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特開2024-44601導電層付きフレキシブル基板及び静電容量センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044601
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】導電層付きフレキシブル基板及び静電容量センサ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20240326BHJP
   G01V 3/08 20060101ALI20240326BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05K1/09 A
G01V3/08 D
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150226
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】縣 和哉
【テーマコード(参考)】
2F063
2G105
4E351
【Fターム(参考)】
2F063AA22
2F063BA29
2F063BB01
2F063CA29
2F063HA04
2F063HA16
2G105AA01
2G105BB04
2G105EE02
2G105HH02
4E351AA02
4E351AA13
4E351AA14
4E351AA16
4E351BB01
4E351BB31
4E351BB33
4E351BB35
4E351CC06
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD19
4E351GG20
(57)【要約】
【課題】フレキシブル基板に対する密着性が良好な銀系導電性粒子を含む導電層付きフレキシブル基板と、これを備えた静電容量センサを提供する。
【解決手段】フレキシブル基板(1)と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第一導電層(2)と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第二導電層(3)と、を備えた導電層付きフレキシブル基板(10)であり、前記第一導電層は、銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成され、前記第二導電層は、銀化合物インク組成物の硬化物によって形成されている、導電層付きフレキシブル基板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第一導電層と、
前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第二導電層と、
を備えた導電層付きフレキシブル基板であり、
前記第一導電層は、下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成され、
前記第二導電層は、下記銀化合物インク組成物の硬化物によって形成されている、
導電層付きフレキシブル基板。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
【請求項2】
前記第一導電層の少なくとも一部の表面にメッキ層が設けられている、請求項1に記載の導電層付きフレキシブル基板。
【請求項3】
前記メッキ層の表面に、はんだを介して、任意の電子部品が接続されている、請求項2に記載の導電層付きフレキシブル基板。
【請求項4】
前記第二導電層が、静電容量センサを構成する導電パターンと、前記導電パターンから延びて引き出し配線を構成する導電ラインと、を形成している、請求項1又は2に記載の導電層付きフレキシブル基板。
【請求項5】
請求項4に記載の導電層付きフレキシブル基板を備えた静電容量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層付きフレキシブル基板及び静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体層に複数の電極が設けられた静電容量方式のタッチセンサ(静電容量センサ)が開発されている。
特許文献1には、誘電体層のXY方向に複数の電極を形成し、これらの電極に接近する指などの導電体との間にコンデンサを形成し、複数の電極のどの電極に導電体が接近したかを静電容量の変化として検出する静電容量センサが開示されている。複数の電極とこれらに接続する導電配線は、誘電体層の表面に所望のパターンで形成された導電層によって形成されており、X方向を検知する電極とY方向を検知する電極とが区分けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-49618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量センサには設置された箇所の動きや変形に応じた柔軟さが求められることがある。フレキシブル基板上に導電配線を設ける場合、炭素系の導電性粒子を含む導電性ペーストを塗工して形成された導電配線には、メッキ加工し難い問題がある。
【0005】
本発明は、フレキシブル基板に対する密着性が良好な銀系導電性粒子を含む導電層付きフレキシブル基板と、これを備えた静電容量センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第一導電層と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第二導電層と、を備えた導電層付きフレキシブル基板であり、前記第一導電層は、下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成され、前記第二導電層は、下記銀化合物インク組成物の硬化物によって形成されている、導電層付きフレキシブル基板。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
[2] 前記第一導電層の少なくとも一部の表面にメッキ層が設けられている、[1]に記載の導電層付きフレキシブル基板。
[3] 前記メッキ層の表面に、はんだを介して、任意の電子部品が接続されている、[2]に記載の導電層付きフレキシブル基板。
[4] 前記第二導電層が、静電容量センサを構成する導電パターンと、前記導電パターンから延びて引き出し配線を構成する導電ラインと、を形成している、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電層付きフレキシブル基板。
[5] [1]~[4]の何れか一項に記載の導電層付きフレキシブル基板を備えた静電容量センサ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフレキシブル基板にあっては、銀系導電性粒子を含む導電層によって導電配線を形成しているので、フレキシブル基板に対する導電層の密着性が良好であり、フレキシブル基板の動きに導電配線が追従することができる。このように優れた導電体を備えた静電容量センサにあっては、信頼性やセンサ感度が向上する。また、導電層が銀系導電性粒子を含むのでメッキ加工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一例である静電容量センサ10の斜視図である。
図2】静電容量センサ10における部品実装部位11を構成する第一導電層2の一部を示す斜視図である。
図3】部品実装部位11を構成する第一導電層2の表面に設けられたメッキ層4の上に、さらにはんだ層5を介して、電子部品30が実装された様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪静電容量センサ≫
本発明の第一態様はフレキシブル基板を備えた静電容量センサである。本発明の静電容量センサにおいて、後述のフレキシブル基板、第一導電層及び第二導電層を有すること以外の構成は、公知の静電容量センサと同様とすることができる。
【0010】
本態様の静電容量センサの一例を図1に示す。静電容量センサ10において、樹脂フィルム等の柔軟で可撓性を有する基材からなるフレキシブル基板1の少なくとも一方の表面に、少なくとも第一導電層2及び第二導電層3の2種類の導電層が形成されている。各導電層は静電容量センサを構成するために必要な任意の導電パターン(例えば導電配線、電極、キャパシタ等)を構成している。
【0011】
フレキシブル基板1の材料は特に制限されず、公知のフレキシブル基板を構成する材料が適用でき、一般的には樹脂フィルムであることが好ましい。ガラスや表面が不働態化(絶縁化)された金属フィルム等も適用することができる。フレキシブル基板1の厚さは用途に応じて適宜設定されるが、構造的強度を保ちつつ柔軟性や可撓性を得る観点から、0.01mm~2.0mm程度が好ましい。
【0012】
本例ではフレキシブル基板1の一方の表面に第一導電層2及び第二導電層3が形成されている場合を例示しているが、フレキシブル基板1の一方の表面に第一導電層2のみが形成され、他方の表面に第二導電層3のみが形成されている場合も本態様に含まれる。
【0013】
静電容量センサ10の第一導電層2は後述するように銀ナノ粒子インク組成物によって形成されており、相対的に柔軟性が求められない部品実装部位11における導電パターンを構成している。一方、第二導電層3は後述するように銀化合物インク組成物によって形成されており、相対的に柔軟性が求められるタッチセンサ部位12および柔軟配線部位13における導電パターンを構成している。
【0014】
≪導電層付きフレキシブル基板≫
本発明の第二態様は、フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第一導電層と、前記フレキシブル基板の表面に任意の配置で形成された第二導電層と、を備えた導電層付きフレキシブル基板である。
前記第一導電層は、任意の導電パターンを構成しており、下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている。
前記第二導電層は、任意の導電パターンを構成しており、下記銀化合物インク組成物の硬化物によって形成されている。
本態様において、第一導電層と第二導電層はフレキシブル基板の同一平面上にそれぞれ独立に形成されていることが好ましい。
【0015】
本態様の一例は、図1に示した静電容量センサ10であり得る。部品実装部位10を構成する第一導電層2の一部を切り抜いて図2に示す。フレキシブル基板1の一方の表面に3本の導電配線が平行に並んでいる。フレキシブル基板1の表面に密着して配置された各第一導電層2は、銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている。
【0016】
さらに、各第一導電層2の表面にはメッキ層4が形成されている。換言すれば、メッキ層4が各第一導電層2の表面の少なくとも一部を被覆している。メッキ層4を構成する金属は特に制限されず、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の公知のメッキ形成金属が適用され得る。メッキ層4は単層であってもよいし、複数の層であってもよい。メッキ層4の厚さは例えば0.1~3μmであり得る。
【0017】
本態様の第一導電層2の厚さは特に制限されず、例えば0.5~10μmであり得る。この範囲の厚さであると、フレキシブル基板1に対する第一導電層2の密着性が高まる。なお、この範囲の厚さにするためには、第一導電層2に炭素粒子が含まれないことが好ましい。通常、炭素粒子は1μm以上であることが多く、このような大径の炭素粒子が含まれると上記の範囲の厚さで第一導電層2を形成することが難しくなる。
なお、本態様の各導電層の厚さは、厚さ方向の断面を切り出し、各導電層の断面を電子顕微鏡で観察し、任意の5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
【0018】
本態様の第一導電層2が導電配線を形成する場合、導電配線の幅は特に制限されないが、例えば10μm~500μmであり得る。
なお、本態様の各導電層の幅は、各導電層の幅を電子顕微鏡で観察し、任意の5箇所の幅を測定し、平均した値である。
【0019】
タッチセンサ部位12および柔軟配線部位13を構成する第二導電層3は、図2のように拡大して示さないが、図2のようにフレキシブル基板1の一方の表面に複数の導電配線が平行に並んだ形態とすることができる。フレキシブル基板1の表面に密着して配置された各第二導電層3は、銀化合物インク組成物の硬化物によって形成されている。第二導電層3の表面に他の電子部品を実装することは想定していないので、本態様において第二導電層3の表面にメッキ層を設けなくてもよい。第二導電層3からなる導電配線の柔軟性を向上させる観点からすると、第二導電層3の表面にメッキ層は設けられていないことが好ましい。
【0020】
本態様の第二導電層3の厚さは特に制限されず、例えば5.0~20μmであり得る。この範囲の厚さであると、フレキシブル基板1に対する第二導電層3の密着性が高まる。なお、この範囲の厚さにするためには、第二導電層3に炭素粒子が含まれないことが好ましい。通常、炭素粒子は1μm以上とされることが多く、このような大径の炭素粒子が含まれると上記の範囲の厚さで第二導電層3を形成することが難しくなる。一方、第二導電層3にバインダー樹脂が含まれると、フレキシブル基板の屈曲に追従しやすくなるので好ましい。
【0021】
本態様の第二導電層3が導電配線を形成する場合、導電配線の幅は特に制限されないが、例えば1.0μm~500μmであり得る。
【0022】
本態様にあっては、図3に示すように、第一導電層2の表面にメッキ層4を設けることにより、第一導電層2によって形成された部品実装部位11に任意の電子部品30(例えばチップコンデンサ等)を実装することができる。実装に際しては、電子部品30の電極端子とメッキ層4の間にはんだ5を介在させることが好ましい。メッキ層4が第一導電層2の表面を被覆し、第一導電層2を構造的に強化しているので、電子部品30を実装することができる。
【0023】
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
前記銀化合物はカルボン酸銀であることが好ましい。前記銀化合物がカルボン酸銀ではない場合、さらにカルボン酸若しくはカルボン酸塩を含むことが好ましい。塗料は希釈用の溶剤を含むことが好ましい。
銀化合物インク組成物を基材の表面に所望のパターンで印刷し、これを例えば200℃未満、0.5~3時間で加熱すると、アミンの少なくとも一部が揮発し、パターン中に銀が生成し、所望のパターンの銀を含む導電層が形成される。
このような銀化合物インク組成物としては、例えば、特許第6557317号、特許第6599891号、WO2013/096664等に記載された公知の銀化合物インク組成物が挙げられる。
銀化合物インク組成物には、銀の生成を阻害しない範囲で公知のバインダー樹脂が含まれていてもよい。
【0024】
銀化合物インク組成物としては、例えば、カルボン酸銀と、前記カルボン酸銀を溶解する少なくとも1つの溶解剤と、触媒とを混合することによって形成される銀錯体を含み、前記溶解剤が芳香族炭化水素を含み、前記触媒がカルボン酸銀を脱炭酸するアミンを含む銀化合物インク組成物が挙げられる。また、銀化合物インク組成物としては、例えば、カルボン酸銀と、前記カルボン酸銀を溶解する少なくとも1つの溶解剤と、前記カルボン酸銀の銀を還元する触媒とを混合することによって形成される銀錯体を含み、前記溶解剤は芳香族炭化水素を含み、前記触媒がアミンを含むものが挙げられる。
【0025】
前記カルボン酸銀は、プロピオン酸銀、酪酸銀、ペンタン酸銀、ヘキサン酸銀、ヘプタン酸銀、エチルヘキサン酸銀、ベヘン酸銀、オレイン酸銀、オクタン酸銀、ノナン酸銀、デカン酸銀、ネオデカン酸銀、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0026】
前記触媒は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、ポリアミンおよびそれらの組合せからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0027】
前記触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、アリルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-ヘキシルアミン、フェニルアミン、シクロペンチルアミン、tert-オクチルアミン、tert-デシルアミン、tert-ドデシルアミン、tert-オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロペンチルアミン、メチルブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、およびヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0028】
また、銀化合物インク組成物としては、例えば、銀塩と、(a)錯化剤とギ酸との錯体、または(b)錯化剤とギ酸の塩との錯体と、エチレンジアミンとを含有し、前記錯化剤がアルキルアミンであるものが挙げられる。
前記アルキルアミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンおよびアミルアミンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
前記銀塩は、酢酸銀、ギ酸銀、炭酸銀、フッ化銀、硝酸銀、亜硝酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、リン酸銀および酸化銀からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
前記銀化合物インク組成物は、さらにエタノール、ブタノール、プロピレングリコール、および水からなる群より選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましい。
前記エチレンジアミンに対する前記アルキルアミンの比は、容量基準で4:1~1:4であることが好ましい。
前記ギ酸または前記ギ酸の塩に対する前記アルキルアミンの比は、モル基準で少なくとも2:1であることが好ましい。
前記銀塩を含む銀化合物インク組成物の塗膜を例えば120℃以下で加熱することにより、塗膜中に銀を生成して導電層を形成することができる。
【0029】
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
銀ナノ粒子インク組成物を基材の表面に所望のパターンで印刷し、これを例えば130℃以下、0.5~3時間で加熱すると、アミンの少なくとも一部が揮発し、パターン中に銀が生成し、所望のパターンの銀を含む導電層が形成される。
このような銀ナノ粒子インク組成物としては、例えば、WO2017/175661等に記載された公知の銀ナノ粒子インク組成物が挙げられる。
銀ナノ粒子インク組成物には、バインダー樹脂が含まれないことが好ましい。バインダー樹脂を含まないことにより、銀ナノ粒子インク組成物によって形成される第一導電層の表面にメッキ加工を施し、メッキ層を積層することが容易になる。
【0030】
銀ナノ粒子は、一次粒子の大きさ(平均一次粒子径)が1000nm未満である銀の粒子である。ここで粒子径は走査型電子顕微鏡で観察した10個の一次粒子の直径(最大径)の平均である。表面が前記保護剤で被覆された銀ナノ粒子における、銀ナノ粒子部分の平均一次粒子径は、例えば0.5~100nmが挙げられ、好ましくは0.5~80nm、より好ましくは1~70nm、さらに好ましくは1~60nmである。
【0031】
銀ナノ粒子インク組成物の粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における)は60Pa・s以上であることが好ましい。この粘度は、例えば、レオメーター(商品名「PhysicaMCR301」、AntonPaar社製)又はその上位互換機を使用して測定することができる。
【0032】
前記アミンは銀ナノ粒子の表面を修飾する。前記アミンとしては、例えば、総炭素数6以上の脂肪族モノアミン(1)と、総炭素数5以下の脂肪族モノアミン(2)及び/又は総炭素数8以下の脂肪族ジアミン(3)とを含むものが好ましい。
【0033】
前記脂肪族モノアミン(1)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第一級アミン;イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-オクチルアミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第一級アミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキル基を有する第一級アミン; オレイルアミン等のアルケニル基を有する第一級アミン等;N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第二級アミン;N,N-ジイソヘキシルアミン、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン;トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第三級アミン;トリイソヘキシルアミン、トリ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第三級アミン等が挙げられる。
【0034】
前記脂肪族モノアミン(2)としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン等の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第一級アミン;N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第二級アミン等が挙げられる。
【0035】
前記脂肪族ジアミン(3)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0036】
脂肪族モノアミン(1)と、脂肪族モノアミン(2)及び/又は脂肪族ジアミン(3)とを併せる含有割合は、例えば、アミン全量[モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3);100モル%]を基準として、モノアミン(1)の含有量は5~65モル%であり、モノアミン(2)とジアミン(3)の合計含有量は35~95モル%であることが好ましい。
【0037】
前記溶剤はテルペン系溶剤を少なくとも含むことが好ましい。前記溶剤の総質量のうち沸点が130℃未満の溶剤の含有量は20質量%以下であることが好ましい。
前記溶剤は、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び3-メトキシ-1-ブタノールから選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0038】
銀ナノ粒子組成物は、さらに脂肪族モノカルボン酸の1種以上を含んでもよい。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸等の炭素数4以上の飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸等の炭素数8以上の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【符号の説明】
【0039】
1…フレキシブル基板、2…第一導電層、3…第二導電層、4…メッキ層、5…はんだ、10…静電容量センサ、11…部品実装部位、12…タッチセンサ部位、13…柔軟配線部位、30…電子部品。
図1
図2
図3