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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044712
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ガラス組成物及び歯科用組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/076 20060101AFI20240326BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20240326BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20240326BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 6/836 20200101ALI20240326BHJP
【FI】
C03C3/076
C03C3/091
C03C3/089
C03C3/083
A61K6/836
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150421
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】舩山 直矢
(72)【発明者】
【氏名】三宅 貴大
【テーマコード(参考)】
4C089
4G062
【Fターム(参考)】
4C089AA01
4C089AA06
4C089BA01
4C089BA02
4C089BA04
4C089BA11
4C089BA19
4G062AA10
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB01
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC03
4G062EC04
4G062ED01
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4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
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4G062GE01
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4G062HH02
4G062HH03
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4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
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4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM20
4G062NN01
4G062NN14
(57)【要約】
【課題】高いX線造影性と低い屈折率とを両立するガラスが得られるガラス組成物を提供すること。
【解決手段】セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)と、を含み、前記セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、前記カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、前記ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、バリウム(Ba)を含まないか又は前記バリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下である、ガラス組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)と、を含み、
前記セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、
前記カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、
前記ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、
バリウム(Ba)を含まないか又は前記バリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下である、
ガラス組成物。
【請求項2】
ホウ素(B)を含み、
前記ホウ素(B)の含有量が酸化物換算で20質量%以下である、
請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
アルミニウム(Al)を含み、
前記アルミニウム(Al)の含有量が酸化物換算で15質量%以下である、
請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
フッ素(F)を含み、
前記フッ素(F)の含有量が6質量%以下である、
請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
前記ガラス組成物を含むガラスの屈折率(nd)が1.524以下である、
請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記ガラス組成物を含むガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%以上である、
請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のガラス組成物を含む、
歯科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物及び歯科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、セシウム(Cs)を含有するガラスは、X線不透過性が高いため、X線造影性が求められる歯科材料用フィラーの原料として用いられている。例えば、特許文献1には、歯科用材料に用いられる充填材として、CsOを含有するガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-131457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガラスでは、X線造影性が高くなると屈折率も高くなる傾向があるため、高いX線造影性と低い屈折率とを両立することは難しい。
【0005】
本発明の課題は、高いX線造影性と低い屈折率とを両立するガラスが得られるガラス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガラス組成物は、セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)と、を含み、前記セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、前記カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、前記ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、バリウム(Ba)を含まないか又は前記バリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、高いX線造影性と低い屈折率とを両立するガラスが得られるガラス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0009】
<ガラス組成物>
本実施形態に係るガラス組成物は、セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)と、を含む。
【0010】
セシウム(Cs)は、原子番号(電子数)が55で、原子番号(電子数)が56のバリウム(Ba)と略同じであるため、バリウム(Ba)と同等に高いX線不透過性を示す。また、セシウム(Cs)は、イオン半径が1.67で、イオン半径が1.35のバリウム(Ba)より大きい(原子内の電子密度が低いまたは疎になる)ため、バリウム(Ba)に比べて屈折率の増加を抑制することができる。
【0011】
セシウム(Cs)は、ガラス組成物中で、セシウム(Cs)の酸化物(酸化セシウム(CsO)として存在し得る。
【0012】
セシウム(Cs)の含有量は、酸化物換算で9質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。セシウム(Cs)の酸化物換算の含有量は、セシウム(Cs)の酸化物である酸化セシウム(CsO)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0013】
セシウム(Cs)の酸化物換算の含有量が9質量%以上であることで、得られるガラスのX線不透過性を高めることができ、X線造影性を高めることができる。なお、セシウム(Cs)の酸化物換算の含有量の上限は、特に制限されないが、ガラス組成物の化学的耐久性の低下を抑制する観点から、セシウム(Cs)の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0014】
カリウム(K)は、ガラス組成物中で、カリウム(K)の酸化物(酸化カリウム(KO)として存在し得る。
【0015】
カリウム(K)を含む場合は、カリウム(K)の含有量は、酸化物換算で5質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。カリウム(K)の酸化物換算の含有量は、カリウム(K)の酸化物である酸化カリウム(KO)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0016】
カリウム(K)を含む場合に、カリウム(K)の酸化物換算の含有量が5質量%以上であることで、ガラス組成物の熔融温度が低くなる。また、カリウム(K)は、セシウム(Cs)と組み合わせて配合することで、混合アルカリ効果により、ガラス組成物の化学的耐久性を向上させることができる。なお、カリウム(K)の酸化物換算の含有量の上限は、特に制限されないが、ガラス組成物の化学的耐久性の低下の抑制と製造のしやすさとの両立の観点から、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。
【0017】
ナトリウム(Na)は、ガラス組成物中で、ナトリウム(Na)の酸化物(酸化ナトリウム(NaO)として存在し得る。
【0018】
ナトリウム(Na)を含む場合は、ナトリウム(Na)の含有量は、酸化物換算で1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。ナトリウム(Na)の酸化物換算の含有量は、ナトリウム(Na)の酸化物である酸化ナトリウム(NaO)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0019】
ナトリウム(Na)を含む場合に、ナトリウム(Na)の酸化物換算の含有量が1質量%以上であることで、ガラス組成物の熔融温度が低くなり、ガラス組成物の製造が容易になる。また、ナトリウム(Na)は、セシウム(Cs)と組み合わせて配合することで、混合アルカリ効果により、ガラス組成物の化学的耐久性を向上することができる。なお、ナトリウム(Na)の酸化物換算の含有量の上限は、特に制限されないが、ガラス組成物の化学的耐久性の低下を抑制する観点から、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは22質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0020】
ケイ素(Si)は、ガラス組成物中で、ケイ素(Si)の酸化物(酸化ケイ素(SiO)として存在し得る。
【0021】
ケイ素(Si)の含有量は、特に制限されないが、酸化物換算で20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。ケイ素(Si)の酸化物換算の含有量は、ケイ素(Si)の酸化物である酸化ケイ素(SiO)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0022】
ケイ素(Si)の酸化物換算の含有量が20質量%以上であることで、ガラス組成物の粘性の調整が可能になり、また、ガラス組成物の機械的強度を高めることができる。なお、ケイ素(Si)の酸化物換算の含有量の上限は、特に制限されないが、ガラス組成中のケイ素(Si)が増加するとガラス融液が硬くなるため、製造コスト低減の観点から、75質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0023】
本実施形態のガラス組成物は、バリウム(Ba)を含まない。本明細書において、「バリウム(Ba)を含まない」とは、不可避不純物を除き、バリウム(Ba)を実質的に含まないことを意味する。
【0024】
また、バリウム(Ba)が不可避不純物として含まれる場合は、バリウム(Ba)の含有量は、酸化物換算で0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。バリウム(Ba)の酸化物換算の含有量が0.5質量%を超えると、ガラスの電子密度が増加し、屈折率が増加するおそれがある。
【0025】
本実施形態のガラス組成物は、更にホウ素(B)を含むことが好ましい。ホウ素(B)は、ガラス組成物中で、ホウ素(B)の酸化物(酸化ホウ素(B)として存在し得る。
【0026】
ホウ素(B)の含有量は、特に制限されないが、酸化物換算で20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは19質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。ホウ素(B)の酸化物換算の含有量は、ホウ素(B)の酸化物である酸化ホウ素(B)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0027】
ホウ素(B)の酸化物換算の含有量が20質量%以下であることで、ガラス組成物のガラスの融点を低下させ、製造を容易にすることができる。なお、ホウ素(B)の酸化物換算の含有量の下限は、特に制限されないが、ガラス組成物の化学的耐久性と製造の容易さの観点から、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。
【0028】
本実施形態のガラス組成物は、更にアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。アルミニウム(Al)は、ガラス組成物中で、アルミニウム(Al)の酸化物(酸化アルミニウム(Al)として存在し得る。
【0029】
アルミニウム(Al)の含有量は、特に制限されないが、酸化物換算で15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは14質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。アルミニウム(Al)の酸化物換算の含有量は、アルミニウム(Al)の酸化物である酸化アルミニウム(Al)のガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0030】
アルミニウム(Al)の酸化物換算の含有量が15質量%以下であることで、ガラス組成物の化学的耐久性を向上させ、ガラスの失透を抑制することができる。なお、アルミニウム(Al)の酸化物換算の含有量の下限は、特に制限されないが、ガラス組成物の化学的耐久性とガラスの失透を抑制する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。
【0031】
本実施形態のガラス組成物は、更にフッ素(F)を含むことが好ましい。フッ素(F)は、ガラス組成物中で、フッ化物またはフッ化物塩として存在し得る。
【0032】
フッ素(F)の含有量は、特に制限されないが、6質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.5質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。フッ素(F)の含有量は、フッ素(F)の単体としてのガラス組成物中の質量含有率を示す。
【0033】
フッ素(F)の含有量が6質量%以下であることで、得られるガラスの屈折率を調整することができる。なお、フッ素(F)の含有量の下限は、特に制限されないが、ガラス組成物の粘性が低くなり、ガラス組成物の操作性を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。
【0034】
本実施形態のガラス組成物は、本発明の目的を損なわない限り、その他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、X線不透過性や化学的耐久性を向上させる観点から、例えば、Sr、Zn、Y、Zr、Ti等が挙げられる。その他の元素は、ガラス組成物中で、酸化物として存在し得る。その他の元素の含有量は、特に制限されず、ガラス組成物中に任意の質量で含まれる。
【0035】
本実施形態のガラス組成物は、これを含むガラスの屈折率(nd)が1.524以下であることが好ましく、より好ましくは1.520以下、更に好ましくは1.518以下、より更に好ましくは1.516以下である。本明細書において、屈折率(nd)は、D線(波長589nmの光線)における屈折率を意味する。
【0036】
本実施形態のガラス組成物の屈折率(nd)が1.524以下であると、歯科用樹脂との屈折率差が小さくなり、得られる歯科用組成物の透明性が高くなる。なお、屈折率(nd)の下限は、特に制限されないが、実現可能な範囲として1.3以上であることが好ましく、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.45以上である。
【0037】
ガラス組成物の形態は、特に限定されないが、例えば、粉末状(又は粉体)、板状、柱状、糸状、繊維状であってもよい。ガラス組成物の形態が、粉末状であると、ガラス組成物の各成分の配合が容易になる。また、ガラス組成物の形態が、板状、又は柱状であると、ガラス組成物を光学素子(例えば、レンズ、プリズム、フィルタ等)に使用することができる。
【0038】
粉末状のガラス組成物の粒度は、特に限定されないが、メジアン径で0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上1μm以下である。ここで、粒度は、メジアン径で定義される平均粒径を意味する。
【0039】
ガラス組成物の粒度が0.01μm以上であると、ガラス組成物を粉末として使用した際に、ガラス組成物の操作性が改善される。また、ガラス組成物の粒度が20μm以下であると、歯科材料に適用した際に得られる歯科用組成物の機械的強度が向上する。
【0040】
本実施形態のガラス組成物は、これを含むガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%以上であり、好ましくは350%以上であり、より好ましくは400%以上である。本明細書において、X線造影性とは、ISO 4049:2019に準拠した歯科材料のX線造影性試験方法により測定したX線造影性を示す。
【0041】
本実施形態では、ガラス組成物を含むガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%以上となることで、高いX線不透過性を示すガラス組成物を提供することができる。
【0042】
本実施形態のガラス組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、歯科材料に用いることができる。本実施形態のガラス組成物が適用可能な歯科材料としては、例えば、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、歯科用接着剤、歯科用仮封材、歯科用プライマー、歯科用コート材、歯科用硬質レジン、歯科切削加工用レジン材料、歯科用暫間修復材、歯科用充填剤、歯磨剤などが挙げられる。
【0043】
また、本実施形態のガラス組成物は歯科材料以外の分野でも適用可能である。本実施形態のガラス組成物が適用可能な歯科材料以外の分野の用途としては、例えば、光学レンズ、プリズム、光学フィルタ等の光学素子、紫外線・赤外線カットガラス、放射線遮蔽ガラス等が挙げられる。
【0044】
本実施形態のガラス組成物は、上述のように、セシウム(Cs)とカリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)とケイ素(Si)とを含み、セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、バリウム(Ba)を含まないか又はバリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下である。
【0045】
このような構成により、本実施形態のガラス組成物は、得られるガラスのX線不透過性、が高くなり、一方で電子密度が低くなるため、高いX線造影性と低い屈折率とを両立するガラスを得ることができる。また、熔融温度を低下させることができるため、製造や加工が容易になり、各種分野の材料として適用することができる。また、本実施形態のガラス組成物は、上述のように、バリウムフリーであるため、得られるガラスの電子密度増加が抑制され、屈折率を低くすることができる。
【0046】
本実施形態のガラス組成物は、上述のように、ホウ素(B)を含み、該ホウ素(B)の含有量が酸化物換算で20質量%以下であることで、ホウ素(B)は原子番号(電子数)が5と小さいため電子数が少なく、得られるガラスの屈折率を低くすることができる。また、本実施形態のガラス組成物は、ホウ素(B)の含有量が酸化物換算で20質量%以下であることで、ガラスの熔融温度が低下し、製造が容易になる。
【0047】
本実施形態のガラス組成物は、上述のように、アルミニウム(Al)を含み、該アルミニウム(Al)の含有量が酸化物換算で15質量%以下であることで、得られるガラスのX線造影性を低下させずに、屈折率を低くすることができる。また、本実施形態のガラス組成物は、アルミニウム(Al)の含有量が酸化物換算で15質量%以下であることで、得られるガラスのX線造影性を低下させずに、ガラス組成物の化学的耐久性を維持しながら,ガラスの熔融温度を低下させ、製造が容易になる。
【0048】
本実施形態のガラス組成物は、上述のように、フッ素(F)を含み、該フッ素(F)の含有量が6質量%以下であることで、得られるガラスのX線造影性を低下させずに、屈折率をさらに低くすることができる。
【0049】
本実施形態のガラス組成物は、これを含むガラスの屈折率(nd)が1.524以下であることで、歯科用樹脂との屈折率差が小さくなり、透明性が高く、審美性に優れた歯科用組成物が得られる。
【0050】
本実施形態のガラス組成物は、これを含むガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%以上であることで、X線不透過性が高く、X線造影性が高いガラスが得られる。
【0051】
<歯科用組成物>
本実施形態に係る歯科用組成物は、上述した本実施形態のガラス組成物を含む。
【0052】
具体的には、本実施形態に係る歯科用組成物に含まれるガラス組成物は、セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)とを含み、セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、バリウム(Ba)を含まないか又はバリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下のガラス組成物を含む。
【0053】
本実施形態に係る歯科用組成物では、このように本実施形態のガラス組成物を含むことで、本実施形態のガラス組成物で得られる効果がそのまま得られる。
【0054】
すなわち、本実施形態の歯科用組成物は、これを含むガラスのX線不透過性、透明性の何れも高いものとなるため、高いX線造影性と優れた審美性とを両立する歯科用組成物を得ることができる。また、本実施形態の歯科用組成物は、高いX線造影性を示すため、治療後のX線画像による診断や診察において、修復箇所を明確にすることができる。更に、本実施形態の歯科用組成物に含まれるガラス組成物は、十分に好適な屈折率の範囲に調整されているため、歯科用樹脂との屈折率差が小さく、審美性が求められる歯科材料(例えば、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、歯科用コート剤等)に好適に用いることができる。
【0055】
更に、本実施形態の歯科用組成物に含まれるガラス組成物は、熔融温度を低下させることができるため、本実施形態の歯科用組成物の製造が容易になる。また、本実施形態の歯科用組成物は、歯科用組成物に含まれるガラス組成物がバリウムフリーであるため、ガラス組成物に含まれるガラスの電子密度増加が抑制され、屈折率を低くすることができる。
【実施例0056】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて説明する。なお、以下において、単位のない数値又は「%」は、特に断りのない限り、質量基準(質量%)である。
【0057】
<ガラスの調製>
ガラス(実施例1~14、比較例1)を、表1に示す組成で調製した。各種原料を混合して得た原料バッチを白金るつぼに入れた後、1400~1500℃に予熱した電気炉にて30~60分係留し、カーボン型に流し出すことで、バルク体として得た。ガラスは、粉砕してメジアン径(平均粒径)0.4μmのガラス粉末として得た。得られたガラス粉末(ガラス)について、屈折率を測定した。また、得られたガラスのバルク体は、電気炉にて、室温から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃にて30分係留したのち、室温まで徐冷して、アニール処理を行った。熱処理後のガラスのバルク体をスライスし、スライス片も得た。得られたガラスのスライス片について、X線造影性(対Al%)を測定した。ガラスの屈折率及びX線造影性(対Al%)は、表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
<屈折率>
特定の屈折率を有する液体と、作製したガラス粉末を1:1(質量比)で混合して透明チューブに詰めた。次に、透明チューブを白色LEDにかざし、透明チューブの透過光の色を目視で観察した。そして、透明チューブの透過光が緑色になる液体の屈折率を、ガラス粉末の屈折率として採用した。なお、液体の屈折率がガラス粉末の屈折率よりも低い場合、透明チューブの透過光の色は青色になる。また、液体の屈折率がガラス粉末の屈折率よりも高い場合、透明チューブの透過光の色は赤色または黄色になる。
【0060】
ガラス粉末の屈折率が1.4600~1.5400である場合、液体としては、表2に記載の液1、液2又はこれらの混合液を用いた。液1と液2は、いずれも、歯科材料として一般的なものである。
【0061】
【表2】
【0062】
<X線造影性>
ガラス組成物のX線造影性は、ISO 4049:2019に準拠した歯科材料のX線造影性試験方法により測定する。具体的には、厚さTs(単位:mm)の試験片(板状のガラス組成物)の光学濃度又はグレイ値を測定する。次に、厚さTsの試験片と同じ光学濃度又はグレイ値を示すアルミニウム板の厚さTa(単位:mm)を求める。そして、Tsに対するTaの割合(単位:%)を、X線造影性の値として用いる。
【0063】
表1より、酸化セシウム(CsO)の含有量が9質量%以上、酸化カリウム(KO)の含有量が5質量%以上、酸化ナトリウム(NaO)の含有量が1質量%以上であり、バリウム(Ba)を含まないガラス組成物は、得られるガラスの屈折率(nd)が1.524以下であり、X線造影性が対アルミニウム比で300%以上であった(実施例1~14)。
【0064】
これに対して、酸化セシウム(CsO)を含まず、酸化カリウム(KO)を含まないガラス組成物は、得られるガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%未満であった(比較例1)。
【0065】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
セシウム(Cs)と、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)と、ケイ素(Si)と、を含み、
前記セシウム(Cs)の含有量が酸化物換算で9質量%以上であり、
前記カリウム(K)の含有量が酸化物換算で5質量%以上であり、
前記ナトリウム(Na)の含有量が酸化物換算で1質量%以上であり、
バリウム(Ba)を含まないか又は前記バリウム(Ba)の含有量が酸化物換算で0.5質量%以下である、
ガラス組成物。
(付記2)
ホウ素(B)を含み、
前記ホウ素(B)の含有量が酸化物換算で20質量%以下である、
付記1に記載のガラス組成物。
(付記3)
アルミニウム(Al)を含み、
前記アルミニウム(Al)の含有量が酸化物換算で15質量%以下である、
付記1又は2に記載のガラス組成物。
(付記4)
フッ素(F)を含み、
前記フッ素(F)の含有量が6質量%以下である、
付記1乃至3の何れか1つに記載のガラス組成物。
(付記5)
前記ガラス組成物を含むガラスの屈折率(nd)が1.524以下である、
付記1乃至4の何れか1つに記載のガラス組成物。
(付記6)
前記ガラス組成物を含むガラスのX線造影性が対アルミニウム比で300%以上である、
付記1乃至5の何れか1つに記載のガラス組成物。
(付記7)
付記1乃至6の何れか1つに記載のガラス組成物を含む、
歯科用組成物。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。