IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
  • 特開-電力変換装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044722
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240326BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240326BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
B60K6/26 ZHV
B60K1/00
H02M3/00 Y
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150436
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】采女 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】若林 竜太
(72)【発明者】
【氏名】荒木 麻由香
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
3D202EE02
3D235AA02
3D235BB07
3D235BB43
3D235CC13
3D235DD12
3D235DD17
3D235DD19
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH22
5H730ZZ01
5H730ZZ05
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H770CA01
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、収容ケースに収容された電子部品に荷重が入力されることを抑制できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】パワーコントロールユニット30は、DCDCコンバータ303と、DCDCコンバータ303を収容する収容ケース31と、収容ケース31に設けられた低電圧コネクタユニット32と、を備える。低電圧コネクタユニット32は、外部と電気的に接続する外部端子323が設けられたコネクタ部321と、コネクタ部321から延出してコネクタ部321とDCDCコンバータ303とを電気的に接続する導電部材322と、を有する。導電部材322には、脆弱部322eが形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子部品と、
前記電子部品を収容する収容ケースと、
前記収容ケースに設けられたコネクタユニットと、を備える電力変換装置であって、
前記コネクタユニットは、外部と電気的に接続する外部端子が設けられたコネクタ部と、前記コネクタ部から延出して前記コネクタ部と前記電子部品とを電気的に接続する導電部材と、を有し、
前記導電部材には、脆弱部が形成されている、電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部を有し、
前記導電部材は、ボルト及びナットで前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部を有し、
前記ナットは、前記収容ケースに取り付けられ、前記ボルトの軸方向に移動可能な可動ナットである、電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部を有し、
前記導電部材は、ボルト及びナットで前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部を有し、
前記導電部材は、前記電子部品から延出する前記出力端子部の延出方向の中心線に対して、前記導電部材の延在方向の中心線が所定角度傾斜するように延在する、電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部を有し、
前記導電部材は、ボルト及びナットで前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部を有し、
前記接続端子部には、前記ボルトが挿通するボルト挿通孔が形成されており、
前記脆弱部は、前記導電部材の延在方向において、前記ボルト挿通孔と前記コネクタ部との間に形成されている、電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記脆弱部は、第1切欠部と第2切欠部とを有し、
前記第1切欠部は、前記ボルトの軸方向であるボルト軸方向から見て、前記導電部材の延出方向に延在する前記導電部材の第1縁部に形成されており、
前記第2切欠部は、前記ボルト軸方向から見て、前記第1縁部と対向して前記導電部材の延出方向に延在する前記導電部材の第2縁部に形成されており、
前記第1切欠部と前記第2切欠部とは、切り欠きの深さが異なる、電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部を有し、
前記導電部材は、ボルト及びナットで前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部を有し、
前記接続端子部には、前記ボルトが挿通するボルト挿通孔が形成されており、
前記脆弱部は、前記ボルトの軸方向であるボルト軸方向から見て、前記導電部材の延在方向において、前記ボルト挿通孔の中心に対して前記コネクタ部と反対側に位置する前記導電部材の端縁から前記ボルト挿通孔に連通する切欠溝を有する、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などに搭載される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においては、CO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、駆動源を電動化した電動車両の研究開発が進んでいる。
【0003】
従来から、電動車両などには電力変換装置が搭載されている。電力変換装置は、例えば、バッテリに蓄電された直流の電力を電動車両の駆動源である回転電機を駆動するための三相交流の電力に変換するとともに、バッテリに蓄電された直流の電力を電動車両に搭載された補機等の各電装品の動作電圧に降圧する。例えば、特許文献1には、電力変換装置としての電力制御ユニットとモータユニットの組付体が搭載されている車両が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の電子制御ユニットには、バッテリに接続される給電ケーブルが接続されている。この給電ケーブルは、ケーブル側コネクタが電子制御ユニットのユニット側コネクタと嵌合することによって、電子制御ユニットに接続されている。電子制御ユニットのユニット側コネクタに設けられたユニット側端子は、電力制御ユニットの内部の電子部品に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-089680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電子制御ユニットは、車両の衝突等によって、外部からユニット側コネクタに衝撃等の荷重が入力される場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の電子制御ユニットでは、外部からユニット側コネクタに衝撃等の荷重が入力された場合、ユニット側コネクタから衝撃等の荷重が伝達して、電力制御ユニットの内部の電子部品に衝撃等の荷重が入力してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、収容ケースに収容された電子部品に荷重が入力されることを抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
少なくとも1つの電子部品と、
前記電子部品を収容する収容ケースと、
前記収容ケースに設けられたコネクタユニットと、を備える電力変換装置であって、
前記コネクタユニットは、外部と電気的に接続する外部端子が設けられたコネクタ部と、前記コネクタ部から延出して前記コネクタ部と前記電子部品とを電気的に接続する導電部材と、を有し、
前記導電部材には、脆弱部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電部材に脆弱部が形成されているので、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、導電部材が脆弱部で変形又は破断して、収容ケースに収容された電子部品に荷重が入力されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の電力変換装置であるパワーコントロールユニットが搭載された車両を斜め上方から見た概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の電力変換装置であるパワーコントロールユニットを斜め上方から見た斜視図である。
図3図2のパワーコントロールユニットを前方から見た前面図である。
図4図2のパワーコントロールユニットを、上側部材を取り外して上方から見た要部上面図である。
図5図2のパワーコントロールユニットにおけるナット及び可動ナット近傍を前方から見た要部断面図である。
図6図2のパワーコントロールユニットにおける低電圧コネクタユニットを上方から見た上面図である。
図7図1の車両のフロントルーム内部の要部を上方から見た上面図である。
図8】第2実施形態の低電圧コネクタユニットを上方から見た上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態の電力変換装置が搭載された車両について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、一体型ユニットが搭載された車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。また、本明細書等では、左右方向を車幅方向ともいう。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態の電力変換装置が搭載された車両について、図1から図6を参照しながら説明する。
【0013】
<車両>
図1に示すように、本実施形態の車両Vは、乗員の居住空間である車室CBと、車室CBより前方に設けられたフロントルームFRMと、車室CBより後方に設けられたラゲッジルームLRMと、を備える。車室CBとフロントルームFRMとは、不図示のダッシュパネル等によって区画された別空間となっている。本実施形態では、ラゲッジルームLRMは、車室CBと区画されておらず、車室CBと連通した空間となっている。なお、ラゲッジルームLRMと車室CBとは、別空間となっていてもよく、一部が連通していてもよい。
【0014】
車両Vには、前方に左右一対の前輪FW、後方に左右一対の後輪RWが設けられている。
【0015】
車両VのフロントルームFRM内には、エンジン10と、駆動装置20と、パワーコントロールユニット30と、が搭載されている。エンジン10と駆動装置20とは、フロントルームFRM内で車幅方向に隣接して配置されている。本実施形態では、エンジン10と駆動装置20とは、エンジン10が右側、駆動装置20が左側となるようにして、フロントルームFRM内で車幅方向に隣接して配置されている。パワーコントロールユニット30は、駆動装置20の上部に固定されている。
【0016】
エンジン10は、出力軸が駆動装置20に連結されている。
【0017】
駆動装置20は、駆動装置ケース21を備える。駆動装置ケース21の内部には、不図示の第1回転電機及び第2回転電機と、不図示の動力伝達機構が収容されている。
【0018】
駆動装置20は、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を駆動輪である前輪FWに伝達して車両Vを走行させる伝達経路と、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を第1回転電機に伝達して第1回転電機で発電しながら第2回転電機を駆動して動力伝達機構を介して第2回転電機の回転動力を駆動輪である前輪FWに伝達して車両Vを走行させる伝達経路と、を備える。車両Vは、駆動装置20においてこれら2つの伝達経路を択一的に選択又は併用して駆動輪である前輪FWを駆動して走行する。
【0019】
パワーコントロールユニット30は、車両Vに搭載された不図示の高電圧バッテリと駆動装置20との間に接続される。本実施形態において、パワーコントロールユニット30は、本発明の電力変換装置の一例である。
【0020】
図2及び図3に示すように、パワーコントロールユニット30は、電圧コントロールユニット301と、インバータ302と、DCDCコンバータ303と、収容ケース31と、収容ケース31に設けられた低電圧コネクタユニット32と、を備える。
【0021】
電圧コントロールユニット301は、高電圧バッテリと電気的に接続しており、高電圧バッテリの出力電圧であるV1電圧を第2回転電機が電動機として動作する際の入力電圧であるV2電圧に昇圧するとともに、エンジン10の駆動によって第2回転電機が発電し直流に変換されたV2電圧の電力をV1電圧の電力に降圧する。
【0022】
インバータ302は、電圧コントロールユニット301と前述した第1回転電機とに接続する不図示の第1インバータ部と、電圧コントロールユニット301と前述した第2回転電機とに接続する不図示の第2インバータ部と、を備える。
【0023】
第1インバータ部は、エンジン10の駆動によって第1回転電機が発電した交流の電力を直流のV2電圧の電力に変換する。そして、第1インバータ部で変換された直流のV2電圧の電力は、電圧コントロールユニット301でV1電圧に降圧されて、高電圧バッテリに充電される。
【0024】
第2インバータ部は、高電圧バッテリから出力されて電圧コントロールユニット301でV2電圧に昇圧された直流の電力を三相交流の電力に変換する。そして、第2インバータ部で変換された三相交流の電力は、第2回転電機に供給され、第2回転電機が駆動する。
【0025】
DCDCコンバータ303は、電圧コントロールユニット301と並列に高電圧バッテリと電気的に接続しているとともに、低電圧コネクタユニット32と電気的に接続している。DCDCコンバータ303は、高電圧バッテリの出力電圧であるV1電圧を、車両の各電装品の動作電圧であるVLowに降圧する。VLowは、例えば、12[V]である。DCDCコンバータ303でVLowに降圧された電力は、低電圧コネクタユニット32からパワーコントロールユニット30の外部に出力される。
【0026】
収容ケース31は、電圧コントロールユニット301、インバータ302、及び、DCDCコンバータ303を収容する。
【0027】
収容ケース31は、上壁部31a、下壁部31b、前壁部31c、後壁部31d、左壁部31e、及び、右壁部31fを有する。
【0028】
収容ケース31は、上下方向から見て、電圧コントロールユニット301、インバータ302及びDCDCコンバータ303を取り囲む中間部材311と、中間部材311の上部に配置され、電圧コントロールユニット301、インバータ302及びDCDCコンバータ303の上方を覆う上側部材312と、中間部材311の下部に配置され、電圧コントロールユニット301、インバータ302及びDCDCコンバータ303の上方を覆う下側部材313と、を有する。上側部材312は、中間部材311の上端部にボルト等によって固定されている。下側部材313は、中間部材311の下端部にボルト等によって固定されている。
【0029】
収容ケース31の上壁部31aは、上側部材312によって形成されている。収容ケース31の下壁部31bは、下側部材313によって形成されている。収容ケース31の前壁部31c、後壁部31d、左壁部31e、及び、右壁部31fは、いずれも、上側領域が上側部材312によって形成され、下側領域が下側部材313によって形成され、上側領域と下側領域の間の上下方向中間領域が中間部材311によって形成されている。
【0030】
中間部材311は、前壁部311c、後壁部311d、左壁部311e、及び、右壁部311fを有する。前壁部311cは、電圧コントロールユニット301、インバータ302及びDCDCコンバータ303の前方を上下方向及び左右方向に延在する。後壁部311dは、電圧コントロールユニット301、インバータ302及びDCDCコンバータ303の後方を上下方向及び左右方向に延在する。左壁部311eは、前壁部311cの左端部から後方に向かって、後壁部311dの左端部まで上下方向及び前後方向に延在する。右壁部311fは、前壁部311cの右端部から後方に向かって、後壁部311dの右端部まで上下方向及び前後方向に延在する。
【0031】
低電圧コネクタユニット32は、収容ケース31の前側領域に設けられている。低電圧コネクタユニット32は、収容ケース31の前壁部31cよりも後方で、収容ケース31の左壁部31eの前側領域に設けられている。本実施形態では、低電圧コネクタユニット32は、中間部材311に設けられている。したがって、低電圧コネクタユニット32は、中間部材311の左壁部311eの前側領域に設けられている。低電圧コネクタユニット32は、中間部材311の左壁部311eの前側領域において、中間部材311の左壁部311eから左斜め前方に向かって延出するように設けられ、ボルト等により中間部材311の左壁部31eに固定されている。
【0032】
DCDCコンバータ303は、収容ケース31の内部で中間部材311に固定されている。
【0033】
図4から図6に示すように、DCDCコンバータ303は、DCDCコンバータ303から延出して電力を出力する出力端子部303aを有する。出力端子部303aは、DCDCコンバータ303から左方に延出している。出力端子部303aには、ボルト41が挿通可能な上下方向に貫通するボルト挿通孔303bが形成されている。
【0034】
低電圧コネクタユニット32は、外部と電気的に接続するコネクタ部321と、コネクタ部321から延出してコネクタ部321とDCDCコンバータ303とを電気的に接続する導電部材322と、を有する。
【0035】
コネクタ部321には外部端子323が設けられている。コネクタ部321には、DV電線50の一端部が接続する。そして、外部端子323とDV電線50とが電気的に接続する。
【0036】
導電部材322は、例えば、バスバーである。導電部材322の延在方向における導電部材322の一端部は、コネクタ部321に連結して外部端子323と電気的に接続している。導電部材322の延在方向における導電部材322の他端部には、DCDCコンバータ303の出力端子部303aと電気的に接続する接続端子部322aが設けられている。接続端子部322aには、ボルト41が挿通可能な上下方向に貫通するボルト挿通孔322bが形成されている。
【0037】
導電部材322は、コネクタ部321から右斜め後方に向かって延出するように設けられている。すなわち、導電部材322の延在方向は、右後方から左前方に延びている。したがって、導電部材322は、DCDCコンバータ303から左方に延出する出力端子部303aの延出方向の中心線CL1に対して、導電部材322の延在方向の中心線CL2が所定角度傾斜するように延在する。本実施形態では、導電部材322の接続端子部322aがDCDCコンバータ303の出力端子部303aに連結し、導電部材322は、導電部材322の延在方向の中心線CL2が、出力端子部303aの延出方向の中心線CL1に対して所定角度傾斜して、接続端子部322aから左斜め前方に延びるように延在する。
【0038】
上方から見て、収容ケース31の中間部材311には、DCDCコンバータ303の出力端子部303aに形成されたボルト挿通孔303b、及び、導電部材322の接続端子部322aに形成されたボルト挿通孔322bと重なる位置に、ナット収容部310が形成されている。ナット収容部310は上方が開口した有底筒形状の凹部となっている。
【0039】
収容ケース31には、上下方向に移動可能な可動ナット42が取り付けられている。可動ナット42は、ナット収容部310に収容されて、上下方向に移動可能に収容ケース31の中間部材311に取り付けられている。
【0040】
そして、上方からボルト41を、DCDCコンバータ303の出力端子部303aに形成されたボルト挿通孔303b、及び、導電部材322の接続端子部322aに形成されたボルト挿通孔322bに挿通させて、可動ナット42に螺合する。これにより、ボルト41及び可動ナット42で、DCDCコンバータ303の出力端子部303aと導電部材322の接続端子部322aとが共締めされるので、導電部材322の接続端子部322aは、DCDCコンバータ303の出力端子部303aに締結される。また、可動ナット42は、収容ケース31に取り付けられているので、導電部材322及びDCDCコンバータ303の出力端子部303aは、可動ナット42を介して、収容ケース31に取り付けられる。
【0041】
ボルト41と螺合するナットが、ボルト41の軸方向である上下方向に移動可能な可動ナット42であることによって、ボルト41及び可動ナット42で導電部材322の接続端子部322aをDCDCコンバータ303の出力端子部303aに締結する際に、ボルト41の軸力で導電部材322及びDCDCコンバータ303の出力端子部303aが変形することを防止できる。
【0042】
導電部材322は、ボルト41の軸方向である上下方向から見て、導電部材322の延出方向に延在する導電部材322の前縁部322cと、前縁部322cと対向して導電部材322の延出方向に延在する導電部材322の後縁部322dと、を有する。
【0043】
導電部材322には、脆弱部322eが形成されている。脆弱部322eは、導電部材322において、他の部分よりも変形又は破断しやすくなっている。
【0044】
そのため、車両Vが衝突する等によって、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合でも、導電部材322が脆弱部322eで変形又は破断するので、収容ケース31に収容されたDCDCコンバータ303に荷重が入力されることを抑制できる。これにより、車両Vが衝突する等によって、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合でも、DCDCコンバータ303が損傷することを防止できる。
【0045】
また、前述したように、導電部材322は、導電部材322の延在方向の中心線CL2が、出力端子部303aの延出方向の中心線CL1に対して所定角度傾斜して、接続端子部322aから左斜め前方に延びるように延在する。そのため、車両Vが前突する等によって、前方から衝撃等の荷重が入力される場合、DCDCコンバータ303の出力端子部303aよりも、導電部材322に優先的に応力が発生し、且つ、導電部材322に大きな応力が発生する。これにより、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合に、DCDCコンバータ303の出力端子部303aに発生する応力を低減することができ、DCDCコンバータ303が損傷することをより防止できる。
【0046】
本実施形態では、脆弱部322eは、導電部材322の延在方向において、ボルト挿通孔322bとコネクタ部321との間に形成されている。
【0047】
そのため、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合、導電部材322がボルト挿通孔322bとコネクタ部321との間の脆弱部322eで変形又は破断するので、DCDCコンバータ303の出力端子部303aと接続する導電部材322の接続端子部322aが変形することが抑制される。これにより、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合でも、DCDCコンバータ303に荷重が入力されることをより抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、脆弱部322eは、第1切欠部322e1と第2切欠部322e2とを有する。第1切欠部322e1は、導電部材322の前縁部322cに形成されている。第1切欠部322e1は、導電部材322の前縁部322cから後方に向かって略円弧状に切り欠かれた形状を有する。第2切欠部322e2は、導電部材322の後縁部322dに形成されている。第2切欠部322e2は、導電部材322の後縁部322dから前方に向かって略円弧状に切り欠かれた形状を有する。第1切欠部322e1及び第2切欠部322e2は、いずれも、導電部材322の延在方向において、ボルト挿通孔322bとコネクタ部321との間に形成されている。
【0049】
そして、第1切欠部322e1と第2切欠部322e2とは、切り欠きの深さが異なる。本実施形態では、導電部材322の前縁部322cに形成された第1切欠部322e1の方が、導電部材322の後縁部322dに形成された第2切欠部322e2よりも、切り欠きの深さが深くなっている。
【0050】
車両Vが前突する等によって、前方から衝撃等の荷重が入力される場合、導電部材322の前縁部322cには、導電部材322の延在方向に対して引張方向の荷重がかかるのに対し、導電部材322の後縁部322dには、導電部材322の延在方向に対して引張方向の荷重がかかる。このとき、前方から衝撃等の荷重が入力される場合に、導電部材322の延在方向に対して引張方向の荷重がかかる導電部材322の前縁部322cに形成された第1切欠部322e1の方が、導電部材322の後縁部322dに形成された第2切欠部322e2よりも、切り欠きの深さが深くなっているので、導電部材322の前縁部322cが第1切欠部322e1からより破断しやすくなる。これにより、前方から衝撃等の荷重が入力される場合に、導電部材322が第1切欠部322e1からより破断しやすくなるので、DCDCコンバータ303に荷重が入力されることをより抑制できる。
【0051】
図7に示すように、低電圧コネクタユニット32のコネクタ部321には、DV電線50の一端部が接続される。DV電線50は、一端部がパワーコントロールユニット30の低電圧コネクタユニット32に設けられた外部端子323に接続し、他端部が車両VのフロントルームFRMの内部に搭載されたリレーボックス60に接続している。
【0052】
パワーコントロールユニット30の低電圧コネクタユニット32に設けられた外部端子323から出力された電力は、DV電線50からリレーボックス60に送電され、リレーボックス60から車両Vに搭載された各電装品に供給される。
【0053】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態の電力変換装置としてのパワーコントロールユニット30について図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態のパワーコントロールユニット30と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。第1実施形態のパワーコントロールユニット30では、脆弱部322eは、導電部材322の延在方向において、ボルト挿通孔322bとコネクタ部321との間に形成されており、第1切欠部322e1と第2切欠部322e2とを有するものとしたが、第2実施形態のパワーコントロールユニット30では、脆弱部322eの位置及び形状が異なる。以下、第1実施形態のパワーコントロールユニット30と第2実施形態のパワーコントロールユニット30との相違点について詳細に説明する。
【0054】
本実施形態では、脆弱部322eは、ボルト41の軸方向である上下方向から見て、導電部材322の延在方向において、ボルト挿通孔322bの中心に対してコネクタ部321と反対側、すなわち、右後端に位置する導電部材322の右縁部322fからボルト挿通孔322bに連通する切欠溝322e3を有する。
【0055】
そのため、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合、導電部材322は、切欠溝322e3が拡開するように変形し、導電部材322の切欠溝322e3からボルト41が抜脱して、DCDCコンバータ303の出力端子部303aと導電部材322との締結が外れるようになる。これにより、外部から低電圧コネクタユニット32に衝撃等の荷重が入力された場合でも、DCDCコンバータ303に荷重が入力されることをより抑制できる。
【0056】
以上、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0057】
例えば、低電圧コネクタユニット32の外部端子323は、DCDCコンバータ303以外の電子部品と電気的に接続していてもよい。
【0058】
本実施形態では、車両Vは、前輪FWを駆動輪とする、いわゆる前輪駆動車であるものとしたが、車両Vは、後輪RWを駆動輪とする、いわゆる後輪駆動車であってもよいし、前輪FW及び後輪RWの双方を駆動輪とする、いわゆる四輪駆動車であってもよい。車両Vが四輪駆動車である場合、駆動装置20は、駆動力を左右の前輪FWに振り分けるフロントデファレンシャルギヤと後輪RWの車軸とに連結するドライブシャフトを備えていてもよい。この場合、駆動装置20は、フロントデファレンシャルギヤを介して前輪FWを駆動するとともに、フロントデファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して後輪RWを駆動する。そして、駆動装置20は、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を前輪FWに伝達するとともにドライブシャフトを介してエンジン10の回転動力を後輪RWに伝達経路と、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を第1回転電機に伝達して第1回転電機で発電しながら第2回転電機を駆動して、動力伝達機構を介して第2回転電機の回転動力を前輪FWに伝達するとともにドライブシャフトを介して第2回転電機の回転動力を後輪RWに伝達する伝達経路と、を備えていてもよい。この場合、車両Vは、駆動装置20においてこれら2つの伝達経路を択一的に選択又は併用して前輪FW及び後輪RWを駆動して走行する。また、車両Vが四輪駆動車である場合、駆動装置20は、車両Vの後部に第3回転電機を備えており、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を前輪FWに伝達して車両Vを走行させる伝達経路と、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を第1回転電機に伝達して第1回転電機で発電しながら第2回転電機を駆動して動力伝達機構を介して第2回転電機の回転動力を前輪FWに伝達して車両Vを走行させる伝達経路と、に加えて、動力伝達機構を介してエンジン10の回転動力を第1回転電機に伝達して第1回転電機で発電しながら第3回転電機を駆動して第3回転電機の回転動力を後輪RWに伝達して車両Vを走行させる伝達経路をさらに備えていてもよい。この場合、車両Vは、駆動装置20においてこれら3つの伝達経路を1つ以上選択又は併用して、前輪FW、又は、前輪FW及び後輪RWの双方、を駆動して走行する。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 少なくとも1つの電子部品(DCDCコンバータ303)と、
前記電子部品を収容する収容ケース(収容ケース31)と、
前記収容ケースに設けられたコネクタユニット(低電圧コネクタユニット32)と、を備える電力変換装置(パワーコントロールユニット30)であって、
前記コネクタユニットは、外部と電気的に接続する外部端子(外部端子323)が設けられたコネクタ部(コネクタ部321)と、前記コネクタ部から延出して前記コネクタ部と前記電子部品とを電気的に接続する導電部材(導電部材322)と、を有し、
前記導電部材には、脆弱部(脆弱部322e)が形成されている、電力変換装置。
【0061】
(1)によれば、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、導電部材が脆弱部で変形又は破断するので、収容ケースに収容された電子部品に荷重が入力されることを抑制できる。これにより、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、電子部品が損傷することを防止できる。
【0062】
(2) (1)に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部(出力端子部303a)を有し、
前記導電部材は、ボルト(ボルト41)及びナット(可動ナット42)で前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部(接続端子部322a)を有し、
前記ナットは、前記収容ケースに取り付けられ、前記ボルトの軸方向に移動可能な可動ナットである、電力変換装置。
【0063】
(2)によれば、ボルトと螺合するナットが、ボルトの軸方向に移動可能な可動ナットであることによって、ボルト及びナットで導電部材の接続端子部を電子部品の出力端子部に締結する際に、ボルトの軸力で導電部材及び電子部品の出力端子部が変形することを防止できる。
【0064】
(3) (1)に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部(出力端子部303a)を有し、
前記導電部材は、ボルト(ボルト41)及びナット(可動ナット42)で前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部(接続端子部322a)を有し、
前記導電部材は、前記電子部品から延出する前記出力端子部の延出方向の中心線(中心線CL1)に対して、前記導電部材の延在方向の中心線(中心線CL2)が所定角度傾斜するように延在する、電力変換装置。
【0065】
(3)によれば、導電部材は、導電部材の延在方向の中心線が、出力端子部の延出方向の中心線に対して所定角度傾斜して延在するため、導電部材の延在方向の中心線の出力端子部の延出方向の中心線に対する傾斜方向側から衝撃等の荷重が入力される場合、電子部品の出力端子部よりも、導電部材に優先的に応力が発生し、且つ、導電部材に大きな応力が発生する。これにより、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合に、電子部品の出力端子部に発生する応力を低減することができ、電子部品が損傷することをより防止できる。
【0066】
(4) (1)に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部(出力端子部303a)を有し、
前記導電部材は、ボルト(ボルト41)及びナット(可動ナット42)で前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部(接続端子部322a)を有し、
前記接続端子部には、前記ボルトが挿通するボルト挿通孔(ボルト挿通孔322b)が形成されており、
前記脆弱部は、前記導電部材の延在方向において、前記ボルト挿通孔と前記コネクタ部との間に形成されている、電力変換装置。
【0067】
(4)によれば、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合、導電部材が、ボルト挿通孔とコネクタ部との間に形成された脆弱部で変形又は破断するので、電子部品の出力端子部と接続する導電部材の接続端子部が変形することが抑制される。これにより、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、電子部品に荷重が入力されることをより抑制できる。
【0068】
(5) (4)に記載の電力変換装置であって、
前記脆弱部は、第1切欠部(第1切欠部322e1)と第2切欠部(第2切欠部322e2)とを有し、
前記第1切欠部は、前記ボルトの軸方向であるボルト軸方向から見て、前記導電部材の延出方向に延在する前記導電部材の第1縁部(前縁部322c)に形成されており、
前記第2切欠部は、前記ボルト軸方向から見て、前記第1縁部と対向して前記導電部材の延出方向に延在する前記導電部材の第2縁部(後縁部322d)に形成されており、
前記第1切欠部と前記第2切欠部とは、切り欠きの深さが異なる、電力変換装置。
【0069】
(5)によれば、第1切欠部と第2切欠部とは、切り欠きの深さが異なるので、第1切欠部及び第2切欠部のうち、切り欠きの深さが深い切欠部が形成されている側の方向から衝撃等の荷重が入力される場合に、導電部材が第1切欠部及び第2切欠部のうち、切り欠きの深さが深い切欠部がより破断しやすくなる。これにより、電子部品に荷重が入力されることをより抑制できる。
【0070】
(6) (1)に記載の電力変換装置であって、
前記電子部品は、前記電子部品から延出して電力を出力する出力端子部(出力端子部303a)を有し、
前記導電部材は、ボルト(ボルト41)及びナット(可動ナット42)で前記電子部品の前記出力端子部に締結される接続端子部(接続端子部322a)を有し、
前記接続端子部には、前記ボルトが挿通するボルト挿通孔(ボルト挿通孔322b)が形成されており、
前記脆弱部は、前記ボルトの軸方向であるボルト軸方向から見て、前記導電部材の延在方向において、前記ボルト挿通孔の中心に対して前記コネクタ部と反対側に位置する前記導電部材の端縁(右縁部322f)から前記ボルト挿通孔に連通する切欠溝(切欠溝322e3)を有する、電力変換装置。
【0071】
(6)によれば、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合、導電部材は、切欠溝が拡開するように変形し、導電部材の切欠溝からボルトが抜脱して、電子部品の出力端子部と導電部材との締結が外れるようになる。これにより、外部からコネクタユニットに衝撃等の荷重が入力された場合でも、電子部品に荷重が入力されることをより抑制できる。
【符号の説明】
【0072】
30 パワーコントロールユニット(電力変換装置)
303 DCDCコンバータ(電子部品)
303a 出力端子部
31 収容ケース
32 低電圧コネクタユニット(コネクタユニット)
321 コネクタ部
322 導電部材
322a 接続端子部
322b ボルト挿通孔
322c 前縁部(第1縁部)
322d 後縁部(第2縁部)
322e 脆弱部
322e1 第1切欠部
322e2 第2切欠部
322e3 切欠溝
322f 右縁部(端縁)
323 外部端子
41 ボルト
42 可動ナット(ナット)
CL1 中心線
CL2 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8