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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044629
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20240326BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F04B39/12 101H
F04C29/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150272
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤井 悠典
(72)【発明者】
【氏名】上石田 弘毅
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003BA00
3H003BB00
3H003CD01
3H003CD07
3H003CE01
3H003CF04
3H129AA01
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB21
3H129BB32
3H129BB33
3H129CC07
3H129CC09
3H129CC24
(57)【要約】
【課題】圧縮機の組立工程において溶接などを行うと、ロータの回転軸の撓み量が大きくなることで、ステータの内径の中心に対するロータの中心位置のずれが大きくなる場合がある。
【解決手段】圧縮機10は、圧縮機構40と、ケーシング20と、第1、第2インレットチューブ55a、55bと、第1、第2継手管50a、50bと、を備える。第1継手管50aは、第1インレットチューブ55aの周囲を覆う。第1継手管50aは、第1部51aと、第2部52aと、第3部53aと、を有する。第1部51aは、第1継手管50aが第1インレットチューブ55aに固定される先端側に位置する。第2部52aは、第1部51aよりもケーシング20に近い側に位置する。第3部53aはケーシング20に近い側に位置する第3部53aとの間に位置する。第2部52aの内径が第1部51aの内径よりも大きい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入するための吸入口(62a)を有する圧縮機構(40)と、
円筒部材(21)を有し、前記圧縮機構を収容するケーシング(20)と、
前記ケーシングを貫通して、前記吸入口に挿入される第1先端部(56a)を有するインレットチューブ(55a)と、
前記ケーシングの外周面から前記ケーシングの外側に延び、前記インレットチューブの周囲を覆う継手管(50a、500a)と、
を備え、
前記継手管は、
前記継手管が前記インレットチューブに固定される先端側に位置する第1部(51a、510a)と、
前記第1部よりも前記ケーシングに近い側に位置する第2部(52a、520a)と、
前記ケーシングに固定され、前記第2部よりも前記ケーシングに近い側に位置する第3部(53a、530a)と、
を有し、
前記第2部の内径が前記第1部の内径よりも大きい、
圧縮機(10、100)。
【請求項2】
前記継手管は、
前記第1部の内径(d1)と、前記第2部の内径(d2)との比が、16:17~16:19である、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記インレットチューブを介して前記吸入口に接続される出口管(72a)を有するアキュムレータ(6)、
をさらに備え、
前記インレットチューブは、
前記出口管が圧入される第2先端部(57a)と、
前記第1先端部と前記第2先端部とを接続する拡径部(58a)と、
をさらに有し、
前記第2先端部の外径(c2)が前記第1先端部の外径(c1)よりも大きく、
前記継手管は、
前記第3部の内径(d3)が前記第2部の内径より小さく、前記第1部の内径と前記第3部の内径とが同じであり、
前記インレットチューブの前記拡径部は、前記継手管の前記第2部に対向するように配置される、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記継手管は、
前記第3部の内径が前記第2部の内径と同じである、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記インレットチューブの前記第2先端部の外径と、前記継手管の前記第2部の内径との比が、16:17~16:25である、
請求項1又は2のいずれかに記載の圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮機構は、
前記冷媒が流入するシリンダ(41a)、
を有し、
前記シリンダと前記ケーシングは、タック溶接によって固定されている、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項7】
ロータリー圧縮機である、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の圧縮機、
を備える、冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機では、駆動軸を駆動するモータのステータ及び圧縮機構がケーシングの内面に固定されている。例えば、特許文献1(実公昭63-46697号公報)のように、圧縮機構が溶接によりケーシングの下部に固定される圧縮機が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の圧縮機では、圧縮機の継手管がストレート状であり、インレットチューブとインレットチューブの周囲を覆う継手管との隙間が狭くなっている。そのため、圧縮機の組立工程において溶接、熱かしめ、焼き嵌めなどを行うと、ロータの回転軸の撓み量が大きくなることで、ステータの内径の中心に対するロータの中心位置のずれが大きくなる場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の圧縮機は、圧縮機構と、ケーシングと、インレットチューブと、継手管と、を有する。圧縮機構は、冷媒を吸入するための吸入口を有する。ケーシングは、円筒部材を有し、圧縮機構を収容する。インレットチューブは、ケーシングを貫通して、吸入口に挿入される第1先端部を有する。継手管は、ケーシングの外周面からケーシングの外側に延び、インレットチューブの周囲を覆う。継手管は、第1部と、第2部と、第3部と、を有する。第1部は、継手管がインレットチューブに固定される先端側に位置する。第2部は、第1部よりもケーシングに近い側に位置する。第3部は、ケーシングに固定され、第2部よりもケーシングに近い側に位置する。第2部の内径が第1部の内径よりも大きい。
【0005】
この圧縮機では、インレットチューブの周囲を覆う継手管の第2部の内径を第1部の内径より大きくすることにより、モータのステータの内径の中心に対するロータの中心位置のずれを小さくでき、音や振動を低減することができる。
【0006】
第2観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、継手管は、第1部の内径と、第2部の内径との比が、16:17~16:19である。
【0007】
この圧縮機では、継手管の一部の内径を大きくしても、継手管の強度を維持することができる。
【0008】
第3観点の圧縮機は、第1観点又は第2観点の圧縮機であって、アキュムレータをさらに備える。アキュムレータは、インレットチューブを介して吸入口に接続される出口管を有する。インレットチューブは、第2先端部と、拡径部と、をさらに有する。第2先端部は、出口管が圧入される。拡径部は、第1先端部と第2先端部とを接続する。第2先端部の外径が第1先端部の外径よりも大きい。継手管は、第3部の内径が第2部の内径より小さく、第1部の内径と第3部の内径とが同じである。インレットチューブの拡径部は、継手管の第2部に対向するように配置される。
【0009】
この圧縮機では、第2部の内径が最も大きくなるようにすることにより、継手管が貫通するケーシングの穴の内径を変えることなく、継手管の一部の内径を大きくすることができる。
【0010】
第4観点の圧縮機は、第1観点又は第2観点の圧縮機であって、継手管は、第3部の内径が第2部の内径と同じである。
【0011】
この圧縮機では、継手管の第1部のみを絞ることで、容易に、継手管の一部の内径を大きくした構造にすることができる。
【0012】
第5観点の圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれかの圧縮機であって、インレットチューブの第2先端部の外径と、継手管の第2部の内径との比が、16:17~16:25である。
【0013】
この圧縮機では、インレットチューブの外径に対して、継手管の第2部の内径が大きくなるようにすることで、インレットチューブが継手管の第2部の内周に接触しにくくすることができる。
【0014】
第6観点の圧縮機は、第1観点から第5観点のいずれかの圧縮機であって、圧縮機構は、シリンダを有する。シリンダは、冷媒が流入する。シリンダとケーシングは、タック溶接によって固定されている。
【0015】
この圧縮機では、圧縮機の組立工程において、シリンダをケーシングに固定することができる。
【0016】
第7観点の圧縮機は、第1観点から第6観点のいずれかの圧縮機であって、ロータリー圧縮機である。
【0017】
この圧縮機では、ロータリー圧縮機の組立工程において、溶接時のロータの回転軸の撓み量を小さくすることができ、ステータの内径の中心に対するロータの中心位置のずれを小さくすることができる。
【0018】
第8観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第7観点のいずれかの圧縮機、を備える。
【0019】
この冷凍サイクル装置では、冷凍サイクル装置が有する圧縮機の音や振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図2】本実施形態の圧縮機の断面図である。
図3】モータの構成を模式的に示す平面図である。
図4】第1シリンダの断面図である。
図5】第2シリンダの断面図である。
図6図2のVI部の拡大図である。
図7A】圧縮機の組立工程を説明するための図である。
図7B】圧縮機の組立工程を説明するための図である。
図7C】圧縮機の組立工程を説明するための図である。
図8】変形例Aの圧縮機を示す図であり、図6に相当する図である。
図9A】比較例である圧縮機の組立工程を説明するための図である。
図9B】比較例である圧縮機の組立工程を説明するための図である。
図9C】比較例である圧縮機の組立工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)圧縮機が使用される冷凍サイクル装置の全体構成
本実施形態の冷凍サイクル装置1の全体構成の概略を図1に示す。図1は、冷媒回路を中心に記載している。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、冷暖房を行う空気調和装置、冷温水器などに用いることができる。
【0022】
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、室外機2と、室内機3とを含む。室外機2は、圧縮機10と、四方切換弁8と、熱源側熱交換器4と、膨張弁7を含んでいる。室内機3は、利用側熱交換器5を含んでいる。この形態の場合、利用側熱交換器5においては、冷媒は、室内の空気と熱交換を行う。利用側熱交換器において、冷媒と水などの別の媒体と熱交換器を行うときは、利用側熱交換器を室外に配置しても良い。
【0023】
本実施形態の冷凍サイクル装置1の冷媒回路は、主に、圧縮機10と、四方切換弁8と、熱源側熱交換器4と、膨張弁7と、利用側熱交換器5と、アキュムレータ6と、を有している。
【0024】
圧縮機10は、冷媒を圧縮する。四方切換弁8は、図1の破線(暖房)と、実線(冷房)とで冷媒の流れを切り換える。
【0025】
暖房運転時には、圧縮機10から吐出した冷媒は、利用側熱交換器5、膨張弁7、熱源側熱交換器4、アキュムレータ6を経由して、再び圧縮機10に吸入される。言い換えると、暖房時には、利用側熱交換器5が、放熱器として、熱源側熱交換器4が、蒸発器として機能する。
【0026】
冷房運転時には、圧縮機10から吐出した冷媒は、熱源側熱交換器4、膨張弁7、利用側熱交換器5、アキュムレータ6を経由して、再び圧縮機10に吸入される。言い換えると、冷房時には、熱源側熱交換器4が、放熱器として、利用側熱交換器5が、蒸発器として機能する。
【0027】
(2)圧縮機の全体構成
アキュムレータ6が接続された圧縮機10の断面図を図2に示す。圧縮機10は、主に、ケーシング20と、モータ30と、駆動軸35と、圧縮機構40と、第1、第2インレットチューブ55a、55bと、第1、第2継手管50a、50bと、を有する。
【0028】
圧縮機10は2シリンダ型のロータリー圧縮機であり、第1シリンダ41aと第2シリンダ41bとを有する圧縮機構40を備えている。圧縮機構40は、冷媒を吸入するための第1、第2吸入口62a、62bを有する。
【0029】
圧縮機11は、ケーシング20内に収容された圧縮機構40に形成された第1、第2吸入口62a、62bにケーシング20の外から挿入される第1、第2インレットチューブ55a、55bが圧入されており、アキュムレータ6の第1、第2出口管72a、72bが第1、第2インレットチューブ55a、55bを介して第1、第2吸入口62a、62bに接続された構成となっている。
【0030】
そして、圧縮機11の運転を行うと、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、アキュムレータ6、第1、第2出口管72a、72b、第1、第2インレットチューブ55a、55b、及び吸入口62a、62bを通じて、第1シリンダ41a及び第2シリンダ41b内に流入する。この第1、第2シリンダ41a、41b内に流入した冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮されて、ケーシング20内の空間に吐出される。さらにこのケーシング20内に吐出された冷媒は、熱側熱交換器12に送られる。
【0031】
(3)圧縮機の詳細構成
(3-1)ケーシング
ケーシング20は、胴部(円筒部材)21、上蓋部22、下蓋部23を有する。上蓋部22及び下蓋部23は、胴部21に接合されている。ケーシング20は、胴部21に、第1継手管50a及び第2継手管50bを有している。上蓋部22には吐出管12が取り付けられている。ケーシング20の下部には、潤滑油を貯留するための油貯留部19が設けられている。
【0032】
(3-2)モータ
モータ30は、駆動軸35に連結し、駆動軸35及び圧縮機構40を駆動する機構である。モータ30は、図2に示すように、ケーシング20の上下方向における中央部に収容される。モータ30は、圧縮機構40の上方に配置される。
【0033】
図3は、モータ30の構成を模式的に示す平面図である。モータ30は、主として、ステータ31と、ロータ32とを有する。
【0034】
ステータ31は、環状に形成されており、円筒形状のステータコア31aと、このステータコア31aに巻き付けられた巻線31bとを有する。ステータコア31aは、例えば積層された複数の鋼板からなる。巻線31bは、ステータコア31aの各ティース部31cにそれぞれ巻かれるものである。ステータ31は、円筒部材21の内周面に隙間を空けて固定される。具体的には、ステータ31は、その外周面が、円筒部材21の内面とスポット溶接により固定される。ただし、ステータ31と円筒部材21との固定方法は例示であって、これに限定されるものではない。例えば、円筒部材21の内周面とステータ31とは、溶接、かしめ、又は接着剤により固定されてもよいし、溶接及び接着剤又はかしめ及び接着剤により固定されてもよい。また、円筒部材21の内周面とステータ31との隙間は、概ね0.15~0.30mmである。
【0035】
なお、図3に示されるように、ケーシング20の円筒部材21の内周面とステータコア31aの外周面との間には、コアカット31dが形成される。ここでは、3個のコアカット31dが形成されている。コアカット31dは、上端面から下端面に亘り中心軸に沿って形成される切欠状の溝であり、冷媒ガス及び冷凍機油の流通経路として機能する。円筒部材21の内周面とコアカット31dとの間は、概ね数mm~数十mmである。このようなコアカット31dが形成される位置においては、上述した固定方法による、円筒部材21の内周面とステータ31の外周面との固定は除かれる。
【0036】
ロータ32は、円筒状の部材であり、ロータコア32aと、このロータコア32aに埋設された複数の磁石32bとを有する。ロータコア32aは、例えば積層された電磁鋼板からなる。また、ロータコア32aの中央の孔部には駆動軸35が挿嵌される。複数の磁石32bは、ロータコア32aの周方向に等間隔の中心角度で配列される。ロータ32は、環状に形成されたステータ31の内側に、ステータ31とわずかな隙間を隔てて配置される。そして、ロータ32は、ステータ31に巻き付けられた巻線31bに電流が流れることで発生する磁力を受けて回転する。ロータ32が回転すると、駆動軸35が回転し、駆動軸35を介して、モータ30から圧縮機構40に駆動力が伝達される。
【0037】
(3-3)駆動軸
駆動軸35は、モータ30の動力を圧縮機構40へ伝達する。駆動軸35は、主軸部36と、第1偏心部37aと、第2偏心部37bとを有する。
【0038】
主軸部36は、回転軸RAと同心である部位である。主軸部36は、ロータ32に固定されている。
【0039】
第1偏心部37a及び第2偏心部37bは、回転軸RAに対して偏心している。
【0040】
(3-4)圧縮機構
圧縮機構40は、2シリンダ型の圧縮機構である。図2図4及び図5に示すように、圧縮機構40は、第1シリンダ41aと、第1ピストン42aと、第2シリンダ41bと、第2ピストン42bと、フロントヘッド43と、ミドルプレート44と、リアヘッド45とを有する。
【0041】
第1シリンダ64aと第2シリンダ64bは、タック溶接によってケーシング20に固定されている。
【0042】
第1シリンダ41aは、第1シリンダ室61aと、ブッシュ48aが収容されたブッシュ収容穴64aを有する。第1ピストン42aは、第1シリンダ室61aに収容される。第1ピストン42aは、円環部81aとブレード82aを有する。第1ピストン42aの円環部81aには、第1偏心部37aが嵌め込まれている。第1ピストン42aの円環部81aの公転により、冷媒が圧縮される。
【0043】
第2シリンダ41bは、第2シリンダ室61bと、ブッシュ48bが収容されたブッシュ収容穴64bを有する。第2ピストン42bは、第2シリンダ室61bに収容される。第2ピストン42bは、円環部81bとブレード82bを有する。第2ピストン42bの円環部81bには、第2偏心部37bが嵌め込まれている。第2ピストン42bの円環部81bの公転により、冷媒が圧縮される。
【0044】
第1シリンダ41a、第1ピストン42a、フロントヘッド43、ミドルプレート44は、第1圧縮室49aを画定する。
【0045】
第2シリンダ41b、第2ピストン42b、ミドルプレート44、リアヘッド45は、第2圧縮室49bを画定する。
【0046】
フロントヘッド43は、ケーシング20に固定されている。フロントヘッド43は、駆動軸35の主軸部36を回転可能に支える。フロントヘッド43は、第1シリンダ41aの上側を閉塞する。
【0047】
ミドルプレート44は、第1シリンダ41a及び第2シリンダ41bの間に設置される。ミドルプレート44は、第1シリンダ41aの下側及び第2シリンダ41bの上側を閉塞する。
【0048】
リアヘッド45は、駆動軸35の主軸部36を回転可能に支える。リアヘッド45は、第2シリンダ41bの下側を閉塞する。
【0049】
(3-5)継手管
本実施形態の圧縮機10は、第1継手管50aと、第2継手管50bとを有する。第1継手管50aは、ケーシング20の外周面からケーシング20の外側に延び、第1インレットチューブ55aの周囲を覆う。第2継手管50bは、ケーシング20の外周面からケーシング20の外側に延び、第2インレットチューブ55bの周囲を覆う。
【0050】
図6は、図2の第1継手管50aを含むVI部の拡大図である。図2の第2継手管50bを含む構成は、図2VI部と同じであるため、詳しい説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、ケーシング20の、第1吸入口62aに対向する部分には第1接続穴21aが形成されている。この第1接続穴21aには、ケーシング20の胴部21の外周方向に向かって突出する環状の第1継手管50aが溶接等によって固定されている。この第1継手管50aには、第1継手管50aよりも小径の管状の金属製の第1インレットチューブ55aが挿入されている。
【0052】
第1インレットチューブ55aは、第1先端部56aと、第2先端部57aと、拡管部58aと、を有している。第1先端部56aと第2先端部57bとは、拡管部58aを介してなだらかに接続されている。第1インレットチューブ55aのシリンダ41a側の先端部(第1先端部)56aは、ケーシング20を貫通して、第1吸入口62aに圧入されている。第1インレットチューブ55aの反シリンダ41a側の先端部(第2先端部)57aには、アキュムレータ6の第1出口管72aが圧入されている。第1出口管72aは、アキュムレータ6の出口に接続された管部材である。
【0053】
第1継手管50aは、第1部51aと、第2部52aと、第3部53aと、を有する。
【0054】
第1部51aは、第1継手管50aが第1インレットチューブ55aに固定される先端側に位置する。
【0055】
第2部52aは、第1部51aよりもケーシング20に近い側に位置する。
【0056】
第3部53aは、ケーシング20に固定され、第2部52aよりもケーシング20に近い側に位置する。第2部52aは、第1部51aと第3部53aとの間に位置する。
【0057】
本実施形態では、第1継手管50aの一部を拡管することで、第1継手管50aの内径の一部を大きくしている。拡管では、第1部51a、第2部52a、及び第3部53aの内径が同じ大きさの管について、第2部52aを径方向に拡大する。
【0058】
第2部52aの内径d2が第1部51aの内径d1よりも大きい(図6参照)。第3部53aの内径d3が第2部52aの内径d2より小さく、第1部51aの内径d1と第3部53aの内径d3とが同じである。例えば、第1部51aの内径d1及び第3部53aの内径d3は12~20mmである。また、第2部52aの内径d2は、12.5~24mmである。第1部51aの内径d1と、第2部52aの内径d2は、第1部51aの内径d1が12~20mmであり、第2部52aの内径d2が12.5~24mmであって、かつ、第1部51aの内径d1と、第2部52aの内径d2との比が、16:17~16:19となる範囲で決定される。
【0059】
第1インレットチューブ55aにおいて、第2先端部57aの外径c2は、第1先端部56aの外径c1よりも大きい。例えば、第1インレットチューブ55aの第1先端部56aの外径c1は6~16mmである。また、第1インレットチューブ55aの第2先端部57aの外径c2は11~19mmである。
【0060】
第1インレットチューブ55aの第2先端部57aの外径c2と、第1継手管50aの第2部52aの内径d2は、第2先端部57aの外径c2が11~19mmであり、第1継手管50aの第2部52aの内径d2が12.5~24mmであって、かつ、第1インレットチューブ55aの第2先端部57aの外径c2と、第1継手管50aの第2部52aの内径d2との比が、16:17~16:25となる範囲で決定される。
【0061】
第1インレットチューブ55aの第1先端部56と第2先端部57aとが接続される段差部分である拡管部58aは、第1インレットチューブ55aの周囲を覆う第1継手管50aの第2部52aに対向している。
【0062】
(4)圧縮機の全体動作
モータ30が外部から電力を受け取ると、ロータ32が回転する。これにより、駆動軸35が回転する。第1偏心部37aは第1ピストン42aを公転させる。第2偏心部37bは第2ピストン42bを公転させる。
【0063】
第1ピストン42aの公転により、冷媒は第1吸入管11aから第1圧縮室49aへ吸い込まれる。次いで、第1圧縮室49aの容積は減少し、冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、ケーシング20の内部空間へ吐出される。
【0064】
第2ピストン42bの公転により、冷媒は第2吸入管11bから第2圧縮室49bへ吸い込まれる。次いで、第2圧縮室49bの容積は減少し、冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、ケーシング20の内部空間へ吐出される。
【0065】
最後に、圧縮された冷媒は、吐出管12からケーシング20の外部へ吐出される。
【0066】
(5)圧縮機の製造
本実施形態の圧縮機10の組立工程を図7A図7Cに示す。図7A図7Cは、図2のケーシング20内におけるモータ30及び圧縮機構40(但し、フロントヘッド43のみ図示する)の配置、並びに第1継手管50a及び第1インレットチューブ55aを示す断面図である。
【0067】
図7A図7Cでは、第1継手管50aに第1インレットチューブ55aを挿入する場合について説明する。第2継手管50bに第1インレットチューブ55bを挿入する場合は、第1継手管50aに第1インレットチューブ55aを挿入する場合と同じであるため、詳しい説明を省略する。
【0068】
まず、ステータ31とロータ32との間に所定の大きさのエアギャップを確保するためのエアギャップ確保部材を装着する。エアギャップ確保部材としては、エアギャップに挿入される所定厚さの複数の板状部分を有するタコ足状のサーチャー300が用いられる。
【0069】
次に、ケーシング20の胴部21とステータ31との間は、スポット溶接で固定される(図示せず)。そして、第1継手管50aに第1インレットチューブ55aが挿入される。
【0070】
図7Aに示すように、着磁済みのロータ32をステータ31の内部に挿入する。また、ケーシング20の胴部21と圧縮機構40の溶接部分(言い換えると、フロントヘッド43の鍔部分43a)との間を、タック溶接により溶接する。
【0071】
図7Bに示すように、ロータ32はサーチャー300で拘束されているため、動かない。フロントヘッド43は、図7Bの矢印A11で示すように、溶接の収縮により右側に移動する。本実施形態では、第1継手管50aと第1インレットチューブ55aとの間で遊びが大きい。言い換えると、第1インレットチューブ55aの外径c1に対して、第1継手管50aの第2部52aの内径d2が大きい。そのため第1継手管50aに挿入された第1インレットチューブ55aは右に向くだけであり、第1インレットチューブ55aが第1継手管55aの内周に当たらない。第1インレットチューブ55aが第1継手管44aの内周に当たっていない場合、回転軸RAはほぼ撓まない。回転軸RAは上端から下端までほぼ真直ぐである。なお、第1インレットチューブ55aが、第1継手管50aの内周に当たっていたらその分回転軸RAは撓む。
【0072】
次に、サーチャー300をステータ31とロータ32との間から除去する。
【0073】
図7Cに示すように、サーチャー300を外しても、回転軸RAが撓んでいないので、撓み分ではなく、ロータ32はフロントヘッド43の移動分だけ、図7Cの矢印A12で示すように、右側に移動する。
【0074】
比較例として、圧縮機101の組立工程を図9A図9Cに示す。図9A図9Cは、本実施形態の圧縮機10の組立工程を示す図7A図7Cにそれぞれ対応する。比較例の圧縮機101では、第1継手管90が拡管部分を有しておらず、第1継手管90aの内径が、第1継手管50aの第2部52aの内径よりも小さい点が、本実施形態の圧縮機10と異なる。
【0075】
図9Aは、本実施形態の図7Aと実質的に同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0076】
図9Bに示されるように、ロータ32はサーチャー300で拘束されているため、動かない。フロントヘッド43は、図9Bの矢印A21で示すように、溶接の収縮により右側に移動する。比較例では、第1継手管90aと第1インレットチューブ55aとの間で遊びが小さい。言い換えると、第1継手管90aの内径が、本実施形態の第1継手管50aの第2部52aの内径よりも小さいため、第1インレットチューブ55aの外径と第1継手管90aの内径との差が、第1インレットチューブ55aの外径と第1継手管50aの第2部52aの内径との差よりも小さい。そのため、第1インレットチューブ55aも、図9Bの矢印A22で示すように、右へ移動する。これにより、第1インレットチューブ55aは右に向いて、第1継手管90aの内周に当たる。このとき、第1継手管90aと第1インレットチューブ55aとの間で遊びが小さいため、第1インレットチューブ55aは第1継手管90aの内周に当たった位置以上は右に移動できない。しかしながら、フロントヘッド43は右へ移動するので、その分回転軸RAが撓む。
【0077】
次に、サーチャー300をステータ31とロータとの間から除去する。
【0078】
図9Cに示すように、サーチャー300を外すと、回転軸RAの撓みを解消しようとして、ロータ32が動く。このとき、ロータ32は、図9Cの矢印A23で示すように、右側に移動し、さらに斜めに傾く。回転軸RAは真直ぐになろうとするため、回転軸RAが移動し、エアギャップがロータ32の右方向で狭くなる。
【0079】
比較例で示すように、第1インレットチューブ55aが第1継手管50aの内周に当たって回転軸RAが撓んでいた場合は、サーチャー300を外すとロータ32の上端が支えを失うため、撓みを開放する側に回転軸RAが移動し、エアギャップがロータ32の右方向で狭くなる。本実施形態では、サーチャー300を外しても、回転軸RAが撓んでいないので、比較例よりも回転軸RAの移動量は小さくなる。
【0080】
(6)特徴
(6-1)
本実施形態に係る圧縮機10では、圧縮機構40と、ケーシング20と、第1、第2インレットチューブ55a、55bと、第1、第2継手管50a、50bと、を有する。圧縮機構40は、冷媒を吸入するための第1、第2吸入口62a、62bを有する。ケーシング20は、胴部21を有し、圧縮機構40を収容する。第1、第2インレットチューブ55a、55bは、ケーシング20を貫通して、第1、第2吸入口62a、62bに挿入される第1先端部56a、56bを有する。第1、第2継手管50a、50bは、ケーシング20の外周面からケーシング20の外側に延び、第1、第2インレットチューブ55a、55bの周囲を覆う。第1継手管50aは、第1部51aと、第2部52aと、第3部53aと、を有する。第1部51aは、第1継手管50aが第1インレットチューブ55aに固定される先端側に位置する。第2部52aは、第1部51aよりもケーシング20に近い側に位置する。第3部53aは、ケーシング20に固定され、第2部52aよりもケーシング20に近い側に位置する。第2部52aの内径d2が第1部51aの内径d1よりも大きい。
【0081】
従来、継手管がストレート形状になっていたため、インレットチューブと継手管の間が狭いので、ステータ中心に対するロータの回転中心のずれが大きくなっていた。
【0082】
この圧縮機10では、第1インレットチューブ55aの周囲を覆う第1継手管50aの第2部52aの内径を第1部51aの内径より大きくすることにより、モータ30のステータ31の内径の中心に対するロータ32の中心位置のずれを小さくでき、音や振動を低減することができる。
【0083】
(6-2)
本実施形態に係る圧縮機10では、第1継手管50aは、第1部51aの内径d1と、第2部52aの内径d2との比が、16:17~16:19である。
【0084】
この圧縮機10では、第1継手管50aの第2部52aの内径d2を大きくしても、第1継手管50aの強度を維持することができる。
【0085】
(6-3)
本実施形態に係る圧縮機10では、アキュムレータ6をさらに備える。アキュムレータ6は、第1インレットチューブ55aを介して第1吸入口62aに接続される第1出口管72aを有する。第1インレットチューブ55aは、第2先端部57aと、拡径部58aと、をさらに有する。第2先端部57aは、第1出口管72aが圧入される。拡径部58aは、第1先端部56aと第2先端部57aとを接続する。第2先端部57aの外径c2が第1先端部56aの外径c1よりも大きい。第1継手管50aは、第3部53aの内径d3が第2部52aの内径d2より小さく、第1部51aの内径d1と第3部53aの内径d3とが同じである。第1インレットチューブ55aの拡径部58aは、第1継手管50aの第2部52aに対向するように配置される。
【0086】
この圧縮機10では、第2部52aの内径d2が最も大きくなるように拡管することにより、第1継手管50aが貫通するケーシング20の第1吸入口62aの内径を変えることなく、第1継手管50aの第2部52aを大きくすることができる。また、この圧縮機10では、第1インレットチューブ55aの拡径部58aが第1継手管50aの第2部52aに対向するように配置することで、第1インレットチューブ55aが第1継手管50aの第2部52aの内周に接触しにくくすることができる。
【0087】
(6-4)
本実施形態に係る圧縮機10では、第1インレットチューブ55aの外径c1と、第1継手管50aの第2部52aの内径d2との比が、16:17~16:25である。
【0088】
この圧縮機10では、第1インレットチューブ55aの内径c1に対して、第1継手管50aの第2部52aの内径d2が大きくなるように第1継手管50aの第2部52aの内径を大きくすることで、第1インレットチューブ55aが第1継手管50aの第2部52aの内周に接触しにくくすることができる。
【0089】
(6-5)
本実施形態に係る圧縮機10では、圧縮機構40は、第1、第2シリンダ41a、41bを有する。第1、第2シリンダ41a、41bは、冷媒が流入する。第1、第2シリンダ41a、41bとケーシング20は、タック溶接によって固定されている。
【0090】
この圧縮機10では、圧縮機10の組立工程において、第1、第2シリンダ41a、41bをケーシング20に固定することができる。
【0091】
(6-6)
本実施形態に係る圧縮機10は、ロータリー圧縮機である。
【0092】
この圧縮機10では、ロータリー圧縮機の組立工程において、溶接時のロータ32の回転軸RAの撓み量を小さくすることができ、ステータ31の内径の中心に対するロータ32の中心位置のずれを小さくすることができる。
【0093】
(6-7)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、本実施形態に係る圧縮機10、を備える。
【0094】
この冷凍サイクル装置1では、冷凍サイクル装置1が有する圧縮機10の音や振動を低減することができる。
【0095】
(7)変形例
(7-1)変形例1A
本実施形態の圧縮機10では、第1継手管50aの第1部51aの内径d1と第3部53aの内径d3が同じである場合について説明した。
【0096】
変形例1Aの圧縮機100では、第1継手管500aは、第3部530aの内径d3が第2部520aの内径d2と同じ大きさである(図8参照)。変形例1Aの圧縮機100の第2継手管は、第1継手管500aと同じ構成である。また、変形例1Aの圧縮機100は、第1継手管500a及び第2継手管以外の構成は本実施形態の圧縮機10の構成と同じであるため、詳しい説明を省略する。
【0097】
変形例1Aの圧縮機100では、第1継手管500aの第1部510aのみを絞ることで、容易に、第1継手管500aの内径の一部を大きくした構造にすることができる。
【0098】
(7-2)変形例1B
本実施形態では、第1継手管50aの一部を拡管することで、第1継手管50aの内径の一部を大きくする場合について説明したが、これに限るものではない。
【0099】
例えば、第1継手管50aの、第1部51aと第3部53aの間に、第1部51a及び第3部53aの内径よりも大きい内径の第2部52aを溶接することで、第1継手管50aの内径の一部を大きくなるように製造してもよい。
【0100】
また、2つの異径管が大きい径の側で互いに接続するように溶接することで、第1継手管50aの内径の一部が大きくなるように製造してもよい。
【0101】
(7-3)変形例1C
本実施形態では、第1、第2シリンダ41a、41bとケーシング20は、タック溶接によって固定されている場合について説明したが、熱かしめ、又は焼き嵌めによって固定されるようにしてもよい。
【0102】
(7-4)変形例1D
本実施形態では、圧縮機10が2シリンダ型のロータリー圧縮機である場合について説明したが、1シリンダ型のロータリー圧縮機でもよい。
【0103】
(7-5)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
6 アキュムレータ
10、100 圧縮機
20 ケーシング
21 胴部(円筒部材)
30 モータ
31 ステータ
32 ロータ
40 圧縮機構
41a 第1シリンダ
41b 第2シリンダ
43 フロントヘッド
50a、500a 第1継手管
50b、500b 第2継手管
51a、510a 第1部
52a、520a 第2部
53a、530a 第3部
55a 第1インレットチューブ
55b 第2インレットチューブ
56a 第1先端部
57a 第2先端部
58a 拡径部
62a 第1吸入口
62b 第2吸入口
72a 第1出口管
72b 第2出口管
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】実公昭63-46697号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C