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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044624
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】シート構造体およびベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/42 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65G15/42 A
B32B3/30
B32B27/12
B32B5/24 101
B32B27/30 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150266
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】522373943
【氏名又は名称】中興ベルト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】徳永 武寿
(72)【発明者】
【氏名】肥喜里 洋二
(72)【発明者】
【氏名】永島 信介
(72)【発明者】
【氏名】深草 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】須藤 純季
【テーマコード(参考)】
3F024
4F100
【Fターム(参考)】
3F024AA07
3F024AA16
3F024BA02
3F024BA10
3F024DA03
3F024DA07
3F024DA17
4F100AG00A
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK17D
4F100AK17E
4F100AK18B
4F100AK18C
4F100AK18D
4F100AK47A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100DC23D
4F100DC27D
4F100DD04D
4F100DG12A
4F100DJ00D
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ37
4F100EJ82B
4F100EJ82C
4F100GB51
4F100JA03
4F100JJ03A
4F100JL06
(57)【要約】
【課題】耐熱性および耐薬品性が高く、且つ、設計自由度の高いシート構造体およびベルトを提供すること。
【解決手段】第1主面と第1主面の裏側の第2主面とを有する基材と、第1主面および第2主面の少なくとも一方に設けられている突起物とを具備するシート構造体が提供される。基材は、耐熱性繊維を含む織布と該織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを含む。突起物は、第2フッ素樹脂を含み、多孔質である。また、上記シート構造体を具備するベルトが提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性繊維を含む織布と前記織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを含む基材を含み、且つ第1主面と前記第1主面の裏側の第2主面とを有するシート本体と、
前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方に設けられており、第2フッ素樹脂を含む多孔質な突起物と
を具備するシート構造体。
【請求項2】
前記第1フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、及びテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂から成る群より選択される1以上を含む、請求項1に記載のシート構造体。
【請求項3】
前記第2フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、及びテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂から成る群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載のシート構造体。
【請求項4】
前記シート本体と前記突起物との間に在り、第3フッ素樹脂を含有するフッ素樹脂含有層をさらに具備する、請求項1又は2に記載のシート構造体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のシート構造体を具備し、
前記シート構造体の端部同士が接合された環状構造を有する、ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シート構造体およびベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベアベルト等の搬送ベルトは、各種製品の製造のみならず物流業界等の様々な分野において使用されている。ベルトの蛇行を抑制する方法として、一般的にベルトのロール接触面に、コード(例えば、組紐)やステンレス製ピンを装着(固定)し、蛇行防止ガイドとする方法がとられている。ベルトを装着するロールやプーリーとして外周に溝が設けられたものを用い、装着したコード又はピンの位置と溝の位置とが揃うようにベルトを装着する。ベルト走行の際にコード又はピンが溝に沿うため、蛇行が少なく安定したベルト走行が可能になる。なお、コードやピンをベルト基材に直に装着する事もあるが、ベルト走行による装着部(固定部)の劣化などが起こる可能性がある為、装着部分を補強する事がある。補強の具体例として、耳補強を挙げることができる。
【0003】
また、ベルトの上に載せた搬送物の落下防止や位置固定などを目的として、ベルト表面にファブリックやフッ素樹脂製フィルム、或いはコード等を装着(固定)し、例えば、桟とする方法がある。こちらについても、装着部(固定部)の劣化などが起こる可能性がある為、例えば、耳補強を施して、装着部分を補強する事がある。
【0004】
蛇行防止ガイドを備えたベルトの例を、図16図19を参照しながら説明する。各図において、ベルトの進行方向であるタテ方向、つまり機械方向(Machine Direction;MD)をY軸方向として示し、ヨコ方向(Transverse Direction;TD)をX軸方向として示し、厚み方向をZ軸方向として示す。
【0005】
図16及び図17に、コード型のベルトガイドを備えたベルトの一例を概略的に示す。図示するベルト30は、ベルト基材31とそのヨコ方向の両端にてタテ方向に沿って設けられた補強部材11から成る補強部10とを含むベルト本体と、一方の補強部10上にタテ方向に沿って設けられたコード32とを含む。両方の補強部10の上にコード32が設けられる場合もあり、補強部10が省略される場合もある。コード32は、縫製糸35によりベルト本体に固定されている。図17に示すとおり、縫製糸35はベルト基材31、補強部材11のうちベルト基材31とコード32の間に介在する部分、及びコード32を厚み方向に貫通している。例を図示しないが、縫製糸35が補強部材11のうちベルト基材31の片面側(図17では下面側)に在る部分だけでなくベルト基材31を間に挟んだ両側の部分を貫通している、つまり補強部10の厚み方向全体を貫通している場合もある。
【0006】
補強部10は、コード32を装着するにあたって縫製糸35がベルト基材31を貫通していることに起因して、ベルト走行の際にコード32を装着した部分がダメージを受けて破損し得ることから、補強を施したものである。上述したとおり、補強部10が省略される場合もある。
【0007】
コード32には、例えば、アラミド繊維の組紐が用いられる。縫製糸35には、例えば、アラミド繊維製の糸、ガラス繊維製の糸、カーボン繊維製の糸、又はフッ素樹脂製の糸が用いられる。コード32には、ベルト本体への装着の前に、フッ素樹脂の分散液が塗布されている。フッ素樹脂の分散液は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、及びテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などのフッ素樹脂を水に分散させた液体である。コード32は、縫製糸35を用いてベルト基材31に縫製された後に、熱プレスにより形状が成型されている。
【0008】
図17に示すようにプーリー22と面する主面側に設けられたコード32は、蛇行防止用のベルトガイドとして機能し得る。ベルト走行時にプーリー22の回転軸cを中心に外周面に設けられた溝23に沿ってコード32が走行することで、ベルト30の蛇行が抑制される。
【0009】
具体例として、特許文献1(実用新案第30226211号公報)に記載されている蛇行防止用紐を挙げることができる。該蛇行防止用紐は、アラミド繊維からなる細い糸で構成される中芯と、その外周に設けられた、それぞれアラミド繊維からなるSより糸およびZより糸を交互に編んでなる編組体とを含んでいる。さらに中芯および編組体にPTFEが塗布されている。また、特許文献2(特開平5-162832号公報)には、蛇行防止ライナーとして用いられるフッ素樹脂製紐が記載されている。該フッ素樹脂製紐は、PTFE樹脂から成る棒状の未焼成部と、その外周面に設けられたPTFE樹脂から成る焼結部とを含む。
【0010】
図18及び図19に、ピン型のベルトガイドを備えたベルトの一例を概略的に示す。この例のベルト30は、先の例とは異なり、コード32の代わりに一方の補強部10上にタテ方向に沿って一定間隔で配置された複数のステンレス製のガイドピン33を有する。両方の補強部10の上にガイドピン33が設けられる場合もあり、補強部10が省略される場合もある。図19に示すとおり、ガイドピン33はカシメ頭33a及びカシメ足33bを含んでおり、ベルト本体に設けられた貫通孔を通してカシメ加工により固定されている。カシメ頭33a及びカシメ足33bは補強部材11と直に接触せず、間にPTFE等の樹脂製のワッシャー36を介している。ワッシャー36が設けられていることにより、金属製部品による補強部材11やベルト基材31の破損が軽減される。ワッシャー36の周辺が、縫製により補強部材11やベルト基材31に固定される場合がある。
【0011】
図19に示すように、ガイドピン33が有するカシメ頭33aにおけるプーリー22と面する主面から突出する部位は、蛇行防止用のベルトガイドとして機能し得る。ベルト走行時にプーリー22の回転軸cを中心に外周面に設けられた溝23に沿ってガイドピン33が走行することで、ベルト30の蛇行が抑制される。
【0012】
桟を備えたベルトの例を、図20図21を参照しながら説明する。各図において、ベルトのタテ方向(MD)、ヨコ方向(TD)、及び厚み方向は、それぞれY軸方向、X軸方向、及びZ軸方向として示す。
【0013】
図20及び図21に、桟を備えたベルトの一例を概略的に示す。図示するベルト30は、ベルト基材31とベルト基材31上にタテ方向に沿って一定間隔で配置された複数の桟34とを含む。この例では、ファブリック又はフッ素樹脂製フィルムが、断面が逆T字形状になるように折り曲げられ、桟としてベルト基材31の主面上に融着されている。図示した例以外にも、断面形状が三角形や台形等、様々な形状の桟が汎用されている。桟34は、例えば、PTFE、PFA、及びFEPなどのフッ素樹脂の分散液を桟34の装着箇所に塗布、乾燥、焼成させた後、得られるフッ素樹脂含有層5を介してベルト基材31に融着される。或いは、PFA及びFEPなどのフッ素樹脂の溶融フィルムをフッ素樹脂含有層5としてベルト基材31と桟34との間に挟みこんで融着される。
【0014】
或いは、例を図示しないが、図16及び図17に示したコード32と同様の部材を、蛇行防止用ガイドではなく桟として使用することもできる。桟としてのコードは、ベルトの搬送面となる主面上に設けられる。桟としてのコードは、蛇行防止ガイドの場合と同様の方法で装着(固定)される。蛇行防止ガイドと同様に、桟を装着する部分にベルト補強が施される場合もある。
【0015】
桟の形状や配置は、上記例に限られず、様々な形態の桟が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実用新案第3022611号公報
【特許文献2】特開平5-162832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ベルト基材として、ガラス繊維などの耐熱性繊維の織布をフッ素樹脂で被覆した耐熱基材を用いることがある。このような耐熱基材は、フッ素樹脂により、例えば、260℃の耐熱温度および耐薬品性を有し得る。
【0018】
コード型の蛇行防止用ベルトガイドには、例えば、アラミド繊維製の組紐が用いられる。アラミド繊維は樹脂の合成繊維であるため、熱を加えるほど樹脂の分解が進む。従って、アラミド繊維の組紐を連続使用した場合の耐熱温度は200℃であり、ベルト基材を使用可能な温度域をカバーしきれていない。また、耐薬品性の観点からも制限があり、使用環境によっては薬品に曝されることで劣化し、耐久性に欠ける。紫外線(UV)装置において使用できないという弱点もある。さらには、繊維を編んで成るため、汚れた場合に汚れを除去することが難しい。その他、走行ベルトを用いた設備にて、例えば、φ75mm程度の径を有するプーリーが使用されているが、設備のコンパクト化やベルト間の搬送物乗り継ぎの段差の軽減などを目的として、可能な限りのプーリーの最小径化が求められている。組紐の柔軟性では、さらなるプーリー小径化が難しい。また、充実構造のフッ素樹脂成形品でベルトガイドを構成した場合も、柔軟性に限界があり、小径プーリーへの追従性が不十分になり得る懸念がある。アラミド繊維製の組紐には、摩耗しやすくアラミド繊維の摩耗粉や糸くずを多く生じさせ、それらが異物となって品質管理の妨げているという事情もある。
【0019】
金属ピン型のベルトガイドでは、ベルト走行中のピンとロール又はプーリーとの接触音が問題である。また、接触による金属摩耗粉が異物となる問題がある。更には、金属ピンは、ロールやプーリーと接触するベルト裏面だけでなく、搬送物を載せるベルト表面にも突出する部材(例えば、図19に示したカシメ足33bやワッシャー36)を含み、制約となり得る。
【0020】
ベルトガイドの固定には、アラミド繊維糸等による縫製加工が必要であり、加工精度が維持しにくいことや加工工数が多くなることが問題である。特に、ベルトの使用現場でのガイド加工は手縫加工で行うことがあり、その場合は、作業員の力量で仕上がりに差がでる。加えて、縫製加工によってアラミド繊維等の糸がベルト基材を貫通するため、ガイド固定箇所ではフッ素樹脂の被膜に穴が空く。例えば、処理液や搬送物からの漏液など、薬品を含み得る液体が浸み込んで、織布を劣化させるおそれがある。
【0021】
桟については、上述した加工素材(ファブリック、フッ素樹脂フィルム、コード等)が硬く、加工性および桟形状に自由度が少ない。桟の形状および配置によっては、その硬さがベルトの走行性にも影響を与える。さらには、桟と搬送物との接触により、搬送物(製品)を痛めたり、異物混入の原因となったりすることがある。
【0022】
コードを桟として装着(固定)する場合は、コード型の蛇行防止用ベルトガイドと同様の素材を用い、同様に縫製加工が必要になる。従って、上述した耐熱性、耐薬品性、耐UV性能、及び加工精度などに関わる問題がある。
【0023】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性および耐薬品性が高く、且つ、設計自由度の高いシート構造体およびベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
実施形態によれば、第1主面と第1主面の裏側の第2主面とを有するシート本体と、第1主面および第2主面の少なくとも一方に設けられている突起物とを具備するシート構造体が提供される。シート本体は、耐熱性繊維を含む織布と該織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを含んだ基材を含む。突起物は、第2フッ素樹脂を含み、多孔質である。
【0025】
また実施形態によれば、上記シート構造体を具備するベルトが提供される。ベルトは、シート構造体の端部同士が接合された環状構造を有する。
【発明の効果】
【0026】
上記構成のシート構造体およびベルトは、耐熱性および耐薬品性が高く、且つ、設計自由度の高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るシート構造体の一例を概略的に示す斜視図。
図2】実施形態に係るシート構造体の他の例を概略的に示す斜視図。
図3】実施形態に係るベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図4】実施形態に係るベルトの一例を概略的に示す断面図。
図5】実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す断面図。
図6】耳補強の一例を概略的に示す断面図。
図7】耳補強の他の例を概略的に示す断面図。
図8】耳補強のさらに他の例を概略的に示す断面図。
図9】実施形態に係るシート構造体の一例を概略的に示す断面図。
図10】実施形態に係るシート構造体の他の例を概略的に示す断面図。
図11】実施形態に係るシート構造体のさらに他の例を概略的に示す断面図。
図12】実施形態に係るシート構造体のまたさらに他の例を概略的に示す平面図。
図13図12に示すシート構造体を概略的に示す側面図。
図14】実施形態に係るシート構造体のことさら他の例を概略的に示す平面図。
図15図14に示すシート構造体を概略的に示す側面図。
図16】従来のベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図17】従来のベルトの一例を概略的に示す断面図。
図18】従来のベルトの他の例を概略的に示す斜視図。
図19】従来のベルトの他の例を概略的に示す断面図。
図20】従来のベルトのさらに他の例を概略的に示す平面図。
図21図18に示すベルトを概略的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0029】
実施形態に係るシート構造体は、シート本体の第1主面とその裏側にある第2主面との少なくとも一方、つまりシート本体の両面のうち一方または両方にフッ素樹脂製の突起物を含む。当該突起物は、蛇行防止のためのガイド及び/又は落下防止のための桟であり得る。
【0030】
図1に、係るシート構造体の一例を概略的に示す。図1のようにX軸、Y軸、及びZ軸が表記されている各図において、Y軸方向はシート構造体またはベルトの進行方向であるタテ方向、つまり機械方向(Machine Direction;MD)に対応し、X軸方向はヨコ方向(Transverse Direction;TD)に対応し、Z軸方向は厚み方向に対応する。
【0031】
図示するシート構造体1は、基材2とそのヨコ方向の両端にてタテ方向に沿って設けられた補強部材11から成る補強部10とを含むシート本体と、シート本体の一方の主面側にて一方の補強部10上にタテ方向に沿って設けられたガイド3と、シート本体の他方の主面にて一定間隔で配置された複数の桟4とを含む。補強部10は省略することができる。ガイド3及び桟4は、フッ素樹脂含有層5によりシート本体にそれぞれ固定されている。ここで、シート本体の主面より突出しているガイド3及び桟4を総称して突起物と呼ぶ。
【0032】
基材2は、耐熱性繊維を含む織布と、織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを含む。耐熱性織布の例として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、及び、これらから選択される2種以上を混合したものなどが挙げられる。ガラス繊維は、不燃性であり、かつ電気絶縁性を有する。一方、アラミド繊維は、強度に優れ、且つある程度の耐薬品性を有する。炭素繊維は、ガラス繊維よりも強度に優れ、軽く、且つ導電性を有する。
【0033】
織布は、例えば、平織の耐熱性繊維の織布であり得る。或いは、織布は、複数の耐熱性繊維を束ねたロービングが織られて成るメッシュクロスであり得る。メッシュクロスとしては、例えば、からみ織りや模紗織りのものを挙げることができる。
【0034】
第1フッ素樹脂の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;四フッ化エチレン樹脂)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、及びテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などが挙げられる。第1フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。第1フッ素樹脂は、PTFEを含むことが望ましい。
【0035】
基材2は、充填材を含有していてもよい。充填材は、フッ素樹脂に混合または分散されていることが望ましい。充填材の例として、炭素材料、無機物(酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)、各種顔料を挙げることができる。使用する充填材の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。充填材の形態は、特に限定されず、粒状、繊維状、針状などにすることができる。
【0036】
シート本体の両側の各主面(第1主面および第2主面)に設けられている突起物、つまりガイド3及び桟4は、第2フッ素樹脂を含む。突起物は、第2フッ素樹脂の多孔質成形品または多孔質成型品であり得る。また、突起物の多孔質化は、例えば、第2フッ素樹脂から成る前駆体に対する延伸加工によって行われ得る。例示するガイド3は角紐、桟4は逆T字の形状をそれぞれ有するが、突起物の形状は図示するものに限られない。上記の他、突起物の形状は、例えば、丸紐、台形、チューブ等といった様々なものにすることができる。突起物は第2フッ素樹脂を成形または成型して得ることができるため、ガイド3及び桟4の形状の自由度は著しく高い。
【0037】
突起物の形状の他の例を、図2に示す。図示するシート構造体1では、角紐形状の一本のガイドの代わりに台形の形状を有する複数のガイド3が一方の補強部10上にタテ方向に沿って一定間隔で配置されている。
【0038】
第2フッ素樹脂の例として、PTFE、PFA、及びFEPなど、多孔質に成形可能なフッ素樹脂が挙げられる。第2フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。第2フッ素樹脂は、PTFEを含むことが望ましい。
【0039】
フッ素樹脂含有層5は、シート本体の主面上への突起物の融着手段に由来する第3フッ素樹脂を含む。突起物は、例えば、PTFE及びFEP等のフッ素樹脂製フィルムを突起物とシート本体との間に挟み込み、熱融着することにより装着(固定)することができる。又は、PTFE、PFA、及びFEPなどのフッ素樹脂の分散液をシート本体、突起物、又はこれら双方の熱融着部位に塗布し、乾燥させ、双方を接触させた後に熱融着させることもできる。第3フッ素樹脂は、即ち、PTFE、PFA、及びFEPなどを含み得る。第3フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上であり得る。
【0040】
シート本体への突起物の装着手段として、融着する代わりに縫製してもよい。融着せずに縫製する場合は、突起物がフッ素樹脂含有層を介さずに直にシート本体と接し得る。シート本体の耐薬品性や汚れ耐性を維持する観点からは、縫製せずに融着により突起物を固定することが望ましい。突起物を融着したうえで、さらに縫製してもよい。縫製には、例えば、アラミド繊維糸、ガラス繊維糸、カーボン繊維糸、及びフッ素樹脂の糸を用いることができる。アラミド繊維の糸の耐熱温度は200℃程度とシート本体の耐熱温度(例えば、260℃程度)より低いことから、ガラス繊維糸、カーボン繊維糸、又はフッ素樹脂の糸を用いることが望ましい。また、上記繊維の糸がフッ素樹脂で被覆された縫製糸を用いることもできる。縫製後、熱プレスによる成型加工を施して突起物の形状を整えてもよい。
【0041】
係るシート構造体1は、例えば、製品等の製造に使用されるベルト用のベルト基材として用いることができる。シート構造体1の具体的な使用例を、シート構造体を備えたベルトの実施形態として説明する。
【0042】
実施形態に係るベルトの一例を図3に概略的に示す。図示するベルト20は、実施形態に係るシート構造体を具備する。ベルト20は、シート構造体を環状もしくは無端状に接合したものである。
【0043】
ベルト基材の端部同士を接合させてベルト20を環状構造にする形態は、特に限定されない。接合方法は、ベルト基材の両端部を部分的に重ねる方法(オーバーラップ法)、両端部の端面同士を突き合わせる方法(バット法)、端部に傾斜を設けたうえで重ね合わせたり付き合わせたりする方法(スカイバージョイント法)等、公知の方法からベルトの設置環境や運用条件に応じて適宜選択することができる。
【0044】
図3は、ベルト20がプーリー22に取り付けられた状態を示す。ベルト20は、基材2を含むベルト本体と、ベルト本体の一方の主面上に設けられたガイド3と、ベルト本体の他方の主面上に一定間隔で配置された複数の桟4とを含む。ガイド3及び桟4は、フッ素樹脂含有層5によりシート本体の裏面および表面にそれぞれ固定されている。
【0045】
ガイド3は、ベルト本体の両面のうちプーリー22と面する裏面側の主面に設けられている。また、ガイド3は、ベルト20の進行方向99に沿っている。プーリー22と面する主面側に設けられたガイド3は、蛇行防止用のベルトガイドとして機能する。
【0046】
図4を参照しながら、ガイド3による蛇行防止の概要を説明する。ここでは、多孔質な突起物としてガイド3のみ有し、桟が設けられていないシート構造体をベルト20に用いた例を示す。プーリー22の回転軸cを中心とする外周面に面するベルト本体の主面に、フッ素樹脂含有層5を介してガイド3が設けられている。ベルト20のヨコ方向への位置は、プーリー22の外周面に設けられた溝23の位置に対応している。ベルト走行時にプーリー22の溝23に沿ってガイド3が走行することで、ベルト20の蛇行が抑制される。
【0047】
第2フッ素樹脂を含んだ多孔質材料で形成されたガイド3は、ベルト本体(シート本体)へ融着により固定することができ、装着に縫製加工を必要としない。そのため、図3及び図4で示した例のように、補強部を省略しても、ベルト本体へのガイド3の固定箇所への走行時のダメージを気にしなくてもよい。補強部は設けてもよく、例えば、図5に示す例のベルト20のように基材2とガイド3(及びフッ素樹脂含有層5)の間に補強部材11を挟んで補強部10を設けてもよい。縫製によりガイド3を固定した場合は、ベルト走行によりベルト本体がダメージを受けて破損する可能性を鑑みて、補強部10を設けることが望ましい。縫製ではなく融着によりガイド3を固定する場合も補強部10を設けてもよい。なお、ここで例示した補強部10は後述する包み込み加工によるものであるが、補強部10の形態は図示するものに限られない。
【0048】
また、基材に含む織布としてメッシュクロスを用いる場合は、基材端部に沿って補強部を設けることが望ましい。メッシュタイプの織布では、平織の織布と比べてフッ素樹脂によるロービング同士を固める強度(拘束力)が弱く、ロービングの解れが発生し得る。基材の縁に補強部材を設けることにより、メッシュクロスを構成するロービングの解れを防止できる。また、突起物を融着するための面積を確保する目的で、メッシュクロスに補強部を設けても良い。メッシュクロスとして、例えば、ロービングがからみ織りで織られたメッシュクロスやロービングが模紗織りで織られたメッシュクロス等を挙げることができる。
【0049】
図6図8を参照しながら補強部の具体例を説明する。
【0050】
図6は、ラミネート加工により耳補強を施した例である。ラミネート加工では、基材2の表面又は裏面に、補強部材11として補強用ファブリック又は補強用フッ素樹脂フィルム等を融着させることで、補強部10を設ける。ここでは、基材2の耳部、つまりヨコ方向の端部に補強部10を設けている。ラミネート加工により補強部を設ける位置は、耳部に限られない。例えば、基材2の中央に補強部を設けることもできる。
【0051】
図7は、包み込み加工により耳補強を施した例である。包み込み加工では、基材2の端部を補強用ファブリック又は補強用フッ素樹脂フィルム等で包み込み、融着させることで補強部10を設ける。
【0052】
図8は、折り曲げ加工により耳補強を施した例である。折り曲げ加工では、基材2の端部を表面側又は裏面側に折り曲げ、融着させることで補強部10を設ける。
【0053】
ラミネート加工や包み込み加工に用いる補強用ファブリックとしては、例えば、ガラス繊維織物、アラミド繊維織物、カーボン繊維織物などを挙げることができる。シート構造体の使用環境に応じて、ファブリックを適宜選択できる。例えば、200℃を超える環境下では、熱収縮による耐熱温度の限界(200℃)が懸念されるアラミド繊維の織物よりも、そういった懸念が無いガラス繊維やカーボン繊維の織物の方が、補強用ファブリックとして好ましい。但し、アラミド繊維は屈曲疲労の観点からは優れており、200℃以下の環境ではより高い強度保持率が得られるアラミド繊維を補強用ファブリックに用いることが好ましい。補強用フィルムとしては、例えば、PTFEスカイビングフィルム及び未焼成PTFEフィルム等を挙げることができる。なお、未焼成PTFEフィルムはシールテープに用いられている材質であり、融着を行った際に焼成された状態になる。
【0054】
融着は、例えば、PTFE、PFA、及びFEPなどのフッ素樹脂の分散液を補強部分に塗布および乾燥させた後、焼き付ける(焼成する)ことで行うことができる。或いは、PFA及びFEPなどのフッ素樹脂の溶融フィルムを基材と補強部材との間に挟みこみ、融着させる。
【0055】
蛇行防止用のベルトガイドとしての突起物の位置は、特に限られない。例えば、シート構造体またはベルトのヨコ方向の端部付近にベルトガイドを設けてもよいし、中央にベルトガイドを設けてもよい。また、シート構造体またはベルトのタテ方向に沿うベルトガイドの列の数は1列に限られない。例えば、2列以上のベルトガイドがシート本体の一方の主面に設けられていてもよい。ベルトガイドと共に蛇行防止機構として機能する溝等のロールやプーリー側の部位に合わせて、ベルトガイドの位置や列数を適宜設定する。
【0056】
図9図11を参照しながら、具体例を説明する。図9図11では、補強部を省略した例を示しているが、何れの場合も、例えば、ヨコ方向の一方の端部または両方の端部に沿って耳補強を施してもよい。また、一方または両方の補強部の上にベルトガイドを設けてもよい。
【0057】
図9に、基材2のヨコ方向の片方の端部側に寄った位置に1列のガイド3が設けられているシート構造体1を示す。基材2の端部からガイド3の設置位置までの幅Wの値は特に限定されないが、その具体例として15mmを挙げることができる。なお、ここでは、ガイド3の中央の位置をガイド3の設置位置として表す例を示している。
【0058】
図10に、2列のガイド3が基材2のヨコ方向の両端部側へそれぞれ寄った位置に設けられているシート構造体1を示す。基材2の一方の端部から一方のガイド3の設置位置までの幅W1と、他方の端部から他方のガイド3の設置位置までの幅W2とは、同じ値を有してもよく、異なる値を有してもよい。
【0059】
図11に、基材2のヨコ方向の中程の位置に1列のガイド3が設けられているシート構造体1を示す。基材2の一方の端部からガイド3の設置位置までの幅W1と、他方の端部からガイド3の中央までの幅W2とは、同じ値を有してもよく、異なる値を有してもよい。つまり、ガイド3の設置位置はヨコ方向の真に中央であってもよく、中央からずれていてもよい。
【0060】
上記では、シート構造体(ベルトのベルト基材)の両面にそれぞれガイド及び桟を設けた例および片面にガイドのみを設けた例を示したが、実施形態に係るシート構造体は、突起物として桟のみ含む形態も含む。
【0061】
図12及び図13に、突起物として桟のみ含むシート構造体の例を示す。図示するシート構造体1は、基材2と、基材2の一方の主面上にフッ素樹脂含有層5を介して設けられた複数の桟4を含む。例示する桟4は逆T字の形状を有するが、桟4の形状は図示するものに限られない。例えば、図14及び図15に示す例のように、シート構造体1は四角柱の形状を有する桟4を含むこともできるし、その他さまざまな形状の桟を含むこともできる。また、図12図15の例では、桟4は基材2をヨコ方向に横断する配置で設けられているが、桟4の配置は図示するものに限られず、例えば、搬送物や搬送経路等に応じて適宜設定することができる。
【0062】
実施形態に係るシート構造体の用途は、ベルト用基材に限られない。
【0063】
実施形態に係るシート構造体およびベルトでは、多孔質なフッ素樹脂(第2フッ素樹脂)の成形品または成型品により蛇行防止ガイドや桟などの突起物を構成しているため、シート本体およびベルト本体と同等の耐熱温度(260℃)を有する。そのため、連続使用温度260℃下での使用が可能である。例えば、従来のコード仕様のベルトガイドや桟に用いられていたアラミド繊維を失くすことができるため、アラミド繊維の熱収縮により連続使用耐熱温度が200℃であったコード仕様の限界を超えて使用環境を拡大できる。
【0064】
また、第2フッ素樹脂を含んでいることで突起物自体の耐薬品性が高い。突起物が耐紫外線(UV)性質を示すため、シート構造体およびベルトをUV装置において使用することが可能である。加えて、突起物に汚れが残りにくい。
【0065】
突起物としてフッ素樹脂を様々な形状に成形(成型)可能である為、シート構造体およびベルトの用途や仕様に適した対応が可能である。例えば、従来のコード型では組紐の仕様に応じて寸法等が限られているが、用途に適応すべく新規に多孔質材を成型もしくは加工することで、様々な立体的ガイドや桟を容易に準備できる。加えて、多孔質な突起物はフレキシブル性が高く、小径のプーリーに対しても高い追従性を発揮できる。さらには、多孔質フッ素成形品からなる突起物は、例えば、アラミド繊維を用いた組紐と比べて耐摩耗性が優れている。そのため、耐久性が高いだけでなく、異物を低減できる。
【0066】
シート本体やベルト本体への突起物の装着(固定)に補強加工や縫製加工が必要なく熱プレス加工で容易に取り付けることが可能である。また、フレキシブル性もあるので、自由度が高い。加えて、縫製加工では縫製装置の構造上幅広ベルトのセンター部分への取り付けができない場合もあるが、熱融着であればベルトセンター部分への直接の取付けが可能である。ベルト中央への蛇行防止ガイドの装着により、両端ガイドによるベルトの走行規制に起因するベルト本体への負担を軽減し、ベルトの破断による故障を少なくできる。
【0067】
縫製加工を省略できるため、その分の工数を削減し作業管理を簡素化することができる。また、突起物の取付けは、例えば、アイロン加工などといった熱プレス加工で作業可能であり、治具等を利用することで力量に左右されない。
【0068】
従来の金属ピン型のベルトガイドには金属摩耗粉の発生および混入という問題があったが、実施形態に係る突起物のガイドとしての使用ではフッ素樹脂を用いたことで大幅な摩耗粉対策が成されている。そのため、クリーン度を求められている使用環境での駆動に適している。桟としての使用においても、搬送物への接触等による異物混入が少なく、クリーン度が著しく高い。
【実施例0069】
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0070】
<ベルト走行試験>
[試料作製]
(実施例A)
基材として下記のとおりPTFE被覆ファブリックを製造し、シート本体とした。また、下記のとおり多孔質PTFEコードを製造し、突起物としての多孔質成型品に用いた。
【0071】
PTFE被覆ファブリックは、次のとおり製造した。ガラス繊維が平織された織布をPTFEディスパージョンに浸漬した後、これを焼成した。この浸漬および焼成する操作を複数回繰り返すことにより、ガラス繊維製織布の表面がPTFEで被覆された基材を作製した。得られた基材は、厚さが0.240mmの帯形状であった。基材を290mm×917mmの寸法に裁断し、シート本体を得た。
【0072】
多孔質PTFEコードは、次のとおり製造した。PTFEファインパウダー100質量部に対してナフサ(押出助剤)18質量部を加えた後、ターブラーミキサーを用いて混合して、混和物を調製した。続いて、混和物を予備成形機により円柱状に成形した。得られた予備成形品を押出機に投入した。得られた押出成形品を加熱炉にて乾燥させることで押出助剤を除去した。PTFEの融点以下で押出成形品に対し長さ方向への一軸延伸を行った。この際、長手方向への長さが3倍程度になるように、延伸を行った。次いで、焼成を行い、8mm×3mmの矩形断面形状を有する多孔質PTFEコードを得た。
【0073】
上記シート本体の片面に、コード中央が長辺に沿って片側の縁から10mmの位置になるよう上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物として蛇行防止ガイドを備えたシート構造体を得た。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。シート構造体が環状を成すようにシート本体の長手方向の両端部をオーバーラップ法により接合し、蛇行防止ベルトガイドを備えたエンドレスベルトを得た。
【0074】
[評価試験]
上記エンドレスベルトに対し、ダイワハイテックス社製小型シュリンク包装機PIKO 90-6Sを用いてベルト走行試験を実施した。具体的には、PIKO 90-6Sに備わっていた搬送ベルトを上記エンドレスベルトで置換え、下記条件で連続運転試験を行った。
【0075】
試験条件
連続運転: 20h/日(12000回屈曲/日)×9日(計10.8万回屈曲)
ロール径: φ50 mm×2個(片側溝付き;約11mm幅)
走行速度: 5 m/min
温度: 常時加熱(遠赤外線ヒーター)、底部ヒーター内部制御
ベルト温度:ベルト表面温度205℃前後
(装置内部の底部ヒーター設置部にて走行上ベルト表面で測定)。
【0076】
上記条件で連続走行させた結果、ベルト全体の寸法に変化が認められず、安定した走行が確認された。
【0077】
<剥離強度試験>
[試料作製]
(実施例B1-1)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を50mm×180mmの寸法に裁断し、シート本体とした。また、押出機に設置したダイの形状および寸法を変更し、長手方向への長さが2倍程度になるように弱延伸を行ったことを除き、実施例Aと同様の手順で4mm×4mmの矩形断面形状を有する多孔質PTFEコードを製造した。
【0078】
上記シート本体の片面に、短手方向の中央にて長辺方向に沿って上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物を備えたシート構造体を得た。但し、コードの一方の端部にて、シート本体に融着させていない部分を残した。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。
【0079】
上記手順で、シート構造体の試料を5枚作製した。
【0080】
(実施例B1-2)
多孔質PTFEコードを製造する際、長手方向への長さが3倍程度になるように延伸強度を増加させたことを除き、実施例B1-1と同様の手順でシート構造体の試料を5枚作製した。
【0081】
(実施例B1-3)
多孔質PTFEコードを製造する際、長手方向への長さが5倍程度になるように延伸強度を増加させたことを除き、実施例B1-1と同様の手順でシート構造体の試料を5枚作製した。
【0082】
(実施例B1-4)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を50mm×180mmの寸法に裁断し、シート本体とした。また、実施例Aと同様の手順で多孔質PTFEコードを製造した。
【0083】
上記シート本体の片面に、短手方向の中央にて長辺方向に沿って上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物を備えたシート構造体を得た。但し、コードの一方の端部にて、シート本体に融着させていない部分を残した。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。
【0084】
上記手順で、シート構造体の試料を5枚作製した。
【0085】
(実施例B2-1から実施例B2-4)
シート本体への多孔質PTFEコードの融着に、PFAフィルムを用いる代わりにPFA樹脂の分散液を融着箇所に塗布したことを除き、実施例B1-1から実施例B1-4とそれぞれ同様の手順でシート構造体の試料を5枚作製した。
【0086】
(実施例B3-1から実施例B3-4)
シート本体への多孔質PTFEコードの融着に、PFA樹脂の分散液を塗布する前に、研磨紙を用いて融着面を粗面化したことを除き、実施例B2-1から実施例B2-4と同様の手順でシート構造体の試料を5枚作製した。
【0087】
[評価試験]
日本工業規格JIS K 6854-2:1999に規定される180度剥離試験に準じる方法で、実施例B1-1からB3-4(以後、まとめて実施例Bと呼ぶ)にて作製した各試料におけるシート本体に対するPTFEコードの剥離強度を測定した。
【0088】
実施例Bの何れについての剥離強度試験においても、シート本体とPTFEコードとの間ではなく、シート本体にて織布とPTFE被膜との層間で剥離が生じた。この結果が示すとおり、縫製せずに融着したコードは、シート本体に強固に結着していた。
【0089】
<熱収縮試験>
[試料作製]
(実施例C)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を70mm×800mmの寸法に裁断し、シート本体とした。また、実施例Aと同様の手順で多孔質PTFEコードを製造した。
【0090】
上記シート本体の片面に、短手方向の中央にて長辺方向に沿って上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物を備えたシート構造体を得た。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。
【0091】
[評価試験]
得られたシート構造体を、260℃に設定した炉に入れ、1時間保持した。1時間経過後、シート構造体を取出して、常温(約25℃)にて20分間放置し、冷ましたシート構造体の長手方向の長さを測定した。炉にて保持した後に冷まして寸法を測る作業を3回目まで繰り返した。炉に保持して冷ました毎のシート構造体の、1回目に炉に保持する前の初期長さ(800mm)に対する収縮率を算出した。その結果を下記表1に示す。表1には、各段階の長辺長さおよび初期長さに対する収縮率を示す。
【0092】
【表1】
【0093】
上記結果が示す通り、260℃の環境下でもシート構造体の収縮はほとんどなかった。このことから、連続使用温度260℃を達成できたことが分かる。
【0094】
<浸漬試験>
[試料作製]
(実施例D)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を200mm×120mmの寸法に裁断し、シート本体とした。また、実施例B1-2と同様(3倍延伸、4mm×4mm断面)の手順で多孔質PTFEコードを製造した。
【0095】
上記シート本体の片面に、長手方向の中央にて短辺方向に沿って上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物を備えたシート構造体を得た。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。
【0096】
(比較例)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を200mm×120mmの寸法に裁断し、シート本体とした。
【0097】
4mm×4mmの断面形状を有するアラミド繊維組紐にPFAの分散液を塗布した。次いで上記シート本体の片面に、アラミド繊維の糸を用いて長手方向の中央にて短辺方向に沿って上記アラミド繊維組紐を縫製した。こうして、シート構造体を得た。
【0098】
[評価試験]
底が浅い金属製容器内に、実施例D及び比較例で作製したシート構造体をそれぞれ1枚ずつ敷いた。容器にキャノーラ油または醤油を注ぎ、実施例Dに係るシート構造体をキャノーラ油および醤油に各々浸漬させた試料、並びに比較例に係るシート構造体をキャノーラ油および醤油に各々浸漬させた試料をそれぞれ準備した。各シート構造体を3日間浸漬させた後、キャノーラ油または醤油から引上げ、目視で観察した。
【0099】
実施例Dで得られたシート構造体については、キャノーラ油に浸漬させた試料および醤油に浸漬させた試料の何れにおいてもシート及びコードの表面にキャノーラ油または醤油が付着していたものの、基材への浸透は認められなかった。これに対し比較例で得られたシート構造体では、表面付着に加え、キャノーラ油に浸漬させた試料にはアラミド繊維組紐の周囲の数センチ幅に基材への浸透が見られ、醤油に浸漬させたにはアラミド繊維組紐の周囲の数ミリ幅に基材への浸透が見られた。
【0100】
このとおり、縫製糸によりシート本体のPTFE被覆層が傷つけられていると、その箇所から汚れが基材に到達できてしまう。縫製ではなく融着によりコード等の突起物を装着した場合は基材表面の被覆層が傷つかず、基材の保護を維持できる。
【0101】
<汚れ付着試験および清掃容易性確認>
[試料作製]
(実施例E)
上記走行試験の実施例Aと同様の手順で基材を作製した。得られた基材を200mm×120mmの寸法に裁断し、シート本体とした。また、押出機に設置したダイの形状および寸法を変更したことを除き、実施例Aと同様の手順で4mm×4mmの矩形断面形状を有する多孔質PTFEコードを製造した。
【0102】
上記シート本体の片面に、長手方向の中央にて短辺方向に沿って上記多孔質PTFEコードを融着して、突起物を備えたシート構造体を得た。融着には、25μmの厚さを有するPFAフィルムを用いた。
【0103】
(比較例)
上記浸漬試験における比較例と同様の手順でシート構造体を準備した。
【0104】
[評価試験]
(汚れ付着試験)
ホットケーキミックス(森永製菓株式会社製;150g)に水(150ml)を加え、均一になるまで攪拌した。また、識別確認用に、食用色素(緑)を添加して緑色に着色した。
【0105】
実施例Eで作製したシート構造体の片面にPTFEコードを部分的に覆うように緑色ホットケーキ生地を盛り付けて、試料を準備した。また、反対側の片面にPTFEコードの融着面の裏側に当たる箇所を部分的に覆うように緑色生地を盛り付けて、試料を準備した。
【0106】
比較例で作製したシート構造体の片面にアラミド繊維組紐を部分的に覆うように緑色生地を盛り付けて、試料を準備した。また、反対側の片面に縫製糸を部分的に覆うように緑色生地を盛り付けた。
【0107】
緑色生地を盛り付けた各シート構造体試料を250℃に設定した恒温器の中に入れ、15分間放置した後、恒温器から取り出して常温(約25℃)にて冷ました。また、緑色生地を盛り付けた各シート構造体試料を250℃に設定した恒温器の中に入れ、20分間焼成した後、恒温器から取り出して常温(約25℃)にて冷ました。
【0108】
冷ました各シート構造体の各面から焼きあがった緑色塊を物理的に剥がし、汚れ具合の目視確認を行った。その結果を下記表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
(清掃容易性確認)
続いて、20分間焼成した各試料について、緑色塊を剥がした後の残留物の清掃の容易性を次のとおり確認した。アルコールで濡らしたキムワイプで各試料のシート構造体におけるコード又はアラミド組紐が装着された面に対する裏面(つまり、ベルトの場合の搬送面)を清掃し、付着物の残留具合を比較した。実施例Eに係る試料ではシート表面を綺麗に清掃できたが、比較例は縫製糸の糸目にわずかに残留した。
【0111】
以上の結果から、アラミド繊維等の組紐を多孔質フッ素樹脂のコードで置き換えることで、基材両面ともに汚れの付着を低減するとともに清掃の容易性を向上できることがわかる。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0113】
1…シート構造体、2…基材、3…ガイド、4…桟、5…フッ素樹脂含有層、10…補強部、11…補強部材、20…ベルト、22…プーリー、23…溝、30…ベルト、31…ベルト基材、32…コード、33…ガイドピン、33a…カシメ頭、33b…カシメ足、34…桟、35…縫製糸、36…ワッシャー、99…進行方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20
図21