている。
【0065】
ここで、油圧ショベル100を平地で仮にある速度で、前方に直進させるのに必要な左走行モータ516aと右走行モータ516bの回転数を確保するのに必要な方向切換弁514aと方向切換弁514bのスプールの開口で、傾斜地を登板させた場合、圧力センサ521と圧力センサ522で検知される圧力は、上昇する。
【0066】
つまり圧力センサ521と圧力センサ522で検知される圧力は、左走行モータ516aと右走行モータ516bの負荷を検知し、油圧ショベル100が、負荷がかかった特定状態に変化することを検知できる。
【0067】
さらに第2の実施形態では、設定圧の傾斜角マップに替え、記憶部532には、圧力センサ521と圧力センサ522で検知された走行モータ516a、516bの圧力(以下走行負荷圧)ごとに設定された設定圧の走行負荷マップが記憶されている。
【0068】
設定圧の走行負荷マップは、Y軸に設定圧をX軸に操作量を示している。
【0069】
走行負荷マップは、定常設定圧マップM3及び特定設定圧マップM4から構成されている。
【0070】
定常設定圧マップM3及び特定設定圧マップM4は、それぞれ走行レバーを後方に傾倒させた場合、どの走行負荷圧であっても、同じ線上で後方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1まで増加する。
【0071】
定常設定圧マップM3は、走行負荷圧がP3以下で設定され、油圧ショベル100は水平に近い平地を走行していることを想定しており、走行時、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの負荷がそれほど上昇しない。
【0072】
定常設定圧マップM3は、前方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1まで増加する。ここでマップM3の油圧ショベル100の状態は、油圧ショベル100に過剰な負荷がかかっていない状態いわゆる定常状態であり、定常設定圧マップM3で設定される圧力は定常設定圧と称する。
【0073】
特定設定圧マップM4は、走行負荷圧がP3より大きい値で設定され、走行時、左走行モータ516a及び右走行モータ516bの負荷が上昇する領域であり、特定設定圧マップM4は、前方への操作量の増加とともに設定圧はP0からP1より大きいP2まで増加する。
【0074】
ここで特定設定圧マップM4の油圧ショベル100の状態は、左走行モータ516a及び右走行モータ516bに過剰な負荷がかかっている状態、すなわち特定常状態であり、特定設定圧マップM4で設定される圧力は特定設定圧と称する。
【0075】
目標圧力決定部533は、圧力センサ521と圧力センサ522で検知された走行負荷圧の内大きい方の走行負荷圧に基づき、記憶部532に記憶された走行負荷マップより1つのマップを選択し、選択されたマップを参照して左走行レバー324a及び右走行レバー324bの操作量に応じた設定圧を算出し目標圧として設定する。
【0076】
ポンプ流量演算部534は、操作装置324の操作量から可変容量ポンプ511の吐出流量を演算し、圧力センサ519の圧力が、目標圧力決定部533によって決定された目標圧を越えないように演算した吐出流量を補正し、電磁比例弁518に出力する信号を算出する。
【0077】
例えば、圧力センサ521、522が油圧ショベル100の走行中の走行負荷圧P3を検知すると、記憶部532に記憶された定常設定圧マップM3と走行レバーの操作量によって目標圧力決定部533は定常設定圧を決定し、定常設定圧と操作装置324の操作量によってポンプ流量演算部534により演算された値で可変容量ポンプ511を制御する定常制御を実行する。
【0078】
また、圧力センサ521、522が油圧ショベル100の走行中の走行負荷圧P3より大きい値を検知すると、記憶部532に記憶された特定設定圧マップM4と走行レバーの操作量によって目標圧力決定部533は、特定設定圧を決定し、特定設定圧と操作装置324の操作量によってポンプ流量演算部534により演算された値で可変容量ポンプ511を制御する特定制御を実行する。
【0079】
ここで、圧力センサ521、522により、油圧ショベル100の負荷を検知していることから、登坂走行のような負荷をかける状態変化だけでなく、起伏の多い荒れ地での走行に対しても、平地での負荷がそれほどかからない油圧ショベル100の走行操作と同等な操作性をより自然に維持することができる。
【0080】
図7を用いて制御フローについて説明する。図7は制御方法に係るフローチャートである。
【0081】
左右走行レバー324a,324bを前方に傾倒させる。(S1)
【0082】
油圧ショベル100の走行負荷圧がP3より大きい場合(S2:YES)、制御装置530は、特定制御を実行し(S3)フローを終了する。
【0083】
油圧ショベル100の走行負荷圧がP3以下の場合(S2:NO)、制御装置530は、定常制御を実行する。(S4)
【0084】
制御装置530は、特定制御を継続し(S4)、S2の処理を繰り返す。
【0085】
図7に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理を繰り返して実行してもよく、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0086】
続いて本発明の第2の実施形態の変形例は、第2の実施形態のように走行モータ516a,516bの走行負荷に基づき定常制御から特定制御に切り換えるのでなく、ブームシリンダ460のロッド圧及びボトム圧の測定結果(ブーム負荷圧)に基づき定常制御から特定制御に切り換えることができる。
【0087】
具体的には、バケット450をバケット450より重量の重いチルトローテータ等のアタッチメットに変更した後、モニター等の操作装置により、アタッチメットの変更操作を行うことにより、制御装置530がブーム負荷圧に基づき定常制御から特定制御に切り換えることを許可することをできる。(アタッチメット変更設定モード)。
【0088】
アタッチメット変更設定モードに油圧ショベル100が入った場合、油圧ショベル100に特定の動作を繰り返させ、ブーム負荷圧を測定し、ブーム負荷圧が規定値以上であれば定常制御から特定制御に切り換えることができる。
【0089】
この結果、バケット450より重いアタッチメントに換装することにより負荷が上昇する油圧ショベル100の状態変化に対して、バケット450が装着された油圧ショベル100と同等の操作性を維持することができる。
【0090】
本発明の実施形態にかかる発明は、以下の付記のように特定することができる。
【0091】
〈付記1〉目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定することと、を有する作業機械の制御方法において、前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される作業機械の制御方法。
【0092】
〈付記2〉前記特定設定圧が前記定常設定圧に比べ高く設定される付記1記載の作業機械の制御方法。
【0093】
〈付記3〉前記特定のアクチュエータが走行モータである付記1又は付記2記載の作業機械の制御方法。
【0094】
〈付記4〉前記特定設定圧が前記作業機械の登坂角度に応じて設定される付記1から付記3の何れかに記載の作業機械の制御方法。
【0095】
〈付記5〉前記設定圧が前記設定圧に対応する前記特定のアクチュエータの操作の操作量に応じて上昇するように設定されている付記1から付記4の何れかに記載の作業機械の制御方法。
【0096】
〈付記6〉前記油圧ポンプの吐出する油の流量が前記操作量に応じて制御されている付記1から付記5の何れかに記載の作業機械の制御方法。
【0097】
〈付記7〉付記1から付記6記載の何れか1項に記載の作業機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための作業機械用制御プログラム。
【0098】
〈付記8〉目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記複数のアクチュエータに対して行われた操作に対して設定された設定圧を前記目標圧力に決定する目標圧力決定部と、を備える作業機械用制御システムであって、前記複数のアクチュエータの中の特定のアクチュエータの操作に対して設定された設定圧が少なくとも定常設定圧と前記作業機械が特定状態の時に設定される特定設定圧から構成される作業機械用制御システム。
【0099】
〈付記9〉前記作業機械の制御システムを備える付記8記載の作業機械。
【0100】
上記で説明した第1,第2の実施形態及びこれらの変形例で説明した種々の構成は、適宜組み合わせて採用可能である。
【0101】
以上では、作業機械として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械は油圧ショベルに限定されず、コンパクトトラックローダ、ホイルローダ、などの建設機械だけでなくトラクターなどの他の作業機械であってもよく、さらに原動機としてエンジンを挙げて説明したが電動モータでもよい。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で拡張又は、変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械に関するものであり産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0104】
100 油圧ショベル(作業機械)511 可変容量ポンプ(油圧ポンプ)516a 右走行モータ(特定のアクチュエータ)516b 左走行モータ(特定のアクチュエータ)530 制御装置(流量制御部)532 記憶部533 目標圧力決定部534 ポンプ流量演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7