(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044660
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】補強部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E04B9/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150322
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397028360
【氏名又は名称】関包スチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】武佐 サライデン
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 俊治
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋介
(57)【要約】
【課題】断熱性を向上させつつ、吊り部材を補強することができる補強部材を提供する。
【解決手段】天井材を支持する吊り部材10を補強する補強部材100であって、スラブ2に固定された前記吊り部材10に取り付けられる取付部(取付孔111)と、前記スラブ2の下方に位置し、前記天井材から斜め上方向に延びるブレース40からの力を受ける受け部(下部)と、前記受け部(下部)からの力を、前記スラブ2側に伝達する伝達部(上部)と、前記スラブ2と前記受け部(下部110)との間において、断熱性を付与可能な断熱部(充填部140)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材を支持する吊り部材を補強する補強部材であって、
スラブに固定された前記吊り部材に取り付けられる取付部と、
前記スラブの下方に位置し、前記天井材から斜め上方向に延びるブレースからの力を受ける受け部と、
前記受け部からの力を、前記スラブ側に伝達する伝達部と、
前記スラブと前記受け部との間において、断熱性を付与可能な断熱部と、
を具備する、
補強部材。
【請求項2】
前記断熱部は、
前記スラブの下面に吹き付けられる断熱材を充填可能な空間を有し、
前記補強部材は、
前記断熱部に連通し、前記断熱材が通過可能な開口部が形成されている、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項3】
前記伝達部は、
前記スラブに当接する、
請求項1又は請求項2に記載の補強部材。
【請求項4】
前記受け部は、前記伝達部の下方に位置し、
前記受け部と前記伝達部とを接続する接続部を具備し、
前記接続部は、
前記伝達部側から前記受け部側に向かうに従い水平方向の寸法が小さくなるテーパー状に形成されている、
請求項3に記載の補強部材。
【請求項5】
前記補強部材は、
上下方向に開口する円錐台形の筒形状に形成されている、
請求項4に記載の補強部材。
【請求項6】
前記補強部材は、
水平方向に開口するように前記開口部が形成された筒形状に形成されている、
請求項2に記載の補強部材。
【請求項7】
前記補強部材は、
水平方向に分割された一対の分割部材により構成されている、
請求項6に記載の補強部材。
【請求項8】
前記取付部は、
複数の前記吊り部材を連結可能に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材の吊り部材を補強する補強部材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井材の吊り部材を補強する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、建物の床スラブから天井部材を吊り下げ支持する吊ボルトを補強する接続金具を設けた天井補強構造が記載されている。上記接続金具は、吊ボルトの上端部(床スラブ側の部分)を囲うように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、床スラブの下面には、ウレタンフォーム等の断熱材の吹き付けにより断熱層が形成される場合がある。このような場合、特許文献1に記載の天井補強構造では、接続金具により断熱層の形成が阻害されるおそれがあり、断熱性の点で更なる改善が望まれる。
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、断熱性を向上させつつ、吊り部材を補強することができる補強部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、天井材を支持する吊り部材を補強する補強部材であって、スラブに固定された前記吊り部材に取り付けられる取付部と、前記スラブの下方に位置し、前記天井材から斜め上方向に延びるブレースからの力を受ける受け部と、前記受け部からの力を、前記スラブ側に伝達する伝達部と、前記スラブと前記受け部との間において、断熱性を付与可能な断熱部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記断熱部は、前記スラブの下面に吹き付けられる断熱材を充填可能な空間を有し、前記補強部材は、前記断熱部に連通し、前記断熱材が通過可能な開口部が形成されているものである。
【0010】
請求項3においては、前記伝達部は、前記スラブに当接するものである。
【0011】
請求項4においては、前記受け部は、前記伝達部の下方に位置し、前記受け部と前記伝達部とを接続する接続部を具備し、前記接続部は、前記伝達部側から前記受け部側に向かうに従い水平方向の寸法が小さくなるテーパー状に形成されているものである。
【0012】
請求項5においては、前記補強部材は、上下方向に開口する円錐台形の筒形状に形成されているものである。
【0013】
請求項6においては、前記補強部材は、水平方向に開口するように前記開口部が形成された筒形状に形成されているものである。
【0014】
請求項7においては、前記補強部材は、水平方向に分割された一対の分割部材により構成されているものである。
【0015】
請求項8においては、前記取付部は、複数の前記吊り部材を連結可能に形成されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、断熱性を向上させつつ、吊り部材を補強することができる。
【0018】
請求項2においては、開口部を形成することで、補強部材により断熱層の形成が阻害されることを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0019】
請求項3においては、伝達部をスラブに当接させたことで、ブレースから伝達される斜め上方向の力をスラブに直接伝達することができる。
【0020】
請求項4においては、接続部をテーパー状に形成したことで、ブレースから伝達される斜め上方向の力を好適にスラブ側に伝達することができる。
【0021】
請求項5においては、ブレースから伝達される斜め上方向の力をより好適にスラブ側に伝達することができる。
【0022】
請求項6においては、開口部を有する補強部材を、比較的単純な形状で形成することができる。また、筒形状の補強部材の上端面をスラブに当接させることで、吊り部材に加わる力を軽減することができる。
【0023】
請求項7においては、筒形状の補強部材を製作し易くすることができる。
【0024】
請求項8においては、複数の吊り部材を連結することで、1つの吊り部材に応力が集中することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【
図7】本発明の第四実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【
図8】本発明の第五実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【
図9】本発明の第六実施形態に係る補強部材及び天井構造を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0027】
以下では、
図1から
図3までを用いて、第一実施形態に係る天井構造1について説明する。
【0028】
天井構造1は、建物における天井の構造である。天井構造1においては、建物の躯体(構造体)であるスラブ2から、後述する吊り部材10を介して、天井材(不図示)が支持される。
図1及び
図2では、天井構造1の一部(スラブ2側の部分)を示している。
【0029】
スラブ2は、当該スラブ2の下面を構成するデッキプレート2aの上に、コンクリート2bを打設して形成される。なお、
図1では、スラブ2のうち、コンクリート2bの図示を省略している。
図2に示すように、スラブ2の下面には、断熱材3が吹き付けられることで断熱層が形成される。断熱層を形成することで、スラブ2の下面に断熱性を付与することができる。断熱材3としては、ウレタンフォーム等を採用可能である。
【0030】
天井構造1は、吊り部材10、固定金具20、ナット30、ブレース40及び補強部材100を具備する。
【0031】
吊り部材10は、スラブ2から吊り下げられ、天井材(不図示)を支持するものである。吊り部材10は、水平方向に所定間隔を開けて複数配置される。なお、図例では1つの吊り部材10を示している。吊り部材10は、インサート11及び吊りボルト12を具備する。
【0032】
図2及び
図3に示すインサート11は、スラブ2に固定されるものである。インサート11は、下端部を除く部分がスラブ2に埋め込まれる。具体的には、インサート11は、コンクリート2bが打設される前のデッキプレート2aを上下に貫通するように設けられる。この状態では、インサート11の下端部がデッキプレート2aの下面から下方に突出する。この状態でデッキプレート2aの上面にコンクリート2bが打設されることで、インサート11は、スラブ2に埋め込まれる。本実施形態に係るインサート11は、後述する吊りボルト12を固定可能な雌ねじが下端部に形成された、雌型のインサートである。
【0033】
吊りボルト12は、天井材(不図示)を支持するものである。吊りボルト12は、上下に長尺な形状に形成されると共に、全体に亘って雄ねじが形成されている。吊りボルト12は、上端部がインサート11の雌ねじに嵌合することで、インサート11に対して固定される。また、吊りボルト12の下端部は、ハンガー(不図示)等を介して天井材の下地材(例えば野縁受け等)に固定される。
【0034】
図1から
図3までに示す固定金具20は、吊りボルト12と、後述するブレース40と、を連結するものである。固定金具20は、左右方向に長尺な形状に形成される。固定金具20は、板面を前後方向に向けた略板形状に形成される。
【0035】
固定金具20は、適宜折り曲げられた金属の板形状の部材により形成される。本実施形態では、固定金具20を、一対の板形状の部材を組み合わせて形成している。上記一対の板形状の部材は、前後方向に対称な形状に形成されている。なお、
図2及び
図3では、前後に一対の部材のうち後側の部材のみが図示されている。固定金具20は、挿通孔21及び固定孔22を具備する。
【0036】
図2及び
図3に示す挿通孔21は、吊りボルト12が挿通される孔である。挿通孔21は、固定金具20を上下方向に貫通するように形成される。挿通孔21は、一対の板形状の互いに対向する面に形成された凹部が組み合わされることで形成される。
【0037】
固定孔22は、ブレース40を固定可能な孔である。固定孔22は、固定金具20を前後方向に貫通するように形成される。固定孔22は、固定金具20の左右方向両側にそれぞれ形成される。固定孔22には、ボルト及びナットからなる固定具23が挿通される。
【0038】
本実施形態では、固定金具20を構成する一対の部材で、吊りボルト12を前後に挟むと共に、固定具23により上記一対の部材を固定することで、吊りボルト12に対して固定金具20を取り付けることができる。
【0039】
ナット30は、吊りボルト12に対して嵌合するものである。ナット30は、固定金具20の下方に設けられる。本実施形態では、吊りボルト12に対してナット30を嵌合することで、吊りボルト12に固定金具20及び補強部材100を固定している。なお、上記各部材の固定態様の詳細な説明は後述する。
【0040】
図1及び
図2に示すブレース40は、固定金具20と、天井材(野縁)側の部材と、の間に架設されるものである。ブレース40は、長尺状に形成され、長手方向を鉛直方向に対して傾斜した姿勢で(斜め方向に延びるように)配置される。図例では、ブレース40を、上端側に向かうに従い、左方に傾斜するように配置している。ブレース40の上端部は、固定具23により固定金具20に固定される。また、ブレース40の下端部(不図示)は、適宜の部材を介して、天井材の下地材(例えば野縁受け等)に固定される。
【0041】
上述の如き天井構造1において、例えば地震発生時に天井材が水平方向に揺れた場合、揺れにより生じる力(水平力や鉛直力)が、ブレース40や吊り部材10等を介してスラブ2側に伝達される。
【0042】
ここで、天井構造1においては、スラブ2と、ブレース40の上端部(固定金具20)と、の間に断熱材3による断熱層を形成するための隙間が形成される。この場合、インサート11に作用するブレース40の上端部の水平力による付加曲げモーメントが大きくなるため、インサート11(すなわち、吊り部材10)を補強する必要がある。
【0043】
本実施形態においては、上記隙間に補強部材100を配置することで、吊り部材10を補強している。以下では、補強部材100の詳細について説明する。
【0044】
図1から
図3までに示す補強部材100は、吊り部材10の補強を行うものである。補強部材100は、上下方向に開口する略円錐台形の筒形状に形成される。補強部材100は、例えば金属により形成される。補強部材100は、吊り部材10の吊りボルト12に取り付けられる。補強部材100は、スラブ2と、固定金具20と、の間に配置される。補強部材100は、下部110、側部120及び上部130を具備する。
【0045】
下部110は、補強部材100の下面を構成するものである。下部110は、板面を上下方向に向けた略円盤形状に形成される。下部110は、取付孔111を有する。
【0046】
図3に示す取付孔111は、吊りボルト12が挿通される孔である。取付孔111は、下部110の平面視中心部を、上下方向に貫通するように形成される。
【0047】
側部120は、補強部材100の側面を構成するものである。側部120は、下部110と、後述する上部130と、を接続する。側部120は、下部110の径方向外周部から、上方に延びるように形成される。側部120は、上方に向かうに従い径方向(水平方向)の寸法が大きくなるように拡径するテーパー状に形成されている。側部120は、開口部121を有する。
【0048】
開口部121は、側部120を水平方向に貫通するものである。開口部121は、水平方向に見て略矩形状に形成されている。開口部121は、側部120の下端部から、上下方向中途部まで延出するように形成される。開口部121は、複数形成される。本実施形態では、側部120の周方向に等間隔を開けて4つの開口部121を形成している。
【0049】
上部130は、補強部材100の上面を構成するものである。本実施形態では、側部120の上端部により上部130が構成されている。このため、補強部材100の上面の全体が開口している。
【0050】
補強部材100には、下部110及び側部120により区画された空間である充填部140が形成されている。充填部140は、開口部121を介して外部の空間と連通している。上記開口部121を介して、充填部140の内部に、断熱材3を充填することができる。なお、充填部140への断熱材3の充填の詳細な説明は後述する。
【0051】
以下では、天井構造1の施工において、固定金具20及び補強部材100を吊り部材10に取り付ける手順について説明する。なお、補強部材100等の取付作業は、スラブ2に断熱材3を吹き付ける前に行われる。
【0052】
補強部材100等の取付作業を行う作業者は、まず
図2及び
図3に示すように、スラブ2に固定された吊り部材10(吊りボルト12)に対して、補強部材100やナット30を挿通させる。この場合、作業者は、例えばインサート11に固定される前の吊りボルト12の上端部側に補強部材100やナット30を挿通させ、その後に吊りボルト12をインサート11に固定する。また、作業者は、補強部材100の下方(補強部材100とナット30との間)に位置するように固定金具20を吊りボルト12に取り付ける。
【0053】
次に、作業者は、固定金具20及び補強部材100をスラブ2側(上方)に押し付けるように、ナット30を吊りボルト12に嵌合させる。これにより、スラブ2とナット30で上下に挟むようにして、固定金具20及び補強部材100を吊り部材10に固定することができる。
【0054】
図2に示すように、この状態では、補強部材100の下部110に対して固定金具20の上端部が当接している。また、スラブ2の下面に対して、補強部材100の上部130が当接している。
【0055】
補強部材100等が取り付けられた後、スラブ2には、断熱材3が吹き付けられる。これにより、スラブ2と固定金具20との間(補強部材100が配置された部分)には、断熱材3による断熱層が形成される(
図2を参照)。
【0056】
本実施形態では、補強部材100に形成された開口部121に、断熱材3を通過させて、充填部140の内部に断熱材3を充填することができる。これにより、補強部材100を設けたことで断熱層の形成が阻害されることを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0057】
なお、上述した例では、固定金具20及び補強部材100を取り付けた状態で断熱材3を吹き付けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、補強部材100のみを吊り部材10に仮固定した状態で、断熱材3を吹き付けるようにしてもよい。この場合は、断熱層が形成された後に、吊り部材10に固定金具20を取り付ける。
【0058】
また、上述のように固定金具20を固定した状態では、固定金具20にブレース40の上端部を固定することができる。また、説明は省略するが、ブレース40の下端部には、天井材の下地材側の部材が固定される。
【0059】
上述の如き補強部材100を設けることで吊り部材10を補強し、吊り部材10に応力が集中することを抑制することができる。すなわち、補強部材100は、固定金具20に対して当接する下部110により、ブレース40から伝達される斜め上方向の力を受けると共に、上記斜め上方向の力を上部130を介してスラブ2側に伝達することができる。これにより、吊り部材10に応力が集中することを抑制し、吊り部材10に変形が生じることを抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、補強部材100を、テーパーを有する円錐台形状に形成しているので、ブレース40から伝達される斜め上方向の力を好適にスラブ2側に伝達することができる。
【0061】
なお、上述した例における補強部材100の形状等は一例であり、上記例に限定されない。例えば、補強部材100の開口部121の形状や大きさ、数等は、上記例に限定されない。開口部121の形状や大きさ、数は、補強部材100の強度や断熱材3の充填させ易さ等の観点から、適宜設定可能である。
【0062】
また、本実施形態では、側部120の上端部により上部130を構成し、補強部材100の上面の全体を開口させた例を示しているが、上記例に限定されない。例えば、上部130を、吊りボルト12が挿通される孔が形成された略円盤形状に形成してもよい。
【0063】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0064】
以下では、
図4から
図10までを参照して、本発明の別実施形態(第二~第六実施形態)について説明する。なお、以下の別実施形態の説明では、各実施形態の相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0065】
まず、
図4及び
図5を用いて、第二実施形態に係る補強部材100Aについて説明する。
【0066】
図4に示すように補強部材100Aは、水平方向(左右方向)に開口する略角筒形状に形成されている。また、補強部材100Aは、水平方向のうち開口方向に直交する方向(前後方向)に分割された一対の部材を組み合わせることで構成されている。
【0067】
以下では、一対の部材のうち、前方側の部材を第一部材101A、後方側の部材を第二部材102Aと称して各部材について説明する。本実施形態では、左右方向に見て略コ字(C字)形状に形成された第一部材101A及び第二部材102Aを、互いに前後方向に対称となるように組み合わせることで、略角筒形状の補強部材100Aを形成している。
【0068】
なお、本実施形態においては、第一部材101A及び第二部材102Aは互いに同寸同形状に形成されている。従って、以下では、第一部材101Aについて構成の説明を行い、第二部材102Aについては説明を省略する。
【0069】
第一部材101Aは、金属の板形状の部材により形成されている。第一部材101Aは、下部110A、側部120A及び上部130Aを具備する。
【0070】
下部110Aは、第一部材101Aの下側部分を構成するものである。下部110Aは、板面を上下方向に向けた板形状に形成される。下部110Aは、平面視において略矩形状に形成される。
図5に示すように、下部110Aは、上下方向に貫通する取付孔111を有する。
【0071】
側部120Aは、下部110Aと、後述する上部130Aと、を接続するものである。側部120Aは、下部110Aの前端部から、上方に延びるように形成される。側部120Aは、板面を前後方向に向けた板形状に形成される。側部120Aは、正面視において、上方に向かうに従い左右方向の寸法が大きくなる略台形状(テーパー状)に形成されている。
【0072】
上部130Aは、第一部材101Aの上側部分を構成するものである。上部130Aは、側部120Aの上端部から、後方に延びるように形成される。上部130Aは、板面を上下方向に向けた板形状に形成される。上部130Aは、平面視において略矩形状に形成される。上部130Aの前後寸法は、下部110Aの前後寸法と略同寸法に形成される。上部130Aの左右寸法は、下部110Aの左右寸法よりも大きく形成される。
図5に示すように、上部130Aは、上下方向に貫通する取付孔131を有する。
【0073】
補強部材100Aには、第一部材101A及び第二部材102Aの下部110A、側部120A及び上部130Aにより区画された空間である充填部140Aが形成されている。充填部140Aは、水平方向(左右方向)に開口している。
【0074】
以上、第一部材101Aの構成について説明した。なお上述したように、第二部材102Aについては、前後方向に対称に配置されている点を除いて第一部材101Aと概ね同様であるので説明を省略する。
【0075】
図4に示すように、本実施形態では、第一部材101A及び第二部材102Aを、互いに重ね合わせるようにして組み合わせることで、略角筒形状の補強部材100Aを構成している。より詳細には、本実施形態では、第一部材101A及び第二部材102Aの下部110A同士、及び上部130A同士を重ね合わせるようにして、各部材を組み合わせている。なお、図例では、第一部材101Aが上方に位置するように、各部材を重ね合わせた例を示している。
【0076】
以下では、補強部材100Aを、吊り部材10に取り付ける手順について説明する。
【0077】
補強部材100Aは、第一実施形態に係る補強部材100と概ね同等、吊り部材10を介してスラブ2側に固定される。ここで、本実施形態では、吊り部材10のインサート11Aとして、雄ねじが形成された雄型のインサートを採用している。
図5に示すように、スラブ2の下面には、インサート11Aの雄ねじが形成された部分が突出している。
【0078】
図5に示すように、補強部材100Aは、第一部材101A及び第二部材102Aの各上部130Aの取付孔131にインサート11Aを挿通させると共に、当該部分にナット30を嵌合させることで、インサート11Aに対して固定される。この状態では、第一部材101Aの上部130Aが、スラブ2の下面に当接する。
【0079】
また、補強部材100Aは、第一部材101A及び第二部材102Aの各下部110Aの取付孔111に、吊りボルト12が挿通される。また、吊りボルト12のうち、下部110Aの下側には、固定金具20が取り付けられる。本実施形態では、各下部110A及び固定金具20を上下に挟むように、一対のナット30を吊りボルト12に嵌合させることで、補強部材100A、固定金具20及び吊りボルト12を互いに固定している。このように、本実施形態では、補強部材100Aを介して、インサート11A及び吊りボルト12が接続されている。
【0080】
上述の如き補強部材100Aにおいても、第一実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。すなわち、固定金具20に対して当接する下部110Aによりブレース40から伝達される斜め上方向の力を受けると共に、上記斜め上方向の力を上部130Aを介してスラブ2側に伝達することができる。これにより、吊り部材10(インサート11A)に応力が集中することを抑制することができる。また、本実施形態では、比較的面積が大きく形成された補強部材100Aの上面(上部130A)をスラブ2に当接させることで、ブレース40から伝達される斜め上方向の力をスラブ2側に効果的に伝達することができる。
【0081】
また、補強部材100Aの側部120Aをテーパー形状に形成しているので、ブレース40から伝達される斜め上方向の力を好適にスラブ2側に伝達することができる。
【0082】
また、本実施形態では、スラブ2に断熱材3を吹き付ける際に、充填部140Aに断熱材3を充填することができる。これにより、補強部材100Aを設けたことで断熱層の形成が阻害されることを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0083】
また、補強部材100Aを、一対の部材(第一部材101A及び第二部材102A)を組み合わせることで形成しているので、略筒形状の補強部材100Aを製作し易くすることができる。本実施形態では、第一部材101A及び第二部材102Aを互いに同寸同形状に形成しているので、部材の種類が増えることを抑制することができる。
【0084】
次に、
図6を用いて、第三実施形態に係る補強部材100Bについて説明する。
【0085】
補強部材100Bは、分割された部材を組み合わせるのではなく、一体的に形成された略角筒形状である点で、第二実施形態に係る補強部材100Aと異なる。
【0086】
補強部材100Bは、下部110B、側部120B、上部130B及び充填部140Bを有する。なお、上記各部の構成は、第二実施形態に係る補強部材100Aの各部(下部110A、側部120A、上部130A及び充填部140A)に対応する。
【0087】
本実施形態に係る補強部材100Bによれば、各部を一体的に形成したことで、部材点数を削減することができる。また、補強部材100Bは、上記各実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。
【0088】
次に、
図7を用いて、第四実施形態に係る補強部材100Cについて説明する。
【0089】
補強部材100Cは、正面視においてテーパー形状に形成されていない点で、第三実施形態に係る補強部材100Bと異なる。
【0090】
補強部材100Cは、下部110C、側部120C、上部130C及び充填部140Cを有する。なお、上記各部の構成は、第三実施形態に係る補強部材100Bの各部(下部110B、側部120B、上部130B及び充填部140B)に対応する。
【0091】
補強部材100Cの側部120Cは、テーパー形状に形成されず、正面視略長方形状に形成されている。
【0092】
本実施形態では、吊り部材10のインサート11として、第一実施形態と同様な雌型のインサートを採用している。また、本実施形態では、第一実施形態と同様に、スラブ2とナット30により上下に挟むようにして、固定金具20及び補強部材100Cを吊り部材10に固定することができる。このように、本実施形態では、1つのナット30により各部材を固定することができる。
【0093】
本実施形態に係る補強部材100Cによれば、比較的単純な形状で、補強部材100Cを形成することができる。また、補強部材100Cは、上記各実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。
【0094】
次に、
図8を用いて、第五実施形態に係る補強部材100Dについて説明する。
【0095】
補強部材100Dは、充填部140Cが形成されていない点で、第四実施形態に係る補強部材100Cと異なる。
【0096】
補強部材100Dは、下部110D、側部120D及び上部130Dを有する。なお、上記各部の構成は、第四実施形態に係る補強部材100Cの各部(下部110C、側部120C及び上部130C)に対応する。
【0097】
補強部材100Dは、中実な略直方体形状に形成されている。補強部材100Dは、断熱性を有する材料で形成されている。補強部材100Dの材料としては、樹脂等を採用可能である。なお、補強部材100Dの材料としては、上述した例に限定されず、例えばコンクリートや金属、木等を採用可能である。補強部材100Dには、吊りボルト12を挿通可能なように上下に貫通する孔が形成されている。
【0098】
補強部材100Dは、第四実施形態に係る補強部材100Cにおいて空間(充填部140C)が形成された部分が閉塞されている。以下では、上記閉塞された部分を「中実部140D」と称する。補強部材100Dにおいては、断熱材3を内部の空間に充填するものとは異なり、中実部140Dを形成したことで断熱性を向上させることができる。
【0099】
また、補強部材100Dは、上記各実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。
【0100】
次に、
図9及び
図10を用いて、第六実施形態に係る補強部材100Eについて説明する。
【0101】
補強部材100Eは、複数の(本実施形態では2つの)吊り部材10を連結可能に形成されている点で、上記各実施形態と異なる。また、補強部材100Eは、ブレース40が固定される部材(上記各実施形態の固定金具20に相当)を利用して、吊り部材10の補強を行っている。以下の補強部材100Eの説明では、固定金具20との相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0102】
補強部材100Eは、互いに近接して配置された一対の吊り部材10を連結すると共に、ブレース40の上端部が固定される。補強部材100Eは、上記固定金具20と同様、適宜折り曲げられた金属の板形状の部材により形成される。また、補強部材100Eは、一対の板形状の部材を組み合わせて形成されている。補強部材100Eは、挿通孔21E及び固定孔22Eを具備する。
【0103】
図10に示す挿通孔21Eは、吊りボルト12が挿通される孔である。挿通孔21Eは、補強部材100Eを上下方向に貫通するように形成される。挿通孔21Eは、左右方向に間隔を開けて、一対形成される。挿通孔21Eは、一対の板形状の互いに対向する面に形成された凹部が組み合わされることで形成される。
【0104】
固定孔22Eは、ブレース40を固定可能な孔である。固定孔22Eは、補強部材100Eを前後方向に貫通するように形成される。固定孔22Eは、補強部材100Eの左右方向両側と、一対の挿通孔21Eの間と、に形成される。すなわち、本実施形態では、3つの固定孔22Eが形成される。固定孔22Eには、ボルト及びナットからなる固定具23が挿通される。
【0105】
本実施形態では、補強部材100Eを構成する一対の部材で、一対の吊りボルト12を前後に挟むと共に、固定具23により上記一対の部材を固定する。これにより、一対の吊りボルト12を連結することができる。
【0106】
本実施形態では、
図10に示すように、補強部材100Eは、吊り部材10のインサート11(雌型のインサート)とナット30により、上下に挟まれるようにして固定される。この状態では、補強部材100Eの上端部は、吊り部材10のインサート11の下端部に当接している。このようにして、補強部材100Eは、スラブ2の下面から、所定の隙間(インサート11の突出寸法分の隙間)を開けて配置される。また、本実施形態では、補強部材100Eの左右方向両側の固定孔22Eに、それぞれブレース40が固定されている。
【0107】
図9及び
図10に示すように、本実施形態では、補強部材100Eと、スラブ2と、一対のインサート11と、により区画された空間である充填部140Eが形成される。このように、補強部材100Eは、充填部140Eの一部を区画するように形成される。本実施形態では、スラブ2に断熱材3を吹き付ける際に、上述のように形成された充填部140Eに断熱材3を充填することができる。
【0108】
また、本実施形態では、一対の吊り部材10を連結することで、ブレース40から伝達される斜め上方向の力を一対の吊り部材10(インサート11)を介してスラブ2側に伝達することができる。これにより、吊り部材10に加わる力を分散させることができ、1つの吊り部材10に応力が集中することを抑制することができる。
【0109】
なお、上述した例における補強部材100Eの形状等は一例であり、上記例に限定されない。例えば、上記例においては、一対の吊り部材10を連結する部材と、ブレース40が固定される部材と、を兼用した例を示したが、上記各部材を別々に形成してもよい。
【0110】
また、上記例では、補強部材100Eの上端部を、吊り部材10のインサート11の下端部に当接させた例を示したが、このような例に限定されない。例えば、補強部材100Eを、インサート11に対して間隔を開けて配置してもよい。この場合は、一対のナット30により挟むようにして、吊り部材10に対して補強部材100Eを固定するようにしてもよい。
【0111】
また、上記例では、補強部材100Eにより2つの吊り部材10を連結した例を示したが、このような例に限定されない。例えば、補強部材100Eを、3つ以上の吊り部材10を連結可能に形成してもよい。この場合は、吊り部材10の数に応じて、挿通孔21Eの数を適宜設定可能である。
【0112】
以上のように、上記各実施形態に係る補強部材100~100Eは、
天井材を支持する吊り部材10を補強する補強部材100~100Eであって、
スラブ2に固定された前記吊り部材10に取り付けられる取付部(取付孔111、挿通孔21Eが形成された部分)と、
前記スラブ2の下方に位置し、前記天井材から斜め上方向に延びるブレース40からの力を受ける受け部(下部110~110D、固定孔22E)と、
前記受け部(下部110~110D、固定孔22Eが形成された部分)からの力を、前記スラブ2側に伝達する伝達部(上部130~130D、挿通孔21Eが形成された部分)と、
前記スラブ2と前記受け部(下部110~110D、固定孔22Eが形成された部分)との間において、断熱性を付与可能な断熱部(充填部140~140C、140E、中実部140D)と、
を具備するものである。
【0113】
このような構成により、断熱性を向上させつつ、吊り部材10を補強することができる。すなわち、伝達部(上部130~130D、挿通孔21Eが形成された部分)によりブレース40から伝達される斜め上方向の力をスラブ2側に伝達することで、吊り部材10に応力が集中することを抑制することができる。また、断熱部(充填部140~140C、140E、中実部140D)を設けたことで、断熱性を向上させることができる。
【0114】
また、上記各実施形態に係る補強部材100~100C、100Eにおいて、
前記断熱部(充填部140~140C、140E)は、
前記スラブ2の下面に吹き付けられる断熱材3を充填可能な空間を有し、
前記補強部材は、
前記断熱部(充填部140~140C、140E)に連通し、前記断熱材3が通過可能な開口部(開口部121、充填部140A~140C)が形成されているものである。
【0115】
このような構成により、開口部(開口部121、充填部140A~140C)を形成することで、補強部材100~100C、100Eにより断熱層の形成が阻害されることを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0116】
また、上記各実施形態に係る補強部材100~100Dにおいて、
前記伝達部(上部130~130D)は、
前記スラブ2に当接するものである。
【0117】
このような構成により、伝達部(上部130~130D)をスラブ2に当接させたことで、ブレース40から伝達される斜め上方向の力をスラブ2に直接伝達することができる。
【0118】
また、上記各実施形態に係る補強部材100~100Bにおいて、
前記受け部(下部110~110B)は、前記伝達部(上部130~130B)の下方に位置し、
前記受け部(下部110~110B)と前記伝達部(上部130~130B)とを接続する接続部(側部120~120B)を具備し、
前記接続部(側部120~120B)は、
前記伝達部(上部130~130B)側から前記受け部(下部110~110B)側に向かうに従い水平方向の寸法が小さくなるテーパー状に形成されているものである。
【0119】
このような構成により、接続部(側部120~120B)をテーパー状に形成したことで、ブレース40から伝達される斜め上方向の力を好適にスラブ2側に伝達することができる。
【0120】
また、上記第一実施形態に係る補強部材100は、
上下方向に開口する円錐台形の筒形状に形成されているものである。
【0121】
このような構成により、ブレース40から伝達される斜め上方向の力をより好適にスラブ2側に伝達することができる。
【0122】
また、上記各実施形態に係る補強部材100A~100Cは、
水平方向に開口するように前記開口部(充填部140A~140C)が形成された筒形状に形成されているものである。
【0123】
このような構成により、開口部(充填部140A~140C)を有する補強部材100A~100Cを、比較的単純な形状で形成することができる。また、筒形状の補強部材100A~100Cの上端面をスラブ2に当接させることで、吊り部材10に加わる力を軽減することができる。
【0124】
また、上記第二実施形態に係る補強部材100Aは、
水平方向に分割された一対の分割部材(第一部材101A、第二部材102A)により構成されているものである。
【0125】
このような構成により、筒形状の補強部材100Aを製作し易くすることができる。
【0126】
また、上記第六実施形態に係る補強部材100Eは、
複数の前記吊り部材10を連結可能に形成されているものである。
【0127】
このような構成により、複数の吊り部材10を連結することで、1つの吊り部材10に応力が集中することを抑制することができる。
【0128】
なお、取付孔111、挿通孔21Eが形成された部分は、取付部の実施の一形態である。
また、下部110~110D、固定孔22Eが形成された部分は、受け部の実施の一形態である。
また、側部120~120Bは、接続部の実施の一形態である。
また、上部130~130D、挿通孔21Eが形成された部分は、伝達部の実施の一形態である。
また、充填部140~140C、140E、中実部140Dは、断熱部の実施の一形態である。
【0129】
以上、各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0130】
例えば、上記各実施形態における補強部材100~100Eの形状等は一例であり、上記例に限定されない。例えば、補強部材100~100Eの上下寸法は、ブレース40の上端部の位置(断熱層の厚さ)等に応じて適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 天井構造
10 吊り部材
20 固定金具
30 ナット
40 ブレース
100 補強部材