(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044662
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ガラス樹脂積層体の製造方法及び樹脂板の処理方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/00 20060101AFI20240326BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B37/00
C08J7/00 306
C08J7/00 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150325
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】磯本 武彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 創
【テーマコード(参考)】
4F073
4F100
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BA26
4F073BB01
4F073CA07
4F073CA13
4F073GA01
4F073HA05
4F100AG00C
4F100AG00E
4F100AK01A
4F100AK45A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ61
4F100EJ61A
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りを抑制することにより、接着層による樹脂板とガラス板との接着力を均一に向上させる。
【解決手段】ガラス樹脂積層体の製造方法は、樹脂板2に対してプラズマヘッド12を相対的に移動させ、樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射するプラズマ処理工程S2と、プラズマが照射された樹脂板2の第一主面2aに接着層4を介してガラス板3を接合する接合工程S3とを備える。プラズマ処理工程S2では、樹脂板の第一主面2aとその反対側に位置する第二主面2bとの温度差を28℃以下とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂板の第一主面に接着層を介してガラス板を接合する接合工程を備えるガラス樹脂積層体の製造方法であって、
前記接合工程の前に、前記樹脂板に対してプラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、前記樹脂板の前記第一主面にプラズマを照射するプラズマ処理工程を備え、
前記プラズマ処理工程では、前記樹脂板の前記第一主面とその反対側に位置する第二主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とするガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理工程では、前記プラズマが、前記樹脂板の同じ位置に時間を置いて複数回照射される請求項1に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理工程では、前記樹脂板に対して前記プラズマヘッドを相対的に往復移動させる請求項2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理工程では、前記プラズマヘッドの相対的な走査方向に沿って複数枚の前記樹脂板を配置する請求項2又は3に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理工程では、前記プラズマ照射時に、前記樹脂板の前記第二主面を加熱する請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂板が、ポリカーボネートで形成される請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂板の板厚が、1mm以上である請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項8】
前記接合工程の後に、前記樹脂板の前記第二主面に第二接着層を介して第二ガラス板を接合する第二接合工程と、
前記第二接合工程の前に、前記樹脂板に対して第二プラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、前記樹脂板の前記第二主面にプラズマを照射する第二プラズマ処理工程をさらに備え、
前記第二プラズマ処理工程では、前記樹脂板の前記第二主面と前記第一主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ処理工程の後、前記接合工程の前に、前記樹脂板に対して第二プラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、前記樹脂板の前記第二主面にプラズマを照射する第二プラズマ処理工程と、
前記第二プラズマ処理工程の後に、前記樹脂板の第二主面に第二接着層を介して第二ガラス板を接合する第二接合工程とをさらに備え、
前記第二プラズマ処理工程では、前記樹脂板の前記第二主面と前記第一主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項10】
樹脂板に対してプラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、前記樹脂板の第一主面にプラズマを照射するプラズマ処理工程を備える樹脂板の処理方法であって、
前記プラズマ処理工程では、前記樹脂板の前記第一主面とその反対側に位置する第二主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とする樹脂板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス樹脂積層体の製造方法及び樹脂板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板は、耐候性・耐薬品性・耐擦傷性に優れる反面、物理衝撃や熱衝撃に対して破損しやすいという欠点がある。この欠点を解消するため、例えば、樹脂板の一方の面又は両面にガラス板を貼り合わせたガラス樹脂積層体が提案されている(例えば、特許文献1、2)。樹脂板は、ガラス板と比較して、耐候性・耐薬品性・耐擦傷性に劣る反面、ガラス板よりも比重が小さく、物理衝撃にも強いという利点がある。そのため、ガラス樹脂積層体においては、ガラス板と樹脂板の各々における短所を、各々の長所によって補うことが可能となると共に、同じ板厚を有するガラス板に比べて、大幅な軽量化を図ることができる。
【0003】
その一方で、樹脂板とガラス板との間には、一般的に熱膨張係数の差がある。そのため、ガラス樹脂積層体の製造工程で熱が加えられる工程がある場合、樹脂板とガラス板との間に熱変形量の差が生じ、接着層に大きな応力(例えばせん断応力)が作用しやすい。その結果、接着層の接着力が不十分であると、樹脂板とガラス板との間に剥離が生じ得る。なお、熱が加えられる工程としては、例えば、樹脂板とガラス板とを接着層を介して接合する接合工程が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-176551号公報
【特許文献2】特開2015-104845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂板とガラス板との剥離を抑制するために、樹脂板とガラス板とを接着層を介して接合する前に、樹脂板の接合面に対して、プラズマ装置のプラズマヘッドからプラズマを照射するプラズマ処理を行う場合がある。このように樹脂板にプラズマ処理を行えば、樹脂板の接合面の汚れが分解すると共に、表面改質(親水化)が進む。その結果、樹脂板と接着層との密着性が向上し、接着層による樹脂板とガラス板との接着力が増大する。
【0006】
しかしながら、樹脂板のプラズマ処理工程では、樹脂板に一時的に大きな反りが生じる場合がある。このように樹脂板に反りが生じると、樹脂板とプラズマヘッドとの離間距離が一定にならず、プラズマ処理の効果が不均一になる。そのため、接着層による樹脂板とガラス板との接着力が不均一となる場合がある。
【0007】
本発明は、プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りを抑制することにより、接着層による樹脂板とガラス板との接着力を均一に向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、樹脂板の第一主面に接着層を介してガラス板を接合する接合工程を備えるガラス樹脂積層体の製造方法であって、接合工程の前に、樹脂板に対してプラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、樹脂板の第一主面にプラズマを照射するプラズマ処理工程を備え、プラズマ処理工程では、樹脂板の第一主面とその反対側に位置する第二主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とする。
【0009】
本願発明者等は、鋭意研究の結果、プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りが、プラズマ照射に伴う樹脂板の第一主面(プラズマが照射される面)と第二主面(プラズマが照射される面の反対側に位置する面)との温度差にあることを知見した。そして、このような知見に基づき、プラズマ処理工程における樹脂板の第一主面と第二主面との温度差を種々調整したところ、当該温度差が上記の構成のように28℃以下になった場合に、樹脂板の反りを確実に抑制できることが判明した。
【0010】
なお、プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りが大きくなると、樹脂板とプラズマヘッドとが接触し、樹脂板及び/又はプラズマヘッドが傷ついたり壊れたりするおそれもある。したがって、プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りを抑制し得る本発明によれば、樹脂板及び/又はプラズマヘッドが傷ついたり壊れたりするのを防止することもできる。
【0011】
(2) 上記(1)の構成において、プラズマ処理工程では、プラズマが、樹脂板の同じ位置に時間を置いて複数回照射されることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、樹脂板の所定位置に対する一回毎のプラズマ照射時間は短くできるため、一回毎のプラズマ照射による樹脂板の第一主面の温度上昇を抑制できる。また、n(ただし、nは正の整数)回目のプラズマ照射とn+1回目のプラズマ照射との間で、樹脂板の所定位置にはプラズマが照射されない時間がある。そのため、プラズマが照射されない時間に樹脂板の第一主面の温度を自然冷却等によって下げることができる。したがって、プラズマ処理工程における樹脂板の第一主面と第二主面との温度差を抑制しやすくなる。
【0013】
(3) 上記(2)の構成において、プラズマ処理工程では、樹脂板に対してプラズマヘッドを相対的に往復移動させることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、樹脂板とプラズマヘッドとの間の簡単な相対移動によって、プラズマを樹脂板の同じ位置に時間を置いて複数回照射することができる。
【0015】
(4) 上記(2)又は(3)の構成において、プラズマ処理工程では、プラズマヘッドの相対的な走査方向に沿って複数枚の樹脂板を配置してもよい。
【0016】
このようにすれば、一つの樹脂板の第一主面にプラズマを照射している間に、プラズマが照射されていない別の樹脂板の第一主面の温度を自然冷却等により下げることができる。したがって、プラズマ処理工程における樹脂板の第一主面と第二主面との温度差を抑制しやすくなる。
【0017】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、プラズマ処理工程では、プラズマ照射時に、樹脂板の第二主面を加熱してもよい。
【0018】
このようにすれば、プラズマ照射によって樹脂板の第一主面の温度が上昇しても、樹脂板の第二主面も加熱によって温度が上昇する。そのため、プラズマ処理工程における樹脂板の第一主面と第二主面との温度差を抑制しやすくなる。
【0019】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、樹脂板が、ポリカーボネートで形成されることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、ガラス樹脂積層体の物理衝撃に対する強度を向上させやすくなる。
【0021】
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、樹脂板の板厚が、1mm以上であることが好ましい。
【0022】
樹脂板の板厚が1mm以上であれば、プラズマ処理工程における樹脂板の第一主面と第二主面との温度差が大きくなりやすい。したがって、樹脂板の板厚が1mm以上であれば、プラズマ処理工程で樹脂板に反りが生じやすく、本発明の反り抑制効果が特に有用となる。
【0023】
(8) 上記の(1)~(7)のいずれかの構成において、接合工程の後に、樹脂板の第二主面に第二接着層を介して第二ガラス板を接合する第二接合工程と、第二接合工程の前に、樹脂板に対して第二プラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、樹脂板の第二主面にプラズマを照射する第二プラズマ処理工程とをさらに備え、第二プラズマ処理工程では、樹脂板の第二主面と第一主面との温度差を28℃以下とすることが好ましい。
【0024】
このようにすることで、樹脂板の両面にガラス板が接合された場合でも、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。なお、プラズマ処理工程(つまり第一プラズマ処理工程)で用いるプラズマ装置(つまり第一プラズマ装置)と、第二プラズマ処理工程で用いる第二プラズマ装置とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
(9) 上記の(1)~(7)のいずれかの構成において、プラズマ処理工程の後、接合工程の前に、樹脂板に対して第二プラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、樹脂板の第二主面にプラズマを照射する第二プラズマ処理工程と、第二プラズマ処理工程の後に、樹脂板の第二主面に第二接着層を介して第二ガラス板を接合する第二接合工程とをさらに備え、第二プラズマ処理工程では、樹脂板の第二主面と第一主面との温度差を28℃以下とすることが好ましい。
【0026】
このようにすることで、樹脂板の両面にガラス板が接合された場合でも、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。なお、プラズマ処理工程(つまり第一プラズマ処理工程)で用いるプラズマ装置(つまり第一プラズマ装置)と、第二プラズマ処理工程で用いる第二プラズマ装置とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
(10) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、樹脂板に対してプラズマ装置のプラズマヘッドを相対的に移動させ、樹脂板の第一主面にプラズマを照射するプラズマ処理工程を備える樹脂板の処理方法であって、プラズマ処理工程では、樹脂板の第一主面とその反対側に位置する第二主面との温度差を28℃以下とすることを特徴とする。
【0028】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、プラズマ処理工程で発生する樹脂板の反りを抑制することにより、接着層による樹脂板とガラス板との接着力を均一に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法を示すフロー図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程を説明するための側面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程を説明するための平面図である。
【
図5】プラズマ処理工程で、樹脂板に反りが生じた状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法に含まれる接合工程を説明するための側面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程を説明するための側面図である。
【
図8】本発明の第三実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程を説明するための側面図である。
【
図9】本発明の第四実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0032】
<第一実施形態>
(ガラス樹脂積層体)
まず、本発明の第一実施形態に係るガラス樹脂積層体を説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス樹脂積層体1は、樹脂板2と、樹脂板2の第一主面2aに積層されるガラス板3と、ガラス板3を樹脂板2に接合する接着層4とを備え、例えばホームドアなどに利用される。ここで、樹脂板2は樹脂フィルムを含み、ガラス板3はガラスフィルムを含むものとする。
【0034】
本実施形態では、ガラス樹脂積層体1は、平面視で矩形状(例えば、正方形や長方形)をなす。樹脂板2、ガラス板3及び接着層4は、平面視で矩形状をなす。ガラス樹脂積層体1では、樹脂板2の面積が、ガラス板3の面積よりも大きい。また、樹脂板2の形状は、ガラス板3の形状と相似している。接着層4の面積は、樹脂板2の面積と同じ、または若干大きい。また、接着層4の形状は、樹脂板2の形状と相似している。なお、ガラス樹脂積層体1及びその各要素2~4の形状や大きさは、これに限定されない。
【0035】
樹脂板2は、第一主面2aと、第二主面2bと、第一主面2aと第二主面2bの平面視周縁部に位置し、これらを接続する端部(端面)2cとを有する。本実施形態では、樹脂板2の第一主面2aにガラス板3が積層されている。
【0036】
樹脂板2の厚みは、0.01~20mmであることが好ましく、0.05~15mmであることがより好ましく、0.1~10mmであることがさらに好ましい。
【0037】
樹脂板2の面積は、0.02~5m2以下であることが好ましく、0.1~3m2であることがより好ましく、0.2~2m2であることがさらに好ましい。
【0038】
樹脂板2の材質としては、ポリカーボネート、ポリメタアクリル酸メチル樹脂(PMMA)が好ましく、その他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等の各種樹脂材料を利用できる。本実施形態では、樹脂板2は、ポリカーボネートで形成されている。
【0039】
ガラス板3は、樹脂板2に接合される第一主面3aと、この第一主面3aとは反対側に位置する第二主面3bと、第一主面3aと第二主面3bの平面視周縁部に位置し、これらを接続する端部(端面)3cとを有する。
【0040】
ガラス板3の第一主面3aは、接着層4によって樹脂板2の第一主面2aに接合される。ガラス板3の第二主面3bは、ガラス樹脂積層体1の外面を構成するものである。本実施形態において、ガラス板3の端部3cは、接着層4によって被覆されている。ガラス板3は、樹脂板2の第一主面2a又は第二主面2bの範囲内に位置している。したがって、ガラス板3の端部3cは、樹脂板2の端部2cよりも内側に設けられる。ここで、樹脂板2の「内側」とは、樹脂板2の周縁部により区画される範囲の内側をいう。本実施形態において、樹脂板2の周縁部は、矩形状に構成される樹脂板2の四辺により構成される。
【0041】
ガラス板3は、樹脂板2よりも薄いことが好ましい。ガラス板3の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、10~700μmであることがより好ましく、50~500μm以下であることがさらに好ましく、80~300μm以下であることが特に好ましい。
【0042】
ガラス板3の面積は、樹脂板2の面積よりも小さいことが好ましい。ガラス板3の面積は、0.02~5m2であることが好ましく、0.1~3m2であることがより好ましく、0.2~2m2であることがさらに好ましい。また、ガラス板の面積は、樹脂板2の面積に対して90~100%であることが好ましく、94~100%であることがより好ましく、98~100%未満であることがさらに好ましい。
【0043】
ガラス板3の材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラス板3として無アルカリガラスを使用することで、化学的に安定なガラスとすることができる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。
【0044】
ガラス板3は、薄くても大きく撓むことのない適正な剛性を有するように、そのヤング率を可能な限り大きくすることが望ましい。この観点から、ガラス板3のヤング率は、50GPa以上であることが好ましく、60GPa以上であることがより好ましく、70GPa以上であることがさらに好ましい。特に、ガラス板3の厚みが300μm以下である場合、ガラス板3のヤング率は、65GPa以上であることが好ましい。
【0045】
ガラス板3は、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等を使用することができるが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、ガラス板3が採取される長尺なガラスリボンを連続成形するというものである。
【0046】
オーバーフローダウンドロー法により、厚み500μm以下のガラス板3を大量かつ安価に作製することができる。これにより作製されたガラス板3は、研磨や研削、ケミカルエッチング等によってガラス板3の厚みの調整をする必要がない。また、オーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラス板3の両面が成形体と接触しない成形法であり、得られたガラス板3の両主面3a,3bは火造り面となり、研磨しなくても高い表面品位を得ることができる。これにより、ガラス板3に対する接着層4の密着力を向上させることができ、より正確かつ精密にガラス板3と樹脂板2とを積層させることが可能となる。
【0047】
接着層4の厚みは、1~1000μmであることが好ましい。
【0048】
接着層4の材質としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、及びUV硬化樹脂が好適に使用され得るが、その他に、アクリル系粘着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、紫外線硬化性アクリル系接着剤、紫外線硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性メラミン系接着剤、熱硬化性フェノール系接着剤等が使用され得る。
【0049】
なお、接着層4は、内部に機能性フィルムを備えていてもよい。ここで、機能性フィルムとは、意匠性を有するフィルムや、物理的な特性を有するフィルムなどが挙げられる。意匠性を有するフィルムとしては、例えば、模様を印刷したフィルムなどがある。物理的な特性を有するフィルムとしては、例えば、赤外線遮蔽フィルム、電磁波遮蔽フィルム、可視光半透過フィルム、可視光反射フィルムなどがある。
【0050】
(ガラス樹脂積層体の製造方法)
次に、本実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法として、上記構成のガラス樹脂積層体1を製造する方法を説明する。
【0051】
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、準備工程S1と、プラズマ処理工程S2と、接合工程S3とを順に備える。
【0052】
準備工程S1では、ガラス樹脂積層体1を構成する各要素、すなわち樹脂板2、ガラス板3、及び接着層4(接着シート)を用意する。
【0053】
図3及び
図4に示すように、プラズマ処理工程S2では、プラズマ装置11を用いて、樹脂板2の第一主面2aに大気圧プラズマ処理(表面改質処理)を施す。プラズマ装置11は、プラズマPを照射するプラズマヘッド12と、樹脂板2が載置される定盤13とを備える。
【0054】
プラズマヘッド12は、定盤13上に載置された樹脂板2の第一主面(上面)2aにプラズマPを照射する。この際、樹脂板2の第一主面2aの反対側に位置する第二主面(下面)2bは、定盤13と接触している。
【0055】
このように樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射することで、第一主面2aの汚れが分解すると共に、表面改質(親水化)が進む。その結果、プラズマ処理工程S2の後工程である接合工程S3にて、樹脂板2と接着層4との密着性が向上し、接着層4による樹脂板2とガラス板3との接着力が増大する。
【0056】
しかしながら、プラズマPの照射に伴う樹脂板2の第一主面2aの温度上昇により、樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差が大きくなると、
図5に示すように、樹脂板2に大きな反りが生じる場合がある。樹脂板2の反りによって、例えば、プラズマPが照射される第一主面2a側が定盤13から離れる凸曲面となる。このような樹脂板2の反りによって、プラズマヘッド12と樹脂板2の第一主面2aとの離間距離D1が一定にならず、プラズマ処理による接着力の増大効果の不均一になるおそれがある。また、反った樹脂板2が、プラズマヘッド12に不当に接触するおそれもある。
【0057】
そこで、プラズマ処理工程S2では、樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差が28℃以下となるように、プラズマ処理条件(プラズマヘッド12の走査速度、プラズマPの照射回数など)を設定している。樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差は、25℃以下であることが好ましく、24℃以下であることがより好ましく、23℃以下であることがさらに好ましい。
【0058】
詳細には、本実施形態では、
図4に示すように、プラズマヘッド12は、樹脂板2の一方の辺(図示例では短辺)2pに沿った長尺体である。プラズマヘッド12は、樹脂板2の一方の辺2pに沿い、かつ、樹脂板2の一方の辺2pの長さよりも長いライン状の領域LにプラズマPを照射する。
【0059】
プラズマヘッド12は、ライン状のプラズマPを照射しながら、樹脂板2の他方の辺(図示例では長辺)2qと平行な走査方向SCに沿って往復移動するようになっている。このプラズマヘッド12の往復移動により、樹脂板2の第一主面2a全体にプラズマPが照射される。なお、樹脂板2に対してプラズマヘッド12が相対的に往復移動すれば、樹脂板2のみを移動させてもよいし、樹脂板2及びプラズマヘッド12の両方を移動させてもよい。
【0060】
このようにプラズマヘッド12を往復移動させることにより、樹脂板2の第一主面2a上の同じ位置に、プラズマPが時間を置いて複数回照射される。つまり、所望のプラズマ処理効果を、一回のプラズマPの照射ではなく、複数回のプラズマPの照射に分けて実現するものである。そのため、樹脂板2の所定位置に対する一回毎のプラズマPの照射時間は短くできる。その結果、一回毎のプラズマPの照射による樹脂板2の第一主面2aの温度上昇を抑制できる。また、樹脂板2の第一主面2a上の所定位置には、n回目のプラズマPの照射とn+1回目のプラズマPの照射との間にプラズマPが照射されない時間ができる。そのため、プラズマPが照射されない時間に樹脂板2の第一主面2aの温度を自然冷却等によって下げることができる。したがって、プラズマ処理工程S2における樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を28℃以下に制御しやすくなる。
【0061】
プラズマヘッド12と樹脂板2の第一主面2aとの離間距離D1は、0.1~20mmであることが好ましく、0.5~10mmであることがより好ましく、1~5mmであることがさらに好ましい。
【0062】
プラズマヘッド12の走査速度は、0.05~30m/minであることが好ましく、0.1~20m/minであることがより好ましく、0.2~10m/minであることがさらに好ましい。
【0063】
樹脂板2の同一位置に対するプラズマPの照射回数(往復回数×2)は、1~20回であることが好ましく、2~16回であることが好ましく、4~12回であることがさらに好ましい。
【0064】
本実施形態では、プラズマPを樹脂板2の両端部2cにも確実に照射するために、プラズマPの往路の始点(復路の終点)SP及び往路の終点(復路の始点)EPが、樹脂板2の各端部2cの外側に位置している。つまり、プラズマPは、樹脂板2の両端2cを通り過ぎてから点SP又は点EPで折り返される。端部2cと点SPとの離間距離D2、及び、端部2cと点EPとの離間距離D3は、0mm~500mmであることが好ましい。なお、これら離間距離の基準となる点SP及び点EPは、プラズマPの照射位置で定義される。
【0065】
そして、上記のプラズマ処理条件によって、プラズマPの照射に伴う樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を28℃以下にすれば、樹脂板2に反りが発生するのを確実に抑制できる。そのため、プラズマヘッド12と樹脂板2の第一主面2aとの離間距離D1が一定に保たれ、樹脂板2の第一主面2aにプラズマ処理を均一に施すことができる。つまり、プラズマ処理によって、樹脂板2の第一主面2a全体の接着力を満遍なく増大させることができる。その結果、後述する接合工程S3で接着層4により樹脂板2及びガラス板3を均一に接合できる。なお、プラズマ処理工程S2中の樹脂板2の反りを抑制できるため、樹脂板2がプラズマヘッド12に不当に接触することも防止できる。
【0066】
接合工程S3では、まず、
図6に示すように、第一主面2aがプラズマ処理された樹脂板2を含む各要素2~4を重ね合わせる。その後、各要素2~4を重ねた状態で、これらをオートクレーブ装置により熱圧着して接合させる。この過程で、ガラス板3は押圧されて加熱軟化した接着層4の一方の面に埋め込まれる。これにより、ガラス板3の端部3cは、接着層4によって被覆される。その後、接着層4が硬化することにより、
図1に示すガラス樹脂積層体1が完成する。このように製造されたガラス樹脂積層体1であれば、接着層4によって、樹脂板2とガラス板3とが強固に接合されるため、樹脂板2とガラス板3との間に剥離が生じるのを確実に抑制できる。
【0067】
なお、紫外線硬化性の接着剤(UV硬化樹脂)を用いてガラス樹脂積層体1を製造する場合には、接合工程S3において、オートクレーブ装置を使用せず、接着剤に紫外線を照射する。
【0068】
<第二実施形態>
(ガラス樹脂積層体の製造方法)
第二実施形態では、ガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程S2の変形例を示す。
図7に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理工程S2では、プラズマヘッド12の走査方向SCに沿って複数枚の樹脂板2が配置されている。このようにすれば、一つの樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射している間に、プラズマPが照射されていない別の樹脂板2の第一主面2aの温度を自然冷却等により下げることができる。したがって、プラズマ処理工程S2における樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を抑制しやすくなる。
【0069】
ここで、複数の樹脂板2は、プラズマヘッド12の走査方向SCに間隔を置いて配置されていることが好ましい。このようにすれば、走査方向SCで隣接する樹脂板2の相互間で熱の伝搬が抑制され、プラズマPの照射に伴って上昇した各樹脂板2の第一主面2aの温度が自然冷却等により下がりやすくなる。走査方向SCで隣接する樹脂板2の離間距離D4は、1~100mmであることが好ましい。なお、走査方向SCで隣接する樹脂板2は、端部2c同士が接触していてもよい。また、生産性を向上させる観点からは、プラズマヘッド12の走査方向SCと直交する方向にも、プラズマPが照射されるライン状領域L内で複数の樹脂板2を配置してもよい。この場合、例えば、複数の樹脂板2が、定盤13上に格子状(複数行×複数列)に配列される。
【0070】
<第三実施形態>
(ガラス樹脂積層体の製造方法)
第三実施形態では、ガラス樹脂積層体の製造方法に含まれるプラズマ処理工程S2の変形例を示す。
図8に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理工程S2では、プラズマPの照射時に、樹脂板2の第二主面2bを加熱する。
【0071】
詳細には、樹脂板2の第二主面2bの周縁部を枠状の治具31で下方から支持した状態で、治具31の開口部31aを通じて、ヒータ32によって樹脂板2の第二主面2bを加熱する。なお、治具31の形状は、ヒータ32によって樹脂板2の第二主面2bを加熱できるものであれば、枠状に限定されない。例えば、治具31が熱伝導率のよい金属等であって、治具31を介して樹脂板2の第二主面2bにヒータ32の熱を伝熱できる場合は、治具31は開口部31aを有さない板状などであってもよい。
【0072】
このようにすれば、プラズマPの照射によって樹脂板2の第一主面2aの温度が上昇しても、ヒータ32による加熱によって樹脂板2の第二主面2bの温度も上昇する。そのため、プラズマ処理工程S2における樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を抑制しやすくなる。
【0073】
なお、第二主面2bをヒータ32で加熱する場合、第一主面2aと第二主面2bとの温度差が28℃以下であれば、第二主面2bの温度が第一主面2aの温度よりも高くなってもよい。ただし、エネルギー効率の観点からは、プラズマPが照射される第一主面2aの温度が、プラズマPが照射されない第二主面2bの温度よりも高いことが好ましい。
【0074】
ヒータ32としては、例えば、抵抗加熱式ヒータ、誘導加熱式ヒータ、蒸気ヒータなどを使用できる。
【0075】
ヒータ32は、プラズマヘッド12と同期させて走査方向SCに移動させることが好ましい。このようにすれば、プラズマPが樹脂板2の第一主面2aに照射されている間のみ、樹脂板2の第二主面2bがヒータ32によって加熱されるため、ヒータ32によって樹脂板2が過剰に加熱されるのを抑制できる。
【0076】
また、ヒータ32によって樹脂板2の第二主面2bの温度が高くなりすぎた時のために、図示しない送風ファンを設け、樹脂板2の第二主面2bの温度を下げるようにしてもよい。
【0077】
<第四実施形態>
(ガラス樹脂積層体)
第四実施形態では、ガラス樹脂積層体1の変形例を示す。
図9に示すように、本実施形態に係るガラス樹脂積層体1は、樹脂板2の第一主面2a及び第二主面2bの両面に二枚のガラス板3x,3yが接着層4x,4yによって接合されてなる。すなわち、ガラス板3x,3yは、樹脂板2の第一主面2aに積層される第一ガラス板3xと、第二主面2bに積層される第二ガラス板3yとを含む。接着層4x,4yは、第一ガラス板3xを樹脂板2に接合する第一接着層4xと、第二ガラス板3yを樹脂板2に接合する第二接着層4yとを含む。第一ガラス板3x及び第二ガラス板3yには、同じ種類の材質のものを使用してもよく、異なった材質のものを使用してもよい。第一ガラス板3x及び第二ガラス板3yは、その用途に応じて異なる厚みを有していてもよい。
【0078】
(ガラス樹脂積層体の製造方法)
上記のように樹脂板2の両主面2a,2bにガラス板3x,3yを接着層4x,4yによって接合する構成の場合、ガラス樹脂積層体1の製造方法に含まれるプラズマ処理工程S2において、樹脂板2の第一主面2a及び第二主面2bのそれぞれに上述したプラズマ処理が施される。
【0079】
具体的には、本実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法は、例えば、樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射する第一プラズマ処理工程と、樹脂板2の第一主面2aに第一接着層4xを介して第一ガラス板3xを接合する第一接合工程と、樹脂板2の第二主面2bにプラズマPを照射する第二プラズマ処理工程と、樹脂板2の第二主面2bに第二接着層4yを介して第二ガラス板3yを接合する第二接合工程とを、この順に備える。つまり、本方法では、樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射し、樹脂板2の第一主面2aに第一ガラス板3xを接合した後、樹脂板2の第二主面2bにプラズマPを照射し、樹脂板2の第二主面2bに第二ガラス板3yを接合することによりガラス樹脂積層体1を得ることができる。
【0080】
あるいは、本実施形態に係るガラス樹脂積層体の製造方法は、例えば、樹脂板2の第一主面2aにプラズマPを照射する第一プラズマ処理工程と、樹脂板2の第二主面2bにプラズマPを照射する第二プラズマ処理工程と、樹脂板2の第一主面2aに第一接着層4xを介して第一ガラス板3xを接合する第一接合工程と、樹脂板2の第二主面2bに第二接着層4yを介して第二ガラス板3yを接合する第二接合工程とを、この順に備える。つまり、本方法では、樹脂板2の第一主面2a及び第二主面2bにプラズマPを別々に照射した後に、樹脂板2の両主面2a,2bのそれぞれに第一ガラス板3x及び第二ガラス板3yを接合することによりガラス樹脂積層体1を得ることができる。
【0081】
第一プラズマ処理工程では、樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を28℃以下とした状態で樹脂板2の第一主面2aにプラズマ処理が実施され、第二プラズマ処理工程では、樹脂板2の第二主面2bと第一主面2aとの温度差を28℃以下とした状態で樹脂板2の第二主面2bにプラズマ処理が実施される。第一プラズマ処理工程で用いる第一プラズマ装置と、第二プラズマ処理工程で用いる第二プラズマ装置とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。同じプラズマ装置を用いる場合、例えば、第一プラズマ処理工程と第二プラズマ処理工程とで、樹脂板2の表裏を反転させる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
上記の実施形態では、矩形状のガラス樹脂積層体1を例示したが、これに限定されない。ガラス樹脂積層体1は、その用途に応じて、円形、多角形、異形形状その他の各種形状に構成され得る。
【0084】
上記の実施形態において、プラズマ処理工程S2において、プラズマPが照射される樹脂板2の第一主面2aに冷媒(例えば、不活性ガスなど)を供給してもよい。このようにすれば、プラズマ処理工程S2における樹脂板2の第一主面2a及び第二主面2bの温度差を抑制できる。ただし、冷媒の供給によってプラズマPの効果が低下するおそれがあるため、第一主面2aを冷媒で冷却する代わりに、第二主面2bをヒータで加熱することが好ましい。
【0085】
上記の実施形態では、プラズマ処理工程S2において、プラズマヘッド12を樹脂板2に対して相対的に往復移動させながらプラズマPを照射する場合を説明したが、プラズマPの照射方法はこれに限定されない。例えば、所定のプラズマ処理の効果を達成しつつ、樹脂板2の第一主面2aと第二主面2bとの温度差を28℃以下に制御できる場合には、プラズマヘッド12を樹脂板2に対して往復移動させずに一方向のみに移動させてもよい。
【実施例0086】
以下、本発明に係るガラス物品について実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示であって、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0087】
本発明の効果を確かめるために、樹脂板の第一主面にプラズマ処理を施した。この際、プラズマ処理条件を変更して、プラズマの照射に伴う樹脂板の反りの有無を確認した。
【0088】
樹脂板としては、厚みが5mm、大きさが260mm×1000mmの矩形状のポリカードネートを用意した。また、プラズマ装置としては、
図1に示した装置を用いた。樹脂板は、長辺(1000mmの辺)の向きがプラズマヘッドの走査方向と一致するように、定盤に載置した。プラズマヘッドと樹脂板の第一主面との離間距離は、3mmとした。
【0089】
実施例1~6では、プラズマヘッドを往復移動させ、1.2m/minの走査速度で樹脂板の第一主面(上面)にプラズマを6回(往復回数3回×2)照射した。一方、比較例1では、プラズマヘッドを往復移動させず、0.5m/minの走査速度で樹脂板の第一主面(上面)にプラズマを1回だけ照射した。
【0090】
そして、上記のようなプラズマ処理において、樹脂板の第一主面(上面)及び第二主面(下面)にそれぞれ熱電対を取り付け、樹脂板の第一主面の最高温度とそのときの樹脂板の第二主面の温度を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1では、プラズマ処理中に2mm以上の反りが生じた場合に、樹脂板に反りが有ると評価した。
【0091】
【0092】
表1からも、樹脂板の第一主面と第二主面との温度差が28℃超である比較例1では、プラズマ処理中に樹脂板に反りが生じることが確認できる。一方、樹脂板の第一主面と第二主面との温度差が28℃以下である実施例1~6のすべてにおいて、プラズマ処理中に樹脂板に反りが生じていないことが確認できる。具体的には、比較例1では3mmの反りが確認され、実施例1~6では2mm以上の反りは確認されなかった。