(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044597
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】カートン
(51)【国際特許分類】
B65D 5/66 20060101AFI20240326BHJP
B65D 5/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D5/66 301G
B65D5/02 J
B65D5/66 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150221
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
(72)【発明者】
【氏名】多畑 俊宏
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB05
3E060BA06
3E060BA08
3E060BB03
3E060BC04
3E060DA17
3E060DA30
3E060EA06
(57)【要約】
【課題】包装作業を効率よく行えるカートンを提供する。
【解決手段】正面11と、背面12と、正面と前記背面とを接続する側面とを有するカートン1は、正面と接続され、スリットを有する支持フラップと、背面と接続され、蓋と、前記スリットに進入可能な係止片とを有する蓋部材と、側面に接続されたサイドフラップとを備える。サイドフラップの正面側の縁は、正面側に突出する突出部41b、46bをスリットが設けられた範囲A1内に有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面と、背面と、前記正面と前記背面とを接続する側面とを有するカートンであって、
前記正面と接続され、スリットを有する支持フラップと、
前記背面と接続され、蓋と、前記スリットに進入可能な係止片とを有する蓋部材と、
前記側面に接続されたサイドフラップと、
を備え、
前記サイドフラップの前記正面側の縁は、前記正面側に突出する突出部を前記スリットが設けられた範囲内に有する、
カートン。
【請求項2】
前記カートンの幅方向における前記係止片の最大寸法は、前記スリットの長さよりも大きい、
請求項1に記載のカートン。
【請求項3】
前記正面は、前記スリットの両端部から延びるミシン目を有する、
請求項2に記載のカートン。
【請求項4】
前記サイドフラップは、前記側面との接続部に、前記側面と同一幅の基部を有する、
請求項1に記載のカートン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状のブランクを用いて形成されたカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状のブランクを折り曲げて形成した直方体様あるいは立方体様の外形を有するカートンは、各種物品の包装材料として広く用いられている。このようなカートンにおいては、一つの面が開放された状態まで組み立ててから内部に物品を収容し、最後に開放された面を閉じて包装を完了する。最後に閉じる面を構成する部材に舌片を設け、この舌片をカートン内に差し込むことにより密閉状態が完成する構造が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の収納箱は、天面に延びるフラップに差込口を設け、天面を覆う蓋板に設けられた挿入片をこの差込口に挿入することで密閉状態が完成する構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造では、フラップに設けられた差込口が開きにくいため、挿入片を差込口に挿入する動作が煩雑となり、包装作業の効率が低下する可能性がある。差込口のスリット幅を大きくすれば挿入しやすくなるが、箱としての密閉性が低下する、箱が意図せず開きやすくなる等の他の問題を生じる可能性がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、包装作業を効率よく行えるカートンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正面と、背面と、正面と背面とを接続する側面とを有するカートンである。
このカートンは、正面と接続され、スリットを有する支持フラップと、背面と接続され、蓋とスリットに進入可能な係止片とを有する蓋部材と、側面に接続されたサイドフラップとを備える。
サイドフラップの正面側の縁は、正面側に突出する突出部をスリットが設けられた範囲内に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、包装作業を効率よく行えるカートンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカートンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係るカートン1の斜視図を示す。カートン1は、シート状のブランクを折り曲げたり接合したりして形成されており、直方体状の外形を有する。カートン1は、4つの側面のうち、相対的に面積の大きい2つの面を正面11および背面12としており、背面から延びる蓋部材50で上部開口を覆うことにより密閉される。
【0011】
図2に、カートン1の作製に用いるブランク2を示す。ブランク2の材質に特に制限はなく、紙や合成樹脂等を例示できる。紙を用いる場合、坪量が300~400g/m
2程度のものが、組み立て性と容器の強度とのバランスに優れており、好ましい。
【0012】
ブランク2は、正面11、背面12、右側面13、および左側面14の4つの側面を有する。4つの側面は、
図1に示す状態における水平方向に連続している。正面11には接合片15が設けられており、接合片15を右側面13と接合することにより、4つの側面を筒状に形成できる。
【0013】
4つの側面の下側には、それぞれ底面を形成するための底フラップ21、22、23、および24が延びており、組み立て時にこれらを組み合わせることで底面が形成できる。底フラップの形状や数は適宜設定でき、底面を形成することができれば必ずしもすべての側面に設けられなくてもよい。
【0014】
正面11の上側には、支持フラップ31が延びている。支持フラップ31は、正面11の上辺11aを下底とする略台形であり、上底が下底よりも少し短い先細り形状を有する。正面11と支持フラップ31とが共有する上辺11aの中間部には、蓋を係止するためのスリット16が、ブランク2を貫通して一定の長さで形成されている。
【0015】
背面12の上側からは、蓋部材50が延びている。蓋部材50は、上部開口を覆う蓋51と、蓋51から延びる係止片52とを有する。
蓋51は、正面11および背面12の上辺と概ね同じ長さの長辺と、左側面14および右側面13と概ね同じ長さの短辺とを有する長方形であり、長辺の一つを背面12と共有している。
係止片52の形状は適宜設定できる。本実施形態において、係止片52は、蓋51から離れるにつれてまず幅を増加させ、その後先端に向かって先細る形状を有する。係止片52の最大幅寸法の値は、スリット16の長さよりもわずかに大きい。
【0016】
右側面13および左側面14の上側からは、それぞれ第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46が延びている。
【0017】
図3は、蓋を開いたカートン1の模式平面図であり、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ42を見やすくするため、支持フラップ31および蓋部材50を除いて示している。
第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46において、背面12側の縁は、
図3に示すように、右側面13および左側面14の左右の辺のうち、背面12側の辺と同じ位置から背面12と平行に一定長さ延びた後、先端に近づくにつれて徐々に正面11寄りに変位している。
一方、正面11側の縁は、右側面13および左側面14の左右の辺のうち、正面11側の辺と同じ位置から正面11と平行に一定長さ延びた後、わずかに背面12寄りに変位してから正面11と平行に延び、さらに正面11寄りに変位して正面11と平行に一定長さ延びている。
【0018】
上述した形状により、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46は、右側面13および左側面14から右側面13および左側面14と同一幅で延びる基部41aおよび46aをそれぞれ有する。また、正面11側の縁は、組み立てられた状態で正面11に向かって突出する突出部41bおよび46bをそれぞれ有する。
第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46は、いずれも組み立てられた状態において正面および背面の幅方向中央部付近まで延び、かつ正面11においてスリット16が形成された範囲(
図3にA1で示す。)内に突出部41bおよび46bが位置するようにその形状が設定されている。
【0019】
上記の構成を有するブランク2を用いた、カートン1の製造手順の一例について説明する。
まず、正面11に設けられた接合片15を左側面14と接合し、正面11、背面12、右側面13、および左側面14の4つの側面が幅方向に接続されて筒状となった状態にする。この工程は、公知のサック貼り機(サックマシン)や手作業により行うことができる。
【0020】
次に、作業者は、4つの側面の各共有辺を折り曲げてカートン1の4つの側面を形成するとともに、底フラップ21、22、23、および24を組み合わせて底面を形成する。
ここまでの工程で、上部が開放されたカートン1ができあがり、底面および4つの側面に囲まれた内部空間に所望の物品を収容できる状態となる。
【0021】
作業者は、物品をカートン内に収容した後、上部を閉じる作業を行う。
まず、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46を右側面13および左側面14の上辺に沿って折り曲げて、右側面13および左側面14の上辺と概ね同じ高さとする。
次に、支持フラップ31を折り曲げて、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46の上に重ねる。
【0022】
続いて、蓋部材50を折り曲げるとともに、係止片52を蓋51に対して折り曲げ、上方からスリット16に挿入する。このとき、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46が正面11と背面12との間に進入していると、正面11側の縁の突出部41b、46bは、
図3に示すように、右側面13および左側面14に対して直角をなした正面11に近い位置となる。これにより、突出部41b、46bが正面11と接触しやすく、接触するとスリット16が設けられた部位を内側から支持し、背面12に向かって変位することを抑制する。
【0023】
このため、例えば作業者が作業中に支持フラップ31に触れた際に、支持フラップ31を背面12に向かって軽く引くような力が作用したりすると、支持フラップ31は背面12に向かって変位しようとする一方で、正面11のスリット16付近の部位は、第一サイドフラップ41および第二サイドフラップ46に支持されてその位置に留まろうとする。その結果、カートン1全体としては、スリット16を広げる方向に力が作用し、係止片52を差し込みやすくなる。
本実施形態においては、突出部41b、46bがスリットの範囲内にのみ位置するため、スリット16が設けられた部位のみ変位が抑制されることにより、突出部41b、46bがスリットの範囲を超えて存在する場合よりもスリットが開きやすい。
【0024】
係止片52は、スリット16の長さよりも長い部位を有するため、作業者は撓ませる等により係止片52を適宜変形させてスリット16を通過させる。係止片52はスリット16を通過した後で元の形状に戻るため、スリット16から容易には抜けなくなる。これにより、係止片をシール等で止めなくても意図しない蓋の開きを抑制でき、包装状態が安定して保持されることをシールレスで実現することが可能である。
【0025】
本実施形態において、正面11には、
図1に示すように、スリット16の両端からそれぞれ延びる2本のミシン目17a、17bがブランク2を貫通して設けられている。ミシン目17a、17bは、正面11の左右の辺と概ね平行に下方に延びた後、互いに離間するように屈曲しながら下方に延び、再び接近して終わっている。カートン1の幅方向におけるミシン目17a、17b間の最大距離は、係止片52の最大幅寸法の値よりも大きい。
購入者がカートン1を開封する際は、正面11の上部をミシン目17a、17bに沿って切り、ミシン目17a、17bの終点間に設けられた折り線18に沿って手前に倒す。すると、スリット16に差し込まれた係止片52が概ね露出するため、これを手前や上に引き上げることにより、容易にカートン1を開封することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るカートン1は、包装作業中にスリット16が開きやすくなることを構造的に実現しているため、あらかじめ幅広のスリットを形成しなくても係止片52を円滑にスリットに差し込むことができ、包装作業を効率よく行える。
【0027】
さらに、本実施形態では、第一サイドフラップおよび第二サイドフラップが基部41a、46aを有するため、これらサイドフラップを正面11と背面12との間に位置させることにより、基部41a、46aがほぼ隙間なく正面11と背面12との間にはまる。その結果、正面11と背面12との位置関係が安定して突出部41b、46bによる支持が安定し、係止片52を差し込みやすくなる効果がより確実に発揮される。
第一サイドフラップおよび第二サイドフラップの基部は、その寸法関係から若干正面11と背面12との間に進入させにくいが、各フラップの先端部の幅は基部よりも狭くなっているため、先端部を先に正面11と背面12との間に進入させることで、基部を円滑に正面11と背面12との間に配置することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更は自由に組み合わせることができる。
【0029】
・蓋部材や支持フラップは、完成した製品としてのカートンにおいて印刷による各種表示等により特定される右側面および左側面に設けられてもよい。ただし、本発明においては、製品としてのカートンにおける正面がどの面であるかに関係なく、支持フラップが接続されている面を正面、蓋部材が接続されている面を背面、とそれぞれ定義する。
【0030】
・各側面から延びる蓋部材や各種フラップの折り線となる各側面の上辺や下辺には、折り曲げやすくするための加工が施されてもよい。このような加工としては、連続する、または間隔を空けて間欠的に複数設けられたハーフカットや、エンボス加工等を例示できる。間隔を空けて間欠的に形成する場合は、ハーフカットでなく、ブランクの厚さ方向に貫通する切込みであってもよい。
【0031】
・突出部を有するサイドフラップは、必ずしも右側面および左側面の両方に設けられなくてもよい。例えば、一方の側面から延びるサイドフラップを正面の中央幅方向中央を超える長さとし、その突出部を、上記実施形態における2つの突出部を合わせた程度の大きさとしてもよい。この場合、もう一方の側面は、突出部のない短いサイドフラップを有してもよいし、サイドフラップ自体が設けられなくてもよい。
【0032】
・突出部において、正面に最も近い前端の位置は、正面と背面との間への侵入させやすさを考慮すると、接続される側面の正面側の辺よりもわずかに背面寄りの位置が好ましいが、正面側の辺と同じ位置であってもよい。
また、第一サイドフラップと第二サイドフラップとで、突出部の前端の位置が異なっていてもよい。例えば、上記実施形態において、接合片と接合される左側面は、接合片との接合位置によって、正面側の辺が右側面よりもわずかに背面側に位置する可能性がある。このような場合に、左側面から延びるサイドフラップの突出部を右側面から延びるサイドフラップの突出部よりも突出させておくと、左側面が右側面よりもわずかに背面側に位置した場合でも、突出部と正面との距離を概ね同一として、安定した支持を行うことができる。突出部の前端の位置を異ならせる場合、状況によっては、接続される側面の正面側の辺よりも突出部を突出させてもよい。
【0033】
・突出部の正面側の縁は、必ずしも平坦でなくてもよく、曲線状であったり、尖ったりしていてもよい。ただし、上記実施形態で示した正面側の縁が平坦な態様は、正面を安定して支持できる、作業者の手指を傷める可能性が低い、等の点で優れている。また、サイドフラップが基部を有する場合、基部と突出部との間は、上記実施形態で示した直線状でなくてもよく、曲線状等であってもよい。
【0034】
・本発明において、サイドフラップが基部を有することは必須ではないが、基部を有することにより、上述した効果に加えて、側面と正面及び背面とが直角をなす状態を保持しやすく、作業のしやすさや包装容器としての安定性が向上するという利点が得られる。なお、基部は接続される側面と同一幅である必要は必ずしもなく、側面の幅よりわずかに小さくてもよい。
【0035】
・正面に設けられたミシン目は、開封を容易にする機能が発揮できれば、必ずしも上述した態様である必要はない。例えば、スリットの両端部からまっすぐ下方に延びる2本のミシン目としたり、ミシン目の終点を接近させてミシン目で囲まれた領域を切り取れるようにしたりすることもできる。
【0036】
・本発明に係るカートンは、必ずしも1枚のブランクから形成される必要はなく、2枚以上のブランクを接合して形成されてもよい。
【0037】
・本発明に係るカートンに収容される物品には特に制限はなく、食品、薬品等を始め、あらゆる物品の包装に適用できる。あらかじめ内袋に充填する等により、液体や粉体、粒体等を呈する物品も好適に包装できる。
【符号の説明】
【0038】
1 カートン
2 ブランク
11 正面
12 背面
13 右側面
14 左側面
16 スリット
31 支持フラップ
41 第一サイドフラップ
41a、46a 基部
41b、46b 突出部
46 第二サイドフラップ
50 蓋部材
51 蓋
52 係止片