(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044622
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240326BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02H3/16 A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150264
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 太一
【テーマコード(参考)】
5G004
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA08
5G004EA04
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503DA04
5G503EA08
5G503EA09
5G503FA19
5G503GA11
5G503GA19
5H030AA06
5H030AS20
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】安全性を高めることができる電池パックを得る。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る電池パックは、電源経路に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、電源経路の一端に接続された第1の端子と、電源経路の他端に接続された第2の端子と、電源経路に設けられ、電源経路に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、蓄電池の正極および蓄電池の負極に接続され、蓄電池を放電可能な放電回路と、蓄電池を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、遮断回路に電流を遮断させるとともに、放電回路に蓄電池を放電させることが可能な制御回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源経路に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、
前記電源経路の一端に接続された第1の端子と、
前記電源経路の他端に接続された第2の端子と、
前記電源経路に設けられ、前記電源経路に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、
前記蓄電池の正極および前記蓄電池の負極に接続され、前記蓄電池を放電可能な放電回路と、
前記蓄電池を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、前記遮断回路に電流を遮断させるとともに、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能な制御回路と
を備えた電池パック。
【請求項2】
前記遮断回路は、ヒューズを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記ヒューズを切断状態にする
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記遮断回路は、オンオフ可能な遮断スイッチを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した後に、前記遮断スイッチをオフ状態に維持する
請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記蓄電池から供給された電力に基づいて動作可能であり、
前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧が所定の電圧以下になった時に、前記放電回路の動作を停止させることが可能である
請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記蓄電池は、電池セルを有し、
前記制御回路は、
前記電池セルのセル電圧を監視可能であり、
前記蓄電池に流れる電流を監視可能である
請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記異常は、
前記電池セルが大過充電状態であることと、
前記電池セルが深放電状態であることと、
充電中にもかかわらず前記電池セルのセル電圧が低下していることと
前記電池パックに含まれる部品が故障していることと、
前記蓄電池の充電回数または放電回数が所定回数以上であることと
のうちのいずれか1つ以上を含む
請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
前記蓄電池は、複数の前記電池セルを有し、
前記制御回路は、前記複数の電池セルのそれぞれのセル電圧を監視可能である
請求項5に記載の電池パック。
【請求項8】
前記異常は、前記複数の電池セルのそれぞれのセル電圧のばらつきが大きいことを含む
請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
前記放電回路は、第1の抵抗素子と、前記第1の抵抗素子と直列に接続されたスイッチとを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記スイッチをオン状態にすることにより、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能である
請求項1に記載の電池パック。
【請求項10】
前記放電回路は、抵抗値を変更可能な可変抵抗回路を有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧に基づいて前記抵抗値を変更可能である
請求項1に記載の電池パック。
【請求項11】
前記制御回路は、
前記蓄電池電圧が第1の電圧である場合に、前記抵抗値を第1の抵抗値に設定可能であり、
前記蓄電池電圧が前記第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、前記抵抗値を前記第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値に設定可能である
請求項10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記放電回路は、第1の抵抗素子と、前記第1の抵抗素子と直列に接続されたスイッチとを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧に基づいて、PWM信号を用いて前記スイッチの動作を制御可能である
請求項1に記載の電池パック。
【請求項13】
前記制御回路は、
前記蓄電池電圧が第1の電圧である場合に、前記PWM信号のデューティ比を第1の値に設定可能であり、
前記蓄電池電圧が前記第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、前記デューティ比を前記第1の値よりも大きい第2の値に設定可能である
請求項12に記載の電池パック。
【請求項14】
前記蓄電池の温度を検出可能な温度センサをさらに備え、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合において、前記蓄電池の温度が所定の温度範囲の範囲内である場合に、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能である
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項15】
電源経路に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、
前記電源経路の一端に接続された第1の端子と、
前記電源経路の他端に接続された第2の端子と、
前記電源経路に設けられ、前記電源経路に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、
前記蓄電池の正極および前記蓄電池の負極に接続され、前記蓄電池を放電可能な放電回路と、
前記蓄電池の温度を検出可能な温度センサと、
前記電流経路に設けられた第2の抵抗素子と、
前記蓄電池、前記温度センサの検出結果、および前記第2の抵抗素子の両端間の電圧を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、前記遮断回路に電流を遮断させるとともに、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能な制御回路と
を備えた電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池を備えた電池パックでは、異常が生じた場合に、それ以降永久にその電池パックを使用することができないように保護を行うものがある。このような保護は、しばしば、非復帰型の保護とも呼ばれる。例えば、特許文献1には、電池パックにおいてこのような異常が生じた場合に、充放電ができない状態であることをLED(Light Emitting Diode)を用いて通知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池パックでは、このような異常が生じた場合には、使用することができない電池パックをより安全に保管し、あるいはより安全に廃棄できることが望まれており、安全性のさらなる向上が期待される。
【0005】
安全性を高めることができる電池パックを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態における第1の電池パックは、蓄電池と、第1の端子と、第2の端子と、遮断回路と、放電回路と、制御回路とを備えている。蓄電池は、電源経路に設けられ、正極および負極を有するものである。第1の端子は、電源経路の一端に接続されたものである。第2の端子は、電源経路の他端に接続されたものである。遮断回路は、電源経路に設けられ、電源経路に流れる電流を遮断可能なものである。放電回路は、蓄電池の正極および蓄電池の負極に接続され、蓄電池を放電可能なものである。制御回路は、蓄電池を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、遮断回路に電流を遮断させるとともに、放電回路に蓄電池を放電させることが可能なものである。
【0007】
本開示の一実施の形態における第2の電池パックは、蓄電池と、第1の端子と、第2の端子と、遮断回路と、放電回路と、温度センサと、第2の抵抗素子と、制御回路とを備えている。蓄電池は、電源経路に設けられ、正極および負極を有するものである。第1の端子は、電源経路の一端に接続されたものである。第2の端子は、電源経路の他端に接続されたものである。遮断回路は、電源経路に設けられ、電源経路に流れる電流を遮断可能なものである。放電回路は、蓄電池の正極および蓄電池の負極に接続され、蓄電池を放電可能なものである。温度センサは、蓄電池の温度を検出可能なものである。第2の抵抗素子は、電流経路に設けられたものである。制御回路は、蓄電池、温度センサの検出結果、および第2の抵抗素子の両端間の電圧を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、遮断回路に電流を遮断させるとともに、放電回路に蓄電池を放電させることが可能なものである。
【0008】
本開示の一実施の形態における第1および第2の電池パックによれば、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る電池パックの一構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した放電回路の一構成例を表す回路図である。
【
図3】
図1に示した電池パックの一動作例を表す状態遷移図である。
【
図4】
図1に示した放電回路の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図5】変形例に係る放電回路の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図6】放電動作を行う温度範囲の一例を表す説明図である。
【
図7】放電動作を行う温度範囲の他の一例を表す説明図である。
【
図8】他の変形例に係る電池パックの一構成例を表すブロック図である。
【
図9】他の変形例に係る放電回路の一構成例を表す回路図である。
【
図10】
図9に示した放電回路の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図11】他の変形例に係る放電回路の一構成例を表す回路図である。
【
図12】
図10に示した放電回路の一動作例を表すタイミング波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る電池パック(電池パック1)の一構成例を表すものである。電池パック1は、正端子TPと、負端子TNと、端子TDETと、蓄電池11と、遮断回路12と、抵抗素子13と、温度センサ14と、制御回路15と、放電回路20とを備えている。
【0012】
正端子TPおよび負端子TNは、電池パック1と、電池パック1が装着された機器との間で電力のやりとりを行うように構成される。機器は、例えば、電池パック1に電力を供給する充電器であってもよいし、電池パック1の電力に基づいて動作する負荷機器であってもよい。正端子TPは、電源線PLを介して蓄電池11の正極EPに導かれる。負端子TNは、電源線PLを介して蓄電池11の負極ENに導かれる。
【0013】
端子TDETは、電池パック1が機器に装着されたことを検出するための接続検出端子である。例えば、電池パック1が機器に装着されると、この端子TDETは、その機器の端子に接続され、この端子を介して、端子TDETに電圧が供給される。電池パック1は、この端子TDETにおける電圧に基づいて、電池パック1が機器に装着されたことを検出することができるようになっている。
【0014】
蓄電池11は、電力を蓄えるように構成される。例えば、電池パック1が充電器に接続された場合には、正端子TP、遮断回路12、蓄電池11、抵抗素子13、負端子TNの順に充電電流が流れることにより、蓄電池11は充電される。また、電池パック1が負荷機器に接続された場合には、負端子TN、抵抗素子13、蓄電池11、遮断回路12、正端子TPの順に放電電流が流れることにより、蓄電池11は放電されるようになっている。
【0015】
蓄電池11は、複数の電池セルBC(この例では4つの電池セルBC1~BC4)を有している。電池セルBC1~BC4のそれぞれは、この例ではリチウムイオン二次電池を用いて構成される。電池セルBC1~BC4は直列に接続される。具体的には、電池セルBC1の正極は電池セルBC2の負極に接続され、電池セルBC1の負極は蓄電池11の負極ENに接続される。電池セルBC2の正極は電池セルBC3の負極に接続され、電池セルBC2の負極は電池セルBC1の正極に接続される。電池セルBC3の正極は電池セルBC4の負極に接続され、電池セルBC3の負極は電池セルBC2の正極に接続される。電池セルBC4の正極は蓄電池11の正極EPに接続され、電池セルBC4の負極は電池セルBC3の正極に接続される。
【0016】
電池セルBCにおける、負極および正極の間の電圧(セル電圧)は、その電池セルBCにおける蓄電量に応じて変化し得る。電池パック1は、4つの電池セルBCのそれぞれのセル電圧が、正常電圧範囲の範囲内である場合に使用されることができ、4つの電池セルBCのうちのいずれか1つ以上の電池セルBCのセル電圧がその正常電圧範囲の範囲外である場合には、使用されることができない。例えば、セル電圧が正常電圧範囲の上限電圧を超えている場合には、その電池セルBCは大過充電状態であり、使用されることができない。また、例えば、セル電圧が正常電圧範囲の下限電圧を下回っている場合には、その電池セルBCは深放電状態であり、使用されることができない。電池パック1では、4つの電池セルBC1~BC4のそれぞれのセル電圧が制御回路15により監視されるようになっている。
【0017】
遮断回路12は、電源線PLに設けられ、電源線PLに流れる電流を遮断可能に構成される。遮断回路12は、この例では、電源線PLにおける、電池パック1の正端子TPと蓄電池11の正極EPとを結ぶ経路に設けられる。なお、これに限定されるものではなく、遮断回路12は、蓄電池11の負極ENと電池パック1の負端子TNとを結ぶ経路に設けられてもよい。遮断回路12は、トランジスタDFETと、トランジスタCFETと、ヒューズFUとを有している。この例では、トランジスタDFET、トランジスタCFET、およびヒューズFUは、電池パック1の正端子TPから蓄電池11の正極EPに向かって、この順に配置される。
【0018】
トランジスタDFETは、例えばNチャネル型の電界効果トランジスタであり、制御回路15から供給された制御電圧に基づいてオンオフ可能に構成される。トランジスタDFETは、例えば、蓄電池11を放電すべきではない場合や、電池パック1に異常が生じそれ以降永久に電池パック1を使用することができないようにすべき場合に、制御回路15から供給された制御電圧に基づいてオフ状態になる。これにより、トランジスタDFETは、電池パック1における放電電流を遮断するようになっている。
【0019】
トランジスタCFETは、例えばNチャネル型の電界効果トランジスタであり、制御回路15から供給された制御電圧に基づいてオンオフ可能に構成される。トランジスタCFETは、例えば、蓄電池11を充電すべきではない場合や、電池パック1に異常が生じそれ以降永久に電池パック1を使用することができないようにすべき場合に、制御回路15から供給された制御電圧に基づいてオフ状態になる。これにより、トランジスタCFETは、電池パック1における充電電流を遮断するようになっている。
【0020】
ヒューズFUは、制御回路15から供給された制御信号に基づいて切断可能に構成される。ヒューズFUは、例えば、電池パック1に異常が生じそれ以降永久に電池パック1を使用することができないようにすべき場合に、制御回路15から供給された制御信号に基づいて溶断され、切断状態になる。これにより、ヒューズFUは、電源線PLに流れる電流を遮断するようになっている。
【0021】
抵抗素子13は、電源線PLに設けられ、電源線PLに流れる電流に応じた電圧を生成するように構成される。抵抗素子13の一端は蓄電池11の負極ENに接続され、他端は電池パック1の負端子TNに接続される。この抵抗素子13の両端間には、この抵抗素子13に流れる電流の向きおよび電流量に応じた電圧が生じる。後述するように、制御回路15は、抵抗素子13の両端間の電圧に基づいて、電池パック1の充電電流および放電電流を監視するようになっている。
【0022】
温度センサ14は、例えばサーミスタを含んで構成され、電池パック1の温度を検出するように構成される。温度センサ14は、例えば複数の温度センサを有している。具体的には、複数の温度センサは、例えば、蓄電池11の近くに設けられ蓄電池11の温度を検出する温度センサや、電池パック1の図示しない基板に設けられ基板の温度を検出する温度センサを含む。そして、温度センサ14は、検出結果を制御回路15に供給するようになっている。
【0023】
制御回路15は、電池パック1の動作状態を監視し、その監視結果に基づいて遮断回路12および放電回路20の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路15は、蓄電池11から供給された電圧V0~V4に基づいて、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視する。電圧V0は、電池セルBC1の負極の電圧であり、電圧V1は、電池セルBC1の正極および電池セルBC2の負極の電圧であり、電圧V2は、電池セルBC2の正極および電池セルBC3の負極の電圧であり、電圧V3は、電池セルBC3の正極および電池セルBC4の負極の電圧であり、電圧V4は、電池セルBC4の正極の電圧である。また、制御回路15は、抵抗素子13の両端間の電圧に基づいて、電池パック1の充電電流および放電電流を監視する。また、制御回路15は、温度センサ14の検出結果に基づいて、電池パック1の温度を監視する。そして、制御回路15は、その監視結果に基づいて、遮断回路12および放電回路20の動作を制御するようになっている。
【0024】
制御回路15は、保護回路16と、アナログフロントエンド回路17と、マイクロコントローラ18とを有している。この例では、これらの3つの回路は、それぞれ個別の半導体チップを用いて構成される。これらの回路は、図示していないが、例えば、蓄電池11の正極EPおよび負極ENに接続され、蓄電池11から直接供給された電力に基づいて動作する。よって、これらの回路は、遮断回路12の状態によらずに動作を行うことができる。
【0025】
保護回路16は、蓄電池11から供給された電圧V0~V4に基づいて、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視し、その監視結果に基づいてヒューズFUの動作を制御するように構成される。具体的には、保護回路16は、例えば、電池セルBC1~BC4のうちの少なくとも1つの電池セルBCが大過充電状態である場合には、ヒューズFUを切断状態にする。このようにして、保護回路16は、非復帰型の保護を行うようになっている。
【0026】
アナログフロントエンド回路17は、蓄電池11から供給された電圧V0~V4を検出し、この検出結果をマイクロコントローラ18に供給するように構成される。また、アナログフロントエンド回路17は、マイクロコントローラ18からの指示に基づいて、トランジスタDFET,CFETの動作を制御するようになっている。
【0027】
マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17から供給された電圧V0~V4の検出結果に基づいて、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視し、抵抗素子13の両端間の電圧に基づいて、電池パック1の充電電流および放電電流を監視し、温度センサ14の検出結果に基づいて、電池パック1の温度を監視するように構成される。また、マイクロコントローラ18は、端子TDETの電圧に基づいて、電池パック1と機器との接続を監視する。そして、マイクロコントローラ18は、その監視結果に基づいて、アナログフロントエンド回路17を介してトランジスタDFET,CFETの動作を制御し、ヒューズFUの動作を制御し、放電回路20の動作を制御するようになっている。
【0028】
マイクロコントローラ18は、監視結果に基づいて、例えば、蓄電池11を放電すべきではない状態であるかどうかを確認し、あるいは蓄電池11を充電すべきではない状態であるかどうかを確認する。マイクロコントローラ18は、蓄電池11を放電すべきではない状態である場合には、トランジスタDFETをオフ状態にし、蓄電池11を放電すべきではない状態が解消された場合には、トランジスタDFETをオン状態にする。また、マイクロコントローラ18は、蓄電池11を充電すべきではない状態である場合には、トランジスタCFETをオフ状態にし、蓄電池11を充電すべきではない状態が解消された場合には、トランジスタCFETをオン状態にする。このようにして、マイクロコントローラ18は、復帰型の保護を行うことができる。
【0029】
また、マイクロコントローラ18は、監視結果に基づいて、例えば電池パック1に異常が生じそれ以降永久にその電池パック1を使用することができないようにすべきかどうかを確認する。その電池パック1を使用することができないようにすべきである場合には、マイクロコントローラ18は、例えば、遮断回路12に電流を遮断させ、放電回路20に放電動作を行わせる。そして、マイクロコントローラ18は、これ以降、遮断回路12の状態を維持させる。このようにして、マイクロコントローラ18は、非復帰型の保護を行うことができる。以下に、非復帰型の保護について、いくつか例を挙げて説明する。
【0030】
例えば、マイクロコントローラ18は、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視することにより、電池セルBCが深放電状態であることを判断することができる。具体的には、例えば、電池セルBC1~BC4のうちの少なくとも1つが所定のしきい値電圧(例えば1V)以下である場合には、マイクロコントローラ18は、その電池セルBCは深放電状態であると判断する。そして、マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にし、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。
【0031】
また、例えば、マイクロコントローラ18は、電池セルBC1~BC4のセル電圧のばらつきを監視することにより、セルバランスエラーが生じていることを判断することができる。具体的には、例えば、電池セルBC1~BC4の4つのセル電圧のうちの、最大電圧と最小電圧の差が所定のしきい電圧以上である場合には、マイクロコントローラ18は、セルバランスエラーが生じていると判断する。そして、マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にし、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。
【0032】
また、例えば、マイクロコントローラ18は、電池セルBC1~BC4のセル電圧および電池パック1の充電電流を監視することにより、電池セルBCが異常であることを判断することができる。例えば、充電中であるにもかかわらず、電池セルBC1~BC4のうちの少なくとも1つのセル電圧が低下している場合には、マイクロコントローラ18は、その電池セルBCが異常であると判断する。そして、マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にし、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。
【0033】
また、例えば、マイクロコントローラ18は、電池パック1の充電電流および放電電流を監視することにより、トランジスタDFET,CFETが故障していることを判断することができる。例えば、トランジスタDFET,CFETがともにオフ状態であるにもかかわらず、電流が流れている場合には、マイクロコントローラ18は、トランジスタDFET,CFETのうちの少なくとも一方が故障していると判断する。そして、マイクロコントローラ18は、ヒューズFUを切断状態にする。
【0034】
また、例えば、マイクロコントローラ18は、電池パック1の温度を監視することにより、温度センサ14が故障していることを判断することができる。例えば、温度センサ14における複数の温度センサのうちの少なくとも1つの検出結果が、他の温度センサの検出結果と大きく異なる場合には、マイクロコントローラ18は、その温度センサが故障していると判断する。そして、マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にし、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。
【0035】
また、例えば、マイクロコントローラ18は、電池セルBC1~BC4のセル電圧、電池パック1の充電電流および放電電流に基づいて、充電回数を監視することにより、電池セルBCが寿命に達したことを判断することができる。例えば、マイクロコントローラ18は、例えば蓄電池11における蓄電量が所定量以上増加した場合に充電回数のカウント値をインクリメントし、このカウント値が所定のカウント値に到達した場合に、蓄電池11が寿命に達したと判断する。なお、以上では、充電回数の例で説明したが、放電回数を監視することにより、蓄電池11が寿命に達したことを判断してもよい。この場合には、例えば、マイクロコントローラ18は、例えば蓄電池11における蓄電量が所定量以上低下した場合に放電回数のカウント値をインクリメントし、このカウント値が所定のカウント値に到達した場合に、蓄電池11が寿命に達したと判断する。そして、マイクロコントローラ18は、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にし、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。
【0036】
このように、マイクロコントローラ18は、監視結果に基づいて、様々な非復帰型の保護を行う。そして、マイクロコントローラ18は、このような非復帰型の保護を行う際、放電回路20に制御信号CTLを供給することにより、蓄電池11を放電する放電動作を行わせるようになっている。
【0037】
放電回路20は、蓄電池11の正極EPおよび負極ENに接続され、マイクロコントローラ18から供給された制御信号CTLに基づいて、蓄電池11を放電する放電動作を行うように構成される。
【0038】
図2は、放電回路20の一構成例を表すものである。この
図2には、説明の便宜上、蓄電池11およびマイクロコントローラ18をも図示している。放電回路20は、スイッチ21と、抵抗素子22とを有している。
【0039】
スイッチ21は、例えばトランジスタを用いて構成され、マイクロコントローラ18から供給された制御信号CTLに基づいてオンオフ可能に構成される。スイッチ21の一端は蓄電池11の正極EPに接続され、スイッチ21の他端は抵抗素子22に接続される。
【0040】
抵抗素子22の一端はスイッチ21の他端に接続され、抵抗素子22の他端は蓄電池11の負極ENに接続される。抵抗素子22の抵抗値は、抵抗素子22に流れる電流の電流値が蓄電池11の最大放電電流の定格条件を超えない範囲で、小さい値に設定される。これにより、放電回路20では、放電動作における電流を大きくすることができ、短時間で放電を行うことができる。
【0041】
この構成により、スイッチ21は、電池パック1が非復帰型の保護を行う際、マイクロコントローラ18から供給された制御信号CTLに基づいてオン状態になる。これにより、蓄電池11の正極EP、スイッチ21、抵抗素子22、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11が放電され、蓄電池11における蓄電量を減らすことができる。その結果、今後使用しない電池パック1を、より安全に保管し、あるいは安全により廃棄することができるようになっている。
【0042】
ここで、蓄電池11は、本開示における「蓄電池」の一具体例に対応する。電池セルBCは、本開示における「電池セル」の一具体例に対応する。正端子TPは、本開示における「第1の端子」の一具体例に対応する。負端子TNは、本開示における「第2の端子」の一具体例に対応する。電源線PLは、本開示における「電源経路」の一具体例に対応する。遮断回路12は、本開示における「遮断回路」の一具体例に対応する。ヒューズFUは、本開示における「ヒューズ」の一具体例に対応する。トランジスタDFET,CFETは、本開示における「遮断スイッチ」の一具体例に対応する。放電回路20は、本開示における「放電回路」の一具体例に対応する。抵抗素子22は、本開示における「第1の抵抗素子」の一具体例に対応する。スイッチ21は、本開示における「スイッチ」の一具体例に対応する。制御回路15は、本開示における「制御回路」の一具体例に対応する。温度センサ14は、本開示における「温度センサ」の一具体例に対応する。抵抗素子13は、本開示における「第2の抵抗素子」の一具体例に対応する。
【0043】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電池パック1の動作および作用について説明する。
【0044】
(全体動作概要)
まず、
図1を参照して、電池パック1の全体動作概要を説明する。蓄電池11は電力を蓄える。遮断回路12は、電源線PLに流れる電流を遮断する。この遮断回路12のトランジスタDFET,CFETは、制御回路15から供給された制御電圧に基づいてオンオフし、ヒューズFUは、制御回路15から供給された制御信号に基づいて切断状態になる。温度センサ14は、電池パック1の温度を検出する。制御回路15は、電池パック1の動作状態を監視し、その監視結果に基づいて遮断回路12および放電回路20の動作を制御する。放電回路20は、制御回路15からの指示に基づいて蓄電池11を放電する放電動作を行う。
【0045】
(詳細動作)
図3は、電池パック1の状態遷移図を表すものである。電池パック1は、5つの動作モードM(通常動作モードM1、スリープモードM2、不具合確認モードM3、シャットダウンモードM4、および非復帰型保護モードM5)を有している。
【0046】
通常動作モードM1は、例えば、電池パック1が機器に接続されている場合において電池パック1が充放電を行うモードである。この通常動作モードM1では、制御回路15は、セル電圧、充電電流、放電電流、および温度を監視し、電池パック1と機器との接続を監視し、その監視結果に基づいて、トランジスタDFET,CFETをオンオフする。
【0047】
例えば、電池パック1が充電器に接続されている場合には、電池パック1は、この通常動作モードM1で動作し、この充電器から供給された電力に基づいて、蓄電池11を充電する。その際、制御回路15は、例えば、蓄電池11の温度が所定の温度よりも高くなり、あるいは充電電流が所定の電流よりも多い場合には、蓄電池11を充電すべきではないと判断し、トランジスタCFETをオフにする。これにより、充電電流が遮断される。そして、制御回路15は、このような、蓄電池11を充電すべきではない状態が解消された場合には、トランジスタCFETをオン状態にする。すなわち、電池パック1は、この通常動作モードM1において、復帰型の保護を行う。
【0048】
また、電池パック1に負荷機器が接続されている場合には、電池パック1は、この通常動作モードM1で動作し、蓄電池11に蓄えられた電力をこの負荷機器に供給する。その際、電池パック1は、例えば、蓄電池11の温度が所定の温度よりも高くなり、あるいは放電電流が所定の電流よりも多い場合には、蓄電池11を放電すべきではないと判断し、トランジスタDFETをオフにする。これにより、放電電流が遮断される。そして、制御回路15は、このような、蓄電池11を放電すべきではない状態が解消された場合には、トランジスタDFETをオン状態にする。すなわち、電池パック1は、この通常動作モードM1において、復帰型の保護を行う。
【0049】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMが通常動作モードM1である場合において、電池パック1が機器に接続されておらず、所定時間以上にわたり充放電を行っておらず、かつ電池パック1の不具合が無い場合に、動作モードMを通常動作モードM1からスリープモードM2に変化させる。この不具合は、復帰型の保護の対象である不具合と、非復帰型の保護の対象である不具合(異常)とを含む。
【0050】
スリープモードM2は、電池パック1が機器に接続されていない場合に、一部の機能を除き、動作をほぼ停止する動作モードである。このスリープモードM2では、制御回路15は、セル電圧、充電電流、放電電流、および温度を監視せず、電池パック1と機器との接続を監視し、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にする。これにより、電池パック1では、消費電力を低減することができる。
【0051】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMがスリープモードM2である場合において、電池パック1が機器に接続された場合には、動作モードMをスリープモードM2から通常動作モードM1に変化させる。
【0052】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMがスリープモードM2である場合において、所定の時間が経過した場合に、動作モードMをスリープモードM2から不具合確認モードM3に変化させる。不具合確認モードM3は、電池パック1に不具合があるかどうかを確認する動作モードである。この不具合は、復帰型の保護の対象である不具合と、非復帰型の保護の対象である不具合(異常)とを含む。この不具合確認モードM3では、制御回路15は、セル電圧、充電電流、放電電流、および温度を監視し、電池パック1と機器との接続を監視し、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にする。マイクロコントローラ18は、電池パック1に不具合が無い場合に、動作モードMを不具合確認モードM3からスリープモードM2に戻す。このように、電池パック1は、間欠的に、不具合確認モードM3で動作し、不具合を確認する。これにより、電池パック1では、このスリープモードM2および不具合確認モードM3において、電池パック1の状態を監視しつつ、消費電力を低減することができる。
【0053】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMが不具合確認モードM3である場合において、電池パック1が機器に接続された場合、または電池パック1に不具合がある場合に、動作モードMを不具合確認モードM3から通常動作モードM1に変化させる。
【0054】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMが通常動作モードM1または不具合確認モードM3である場合において、蓄電池11の、正極EPおよび負極ENの間の電圧(蓄電池電圧VB)がシャットダウン電圧Vsd以下である場合は、動作モードMをシャットダウンモードM4に変化させる。
【0055】
シャットダウンモードM4は、電池パック1が機器に接続されていない場合に、動作を完全に停止する動作モードである。このスリープモードM2では、例えば、制御回路15は、動作を完全に停止し、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にする。これにより、電池パック1では、消費電力を低減することができる。
【0056】
電池パック1の動作モードMが、シャットダウンモードM4である場合において、電池パック1が充電器に接続した場合に、電池パック1は起動し、マイクロコントローラ18は、動作モードMを通常動作モードM1に設定する。
【0057】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMが通常動作モードM1である場合において、電池パック1の異常を検出した場合に、動作モードMを通常動作モードM1から非復帰型保護モードM5に変化させる。
【0058】
非復帰型保護モードM5は、遮断回路12に電流を遮断させるとともに、放電回路20に放電動作を行わせる動作モードである。この非復帰型保護モードM5では、制御回路15は、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にするとともに、生じた異常に応じてヒューズFUを切断状態にする。そして、制御回路15は、放電回路20を動作させることにより、蓄電池11を放電させる。これにより、蓄電池11の、正極EPおよび負極ENの間の電圧(蓄電池電圧VB)が低下していく。
【0059】
マイクロコントローラ18は、電池パック1の動作モードMが非復帰型保護モードM5である場合において、蓄電池11の蓄電池電圧VBがシャットダウン電圧Vsd以下になった場合に、動作モードMを非復帰型保護モードM5からシャットダウンモードM4に変化させる。
【0060】
図4は、放電回路20の放電動作の一例を表すものであり、(A)は蓄電池11の、正極EPおよび負極ENの間の電圧(蓄電池電圧VB)の波形を示し、(B)はマイクロコントローラ18から供給された制御信号CTLの波形を示す。この例では、放電回路20のスイッチ21は、制御信号CTLが高レベルである場合にオン状態になり、制御信号CTLが低レベルである場合にオフ状態になる。
【0061】
この例では、マイクロコントローラ18は、監視結果に基づいて電池パック1の異常を検出し、動作モードMを非復帰型保護モードM5に設定する。そして、マイクロコントローラ18は、遮断回路12に電流を遮断させ、タイミングt1において、制御信号CTLを低レベルから高レベルに変化させる(
図4(B))。これにより、放電回路20のスイッチ21はオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21、抵抗素子22、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11の放電が開始する。その結果、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図4(A))。この蓄電池電圧VBの低下に応じて、放電回路20の抵抗素子22に流れる電流は徐々に低下するので、蓄電池電圧VBの変化度合いは徐々に低下する。
【0062】
そして、タイミングt2において、蓄電池電圧VBがシャットダウン電圧Vsdに到達すると、マイクロコントローラ18は、動作モードMをシャットダウンモードM4に変化させ、制御信号CTLを高レベルから低レベルに変化させる(
図4(B))。
【0063】
このようにして、タイミングt1~t2の期間において、放電回路20が蓄電池11を放電する。これにより、電池パック1では、蓄電池11における蓄電量を減らすことができる。その結果、今後使用しない電池パック1を、より安全に保管し、あるいは安全により廃棄することができる。
【0064】
このように、電池パック1では、電源線PLに設けられ、正極EPおよび負極ENを有する蓄電池11と、電源線PLの一端に接続された正端子TPと、電源線PLの他端に接続された負端子TNと、電源線PLに設けられ、電源線PLに流れる電流を遮断可能な遮断回路12と、蓄電池11の正極EPおよび蓄電池11の負極ENに接続され、蓄電池11を放電可能な放電回路20と、蓄電池11を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、遮断回路12に電流を遮断させるとともに、放電回路20に蓄電池11を放電させることが可能な制御回路15とを設けるようにした。これにより、安全性を高めることができる。
【0065】
すなわち、このように電池パック1に異常が発生した場合には、その電池パック1を使用できない状態にするために、遮断回路12に電流を遮断させる。この場合、蓄電池11の蓄電量は維持されるので、蓄電池11における蓄電量が多い場合には、エネルギーが高い状態が維持される。よって、このような電池パック1をそのまま保管し、あるいは廃棄する際、安全性が低下する可能性がある。電池パック1では、電池パック1に異常が発生した場合に放電回路20に蓄電池11を放電させるようにした。これにより、蓄電池11の蓄電量を低下させることができるので、エネルギーが低い状態にすることができる。よって、電池パック1では、今後使用しない電池パック1を、より安全に保管し、あるいは安全により廃棄することができるので、安全性を高めることができる。
【0066】
また、電池パック1では、放電回路20は、抵抗素子22と、抵抗素子22と直列に接続されたスイッチ21とを有するようにした。そして、制御回路15は、異常を検出した場合に、スイッチ21をオン状態にすることにより、蓄電池11を放電するようにした。これにより、電池パック1では、シンプルな構成で安全性を高めることができる。
【0067】
また、電池パック1では、蓄電池11は、複数の電池セルBCを有し、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧を監視し、蓄電池11に流れる電流を監視するようにした。これにより、制御回路15は、電池パック1の様々な異常を確認することができる。
【0068】
具体的には、例えば、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧に基づいて、複数の電池セルBCのうちの1以上が大過充電状態であるかどうかを確認することができる。また、例えば、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧に基づいて、複数の電池セルBCのうちの1以上が深放電状態であるかどうかを確認することができる。また、例えば、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧に基づいて、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧のばらつきが大きいかどうかを確認することができる。また、例えば、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧、および蓄電池11に流れる電流に基づいて、充電中にもかかわらず複数の電池セルBCのうちの1以上のセル電圧が低下しているかどうかを確認することができる。また、例えば、制御回路15は、電池パック1に含まれる部品が故障しているかどうかを確認することができる。具体的には、制御回路15は、例えば、蓄電池11に流れる電流に基づいて、トランジスタDFET,CFETがともにオフ状態であるにもかかわらず、電流が流れている場合には、トランジスタDFET,CFETが故障していると判断することができる。また、例えば、制御回路15は、複数の電池セルBCのそれぞれにおけるセル電圧、および蓄電池11に流れる電流に基づいて、蓄電池11の充電回数または放電回数が所定回数以上であるかどうかを確認することができる。
【0069】
[効果]
以上のように本実施の形態では、電源線に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、電源線の一端に接続された正端子と、電源線PLの他端に接続された負端子と、電源線に設けられ、電源線に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、蓄電池の正極および蓄電池の負極に接続され、蓄電池を放電可能な放電回路と、蓄電池を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、遮断回路に電流を遮断させるとともに、放電回路に蓄電池を放電させることが可能な制御回路とを設けるようにしたので、今後使用しない電池パック1を、より安全に保管し、あるいは安全により廃棄することができるため、安全性を高めることができる。
【0070】
本実施の形態では、放電回路は、抵抗素子と、抵抗素子と直列に接続されたスイッチとを有するようにした。そして、制御回路は、異常を検出した場合に、スイッチをオン状態にすることにより、蓄電池を放電するようにした。これにより、シンプルな構成で、安全性を高めることができる。
【0071】
本実施の形態では、蓄電池は、複数の電池セルを有し、制御回路は、複数の電池セルのそれぞれにおけるセル電圧を監視し、蓄電池に流れる電流を監視するようにしたので、電池パックの様々な異常を確認することができるため、安全性を高めることができる。
【0072】
[変形例1]
上記実施の形態では、マイクロコントローラ18は、電池パック1の異常を検出した場合に、放電回路20へ供給する制御信号CTLを高レベルにしたが、これに限定されるものではない。例えば、マイクロコントローラ18は、電池パック1の異常を検出した場合であって、かつ蓄電池11の温度が所定の温度範囲内である場合に、制御信号CTLを高レベルにしてもよい。以下に、本変形例について、詳細に説明する。
【0073】
図5は、本変形例に係る放電回路20の一動作例を表すものである。
図6は、放電回路20が動作する温度範囲の一例を表すものである。この例では、マイクロコントローラ18は、蓄電池11の温度が温度T2以下である場合に、放電回路20に放電動作を行わせ、温度T2よりも高い場合には、放電回路20に放電動作を行わせない。この温度T2は、例えば、蓄電池11の動作温度の定格条件の上限値にすることができる。
【0074】
図5の例では、マイクロコントローラ18は、監視結果に基づいて電池パック1の異常を検出し、動作モードMを非復帰型保護モードM5に設定する。そして、マイクロコントローラ18は、遮断回路12に電流を遮断させ、タイミングt11において、制御信号CTLを低レベルから高レベルに変化させる(
図5(B))。これにより、放電回路20のスイッチ21はオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21、抵抗素子22、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11の放電が開始する。その結果、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図5(A))。
【0075】
そして、この例では、タイミングt12において、蓄電池11の温度が温度T2を上回り、マイクロコントローラ18は、制御信号CTLを高レベルから低レベルに変化させる(
図5(B))。これにより、放電回路20のスイッチ21はオフ状態になり、蓄電池11の放電は停止し、蓄電池電圧VBの低下が停止する(
図5(A))。
【0076】
そして、この例では、タイミングt13において、蓄電池11の温度が温度T2以下になり、マイクロコントローラ18は、制御信号CTLを低レベルから高レベルに変化させる(
図5(B))。これにより、放電回路20のスイッチ21はオン状態になり、蓄電池11の放電は再開し、蓄電池電圧VBの低下が再開する(
図5(A))。
【0077】
そして、タイミングt14において、蓄電池電圧VBがシャットダウン電圧Vsdに到達すると、マイクロコントローラ18は、動作モードMをシャットダウンモードM4に変化させ、制御信号CTLを高レベルから低レベルに変化させる(
図5(B))。
【0078】
このように、本変形例に係る電池パック1では、制御回路15は、異常を検出した場合において、蓄電池11の温度が所定の温度範囲の範囲内である場合に、放電回路20に蓄電池11を放電させるようにした。これにより、蓄電池11の温度を所定の温度範囲内に維持しつつ、蓄電池11を放電することができるので、安全性を高めることができる。
【0079】
なお、この例では、
図6に示したように、マイクロコントローラ18は、蓄電池11の温度が温度T2よりも高い場合には、放電回路20に放電動作を行わせないようにしたが、これに限定されるものではない。これに加えて、例えば、
図7に示したように、マイクロコントローラ18は、さらに、蓄電池11の温度が温度T1よりも低い場合にも、放電回路20に放電動作を行わせないようにしてもよい。この温度T1は、例えば、蓄電池11の動作温度の定格条件の下限値にすることができる。
【0080】
[変形例2]
上記実施の形態では、ヒューズFUを設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、
図8に示す電池パック1Bのように、ヒューズFUを設けなくてもよい。この電池パック1Bは、遮断回路12Bと、制御回路15Bとを備えている。
【0081】
遮断回路12Bは、トランジスタDFETと、トランジスタCFETとを有している。すなわち、遮断回路12Bは、上記実施の形態に係る遮断回路12(
図1)から、ヒューズFUを省いたものである。
【0082】
制御回路15Bは、アナログフロントエンド回路17と、マイクロコントローラ18Bとを有している。すなわち、制御回路15Bは、上記実施の形態に係る制御回路15(
図1)から、保護回路16を省くとともに、マイクロコントローラ18をマイクロコントローラ18Bに置き換えたものである。
【0083】
マイクロコントローラ18Bは、アナログフロントエンド回路17から供給された電圧V0~V4の検出結果に基づいて、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視し、抵抗素子13の両端間の電圧に基づいて、電池パック1の充電電流および放電電流を監視し、温度センサ14の検出結果に基づいて、電池パック1Bの温度を監視するように構成される。また、マイクロコントローラ18Bは、端子TDETの電圧に基づいて、電池パック1と機器との接続を監視する。そして、マイクロコントローラ18Bは、その監視結果に基づいて、アナログフロントエンド回路17を介してトランジスタDFET,CFETの動作を制御し、放電回路20の動作を制御するようになっている。
【0084】
マイクロコントローラ18Bは、上記実施の形態に係るマイクロコントローラ18(
図1)と同様に、非復帰型の保護を行うことができる。具体的には、例えば、マイクロコントローラ18Bは、電池セルBC1~BC4のセル電圧を監視することにより、電池セルBCが深放電状態であることを判断することができる。また、例えば、マイクロコントローラ18Bは、電池セルBC1~BC4のセル電圧のばらつきを監視することにより、セルバランスエラーが生じていることを判断することができる。また、例えば、マイクロコントローラ18Bは、電池セルBC1~BC4のセル電圧および電池パック1の充電電流を監視することにより、電池セルBCが異常であることを判断することができる。また、例えば、マイクロコントローラ18Bは、電池パック1の温度を監視することにより、温度センサ14が故障していることを判断することができる。また、例えば、マイクロコントローラ18Bは、電池セルBC1~BC4のセル電圧、電池パック1の充電電流および放電電流に基づいて、充電回数を監視することにより、電池セルBCが寿命に達したことを判断することができる。そして、マイクロコントローラ18Bは、このような異常を検出した場合に、アナログフロントエンド回路17を介して、トランジスタDFET,CFETをオフ状態にするように、トランジスタDFET,CFETの動作を制御する。マイクロコントローラ18Bは、これ以降、トランジスタDFET,CFETをオフ状態に維持する。そして、マイクロコントローラ18は、放電回路20に放電動作を行わせる。
【0085】
[変形例3]
上記実施の形態では、放電回路20は、1つのスイッチ21および1つの抵抗素子22を有するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、複数のスイッチ21および複数の抵抗素子22を有するようにしてもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0086】
図9は、本変形例に係る放電回路20Cの一構成例を表すものである。放電回路20Cは、3つのスイッチ21(スイッチ21A,21B,21C)と、3つの抵抗素子22(抵抗素子22A,22B,22C)とを有している。
【0087】
スイッチ21Aは、本変形例に係るマイクロプロセッサ(マイクロコントローラ18C)から供給された制御信号CTLAに基づいてオンオフ可能に構成される。スイッチ21Aの一端は蓄電池11の正極EPに接続され、スイッチ21Aの他端は抵抗素子22Aに接続される。抵抗素子22Aの一端はスイッチ21Aの他端に接続され、抵抗素子22Aの他端は蓄電池11の負極ENに接続される。スイッチ21Bは、マイクロコントローラ18Cから供給された制御信号CTLBに基づいてオンオフ可能に構成される。スイッチ21Bの一端は蓄電池11の正極EPに接続され、スイッチ21Bの他端は抵抗素子22Bに接続される。抵抗素子22Bの一端はスイッチ21Bの他端に接続され、抵抗素子22Bの他端は蓄電池11の負極ENに接続される。スイッチ21Cは、マイクロコントローラ18Cから供給された制御信号CTLCに基づいてオンオフ可能に構成される。スイッチ21Cの一端は蓄電池11の正極EPに接続され、スイッチ21Cの他端は抵抗素子22Cに接続される。抵抗素子22Cの一端はスイッチ21Cの他端に接続され、抵抗素子22Cの他端は蓄電池11の負極ENに接続される。
【0088】
この例では、抵抗素子22Aの抵抗値は、例えば上記実施の形態に係る抵抗素子22(
図2)の抵抗値と同じ値に設定される。抵抗素子22Bの抵抗値は、抵抗素子22Aの抵抗値よりも小さい値に設定される。抵抗素子22Cの抵抗値は、抵抗素子22Bの抵抗値よりも小さい値に設定される。放電回路20Cが放電動作を行う場合には、スイッチ21A,21B,21Cのうちのいずれか1つがオン状態になるように制御される。このように、放電回路20Cは、抵抗値を変更可能な可変抵抗回路を構成する。
【0089】
図10は、放電回路20Cの放電動作の一例を表すものであり、(A)は蓄電池11の、正極EPおよび負極ENの間の電圧(蓄電池電圧VB)の波形を示し、(B)は制御信号CTLAの波形を示し、(C)は制御信号CTLBの波形を示し、(D)は制御信号CTLCの波形を示す。この
図10において、符号W1の特性は、上記実施の形態の場合の特性(
図4)を示している。
【0090】
この例では、マイクロコントローラ18Cは、監視結果に基づいて電池パック1の異常を検出し、動作モードMを非復帰型保護モードM5に設定する。そして、マイクロコントローラ18Cは、遮断回路12に電流を遮断させ、タイミングt21において、制御信号CTLAを低レベルから高レベルに変化させる(
図10(B))。これにより、放電回路20Cのスイッチ21Aはオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21A、抵抗素子22A、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11の放電が開始する。その結果、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図10(A))。
【0091】
そして、タイミングt22において、蓄電池電圧VBがしきい電圧Vth1を下回ると、マイクロコントローラ18Cは、制御信号CTLAを高レベルから低レベルに変化させるとともに、制御信号CTLBを低レベルから高レベルに変化させる(
図10(B),(C))。これにより、放電回路20Cのスイッチ21Aがオフ状態になるとともにスイッチ21Bがオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21B、抵抗素子22B、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11の放電が進む。その結果、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図10(A))。抵抗素子22Bの抵抗値は、抵抗素子22Aの抵抗値よりも小さいので、蓄電池電圧VBの変化度合いは、上記実施の形態の場合よりも大きい。
【0092】
そして、タイミングt23において、蓄電池電圧VBがしきい電圧Vth2を下回ると、マイクロコントローラ18Cは、制御信号CTLBを高レベルから低レベルに変化させるとともに、制御信号CTLCを低レベルから高レベルに変化させる(
図10(C),(D))。これにより、放電回路20Cのスイッチ21Bがオフ状態になるとともにスイッチ21Cがオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21C、抵抗素子22C、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れ、蓄電池11の放電が進む。その結果、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図10(A))。抵抗素子22Cの抵抗値は、抵抗素子22Bの抵抗値よりも小さいので、蓄電池電圧VBの変化度合いを、上記実施の形態の場合よりも大きくすることができる。
【0093】
そして、タイミングt24において、蓄電池電圧VBがシャットダウン電圧Vsdに到達すると、マイクロコントローラ18Cは、動作モードMをシャットダウンモードM4に変化させ、制御信号CTLCを高レベルから低レベルに変化させる(
図10(D))。
【0094】
このようにして、タイミングt21~t24の期間において、放電回路20Cは蓄電池11を放電する。
【0095】
この電池パック1では、放電回路20Cは、抵抗値を変更可能な可変抵抗回路を有するようにした。そして、マイクロコントローラ18Cを含む制御回路15は、異常を検出した場合に、蓄電池11の正極EPおよび負極ENの間の電圧である蓄電池電圧VBに基づいて抵抗値を変更するようにした。特に、制御回路15は、蓄電池電圧VBが第1の電圧である場合に、抵抗値を第1の抵抗値に設定し、蓄電池電圧VBが第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、抵抗値を第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値に設定した。これにより、電池パック1では、上記実施の形態の場合に比べて、短時間で蓄電池11を放電することができる。
【0096】
この例では、3つの抵抗素子22A,22B,22Cを設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、2つの抵抗素子を設けてもよいし、4つ以上の抵抗素子を設けてもよい。
【0097】
また、この例では、抵抗素子22A,22B,22Cの抵抗値が互いに異なるようにするとともに、スイッチ21A,21B,21Cのうちのいずれか1つをオン状態にすることにより、放電回路20Cの抵抗値を変更したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、抵抗素子22A,22B,22Cの抵抗値を互いに等しくするとともに、スイッチ21A,21B,21Cのうちのオン状態にするスイッチ21の数を変更することにより、放電回路20Cの抵抗値を変更してもよい。この場合には、例えばスイッチ21A,21B,21Cのうちのオン状態になるスイッチ21の数を増やすことにより、放電回路20Cの抵抗値を減らすことができる。
【0098】
また、この例では、スイッチ21Aおよび抵抗素子22Aを直列接続し、スイッチ21Bおよび抵抗素子22Bを直列接続し、スイッチ21Bおよび抵抗素子22Bを直列接続し、これらの3つの回路を並列接続し、スイッチ21A~21Cのうちの1つをオン状態にすることにより、抵抗素子22A~22Cのうちの使用する抵抗素子を選択したが、これに限定されるものではない。これに代えて、抵抗素子22A,22B,22Cを直列接続し、これらの抵抗素子22A~22Cのうちの2つをバイパスさせることにより、使用する抵抗素子を選択してもよい。
【0099】
[変形例4]
上記実施の形態では、マイクロコントローラ18は、制御信号CTLを用いて放電回路20の動作を制御したが、この制御信号CTLは、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号であってもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0100】
図11は、本変形例に係るマイクロコントローラ18Dの一構成例を表すものである。なお、この
図11には蓄電池11および放電回路20をも図示している。マイクロコントローラ18Dは、PWM信号生成部31Dを有している。PWM信号生成部31Dは、PWM信号である制御信号CTLを生成するように構成される。PWM信号生成部31Dは、この制御信号CTLのデューティ比を変更することができるようになっている。
【0101】
図12は、本変形例に係る放電回路20の放電動作の一例を表すものである。
【0102】
この例では、マイクロコントローラ18Dは、監視結果に基づいて電池パック1の異常を検出し、動作モードMを非復帰型保護モードM5に設定する。そして、マイクロコントローラ18Dは、遮断回路12に電流を遮断させ、タイミングt31において、デューティ比がデューティ比D1である制御信号CTLの出力を開始する(
図12(B))。制御信号CTLが高レベルである期間では、放電回路20のスイッチ21はオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21、抵抗素子22、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れる。一方、制御信号CTLが低レベルである期間では、放電回路20のスイッチ21はオフ状態になり、電流は流れない。このようにして、放電回路20では、蓄電池11の放電が行われ、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図12(A))。
【0103】
そして、タイミングt32において、蓄電池電圧VBがしきい電圧Vth3を下回ると、マイクロコントローラ18Dは、デューティ比がデューティ比D2である制御信号CTLの出力を開始する(
図12(B))。このデューティ比D2は、デューティ比D1よりも大きい。制御信号CTLが高レベルである期間では、放電回路20のスイッチ21はオン状態になり、蓄電池11の正極EP、スイッチ21、抵抗素子22、蓄電池11の負極ENの順に電流が流れる。一方、制御信号CTLが低レベルである期間では、放電回路20のスイッチ21はオフ状態になり、電流は流れない。このようにして、放電回路20では、蓄電池11の放電が行われ、時間の経過に応じて、蓄電池電圧VBは低下する(
図12(A))。デューティ比D2は、デューティ比D1よりも大きいので、蓄電池電圧VBの変化度合いを、上記実施の形態の場合よりも大きくすることができる。
【0104】
そして、タイミングt33において、蓄電池電圧VBがシャットダウン電圧Vsdに到達すると、マイクロコントローラ18Dは、動作モードMをシャットダウンモードM4に変化させ、制御信号CTLを低レベルにする(
図12(D))。
【0105】
このようにして、タイミングt23~t33の期間において、放電回路20は蓄電池11を放電する。
【0106】
この電池パック1では、放電回路20は、抵抗素子22と、抵抗素子22と直列に接続されたスイッチ21とを有するようにした。そして、マイクロコントローラ18Dを含む制御回路15は、異常を検出した場合に、蓄電池11の正極EPおよび負極ENの間の電圧である蓄電池電圧VBに基づいて、PWM信号を用いて、スイッチ21の動作を制御するようにした。特に、制御回路15は、蓄電池電圧VBが第1の電圧である場合に、PWM信号のデューティ比を第1の値に設定し、蓄電池電圧VBが第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、デューティ比を第1の値よりも大きい第2の値に設定した。これにより、電池パック1では、上記実施の形態の場合に比べて、短時間で蓄電池11を放電することができる。
【0107】
この例では、マイクロコントローラ18Dは、制御信号CTLのデューティ比を、デューティ比D1およびデューティ比D2の間で切り替えるようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、3つ以上のデューティ比の間で切り替えるようにしてもよい。
【0108】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0109】
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0110】
例えば、上記の実施の形態等では、
図1に示したように、4つの電池セルBCを設けたが、これに限定されるものではなく、1つの電池セルBCを設けてもよいし、2つ、3つ、または5つ以上の電池セルBCを設けてもよい。
【0111】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0112】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
<1>
電源経路に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、
前記電源経路の一端に接続された第1の端子と、
前記電源経路の他端に接続された第2の端子と、
前記電源経路に設けられ、前記電源経路に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、
前記蓄電池の正極および前記蓄電池の負極に接続され、前記蓄電池を放電可能な放電回路と、
前記蓄電池を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、前記遮断回路に電流を遮断させるとともに、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能な制御回路と
を備えた電池パック。
<2>
前記遮断回路は、ヒューズを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記ヒューズを切断状態にする
<1>記載の電池パック。
<3>
前記遮断回路は、オンオフ可能な遮断スイッチを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した後に、前記遮断スイッチをオフ状態に維持する
<1>または<2>記載の電池パック。
<4>
前記制御回路は、
前記蓄電池から供給された電力に基づいて動作可能であり、
前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧が所定の電圧以下になった時に、前記放電回路の動作を停止させることが可能である
<1>から<3>のいずれか1つに記載の電池パック。
<5>
前記蓄電池は、電池セルを有し、
前記制御回路は、
前記電池セルのセル電圧を監視可能であり、
前記蓄電池に流れる電流を監視可能である
<1>から<4>のいずれか1つ記載の電池パック。
<6>
前記異常は、
前記電池セルが大過充電状態であることと、
前記電池セルが深放電状態であることと、
充電中にもかかわらず前記電池セルのセル電圧が低下していることと
前記電池パックに含まれる部品が故障していることと、
前記蓄電池の充電回数または放電回数が所定回数以上であることと
のうちのいずれか1つ以上を含む
<5>記載の電池パック。
<7>
前記蓄電池は、複数の前記電池セルを有し、
前記制御回路は、前記複数の電池セルのそれぞれのセル電圧を監視可能である
<5>に記載の電池パック。
<8>
前記異常は、前記複数の電池セルのそれぞれのセル電圧のばらつきが大きいことを含む
<7>に記載の電池パック。
<9>
前記放電回路は、第1の抵抗素子と、前記第1の抵抗素子と直列に接続されたスイッチとを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記スイッチをオン状態にすることにより、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能である
<1>から<8>のいずれか1つ記載の電池パック。
<10>
前記放電回路は、抵抗値を変更可能な可変抵抗回路を有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧に基づいて前記抵抗値を変更可能である
<1>から<8>のいずれか1つ記載の電池パック。
<11>
前記制御回路は、
前記蓄電池電圧が第1の電圧である場合に、前記抵抗値を第1の抵抗値に設定可能であり、
前記蓄電池電圧が前記第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、前記抵抗値を前記第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値に設定可能である
<10>記載の電池パック。
<12>
前記放電回路は、第1の抵抗素子と、前記第1の抵抗素子と直列に接続されたスイッチとを有し、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合に、前記蓄電池の前記正極および前記負極の間の電圧である蓄電池電圧に基づいて、PWM信号を用いて前記スイッチの動作を制御可能である
<1>から<8>のいずれか1つ記載の電池パック。
<13>
前記制御回路は、
前記蓄電池電圧が第1の電圧である場合に、前記PWM信号のデューティ比を第1の値に設定可能であり、
前記蓄電池電圧が前記第1の電圧よりも低い第2の電圧である場合に、前記デューティ比を前記第1の値よりも大きい第2の値に設定可能である
<12>記載の電池パック。
<14>
前記蓄電池の温度を検出可能な温度センサをさらに備え、
前記制御回路は、前記異常を検出した場合において、前記蓄電池の温度が所定の温度範囲の範囲内である場合に、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能である
<1>から<13>のいずれか1つに記載の電池パック。
<15>
電源経路に設けられ、正極および負極を有する蓄電池と、
前記電源経路の一端に接続された第1の端子と、
前記電源経路の他端に接続された第2の端子と、
前記電源経路に設けられ、前記電源経路に流れる電流を遮断可能な遮断回路と、
前記蓄電池の正極および前記蓄電池の負極に接続され、前記蓄電池を放電可能な放電回路と、
前記蓄電池の温度を検出可能な温度センサと、
前記電流経路に設けられた第2の抵抗素子と、
前記蓄電池、前記温度センサの検出結果、および前記第2の抵抗素子の両端間の電圧を監視可能であり、監視結果に基づいて異常を検出した場合に、前記遮断回路に電流を遮断させるとともに、前記放電回路に前記蓄電池を放電させることが可能な制御回路と
を備えた電池パック。
【符号の説明】
【0113】
1,1B…電池パック、11…蓄電池、12,12B…遮断回路、13…抵抗素子、14…温度センサ、15,15B…制御回路、16…保護回路、17…アナログフロントエンド回路、18,18B,18C,18D…マイクロコントローラ、20,20C…放電回路、21,21A,21B,21C…スイッチ、22,22A,22B,22C…抵抗素子、
BC,BC1,BC2,BC3,BC4…電池セル、CFET,DFET…トランジスタ、CTL,CTLA,CTLB,CTLC…制御信号、D1,D2…デューティ比、EN…負極、EP…正極、M1…通常動作モード、M2…スリープモード、M3…不具合確認モード、M4…シャットダウンモード、M5…非復帰型保護モード、PL…電源線、TDET…端子、TN…負端子、TP…正端子、VB…蓄電池電圧。