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特開2024-44730不揮発性半導体メモリ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044730
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】不揮発性半導体メモリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 51/30 20230101AFI20240326BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/1159
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150447
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP01
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083FR06
5F083GA10
5F083GA21
5F083JA03
5F083JA37
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA40
5F083PR04
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR33
5F101BA00
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH15
5F101BH16
(57)【要約】
【課題】メモリウィンドウを大きくすることが可能で、高サイクル耐性の不揮発性半導体メモリ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施の形態に係る不揮発性半導体メモリは、第1方向に延伸するコア部と、第1方向に延伸し、コア部に接する半導体層と、第1方向に延伸し、半導体層に接する絶縁層と、第1方向に延伸し、絶縁層に接する強誘電体層と、第1方向に直交する第2方向Xに延伸し、強誘電体層に接する第1電位印加電極と、第1電位印加電極と第1方向に隣接し、第2方向に延伸し、強誘電体層に接する第2電位印加電極と、第1電位印加電極と第2電位印加電極との間に配置される絶縁体層と、第1電位印加電極と第2電位印加電極との間に配置され、絶縁体層と強誘電体層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に直交する第1方向に延伸するコア部と、
前記第1方向に延伸し、前記コア部に接する半導体層と、
前記第1方向に延伸し、前記半導体層に接する絶縁層と、
前記第1方向に延伸し、前記絶縁層に接する強誘電体層と、
前記第1方向に直交する第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第1電位印加電極と、
前記第1電位印加電極と前記第1方向に隣接し、前記第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第2電位印加電極と、
前記第1方向に積層され、前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置される絶縁体層と、
前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置され、前記絶縁体層と前記強誘電体層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える、不揮発性半導体メモリ。
【請求項2】
半導体基板に直交する第1方向に延伸するコア部と、
前記第1方向に延伸し、前記コア部に接する半導体層と、
前記第1方向に延伸し、前記半導体層に接する絶縁層と、
前記第1方向に延伸し、前記絶縁層に接する強誘電体層と、
前記第1方向に直交する第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第1電位印加電極と、
前記第1電位印加電極と前記第1方向に隣接し、前記第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第2電位印加電極と、
前記第1方向に積層され、前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置され、かつ前記強誘電体層に接する絶縁体層と、
前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に前記強誘電体層に埋め込まれて配置され、かつ前記絶縁層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える、不揮発性半導体メモリ。
【請求項3】
前記強誘電体層は、HfとZrを主成分とする酸化物であり、
前記反強誘電体層は、HfとZrを主成分とする酸化物であり、
前記反強誘電体層は、前記強誘電体層よりもSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い、請求項1又は2に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項4】
前記強誘電体層の結晶構造は直方晶を主成分の一つであり、
前記反強誘電体層の結晶構造は正方晶を主成分の一つである、請求項3に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項5】
半導体基板に直交する第1方向に延伸するコア部と、
前記第1方向に延伸し、前記コア部の外周を覆う円筒形状の半導体層と、
前記第1方向に延伸し、前記半導体層の外周を覆う絶縁層と、
前記第1方向に延伸し、前記絶縁層の外周を覆う強誘電体層と、
前記第1方向に直交する第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第1電位印加電極と、
前記第1電位印加電極と前記第1方向に隣接し、前記第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第2電位印加電極と、
前記第1方向に積層され、前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置される絶縁体層と、
前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置され、前記絶縁体層と前記強誘電体層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える、不揮発性半導体メモリ。
【請求項6】
半導体基板に直交する第1方向に延伸するコア部と、
前記第1方向に延伸し、前記コア部の外周を覆う円筒形状の半導体層と、
前記第1方向に延伸し、前記半導体層の外周を覆う絶縁層と、
前記第1方向に延伸し、前記絶縁層の外周を覆う強誘電体層と、
前記第1方向に直交する第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第1電位印加電極と、
前記第1電位印加電極と前記第1方向に隣接し、前記第2方向に延伸し、前記強誘電体層に接する第2電位印加電極と、
前記第1方向に積層され、前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置され、かつ前記強誘電体層に接する絶縁体層と、
前記第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に前記強誘電体層に埋め込まれて配置され、かつ前記絶縁層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える、不揮発性半導体メモリ。
【請求項7】
前記強誘電体層は、HfとZrを主成分とする酸化物であり、
前記反強誘電体層は、HfとZrを主成分とする酸化物であり、
前記反強誘電体層は、前記強誘電体層よりもSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い、請求項5又は6に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項8】
前記強誘電体層の結晶構造は直方晶を主成分の一つであり、
前記反強誘電体層の結晶構造は正方晶を主成分の一つである、請求項7に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項9】
前記第1方向に延伸する前記半導体層と、
前記第1方向に延伸し、前記半導体層に接する前記絶縁層と、
前記第2方向に延伸し、前記絶縁層に接する第3電位印加電極とを備える第1選択トランジスタと、
前記第1選択トランジスタ、及び複数の前記メモリセルを備え、複数の前記メモリセルは、前記第1方向に直列に接続され、第1端部に設けられる前記メモリセルの一端に前記第1選択トランジスタが接続され、第2端部に設けられる前記メモリセルの一端に第4電位印加電極が接続されるメモリセルストリングと
を更に備える、請求項5又は6に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項10】
前記第1選択トランジスタの他端に接続され、前記第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向と、に直交する第3方向に延伸する第5電位印加電極と、
複数の前記第5電位印加電極のうち、一部の前記第5電位印加電極に対して、前記第5電位印加電極と前記第4電位印加電極の間に電圧を印可して選択的に読み出し動作、または書き込み動作を行うシーケンサと、
を更に備える、請求項9に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項11】
第1絶縁体層と第2絶縁体層の積層体に開口部を形成し、
前記開口部の前記第1絶縁体層をエッチングにより後退させ、前記開口部の内面にアモルファスの第1HZO層を形成し、
前記開口部の前記第1HZO層を平坦化し、
第1熱処理により第1HZO層を結晶化し、
前記開口部の前記第1HZO層の上にアモルファスの第2HZO層を形成し、
第2熱処理により、前記第2HZO層を結晶化し、
前記開口部の前記第2HZO層の上に半導体層及びコア部を順次形成し、
前記積層体において、前記第2絶縁体層をエッチングより選択的に除去し、
前記第2絶縁体層を除去後に露出する前記第1絶縁体層の間に電極層を形成する、不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項12】
結晶化された前記第2HZO層の上に絶縁層を形成し、
前記半導体層及びコア部は、前記絶縁層の上に順次形成し、
前記第1絶縁体層の間に金属層を形成し、
前記電極層は、前記金属層の上に形成する、請求項11に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項13】
前記半導体層及び前記コア部を形成した後、第3熱処理を実施する、請求項12に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項14】
第1絶縁体層と第2絶縁体層の積層体に開口部を形成し、
前記開口部の前記第1絶縁体層をエッチングにより後退させ、前記開口部の内面にアモルファスの第2HZO層を形成し、
前記開口部の前記第2HZO層の上に第1HZO層を形成し、
前記開口部の前記第1HZO層及び前記第2HZO層を平坦化し、第2HZO層及び前記第1HZO層を露出し、
第4熱処理により前記第1HZO層及び前記第2HZO層を結晶化し、
前記開口部の前記第1HZO層及び前記第2HZO層の上に半導体層及びコア部を順次形成し、
前記積層体において、前記第2絶縁体層をエッチングより選択的に除去し、
前記第2絶縁体層を除去後に露出する前記第1絶縁体層の間に電極層を形成する、不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項15】
結晶化された前記第1HZO層及び前記第2HZO層の上に絶縁層を形成し、
前記半導体層及びコア部は、前記絶縁層の上に順次形成し、
前記第1絶縁体層の間に金属層を形成し、
前記電極層は、前記金属層の上に形成する、請求項14に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項16】
前記半導体層及び前記コア部を形成した後、第5熱処理を実施する、請求項15に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項17】
前記第1HZO層は、前記第2HZO層よりもSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い、請求項11又は14に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項18】
前記第1熱処理によって、前記第1HZO層には正方晶を主成分の一つとする反強誘電体が形成され、前記第2熱処理によって、前記第2HZO層には直方晶を主成分の一つとする強誘電体が形成される、請求項11に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項19】
前記第2HZO層に電圧を印加して、ウェークアップを実施する、請求項11又は14に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【請求項20】
前記第2HZO層に対する分極反転のサイクル回数を増大させて、ウェークアップを実施する、請求項11又は14に記載の不揮発性半導体メモリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、不揮発性半導体メモリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリが不揮発性メモリとして注目されている。強誘電体メモリには、例えば、メモリセルトランジスタのゲート絶縁層を強誘電体層とする3端子型のメモリや、2つの電極間に強誘電体層を設ける2端子型のメモリがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-169573号公報
【特許文献2】米国特許第10468495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施の形態が解決しようとする課題は、メモリウィンドウを大きくすることが可能で、高サイクル耐性の不揮発性半導体メモリ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施の形態に係る不揮発性半導体メモリは、半導体基板に直交する第1方向に延伸するコア部と、第1方向に延伸し、コア部に接する半導体層と、第1方向に延伸し、半導体層に接する絶縁層と、第1方向に延伸し、絶縁層に接する強誘電体層と、第1方向に直交する第2方向に延伸し、強誘電体層に接する第1電位印加電極と、第1電位印加電極と第1方向に隣接し、第2方向に延伸し、強誘電体層に接する第2電位印加電極と、第1方向に積層され、第1電位印加電極と第2電位印加電極との間に配置される絶縁体層と、第1電位印加電極と前記第2電位印加電極との間に配置され、絶縁体層と強誘電体層に接する反強誘電体層とを備えるメモリセルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】強誘電体の電流電圧特性と分極特性。
図2】反強誘電体の電流電圧特性と分極特性。
図3A】強誘電体及び反強誘電体において、サイクル数=1回とサイクル数=10M回の場合の分極特性例。
図3B】強誘電体と反強誘電体のウェークアップ特性の効果の説明図。
図4】反強誘電体の電流電圧特性例(実験結果)(破線:サイクル数=1回の例、実線:サイクル数=10M回の例)。
図5】強誘電体と強誘電体の混在状態のサイクル特性例(実験結果)(WA:サイクル数=1回近傍の場合、WP:サイクル数=100K回近傍の場合のウェークアップ)。
図6】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのブロック図。
図7】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイの等価回路図。
図8】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイの一部の模式図。
図9図8のI―I線に沿う断面図。
図10図8のII―II線に沿う断面図。
図11】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図12】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図13】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図14】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図15】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図16】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図17】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図18】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図19】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図20】第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図21】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイの一部の模式図。
図22図21のIII―III線に沿う断面図。
図23】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図24】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図25】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図26】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図27】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図28】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
図29】第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0008】
以下の説明においては、XY平面に広がる半導体基板に垂直な方向をZ方向、Z方向に直交し、ワード線WLの延伸する方向をX方向、Z方向及びX方向に垂直なビット線BLの延伸する方向をY方向とする。
【0009】
本明細書中の不揮発性半導体メモリを構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy EDX)により行うことが可能である。また、不揮発性半導体メモリを構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、不揮発性半導体メモリを構成する部材の結晶系の同定、結晶系の存在割合の大小比較には、例えば、電子線回折(Electron Diffraction)を用いることが可能である。
【0010】
本明細書中「反強誘電体」とは、電場がなくても正負イオンの変位は起こっているが全体としての電気双極子モーメントが打ち消されている物質を意味する。「強誘電体」とは、外部から電場を印加せずとも自発的な分極(自発分極)があり、外部から電場を印加すると分極が反転する物質を意味する。
【0011】
(強誘電体と反強誘電体の特性例)
強誘電体メモリは、強誘電体の分極反転を利用して、メモリセルへのデータの書き込み、及び、メモリセルのデータの消去を行う。
【0012】
例えば、以下に示す3端子型の強誘電体メモリ(第1~第2の実施の形態に係る不揮発性半導体メモリ)では、メモリセルトランジスタのゲート絶縁層の分極反転状態を、ゲート電極と半導体層の間に印加する電圧によって制御する。ゲート絶縁層の分極反転状態により、メモリセルトランジスタの閾値電圧が変化する。
【0013】
メモリセルトランジスタの閾値電圧が変化することで、メモリセルトランジスタのドレイン電流が変化する。例えば、閾値電圧が高くオン電流が低い状態をデータ“0”、閾値電圧が低くオン電流が高い状態をデータ“1”と定義すると、メモリセルは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0014】
3端子型の強誘電体メモリでは、オン電流が低い状態である書き込み後の閾値電圧とオン電流が高い状態である読み出し時の閾値電圧との差、いわゆるメモリウィンドウ(MW)を大きくすることが望まれる。
【0015】
図1Aは、強誘電体の電流電圧特性と分極特性である。電流電圧特性は破線で示され、分極特性は実線で示される。分極特性は分極電荷量ΔQと電圧(V)の関係を示し、電流電圧特性の積分値として表される。強誘電体の電流電圧特性では、正電圧側と負電圧側でそれぞれ1つの電流ピークが表れ、この特性を反映して、図1Aに示される分極特性が得られる。図1Aにおいて、P1、P0は、電圧0Vでの分極電荷量ΔQを表している。-Vc、+Vcは、電流Iがゼロとなる負の電圧値、正の電圧値をそれぞれ表している。
【0016】
図1Bは、反強誘電体の電流電圧特性と分極特性である。電流電圧特性は破線で示され、分極特性は実線で示される。反強誘電体の電流電圧特性では、正の電圧側と負の電圧側でそれぞれ2つの電流ピークが表れ、この特性を反映して、図1Bに示される分極特性が得られる。図1Bにおいて、電圧0Vでの分極電荷量ΔQは、略ゼロを表している。
【0017】
強誘電体の場合は、電界を強めるとともに分極が大きくなり、電界をゼロにしても、最大値に近い分極が残る。この残留分極が、強誘電体の大きな特徴であり、不揮発性メモリの原理でもある。これに対して反強誘電体の場合は、電界を強めるとともに分極が大きくなるものの、電界をゼロにすると分極はほぼゼロになる。残留分極は持たない。ただし、電界を強めるときには分極がなかなか大きくならず、電界を最大にしてから弱めていくときには分極がなかなか小さくならない。ヒステリシス(履歴)効果がある。このため電圧と分極電荷量ΔQが作る曲線は、2つのひし形をつなげたような形状(「バタフライ曲線」とも呼ばれる)になる。
【0018】
(強誘電体のサイクル特性)
HZOを主成分とする強誘電体の分極反転の電荷量ΔQとサイクル数との関係を表すサイクル特性の実験結果では、分極反転電荷量はサイクル数の増加に伴い減少しており、100K回程度で10%程度の分極反転の電荷量が減少した。電気的なストレスで分極反転しなくなるドメイン(分極疲労したドメイン)は高い電圧を印加しても反転しない。このため、サイクル増加と共に分極反転するドメイン比率が減少した。
【0019】
反転しなくなるドメイン比率の増加を改善する方法として、本発明者は、強誘電体膜中に反強誘電体のドメインを混在させた状態を形成することでサイクル耐性が向上することを確認した。
【0020】
強誘電体メモリにおいて、強誘電体膜の劣化により、メモリウィンドウ(MW)が消失するが、強誘電体膜中に強誘電体と反強誘電体のドメインを混在させることでサイクル耐性が向上すると共に、メモリウィンドウを大きくすることができる。メモリウィンドウを大きくすることで、例えば、強誘電体メモリの動作が安定化する。
【0021】
(サイクル耐性を改善する方法)
(強誘電体と強誘電体の混在状態のサイクル特性)
図3Aは、強誘電体及び反強誘電体において、サイクル数=1回とサイクル数=10M回の場合の分極特性例である。破線は、サイクル数=1回の場合の反強誘電体の分極特性である。実線は、サイクル数=10M回の場合の強誘電体及び反強誘電体の分極特性である。尚、サイクル数=1回の場合の強誘電体の分極特性は、図示を省略している。サイクル数=10M回の場合の強誘電体及び反強誘電体の分極特性は、ウェークアップ後の特性に対応している。
【0022】
印加電圧0Vにおいて、PAF0とPAF1は、サイクル数=1回の場合の強誘電体と反強誘電体が混在した状態の残留分極に対応している。PFE0とPFE1は、サイクル数=10M回の場合の強誘電体と反強誘電体が混在した状態の残留分極に対応している。
【0023】
印加電圧0Vにおいて、PFE0とPFE1の差ΔFEは、サイクル数=10M回の場合の強誘電体の分極電荷量の増大分も表している。図3Aに示すように、サイクル数の増加と共にΔFEは増加している。
【0024】
印加電圧V1において、PAF2とPAF3の差ΔAF1は、サイクル数=1回の場合の反強誘電体の分極電荷量の増大分を表している。印加電圧V1において、PAF4とPAF5の差ΔAF2は、サイクル数=10M回の場合の反強誘電体の分極電荷量の増大分を表している。図3Aに示すように、ΔAF2<ΔAF1であることから、サイクル数の増加と共に反強誘電体の分極電荷量の増大分は、減少している。このように、印加電圧及び/又はサイクル数を増大することによって、今まで残留分極がなかった、分極反転しなかったドメインを分極反転して、反強誘電体の分極電荷量を減少させ、強誘電体の分極電荷量を増大することがウェークアップ(WAKEUP)と呼ばれる。
【0025】
図3Bは、強誘電体と反強誘電体のウェークアップ特性の効果の説明図である。PとQは、ウェークアップ前後におけるドメインの状態を模式的に示している。FEは強誘電体のドメイン領域、AFは反強誘電体のドメイン領域を表す。FE+AFは、強誘電体と反強誘電体の混在状態のドメイン領域を表す。強誘電体及び反強誘電体の混在状態において、ウェークアップによりサイクル数を増大することで、強誘電体及び反強誘電体の混在状態FE+AFは減少し、強誘電体のドメイン領域FEが増加し、反強誘電体のドメイン領域AFは減少している。ここで、ドメインとは強誘電体のドメイン領域FE、反強誘電体のドメイン領域AFであり、いずれも多結晶の結晶粒であり、サイズは例えば約30nm~40nm程度である。強誘電体のドメイン領域FE、反強誘電体のドメイン領域AFとは、この分極反転する結晶粒になる。強誘電体膜中に反強誘電体のドメインを隣接設置するとは、異なる結晶粒を隣接配置することになる。
【0026】
(反強誘電体の電流電圧特性)
図4は、反強誘電体の電流電圧特性例(実験結果)である。破線は、サイクル数=1回の例、実線は、サイクル数=10M回の例である。
【0027】
HZO膜において、サイクル数をパラメータとして電流電圧特性を測定したところ、10M回のサイクル数で絶縁破壊を確認した。一方、HZO膜にSiを1%以上6%以下の範囲で添加した結果、図4に示すように、典型的な反強誘電体の電流電圧特性が得られた。しかも、サイクル数をパラメータとして電流電圧特性を測定したところ、図4に示すように、10M回のサイクル数でも絶縁破壊には至らず、良好な反強誘電体の電流電圧特性が得られた。また、HZO膜にSiを過剰に添加すると、反強誘電体特性が消失しすることも確認されている。
【0028】
本発明者の実験結果では、HZO膜にSiを1%以上6%以下の範囲で添加することで反強誘電体の結晶を安定的に形成することができることが確認された。また、Siを添加したHZOは、反強誘電性を示し、かつSiを添加していないHZOと比較して耐圧も向上することが確認された。
【0029】
(反強誘電体層を作る方法)
強誘電体であるHZO膜に1%以上6%以下の範囲でSi又はAlを添加することで反強誘電体の結晶を安定して形成することができる。反強誘電体の結晶状態は良好であり、リーク特性が向上し、耐圧特性も向上している。Si又はAlは、HZOの形成時に原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)で層状に形成することができる。また、後述する第2の実施の形態の例では、SiO又はSiNを含む絶縁層14からのSiの熱拡散により、HZOにSiを添加することもできる。
【0030】
様々な実験結果により、本発明者は、実施の形態に係る不揮発性半導体メモリでは、強誘電体と強誘電体を隣接して作り分ける構造において、強誘電体膜はHfとZrを主成分とする酸化物で、かつ、反強誘電体膜はHfとZrを主成分とする酸化物で強誘電体膜よりも反強誘電体膜の方がSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い、ことが望ましいことを見出した。
【0031】
図5は、強誘電体と強誘電体の混在状態のサイクル特性例である。印加電圧は3V一定において、WAは、サイクル数=1回近傍の場合、WPは、サイクル数=100K回近傍の場合のウェークアップ状態に対応する。WAからWPまでサイクル数の増大と共に分極電荷量ΔQが徐々に増大している。サイクル数の増大と共に反強誘電体のドメイン領域AFは減少し、強誘電体のドメイン領域FEが増加する傾向に対応している。図5に示す結果より、サイクル数=100K回以降は電圧3Vに保持した状態で分極電荷量ΔQを略一定に保持していることから、高サイクル耐性が得られていることがわかる。図5に示すように強誘電体と反強誘電体の混在状態を形成することでサイクル数=1G回で、ΔQ3(a.u.)を達成可能であることが確認された。また、ウェークアップで強誘電体化したドメイン領域は2週間後も保持されており、サイクル数=1G回後も安定して反転することが確認されている。尚、サイクル数=100K回近傍の場合のウェークアップ状態WPを加速するために、更に印加電圧を所定値以上に増加させても良い。ウェークアップは電圧で加速するため、分極反転電荷量を安定化させる初期化動作を高い電圧で行い、メモリ動作は低い電圧で行ってもよい。これによりウェークアップ(初期化動作)のサイクル回数を低減できる。
【0032】
強誘電体と強誘電体の混在状態を形成するために、強誘電体と強誘電体を隣接して作り分ける構造を用いることにより、メモリウィンドウを大きくすることが可能で、高サイクル耐性の不揮発性半導体メモリを提供することができる。
【0033】
強誘電体と強誘電体の混在状態を形成するためには、例えばHZO層に局所的にSiを1%以上6%以下の範囲で添加した領域と局所的にSiを無添加の領域とを混在させるようにしても良い。また、後述するように、Siを層状に形成しても良い。
【0034】
(第1の実施形態)
図6は、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1の構成例を説明するためのブロック図である。図6に示されるように、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、メモリコントローラ2に電気的に結合される。
【0035】
メモリコントローラ2は、コマンドCMD、アドレス情報ADD及び各種の制御信号CNTを第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1に送る。
【0036】
不揮発性半導体メモリ1は、コマンドCMD、アドレス情報ADD及び各種の制御信号CNTを受ける。データDATは、不揮発性半導体メモリ1とメモリコントローラ2との間で、転送される。以下において、書き込み動作時に、メモリコントローラ2から不揮発性半導体メモリ1に転送されるデータDATは、書き込みデータとよばれる。書き込みデータDATは、不揮発性半導体メモリ1内に書き込まれる。読み出し動作時に、不揮発性半導体メモリ1からメモリコントローラ2に転送されるデータDATは、読み出しデータとよばれる。読み出しデータDATは不揮発性半導体メモリ1から読み出される。
【0037】
第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、例えば、メモリセルアレイ100、コマンドレジスタ110、アドレスレジスタ120、ロウ制御回路140、センスアンプ回路150、ドライバ回路160、及びシーケンサ190を含む。
【0038】
メモリセルアレイ100は、データを記憶する。メモリセルアレイ100内に、複数のビット線及び複数のワード線が設けられる。メモリセルアレイ100は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含んでいる。ブロックBLKは、複数のメモリセルの集合である。各メモリセルは、1つのビット線と1つのワード線とに関連付けられている。メモリセルアレイ100の構成は後述される。
【0039】
コマンドレジスタ110は、メモリコントローラ2からのコマンドCMDを保持する。コマンドCMDは、例えばシーケンサ190に読み出し動作、書き込み動作、及び消去動作等を実行させる命令を含んでいる。
【0040】
アドレスレジスタ120は、メモリコントローラ2からのアドレス情報ADDを保持する。アドレス情報ADDは、例えばブロックアドレス、ページアドレス、及びカラムアドレスを含んでいる。例えば、ブロックアドレス、ページアドレス、及びカラムアドレスは、ブロックBLK、ワード線、及びビット線の選択にそれぞれ使用される。以下において、ブロックアドレスに基づいて選択されたブロックは、選択ブロックとよばれる。ページアドレスに基づいて選択されたワード線は、選択ワード線とよばれる。
【0041】
ロウ制御回路140は、メモリセルアレイ100のロウに関する動作を制御する。ロウ制御回路140は、アドレスレジスタ120内のブロックアドレスに基づいて、メモリセルアレイ100内の1つのブロックBLKを選択する。ロウ制御回路140は、例えば選択ワード線に対応する配線に印加された電圧を、選択ブロックBLK内の選択ワード線に転送する。
【0042】
センスアンプ回路150は、メモリセルアレイ100のカラムに関する動作を制御する。センスアンプ回路150は、書き込み動作において、メモリコントローラ2からの書き込みデータDATに応じて、メモリセルアレイ100内に設けられたビット線BLのそれぞれに電圧を印加する。センスアンプ回路150は、読み出し動作において、ビット線BLの電位(又は、電流の発生の有無)に基づいてメモリセルMCに記憶されたデータを判定する。センスアンプ回路150は、この判定結果に基づいたデータを、読み出しデータとしてメモリコントローラ2に転送する。
【0043】
ドライバ回路160は、読み出し動作、書き込み動作、消去動作等で使用される電圧を、メモリセルアレイ100に出力する。ドライバ回路160は、アドレスレジスタ120内のアドレスに基づいて、例えば、ワード線及びビット線などに対応する配線に所定の電圧を、印加する。
【0044】
シーケンサ190は、不揮発性半導体メモリ1全体の動作を制御する。例えば、シーケンサ190は、コマンドレジスタ110内のコマンドCMDに基づいて各回路を制御する。
【0045】
例えば、不揮発性半導体メモリ1とメモリコントローラ2との間の通信は、NANDインターフェイス規格によってサポートされている。この場合において、不揮発性半導体メモリ1とメモリコントローラ2との間の通信において、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、リードイネーブル信号REn、レディビジー信号RBn、及び入出力信号IOが使用される。
【0046】
コマンドラッチイネーブル信号CLEは、不揮発性半導体メモリ1が受けた入出力信号IOがコマンドCMDであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、不揮発性半導体メモリ1が受けた信号IOがアドレス情報ADDであることを示す信号である。ライトイネーブル信号WEnは、入出力信号IOの入力を不揮発性半導体メモリ1に命令する信号である。リードイネーブル信号REnは、入出力信号I/Oの出力を不揮発性半導体メモリ1に命令する信号である。
【0047】
レディビジー信号RBnは、不揮発性半導体メモリ1がメモリコントローラ2からの命令を受け付けるレディ状態であるか、命令を受け付けないビジー状態であるかを、メモリコントローラ2に通知する信号である。入出力信号IOは、例えば8ビット幅の信号であり、コマンドCMD、アドレス情報ADD、データDAT等を含み得る。
【0048】
尚、不揮発性半導体メモリ1は、入出力回路(図示せず)及び電圧生成回路(図示せず)などをさらに含んでいてもよい。入出力回路は、不揮発性半導体メモリ1とメモリコントローラとの間における、不揮発性半導体メモリ1側のインターフェイス回路として機能する。電圧生成回路は、不揮発性半導体メモリ1の各種の動作のための複数の電圧を、生成する。
【0049】
(等価回路)
図7は、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイ100の等価回路図である。メモリセルアレイ100は、メモリセルトランジスタMTが立体的に配置された三次元構造を備える。メモリセルアレイ100は、図7に示すようにワード線WL1、ワード線WL2を含む複数のワード線WLと、半導体ピラーSP1、半導体ピラーSP2を含む複数の半導体ピラーSPと、共通ソース線CSLと、ソース選択ゲート線SGSと、複数のドレイン選択ゲート線SGDと、複数のビット線BLと、複数のメモリストリングMSとを備える。図7に示すように、メモリストリングMSは、共通ソース線CSLとビット線BLとの間に直列接続されたソース選択トランジスタSSTと、複数のメモリセルトランジスタMTと、及びドレイン選択トランジスタSDTとを備える。
【0050】
図8は、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1のメモリセルアレイの一部の模式図である。また、図9は、図8のI―I線に沿う断面図である。図10は、図8のII―II線に沿う断面図である。
【0051】
第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図8図10に示すように、コア部10と、半導体層16と、絶縁層14と、強誘電体層13と、第1電位印加電極12WL1と、第2電位印加電極12WL2と、絶縁体層18と、反強誘電体層15とを備えるメモリセルMCを備える。コア部10は、半導体基板(図示省略)に直交するZ方向に延伸する。半導体層16は、Z方向に延伸し、コア部10に接する。絶縁層14は、Z方向に延伸し、半導体層16に接する。強誘電体層13は、Z方向に延伸し、絶縁層14に接する。第1電位印加電極12WL1は、Z方向に直交するX方向に延伸し、強誘電体層13に接する。第2電位印加電極12WL2は、第1電位印加電極12WL1とZ方向に隣接し、X方向に延伸し、強誘電体層13に接する。絶縁体層18は、Z方向に積層され、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置される。反強誘電体層15は、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置され、絶縁体層18と強誘電体層13に接する。尚、反強誘電体層15と接触した強誘電体層13の領域は結晶化過程で反強誘電体層15の結晶構造の影響を受け反強誘電体になってもよい。また、第1電位印加電極12WL1若しくは第2電位印加電極12WL2と、チャネル(半導体層16)間の強誘電体層13は強誘電体であり、反強誘電体層15とチャネル間の強誘電体層13は強誘電体であってもよいし、反強誘電体であってもよい。
【0052】
第1電位印加電極12WL1は、強誘電体層13にバリアメタル層11を介して接していても良い。第2電位印加電極12WL2は、強誘電体層13にバリアメタル層11を介して接していても良い。反強誘電体層15は、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間にバリアメタル層11を介して配置されていても良い。
【0053】
第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリにおいて、強誘電体層13及び反強誘電体層15は、共にHfとZrを主成分とする酸化物である。また、反強誘電体層15は、強誘電体層13よりもSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い。
【0054】
第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリにおいて、強誘電体層13の結晶構造は直方晶を主成分の一つであり、反強誘電体層15の結晶構造は正方晶を主成分の一つである。
【0055】
また、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図8図10に示すように、Z方向に延伸するコア部10と、Z方向に延伸し、コア部10の外周を覆う円筒形状の半導体層16と、Z方向に延伸し、半導体層16の外周を覆う絶縁層14と、Z方向に延伸し、絶縁層14の外周を覆う強誘電体層13と、Z方向に直交するX方向に延伸し、強誘電体層13に接する第1電位印加電極12WL1と、第1電位印加電極12WL1とZ方向に隣接し、X方向に延伸し、強誘電体層13に接する第2電位印加電極12WL2と、Z方向に積層され、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置される絶縁体層18と、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置され、絶縁体層18と強誘電体層13に接する反強誘電体層15とを備えるメモリセルMCを備えていても良い。
【0056】
また、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図7に示すように、Z方向に延伸する半導体層16と、Z方向に延伸し、半導体層16に接する絶縁層14と、X方向に延伸し、絶縁層14に接する第3電位印加電極SGDとを備える第1選択トランジスタSDTと、第1選択トランジスタSDT、及び複数のメモリセルMCを備え、複数のメモリセルMCは、Z方向に直列に接続され、第1端部に設けられるメモリセルMCの一端に第1選択トランジスタSDTが接続され、第2端部に設けられるメモリセルMCの一端に第4電位印加電極CSLが接続されるメモリセルストリングMSとを更に備える。
【0057】
また、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図6及び図7に示すように、第1選択トランジスタSDTの他端に接続され、Z方向と、Z方向に直交するX方向と、に直交するY方向に延伸する第5電位印加電極BLと、複数の第5電位印加電極BLのうち、一部の第5電位印加電極BLに対して、第5電位印加電極BLと第4電位印加電極CSLの間に電圧を印可して選択的に読み出し動作、または書き込み動作を行うシーケンサ190と、を更に備える。
【0058】
ワード線WLは、金属窒化物であることが好ましい。例えば、ワード線WLは、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、又は、窒化タンタル(TaN)であることが好ましい。ワード線WLは、特に、窒化チタン(TiN)であることが好ましい。ワード線WLは、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(R u)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、又は、白金(Pt)であっても良い。
【0059】
ビット線BLは低抵抗化の観点から金属であることが好ましい。低抵抗で、かつ、既存の半導体装置の製造プロセスとの整合性が良いことから、ビット線BLは、タングステン(W)又は窒化チタン(TiN)を含むことが好ましい。ビット線BLは、例えば、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、又は、白金(Pt)であっても良い。
【0060】
(製造方法)
第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1の製造方法は、絶縁体層18と絶縁体層20の積層体に開口部54を形成し、開口部54の絶縁体層18をエッチングにより後退させ、開口部54の内面にアモルファスの第1HZO層15を形成し、開口部54の第1HZO層15を平坦化し、第1熱処理により第1HZO層15を結晶化し、開口部54の第1HZO層15の上にアモルファスの第2HZO層13を形成し、第2熱処理により、第2HZO層13を結晶化し、開口部54の第2HZO層13の上に半導体層16及びコア部10を順次形成する。更に、積層体50において、絶縁体層20をエッチングより選択的に除去し、絶縁体層20を除去後に露出する絶縁体層18の間に電極層12を形成する。
【0061】
また、結晶化された第2HZO層13の上に絶縁層14を形成し、半導体層16及びコア部10は、絶縁層14の上に順次形成し、絶縁体層18の間に金属層11を形成し、電極層12は、金属層11の上に形成しても良い。また、半導体層16及びコア部10を形成した後、第3熱処理を実施しても良い。
【0062】
熱処理によって、第1HZO層15には正方晶を主成分の一つとする反強誘電体が形成され、第2HZO層13には直方晶を主成分の一つとする強誘電体が形成される。
【0063】
また、第2HZO層13に電圧を印加して、ウェークアップを実施することができる。また、第2HZO層13に対する分極反転のサイクル回数を増大させて、ウェークアップを実施しても良い。
【0064】
次に、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1の製造方法を詳細に説明する。図11図20は、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法を示す模式断面図である。図11図20は、それぞれ、図8に対応する断面を示す。
【0065】
最初に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層18と窒化シリコン層20と交互に積層する(図11)。酸化シリコン層18と窒化シリコン層20により積層体50が形成される。酸化シリコン層18と窒化シリコン層20は、例えば、化学的気相堆積法(CVD:Chemical Vapor Deposition)により形成する。酸化シリコン層18は、最終的に層間絶縁層となる。尚、後述するように、Wをリプレイス形成する場合は、酸化シリコン層18と窒化シリコン層20を積層化する。Wをリプレイス形成しない場合は、酸化シリコン層18とポリシリコン層0を積層化する。以下、Wをリプレイス形成する場合について製造工程を説明する。
【0066】
次に、酸化シリコン層18と窒化シリコン層20に開口部54を形成する(図12)。開口部54は、例えば、リソグラフィ法と反応性イオンエッチング法(RIE:Reactive Ion Etching)により形成する。
【0067】
次に、エッチングにより、酸化シリコン層18の厚さを後退させる(図13)。酸化シリコン層18を後退させた部分の厚さは、ΔEで示されている。
【0068】
次に、開口部54の内面に、反強誘電体層15を形成する(図14)。反強誘電体層15は、例えば、Si添加のHfZrOで形成する。具体的には、反強誘電体層15は、例えば、Si、Al、Ge、若しくはGaの濃度が1%以上6%以下の範囲で添加されたHfZrOにより形成する。反強誘電体層15は、例えば、ALDにより形成する。例えば、Siの添加方法としては、HfをALDで形成して酸化し、ZrをALDで形成して酸化し、これらを繰り返して積層化し、その中にSiをALDで形成した層を形成した後、熱処理する。この結果、HfZrOにSiを1%以上6%以下の範囲で添加した反強誘電体層15を形成することができる。この場合、Siは層状に形成される。Al、Ge、若しくはGaの添加方法も同様である。
【0069】
次に、摺り切り加工によって、開口部54の内面の反強誘電体層15を平坦化する(図15)。結果として、図15に示すように、開口部54の内面において、反強誘電体層15と窒化シリコン層20は面一となり、開口部54の内面に窒化シリコン層20が露出する。また、開口部の内面に反強誘電体層15を形成し、開口部の反強誘電体層15を平坦化し、熱処理により反強誘電体層15を結晶化しても良い。熱処理の温度は、例えば、約600℃~900℃程度である。以上の工程において、熱処理により反強誘電体層15を結晶化した後に強誘電体層13を形成する場合、その後の熱処理によって、強誘電体層13は、反強誘電体層15の結晶性を保持して形成される。このため、反強誘電体層15をテンプレートとして用いることができる。Si又はAlドープの反強誘電体層15をテンプレートにすることで、ワード線WLとなる電極層12/半導体層16間のみ強誘電体層13を形成することができる。Si又はAlドープの第1HZO層を先に結晶化し、反強誘電体層15を形成する。その後にアモルファスの第2HZO層を形成すると、その後の熱処理により、反強誘電体層15の結晶性を保持する形でアモルファスの第2HZO層が結晶化し、強誘電体層13が形成される。
【0070】
次に、開口部54の内面に、強誘電体層13を形成する(図16)。強誘電体層13は、例えば、Si、Al等の添加はされていないHZOで形成する。Si、Al等の添加はされていないHZOは強誘電体として形成される。強誘電体層13も、例えば、ALDにより形成する。強誘電体層13は、アモルファスである。強誘電体層13は、最終的にゲート絶縁層となる。強誘電体層13の成膜温度は、例えば、150℃以上350℃以下である。熱処理により、アモルファスの強誘電体層13を結晶化しても良い。熱処理の温度は、例えば、約600℃~900℃程度である。
【0071】
次に、開口部54の内面に、絶縁層14を形成する(図17)。絶縁層14はシリコン酸化膜SiO又はシリコン窒化膜SiNにより形成する。絶縁層14は、例えば、CVD法により形成する。Si、Al等の添加はされていないHZOである強誘電体層13と半導体層16を直接接触すると、酸素はSiと反応するためSiOが形成され易い。このため、HZOである強誘電体層13とSiチャネルである半導体層16との間に介在層として、絶縁層14を形成すると良い。尚、絶縁層14を形成する工程は省略しても良い。
【0072】
次に、開口部54の内面に、半導体層16をポリシリコンにより形成する(図18)。半導体層16は、例えば、CVD法により形成する。
【0073】
次に、開口部54内にアモルファスシリコン層を形成し、開口部54を埋め込む(図18)。尚、アモルファスシリコン層の代わりにシリコン酸化膜を形成しても良い。アモルファスシリコン層やシリコン酸化膜は、最終的にコア部10となる。この状態で、場合によっては、熱処理により、強誘電体層13及び反強誘電体層15を結晶化しても良い。熱処理の温度は、例えば、約600℃~900℃程度である。
【0074】
次に、積層体50に形成されたエッチング用の溝(図示省略)を用いて、窒化シリコン層20をウェットエッチングより選択的に除去する(図19)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用いる。窒化シリコン層20を酸化シリコン層18に対して選択的にエッチングする。
【0075】
次に、バリアメタル層11を形成する(図20)。バリアメタル層11は、例えば、CVD法により形成する。バリアメタル層11の一例は、窒化チタン膜である。
【0076】
以上の工程において、アモルファスの強誘電体層13を結晶化するアニールにより、アモルファスの強誘電体層13が強誘電体となる。結晶化アニールより、HZO中に直方晶のHZOが形成される。結晶化アニールは、例えば、非酸化性雰囲気中で行われる。結晶化アニールによって、アモルファスシリコン層も結晶化して多結晶シリコン層となる。
また、結晶化アニールにより、アモルファスの反強誘電体層15も結晶化する。結晶化アニールより、アモルファスの反強誘電体層15が結晶化された反強誘電体となる。結晶化アニールより、反強誘電体層15中に正方晶のSi添加HZOが形成される。
【0077】
次に、Wリプレイス工程として、バリアメタル層11の上にタングステン層12を形成する(図8)。タングステン層12は、例えば、CVD法により形成する。タングステン層12は、ワード線WLとなる第1電位印加電極12WL1、第2電位印加電極12WL2の一例である。
【0078】
最後に、ゲート絶縁膜となる強誘電体層13に電圧を印加して、ウェークアップを実施することができる。また、強誘電体層13に対する分極反転のサイクル回数を増大させて、ウェークアップを実施しても良い。
【0079】
以上の製造方法により、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイ100が製造される。
【0080】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、メモリウィンドウを大きくすることが可能で、高サイクル耐性の不揮発性半導体メモリ及びその製造方法を提供することができる。
【0081】
(第2の実施形態)
図21は、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1のメモリセルアレイの一部の模式図である。また、図22は、図21のIII―III線に沿う断面図である。以下、図21図22に示すZ方向を第1の方向、X方向を第2の方向、Y方向を第3の方向と定義する。尚、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのブロック図は、図6と同様であり、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイの等価回路図は、図7と同様である。
【0082】
第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図21及び図22に示すように、コア部10と、半導体層16と、絶縁層14と、強誘電体層13と、第1電位印加電極WL1と、第2電位印加電極WL2と、絶縁体層18と、反強誘電体層15とを備えるメモリセルMCを備える。コア部10は、半導体基板に直交するZ方向に延伸する。半導体層16は、Z方向に延伸し、コア部10に接する。絶縁層14は、Z方向に延伸し、半導体層16に接する。強誘電体層13は、Z方向に延伸し、絶縁層14に接する。第1電位印加電極WL1は、Z方向に直交するX方向に延伸し、強誘電体層13に接する。第2電位印加電極WL2は、第1電位印加電極WL1とZ方向に隣接し、X方向に延伸し、強誘電体層13に接する。絶縁体層18は、Z方向に積層され、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置され、かつ強誘電体層13に接する。反強誘電体層15は、第1電位印加電極WL1と第2電位印加電極WL2との間に強誘電体層13に埋め込まれて配置され、かつ絶縁層14に接する。
【0083】
第1電位印加電極12WL1は、強誘電体層13にバリアメタル層11を介して接していても良い。第2電位印加電極12WL2は、強誘電体層13にバリアメタル層11を介して接していても良い。反強誘電体層15は、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間にバリアメタル層11を介して配置されていても良い。
【0084】
第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリにおいて、強誘電体層13及び反強誘電体層15は、共にHfとZrを主成分とする酸化物である。また、反強誘電体層15は、強誘電体層13よりもSi、Al、Ge、Gaの濃度が1%以上6%以下の範囲で高い。
【0085】
第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリにおいて、強誘電体層13の結晶構造は直方晶を主成分の一つであり、反強誘電体層15の結晶構造は正方晶を主成分の一つである。
【0086】
また、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ1は、図21及び図22に示すように、Z方向に延伸するコア部10と、Z方向に延伸し、コア部10の外周を覆う円筒形状の半導体層16と、Z方向に延伸し、半導体層16の外周を覆う絶縁層14と、Z方向に延伸し、絶縁層14の外周を覆う強誘電体層13と、Z方向に直交するX方向に延伸し、強誘電体層13に接する第1電位印加電極12WL1と、第1電位印加電極12WL1と第1方向Zに隣接し、X方向に延伸し、強誘電体層13に接する第2電位印加電極12WL2と、Z方向に積層され、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に配置され、かつ強誘電体層13に接する絶縁体層18と、第1電位印加電極12WL1と第2電位印加電極12WL2との間に強誘電体層13に埋め込まれて配置され、かつ絶縁層14に接する反強誘電体層15とを備えるメモリセルMCを備えていても良い。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0087】
(製造方法)
第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法は、第1絶縁体層18と第2絶縁体層20の積層体50に開口部54を形成し、開口部54の第1絶縁体層18をエッチングにより後退させ、開口部54の内面にアモルファスの第2HZO層13を形成し、開口部の第2HZO層13の上に第1HZO層15を形成し、開口部54の第1HZO層15及び第2HZO層13を平坦化し、第2HZO層13及び第1HZO層15を露出し、第4熱処理により第1HZO層15及び第2HZO層13を結晶化し、開口部54の第1HZO層15及び第2HZO層13の上に半導体層16及びコア部10を順次形成する。更に、積層体50において、第2絶縁体層20をエッチングより選択的に除去し、第2絶縁体層20を除去後に露出する第1絶縁体層18の間に電極層12を形成する。
【0088】
また、結晶化された前記第1HZO層15及び第2HZO層13の上に絶縁層14を形成し、半導体層16及びコア部10は、絶縁層14の上に順次形成し、絶縁体層18の間に金属層11を形成し、電極層12は、金属層11の上に形成しても良い。
【0089】
また、半導体層16及びコア部10を形成した後、第5熱処理を実施しても良い。
【0090】
熱処理によって、第1HZO層15には正方晶を主成分の一つとする反強誘電体が形成され、第2HZO層13には直方晶を主成分の一つとする強誘電体が形成される。
【0091】
また、第2HZO層13に電圧を印加して、ウェークアップを実施することができる。また、第2HZO層13に対する分極反転のサイクル回数を増大させて、ウェークアップを実施しても良い。
【0092】
次に、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法を詳細に説明する。図23図29は、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法を示す模式断面図である。図23図29は、それぞれ、図21に対応する断面を示す。
【0093】
最初に、第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの製造方法と同様に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層18と窒化シリコン層20と交互に積層する(図11)。
【0094】
次に、酸化シリコン層18と窒化シリコン層20に開口部54を形成する(図12)。
【0095】
次に、エッチングにより、酸化シリコン層18の厚さを後退させる(図13)。
【0096】
次に、開口部54の内面に、第2HZO層13を形成する(図23)。第2HZO層13は、例えば、Si、Al等の添加はされていないHZOで形成する。Si、Al等の添加はされていないHZOは強誘電体として形成される。第2HZO層13は、例えば、ALDにより形成する。第2HZO層13は、アモルファスである。第2HZO層13は、最終的にゲート絶縁層となる。第2HZO層13の成膜温度は、例えば、150℃以上350℃以下である。
【0097】
次に、開口部54の内面に、第1HZO層15を形成する(図24)。具体的には、第1HZO層15は、例えば、Si、Al、Ge、若しくはGaの濃度が1%以上6%以下の範囲で添加されたHZOにより形成する。第1HZO層15は、例えば、ALDにより形成する。
【0098】
次に、摺り切り加工によって、開口部54の内面の第2HZO層13及び第1HZO層15を平坦化する(図25)。結果として、図25に示すように、開口部54の内面において、第1HZO層15と第2HZO層13は面一となり、開口部54の内面に強誘電体層13が露出する。第4熱処理により第1HZO層15及び第2HZO層13を結晶化する。熱処理の温度は、例えば、約600℃~900℃程度である。熱処理により第1HZO層15は反強誘電体となり、第2HZO層13は強誘電体となる。
【0099】
次に、開口部54の内面に、絶縁層14を形成する(図26)。絶縁層14はシリコン酸化膜SiO又はシリコン窒化膜SiNにより形成する。絶縁層14は、例えば、CVD法により形成する。Si、Al等の添加はされていないHZOである強誘電体層13と半導体層16を直接接触すると、酸素はSiと反応するためSiOが形成され易い。このため、HZOである強誘電体層13とSiチャネルである半導体層16との間に、絶縁層14を形成すると良い。また、絶縁層14を形成すると、結晶化された第1HZO層15にもSiが熱拡散によりドーピングされて、反強誘電体層が形成される。この熱処理によって、絶縁層14に含まれるSiが強誘電体層13中に熱拡散して、反強誘電体層15が形成される。尚、絶縁層14を形成する工程は省略しても良い。
【0100】
次に、開口部54の内面に、半導体層16をポリシリコンにより形成する(図27)。半導体層16は、例えば、CVD法により形成する。
【0101】
次に、開口部54内にアモルファスシリコン層を形成し、開口部54を埋め込む(図27)。尚、アモルファスシリコン層の代わりにシリコン酸化膜を形成しても良い。アモルファスシリコン層やシリコン酸化膜は、最終的にコア部10となる。この状態で、場合によっては、熱処理により、強誘電体層13及び反強誘電体層15を結晶化しても良い。熱処理の温度は、例えば、約600℃~900℃程度である。
【0102】
次に、積層体50に形成されたエッチング用の溝(図示省略)を用いて、窒化シリコン層20をウェットエッチングより選択的に除去する(図28)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用いる。窒化シリコン層20を酸化シリコン層18に対して選択的にエッチングする。
【0103】
次に、バリアメタル層11を形成する(図29)。バリアメタル層11は、例えば、CVD法により形成する。バリアメタル層11の一例は、窒化チタン膜である。
【0104】
以上の工程において、アモルファスの強誘電体層13を結晶化するアニールにより、アモルファスの強誘電体層13が強誘電体となる。結晶化アニールより、HZO中に直方晶のHZOが形成される。結晶化アニールは、例えば、非酸化性雰囲気中で行われる。結晶化アニールによって、アモルファスシリコン層も結晶化して多結晶シリコン層となる。また、結晶化アニールにより、アモルファスの反強誘電体層15も結晶化する。結晶化アニールより、アモルファスの反強誘電体層15が反強誘電体となる。結晶化アニールより、反強誘電体層15中に正方晶のSi添加HZOが形成される。
【0105】
次に、Wリプレイス工程として、バリアメタル層11の上にタングステン層12を形成する(図8)。タングステン層12は、例えば、CVD法により形成する。タングステン層12は、ワード線WLとなる第1電位印加電極12WL1、第2電位印加電極12WL2の一例である。
【0106】
最後に、ゲート絶縁膜となる強誘電体層13に電圧を印加して、ウェークアップを実施することができる。また、強誘電体層13に対する分極反転のサイクル回数を増大させて、ウェークアップを実施しても良い。
【0107】
以上の製造方法により、第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリのメモリセルアレイ100が製造される。
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施形態によれば、第1の実施形態同様、メモリウィンドウを大きくすることが可能で、高サイクル耐性の不揮発性半導体メモリ及びその製造方法を提供することができる。
【0108】
強誘電体であるHZO膜に1%以上6%以下の範囲でSi又はAlを添加することで反強誘電体の結晶を安定して形成することができる。反強誘電体の結晶状態は良好であり、リーク特性が向上し、耐圧特性も向上している。
【0109】
第2の実施形態によれば、反強誘電体層15とワード線電極WL間のフリンジ電界の電界集中を緩和することができる。Siを添加した反強誘電体層は、トラップアシステッドトンネリング(TAT:Trap Assited Tunneling)に関係したトラップ準位が減少するため、トラップ密度が低く、リード電圧印加時に層間部に発生するトラップ電荷によるノイズ抑制が可能となる。リーク電流が1桁~2桁程度低減することが確認されている。
【0110】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1…不揮発性半導体メモリ
2…メモリコントローラ
10…コア部
11…金属層(バリアメタル層)
12…電極層(タングステン層)
12WL1…第1電位印加電極
12WL2…第2電位印加電極
13…強誘電体層(第2HZO層)
14…絶縁層
15…反強誘電体層(第1HZO層)
16…半導体層
18…第1絶縁体層(酸化シリコン層)
20…第2絶縁体層(窒化シリコン層)
50…積層体
54…開口部
100…メモリセルアレイ
110…コマンドレジスタ
120…アドレスレジスタ
140…ロウ制御回路
150…センスアンプ回路
160…ドライバ回路
190…シーケンサ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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