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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004463
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】加飾用転写フィルム
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20240109BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240109BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240109BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
C09J7/29
C09J201/02
B05D7/24 301T
B05D7/24 301M
B05D3/06 102Z
B05D3/00 D
B05D5/00 A
B05D7/00 A
B44C1/17 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093190
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022103185
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂則
【テーマコード(参考)】
3B005
4D075
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3B005FA04
3B005FB03
3B005FB05
3B005FB09
3B005FB13
3B005FB37
3B005FC07X
3B005FC09Y
3B005FE04
3B005FE12
3B005FF04
3B005FG04X
3B005GA18
3B005GB01
3B005GD10
4D075AC06
4D075AC09
4D075BB05Z
4D075BB16X
4D075BB20Z
4D075BB21Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB60Z
4D075BB94Z
4D075CA03
4D075CA07
4D075CA13
4D075CA32
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB31
4D075DC38
4D075EA21
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EC37
4D075EC47
4D075EC51
4J004AA01
4J004AA13
4J004AA17
4J004AB07
4J004CE01
4J004FA01
4J040EC001
4J040FA131
4J040FA261
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB08
4J040KA13
(57)【要約】
【課題】本発明は、ハードコートとなる層と加飾層とを含む加飾用転写フィルムであって、どちらの層も活性エネルギー線硬化性の、耐候性に優れた加飾積層体を与えることができる加飾用転写フィルムを、提供することを目的とする。
【解決手段】剥離フィルムと、光カチオン硬化性組成物からなる層(A層)と、中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク印刷層(B層)と、をこの順に含む、加飾用転写フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムと、
光カチオン硬化性組成物からなる層(A層)と、
中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク印刷層(B層)と、
をこの順に含む、加飾用転写フィルム。
【請求項2】
前記光カチオン硬化性組成物が酸化防止剤および紫外線吸収剤から選ばれた少なくとも一つを含む、請求項1に記載の加飾用転写フィルム。
【請求項3】
前記A層と前記B層との間にプライマー層を有する、請求項1または2に記載の加飾用転写フィルム。
【請求項4】
前記B層の次に接着層を有する、請求項1または2に記載の加飾用転写フィルム。
【請求項5】
前記B層の次に接着層を有する、請求項3に記載の加飾用転写フィルム。
【請求項6】
剥離フィルムを準備する工程(工程1)と、
この剥離フィルムに光カチオン硬化性組成物を印刷する工程(工程2)と、
この光カチオン硬化性組成物の塗布表面に、インクジェット印刷装置を用いて中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物をノズルから吐出する工程(工程3)と、
得られた吐出面に中心波長365-405nmのLED-UVを照射する工程(工程4)と、
を含む、加飾用転写フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記光カチオン硬化性組成物が酸化防止剤および紫外線吸収剤から選ばれた少なくとも一つを含む、請求項6に記載の加飾用転写フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記工程2と前記工程3の間にプライマー層を形成する工程を含む、請求項6または7に記載の加飾用転写フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記工程4の次に接着層を形成する工程を含む、請求項6または7に記載の加飾用転写フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記工程4の次に接着層を形成する工程を含む、請求項8に記載の加飾用転写フィルムの製造方法。
【請求項11】
基材を準備する工程と、
その基材に請求項1または2の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法。
【請求項12】
基材を準備する工程と、
その基材に請求項3の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法。
【請求項13】
基材を準備する工程と、
その基材に請求項4の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法。
【請求項14】
基材を準備する工程と、
その基材に請求項5の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面、金属塗装面、樹脂表面、樹脂塗装面等の加飾に用いる転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂、金属等の基材表面、それらの塗装面の加飾方法として、転写フィルムを用いた転写法が利用されている。この転写法とは、紙、樹脂製フィルム等からなる剥離フィルム上に、ハードコート層、加飾層、接着層等からなる転写層を設けた転写フィルムを作製し、この転写フィルムの転写層面を基材の表面に接着させた後、剥離フィルムを除去することにより、基材上に転写層が形成された加飾品を製造する方法である。
【0003】
例えば、特許文献1には、「離型性基体シート上に転写層として少なくとも、電離放射線硬化型樹脂保護層を有する転写シートに於いて、該電離放射線硬化型樹脂保護層が、平均分子量50000~600000、硝子転移温度50~130℃である非架橋型熱可塑性アクリル樹脂と、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するプレポリマーを含有することを特徴とする転写シート。」が提案されている。
【0004】
ここでは、電離放射線硬化型樹脂保護層を硬化させる時期は、被転写体に転写させる前でも後でもよく、この保護層に加えて、装飾層、帯電防止層、接着剤層等を積層することができるとされている。これらの層の中で、装飾層については、「装飾層としては、絵柄層、金属薄膜層等である。絵柄層は、インキ(或いは塗料)を印刷や塗装によって形成する。インキ或いは塗料としては、ベヒクルに必要に応じて、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤等を適宜混合したものを用いることができる。ベヒクルとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等の中から用途、必要な物性、印刷適性等に応じて適宜選択する。」と記載されている。
【0005】
前記電離放射線硬化型樹脂保護層は本発明でいう電離放射線硬化型ハードコート層と言い換えることができるが、ハードコート層を形成する方法として光カチオン硬化を用いた方法が知られている。
例えば、転写フィルムではないが、特許文献2には、「無機酸化物粒子と、オルガノシラン部位及びエポキシ基を有するシランカップリング剤と、3以上のエポキシ基を有するポリグリセロールポリグリシジルエーテルと、光カチオン重合開始剤と、を含有する、コーティング組成物」が、特許文献3には、「脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物を含む、ポリイミドフィルム用ハードコート組成物」が、開示されている。
【0006】
また、活性エネルギー線によるラジカル硬化を用いて、転写フィルム(シート)のハードコート層、接着層、加飾層といった転写層の少なくとも一つを形成する方法も知られている。
例えば、特許文献4には、「機能層及び活性エネルギー線硬化型粘接着層を含む機能層転写シートであって、粘接着層が活性エネルギー線硬化型粘接着剤組成物の被膜で形成されてなる機能層転写シート」が開示されている。
特許文献5には、「離型層を有するベースフィルムの片面に、該ベースフィルムより剥離可能な転写層として、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性アクリルアクリレート樹脂を有する樹脂組成物から形成されたウレタン結合構造を有しないハードコート層、該ハードコート層に接する様に、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性アクリルアクリレート樹脂及びイソシアネート化合物を有する樹脂組成物から形成されるプライマー層、該プライマー層に接する様に、印刷インキ層、接着剤層を順次積層したことを特徴とする活性エネルギー線硬化性転写シート。」が開示されている。
【0007】
さらに、インクジェット印刷の分野では、活性エネルギー線硬化型のインクジェット印刷が広く用いられてきたが、最近では、装置の小型化が容易で省エネも期待できるとして、LED光源を用いる方式が普及してきた(特許文献6、7、8等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07-314995号公報
【特許文献2】再表2019/189823号公報
【特許文献3】再表2020/040209号公報
【特許文献4】特開2015-077729号公報
【特許文献5】特開2010-194796号公報
【特許文献6】特開2018-095696号公報
【特許文献7】特開2018-154753号公報
【特許文献8】特開2019-099760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の転写シートは、保護層(本発明では、ハードコート層に相当する。)に加えて絵柄層(本発明の加飾層に相当する。)を積層でき、その絵柄層のベヒクルとして、電離放射線硬化型樹脂が例示されているが、この電離放射線硬化型樹脂は、特許文献1の記載からは光ラジカル硬化型であると理解される。すなわち、特許文献1の転写シートでは、保護層および絵柄層が共に電離放射線硬化型とすると、これらは光カチオン硬化型ではなく光ラジカル硬化型であるといえる。
なお、本発明において、「光ラジカル硬化」または「光カチオン硬化」といった用語における「光」は、活性エネルギー線または電離放射線と同等の意味を有する。
【0010】
特許文献2および3は光カチオン硬化を用いてハードコート層を形成しているが、転写フィルムを用いるものではない。
【0011】
特許文献1もそうであるが、特許文献4および5の転写シートは、転写層の少なくとも1層を形成するために活性エネルギー線を用いたラジカル硬化を使用しているため、耐候性付与を目的として紫外線吸収剤や酸化防止剤を含有させると、硬化不良を引き起こす。
【0012】
なお、特許文献4では、「硬化物の経時劣化を防止するため、劣化防止剤を配合することが好ましい。劣化防止剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。」としているが、活性エネルギー線硬化型粘接着剤組成物の硬化時にはこれらの劣化防止剤により硬化阻害を受ける。特許文献4では、粘着層が活性エネルギー線硬化性なので、多少の硬化不良があっても重大な問題を引き起こすことはないかもしれないが、ハードコート層のように硬度を要求される場合は、硬化不良は致命的な欠陥となる。従って、ハードコート層の経時劣化防止のための劣化防止剤添加は、どうしても制限される。
【0013】
従って、本発明は、ハードコートとなる層と加飾層とを含む加飾用転写フィルムであって、どちらの層も活性エネルギー線硬化性の、耐候性に優れた加飾積層体を与えることができる加飾用転写フィルムを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意検討した結果、ハードコート層となる層と加飾層となる層とを含む加飾用転写フィルムにおいて、同様の活性エネルギー線硬化であっても、これらの組成を変え、活性エネルギー線の波長をコントロールすることによって、別々に硬化させることが可能となり、その結果、優れた加飾用転写フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1) 剥離フィルムと、
光カチオン硬化性組成物からなる層(A層)と、
中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク印刷層(B層)と、
をこの順に含む、加飾用転写フィルム、
(2) 前記光カチオン硬化性組成物が酸化防止剤および紫外線吸収剤から選ばれた少なくとも一つを含む、(1)に記載の加飾用転写フィルム、
(3) 前記A層と前記B層との間にプライマー層を有する、(1)または(2)に記載の加飾用転写フィルム、
(4) 前記B層の次に接着層を有する、(1)または(2)に記載の加飾用転写フィルム、
(5) 前記B層の次に接着層を有する、(3)に記載の加飾用転写フィルム、
(6) 剥離フィルムを準備する工程(工程1)と、
この剥離フィルムに光カチオン硬化性組成物を印刷する工程(工程2)と、
この光カチオン硬化性組成物の塗布表面に、インクジェット印刷装置を用いて中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物をノズルから吐出する工程(工程3)と、
得られた吐出面に中心波長365-405nmのLED-UVを照射する工程(工程4)と、
を含む、加飾用転写フィルムの製造方法、
(7) 前記光カチオン硬化性組成物が酸化防止剤および紫外線吸収剤から選ばれた少なくとも一つを含む、(6)に記載の加飾用転写フィルムの製造方法、
(8) 前記工程2と前記工程3の間にプライマー層を形成する工程を含む、(6)または(7)に記載の加飾用転写フィルムの製造方法、
(9) 前記工程4の次に接着層を形成する工程を含む、(6)または(7)に記載の加飾用転写フィルムの製造方法、
(10) 前記工程4の次に接着層を形成する工程を含む、(8)に記載の加飾用転写フィルムの製造方法、
(11) 基材を準備する工程と、
その基材に(1)または(2)の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法、
(12) 基材を準備する工程と、
その基材に(3)の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法、
(13) 基材を準備する工程と、
その基材に(4)の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法、
(14) 基材を準備する工程と、
その基材に(5)の加飾用転写フィルムを印刷面側で貼付する工程と、
活性エネルギー線を照射する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を含む、加飾積層体の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加飾用転写フィルムにおいてハードコート層となるA層は、転写後に硬化させる。硬化前の柔らかい段階で転写するので複雑な立体形状に対しても追随性に優れ、硬化後も割れたり剥がれたりすることがない。
本発明の加飾用転写フィルムは、前記A層を印刷した後、前記B層をインクジェット印刷し、中心波長365-405nmのLED-UVによりラジカル硬化させて転写フィルムとするが、この波長のLED-UVでは、前記A層は硬化せずに、前記B層のみが硬化する。ハードコート層となる前記A層は光カチオン硬化性なので、酸化防止剤や紫外線吸収剤によって硬化阻害を受けない。従って、加飾積層体の最外層となるA層には、酸化防止剤や紫外線吸収剤といった耐侯剤を含有させることができるので、これらの耐侯剤を含有させて耐候性に優れた加飾積層体を得ることができる。
また、加飾層のB層はインクジェット印刷で形成するので、オンデマンド性のある少量多品種に適した加飾用転写フィルムとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0018】
本発明の加飾用転写フィルムは、剥離フィルムと、光カチオン硬化性組成物からなる層(A層)と、中心波長365-405nmのLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク印刷層(B層)と、をこの順に含む。
【0019】
本発明の加飾用転写フィルムは、前記剥離フィルムに、前記光カチオン硬化性組成物を印刷し、乾燥後、LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物をインクジェット方式で印刷し、中心波長365-405nmのLED-UVを照射することによりインクジェット印刷層のみを硬化させて得られる。この段階ではA層の前記光カチオン硬化性組成物は硬化していない。
次いで、得られた転写フィルムを基材に貼付後、剥離フィルムを除去してから活性エネルギー線を照射し、前記光カチオン硬化性組成物を硬化させることによって、加飾積層体が得られる。
【0020】
本発明において、剥離フィルムは、剥離フィルムに転写層が積層された転写フィルムにおいて、転写層から剥離可能に積層された層で、基材に転写層を転写した後に、転写層から剥離される。
【0021】
本発明において、前記A層は、前記剥離フィルムにグラビア印刷等の印刷方法、コーティング等の方法により、溶剤を含有した光カチオン硬化性組成物を塗工し、乾燥して得られる。
【0022】
前記光カチオン硬化性組成物は、光酸発生剤と、エポキシ化合物、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物から選ばれた少なくとも1つと、を含有する。
【0023】
前記光酸発生剤は、光照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であり、特に好ましいものとしては光照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩である。具体的には、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF-、PF-、SbF-、[BX]-(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である。)等により構成されたオニウム塩である。
【0024】
具体例としては、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン-鉄錯体等を挙げることができる。
【0025】
市販品としては、CD-1012(サートマー社製)、PCI-019、PCI-021(日本化薬(株)製)、オプトマーSP-150、オプトマーSP-170(旭電化(株)製)、UVI-6990(ダウケミカル(株)製)、CPI-100P、CPI-100A(サンアプロ(株)製)、TEPBI-S(日本触媒(株)製)、RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074(Rhodia社製)等を用いることができる。
【0026】
この光酸発生剤の含有濃度は、溶剤を除く前記光カチオン硬化性組成物に対し0.1~15質量%である。0.1質量%未満では硬化性が不十分となる場合があり、15質量%を超えると皮膜強度等の物性が低下するばあいがある。
【0027】
前記エポキシ化合物としては、単官能エポキシ化合物では、芳香族モノエポキシド、脂環式モノエポキシドおよび脂肪族モノエポキシド等が、2官能以上のエポキシ化合物では、脂肪族ジエポキシド、芳香族ジエポキシド、脂環式ジエポキシド等が、例示される。1個以上のエポキシ基を有するものであればオリゴマーでもオルガノシラン、シロキサン等のケイ素を含む化合物でもよい。また、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等にエポキシ基を含む樹脂等であってもよい。
【0028】
前記オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン基を有する公知・慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、単官能オキセタン化合物では、2-エチルヘキシルオキセタン等であり、市販品としては、アロンオキセタンOXT-101、OXT-212、OXT-211、OXT-213等(東亞合成(株)製)が挙げられる。また、2官能以上では、たとえば、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が挙げられ、市販品としては、アロンオキセタンOXT-121、OXT-221等(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0029】
前記ビニルエーテル化合物としては、分子内に1以上のビニルエーテル基を有する公知・慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9-ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が例示できる。
【0030】
前記光カチオン硬化性組成物は、好ましくは溶剤を含む。この溶剤は、前記光カチオン硬化性組成物中の他成分と相溶性があり、重合を阻害しないものであれば使用できるが、安全性、物理的、化学的な特性を考慮して選択される。溶剤を使用することにより、印刷方法に応じた適度な粘度に調整することができるだけでなく、薄膜化が可能となり、結果として省資源に繋がる。
【0031】
前記光カチオン硬化性組成物は、好ましくは酸化防止剤および紫外線吸収剤の少なくとも一つを含む。
【0032】
酸化防止剤としては、公知・慣用の酸化防止剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0033】
前記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「IRGANOX 1010」、BASFジャパン(株)製)、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類等が例示される。
【0034】
前記ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が例示される。
【0035】
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2、4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
【0036】
前記イオウ系酸化防止剤としては、ドデカンチオール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が例示される。
【0037】
前記酸化防止剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
前記紫外線吸収剤としては、公知・慣用の紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0039】
これらの中でも、硬化物の耐候性の観点から、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましく、1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤、及び、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤であることがさらに好ましい。
【0040】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「Tinosorb S」、BASF製)、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN460」、BASF製)、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(C10-C16(主としてC12-C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN400」、BASF製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物(商品名「TINUVIN405」、BASF製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN1577」、BASF製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「アデカスタブ LA46」、(株)ADEKA製)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN479」、BASF製)等を使用することができる。
【0041】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN928」、BASF製)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」、BASF製)、ベンゼンプロパン酸および3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)のエステル化合物(商品名「TINUVIN384-2」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN900」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN928」、BASF製)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(商品名「TINUVIN1130」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」、BASF製)、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN234」、BASF製)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN326」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN328」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN329」、BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN213」、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN571」、BASF製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb250」、住友化学工業(株)製)等を使用することができる。
【0042】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物)、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤(オキシベンゾフェノン系化合物)としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(無水及び三水塩)、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0043】
前記サリチル酸エステル系紫外線吸収剤(サリチル酸エステル系化合物)としては、例えば、フェニル-2-アクリルオキシベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリルオキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリルオキシ-4-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリルオキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリルオキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-4メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN 120」、BASF製)等を挙げることができる。
【0044】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤(シアノアクリレート系化合物)としては、例えば、アルキル-2-シアノアクリレート、シクロアルキル-2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル-2-シアノアクリレート、アルケニル-2-シアノアクリレート、アルキニル-2-シアノアクリレート等を挙げることができる。
【0045】
なお、前記光カチオン硬化性組成物において紫外線吸収剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
前記紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、溶剤を除く前記光カチオン硬化性組成物の全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を前記範囲とすることで、硬化物の耐候性が向上する。
【0047】
本発明の光カチオン硬化性組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
【0048】
本発明の加飾用転写フィルムにおいて、前記A層を形成した後、必要に応じてプライマー層を形成する。このプライマー層は、B層に印刷されるインクジェットインク組成物が滲まないようにしたり、A層とB層との密着性を高めるために用いられ、公知・慣用のものを用いることができるが、A層自身がそのような機能を備えている場合は不要である。
【0049】
前記プライマー層は、印刷、塗布等塗工方法は問わずに形成でき、前記B層と同様の硬化方法、熱硬化、溶剤乾燥等、前記A層を硬化させない硬化方法であれば硬化方法も問わない。また、発明の効果を損なわない限りプライマー層は単層であっても、2層以上であってもよい。
なお、前記プライマー層には光輝剤であるパール顔料等を含有させることにより、本発明の加飾用フィルムに光輝効果を追加することができる。
【0050】
次いで、前記A層または前記プライマー層の上にLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物をインクジェット方式で印刷し、中心波長365-405nmのLED-UVを照射することによりインクジェット印刷層のみを硬化させてB層である加飾層を形成する。
もちろん、中心波長365-405nmのLED-UVによるラジカル硬化性であればインクジェット以外の印刷方法も使用できるが、非接触であること、オンデマンド性があり、少量多品種に適していることからインクジェット印刷が好ましい。
【0051】
本発明のLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物は、活性エネルギー線でラジカル重合可能な化合物を含む。
【0052】
このような化合物としては、活性エネルギー線でラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物であれば特に限定されず、モノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む。その例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、これらの塩及びこれらから誘導される化合物、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。
【0053】
具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル酸誘導体、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド誘導体、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキシド付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。ラジカル重合開始剤としては、中心波長365-405nmのLED-UVによって、ラジカルを生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ラジカル重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0055】
また、前記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0056】
前記LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色等を付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の全量に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0057】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等を使用することができる。
【0059】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤等の顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
【0060】
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料等が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記LEDラジカル硬化性インクジェットインク組成物は、好ましくは溶剤を含む。溶剤は、この組成物中の成分と相溶性があり、重合を阻害しないものであれば使用できるが、安全性、物理的、化学的な特性を考慮して選択される。溶剤を使用することにより、印刷方法に応じた適度な粘度に調整することができるだけでなく、薄膜化が可能となり、転写工程の加工適性が向上する。
【0062】
前記LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
【0063】
本発明の加飾用転写フィルムにおいて、前記B層を形成した後、必要に応じて接着層を形成する。この接着層は転写フィルムの転写層を加飾される基材に接着させるためのものである。従って、前記B層が接着の機能を有する場合はなくてもよい。
なお、前記接着層には、光輝剤であるパール顔料、アルミ顔料等を含有させることにより、本発明の加飾用フィルムに光輝効果を追加することができる。
接着層は、熱による接着、圧力による接着等、加飾される基材への接着方法に従ってその組成が決められる。
前記接着層は、印刷、塗布等塗工方法は問わずに形成でき、前記B層と同様の硬化方法、熱硬化、溶剤乾燥等、前記A層を硬化させない硬化方法であれば硬化方法も問わない。また、発明の効果を損なわない限り接着層は単層であっても、2層以上であってもよい。
【0064】
このようにして得られた転写フィルムを加飾される基材に印刷面側で貼り付け、接着させてから、剥離フィルムを剥離し、活性エネルギー線を照射することによりハードコート層となるA層を硬化させて加飾積層体を得る。
なお、ここで用いられる接着方法は、接着層が設けられている場合は接着層、設けられていない場合は前記B層が接着層を兼ねるので前記B層になるが、その特性に従って、熱による方法、圧力による方法等適宜選択される。
【0065】
前記基材としては、平面状であるか、立体的な形状であるかを問わず、本発明の加飾用転写フィルムが接着可能な物品であれば使用できる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を表す。
【0067】
本発明で使用した原材料を、以下に列記する。
離形PETフィルム/TN-100:東洋紡(株)
グリシジルエーテル含有ポリマー/アクリットEM-011:大成ファインケミカル(株)
グリシジルエーテル含有ポリマー/EHPE3150:ダイセル(株)
アクリロイル基含有アクリルポリマー/HA7975D:昭和電工マテリアルズ(株)
光ラジカル発生剤/DAIDO UV-CURE #174:大同化成工業(株)
光ラジカル発生剤/DAIDO UV-CURE APO:大同化成工業(株)
光ラジカル発生剤/OMNIRAD 819:IGM RESINS社
光ラジカル発生剤/LUNACURE 2-ITX:DKSHジャパン(株)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)
光酸発生剤/CPI-100P:サンアプロ(株)
XDI系イソシアネート/タケネートD-110N:三井化学(株)
ポリカーボネートジオール/UH-200:UBE(株)
イソボルニルアクリレート・キナクリドンマゼンタ顔料分散液(顔料15%品)/4401R-STコンクM:東京インキ(株)
トリアジン系紫外線吸収剤/Tinuvin 400:BASFジャパン(株)
フェノール系酸化防止剤/IRGANOX 1010:BASFジャパン(株)
ヒンダードアミン系酸化防止剤/Tinuvin 5100:BASFジャパン(株)
アクリレートオリゴマー/Quick Cure 81011B65:KJケミカルズ(株)
アミノアクリレート/CN386US:サートマー社
【0068】
(製造例1)「光カチオン硬化性組成物1の製造」
アクリットEM-011 25部、EHPE3150 12.5部、酢酸エチル 60部、およびCPI-100P 2.5部を遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌した後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し光カチオン硬化性組成物1を得た。
【0069】
(製造例2)「光カチオン硬化性組成物2の製造」
アクリットEM-011 25部、EHPE3150 12.5部、酢酸エチル 59部、CPI-100P 2.5部、Tinuvin 400 0.5部、IRGANOX 1010 0.4部、およびTinuvin 5100 0.1部を遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌した後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し光カチオン硬化性組成物2を得た。
【0070】
(製造例3)「光ラジカル硬化性組成物1の製造」
HA7975D 41.5部、DAIDO UV-CURE #174 2.5部、および酢酸エチル 56部を遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌した後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し光ラジカル硬化性組成物1を得た。
【0071】
(製造例4)「光ラジカル硬化性組成物2の製造」
HA7975D 41.5部、DAIDO UV-CURE #174 2.5部、Tinuvin 400 0.5部、IRGANOX 1010 0.4部、Tinuvin 5100 0.1部、および酢酸エチル 55部を遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌した後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し光ラジカル硬化性組成物2を得た。
【0072】
(製造例5)「ポリオール・イソシアネート混合組成物の製造」
タケネートD-110N 33.4部、UH-200 25部、酢酸エチル 41.6部を、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌した後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し、プライマー層または接着層用の組成物を得た。
【0073】
(製造例6)「LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物の製造」
Quick cure 81011B65 10部、CN386US 5部、DAIDO UV-CURE APO 2部、OMNIRAD 819 2部、LUNACURE 2-ITX 2部、PGM 22.5部およびPGMAc 23.2部を遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌後、粉体成分の溶解を確認し、4401R-STコンクM 33.3部を加え遮光下、乾燥空気雰囲気中、ホモミキサーで30分間混合撹拌し孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過し、溶剤含有型LED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物を得た。
【0074】
(実施例1)「加飾用転写フィルム1の製造」
厚さ38μmの剥離フィルムTN-100に光カチオン硬化性組成物1をバーコーター#10で塗布し、80℃の温風を1分間あてることによって揮発成分を留去した。その上に製造例5のポリオール・イソシアネート混合組成物をバーコーター♯10で塗布し、80℃の温風を1分間あてて揮発成分を留去してから、45℃にて3時間静置した。
次いで、製造例6のLED-UVラジカル硬化性インクジェットインク組成物をピエゾ型インクジェットヘッド(KM512MH、コニカミノルタ社製)を搭載したインクジェットプリンタを用いて720×720dpiの解像度でベタ印刷した後、80℃の温風を1分間あてて揮発成分を留去してから、中心波長385nmのLED-UVランプをUVA領域における積算光量が1000mJ/cmとなる条件で照射した。
次いで、製造例5のポリオール・イソシアネート混合組成物をバーコーター♯10で塗布し、80℃の温風を1分間あてて揮発成分を留去し、加飾用転写フィルム1を得た。
【0075】
(実施例2)「加飾用転写フィルム2の製造」
実施例1の光カチオン硬化性組成物1を光カチオン硬化性組成物2に代え、実施例1と同様に操作し、実施例2の加飾用転写フィルム2を得た。
【0076】
(比較例1)「加飾用転写フィルム3の製造」
実施例1の光カチオン硬化性組成物1を光ラジカル硬化性組成物1に代え、実施例1と同様に操作し、比較例1の加飾用転写フィルム3を得た。
【0077】
(比較例2)「加飾用転写フィルム4の製造」
実施例1の光カチオン硬化性組成物1を光ラジカル硬化性組成物2に代え、実施例1と同様に操作し、比較例2の加飾用転写フィルム4を得た。
【0078】
(実施例3)
基材となるアクリル板に、ゴムローラーを用いて実施例1の加飾用転写フィルム1の接着層面をアクリル板に接するようにして加圧貼付した後、剥離フィルムを剥離した。得られたアクリル板を45℃で24時間静置した後、高圧水銀UVランプによりUVA領域における積算光量が1250mJ/cmの紫外線を照射しハードコート面を有する加飾積層体を得た。
【0079】
(実施例4)
実施例3の加飾用転写フィルム1を加飾用転写フィルム2に代え、他は実施例3と同様に操作して加飾積層体を得た。
【0080】
(比較例3)
実施例3の加飾用転写フィルム1を加飾用転写フィルム3に代え、他は実施例3と同様に操作して加飾積層体を得た。
【0081】
(比較例4)
実施例3の加飾用転写フィルム1を加飾用転写フィルム4に代え、他は実施例3と同様に操作して加飾積層体を得た。
【0082】
このようにして得られた実施例3、4および比較例3、4の加飾積層体について次の評価試験を実施し、表1の結果を得た。
【0083】
<密着性試験>
実施例3、4および比較例3、4で得られた加飾積層体のハードコート面に×状の切れ込みを入れ、その上にセロファンテープを密着させて剥がしたときに、その硬化皮膜が剥がれないものを○ 、剥がれるものを× として評価とした。
【0084】
<耐候性試験>
実施例3、4および比較例3、4で得られた加飾積層体について、耐候性超促進試験機アイスーパーSUV-W161(岩崎電気(株)製)を用い、温度80℃、湿度65%、紫外線強度0.1W/cmの条件で、ハードコート面側について24時間促進試験を実施した。この促進試験の前後に、色彩色差計CR-300(コニカミノルタ(株)製)を用いてJIS Z 8781-4に準じて、ハードコート面側について測色し、その色差ΔEを求めた。当然に、色差が大きいほど耐候性が劣ることを示している。
なお、比較例4は密着性が不十分なので耐候性試験を実施しなかった。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の実施例3、4および比較例3、4を、硬化方法と、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の耐侯剤の有無と、で分類すると、B層は全て耐侯剤を含まない光ラジカル硬化で、A層が、
実施例3は、耐侯剤を含まない光カチオン硬化、
実施例4は、耐侯剤を含む光カチオン硬化、
比較例3は、耐侯剤を含まない光ラジカル硬化、
比較例4は、耐侯剤を含む光ラジカル硬化、
である。
表1によると、A層が耐侯剤を含まない場合、その硬化方法が光カチオン(実施例3)であっても光ラジカル(比較例3)であっても、同様の評価結果を示しているが、それぞれに耐侯剤を含有させた場合、光カチオン(実施例4)では色差が小さくなり優れた耐候性を示す一方、光ラジカル(比較例4)では密着性が大きく低下したため耐候性を測定するレベルに至らなかった。
この結果は、A層が光カチオン硬化でB層が光ラジカル硬化の場合には、A層に耐侯剤を含有させてもA層は硬化するが、AB両層とも光ラジカル硬化の場合には、A層に耐侯剤を含有させるとA層が硬化不良となることを示している。
すなわち、A層が光カチオン硬化でB層が光ラジカル硬化の場合には、A層に耐侯剤を含有させることによって耐候性を向上させることができるが、AB両層とも光ラジカル硬化の場合はA層に耐侯剤を含有させると、A層が硬化不良となるため、耐侯剤を含有させることができないといえる。