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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044731
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電源制御回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150451
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松島 光男
(72)【発明者】
【氏名】増田 重巳
(72)【発明者】
【氏名】小久保 宏樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE57
5H730EE58
5H730FD11
5H730FD24
5H730FG05
5H730VV03
(57)【要約】
【課題】トランスの補助巻線の電圧に応じて変化する電圧を適切なタイミングで検出すること。
【解決手段】トランスと、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御することで前記トランスの二次側の出力電圧を制御する電源制御回路と、を備え、前記電源制御回路は、前記トランスの一次側の補助巻線の電圧に応じて変化する入力電圧をモニタして、前記トランスの二次側巻線に二次側電流が流れている期間を検出し、前記期間を所定の比率で分けるタイミングであって前記二次側電流が零になる手前のタイミングを検出し、前記タイミングで検出された前記入力電圧に応じて、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御する、電源装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次側の補助巻線の電圧に応じて変化する入力電圧をモニタして、前記トランスの二次側巻線に二次側電流が流れている期間を検出する第1検出回路と、
前記第1検出回路により検出された前記期間を所定の比率で分けるタイミングであって前記二次側電流が零になる手前のタイミングを検出する第2検出回路と、
前記第2検出回路により検出された前記タイミングで前記入力電圧を検出する第3検出回路と、
前記第3検出回路により検出された前記入力電圧に応じて、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御する制御回路と、を備える、電源制御回路。
【請求項2】
前記第2検出回路は、前記第1検出回路により検出された前記期間の長さに応じて変化する電圧信号を前記比率で分けることで得られた分圧信号を、前記電圧信号と比較することで、前記タイミングを検出する、請求項1に記載の電源制御回路。
【請求項3】
前記第2検出回路は、前記電圧信号のピークホールド値を前記比率で分けることにより得られた前記分圧信号を、ピークホールド前の前記電圧信号と比較することで、前記タイミングを検出する、請求項2に記載の電源制御回路。
【請求項4】
前記第2検出回路は、前記電圧信号のピークホールド値を前記比率で分けることにより得られた前記分圧信号を、ピークホールド前の前記電圧信号と比較することで、前記タイミングを表すタイミングパルスを生成し、
前記第3検出回路は、前記タイミングパルスの入力によって前記入力電圧を検出する、請求項2に記載の電源制御回路。
【請求項5】
前記第1検出回路は、前記期間を表すパルス電圧を生成し、
前記第2検出回路は、前記パルス電圧のパルス長に応じて電圧値が変化する前記電圧信号を生成する、請求項2から4のいずれか一項に記載の電源制御回路。
【請求項6】
前記第2検出回路は、容量素子が定電流源により充電される時間を前記パルス電圧に応じて調整することで、前記パルス長に応じて電圧値が変化する前記電圧信号を生成する、請求項5に記載の電源制御回路。
【請求項7】
前記電圧信号は、鋸歯状波である、請求項2から4のいずれか一項に記載の電源制御回路。
【請求項8】
前記比率は、抵抗分圧によって決まる、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源制御回路。
【請求項9】
前記制御回路は、前記第3検出回路により検出された前記入力電圧が目標電圧に収束するように、前記一次側巻線に流れる電流を制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源制御回路。
【請求項10】
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御することで前記トランスの二次側の出力電圧を制御する電源制御回路と、を備え、
前記電源制御回路は、
前記トランスの一次側の補助巻線の電圧に応じて変化する入力電圧をモニタして、前記トランスの二次側巻線に二次側電流が流れている期間を検出し、
前記期間を所定の比率で分けるタイミングであって前記二次側電流が零になる手前のタイミングを検出し、
前記タイミングで検出された前記入力電圧に応じて、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御する、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御回路及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次側から一次側へ帰還をかけずに、一次側で取得した情報を用いて二次側の出力電圧の制御を行うPSR(Primary Side Regulation)方式の絶縁型DC-DCコンバータがある(例えば、特許文献1参照)。このPSR方式のコンバータは、二次側の回路がシンプルであるとともに一次側の制御回路の大部分を半導体集積回路で構成することができるため、部品点数が少なく、低コストのコンバータを実現できるという利点がある。
【0003】
特許文献1に記載されているコンバータは、1周期ごとにトランスの消磁開始タイミングから消磁が完了しLC共振に入った直後までの期間を検出する。そして、当該コンバータは、次の周期において、その検出期間から固定時間ΔTを減じたタイミングで、トランスの補助巻線の誘起電圧を分圧した電圧をサンプリングすることで、二次側の出力電圧を推定し制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7349229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、固定時間ΔTの長さが文字通り固定されている。そのため、例えば、前の周期に比べて次の周期の消磁期間が著しく変動した場合、あるいは、スイッチング周波数の仕様が異なる電源装置に適用する場合、トランスの補助巻線の電圧に応じて変化する電圧を適切なタイミングで検出できないおそれがある。特に消磁期間が短くなる場合、LC共振期間でサンプリングが行われるので、消磁期間よりも低い電圧がサンプリングされる。その結果、二次側の出力電圧を上昇させる制御が働き、二次側の出力電圧の精度が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、トランスの補助巻線の電圧に応じて変化する電圧を適切なタイミングで検出可能な電源制御回路及び電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、
トランスの一次側の補助巻線の電圧に応じて変化する入力電圧をモニタして、前記トランスの二次側巻線に二次側電流が流れている期間を検出する第1検出回路と、
前記第1検出回路により検出された前記期間を所定の比率で分けるタイミングであって前記二次側電流が零になる手前のタイミングを検出する第2検出回路と、
前記第2検出回路により検出された前記タイミングで前記入力電圧を検出する第3検出回路と、
前記第3検出回路により検出された前記入力電圧に応じて、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御する制御回路と、を備える、電源制御回路が提供される。
【0008】
本開示の他の一態様では、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御することで前記トランスの二次側の出力電圧を制御する電源制御回路と、を備え、
前記電源制御回路は、
前記トランスの一次側の補助巻線の電圧に応じて変化する入力電圧をモニタして、前記トランスの二次側巻線に二次側電流が流れている期間を検出し、
前記期間を所定の比率で分けるタイミングであって前記二次側電流が零になる手前のタイミングを検出し、
前記タイミングで検出された前記入力電圧に応じて、前記トランスの一次側巻線に流れる電流を制御する、電源装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、トランスの補助巻線の電圧に応じて変化する電圧を適切なタイミングで検出可能な電源制御回路及び電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の電源装置の構成例を示す図である。
図2図2は、一実施形態の電源装置に備えられた電源制御回路の構成例を示す図である。
図3図3は、一実施形態の電源装置の動作例を示すシミュレーション波形図である。
図4図4は、一実施形態の電源装置の動作例を示すシミュレーション波形図である。
図5図5は、電源制御回路における制御回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を説明する。
【0012】
図1は、一実施形態の電源装置101の構成例を示す図である。図1に示す電源装置101は、二次側から一次側へ帰還をかけずに、一次側で取得した情報を用いて二次側の出力電圧Voの制御を行うPSR方式の絶縁型直流電源装置である。電源装置101は、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DCコンバータである。電源装置101は、直流電圧を必要とする機器に外付けされても内蔵されてもよい。電源装置101の具体例として、ポータブル機器に使用されるUSB-PD(Universal Serial Bus - Power Delivery)アダプタ等の可搬型の電子機器などが挙げられるが、これに限られない。
【0013】
電源装置101は、入力される交流電力を直流電力に変換して出力する。直流電力は、出力端子OUT1,OUT2に接続される負荷装置に供給される。電源装置101は、トランスT1の一次側の補助巻線Naの電圧VNaに応じて変化する入力電圧Vaに基づいて、トランスT1の一次側巻線Npに間欠的に電流を流すためのスイッチング素子Q1をスイッチングさせる駆動パルスPgを生成し出力する。電源装置101は、出力端子OUT1,OUT2に所定の出力電圧Voを発生させるために、スイッチング素子Q1をオン又はオフにする電源制御回路13を備える。
【0014】
なお、電源制御回路13が実装される電源装置は、ACアダプタ等のAC-DCコンバータに限られず、AC-DCコンバータ以外の電源装置でもよいし、ポータブル機器以外の製品(例えば、車両、家庭用電化製品、事務機器など)に使用される電源装置でもよい。また、電源制御回路13が実装される電源装置は、図1に示すようなAC-DCコンバータに限られず、DC-DCコンバータでもよい。DC-DCコンバータの場合、電源制御回路13の高電圧起動端子HVには、コンデンサC1の電圧が入力される。
【0015】
電源装置101は、ノーマルモードノイズを減衰するためにAC端子間に接続されたXコンデンサCxと、コモンモードコイルを含むノイズ遮断用のフィルタ11と、交流電圧を整流し直流電圧に変換するダイオード・ブリッジ回路12と、を有する。電源装置101は、整流後の電圧を平滑するコンデンサC1と、電圧変換用のトランスT1と、トランスT1の一次側巻線Npに直列に接続されたスイッチング素子Q1と、を有する。
【0016】
トランスT1は、一次側巻線Np、二次側巻線Ns及び補助巻線Naを有する。スイッチング素子Q1は、例えば、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により形成されたトランジスタである。スイッチング素子Q1は、PチャネルMOSFET又はバイポーラトランジスタにより形成された素子でもよい。スイッチング素子Q1は、電源制御回路13によって駆動される。電源制御回路13は、電源制御用ICとも称される。
【0017】
電源装置101は、スイッチングQ1のオフ時にスイッチング素子Q1の主電極間の電圧Vswに重畳するサージを抑制するスナバ回路17を備えてもよい。スイッチング素子Q1の主電極間とは、スイッチング素子Q1がMOSFETの場合、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間である。
【0018】
電源装置101は、トランスT1の二次側において、二次側巻線Nsと直列に接続された整流用のダイオードD2と、ダイオードD2のカソード端子と二次側巻線Nsの他方の端子との間に接続された平滑用のコンデンサC2と、を有する。電源装置101は、一次側巻線Npに間欠的に電流を流すことで二次側巻線Nsに交流電圧VNsを誘起させ、誘起した交流電圧VNsを整流し平滑することによって、一次側巻線Npと二次側巻線Nsとの巻線比に応じた直流電圧Voを出力する。
【0019】
電源装置101は、トランスT1の二次側において、一次側のスイッチング動作で生じたスイッチングリップル・ノイズ等を軽減するためのフィルタを構成するコイルL3およびコンデンサC3を有してもよい。
【0020】
電源装置101は、トランスT1の一次側において、補助巻線Naに直列に接続された整流用のダイオードD0と、ダイオードD0のカソード端子とグランドGNDとの間に接続された抵抗素子R2と、を有する。補助巻線Naの一端は、ダイオードD0のアノード端子に接続され、補助巻線Naの他端は、グランドGNDに接続されている。補助巻線Naの電圧VNaは、ダイオードD0により整流され、整流後の入力電圧Vaは、電源制御回路13の入力端子AUXRに入力される。
【0021】
電源装置101は、ダイオード・ブリッジ回路12の整流前の入力端子に接続されるダイオードD11,D12と、ダイオードD11,D12のカソードに接続される抵抗R1と、を有する。
【0022】
電源制御回路13は、ダイオード・ブリッジ回路12で整流される前の交流電圧がダイオードD11,D12及び抵抗R1を介して印加される高電圧起動端子HVを有する。電源制御回路13は、電源投入時(プラグがソケット(アウトレット)に差し込まれた直後)は、高電圧起動端子HVから入力される電圧で、電源起動時の補助巻線Naに電圧VNaが誘起される前に電源制御回路13を起動させることができるように構成されている。
【0023】
電源装置101は、補助巻線Naに誘起される電圧VNaを所定の電源電圧VBにレギュレートするレギュレータ15を備えてもよい。これにより、電源制御回路13の起動後の動作は、レギュレータ15によりレギュレートされた電源電圧VBによって継続可能となる。レギュレータ15は、電源制御回路13に内蔵されてもよい。
【0024】
レギュレータ15は、無くてもよい。この場合、補助巻線Naに誘起される電圧VNaは、電源電圧端子VDDに接続されたコンデンサC5により平滑化されて、電源電圧VBが生成されてもよい。電源制御回路13の起動後の動作は、コンデンサC5により平滑化された電源電圧VBによって継続可能となる。
【0025】
ところで、電源制御回路13が行うPSR制御は、一次側の補助巻線Naに発生する電圧VNaが二次側の出力電圧Voに略比例で相関するタイミングがあることを利用する。しかしながら、電圧VNaの整流後に電源制御回路13に入力される電圧をVaとすると、
Va=NA/NS×(Vo+VF+Io×δ)
という関係式1があるため、入力電圧Vaは、出力電圧Voに完全には比例しない。なお、補助巻線Naの巻き線数をNA、二次側巻線Nsの巻き線数をNS、ダイオードD2の順方向電圧をVF、二次側巻線Ns及びダイオードD2に流れる二次側電流をIo、二次側電流Ioが流れるパターン配線などの抵抗値をδとする。
【0026】
ダイオードD2の順方向電圧D2は、二次側電流Ioの電流値によって変化する。二次側電流Ioの電流値が零のときには、順方向電圧D2も零となる。したがって、二次側電流Ioの電流値が零の場合、
Va=NA/NS×Vo
(Vo=NS/NA×Va)
という関係式2が成立する。
【0027】
したがって、関係式1,2によれば、電源制御回路13は、二次側電流Ioが零になる手前(特に、直前)のタイミングで入力電圧Vaをサンプリングすることで、二次側電流Ioの影響を可能な限り排除して、出力電圧Voを推定できる。
【0028】
次に、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングで入力電圧Vaを検出して、二次電圧Voを適切に制御可能な電源制御回路13の構成例について説明する。
【0029】
図2は、一実施形態の電源装置101に備えられた電源制御回路13の構成例を示す図である。電源制御回路13は、高電圧起動端子HVと電源電圧端子VDDとの間の電源ライン14に設けられた起動回路10を備える。起動回路10は、高電圧起動端子HVに電圧が入力されると、電源ライン14に直列に挿入されたトランジスタ16をオンさせて電源制御回路13を起動させる。トランジスタ16がオンすると、高電圧起動端子HVから流入する電流は、電源ライン14及び電源電圧端子VDDを介してコンデンサC5に流れる。コンデンサC5の充電により、電源電圧端子VDDの電源電圧VBは上昇するので、電源電圧VBが確保される。
【0030】
起動回路10は、電源電圧VBの電圧値が所定値(例えば21V)以上になると、トランジスタ16をオフにしてもよい。電源制御回路13の内部回路は、トランジスタ16がオフ状態でも、補助巻線Naに誘起される電圧VNaがレギュレータ15によりレギュレートされた一定の電源電圧VBで動作を継続できる。
【0031】
電源制御回路13は、第1検出回路20、第2検出回路30、第3検出回路40及び制御回路50を備える。
【0032】
第1検出回路20は、トランスT1の一次側の補助巻線Naの電圧VNaに応じて変化する入力電圧Vaをモニタして、トランスT1の二次側巻線Nsに二次側電流Ioが流れている期間tson(図3参照)を検出する。
【0033】
図3は、一実施形態の電源装置の動作例を示すシミュレーション波形図である。Vswは、スイッチング素子Q1(図1)の主電極間の電圧である。スイッチング素子Q1の主電極間に流れる電流Idは、図3に示すように、スイッチング素子Q1のオン期間に漸増する。電流Idは、トランスT1の一次側巻線Npに流れるため、トランスT1は励磁される。スイッチング素子Q1がオンからオフに切り替わると、電流Idの流れは遮断され、トランスT1の消磁が開始する。電流Idの流れが遮断され、トランスT1の消磁が開始すると、二次側巻線NsからダイオードD2に二次側電流Ioが流れ始める。二次側電流Ioは、ピーク電流値から時間の経過に伴って漸減する。二次側電流Ioは、二次側のコンデンサC2に充電され、平滑化された出力電圧Voが生成される。
【0034】
図3に示すように、二次側巻線Nsに発生する交流電圧VNsに連動する電圧VNaが、補助巻線Naに発生する。図3は、二次側巻線Nsと補助巻線Naの巻き数が同じ場合を例示する。補助巻線Naの巻き数は、二次側巻線Nsの巻き数よりも少なくても多くてもよい。
【0035】
補助巻線Naの電圧VNaは、ダイオードD0に整流される。整流後の入力電圧Vaは、ダイオードD0と抵抗R2との間の接続点から出力される。
【0036】
第1検出回路20(図2)は、入力端子AUXRからの入力電圧Vaをモニタすることで、トランスT1の二次側巻線Nsに二次側電流Ioが流れている期間tson(図3)を検出する。第1検出回路20は、期間tsonを表すパルス電圧Va2を生成する。第1検出回路20は、例えば、入力電圧Vaを基準電圧Vthと比較するコンパレータ21(図2)を有する。コンパレータ21は、入力電圧Vaを基準電圧Vthと比較することで、期間tsonの長さに等しいパルス長を有するパルス電圧Va2を出力する。コンパレータ21を使用することで、電圧VNaのエッジに重畳するサージが除去され、当該サージが除去されたパルス電圧Va2が生成される。当該サージが除去されることで、期間tsonの長さを検出する精度が向上する。このように、第1検出回路20は、入力電圧Vaをモニタすることで、期間tsonを精度良く検出できる。
【0037】
第2検出回路30(図2)は、第1検出回路20により検出された期間tsonを所定の比率rで分けるタイミングであって二次側電流Ioが零になる手前のタイミングを検出する。第2検出回路30は、最初に、第1検出回路20により検出された期間tsonの長さに応じて変化する電圧信号Vcを生成する。例えば、バルス電圧Va2のパルス長(=tson)に応じて電圧値が変化する電圧信号Vc(図4参照)を生成する。
【0038】
図4は、一実施形態の電源装置の動作例を示すシミュレーション波形図である。図4に例示する電圧信号Vcは、バルス電圧Va2のパルス長(=tson)が長くなるほど電圧値が漸増する鋸歯状波である。
【0039】
第2検出回路30(図2)は、パルス電圧Va2から鋸歯状の電圧信号Vcを生成するため、バッファ31,34、スイッチ32,35、反転回路33、定電流源36及び容量素子37を有する。第2検出回路30は、容量素子37が定電流源36により充電される時間をパルス電圧Va2に応じて調整することで、パルス電圧Va2のパルス長に応じて電圧値が変化する電圧信号Vcを生成する。
【0040】
バッファ31は、パルス電圧Va2が第1論理レベル(図4では、ハイレベル)のとき、スイッチ32をオンにすることで、定電流源36により生成される定電流Icc1で容量素子37を充電させる。一方、バッファ31は、パルス電圧Va2が第2論理レベル(図4では、ローレベル)のとき、スイッチ32をオフにすることで、定電流Icc1での容量素子37の充電を停止させる。スイッチ32は、容量素子37と定電流源36との間に介在する。定電流源36は、電源ライン14から供給される電源電流に基づいて、定電流Icc1を生成する。
【0041】
反転回路33は、パルス電圧Va2の論理を反転させたパルス電圧をバッファ34に向けて出力する。バッファ34は、パルス電圧Va2が第1論理レベルのとき、スイッチ35をオフにすることで、容量素子37の放電を停止させる。一方、バッファ34は、パルス電圧Va2が第2論理レベルのとき、スイッチ35をオンにすることで、容量素子37を放電させる。スイッチ35は、容量素子37に並列に接続されている。
【0042】
第2検出回路30は、このようにパルス電圧Va2のパルス長に応じて、スイッチ32,35を相補的にオン又はオフすることで、図4に例示する鋸歯波状の電圧信号Vcを生成できる。
【0043】
第2検出回路30は、二次側電流Ioが零になるタイミングで電圧信号Vcのピークをサンプリングし、次のピークまでホールドするピークホールド回路38を有する。この例では、ピークホールド回路38は、パルス電圧Va2に対して反転回路33により論理が反転したパルス電圧のエッジタイミングで、電圧信号Vcのピークをホールドする。これにより、ピークホールド回路38は、二次側電流Ioが零になるタイミングでの電圧信号Vcのピークホールド値V1(図4参照)を出力する。
【0044】
第2検出回路30は、ピークホールド値V1を所定の比率r(例えば、9:1)で分けることで、分圧信号V2を生成する。この例では、第2検出回路30は、抵抗R3と抵抗R4を用いた抵抗分圧によって決まる比率rでピークホールド値V1を分けることで、分圧信号V2を生成する。抵抗R4は、抵抗値が抵抗R3よりも大きい。例えば図2に示すように、抵抗R3は、電源制御回路13に内蔵され、抵抗R4は、電源制御回路13の抵抗接続端子RDに外付けされる。抵抗R4は、抵抗接続端子RDとグランドGNDとの間に接続される。抵抗R4が電源制御回路13に外付けされることで、抵抗R4の抵抗値の変更が容易となり、その結果、ピークホールド値V1を分圧する比率rを所望の値に変更することが容易となる。
【0045】
第2検出回路30は、電圧信号Vcを比率rで分けることで得られた分圧信号V2を、電圧信号Vcと比較することで、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングを検出する。この例では、第2検出回路30は、電圧信号Vcのピークホールド値V1を比率rで分けることにより得られた分圧信号V2を、ピークホールド前の電圧信号Vc(次の鋸歯状波の電圧信号Vc)と比較する。第2検出回路30は、分圧信号V2と次の鋸歯状波の電圧信号Vcが交わるタイミングを検出することで、当該タイミングを、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングtDET(図4)として検出できる。
【0046】
第2検出回路30は、分圧信号V2を、ピークホールド前の電圧信号Vc(次の鋸歯状波の電圧信号Vc)と比較するコンパレータ39(図2)を有する。コンパレータ39は、分圧信号V2が入力される反転入力端子と、電圧信号Vcが入力される非反転入力端子とを有する。コンパレータ39は、分圧信号V2を、ピークホールド前の電圧信号Vcと比較することで、タイミングtDETを表すタイミングパルスTPを生成する。タイミングパルスTP(図4)は、タイミングtDETにエッジを有する矩形パルスであり、パルス長tpを有する。
【0047】
第3検出回路40(図2)は、第2検出回路30により検出されたタイミングtDetで入力電圧Vaを検出する。この例では、第3検出回路40は、タイミングパルスTPの入力タイミング(ポジティブエッジのタイミング)で入力電圧Vaを検出(サンプリング)し、その入力電圧Vaの検出値(入力電圧検出値Vas)を出力する。入力電圧値Vasは、上記の関係式2により、出力電圧Voに相関する値である。
【0048】
制御回路50は、第3検出回路40により検出された入力電圧Va(入力電圧値Vas)に応じて、トランスT1の一次側巻線Nsに流れる電流を制御する。制御回路50は、入力電圧値Vasに応じて、一次側巻線Nsに流れる電流を制御するトランジスタQ1をスイッチングさせる駆動パルスPgを出力端子OUTから出力する。トランジスタQ1のスイッチングにより、出力電圧Voが制御される。
【0049】
図2に示す構成では、ピークホールド値V1は、以下の数1で表される。
【0050】
【数1】
Icc1は、定電流源36により生成される定電流の電流値である。CBは、容量素子37のキャパシタンスである。tsonは、二次側電流Ioが二次側巻線Ns及びダイオードD2に流れている期間の長さである。
【0051】
分圧信号V2は、数1を使って、以下の数2で表される。
【0052】
【数2】
Raは、抵抗R3の抵抗値である。Rbは、抵抗R4の抵抗値である。
【0053】
タイミングtDETは、数2を使って、以下の数3で表される。
【0054】
【数3】
数3は、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングtDETが、抵抗R3,R4の抵抗値により決まる比率rで期間tsonを分けるタイミングであることを表す。つまり、第2検出回路30は、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数または電源装置101の各構成部品の公差等に影響されずに、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングtDETを高精度に検出できる。
【0055】
例えば、9×Ra=Rbとすると、数3は、
tDET=0.9×tson
と変形される。この場合、第2検出回路30は、二次側電流Ioが流れている期間tsonの90%の経過時のタイミングtDET(二次側電流Ioが零になる10%手前のタイミングtDET)を高精度に検出できる。
【0056】
このように、本実施形態によれば、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数または電源装置101の各構成部品の公差等が変わっても、二次側電流Ioが零になる手前(直前)のタイミングtDETが高精度に検出される。これにより、トランスT1の補助巻線Naの電圧VNaに応じて変化する入力電圧Vaは、二次側電流Ioが零になる手前(直前)の適切なタイミングtDETで検出可能となる。制御回路50は、適切なタイミングtDETで検出された入力電圧Vaに応じて、トランスT1の一次側巻線Naに流れる電流を制御するので、二次電圧Voの精度が向上する。
【0057】
図5は、制御回路50の構成例を示す図である。制御回路50は、例えば、前述の第3検出回路40により検出された入力電圧Va(入力電圧検出値Vas)が目標電圧Vrに収束するように、一次側巻線Naに流れる電流を制御する駆動パルスPgを生成する。
【0058】
制御回路50は、例えば、入力電圧検出値Vasを目標電圧Vrに収束させるPI制御又はPID制御を行う。この例では、制御回路50は、積分回路51とパルス出力回路52を有する。積分回路51は、入力電圧検出値Vasと目標電圧Vrとの差分を積分する機能と、当該差分をK倍で増幅する機能とを有する。つまり、積分回路51は、PI制御の機能を有する。
【0059】
パルス出力回路52は、積分回路51の出力電圧を所定の周波数の三角波信号と比較することで、パルス幅変調された駆動パルスPgを出力する。
【0060】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 起動回路
11 フィルタ
12 ダイオード・ブリッジ回路
13 電源制御回路
14 電源ライン
15 レギュレータ
16 トランジスタ
17 スナバ回路
20 第1検出回路
30 第2検出回路
36 定電流源
37 容量素子
40 第3検出回路
50 制御回路
101 電源装置
Na 補助巻線
Np 一次側巻線
Ns 二次側巻線
T1 トランス
図1
図2
図3
図4
図5