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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044676
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150353
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】堀内 佑太
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082FG32
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】 信頼性を向上することができる積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品1は、複数の誘電体層22と、誘電体層22を挟んで互いに対向し、一端がそれぞれ引き出された複数の内部電極層23と、複数の誘電体層22及び複数の内部電極層23を挟むように設けられ、少なくとも一方がシリコンゴムを含むカバー層20及びカバー層21と、複数の内部電極層23が互いに対向する第1方向に沿って設けられ、複数の内部電極層23の前記一端と交互に接続された外部電極3a及び外部電極3bとを有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、
前記誘電体層を挟んで互いに対向し、一端がそれぞれ引き出された複数の内部電極層と、
前記複数の誘電体層及び前記複数の内部電極層を挟むように設けられ、少なくとも一方がシリコンゴムを含む一対のカバー層と、
前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向に沿って設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端と交互に接続された一対の外部電極とを有する積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記一対のカバー層の少なくとも一方は、シリコンゴムを主成分とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記一対のカバー層の少なくとも一方は、前記複数の誘電体層と共通の主成分と、シリコンゴムの粒子と、を含む請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向において前記複数の内部電極層の各々の両端にそれぞれ隣接し、少なくとも一方がシリコンゴムを含む一対のサイドマージン部を有する請求項1乃至3の何れかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記一対のサイドマージン部の少なくとも一方は、シリコンゴムを主成分とする請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記一対のサイドマージン部の少なくとも一方は、前記複数の誘電体層と共通の主成分と、シリコンゴムの粒子と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記第1方向における寸法が、前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向における寸法より大きい請求項1乃至3の何れかに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1方向における寸法が、前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向における寸法の1.1~1.5倍である請求項1乃至3の何れかに記載の積層セラミック電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば積層セラミックコンデンサは、内部電極層及び誘電体層が交互に積層され、その積層方向の上下から内部電極層及び誘電体層をカバー層で覆った構造を備える。例えば特許文献1には、内部電極層及び誘電体層を積層方向から覆うカバー層にポアを設ける点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-141091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば積層セラミックコンデンサの製造工程では、内部電極層、誘電体層、及びカバー層を積層して圧着することにより積層体が形成される。このとき、層数が多いほど、大きな圧力が各層に加わるため、カバー層に過剰に大きな応力が生じて、積層体にクラックなどが生ずるおそれがある。また、積層セラミックコンデンサに対して過剰に大きな振動や衝撃が加わったときも積層体にクラックなどが生ずるおそれがある。さらに、特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサのようにカバー層にポアを設けると、ポアがクラックの起点となるおそれもある。このような場合、積層セラミックコンデンサの信頼性が低下する。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、信頼性を向上することができる積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と、前記誘電体層を挟んで互いに対向し、一端がそれぞれ引き出された複数の内部電極層と、前記複数の誘電体層及び前記複数の内部電極層を挟むように設けられ、少なくとも一方がシリコンゴムを含む一対のカバー層と、前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向に沿って設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端と交互に接続された一対の外部電極とを有する。
【0007】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対のカバー層の少なくとも一方は、シリコンゴムを主成分としてもよい。
【0008】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対のカバー層の少なくとも一方は、前記複数の誘電体層と共通の主成分と、シリコンゴムの粒子と、を含んでもよい。
【0009】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向において前記複数の内部電極層の各々の両端にそれぞれ隣接し、少なくとも一方がシリコンゴムを含む一対のサイドマージン部を有してもよい。
【0010】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対のサイドマージン部の少なくとも一方は、シリコンゴムを主成分としてもよい。
【0011】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対のサイドマージン部の少なくとも一方は、前記複数の誘電体層と共通の主成分と、シリコンゴムの粒子と、を含んでもよい。
【0012】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1方向における寸法が、前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向における寸法より大きくてもよい。
【0013】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1方向における寸法が、前記第1方向及び前記一対の外部電極が向いた第2方向に対し略直交する直交方向における寸法の1.1~1.5倍であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、積層セラミック電子部品の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図3図1のB-B線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図4】第2実施形態の積層セラミックコンデンサの一例を示す断面図である。
図5】第3実施形態の積層セラミックコンデンサの長さ方向における断面図である。
図6】第3実施形態の積層セラミックコンデンサの幅方向における断面図である
図7】積層セラミックコンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
図8】グリーンシート成形工程、内部電極印刷工程、及び積層・圧着工程の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の一例を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサ1の断面図である。図3は、図1のB-B線に沿った積層セラミックコンデンサ1の断面図である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ1は積層セラミック電子部品の一例である。積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状を有する積層チップ2と、積層チップ2において互いに対向する一対の端面2A,2Bに設けられた外部電極3a,3bとを有する。
【0018】
図1図3には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向が示されている。X方向は、積層セラミックコンデンサ1の長さ(L)方向であり、積層チップ2の一対の端面が対向する方向に一致する。Y方向は、積層セラミックコンデンサ1の幅(W)方向であり、積層チップ2の一対の側面が対向する方向に一致する。Z方向は、積層セラミックコンデンサ1の高さ(H)方向であり、積層セラミックコンデンサ1の積層方向に一致する。なお、積層方向は、複数の内部電極層23が互いに対向する第1方向の一例であり、長さ方向は、外部電極3a,3bが向いた第2方向の一例であり、幅方向は、長さ方向及び積層方向に略直交する直交方向の一例である。
【0019】
積層チップ2は、積層体の一例であり、積層構造を有する略直方体形状の積層部2s、及び、積層セラミックコンデンサ1の幅方向において互いに対向する積層部2sの一対の側面2E,2Fを覆う一対のサイドマージン部40,41を有する。積層部2sは、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層22と、内部電極層23とが、交互に積層され、さらに誘電体層22及び内部電極層23を積層方向の両側から挟むように積層された一対のカバー層20,21と含む。内部電極層23は、積層方向において誘電体層22を挟んで互いに対向し、一端が端面2A,2Bに交互に引き出されている。
【0020】
カバー層20,21は、積層方向における積層部2sの上面2C及び下面2Dを構成する。カバー層20,21は、積層された内部電極層23及び誘電体層22を積層方向から挟むように設けられている。積層部2sにおいて、長さ方向における各内部電極層23の一方の端部は、積層方向に沿って交互に端面2A,2Bに露出する。
【0021】
サイドマージン部40,41は、幅方向において積層部2sの一対の側面2E,2Fに露出した各内部電極層23の両端23e,23fにそれぞれ隣接する。これによりカバー層20,21及びサイドマージン部40,41は、内部電極層23同士が対向する積層部2sを積層方向及び幅方向からそれぞれ覆う。
【0022】
内部電極層23は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層23として、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層23の厚みは、例えば0.3~1.3(μm)である。
【0023】
誘電体層22は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),MgTiO(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaSrTi1-zZrは、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。誘電体層22の厚みは、例えば0.3~4.0(μm)である。
【0024】
外部電極3a,3bは、積層セラミックコンデンサ1の長さ方向において互いに対向する積層部2sの端面2A,2Bをそれぞれ覆う。また、外部電極3a,3bは、上面2C、下面2Dおよび2つのサイドマージン部40,41の表面に延在している。ただし、外部電極3a,3bは、上面2C、下面2Dおよび2つのサイドマージン部40,41の表面において互いに離間している。
【0025】
外部電極3a,3bは、Cu,Ni,Al(アルミニウム),Zn(亜鉛)などの金属、またはこれらの2以上の合金(例えば、CuとNiとの合金)を主成分とし、外部電極3a,3bの緻密化のためのガラス成分、外部電極3a,3bの焼結性を制御するための共材、などのセラミックを含んでいる。ガラス成分は、Ba(バリウム),Sr(ストロンチウム),Ca(カルシウム),Zn(亜鉛),Al,Si(ケイ素),B(ホウ素)等の酸化物である。共材は、例えば、誘電体層22の主成分と同じ材料を主成分とするセラミック成分である。なお、外部電極3a,3bの表面には、例えばNi,Cu,Sn等の卑金属を主成分とするメッキ膜が形成されてもよい。さらにエポキシ樹脂及びウレタン樹脂などの導電性樹脂の膜をメッキ膜の表面に形成してもよい。
【0026】
カバー層20,21はシリコンゴムを主成分として形成されている。カバー層20,21は、例えば樹脂系の接着剤を含む接合層(不図示)を介して最上部及び最下部の内部電極層23に隣接するように接合されている。
【0027】
このため、カバー層20,21は、仮に誘電体層22と同じセラミック材料を主成分として形成された場合よりも大きな弾性力を発揮する。例えば積層セラミックコンデンサ1の製造工程において、誘電体層22、内部電極層23、及びカバー層20,21の圧着時、カバー層20,21の弾性力により応力を緩和して積層部2sにクラックが生ずることが抑制される。また、積層セラミックコンデンサ1に対して過剰に大きな振動や衝撃が加わったときも、カバー層20,21の弾性力により応力を緩和して積層部2sにクラックが生ずることが抑制される。
【0028】
これにより、積層セラミックコンデンサ1の信頼性が向上する。なお、本例では、カバー層20,21の両方がシリコンゴムにより形成されているが、カバー層20,21の一方のみがシリコンゴムにより形成されてもよい。
【0029】
また、カバー層20,21の厚みが薄すぎると、十分な耐電界強度が得られないおそれがある。このため、カバー層20,21の厚みは5(μm)以上とするのが好ましい。また、十分に大きな弾性力を発揮させるためには、カバー層20,21の厚みを10(μm)以上とすると、より好ましく、カバー層20,21の厚みを15(μm)以上とすると、さらに好ましい。
【0030】
一方、カバー層20,21の厚みが厚すぎると、高温の環境下において、セラミックとシリコンゴム成分の線膨張係数の差分に起因する応力によりカバー層20,21が剥離するおそれがある。このため、カバー層20,21の厚みは70(μm)以下とするのが好ましい。また、カバー層20,21が厚すぎると、積層セラミックコンデンサ1の高さ方向の積層数を十分に増やすことができないため、所望の静電容量を実現するために誘電体層22を薄層化する必要がある。これにより、積層セラミックコンデンサ1の信頼性が低下するおそれがある。したがって、カバー層20,21の厚みを60(μm)以下とすると、より好ましく、カバー層20,21の厚みを50(μm)以下とすると、さらに好ましい。
【0031】
また、サイドマージン部40,41はシリコンゴムを主成分として形成されている。サイドマージン部40,41は、例えば樹脂系の接着剤を含む接合膜(不図示)を介して積層部2sの側面2E,2Fにそれぞれ接合されている。
【0032】
このため、サイドマージン部40,41は、仮に誘電体層22と同じセラミック材料を主成分として形成された場合よりも大きな弾性力を発揮する。例えば、落下時に積層セラミックコンデンサ1にサイドマージン部40,41の方向から衝撃が加わった場合において、サイドマージン部40,41が弾性力により誘電体層22への衝撃を緩和して誘電体層22の破損を抑制することができる。
【0033】
これにより、積層セラミックコンデンサ1の信頼性が向上する。なお、本例では、サイドマージン部40,41の両方がシリコンゴムにより形成されているが、サイドマージン部40,41の一方のみがシリコンゴムにより形成されてもよい。
【0034】
また、サイドマージン部40,41の厚みが薄すぎると、十分な耐電界強度が得られないおそれがある。このため、サイドマージン部40,41の厚みは5(μm)以上とするのが好ましい。また、十分な弾性力を発揮させるためには、サイドマージン部40,41の厚みを10(μm)以上とすると、より好ましく、サイドマージン部40,41の厚みを15(μm)以上とすると、さらに好ましい。
【0035】
また、サイドマージン部40,41の厚みが厚すぎると、高温の環境下において、セラミックとシリコンゴム成分の線膨張係数の差分に起因する応力によりサイドマージン部40,41が剥離するおそれがある。このため、サイドマージン部40,41の厚みは70(μm)以下とするのが好ましい。また、積層チップ2の大きさを変えずに内部電極層23が対向する面積を増加させる観点から、サイドマージン部40,41の厚みを60(μm)以下とすると、より好ましく、サイドマージン部40,41の厚みを50(μm)以下とすると、さらに好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
第1実施形態では、カバー層20,21はシリコンゴムを主成分として形成されているが、これに限定されない。
【0037】
図4は、第2実施形態の積層セラミックコンデンサ1aの一例を示す断面図である。図4は、図1のA-A線に沿った断面を示す。なお、図4において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。本実施形態の積層セラミックコンデンサ1aには、上記のカバー層20,21に代えてカバー層20a,21aがそれぞれ設けられている。
【0038】
カバー層20a,21aの主成分は、誘電体層22の主成分と共通であり、カバー層20a,21aはシリコンゴムの粒子200を含む。シリコンゴムの粒子200は、カバー層20a,21aの内部にランダムに分散している。なお、図4において、シリコンゴムの粒子200は、カバー層20a,21aの寸法に対して実際よりも大きく示されている。カバー層20a,21aは、シリコンゴムを含むため、第1実施形態と同様に弾性力を発揮する。ここで、カバー層20a,21aの主成分は、誘電体層22の主成分と共通とは、カバー層20a、21aと誘電体層22とが同一の元素を含むことを指す。
【0039】
このとき、カバー層20a,21aが薄すぎると、十分な弾性力を発揮することができないおそれがある。このため、カバー層20a,21aの厚みは20(μm)以上とするのが好ましい。また、耐電界強度を向上させる観点から、カバー層20a,21aの厚みを25(μm)以上とすると、より好ましく、カバー層20a,21aの厚みを30(μm)以上とすると、さらに好ましい。
【0040】
一方、カバー層20a,21aの厚みが厚すぎると、内部電極層23との線膨張係数の差分に起因する応力によりカバー層20a,21aが剥離するおそれがある。このため、カバー層20a,21aの厚みは80(μm)以下とするのが好ましい。また、積層チップ2の大きさを変えずに内部電極層23が対向する面積を増加させる観点から、カバー層20a,21aの厚みを70(μm)以下とすると、より好ましく、カバー層20a,21aの厚みを60(μm)以下とすると、さらに好ましい。
【0041】
また、カバー層20a,21aにおけるシリコンゴムの粒子200の密度が低すぎると、十分な弾性力を発揮することができないおそれがある。このため、カバー層20a,21aにおけるシリコンゴムの粒子200の密度は、カバー層20a,21aの断面積の0.2(%)以上とするのが好ましい。また、シリコンゴムの粒子200の密度をカバー層20a,21aの断面積の0.5(%)以上とすると、さらに好ましい。
【0042】
また、カバー層20a,21aにおけるシリコンゴムの粒子200の密度が高すぎると、高温の環境下において、セラミックとシリコンゴム成分の線膨張係数の差分に起因する応力によりカバー層20a,21a自体にクラックが発生するおそれがあるため、密度は、カバー層20a,21aの断面積の5.0(%)以下とするのが好ましい。また、シリコンゴムの粒子200同士の間隔を十分に広く確保するためには、シリコンゴムの粒子200の密度をカバー層20a,21aの断面積の2.0(%)以下とすると、より好ましい。
【0043】
また、カバー層20a,21aにおけるシリコンゴムの粒子200の径が小さすぎると、十分な弾性力を発揮することができないおそれがある。このため、シリコンゴムの粒子200の径は0.5(μm)以上とするのが好ましい。また、高温時のシリコンゴムの変質を抑制するため、シリコンゴムの粒子200の径を1.0(μm)以上とすると、より好ましい。
【0044】
また、カバー層20a,21aにおけるシリコンゴムの粒子200の径が大きすぎると、カバー層20a,21aの厚み方向や幅方向に対して存在できるシリコンゴムの粒子200の数が限られてしまう。その結果、弾性力のある部分とセラミックの塑性部分とが偏在してしまい、十分な弾性効果が得られないため、径は6.0(μm)以下とするのが好ましい。また、高温時のセラミック成分とゴム成分との線膨張係数差に起因する応力によるクラック抑制の観点から、シリコンゴムの粒子200の径を3.0(μm)以下とすると、より好ましい。
【0045】
また、カバー層20a,21aの主成分は、誘電体層22の主成分と共通であるため、カバー層20a、21aと誘電体層22及び内部電極層23との線膨張係数差が小さくなり、高温時の剥離を抑制する効果が得られる。ここで、カバー層20a,21aの主成分の添加材料と、誘電体層22の主成分の添加材料とは同一であってもよいし、相違してもよい。なお、誘電体層22の主成分は、上述した通りである。
【0046】
また、サイドマージン部40,41も、カバー層20a,21aと同様に、誘電体層22の主成分と共通の主成分と、シリコンゴムの粒子と、を含んでもよい。この場合、積層セラミックコンデンサ1にサイドマージン部40,41の方向から衝撃が加わったとき、サイドマージン部40、41が衝撃を緩和し、誘電体層22の破損を抑制する効果が得られる。ここで、サイドマージン部40,41の主成分の添加材料と、誘電体層22の主成分の添加材料とは同一であってもよいし、相違してもよい。
【0047】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の積層セラミックコンデンサ1bの長さ方向における断面図である。図6は、第3実施形態の積層セラミックコンデンサ1bの幅方向における断面図である。図5図1のA-A線に沿った断面を示し、図6図1のB-B線に沿った断面を示す。なお、図5及び図6において、図2及び図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
積層セラミックコンデンサ1bにおいて、カバー層20,21は第1実施形態と同様であるが、誘電体層22及び内部電極層23の積層数は上記の積層セラミックコンデンサ1,1aよりも多い。これに伴い、積層セラミックコンデンサ1bの高さHは、例えば、積層セラミックコンデンサ1bの幅Wの1.1~1.5倍である。積層セラミックコンデンサ1bの高さHは、好ましくは、積層セラミックコンデンサ1bの幅Wの1.2倍、さらに好ましくは1.3倍である。
【0049】
積層セラミックコンデンサ1bの製造工程において、誘電体層22、内部電極層23、及びカバー層20,21の圧着時、積層部2sの層数が多いほど、大きな圧力が各層に加わるため、カバー層20,21に大きな応力が生ずる。しかし、カバー層20,21はシリコンゴムを含むため、上述したように、弾性力により応力を効果的に緩和することができる。
【0050】
また、圧着時、カバー層20,21の一方に応力が集中するため、積層セラミックコンデンサ1bの完成後、カバー層20,21の密度が相違する。このため、積層セラミックコンデンサ1bのリフロー時、カバー層20,21に作用するモーメントの大きさが相違することにより積層セラミックコンデンサ1bが倒れるおそれがある。しかし、カバー層20,21のシリコンゴムの弾性力により転倒を効果的に抑制することができる。
【0051】
このように、積層セラミックコンデンサ1bは、積層方向における寸法が幅方向における寸法より大きいため、カバー層20,21の弾性力が、積層方向における寸法が幅方向における寸法以下である低背型の積層セラミックコンデンサよりも効果的に発揮される。
【0052】
(積層セラミックコンデンサの製造方法)
図7は、積層セラミックコンデンサ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。本製造工程は積層セラミック電子部品の製造方法の一例である。
【0053】
また、図8は、グリーンシート成形工程St1、内部電極印刷工程St2、及び積層・圧着工程St4の一例を示す断面図である。図8は、積層方向及び幅方向に沿った断面を示す。
【0054】
(グリーンシート成形工程)
まずグリーンシート成形工程St1が行われる。本工程では、例えばセラミック粉末に各種の添加化合物(焼結補助剤など)を添加することで得た誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシート7を塗工して乾燥させる。基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0055】
なお、セラミック粉末の添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユーロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホルミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが用いられる。
【0056】
(内部電極印刷工程)
次に内部電極印刷工程St2が行われる。本工程は、セラミック粒子が添加された導電ペーストを複数の誘電体グリーンシート7にそれぞれ塗布することにより内部電極パターン6を印刷する。
【0057】
本工程では、基材上の誘電体グリーンシート7に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属の導電ペーストをグラビア印刷などにより印刷することで、内部電極層23に対応する複数の内部電極パターン6を互いに離間させて成膜する。導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層22の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0058】
(カバー層形成工程)
次にカバー層形成工程St3が行われる。本工程では、カバー層20,21となる弾性体シートを形成する。第1実施形態の場合、例えばシリコンゴムからなる弾性体シートを所望の形状に切断してカバー層20,21を得ることができる。
【0059】
第2実施形態のカバー層20a,21aを形成する場合、例えばセラミック粉末に各種の添加化合物(焼結補助剤など)を添加することで得た誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合してスラリーを得る。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に弾性体シートを塗工して乾燥させる。基材は、例えば、PETフィルムである。
【0060】
次に、得られたスラリーを切断して個片化する。個片化したスラリーを250~500℃のN雰囲気中で脱バインダ処理した後に、酸素分圧0.003(Pa)の還元雰囲気中で1200℃以上の焼成温度で1時間程度焼成する。その後、液状ゴム中に浸漬させ、内部にゴムを含侵させた後、ゴムを硬化する。これにより、主成分が誘電体層22と共通であり、シリコンゴムの粒子を含むカバー層20,21が得られる。
【0061】
(積層工程)
次に積層・圧着工程St4が行われる。本工程では、内部電極層23となる内部電極パターン6が印刷された誘電体グリーンシート7を積層して圧着することにより積層シート7Sを形成する。積層シート7Sを加圧することにより複数の誘電体グリーンシート7間を圧着する。圧着手段としては、例えば静水圧プレスが挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
(切断工程)
次に切断工程St5が行われる。本工程は、圧着で得られた積層シート7Sを略直方体形状の複数個の積層体に分断する工程の一例である。本工程では、ブレードにより積層シート7Sを所定のカット線LWに沿って積層方向に切断することにより焼成前の複数の積層体が得られる。
【0063】
(焼成工程)
次に焼成工程St6が行われる。本工程は、積層体を焼成する工程の一例である。本工程では、積層体を、250~500℃のN2雰囲気中で脱バインダ処理した後に、酸素分圧0.003(Pa)の還元雰囲気中で1200℃以上の焼成温度で1時間程度焼成することで、積層体内の各粒子が焼結する。
【0064】
(カバー層接合工程)
次にカバー層接合工程St7が行われる。積層体の積層方向の両端面にカバー層20,21が接合される。カバー層20,21は例えば接着剤を用いて接合されてもよい。これにより積層部2sが得られる。
【0065】
(サイドマージン接合工程)
次にサイドマージン接合工程St8が行われる。本工程では、図3に示される一対のサイドマージン部40,41を積層部2sの互いに対向する一対の側面2E,2Fに形成する。一対のサイドマージン部40,41は、カバー層20,21と同様に、シリコンゴムで形成されたシート、または主成分が誘電体層22と共通であり、シリコンゴムの粒子を含むシートから形成され、このシートを、例えば接着剤などにより側面2E,2Fに接合する。
【0066】
(外部電極形成工程)
次に外部電極形成工程St9が行われる。本工程では、例えばスパッタリング法を用いて積層チップ2の各端面2A,2B、上面2C、下面2D、及び各側面2E,2Fに外部電極3a,3bを形成する。
【0067】
このようにして積層セラミックコンデンサ1は製造される。なお、外部電極3a,3bにCu,Ni,Sn等のメッキ膜が形成されてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b 積層セラミックコンデンサ
2 積層チップ
2s 積層部
3a,3b 外部電極
20,20a,21,21a カバー層
22 誘電体層
23 内部電極層
40,41 サイドマージン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8