(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044699
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ネブライザキット及びネブライザ
(51)【国際特許分類】
A61M 11/02 20060101AFI20240326BHJP
A61M 11/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61M11/02 Z
A61M11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150399
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】志野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】東郷 秀孝
(57)【要約】
【課題】薬液を効率よく吸入することを可能にするネブライザキット及びネブライザを提供する。
【解決手段】ネブライザキット100は、霧化部を収納する本体部10及びマスクアダプタ20からなる収納体と、マスクアダプタ20に装着された状態で、霧化部で霧化された薬液を吸入可能な吸入マスク30と、を備える。マスクアダプタ20は、霧化部で霧化される薬液の放出方向(上下方向)に非直交且つ交差する第1方向へ開口されたアダプタ開口20Aを一端部に有し、吸入マスク30は、一端部に設けられ、霧化部で霧化される薬液の吸入方向に対して非直交且つ交差する第2方向へ開口されたマスク開口32Aと、他端部に設けられ且つ上記第2方向と交差する方向へ開口されたマスク開口31Aと、を有し、吸入マスク30の上記一端部とマスクアダプタ20の上記一端部が連結されることで、マスクアダプタ20に吸入マスク30が装着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化部を収納する収納体と、
前記収納体に装着された状態で、前記霧化部で霧化された薬液を吸入可能な吸入マスクと、を備え、
前記収納体は、前記霧化部で霧化される薬液の放出方向に非直交且つ交差する第1方向へ開口された第1開口を一端部に有し、
前記吸入マスクは、一端部に設けられ、前記霧化部で霧化される薬液の吸入方向に対して非直交且つ交差する第2方向へ開口された第2開口と、他端部に設けられ且つ前記第2方向と交差する方向へ開口された第3開口と、を有し、
前記吸入マスクの前記一端部と前記収納体の前記一端部が連結されることで、前記収納体に前記吸入マスクが装着される、ネブライザキット。
【請求項2】
請求項1に記載のネブライザキットであって、
前記吸入マスクの前記一端部が前記収納体の前記第1開口に挿入されることで、前記収納体に前記吸入マスクが装着され、
前記収納体における前記第1開口の縁を前記第1方向に見た場合の第1形状は、前記吸入マスクの前記一端部の外周縁を前記第2方向に見た場合の第2形状と対応関係にある、ネブライザキット。
【請求項3】
請求項2に記載のネブライザキットであって、
前記第1形状と前記第2形状は、それぞれ真円である、ネブライザキット。
【請求項4】
請求項3に記載のネブライザキットであって、
前記第1形状の真円の直径と前記第2形状の真円の直径は同一である、ネブライザキット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のネブライザキットであって、
前記吸入マスクは、前記第3開口を含む、利用者の口周辺を覆うための球欠状のマスク部と、前記第2開口を含む、前記収納体と連結するための連結部と、前記マスク部の内側に設けられた前記マスク部よりも剛性の低い緩衝部材と、を有する、ネブライザキット。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のネブライザキットであって、
前記収納体は、前記第1開口を含む筒状のアダプタ部と、前記アダプタ部を装着可能且つ前記霧化部を含む本体部と、を備える、ネブライザキット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のネブライザキットと、
前記霧化部を制御するプロセッサと、を備えるネブライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザキット及びネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なネブライザは、薬液を霧化させてエアロゾルを生成可能なネブライザキットを備える。ネブライザキットを利用するネブライザを開示した文献としては、たとえば特許文献1が知られている。また、吸入マスクを装着して薬液を吸入可能に構成されたネブライザも知られている(例えば、オムロンヘルスケア株式会社製 コンプレッサー式ネブライザ NE-C28)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸入マスクは、吸う力の弱い子供や高齢者に利用されることが想定される。このような子供や高齢者は、吸入時の姿勢を特定の姿勢に定めることが難しい。したがって、このような子供や高齢者であっても、薬液を効率よく吸入できるようにすることが求められる。
【0005】
本発明の目的は、薬液を効率よく吸入することを可能にするネブライザキット及びネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の構成によって解決可能である。なお、括弧内には、以降の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1) 霧化部を収納する収納体(本体部10及びマスクアダプタ20)と、
前記収納体に装着された状態で、前記霧化部で霧化された薬液を吸入可能な吸入マスク(吸入マスク30)と、を備え、
前記収納体は、前記霧化部で霧化される薬液の放出方向(上下方向)に非直交且つ交差する第1方向(右上方向)へ開口された第1開口(アダプタ開口20A)を一端部に有し、
前記吸入マスクは、一端部に設けられ、前記霧化部で霧化される薬液の吸入方向に対して非直交且つ交差する第2方向(
図1の状態では左下方向)へ開口された第2開口(マスク開口32A)と、他端部に設けられ且つ前記第2方向と交差する方向(
図1の状態では上方向)へ開口された第3開口(マスク開口31A)と、を有し、
前記吸入マスクの前記一端部と前記収納体の前記一端部が連結されることで、前記収納体に前記吸入マスクが装着される、ネブライザキット(ネブライザキット100)。
【0008】
(1)によれば、それぞれが薬液の放出方向に交差する第1開口と第2開口が向き合う状態で吸入マスクと収納体とが連結されるため、第2開口の周方向への吸入マスクの回転位置を変えることで、第3開口の位置(収納体に対する高さ方向の位置)を変えることができる。このように、単一の吸入マスクによって、霧化された液体の放出位置を異なる位置に切り替えることができる。このため、吸入時の姿勢を特定の姿勢に定めることが難しい子供や高齢者等の利用者であっても、利用者の姿勢に合わせて吸入マスクの回転位置を変えることで、無理のない姿勢にて効率よく薬液の吸入を行うことができる。
【0009】
(2) (1)に記載のネブライザキットであって、
前記吸入マスクの前記一端部が前記収納体の前記第1開口に挿入されることで、前記収納体に前記吸入マスクが装着され、
前記収納体における前記第1開口の縁を前記第1方向に見た場合の第1形状は、前記吸入マスクの前記一端部の外周縁を前記第2方向に見た場合の第2形状と対応関係にある、ネブライザキット。
【0010】
(2)によれば、収納体に吸入マスクを装着した状態で、収納体と吸入マスクとの密着性を高めることができ、薬液を効率よく吸入可能となる。
【0011】
(3) (2)に記載のネブライザキットであって、
前記第1形状と前記第2形状は、それぞれ真円である、ネブライザキット。
【0012】
(3)によれば、収納体に対する吸入マスクの装着姿勢をより柔軟に変更できる。
【0013】
(4) (3)に記載のネブライザキットであって、
前記第1形状の真円の直径(直径L2)と前記第2形状の真円の直径(直径L1)は同一である、ネブライザキット。
【0014】
(4)によれば、収納体に吸入マスクを装着した状態で、収納体と吸入マスクとの密着性をより高めることができ、薬液を効率よく吸入可能となる。
【0015】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のネブライザキットであって、
前記吸入マスクは、前記第3開口を含む、利用者の口周辺を覆うための球欠状のマスク部(マスク部31)と、前記第2開口を含む、前記収納体と連結するための連結部(連結部32)と、前記マスク部の内側に設けられた前記マスク部よりも剛性の低い緩衝部材と、を有する、ネブライザキット。
【0016】
(5)によれば、収納体に対しどの回転位置で吸入マスクを装着した場合でも、緩衝部材によって利用者の口周辺の形状にマスク部をフィットさせることができ、薬液を効率よく吸入可能となる。
【0017】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のネブライザキットであって、
前記収納体は、前記第1開口を含む筒状のアダプタ部(マスクアダプタ20)と、前記アダプタ部を装着可能且つ前記霧化部を含む本体部(本体部10)と、を備える、ネブライザキット。
【0018】
(6)によれば、本体部からアダプタ部を取り外すことで、吸入マスク以外の例えばマウスピース等を本体部に容易に装着可能となる。また、アダプタ部はシンプルな形状とすることができるため、例えば蛇腹状のマスクアダプタを用いる構成と比べると、キットの小型化や製造コストの低減が可能となる。
【0019】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載のネブライザキットと、
前記霧化部を制御するプロセッサと、を備えるネブライザ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬液を効率よく吸入することを可能にするネブライザキット及びネブライザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態であるネブライザキット100の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すネブライザキット100の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すネブライザキット100におけるマスクアダプタ20の拡大斜視図であり、アダプタ開口20Aの向きにマスクアダプタ20を見た図である。
【
図4】
図1に示すネブライザキット100における吸入マスク30の斜視図である。
【
図5】
図1に示すネブライザキット100における吸入マスク30を
図4とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図6】
図1におけるA-A矢視の本体部10を除く部分の断面模式図である。
【
図7】
図1の状態から吸入マスク30を90度回転させた状態を示す図である。
【
図8】
図7に示すネブライザキット100から吸入マスク30を外した状態を示す斜視図である。
【
図9】
図7のB-B矢視の本体部10を除く部分の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本形態のネブライザの概要)
本形態のネブライザは、霧化部を含むネブライザキットと、霧化部を制御する本体部と、を備える。ネブライザキットは、霧化部を収納する筒状の収納体と、収納体に着脱可能な吸入マスクと、を備える。収納体における吸入マスクが装着される側の端部には、霧化部で霧化された薬液の放出方向とこれに直交する方向とに交差する第1方向に開口する第1開口が設けられている。吸入マスクにおける収納体と装着される側の端部には、収納体に吸入マスクが装着された状態において、上記第1方向とは逆の第2方向に開口する第2開口が設けられている。吸入マスクにおける収納体側と反対側の端部には、上記第2方向と交差する方向に開口する第3開口が設けられている。
このように、第1開口と第2開口が向き合う状態で吸入マスクと収納体とが連結されるため、第2開口の周方向への吸入マスクの回転位置を変えることで、第3開口の向きを変えた状態で、霧化部で霧化された薬液を第3開口から放出させることができる。本形態によれば、単一の吸入マスクによって、霧化された薬液の放出位置を複数の位置で切り替えることができる。この結果、吸入時の姿勢を特定の姿勢に定めることが難しい子供や高齢者等の利用者であっても、利用者の姿勢に合わせて第3開口の位置を変えることで、無理のない姿勢にて効率よく薬液の吸入を行うことができる。
【0023】
本明細書で説明する“部材に形成された開口の向き”とは、部材におけるその開口の縁を含む平面(開口面)に垂直な方向のことを言う。“××の方向に開口された〇〇開口”(××と、〇〇は、任意の文字)と記載する場合には、○○開口の縁を含む平面に垂直な方向が、××方向と一致することを意味する。
【0024】
以下、本形態のネブライザの具体的な構成例について説明する。
【0025】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態であるネブライザキット100の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すネブライザキット100の分解斜視図である。ネブライザキット100は、霧化部を内部に収納する本体部10と、本体部10に着脱可能な筒状のマスクアダプタ20と、マスクアダプタ20に着脱可能な吸入マスク30と、を備える。本体部10の内部構造は、特に限定されるものではないが、例えば特許文献1に記載されている構造等を採用できる。
【0026】
本体部10は、断面形状が楕円状の筒形の胴部11を有する。胴部11は、例えば樹脂などで構成される。胴部11において、直交する3方向のうち、長さの長い順から、上下方向、前後方向、左右方向と称する。胴部11は、断面形状の楕円の長軸方向が前後方向と一致し、断面形状の楕円の短軸方向が左右方向と一致し、長手方向が上下方向と一致する構成である。以下の説明では、便宜上、
図1、
図2、及び
図6~
図9に記載したように、前方、後方、左方、右方、上方、下方を定義し、前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0027】
胴部11の内側の下端部には、図示省略の霧化部と、図示省略のネブライザ本体部に接続されたチューブを接続するための接続部と、が設けられている。ネブライザ本体部にはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが設けられる。この接続部には、上記チューブを介して、ネブライザ本体部から圧縮空気が流入される。霧化部は、接続部から流入された圧縮空気によって(換言するとネブライザ本体部のプロセッサからの制御によって)、胴部11内に貯留された薬液等の液体を霧化する。
図2に示すように、胴部11の上端には、上方向に開口された楕円状の本体部開口10Aが設けられている。霧化部によって霧化された液体は、胴部11内を下から上に移動し、本体部開口10Aから上方向に放出される。本体部10の上下方向は、霧化部で霧化される薬液の放出方向と一致する。
【0028】
マスクアダプタ20は、本体部10に対して吸入マスク30を任意の姿勢で装着するために用いられる。マスクアダプタ20は、例えば樹脂等で構成される。
図2に示すように、マスクアダプタ20は、断面形状が楕円状の筒形の部材の一部を、筒軸方向に対して斜めに切断した形状となっている。換言すると、マスクアダプタ20は、筒軸方向の一端面に対して、筒軸方向の他端面が傾斜した構成となっている。具体的には、マスクアダプタ20の下端面(上下方向に垂直な面)には、下方向に開口されたアダプタ開口20Bが形成されている。また、マスクアダプタ20の上端面20S(上下方向に対して斜めの面)には、上下方向(=薬液の放出方向)に非直交且つ交差する方向(右上方向)に開口されたアダプタ開口20Aが形成されている。
【0029】
図3は、
図1に示すネブライザキット100におけるマスクアダプタ20の拡大斜視図であり、アダプタ開口20Aの向きにマスクアダプタ20を見た図である。
図3に示すように、アダプタ開口20Aの縁は、アダプタ開口20Aの向きに見た場合の形状(平面形状と記載)が真円となっている。マスクアダプタ20の上端面20Sは、アダプタ開口20Aの向きに見た場合の形状(平面形状と記載)が真円環となっている。
【0030】
図2の破線矢印で示すように、マスクアダプタ20は、下端部が、本体部10の本体部開口10Aに挿入されることで、本体部10と連結される。マスクアダプタ20と本体部10とを連結する方法は、これに限らない。例えば、胴部11の上面に凸部又は凹部を設け、マスクアダプタ20の下端面に凹部又は凸部を設けて、これらを係合させることで、本体部10とマスクアダプタ20の連結がなされるようにしてもよい。また、例えば、本体部10とマスクアダプタ20を磁力で連結するようにしてもよい。
【0031】
なお、マスクアダプタ20は、本体部10に着脱可能な構成でなくてもよく、本体部10と一体化された構成とすることもできる。本体部10にマスクアダプタ20が装着された状態では、霧化部で霧化された液体は、本体部10の本体部開口10Aを経由してマスクアダプタ20内に送出され、アダプタ開口20Aからマスクアダプタ20の外に放出される。
【0032】
図4は、
図1に示すネブライザキット100における吸入マスク30の斜視図である。
図5は、
図1に示すネブライザキット100における吸入マスク30を
図4とは異なる方向から見た斜視図である。
図6は、
図1におけるA-A矢視の本体部10を除く部分の断面模式図である。
【0033】
吸入マスク30は、利用者の口周辺を覆うための球欠状かつ中空状のマスク部31と、マスク部31の頂部(利用者の顔と接触する側と反対側の端部)から利用者側と反対側に突出した、マスクアダプタ20と連結するための筒状の連結部32と、を備える。吸入マスク30は、本体部10及びマスクアダプタ20よりも剛性の低い材料によって構成されている。吸入マスク30は、例えばゴム製である。
【0034】
マスク部31には、利用者の顔と接触する側の端部にマスク開口31Aが設けられ、利用者の顔と接触する側と反対側の端部に、マスク開口31Aよりも小さいマスク開口31D(
図6参照)が設けられている。マスク部31の内周面には、マスク開口31A側の端部に、マスク部31よりも剛性の低い環状の緩衝部材33が設けられている。緩衝部材33は、吸入マスク30よりも柔らかい材料によって構成されており、例えばウレタン製である。マスク部31における連結部32の近傍には、連結部32を跨いで、貫通孔31Bと貫通孔31Cが並んで形成されている。貫通孔31Bと貫通孔31Cは、マスク開口31Aが利用者の顔と密着して閉じられている場合でも、霧化部で霧化された薬液を利用者が容易に吸入できるようにするために、マスク部31内に外気を取り込むための空気孔である。
【0035】
連結部32は、マスクアダプタ20に似た形状となっており、
図4及び
図6に示すように、断面形状が楕円状(長軸方向が前後方向と一致し、短軸方向が左右方向と一致する楕円)の筒形の部材の一部を、筒軸方向に対して斜めに切断した形状となっている。具体的には、
図1に示す装着状態において、連結部32の下端面32Sには、上下方向に非直交且つ交差する方向(左下方向)に開口されたマスク開口32Aが形成されている。
図5は、
図4に示す吸入マスク30を、マスク開口32Aの向きに見た図である。
図5に示すように、マスク開口32Aが形成された下端面32Sの外周縁(吸入マスク30のマスクアダプタ20側の端部の外周縁)は、マスク開口32Aの向きに見た場合の形状(平面形状と記載)が真円となっている。
【0036】
吸入マスク30は、マスク開口32Aから流入した薬液をマスク開口31Aから吸入するためのものである。吸入マスク30における薬液の吸入方向は、マスク部31と連結部32が並ぶ方向と一致する。したがって、マスク開口32Aは、この吸入方向に非直交且つ交差する方向(第2方向)に開口されたものということもできる。そして、マスク開口31Aは、マスク開口32Aの向き(第2方向)に交差する方向に開口されたものということもできる。吸入マスク30による薬液の吸入方向に対するマスク開口32Aの開口面のなす角度は、薬液の放出方向(上下方向)に対するアダプタ開口20Aの開口面のなす角度と同じであることが好ましい。また、
図1の状態において、マスク開口31Aの向きが、薬液の放出方向と一致していることが好ましい。
【0037】
以上のように構成されたネブライザキット100では、本体部10にマスクアダプタ20が装着された後、マスクアダプタ20のアダプタ開口20Aに、吸入マスク30の連結部32の下端部が挿入される。アダプタ開口20Aの縁の形状と連結部32の下端部の縁の形状は、それぞれ、真円である。この挿入が容易に行えるように、下端面32Sの外周縁(以下、連結部32の下端部とも記載)によって構成される真円(以下、第1真円と記載)の直径L1(
図5参照)は、マスクアダプタ20のアダプタ開口20Aの縁によって構成される真円(以下、第2真円と記載)の直径L2(
図3参照)と同じか、直径L2よりも僅かに小さくなっている。直径L1と直径L2の差は、マスクアダプタ20のアダプタ開口20Aに対し、連結部32の下端部を挿入することができ、且つ、その挿入状態において、マスクアダプタ20の内周面と連結部32の外周面との間に大きな隙間が生じない程度の値に設定される。直径L1と直径L2が同じであっても、連結部32はマスクアダプタ20よりも変形しやすい材料で構成されていることから、マスクアダプタ20の内部に、連結部32を圧入することは可能である。これにより、
図1及び
図6に示す装着状態においては、マスクアダプタ20の内周面と連結部32の外周面とを密着させて、霧化部からマスク部31に至る薬液の通過経路の密閉性を高めることができる。
【0038】
このように、吸入マスク30とマスクアダプタ20は、薬液の放出方向に対して非直交且つ交差する方向へ開口された真円状のアダプタ開口20Aに対して、同じく薬液の放出方向に対して非直交且つ交差する方向へ開口されたマスク開口32Aを含む連結部32の下端部を挿入することで連結される。このため、
図1及び
図6に示す装着状態から、吸入マスク30を、連結部32のマスク開口32Aの中心を回転中心として回転させても、吸入マスク30とマスクアダプタ20の連結状態は維持される。例えば、
図1に示す装着状態から、吸入マスク30を90度回転させると、
図7に示す装着状態が得られる。
図8は、
図7に示すネブライザキット100から吸入マスク30を外した状態を示す斜視図である。
図9は、
図7のB-B矢視の本体部10を除く部分の断面模式図である。
【0039】
マスク開口31Aの中心の位置を薬液の放出位置と定義すると、
図1に示す装着状態では、薬液の放出位置を本体部10よりも十分に高い位置とすることができる。また、
図7に示す装着状態では、薬液の放出位置を本体部10の位置に近い位置とすることができる。このように、吸入マスク30の回転位置によって、薬液の放出位置を上下方向で変更できる。このため、吸入時の姿勢を特定の姿勢に定めることが難しい子供や高齢者等の利用者であっても、利用者の姿勢に合わせて吸入マスク30の回転位置を変えることで、無理のない姿勢にて効率よく薬液の吸入を行うことができる。
【0040】
このように、ネブライザキット100では、吸入マスク30が任意の回転位置に保持されて使用されるが、吸入マスク30のマスク部31は、球欠状となっているため、どの回転位置に吸入マスク30がある場合でも、利用者は、常に同じ感覚で吸入マスク30を使用可能である。また、マスク部31の内側には緩衝部材33が設けられているため、この緩衝部材33によって、利用者の口周辺の形状にマスク部31をフィットさせることができる。この結果、どの回転位置に吸入マスク30がある場合でも、薬液を効率よく吸入可能となる。
【0041】
また、ネブライザキット100では、マスクアダプタ20が本体部10に対して着脱可能となっている。この構成によれば、本体部10からマスクアダプタ20を取り外すことで、吸入マスク30以外の例えばマウスピース等を本体部10に容易に装着可能となる。マスクアダプタ20はシンプルな形状であるため、ネブライザキット100の小型化や製造コストの低減が可能である。
【0042】
なお、アダプタ開口20Aの縁の形状と、連結部32の下端面32Sの外周縁の形状は、互いに対応する関係にあればよく、真円でなくともよい。対応する関係とは、回転対称且つ相似(相似比が1を含む)の関係にあることを言う。例えば、この2つの形状は、相似の関係にある正方形や正多角形であってもよい。この2つの形状を真円とすることで、薬液の放出位置を無段階で変更することができ、本体部10及びマスクアダプタ20に対する吸入マスク30の装着姿勢をより柔軟に変更できる。
【0043】
また、以上の説明では、吸入マスク30の連結部32の下端部がアダプタ開口20Aに挿入されることで、マスクアダプタ20と吸入マスク30が連結されるものとした。これに代えて、吸入マスク30のマスク開口32Aに対してマスクアダプタ20の上端が挿入されることで、マスクアダプタ20と吸入マスク30が連結される構成とすることも可能である。この場合には、マスク開口32Aの縁の平面形状が真円であり、マスクアダプタ20の上端面20Sの外周縁の平面形状が真円であればよい。また、マスクアダプタ20と吸入マスク30の連結方法は、一方に対して他方を挿入する方法に限らない。例えば、連結部32の下端面32Sと、マスクアダプタ20の上端面20Sとを磁力によって固着する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
L1,L2 直径
10A 本体部開口
10 本体部
11 胴部
20A,20B アダプタ開口
20S 上端面
20 マスクアダプタ
30 吸入マスク
31A,32A マスク開口
31B,31C 貫通孔
31 マスク部
32S 下端面
32 連結部
33 緩衝部材
100 ネブライザキット