(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044635
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20240326BHJP
H10B 63/00 20230101ALI20240326BHJP
H10B 63/10 20230101ALI20240326BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240326BHJP
H10N 70/00 20230101ALI20240326BHJP
H10N 99/00 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L27/105 448
H01L27/105 449
H01L43/08 Z
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150282
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 剛之
(72)【発明者】
【氏名】松島 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小松 克伊
【テーマコード(参考)】
4M119
5F083
5F092
【Fターム(参考)】
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD31
4M119DD42
4M119EE21
4M119EE26
4M119JJ03
5F083FZ10
5F083JA38
5F083JA39
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5F083JA60
5F083PR22
5F092AB06
5F092AC12
5F092AD25
5F092CA02
(57)【要約】
【課題】特性の優れたスイッチング素子を有する記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態の記憶装置は、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、第2の導電層と第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を備える。第1の導電層と第3の導電層の間に第2の導電層が設けられる。スイッチング層は、Cr、La、Ce、Y、Sc、Zr、及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、少なくとも一つの元素の窒化物、及び少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、Te、Se、Sb、Bi、Ge、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
第2の導電層と、
第3の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、
前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を備え、
前記第1の導電層と前記第3の導電層の間に前記第2の導電層が設けられ、
前記スイッチング層は、 クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、前記少なくとも一つの元素の窒化物、及び前記少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、
テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、
前記第2の物質の酸化物、前記第2の物質の窒化物、及び前記第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、
を含む記憶装置。
【請求項2】
前記スイッチング層に含まれる前記第1の物質のモル分率は、前記スイッチング層に含まれる前記第3の物質のモル分率よりも大きい、請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記スイッチング層に含まれる前記第1の物質のモル分率は50mol%以上である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項4】
前記スイッチング層に含まれる前記第2の物質のモル分率は5mol%以上である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項5】
前記スイッチング層に含まれる前記第3の物質のモル分率は5mol%以上である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項6】
前記スイッチング層に含まれる前記第2の物質は2種類以上である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項7】
前記スイッチング層に含まれる前記第1の物質は酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、又は、酸化ランタンである、請求項1記載の記憶装置。
【請求項8】
前記第2の導電層は炭素又は窒化タングステンを含み、前記第3の導電層は炭素又は窒化タングステンを含む、請求項1記載の記憶装置。
【請求項9】
前記第2の導電層と前記スイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第1の層と、
前記第3の導電層と前記スイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第2の層と、
を更に備える、請求項1記載の記憶装置。
【請求項10】
前記第1の物質の融点は、前記第3の物質の融点より高い、請求項1記載の記憶装置。
【請求項11】
前記第1の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値は、前記第3の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値よりも大きい、請求項1記載の記憶装置。
【請求項12】
複数の第1の配線と、
前記複数の第1の配線と交差する複数の第2の配線と、
前記第1の配線と、前記第2の配線が交差する領域に位置するメモリセルを備え、
前記メモリセルは、
第1の導電層と、
第2の導電層と、
第3の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、
前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含み、
前記第1の導電層と前記第3の導電層の間に前記第2の導電層が設けられ、
前記スイッチング層は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、前記少なくとも一つの元素の窒化物、及び前記少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、
テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、
前記第2の物質の酸化物、前記第2の物質の窒化物、及び前記第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、
を含む記憶装置。
【請求項13】
前記スイッチング層に含まれる前記第1の物質のモル分率は、前記スイッチング層に含まれる前記第3の物質のモル分率よりも大きい、請求項12記載の記憶装置。
【請求項14】
前記スイッチング層に含まれる前記第1の物質のモル分率は50mol%以上である、請求項12記載の記憶装置。
【請求項15】
前記スイッチング層に含まれる前記第2の物質のモル分率は5mol%以上である、請求項12記載の記憶装置。
【請求項16】
前記スイッチング層に含まれる前記第3の物質のモル分率は5mol%以上である、請求項12記載の記憶装置。
【請求項17】
前記スイッチング層に含まれる前記第2の物質は2種類以上である、請求項12記載の記憶装置。
【請求項18】
前記第2の導電層は炭素又は窒化タングステンを含み、前記第3の導電層は炭素又は窒化タングステンを含む、請求項12記載の記憶装置。
【請求項19】
前記第2の導電層と前記スイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第1の層と、
前記第3の導電層と前記スイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第2の層と、
を更に備える、請求項12記載の記憶装置。
【請求項20】
前記第1の物質の融点は、前記第3の物質の融点より高い、請求項12記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の不揮発性記憶装置として、クロスポイント型の2端子の記憶装置がある。クロスポイント型の2端子の記憶装置は、メモリセルの微細化・高集積化が容易である。
【0003】
クロスポイント型の2端子の記憶装置のメモリセルは、例えば、抵抗変化素子とスイッチング素子を有する。メモリセルがスイッチング素子を有することで、選択メモリセル以外のメモリセルに流れる電流が抑制される。
【0004】
スイッチング素子には、低いリーク電流、高いオン電流、及び高い信頼性など、優れた特性を備えることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9960350号明細書
【特許文献2】米国特許第10217797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、特性の優れたスイッチング素子を有する記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の記憶装置は、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、前記第2の導電層と前記第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を備え、前記第1の導電層と第3の導電層の間に前記第2の導電層が設けられ、スイッチング層は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、前記少なくとも一つの元素の窒化物、及び前記少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、前記第2の物質の酸化物、前記第2の物質の窒化物、及び前記第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態の記憶装置のメモリセルの模式断面図。
【
図4】第1の実施形態のスイッチング素子の電流電圧特性の説明図。
【
図5】比較例の記憶装置のメモリセルの模式断面図。
【
図7】第1の実施形態の変形例の記憶装置のメモリセルの模式断面図。
【
図8】第2の実施形態の記憶装置のメモリセルの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0010】
本明細書中の記憶装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)や電子エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy:EELS)などにより行うことが可能である。また、記憶装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、記憶装置を構成する部材の構成物質の同定、構成物質の存在割合の計測には、例えば、X線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いることが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の記憶装置は、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、第2の導電層と第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を備える。第1の導電層と第3の導電層の間に第2の導電層が設けられる。スイッチング層は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、少なくとも一つの元素の窒化物、及び少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、を含む。
【0012】
また、第1の実施形態の記憶装置は、複数の第1の配線と、複数の第1の配線と交差する複数の第2の配線と、第1の配線と、第2の配線が交差する領域に位置するメモリセルを備える。メモリセルは、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられた抵抗変化層と、第2の導電層と第3の導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含む。第1の導電層と第3の導電層との間に第2の導電層が設けられる。スイッチング層は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、少なくとも一つの元素の窒化物、及び少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質と、テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質と、第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質と、を含む。
【0013】
図1は、第1の実施形態の記憶装置のブロック図である。
【0014】
第1の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイ100は、例えば、半導体基板101上に絶縁層を介して、複数のワード線102と、ワード線102と交差する複数のビット線103とを備える。ビット線103は、例えば、ワード線102の上層に設けられる。また、メモリセルアレイ100の周囲には、周辺回路として、第1の制御回路104、第2の制御回路105、センス回路106が設けられる。
【0015】
ワード線102は第1の配線の一例である。また、ビット線103は、第2の配線の一例である。
【0016】
ワード線102と、ビット線103が交差する領域に、複数のメモリセルMCが設けられる。第1の実施形態の記憶装置は、クロスポイント構造を備える二端子の磁気抵抗メモリである。
【0017】
複数のワード線102は、それぞれ、第1の制御回路104に接続される。また、複数のビット線103は、それぞれ、第2の制御回路105に接続される。センス回路106は、第1の制御回路104及び第2の制御回路105に接続される。
【0018】
第1の制御回路104及び第2の制御回路105は、例えば、所望のメモリセルMCを選択し、そのメモリセルMCへのデータの書き込み、メモリセルMCのデータの読み出し、メモリセルMCのデータの消去等を行う機能を備える。データの読み出し時に、メモリセルMCのデータは、ワード線102と、ビット線103との間に流れる電流量として読み出される。センス回路106は、その電流量を判定して、データの極性を判断する機能を備える。例えば、データの“0”、“1”を判定する。
【0019】
第1の制御回路104、第2の制御回路105、及び、センス回路106は、例えば、半導体基板101上に形成される半導体デバイスを用いた電子回路で構成される。
【0020】
図2は、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルの模式断面図である。
図2は、
図1のメモリセルアレイ100中の、例えば点線の円で示される一個のメモリセルMCの断面を示す。
【0021】
メモリセルMCは、
図2に示すように、下部電極10、中間電極20、上部電極30、抵抗変化層40、及び、スイッチング層50を備える。抵抗変化層40は、固定層41、トンネル層42、及び自由層43を含む。スイッチング層50は、マトリックス領域51、金属領域52、及び金属絶縁物領域53を含む。
【0022】
下部電極10は、第1の導電層の一例である。中間電極20は、第2の導電層の一例である。上部電極30は、第3の導電層の一例である。
【0023】
下部電極10、抵抗変化層40、及び中間電極20が、メモリセルMCの抵抗変化素子を構成する。中間電極20、スイッチング層50、及び上部電極30が、メモリセルMCのスイッチング素子を構成する。
【0024】
下部電極10はワード線102に接続される。下部電極10は、例えば金属である。下部電極10は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、又は、それらの窒化物である。下部電極10は、例えば、窒化チタンである。下部電極10はワード線102の一部であっても構わない。
【0025】
上部電極30はビット線103に接続される。上部電極30は、例えば金属である。上部電極30は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、又は、それらの窒化物である。上部電極30は、例えば、窒化チタンである。上部電極30はビット線103の一部であっても構わない。
【0026】
上部電極30は、例えば、炭素(C)又は窒化タングステンを含む。上部電極30は、例えば、炭素(C)又は窒化タングステンである。
【0027】
中間電極20は、下部電極10と上部電極30との間に設けられる。中間電極20は、例えば金属である。中間電極20は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、又は、それらの窒化物である。中間電極20は、例えば、窒化チタンである。
【0028】
中間電極20は、例えば、炭素(C)又は窒化タングステンを含む。中間電極20は、例えば、炭素(C)又は窒化タングステンである。
【0029】
抵抗変化層40は、下部電極10と中間電極20との間に設けられる。抵抗変化層40は、固定層41、トンネル層42、及び自由層43を有する。抵抗変化層40は、固定層41、トンネル層42、及び自由層43で構成される磁気トンネル接合を含む。
【0030】
抵抗変化層40は、抵抗変化によりデータを記憶する機能を有する。
【0031】
固定層41は、強磁性体である。固定層41では、磁化方向が特定の方向に固定される。
【0032】
トンネル層42は、絶縁体である。トンネル層42では、電子がトンネル効果によって通過する。
【0033】
自由層43は、強磁性体である。自由層43では、磁化方向が変化する。自由層43の磁化方向は、固定層41の磁化方向と平行な方向、及び、固定層41の磁化方向と反対の方向のどちらの状態もとることが可能である。例えば、下部電極10と中間電極20との間に、電流を流すことにより、自由層43の磁化方向を変化させることが可能となる。
【0034】
自由層43の磁化方向を変化させることで、抵抗変化層40の抵抗が変化する。自由層43の磁化方向が固定層41の磁化方向と反平行になる場合、電流が流れにくい高抵抗状態となる。一方、自由層43の磁化方向が固定層41の磁化方向と平行な方向になる場合、電流が流れやすい低抵抗状態となる。
【0035】
スイッチング層50は、中間電極20と上部電極30との間に設けられる。スイッチング層50の下部電極10から上部電極30に向かう第1の方向の厚さは、例えば、2nm以上10nm以下である。
【0036】
スイッチング層50は、特定の電圧(閾値電圧)で電流が急峻に立ち上がる非線形な電流電圧特性を有する。スイッチング層50は、半選択セルに流れる半選択リーク電流の増加を抑制する機能を有する。
【0037】
スイッチング層50は、マトリックス領域51、金属領域52、及び金属絶縁物領域53を含む。
【0038】
図2には、マトリックス領域51の中に複数の金属領域52が分散し、金属領域52の回りに金属絶縁物領域53が設けられる形態を例示している。しかしながら、金属領域52及び金属絶縁物領域53の形態は、必ずしも
図2に示される形態に限定されるわけではない。
【0039】
スイッチング層50は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、上記少なくとも一つの元素の窒化物、及び上記少なくとも一つの元素の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第1の物質を含む。スイッチング層50は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び、酸素(O)又は窒素(N)を含む第1の物質を含む。スイッチング層50は、クロム(Cr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び、酸素(O)又は窒素(N)を含む。
【0040】
第1の物質は、例えば、マトリックス領域51に含まれる。第1の物質は、例えば、スイッチング層50の主成分である。第1の物質がスイッチング層50の主成分であるとは、スイッチング層50には第1の物質よりもモル分率の高い物質は存在しないことを意味する。なお、モル分率は物質量分率と同義である。
【0041】
スイッチング層50に含まれる第1の物質のモル分率は、例えば、50mol%以上90mol%以下である。
【0042】
第1の物質は、絶縁体である。第1の物質は、例えば、酸化クロム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化ジルコニウム、又は酸化ハフニウムである。
【0043】
第1の物質の融点は、例えば、2000℃以上である。
【0044】
スイッチング層50は、テルル(Te)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる第2の物質を含む。第2の物質は、金属である。
【0045】
第2の物質は、例えば、金属領域52に含まれる。
【0046】
スイッチング層50に含まれる第2の物質のモル分率は、例えば、5mol%以上40mol%以下である。
【0047】
第2の物質は、導電体である。第2の物質は、例えば、テルル、セレン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、又はスズである。
【0048】
スイッチング層50に含まれる第2の物質は、例えば、2種類以上である。スイッチング層50に含まれる第2の物質は、例えば、テルル及びセレンである。
【0049】
スイッチング層50は、スイッチング層50に含まれる第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質を含む。
【0050】
第3の物質は、例えば、金属絶縁物領域53に含まれる。
【0051】
スイッチング層50に含まれる第3の物質のモル分率は、例えば、5mol%以上40mol%以下である。
【0052】
第3の物質は、絶縁体である。第3の物質は、例えば、酸化テルル、窒化テルル、酸窒化テルル、酸化セレン、窒化セレン、酸窒化セレン、酸化アンチモン、窒化アンチモン、酸窒化アンチモン、酸化ビスマス、窒化ビスマス、酸窒化ビスマス、酸化ゲルマニウム、窒化ゲルマニウム、酸窒化ゲルマニウム、酸化スズ、窒化スズ、又は酸窒化スズである。
【0053】
第1の物質の融点は、第3の物質の融点より高い。
【0054】
また、第1の物質に含まれる元素は、第2の物質よりも酸化されやすい元素である。したがって、第1の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値は、第3の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値よりも大きい。
【0055】
スイッチング層50は、例えば、スパッタリング法により形成することが可能である。例えば、第1の物質と第3の物質を含むターゲットと第2の物質から成るターゲットを用いたコスパッタリング法(co-sputtering法)により、スイッチング層50を形成することが可能である。
【0056】
次に、第1の実施形態の記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0057】
第1の実施形態の記憶装置は、上述のように、自由層43の磁化方向を変化させることで、抵抗変化層40の抵抗が変化する。自由層43の磁化方向が固定層41の磁化方向と反対方向になる場合、電流が流れにくい高抵抗状態となる。一方、自由層43の磁化方向が固定層41の磁化方向と平行な方向になる場合、電流が流れやすい低抵抗状態となる。
【0058】
例えば、抵抗変化層40の高抵抗状態をデータ“1”、低抵抗状態をデータ“0”と定義する。メモリセルMCは異なる抵抗状態を維持できることで、“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。1つのメモリセルの書き込みは、そのセルに接続されたビット線とワード線との間に電流を流すことで行う。
【0059】
図3は、第1の実施形態の記憶装置の課題の説明図である。
図3は、メモリセルアレイ内の1個のメモリセルMCを書き込み動作のために選択した際に、メモリセルMCに印加される電圧を示している。ワード線とビット線の交点が、各メモリセルMCを表している。
【0060】
選択されたメモリセルMCはメモリセルA(選択セル)である。メモリセルAにつながるワード線には書き込み電圧Vwriteが印加される。また、メモリセルAにつながるビット線には、0Vが印加される。
【0061】
以下、メモリセルAと接続されないワード線及びビット線には、書き込み電圧の半分の電圧(Vwrite/2)が印加される場合を例に説明する。
【0062】
メモリセルAと接続されないワード線及びビット線に接続されたメモリセルC(非選択セル)に印加される電圧は0Vである。すなわち、電圧は印加されない。
【0063】
一方、メモリセルAと接続されたワード線又はビット線に接続されたメモリセルB(半選択セル)には、書き込み電圧Vwriteの半分の電圧(Vwrite/2)が印加される。したがって、メモリセルB(半選択セル)には、半選択リーク電流が流れることになる。
【0064】
図4は、第1の実施形態のスイッチング素子の電流電圧特性の説明図である。横軸がスイッチング素子に印加される電圧、縦軸がスイッチング素子に流れる電流である。
【0065】
スイッチング素子は閾値電圧Vthで電流が急峻に立ち上がる非線形な電流電圧特性を有する。閾値電圧Vthは、例えば、0.5V以上3V以下である。
【0066】
書き込み電圧Vwriteが閾値電圧Vthより高く、書き込み電圧Vwriteの半分の電圧(Vwrite/2)が閾値電圧より低くなるように、書き込み電圧Vwriteは設定される。書き込み電圧Vwriteを印加した時にスイッチング素子に流れる電流がオン電流(
図4中のIon)である。書き込み電圧Vwriteの半分の電圧(Vwrite/2)を印加した時にスイッチング素子に流れる電流が半選択リーク電流(
図4中のIhalf)である。
【0067】
半選択リーク電流が大きいと、例えば、チップの消費電力の増大を招く。また、例えば、配線での電圧降下が増加して選択セルに十分高い電圧が印加されなくなり、メモリセルMCへの書き込み動作が不安定となる。また、オン電流が小さいと、例えば、選択セルに流れる電流が不足し、メモリセルMCへの書き込み不足が生じる。したがって、スイッチング素子の電流電圧特性には、低い半選択リーク電流と高いオン電流を両立することが要求される。
【0068】
第1の実施形態のスイッチング素子のスイッチング層50は、第2の物質を含む。第2の物質は、スイッチング層50の中に準位を形成する機能を有する。スイッチング層50を電子が流れる際に、第2の物質によって形成された準位の間を電子がホッピングして移動する。第2の物質を含むことによって、スイッチング層50にプール・フレンケル伝導(PF伝導)に基づく電流を流すことができる。スイッチング層50にプール・フレンケル伝導(PF伝導)に基づく電流を流すことで、第1の実施形態のスイッチング素子のオン電流を高くできる。
【0069】
図5は、比較例の記憶装置のメモリセルの模式断面図である。
図5は、第1の実施形態の
図2に対応する図である。
【0070】
比較例の記憶装置のメモリセルMCは、スイッチング層50が、第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質を含まない点で、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルMCと異なる。比較例の記憶装置のメモリセルMCは、
図5に示すように、例えば、スイッチング層50が、金属絶縁物領域53を含まない点で、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルMCと異なる。
【0071】
図6は、比較例の記憶装置の問題点の説明図である。
図6は、
図5に対応する図である。
【0072】
比較例の記憶装置のメモリセルMCに、書き込み動作を繰り返すと、スイッチング素子の電流電圧特性が劣化する。具体的には、書き込み動作を繰り返すことで、スイッチング素子の半選択リーク電流が増加する。
【0073】
図6は、
図5に示した比較例の記憶装置のメモリセルMCに、書き込み動作を繰り返した場合の状態を示す。
図6に示すように、金属領域52が凝集し、スイッチング層50の中に電流のリーク経路が形成される。スイッチング層50の中に電流のリーク経路が形成されることで、スイッチング素子の半選択リーク電流が増加すると考えられる。比較例の記憶装置では、スイッチング素子の信頼性が低下する。
【0074】
第1の実施形態の記憶装置のメモリセルMCは、スイッチング層50が、第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質を含む。スイッチング層50が第3の物質を含むことで、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルMCに、書き込み動作を繰り返した場合であっても、スイッチング素子の電流電圧特性の劣化が生じない。第1の実施形態の記憶装置のメモリセルMCに、書き込み動作を繰り返した場合であっても、金属領域52の凝集は抑制される。
【0075】
第1の実施形態の記憶装置において、金属領域52の凝集が抑制されるのは、スイッチング層50が第2の物質の酸化物、第2の物質の窒化物、及び第2の物質の酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の物質を含むことで、金属領域52とマトリックス領域51との濡れ性が向上するためであると考えられる。
【0076】
第1の実施形態の記憶装置では、金属領域52の凝集が抑制されることで、メモリセルMCへの書き込み動作を繰り返した後も、スイッチング素子の半選択リーク電流の増加が抑制される。したがって、第1の実施形態の記憶装置では、スイッチング素子の信頼性が向上する。
【0077】
第1の実施形態によれば、低い半選択リーク電流、高いオン電流、及び、高い信頼性を備えたスイッチング素子を実現できる。
【0078】
第1の実施形態の記憶装置において、金属領域52の凝集を抑制し、スイッチング素子の信頼性を向上させる観点から、スイッチング層50に含まれる第3の物質のモル分率は、5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましい。
【0079】
第1の実施形態の記憶装置において、金属領域52の凝集を抑制し、スイッチング素子の信頼性を向上させる観点から、スイッチング層50に含まれる第2の物質は、2種類以上であることが好ましい。
【0080】
第1の実施形態の記憶装置において、スイッチング素子のオン電流を高くする観点から、スイッチング層50に含まれる第2の物質のモル分率は、5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましい。
【0081】
第1の実施形態の記憶装置の信頼性を向上する観点から、中間電極20は、炭素(C)又は窒化タングステンを含むことが好ましい。中間電極20が、炭素(C)又は窒化タングステンを含むことで、スイッチング層50に含まれる第2の物質が、中間電極20に拡散し、スイッチング素子の電流電圧特性が変動することが抑制される。
【0082】
第1の実施形態の記憶装置の信頼性を向上する観点から、上部電極30は、炭素(C)又は窒化タングステンを含むことが好ましい。上部電極30が、炭素(C)又は窒化タングステンを含むことで、スイッチング層50に含まれる第2の物質が、上部電極30に拡散し、スイッチング素子の電流電圧特性が変動することが抑制される。
【0083】
第1の実施形態の記憶装置において、スイッチング層50に含まれる第1の物質の融点は、第3の物質の融点より高い。第1の物質が含まれるマトリックス領域51の融点が高いことで、マトリックス領域51の軟化が抑制され、金属領域52の凝集が抑制される。
【0084】
第1の実施形態の記憶装置において、第1の物質に含まれる第1の元素は、第2の物質よりも酸化されやすい元素である。すなわち、第1の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値は、第3の物質の標準生成ギブスエネルギーの絶対値よりも大きい。言い換えれば、第2の物質は、第1の物質に含まれる第1の元素よりも酸化されにくい。したがって、例えば、第2の物質が酸化され、オン電流が低下することが抑制される。
【0085】
(変形例)
第1の実施形態の変形例の記憶装置は、第2の導電層とスイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第1の層と、第3の導電層とスイッチング層との間に設けられ、炭素又は窒化タングステンを含む第2の層と、を更に備える。
【0086】
図7は、第1の実施形態の変形例の記憶装置のメモリセルの模式断面図である。
図7は、第1の実施形態の
図2に対応する図である。
【0087】
メモリセルMCは、
図7に示すように、下部電極10、中間電極20、上部電極30、抵抗変化層40、スイッチング層50、第1のバリア層61、及び第2のバリア層62を備える。抵抗変化層40は、固定層41、トンネル層42、及び自由層43を含む。スイッチング層50は、マトリックス領域51、金属領域52、及び金属絶縁物領域53を含む。
【0088】
第1のバリア層61は、第1の層の一例である。第2のバリア層62は第2の層の一例である。
【0089】
第1のバリア層61は、中間電極20とスイッチング層50との間に設けられる。第1のバリア層61は、炭素又は窒化タングステンを含む。第1のバリア層61は、例えば、炭素又は窒化タングステンである。第1のバリア層61の化学組成は、中間電極20の化学組成と異なる。
【0090】
第2のバリア層62は、上部電極30とスイッチング層50との間に設けられる。第2のバリア層62は、炭素又は窒化タングステンを含む。第2のバリア層62は、例えば、炭素又は窒化タングステンである。第2のバリア層62の化学組成は、上部電極30の化学組成と異なる。
【0091】
第1のバリア層61は、スイッチング層50に含まれる第2の物質が、中間電極20に拡散し、スイッチング素子の電流電圧特性が変動することを抑制する。また、第2のバリア層62は、スイッチング層50に含まれる第2の物質が、上部電極30に拡散し、スイッチング素子の電流電圧特性が変動することを抑制する。したがって、スイッチング素子の信頼性が向上する。
【0092】
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、低い半選択リーク電流、高いオン電流、及び、高い信頼性を備えたスイッチング素子を実現できる。よって、第1の実施形態及び変形例によれば、特性の優れたスイッチング素子を有する記憶装置を実現できる。
【0093】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の記憶装置は、抵抗変化型メモリ(ReRAM)である点で、第1の実施形態の記憶装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については記述を一部省略する。
【0094】
図8は、第2の実施形態の記憶装置のメモリセルの模式断面図である。
図8は、
図1のメモリセルアレイ100中の、例えば点線の円で示される一個のメモリセルMCの断面を示す。
【0095】
メモリセルMCは、
図8に示すように、下部電極10、中間電極20、上部電極30、抵抗変化層40、及び、スイッチング層50を備える。抵抗変化層40は、固定層41、トンネル層42、及び自由層43を含む。スイッチング層50は、マトリックス領域51、金属領域52、及び金属絶縁物領域53を含む。
【0096】
下部電極10は、第1の導電層の一例である。中間電極20は、第2の導電層の一例である。上部電極30は、第3の導電層の一例である。
【0097】
下部電極10、抵抗変化層40、及び中間電極20が、メモリセルMCの抵抗変化素子を構成する。中間電極20、スイッチング層50、及び上部電極30が、メモリセルMCのスイッチング素子を構成する。
【0098】
抵抗変化層40は、高抵抗層40xと低抵抗層40yを含む。
【0099】
高抵抗層40xは、例えば、金属酸化物である。高抵抗層40xは、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、又は、酸化ニオブである。
【0100】
低抵抗層40yは、例えば、金属酸化物である。低抵抗層40yは、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、又は、酸化タングステンである。
【0101】
抵抗変化層40に電流を印加することで、抵抗変化層40が高抵抗状態から低抵抗状態へ、或いは、低抵抗状態から高抵抗状態へと変化する。抵抗変化層40への電流の印加により、高抵抗層40xと低抵抗層40yとの間で、酸素イオンが移動し、低抵抗層40yの中の酸素欠損量(酸素空孔量)が変化する。低抵抗層40yの中の酸素欠損量に伴い抵抗変化層40の導電性が変化する。低抵抗層40yは、いわゆる、空孔変調伝導性酸化物(Vacancy Modulated Conductive Oxide)である。
【0102】
例えば、高抵抗状態をデータ“1”、低抵抗状態をデータ“0”と定義する。メモリセルは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0103】
スイッチング層50の構成は、第1の実施形態の記憶装置と同様である。
【0104】
以上、第2の実施形態の記憶装置によれば、第1の実施形態と同様、低い半選択リーク電流、高いオン電流、及び、高い信頼性を備えたスイッチング素子を実現できる。よって、第2の実施形態によれば、特性の優れたスイッチング素子を有する記憶装置を実現できる。
【0105】
第1の実施形態では2端子の記憶装置として磁気抵抗メモリ、第2の実施形態では記憶装置として抵抗変化型メモリを例に説明したが、その他の2端子の記憶装置に本発明を適用することが可能である。例えば、相変化メモリ(Phase Change Memory:PCM)、又は、強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory:FeRAM)に本発明を適用することが可能である。
【0106】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
10 下部電極(第1の導電層)
20 中間電極(第2の導電層)
30 上部電極(第3の導電層)
40 抵抗変化層
50 スイッチング層
61 第1のバリア層(第1の層)
62 第2のバリア層(第2の層)
102 ワード線(第1の配線)
103 ビット線(第2の配線)
MC メモリセル