(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044666
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】空調システムおよび建物
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20240326BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240326BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240326BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240326BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F5/00 K
F24F13/02 C
F24F11/70
F24F11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150330
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】村松 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】中谷 剛
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BA10
3L053BB02
3L053BB04
3L080AA05
3L080AC01
3L080BA04
3L080BA09
3L080BB02
3L260AA01
3L260BA07
3L260FA07
3L260FB44
(57)【要約】
【課題】各居室に供給される風量を各居室に応じて設定できる空調システムおよび建物を提供する。
【解決手段】給気口31および複数の吹出口32を備えるチャンバー3と、チャンバー3の内部を冷暖房する冷暖房装置4と、を有し、チャンバー3は、廊下21(非空調対象室)の上方に設けられ、廊下21の空気が給気口31を介して給気されるとともに、同一階において廊下21と隣接する複数の居室22(空調対象室)それぞれに面して設けられ、複数の居室22それぞれに吹出口32を介して内部の空気を吹き出し、複数の居室22それぞれから廊下21に空気が流入可能に構成され、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口および複数の吹出口を備えるチャンバーと、
前記チャンバーの内部を冷暖房する冷暖房装置と、を有し、
前記チャンバーは、非空調対象室の上方に設けられ、前記非空調対象室の空気が前記給気口を介して給気されるとともに、同一階において前記非空調対象室と隣接する複数の空調対象室それぞれに面して設けられ、前記複数の空調対象室それぞれに前記吹出口を介して内部の空気を吹き出し、
前記複数の空調対象室それぞれから前記非空調対象室に空気が流入可能に構成され、
前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている空調システム。
【請求項2】
前記吹出口の開口面積が設定されることによって、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定される請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記吹出口を介して前記チャンバーの空気を前記空調対象室に流入させる送風機を有し、
前記送風機の風量が設定されることによって、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定される請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
非空調対象室と、
同一階において前記非空調対象室と隣接する複数の空調対象室と、
給気口および複数の吹出口を備えるチャンバーと、
前記チャンバーの内部を冷暖房する冷暖房装置と、
前記非空調対象室と前記複数の空調対象室それぞれとの境界部分に設けられ、前記空調対象室から前記非空調対象室に空気を流入可能にする空気流入口と、を有し、
前記チャンバーは、前記非空調対象室の上方に設けられて前記非空調対象室との境界部分に前記給気口が設けられ、前記非空調対象室の空気が前記給気口を介して給気されるとともに、前記複数の空調対象室それぞれに面して設けられ、前記複数の空調対象室それぞれに前記吹出口を介して内部の空気を吹き出し、
前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムおよび建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の居室が設けられる建物において、各居室それぞれに冷暖房設備(エアコン)設置し、居室ごとに個別に空調を行っていた。各居室に冷暖房設備が必要となるため、初期費用が多額になるとともに、冷暖房設備の消費エネルギーが増大していた。
近年では、建物の断熱性能が飛躍的に向上しているため、比較的容量の小さい冷暖房設備1台で階全体を空調できることが明らかになっている。例えば、特許文献1に開示された空調システムは、廊下の上部に中空構造体を設け、中空構造体の内部で冷暖房設備によって空調された空気を廊下に隣接する同一階の各居室へ供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一の冷暖房装置によって空調された空気が供給される各居室は、それぞれ容積や用途が異なること場合がある。このような場合は、各居室に供給される風量をその居室の容積や用途に合わせて設定できることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、各居室に供給される風量を各居室に応じて設定できる空調システムおよび建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る空調システムは、給気口および複数の吹出口を備えるチャンバーと、前記チャンバーの内部を冷暖房する冷暖房装置と、を有し、前記チャンバーは、非空調対象室の上方に設けられ、前記非空調対象室の空気が前記給気口を介して給気されるとともに、同一階において前記非空調対象室と隣接する複数の空調対象室それぞれに面して設けられ、前記複数の空調対象室それぞれに前記吹出口を介して内部の空気を吹き出し、前記複数の空調対象室それぞれから前記非空調対象室に空気が流入可能に構成され、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建物は、非空調対象室と、同一階において前記非空調対象室と隣接する複数の空調対象室と、給気口および複数の吹出口を備えるチャンバーと、前記チャンバーの内部を冷暖房する冷暖房装置と、前記非空調対象室と前記複数の空調対象室それぞれとの境界部分に設けられ、前記空調対象室から前記非空調対象室に空気を流入可能にする空気流入口と、を有し、前記チャンバーは、前記非空調対象室の上方に設けられて前記非空調対象室との境界部分に前記給気口が設けられ、前記非空調対象室の空気が前記給気口を介して給気されるとともに、前記複数の空調対象室それぞれに面して設けられ、前記複数の空調対象室それぞれに前記吹出口を介して内部の空気を吹き出し、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている。
【0008】
本発明では、チャンバーから複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されているため、各空調対象室に供給される風量を各空調対象室に応じて設定できる。空調対象室は、居間や寝室、書斎、脱衣所などと想定すると、これらの部屋をそれぞれ快適な温度に維持できる。
【0009】
本発明に係る空調システムでは、前記吹出口の開口面積が設定されることによって、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されてもよい。
【0010】
このような構成とすることにより、吹出口の数や形状を設定して吹出口の開口面積を設定すれば、チャンバーから複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値を容易に設定できる。
【0011】
本発明に係る空調システムでは、前記吹出口を介して前記チャンバーの空気を前記空調対象室に流入させる送風機を有し、前記送風機の風量が設定されることによって、前記チャンバーから前記複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、送風機の風量を調整すれば、チャンバーから複数の空調対象室それぞれに吹き出される空気の抵抗値を容易に設定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各空調対象室に供給される風量を各空調対象室に応じて設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】空調システムおよび建物の縦断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による空調システムおよび建物について、
図1-
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による空調システム1は、戸建の2階建ての住宅である建物2の各階それぞれに設けられている。建物2の各階の空調システム1は、同様の構成である。建物2の1階の空調システム1について説明し、2階の空調システム1については説明を省略する。
【0016】
建物2の2階には、廊下21に面して複数の居室22が設けられている。居室22には、空調の対象となる部屋で、リビングやダイニング、寝室などである。居室22には、上記の他に、空調の対象となる書斎や脱衣所などが含まれていてもよい。本実施形態では、廊下21は、空調の対象とはならない。廊下21は、本発明の非空調対象室に相当する。居室22は、本発明の空調対象室に相当する。
【0017】
図2に示すように、廊下21および複数の居室22はそれぞれ壁26で仕切られている。壁26は、床27から天井211,221まで延びている。
図3に示すように、壁26には、廊下21と居室22とを往来可能な開口部23が設けられている。開口部23には、建具24が設けられている。建具24は、障子241の下縁部と床27の間に空気が流通可能な隙間25が設けられている。以下では、障子241の下縁部と床27との隙間25を空気流入口25と表記する。建具24の枠が下枠を備える場合には、障子241の下縁部と下枠との間に空気流入口25に相当する隙間が設けられている。
【0018】
図4に示すように、廊下21の天井高は居室22の天井高よりも低い。廊下21の天井211は、居室22の天井221よりも低く配置される。廊下21の天井裏空間212は、下部側が居室22と壁26を介して水平方向に隣接している。
【0019】
図1および
図2に示すように、空調システム1は、チャンバー3と、冷暖房設備4と、を有する。チャンバー3は、廊下21の天井211の上、すなわち廊下21の天井裏空間212に設けられている。冷暖房設備4は、チャンバー3の内部の温度調整を行う。冷暖房設備4は、温度調整機能に加えて、加湿・除湿機能および空気清浄機能を有していてもよい。冷暖房設備4は、チャンバー3の内部またはチャンバー3に隣接して設けられている。
【0020】
チャンバー3は、箱状に形成されている。チャンバー3は、例えば、板状の断熱パネルによって組み立てられている。板状の断熱パネルは、断熱性が高く、施工性も優れているため、断熱性能を向上できるとともに、チャンバー3をコンパクトな形状にでき、廊下21の天井211を大きく下げなくても廊下21の天井裏空間212にチャンバー3を収容できる。
チャンバー3は、給気口31および吹出口32を備えている。給気口31は、チャンバー3の下端に設けられ、下方、すなわち廊下21側に開口している。給気口31は、ダクトを介さずにチャンバー3の内部と廊下21の空間とを直接繋げている。
【0021】
吹出口32は、チャンバー3の側面に設けられ、側方の居室22側に開口している。
図4に示すように、吹出口32は、複数の居室22の壁26の天井221付近に設けられる。
図3に示すように、吹出口32は、建具24の上に設けられていてもよい。吹出口32は、複数の居室22それぞれとの間に設けられている。吹出口32は、ダクトを介さずにチャンバー3の内部と居室22の空間とを直接繋げている。
【0022】
チャンバー3の内部は、冷暖房装置4によって空調されるとともに、居室22の内部に対して正圧に維持される。居室22には、チャンバー3の内部の温度調整された空気が供給される。チャンバー3から居室22に空気が供給されると、居室22の空気が増加するため、その増加分が障子241と床27との隙間、すなわち空気流入口25から廊下21に排出される。廊下21には、居室22の空気が流入するため、廊下21にも居室22を介してであるがチャンバー3で空調された空気が流入する。このため、廊下21は、チャンバー3から直接空気が流入しない空間であるが、空調される。
チャンバー3の内部には、廊下21の空気が給気口31から給気される。
本実施形態の空調システム1では、チャンバー3、居室22および廊下21で空気が循環する。
【0023】
チャンバー3から各居室22に吹き出される空気の抵抗値は、居室22ごとに設定されている。本実施形態では、居室22の容積に応じてその部屋に空気を吹き出す吹出口32の開口面積(有効開口面積「αA」)が設定されている。吹出口32の開口面積が大きいほど、抵抗値は小さくなり、居室22に空気が流入しやすい。設定された開口面積を有する吹出口が各居室に設けられるようにしてもよい。開口面積が所定の大きさの吹出口32が複数設けられ、複数の吹出口32の開口面積の合計が設定された開口面積の値になるようにしてもよい。吹出口32の開口面積は、空調システム1および建物2の設計段階で設定する。
吹出口32の開口面積とチャンバー3から居室22に流入する空気の量は、下記の関係式で表される。
【0024】
【0025】
Q:風量(m3/S)
αA:有効開口面積(m2)
ΔP:チャンバー3と居室22の圧力差(Pa)
ρ:空気密度(kg/m3)
【0026】
図2および
図5に示すように、本実施形態の空調システム1は、送風機5を有する。送風機5は、チャンバー3の内部の空気を居室22に送風する。送風機5は、チャンバー3の内部に各吹出口32の近傍に設けられている。本実施形態の空調システム1は、送風機5が稼働しない状態であっても、チャンバー3の内部が居室22の内部に対して正圧に維持されため、チャンバー3の内部の空気は、吹出口32を介して各居室22に吹き出される。送風機5は、吹出口32から居室22に吹き出される風量を調整するために設けられている。送風機5の風量は、例えば4段階など強弱を切り替えられるように設定されている。
送風機5の風量を設定することによって、チャンバー3から各居室22に吹き出される空気の抵抗値は、前項の開口面積による抵抗値と合成されて設定される。送風機5の風量が大きくなるほど、抵抗値は小さくなり、居室22に空気が流入しやすい。送風機5の風量は、空調システム1および建物2の設計段階で設定する。
【0027】
次に、上述した本発明の実施形態による空調システム1および建物2の作用・効果について説明する。
本実施形態による空調システム1および建物2は、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されているため、各居室22に供給される風量を各居室22に応じて設定できる。複数の居室22をそれぞれ快適な温度に維持できる。
【0028】
本実施形態による空調システム1では、吹出口32の開口面積が設定されることによって、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されてもよい。
【0029】
このような構成とすることにより、吹出口32の数や形状を設定して吹出口32の開口面積を設定すれば、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値を容易に設定できる。
【0030】
本実施形態による空調システム1では、吹出口32を介してチャンバー3の空気を居室22に流入させる送風機5を有し、送風機5の風量が設定されることによって、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されてもよい。
【0031】
このような構成とすることにより、送風機5の風量を調整すれば、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値を容易に設定できる。
【0032】
以上、本発明による空調システム1および建物2の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態による空調システム1および建物2では、チャンバー3は、廊下21の上に設けられているが、空調対象とならない部屋の上であれば収納室の上などに設けられていてもよい。
上記の実施形態による空調システム1および建物2では、空調システム1では、吹出口32の開口面積が設定されるとともに、送風機5の風量が設定されることによって、チャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されている。これに対し、吹出口32の開口面積および送風機5の風量のいずれか一方が設定されることによってチャンバー3から複数の居室22それぞれに吹き出される空気の抵抗値が設定されるようにしてもよい。送風機5の風量を設定することによって疑似的に吹出口32の開口面積を変更してもよい。
上記の実施形態では、空気流入口25は、障子241の下縁部と床27との隙間25であるが、障子241に設けられた開口や、壁26に設けられた開口であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 空調システム
2 建物
3 チャンバー
4 冷暖房装置
5 送風機
21 廊下(非空調対象室)
22 居室(空調対象室)
25 空気流入口
31 給気口
32 吹出口