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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044643
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F01M11/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150299
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章
(72)【発明者】
【氏名】玉田 祥吾
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BB06
3G015BB11
3G015BH00
3G015FB05
(57)【要約】
【課題】外部加温源を使用することなくオイルを早期昇温させ得るエンジンを開示する。
【解決手段】オイルパンの深底部10にストレーナ14が配置されている。オイル戻し部16は、ストレーナ14よりも後ろに配置されている。パイプ内に伝熱媒体(流体)が封入されたヒートパイプ17が、受熱部17aがオイル戻し部16に位置して放熱部17bがストレーナ14の下端近傍に位置するようにして配置されている。機関を巡って昇温している還流オイルから、ストレーナ14に吸い込まれるオイルに対して熱交換される。従って、還流オイルがそのままストレーナ14で吸い込まれるのと同様の現象を生じて、機関を巡るオイルを早期昇温できる。その結果、機関の摺動部のフリクションを早期に低減して、燃費の向上に貢献できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを溜めるオイルパンと、前記オイルパンの底部からオイルを吸い上げるストレーナと、機関を経由して昇温した還流オイルが前記オイルパンに流入するオイル戻し部と、を備えているエンジンであって、
前記オイルパンに、上方に位置する受熱部と下方に位置する放熱部とを有する熱伝導体が、前記受熱部は前記オイル戻し部から流下するオイルに接触して、前記放熱部は前記ストレーナに吸い込まれるオイルに接触するようにして配置されている、
エンジン。
【請求項2】
前記熱伝導体はヒートパイプであり、前記ヒートパイプは、水平状部と、前記水平状部の一端から前記オイルパンの底部に向けて延びる傾斜部とを有して、前記水平状部を前記受熱部と成して前記傾斜部の端部を前記放熱部と成している、
請求項1に記載したエンジン。
【請求項3】
前記オイルパンの内部に配置されたバッフルプレートに前記熱伝導体の一部が連結されている、
請求項1又は2に記載したエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジン(内燃機関)に関するものであり、潤滑オイルの貯留装置に特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
エンジンには潤滑用等のオイルが使用されており、オイルはオイルパンに溜められている。そして、オイルパンに溜められたオイルはオイルポンプを経由して機関の各部位に送られ、潤滑等の仕事をしたオイルは、シリンダヘッド及びシリンダブロックに設けたオイル落とし通路からオイルパンに還流するようになっている(ピストン冷却用オイルジェットのように、オイル落とし通路を通らずにオイルパンに流下するオイルもある。)。
【0003】
さて、オイルの粘度は温度に反比例するため、低温環境下での始動時にはオイルの粘度が高くてフリクション増大によって燃費が悪化する問題がある。そこで、オイルを早期昇温させることによってフリクションを低減させる方策が提案されている。
【0004】
その例として特許文献1には、自動車用エンジンのオイルパンに関して、アルミのように伝熱性に優れたヒートシンクをオイルパンの下方に配置し、オイルが低温のときにはヒートシンクとオイルとの間に空間が空いて、オイルが高温になるとヒートシンクがオイルパンの下面に密着するように、サーモアクチュエータによってヒートシンクの姿勢を変えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-43835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オイルを早期昇温させる一つの方法は電熱ヒータで加温することがあるが、これはコストが嵩むという問題がある。また、熱源として電力を要するため、燃費の向上に貢献しているか否か判断し難い。これに対して、機関を巡って昇温したオイルがストレーナで速やかに吸い上げられると、オイルを早期昇温できて燃費の向上に貢献できると云える。
【0007】
そこで検討するに、オイルはストレーナで吸い上げられるが、車両用エンジンのオイルパンにおいては、車両が坂道を走行したりオイル量が低下したりしても確実にオイルを吸い上げできるように、ストレーナをオイルパンのうち最も深い部位に配置しているのに対して、オイル落とし通路はオイルパンの外周部の一部にストレーナから離れて設けられているため、昇温したオイルをストレーナで速やかに吸い上げることは困難であり、ストレーナからは、あまり昇温していないオイルが吸い上げられる。
【0008】
そして、特許文献1は、オイルパンからの放熱に着目して、オイルが低温のときにはオイルパンからの放熱を抑制し、オイルが高温になると走行風を利用してオイルパンからの放熱を促進するものと解されるが、オイルパンとヒートシンクとの間に間隔が空いていても、ストレーナから吸い上げられるオイルの温度には関係せず、徐々に昇温していくオイルをストレーナで吸い上げることに変わりはないため、低温環境下でのフリクションの早期低減にはさほど貢献しないと推測される。
【0009】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、ヒートパイプのような熱伝導体(熱交換部材)を有効利用して、低温始動時におけるフリクションの早期低減を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、請求項1のとおり、
「オイルを溜めるオイルパンと、前記オイルパンの底部からオイルを吸い上げるストレーナと、機関を経由して昇温した還流オイルが前記オイルパンに流入するオイル戻し部と、を備えているエンジンであって、
前記オイルパンに、上方に位置する受熱部と下方に位置する放熱部とを有する熱伝導体が、前記受熱部は前記オイル戻し部から流下するオイルに接触して、前記放熱部は前記ストレーナに吸い込まれるオイルに接触するようにして配置されている」
という構成になっている。
【0011】
本願発明は、様々な構成を含んでいる。その例として請求項2の発明は、
「前記熱伝導体はヒートパイプであり、前記ヒートパイプは、水平状部と、前記水平状部の一端から前記オイルパンの底部に向けて延びる傾斜部とを有して、前記水平状部を前記受熱部と成して前記傾斜部の端部を前記放熱部と成している」
という構成になっている。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記オイルパンの内部に配置されたバッフルプレートに前記熱伝導体の一部が連結されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、機関を巡って昇温した還流オイルの熱が、ストレーナに吸い込まれるオイルに熱伝導体を介して伝熱される。従って、機関から還流したオイルをそのままストレーナで吸い上げるのと同様の状態を作って、機関を巡るオイルを早期昇温させることができる。その結果、低温環境下での始動であっても摺動部のフリクションを早期に低減させて、燃費の向上に貢献できる。
【0014】
機関の摺動部のフリクション低減によって回転を安定化ができると、EGRガスの早期投入も可能になる。従って、本願発明では、排気ガスのクリーン化を促進できると共に、EGRガスの早期投入を通じた燃費の向上も可能になる。
【0015】
パイプ内に伝熱流体が封入されたヒートパイプは、伝熱効率に優れていて熱伝導体として好適である。そして、請求項2のように、ヒートパイプの水平状部を受熱部と成して傾斜部の先端部を放熱部と成すと、水平状部の広い範囲に亙って還流オイルを接触させることができて受熱量を大きくできる一方、傾斜部の先端部をストレーナの近くに配置することにより、ストレーナに吸い込まれるオイルに対して効率良く熱交換できる。
【0016】
オイルパンには、オイルの跳ね上がり防止等のためにバッフルプレートを配置することが行われているが、請求項3のようにバッフルプレートでヒートパイプ等の熱伝導体を支持すると、それだけ構造を簡単化できる。また、バッフルプレートは、ピストン冷却用オイルジェットによって昇温するため、バッフルプレート等からヒートパイプ等の熱伝導体に伝熱してオイルの昇温に更に貢献できる。
【0017】
また、バッフルプレートには熱伝導体を連結するためのリブなどを設ける必要があるため、バッフルプレートの強度向上にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の平面図である。
図2図1のII-II 視縦断側面図である。
図3図1のIII-III 視断面図である。
図4】(A)は第2実施形態の要部断面図、(B)は第3実施形態の要部断面図である。
図5】第4実施形態を示す図で、(A)は縦断側面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。
図6】第5実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、クランク軸線方向を前後方向としている。前と後ろについては、タイミングチェーンが配置されている側を前、ミッションケースが配置される側を後ろとしている。本実施形態は自動車用のエンジンに適用しており、エンジンは、クランク軸線を車幅方向に長い姿勢にした横置きでエンジンルームに搭載されており、排気側を車体の前方に向けて吸気側を車体の後方に向けている。
【0020】
(1).第1実施形態の構造
まず、図1~3に示す第1実施形態を説明する。本実施形態のエンジンは3気筒であり、図1に3つのシリンダボア1を一点鎖線で表示し、図2に3対のクランクアーム2を一点鎖線で表示している(3対のクランクアーム2は実際には位相がずれているが、便宜的に同じ高さに表示している。)。
【0021】
オイルパンは、機関本体を構成するシリンダブロック(図示せず)の下面に固定されている。シリンダブロック(及びシリンダヘッド)の前面には、タイミングチェーンを覆うフロントカバー(図示せず)が固定されている。本実施形態では、フロントカバーはその全体がオイルパンの上に位置しているが、フロントカバーの下部がオイルパンの前面に重ね固定される場合もある。
【0022】
オイルパンは、左右側壁3と前壁4と後ろ壁5と底板6とを有して上向きに開口しており、上端縁には、シリンダブロックに固定するためのフランジ7が全周に亙って形成されている。後ろ壁5には、ミッションケースの下半部が固定される。本実施形態のオイルパンは、金属の鋳造品又はダイキャスト品若しくは樹脂の成形品である。
【0023】
既述のとおり、本実施形態のエンジンは前排気であることから、図2のとおり、後ろ側の略半分程度の下面部に、排気管8の水平部が配置される切欠き部9を抉ったような状態に形成している。このため、底板6は、前側に位置した深底部10と、後ろ側に位置した浅底部11と、両者を繋ぐ段部12とで構成されている。平面視では、2番目のシリンダボア1と段部12とが重なっている。
【0024】
オイルパンのうち深底部10の箇所がオイル溜まり部13になっており、ストレーナ14がオイル溜まり部13の前部に配置されている。ストレーナ14はオイル溜まり部13の左右中間部に配置されているが、排気側に寄せたり吸気側に寄せたりすることは可能である。また、ストレーナ14の前後位置も任意に設定できる。
【0025】
ストレーナ14の上端14aは、ブラケットを介してオイルポンプに接続されている。オイルポンプは、クランク軸にロータを設けた直結タイプと、回転軸がチェーン等を介してクランク軸で駆動されるタイプとのいずれも採用できる。直結タイプの場合は、フロントカバーがポンプハウジングに兼用される。
【0026】
図1において、ストレーナ14の上端14aを一点鎖線で表示しているが、この表示から理解できるように、ストレーナ14は正面視で傾斜姿勢になっている。これは、ストレーナ14の上端14aやブラケットなどがクランクアーム2などのブロック側部材と干渉しないように配慮したものである。
【0027】
図2に一点鎖線で示すように、シリンダブロックの排気側壁部にはオイル落とし通路15が形成されており、オイル落とし通路15の下方部がオイルパンのオイル戻し部16になっている。実施形態では、オイル落とし通路15は、2番目のシリンダボア1と3番目のシリンダボア1との間のボア間部の外側に位置しており、オイルパンの内周面のうち排気側に寄っている。オイル戻し部16は、浅底部11と段部12との連接部のあたりに位置している。従って、還流オイルは深底部10に速やかに流れ込む。
【0028】
本実施形態では、熱伝導体としてヒートパイプ17を使用している。ヒートパイプ17は、熱伝達を司る流体(伝熱媒体)がパイプの内部に封入されたものであり、一端側は受熱部17aになって、他端側は放熱部17bになっている。そして、受熱部17aはオイル戻し部16に配置され、放熱部17bはストレーナ14の下端近傍に向けて配置されている。従って、受熱部17aの高さは高く、受熱部17aはオイルパンの上方に位置している。他方、放熱部17bの高さは低く、放熱部17bはオイルパンの下方に位置している。
【0029】
また、ヒートパイプ17は、先端部を受熱部17aと成した水平状部17cと、水平状部17cの端から斜め下方に向かう傾斜部17dとを有している。水平状部17cは受熱部17aを成している。傾斜部17dは、水平状部17cの一端からオイルパンの深底部10に向けて延びている。傾斜部17dの端部(水平状部17cと反対に位置した端部)は、放熱部17bを成している。更に、オイル戻し部16は排気側に寄っている一方、ストレーナ14は深底部10の左右中間部に位置しているため、ヒートパイプ17の水平状部17cは平面視でく字形に曲がって、傾斜部17dは平面視で直線状の姿勢になっている。ヒートパイプ17の放熱部17b(傾斜部17dの端部)には伝熱促進のために複数枚のフィン18を設けているが、フィン18を受熱部17a(水平状部17c)にも設けることは可能である。
【0030】
図3に示すように、ヒートパイプ17の水平状部17cは、オイルパンの側壁3に設けたボス部19にブラケット20を介してビス21で固定されている。本実施形態では、ブラケット20は折り返した金属板又は樹脂板で片持ち梁状に構成されており、ヒートパイプ17の水平状部17cを挟持した状態で、ビス21でボス部19に固定されている。オイルパンの段部12から柱状のボス部を立設して、ボス部19の上面に押さえ部材を介して水平状部17cをビス21で固定することも可能であるが、本実施形態では、還流するオイルの流れを阻害しないように、片持ち梁状のブラケット20を使用している。
【0031】
図2のとおり、ヒートパイプ17の水平状部17c全体がオイル溜まり部13の上方に位置しており、受熱部17aはオイル戻し部16に配置されて、オイル戻し部16から還流するオイルの流れに晒されている(オイルに接触している)。ヒートパイプ17の傾斜部17dの端部はオイルパンの深底部10(オイル溜まり部13)に位置しており、放熱部17bはストレーナ14の下端近傍に向けて配置されて、ストレーナ14に流入するオイルに接触している。
【0032】
(2).第1実施形態の纏め
以上の構成において、オイル戻し部16に還流したオイルは、摺動部での摩擦熱によって昇温していると共に、シリンダヘッドの排気側を通過することによっても昇温している。そして、昇温した還流オイルの熱がヒートパイプ17の受熱部17aに伝達されて、ヒートパイプ17に封入された媒体を通じて放熱部17bに伝熱されて、ストレーナ14に流入するオイルに熱が伝達される。
【0033】
これにより、ストレーナ14に吸い込まれるオイルは昇温するが、熱交換によって昇温してストレーナ14に吸い込まれたオイルが機関を巡って昇温し、ヒートパイプ17に吸い込まれるオイルをまた昇温させる、というサイクルを繰り返すことにより、機関を巡るオイルの昇温が促進されて、各摺動部のフリクションを速やかに低減して燃費向上に貢献できる。また、低速回転でも運転が安定するため、EGRガスの早期導入も可能になり、その結果、EGRシステムに起因した排気ガス浄化促進効果や燃費改善効果も享受できる。
【0034】
さて、オイルパンには、ピストン冷却用オイルジェットに使用したオイルが流下したり、クランク軸の摺動部からにじみ出たオイルが流下したりするが、オイルパンに戻るオイルの大部分はオイル落とし通路15から還流するオイルであり、オイル戻し部16に戻ったオイルは、流下による押し作用とストレーナ14による引き作用とにより、ストレーナ14に向かう傾向を呈する。すなわち、矢印22で示すように、オイル戻し部16からストレーナ14に向かう主流が存在していると云える。
【0035】
そして、本実施形態では、ヒートパイプ17の放熱部17bは、ストレーナ14の入口の周囲のうちオイル戻し部16を向いた方向に位置しているため、放熱部17bがオイルの主流22に晒されて、ストレーナ14に吸い込まれるオイルに熱を効率よく伝達できる。従って、ヒートパイプ17の熱交換効率を高めて、フリクションの早期低減に大きく貢献している。実施形態のように放熱部17bにフィン18を設けると、熱交換性能を更に向上できて好適である。
【0036】
(3).他の実施形態
次に、図4以下に示す他の実施形態を説明する。図4(A)に示す第2実施形態では、ヒートパイプ17の放熱部17bをストレーナ14の下方に配置している。放熱部17bは水平状の姿勢になっている。この実施形態では、ストレーナ14に吸い込まれるオイルに対する放熱部17bの晒し機能が高くなるため、熱交換性能を更に向上できる。
【0037】
図4(B)に示す第4実施形態では、放熱部17bは傾斜した姿勢のままでストレーナ14の下方に配置されている。この場合、放熱部17bの入り込みを許容するため、深底部10のうちストレーナ14の下方部を凹所10aに形成している。この例でも、ストレーナ14に吸い込まれるオイルに対する放熱部17bの晒し機能が高くなる。
【0038】
図5に示す第4実施形態では、オイルパンの内部にバッフルプレート23を配置し、バッフルプレート23に下向き突設した複数の吊支片(リブ)24でヒートパイプ17の水平状部17cを吊支している。バッフルプレート23は概ねオイルパンを塞ぐような形態になっているが、オイル戻し部16の箇所では切欠かれており、オイルはオイル戻し部16からバッフルプレート23の下方に流下する。
【0039】
バッフルプレート23は、オイルパンに設けた複数のボス部25にビス26で固定されている。図示は省略するが、バッフルプレート23には、オイルを下方に逃がすための開口を設けている。
【0040】
ヒートパイプ17の平面視形状は、第1実施形態と同様である。吊支片24は上向き鉤状に形成されており、開口部を窄まらせることにより、ヒートパイプ17の水平状部17cを弾性に抗して強制嵌入している。バッフルプレート23は例えば合成樹脂製であり、射出成型によって吊支片24を形成するためにできたスリット27が空いているが、スリット27から流下したオイルをヒートパイプ17の水平状部17cに接触させることにより、水平状部17cを昇温させることができる。従って、放熱部17bに向かう熱量を増大できる。
【0041】
バッフルプレート23は金属板製とすることも可能である。この場合は、バッフルプレート23の熱を水平状部17cに効率良く伝達できる。バッフルプレート23を金属板製にした場合、吊支片24は切り起こしによって形成してもよいし、別体で作って溶接してもよい。
【0042】
本実施形態のように、ヒートパイプ17をバッフルプレート23に連結すると、バッフルプレート23の熱又はこれに流下したオイルの熱を有効利用できる。また、ボス部19などの支持手段をオイルパンに設けることは不要であるため、オイルパンの構造の複雑化を防止できる。更に、本実施形態では、ストレーナ14の下端にオイルの主流22が効率良く流入するように、主流22に向けて大きく開口するように斜めカットしている。従って、ヒートパイプ17の放熱部17bがオイルの主流22に強く晒される。
【0043】
図6に示す第5実施形態では、2つのボア間部の側方にそれぞれオイル落とし通路15とオイル戻し部16とが配置されている。そこで、ヒートパイプ17は、水平状部17cの全体を受熱部17aと成している。複数のオイル落とし通路15を備えたエンジンは多いが、複数の還流オイルの流れにヒートパイプ17の受熱部17aを曝すことにより、熱交換性能を大きく向上できる。複数のオイル落とし通路15及びオイル戻し部16を有する場合、複数のヒートパイプ17を配置してもよい。
【0044】
本実施形態では、ヒートパイプ17は、水平状部17cの全体を受熱部17aと成しているが、水平状部17cを形成せずに全体を傾斜した姿勢に配置し、上部に受熱部17aを設けて下部に放熱部17bを設けることも可能である。また、傾斜した上部に受熱部17aを設けて、下端部に図4(A)のような水平状の放熱部17bを設けることも可能である。
【0045】
更に、本実施形態では、ヒートパイプ17の水平状部17cがバッフルプレート23に連結されているが、ヒートパイプ17の傾斜部17dがバッフルプレート23に連結されてもよいし、水平状部17cと傾斜部17dとの両方がバッフルプレート23に連結されていてもよい(前記のようにヒートパイプ17の全体を傾斜させた場合は、当然ながら傾斜した部分がバッフルプレート23に連結される。)。
【0046】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えばバッフルプレートを設けた場合、還流したオイルをオイルパンの左右中間部に送る樋状部を形成して、ヒートパイプ17の水平状部を樋状部の内部に配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明は、エンジンに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 シリンダボア
2 クランクアーム
6 底板
8 排気管
10 深底部
11 浅底部
12 段部
13 オイル溜まり部
14 ストレーナ
15 オイル落とし通路
16 オイル戻し部
17 熱伝導体の一例としてのヒートパイプ
17a 受熱部
17b 放熱部
17c 水平状部
17d 傾斜部
18 フィン
23 バッフルプレート
24 吊支片
図1
図2
図3
図4
図5
図6