(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044707
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】触覚生成装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240326BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B06B1/04 S
B06B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150411
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由香里
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107BB08
5D107CC01
5D107CC04
5D107CC05
5D107DE02
5D107FF07
(57)【要約】
【課題】硬質な材料に柔らかい触覚を表現することが可能な触覚生成装置を提供する。
【解決手段】触覚生成装置100は、振動器15aと、前記振動器15aの共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する搬送波を前記搬送波の周波数より低く1Hz以上かつ60Hz以下の周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度が50%以上かつ100%より小さい変調波を生成して、前記振動器15aに前記変調波を供給する駆動装置62と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動器と、
前記振動器の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する搬送波を前記搬送波の周波数より低く1Hz以上かつ60Hz以下の周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度が50%以上かつ100%より小さい変調波を生成して、前記振動器に前記変調波を供給する駆動装置と、
を備える触覚生成装置。
【請求項2】
前記振動器は、
圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子を前記方向において挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を前記方向に押圧し、前記圧電素子の伸縮に対応する振動を出力する筐体と、
を備える請求項1に記載の触覚生成装置。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とは、ねじを嵌め合わせることにより前記圧電素子を押圧する請求項2に記載の触覚生成装置。
【請求項4】
前記第1部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第1部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第3部材と、前記第2部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第2部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第4部材と、の少なくとも一方の部材を備える請求項2または3に記載の触覚生成装置。
【請求項5】
前記第1部材および前記第2部材が前記圧電素子を押圧する圧力は、5×105Pa以上である請求項2または3に記載の触覚生成装置。
【請求項6】
前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる請求項2または3に記載の触覚生成装置。
【請求項7】
前記筐体の少なくとも一部分に接し、前記少なくとも一部分から振動が伝達し、前記少なくとも一部分より柔らかい部材を備える請求項2または3に記載の触覚生成装置。
【請求項8】
前記変調度は98%以下である請求項1または2に記載の触覚生成装置。
【請求項9】
前記信号波の周波数は3Hz以上かつ50Hz以下である請求項1または2に記載の触覚生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚生成装置に関し、振動器を有する触覚生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動器の振動により触覚を生成する触覚生成装置の振動器において、振動器を矩形波により変調された変調波の振動を生成させることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触覚生成装置には、硬質な材料に柔らかい触覚を表現することが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、柔らかい触覚を表現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、振動器と、前記振動器の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する搬送波を前記搬送波の周波数より低く1Hz以上かつ60Hz以下の周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度が50%以上かつ100%より小さい変調波を生成して、前記振動器に前記変調波を供給する駆動装置と、を備える触覚生成装置である。
【0007】
上記構成において、前記振動器は、圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する圧電素子と、前記圧電素子を前記方向において挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を前記方向に押圧し、前記圧電素子の伸縮に対応する振動を出力する筐体と、を備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1部材と前記第2部材とは、ねじを嵌め合わせることにより前記圧電素子を押圧する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第1部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第3部材と、前記第2部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第2部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第4部材と、の少なくとも一方の部材を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1部材および前記第2部材が前記圧電素子を押圧する圧力は、5×105Pa以上である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記筐体の少なくとも一部分に接し、前記少なくとも一部分から振動が伝達し、前記少なくとも一部分より柔らかい部材を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記変調度は98%以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記信号波の周波数は3Hz以上かつ50Hz以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、柔らかい触覚を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1に係る触覚生成装置の模式図である。
【
図2】
図2(a)は、実施例1における振動器の平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA-A断面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施例2における振動器の第2部材の平面図、
図3(b)は、
図3(a)のA-A断面図、
図3(c)は、第1部材の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1における圧電素子の断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する変調波を示す図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、実施例1における第2部材の別の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の変形例1の触覚生成装置の模式図である。
【
図8】
図8(a)は、実施例2における振動器の第1部材の断面図、
図8(b)は、実施例2における振動器の第2部材の断面図である。
【
図9】
図9は、実施例3における触覚生成装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0018】
柔軟な触覚が得られる触覚生成装置について説明する。
図1は、実施例1に係る触覚生成装置の模式図である。台座60の上面の法線方向をZ方向、Z方向に直交する方向をX方向およびY方向とする。
【0019】
図1に示すように、実施例1の触覚生成装置100では、台座60上に振動器15が設けられている。振動器15は主にZ方向に振動する。振動器15は、第1部材30と第2部材20とが接合された筐体25を備えている。駆動装置62は、振動器15に電圧を印加することにより振動器15を振動させる。
【0020】
図2(a)は、実施例1における振動器の平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA-A断面図である。
図3(a)は、実施例2における振動器の第2部材の平面図、
図3(b)は、
図3(a)のA-A断面図、
図3(c)は、第1部材の断面図である。第1部材30と第2部材20が圧電素子10aおよび10bを挟む方向をZ方向、Z方向に直交し、圧電素子10aおよび10bの平面視における辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0021】
図2(a)から
図3(c)に示すように、実施例1の触覚生成装置100の振動器15では、筐体25は、第1部材30および第2部材20を備えている。第1部材30と第2部材20は接合されている。第2部材20の+Z方向における面には、凹部28が設けられている。凹部28は、+Z側に設けられた第1部分22と-Z側に設けられた第2部分24とを有する。第1部分22の平面形状は略円形状であり、第2部分24の平面形状は略矩形状である。第1部分22の側面には、雌ねじとなるねじ山26が形成されている。第2部分24の側面には、ねじ山は形成されていない。凹部28内には、-Z側から支持部材12a、圧電素子10a、10bおよび支持部材12bが順に挿入されている。支持部材12a、圧電素子10a、10bおよび支持部材12bは第2部材20には接合されておらず、移動自由である。
【0022】
第1部材30は、+Z側に設けられた頭部32と、-Z側に設けられたねじ部34を備えている。頭部32の平面形状は略円形である。頭部32の+Z側の面は、平面視における中央部が周縁部に対し-Z方向に逆円錐状に凹む。ねじ部34の側面には、雄ねじとなるねじ山36が形成されている。第1部材30のねじ部34は、第2部材20の凹部28の第1部分22に、ねじ山26と36とを嵌め合わせることにより接合される。ねじを締めることで、第2部材20は、支持部材12aを介し圧電素子10aを矢印50aのように+Z方向に押圧する。第1部材30は、支持部材12bを介し圧電素子10bを矢印50bのように-Z方向に押圧する。圧電素子10aおよび10bを押圧する応力は例えば5×106Pa以上である。
【0023】
第1部材30および第2部材20の材料は、例えば金属または樹脂である。支持部材12aおよび12bの材料は、第1部材30、第2部材20、圧電素子10aおよび10bよりヤング率の大きい材料であり、例えばステンレスである。第1部材30の頭部32のX方向およびY方向の幅は一例として10mm、頭部32のZ方向の高さは一例として2.5mm、頭部32の+Z面の逆円錐状の頂点の凹み量は一例として1.5mm、ねじ部34のX方向およびY方向の幅は一例として6mm、ねじ部34のZ方向の高さは一例として5mmである。第2部材20のX方向およびY方向の幅は一例として8mm、高さは一例として15mm、凹部28のZ方向の深さは一例として14mm、第1部分22のZ方向の深さは一例として6mm、第2部分24のX方向およびY方向の幅は一例として4.5mmである。第1部材30、第2部材20、支持部材12aおよび12bの材料、形状および寸法は適宜設計できる。
【0024】
図4は、実施例1における圧電素子の断面図である。
図4に示すように、圧電素子10aおよび10bは、複数の圧電体層41からなる圧電体40、複数の第1電極42および複数の第2電極44を備えている。複数の圧電体層41は、Z方向に積層されている。圧電体層41、第1電極42および第2電極44は、XY平面に広がる平板状である。複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられている。1つの圧電体層41は、Z方向において1つの第1電極42と1つの第2電極44とに挟まれている。圧電体40の-X側の側面に第1外部電極43が設けられ、圧電体40の+X側の側面に第2外部電極45が設けられている。複数の第1電極42は第1外部電極43に電気的に接続する。複数の第2電極44は第2外部電極45に電気的に接続する。第1外部電極43と第2外部電極45との間に電圧を印加することで、逆圧電効果により、圧電体40は、矢印52のようにZ方向に伸縮する。このように、第1電極42および第2電極44に電圧を印加することで、第1電極42および第2電極44の積層方向に伸縮する振動モードを縦変位型モードまたはd33モードという。
【0025】
圧電体40は、第1領域46、第2領域47および第3領域48を備えている。第1領域46および第2領域47は、Z方向に交互に設けられている。第3領域48は、Z方向において最も外側の第1領域46の外に設けられている。第1領域46は、Z方向において第1電極42と第2電極44とが一定間隔で交互に設けられた領域である。第1領域46における圧電体層41の積層数は一例として50層である。第2領域47および第3領域48は、第1電極42および第2電極44が設けられていない領域である。第2領域47は設けられていなくてもよい。第2領域47を設けることで信頼性が向上する場合もある。
【0026】
圧電体層41の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸バリウム系材料(BaTiO3、BaはCaでもよく、TiはZrでもよい)、チタン酸ビスマス系材料(BiTiO3、Biの一部がNaでもよい)、ニオブ酸アルカリ系材料(NaNbO3、NaはLiまたはKでもよい)を用いることができる。第1電極42、第2電極44、第1外部電極43および第2外部電極45の材料としては、例えばAg、Pd、Pt、Cu、NiおよびAu等の金属を用いることができる。圧電素子10aおよび10bは、表面に第1電極42および第2電極44が形成された圧電体シートを積層し、焼結することにより形成される焼結体からなるチップである。圧電素子10aおよび10bは例えば直方体であり、圧電素子10aおよび10bのX方向およびY方向の幅は一例として3.5mm、Z方向の高さは一例として3mmである。
【0027】
圧電素子10aおよび10bにおける±Z側の表面におけるZ方向の変位量ΔZ、圧電体層41の積層数をN、第1電極42と第2電極44との間に印加される電圧をV、逆圧電定数に関連した定数をd33すると、ΔZ=d33×V×Nである。よって、圧電体層41の積層数Nを多くすることで変位量ΔZが大きくなる。しかし、製造上の制約などにより、1つの圧電素子10aまたは10bにおける積層数Nを多くすることができない場合がある。このような場合には、筐体25内に圧電素子10aおよび10bをZ方向に積層することができる。これにより、圧電素子10aおよび10bの合計の変位量を大きくできる。Z方向に積層される圧電素子10aおよび10bの個数は1個でもよいし3個以上でもよい。
【0028】
図5は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する変調波を示す図である。
図5における横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。搬送波の周期T1(周波数f1)の信号は搬送波64である。変調波66の包絡線65は信号波に対応する。信号波は周期T2(周波数f2)である。搬送波64としては正弦波を用いるが、図の簡略化のため搬送波64として三角波を図示している。また、周期T1は周期T2に比べ非常に小さいが、理解しやすいように
図5では周期T1を大きく図示している。変調波66では、搬送波64が信号波により振幅変調されている。搬送波64は正弦波であり、信号波は矩形波である。
【0029】
搬送波64の周波数f1は、例えば筐体25の共振周波数である。共振周波数は、基本波でもよいし高調波でもよい。信号波の周波数f2は、人体の皮膚の受容器であるマイスナー小体が敏感に感じる周波数である。このような周波数として例えば1Hz以上かつ60Hz以下である。
【0030】
変調波66における包絡線65の最も大きい振幅をA1、包絡線65の最も小さい振幅をA2としたとき、変調度MをM=(A1-A2)/(A1+A2)と定義する。変調波66の変調度Mは例えば50%以上かつ100%より小さい。
【0031】
矩形波は、立ち上がり時間および立ち下り時間が周期T2より十分に小さい波形である。矩形波の立ち上がり時間および立下り時間は、例えば周期T2の1/25倍以下であり、1/100倍以下である。なお、立ち上がり時間および立下り時間の定義は、日本工業規格JIS C 161-02-05が準用される。すなわち、立ち上がり時間および立下り時間は、包絡線65の電圧が振幅A1のときと振幅A2のときの電圧の差に対し10%の電圧とのきの時間と90%の電圧のときの時間との差である。
【0032】
[実験1]
第1部材30の+Z側の触覚の柔軟性を調査した。
実験した各部材の材料は以下である。
圧電素子10aおよび10b
圧電体40の材料はPZT
第1電極42および第2電極44の材料は銀-パラジウム
X方向およびY方向の幅:3.5mm
Z方向の高さ:3mm
第1領域46における圧電体層41の積層数:50
第1領域46の個数:3個
支持部材12aの材料:ステンレス
第1部材30の材料:アクリル樹脂
第2部材20の材料:アクリル樹脂
【0033】
第1部材30の頭部32のX方向およびY方向の幅は10mm、頭部32のZ方向の高さ2.5mm、頭部32の+Z面の逆円錐状の頂点の凹み量は1.5mm、ねじ部34のX方向およびY方向の幅は6mm、ねじ部34のZ方向の高さは5mmである。第2部材20のX方向およびY方向の幅は8mm、高さは15mm、凹部28のZ方向の深さは14mm、第1部分22のZ方向の深さは6mm、第2部分24のX方向およびY方向の幅は4.5mmである。
【0034】
表1は、実験1における実験条件および結果を示す表である。
【表1】
【0035】
表1において、条件A~Iは、駆動装置62が圧電素子10aおよび10bの第1電極42と第2電極44との間の電圧として供給する変調波の条件である。「波形」は、信号波の波形であり、「矩形波」は、信号波の波形が
図5のような矩形波であることを示し、「正弦波」は信号波の波形が正弦波であることを示し、「ノコギリ波」は、信号波の波長が急峻な立下りと徐々下がるに立ち下がりを有するノコギリ波(下降ランプ波ともいう)であることを示している。「搬送波」は、搬送波64の周波数であり、いずれの条件も66kHzである。筐体25の共振周波数(第2高調波)は、63.5kHzである。「信号波」は信号波の周波数である。「変調度」は
図5に置いて説明した変調度Mであり、いずれのサンプルも88%である。「触覚」は第1部材30に触れたときの触覚の柔らかさを調べた結果である。「1」「2」、「3」および「4」は柔らかい触覚の程度を表し、「1」から「4」に向かうにしたがい、柔らかい触覚の程度が小さくなる。「1」では最も柔らかい触覚が得られ、「4」では柔らかい触覚が得られない。「1」のときは風船を触るような触覚である。
【0036】
表1に示すように、条件A~Gは、信号波として矩形波を用い、信号波の周波数を変化させている。信号波の周波数が31Hzと3Hzのとき、柔らかい触覚は得られない。信号波の周波数が25Hzと8Hzのとき、多少柔らかい触覚が得られ、信号波の周波数が19Hzと13Hzのとき、柔らかい触覚がさらに得られ、信号波の周波数が16Hzのとき、柔らかい触覚が最も得られる。
【0037】
条件Hは、正弦波の信号波の周波数を変え最も柔らかい触覚が得られた周波数(28Hz)を示している。条件Iは、ノコギリ波の信号波の周波数を変え最も柔らかい触覚が得られた周波数(21Hz)を示している。信号波の波形が正弦波およびノコギリ波では、最も柔らかい触覚が得られた信号波の周波数においても「触覚」は2であり、条件Dよりも柔らかい触覚が小さい。
【0038】
搬送波64の周波数以外を条件Dとし、搬送波64の周波数を変化させ、第1部材30の触覚を調査した。共振周波数63.5kHzの±14%(54.7kHz~72.3kHz)の範囲では、柔らかい触覚はほとんど変わらない。搬送波64の周波数が共振周波数の±14%の範囲から外れると柔らかい触覚が減衰する。柔らかい触覚は搬送波64の周波数が共振周波数より遠くなるに従い減衰する。
【0039】
変調度以外の条件を条件Dと同じとし、変調波66の変調度Mを変化させ、第1部材30の触覚を調査した。変調度Mが100%のとき、柔らかい触覚は得られない。変調度Mが小さくなると、柔らかい触覚が大きくなり、変調度Mが88%のとき、柔らかい触覚が最も大きく、風船のような触覚である。変調度Mが70%では、変調度Mが88%のときとほぼ同じ柔らかい触覚であるが、風船の張りが若干低下する。変調度Mが50%のとき、柔らかい触覚が低下し、風船の空気が抜けた感覚である。変調度Mが20%のとき、柔らかい触覚は得られない。
【0040】
以上の結果より、実施例1では、駆動装置62は、振動器15の共振周波数の周波数を有する搬送波64を搬送波64の周波数より低くマイスナー小体が感じる周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度Mを100%より小さい変調波66を生成して、振動器15に変調波66を供給する。これにより、硬質な第1部材30を触ると柔らかい触覚となる。
【0041】
柔らかい触覚を得るためには、搬送波64の周波数は、振動器15(すなわち筐体25)の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下が好ましく、共振周波数の0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましく、共振周波数の0.95倍以上かつ1.05倍以下がさらに好ましい。信号波の周波数は、マイスナー小体が敏感に感じるっ周波数であり、1Hz以上かつ60Hz以下が好ましく、3Hz以上かつ50Hz以下がより好ましく、13Hz以上かつ28Hz以下がさらに好ましい。変調波66の変調度Mは、50%以上かつ98%以下が好ましく、70%以上かつ90%以下がより好ましい。変調波66のデュティ比(振幅がA1の期間/周期T2)は50%付近が好ましい。デュティ比は、20%以上かつ80%以下でもよく、30%以上かつ70%以下でもよく、40%以上かつ60%以下でもよい。
【0042】
実施例1で用いた振動器15は、振動モードが主に縦変位型モードの圧電素子10aおよび10bを用い、筐体25が圧電素子10aおよび10bを押圧している。筐体25が圧電素子10aおよび10bを押圧することで、筐体25が圧電素子10aおよび10bを押圧しない場合に比べ、Q値が向上する。このような現象は、圧電素子10aおよび10bとして、横変位型モードの圧電素子を用いた場合には得られない現象であり、発明者らがはじめて発見した現象である。なお、横変位型モードとは、第1電極42と第2電極44の積層方向に対し圧電素子10aおよび10bの振動方向が直交するモードである。圧電素子10aおよび10bの押圧の有無に対し、共振周波数があまり変動していない。これは、支持部材12aを設けたためと考えられる。
【0043】
実験2の結果から、
図4のように、Z方向において第1電極42と第2電極44とが圧電体層41を挟み、第1電極42と第2電極44との間に電圧を印加することでZ方向に伸縮する圧電素子10aおよび10bを用いる。
図2(b)のように、第1部材30と第2部材20とは圧電素子10aをZ方向に押圧し、第1部材30はZ方向に圧電素子10aおよび10bの伸縮に対応する振動を出力する。このように、縦変位型の圧電素子10aおよび10bを筐体25が押圧することで、筐体25の機械振動のQ値が向上する。よって、触覚発生装置の特性を向上できる。
【0044】
第1部材30と第2部材20とは、ねじを嵌め合わせることにより圧電素子10aおよび10bを押圧する。これにより、大きい力で安定的に圧電素子10aおよび10bを押圧できる。また、圧電素子10aおよび10bに加わる圧力のばらつきを抑制できる。よって、共振周波数のばらつき等を抑制できる。一例として、複数の構造を作製したところ、共振周波数のばらつきは600Hz以下であった。圧電素子10aおよび10bを押圧する機構はねじの嵌め合わせ以外でもよい。
【0045】
実施例1において、第1部材30のねじ山36の呼び径d(最大径)が6mmのとき、トルクレンチを用い第1部材30の締め付けトルクTを測定すると約0.1N・mであった。第1部材30が圧電素子10bを押す力FはT/(k×d)であり、トルク係数kを0.2とすると、F=83Nである。圧電素子10aおよび10bのXY平面の面積は3.5mm×3.5mmである。よって、第1部材30が圧電素子10bを押圧する圧力は6.8×106Paである。筐体25の機械振動のQ値を向上させる効果は、圧力が6.8×106Paの1/10程度でも生じると考えられる。よって、第1部材30および第2部材20が圧電素子10aおよび10bを押圧する圧力は、5×105Pa以上が好ましく、1×106Pa以上がより好ましく、2×106Pa以上がさらに好ましい。
【0046】
第1部材30と圧電素子10bとの間に支持部材12b(第3部材)を設け、第2部材20と圧電素子10aとの間に支持部材12a(第4部材)を設ける。支持部材12aおよび12bの少なくとも一方が設けられていればよい。圧電体40としてPZTを用いた場合、PZTのヤング率は約60GPaである。筐体25として樹脂を用いた場合には、樹脂のヤング率は10GPa以下である。これに対し、支持部材12aおよび12bとしてステンレスを用いた場合、ステンレスのヤング率は約120GPaである。また、アルミニウムのヤング率は約70GPaである。このように、支持部材12bのヤング率は、圧電体40のヤング率および第1部材30のヤング率より大きく、支持部材12bのヤング率は、圧電体40のヤング率および第2部材20のヤング率より大きい。支持部材12aおよび12bを設けることで、圧電素子10aおよび10bに荷重が加わり、振動の伝達を強化することができる。よって、筐体25の共振周波数が押圧により変動することが抑えられ、かつQ値がより向上する。支持部材12aおよび12bの少なくとも一方が設けられていればよい。支持部材12bおよび12aのヤング率は、圧電体40のヤング率並びにそれぞれ第1部材30および第2部材20のヤング率の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0047】
図4のように、圧電素子10aおよび10bにおいて、複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられ、複数の圧電体層41の1つは、複数の第1電極42のうち1つと複数の第2電極44のうち1つにZ方向において挟まれる。このような構造により、Z方向の変位量をより大きくでき、触覚生成装置の特性をより向上できる。
【0048】
図6(a)および
図6(b)は、実施例1における第2部材の別の例を示す断面図である。
図6(a)に示すように、第1部材30の頭部32の+Z側の面は、平坦である。
図6(b)に示すように、第1部材30の頭部32の+Z側の面の周縁部が-Z方向に傾斜している。第1部材30の+Z側の面の形状を変えることで、異なる触感を得ることができる。例えば、
図6(a)および
図6(b)のように、+Z側の面が平坦または+Z方向に膨らむ第1部材30を用いると、気泡緩衝材(Bubble wrap)のような柔らかい風船の触覚を得ることができる。
【0049】
[実施例1の変形例1]
図7は、実施例1の変形例1の触覚生成装置の模式図である。振動器15は側面を部材70は断面を図示している。
図7に示すように、実施例1の変形例1の触覚生成装置102では、振動器15の第2部材20を部材70にはめ込み、第1部材30の周りを部材70が囲んでいる。部材70は第1部材30には接触していない。部材70は第1部材30より柔らかい樹脂である。部材70が第2部材20に接触することで、第2部材20の振動は部材70に伝達される。これにより、部材70に柔らかい触覚を生じさせることができる。