(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044752
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂塗布装置
(51)【国際特許分類】
C03C 25/16 20060101AFI20240326BHJP
B05C 3/12 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C03C25/16
B05C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150489
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 和正
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 賢
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 学
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智
【テーマコード(参考)】
4F040
4G060
【Fターム(参考)】
4F040AA27
4F040AB20
4F040BA49
4F040CC02
4F040CC14
4F040CC18
4G060AA01
4G060AA02
4G060AC15
4G060AD22
4G060AD43
4G060AD59
4G060CB09
4G060CB22
(57)【要約】
【課題】ガラスファイバに薄く樹脂を塗布する際の偏肉を抑制することができる樹脂塗布装置を提供する。
【解決手段】樹脂塗布装置は、ポイントと、前記ポイントの直下に配置され、第一調心部と、第二調心部と、ガラスファイバを挿通させる第一ダイ孔と、を有するダイと、前記第一ダイ孔の入口につながっている第一樹脂供給路と、を備え、前記第二調心部は、前記ガラスファイバの進行方向において前記第一調心部よりも下に配置され、前記第一調心部は、入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第一縮径部と、前記第一縮径部の直下につながっており、直径が一定である第一ランド部と、を有し、前記第二調心部は、入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第二縮径部と、前記第二縮径部の直下につながっており、直径が一定である第二ランド部と、を有し、前記第一縮径部、前記第一ランド部、前記第二縮径部、前記第二ランド部はそれぞれ、前記第一ダイ孔の一部である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバを通過させて前記ガラスファイバの表面に樹脂を塗布する樹脂塗布装置であって、
前記ガラスファイバを挿通させるポイント孔を有するポイントと、
前記ポイントの直下に配置され、第一調心部と、第二調心部と、前記ガラスファイバを挿通させる第一ダイ孔と、を有するダイと、
前記第一ダイ孔の入口につながっている第一樹脂供給路と、を備え、
前記第二調心部は、前記ガラスファイバの進行方向において前記第一調心部よりも下に配置され、
前記第一調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第一縮径部と、前記第一縮径部の直下に配置され、前記第一縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第一ランド部と、を有し、
前記第二調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第二縮径部と、前記第二縮径部の直下に配置され、前記第二縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第二ランド部と、を有し、
前記第一縮径部、前記第一ランド部、前記第二縮径部、前記第二ランド部はそれぞれ、前記第一ダイ孔の一部である、樹脂塗布装置。
【請求項2】
前記ダイは、中間部を更に有し、
前記中間部は、前記第一調心部と前記第二調心部の間にあり、前記第一ダイ孔の一部である孔を有し、
前記中間部の前記孔の直径は、前記第一ランド部の直径及び前記第二ランド部の直径いずれよりも大きい、請求項1に記載の樹脂塗布装置。
【請求項3】
前記中間部の前記孔につながる第二樹脂供給路を、更に備える、請求項2に記載の樹脂塗布装置。
【請求項4】
前記第二樹脂供給路は、前記中間部の上部につながっている、請求項3に記載の樹脂塗布装置。
【請求項5】
前記第一ランド部の直径が前記第二ランド部の直径よりも大きい、請求項1に記載の樹脂塗布装置。
【請求項6】
前記ダイは、前記第一ダイ孔を有する第一ダイと、前記第一ダイの直下に配置され、第二ダイ孔を有する第二ダイと、を有し、
前記樹脂塗布装置は、前記樹脂とは異なる他の樹脂を前記第一ダイと前記第二ダイの間から前記第二ダイに供給する他の供給路と、をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガラスファイバの表面に2層の被覆を形成させる光ファイバ用樹脂塗布装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被覆層をより薄く形成しようとすると、偏肉が生じ易くなるおそれがある。
【0005】
本開示は、ガラスファイバに薄く樹脂を塗布する際の偏肉を抑制することができる樹脂塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の樹脂塗布装置は、
ガラスファイバを通過させて前記ガラスファイバの表面に樹脂を塗布する樹脂塗布装置であって、
前記ガラスファイバを挿通させるポイント孔を有するポイントと、
前記ポイントの直下に配置され、第一調心部と、第二調心部と、前記ガラスファイバを挿通させる第一ダイ孔と、を有するダイと、
前記第一ダイ孔の入口につながっている第一樹脂供給路と、を備え、
前記第二調心部は、前記ガラスファイバの進行方向において前記第一調心部よりも下に配置され、
前記第一調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第一縮径部と、前記第一縮径部の直下に配置され、前記第一縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第一ランド部と、を有し、
前記第二調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第二縮径部と、前記第二縮径部の直下に配置され、前記第二縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第二ランド部と、を有し、
前記第一縮径部、前記第一ランド部、前記第二縮径部、前記第二ランド部はそれぞれ、前記第一ダイ孔の一部である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ガラスファイバに薄く樹脂を塗布する際の偏肉を抑制することができる樹脂塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂塗布装置の概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の一形態の説明)
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る樹脂塗布装置は、
ガラスファイバを通過させて前記ガラスファイバの表面に樹脂を塗布する樹脂塗布装置であって、
前記ガラスファイバを挿通させるポイント孔を有するポイントと、
前記ポイントの直下に配置され、第一調心部と、第二調心部と、前記ガラスファイバを挿通させる第一ダイ孔と、を有するダイと、
前記第一ダイ孔の入口につながっている第一樹脂供給路と、を備え、
前記第二調心部は、前記ガラスファイバの進行方向において前記第一調心部よりも下に配置され、
前記第一調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第一縮径部と、前記第一縮径部の直下に配置され、前記第一縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第一ランド部と、を有し、
前記第二調心部は、前記進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなる第二縮径部と、前記第二縮径部の直下に配置され、前記第二縮径部につながっており、前記進行方向において直径が一定である第二ランド部と、を有し、
前記第一縮径部、前記第一ランド部、前記第二縮径部、前記第二ランド部はそれぞれ、前記第一ダイ孔の一部である。
【0010】
本開示の樹脂塗布装置のダイは、進行方向において直径が狭くなる第一縮径部と、第二縮径部と、を有する。ガラスファイバの進行方向に垂直な方向の振れが第一縮径部と第二縮径部の二点で拘束されるため、ガラスファイバが振動することを抑制することができる。以上より、偏肉を低減させて、より高い寸法精度で樹脂をガラスファイバに塗布することができる。
【0011】
(2)上記(1)において、前記ダイは、中間部を更に有し、
前記中間部は、前記第一調心部と前記第二調心部の間にあり、前記第一ダイ孔の一部である孔を有し、
前記中間部の前記孔の直径は、前記第一ランド部の直径及び前記第二ランド部の直径いずれよりも大きくてもよい。
【0012】
中間部の孔の直径が、第一ランド部の直径及び第二ランド部の直径いずれよりも大きいため、中間部の孔の直径が第一ランド部の直径及び第二ランド部の直径と比較して同じあるいは小さい場合と比較して、中間部の孔を加工しやすい。さらに、中間部を備えない場合と比較して、ガラスファイバが樹脂に接触する長さをより長くすることができるとともに、樹脂によりガラスファイバの振動を抑制することができる。
【0013】
(3)上記(2)において、前記樹脂塗布装置は、前記中間部の前記孔につながる第二樹脂供給路を、更に備えてもよい。
【0014】
本開示の樹脂塗布装置は、中間部の孔につながる第二樹脂供給路を備えるため、中間部の孔へも樹脂が供給され、第一ダイ孔内の樹脂圧が高まる。このため、第一ダイ孔に気泡が紛れ込むことを防ぎつつ、ガラスファイバに樹脂を塗布することができる。
【0015】
(4)上記(3)において、前記第二樹脂供給路は、前記中間部の上部につながっていてもよい。
【0016】
第二樹脂供給路が中間部の上部につながっているため、第一ダイ孔内の樹脂圧を高めることができ、偏肉の発生を抑制するとともに、ガラスファイバの周方向に樹脂を均一に塗布することができる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つにおいて、前記第一ランド部の直径が前記第二ランド部の直径よりも大きくてもよい。
【0018】
第一ランド部の直径が第二ランド部の直径よりも大きいため、ポイントやダイ入口でガラスファイバがポイントやダイに当たりにくく、ガラスファイバの断線を防ぐことができる。さらに第二調心部を回転中心として、樹脂塗布装置全体を前後左右に微傾斜させて、偏肉を低減することができる。
【0019】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つにおいて、前記ダイは、前記第一ダイ孔を有する第一ダイと、前記第一ダイの直下に配置され、第二ダイ孔を有する第二ダイと、を有し、
前記樹脂塗布装置は、前記樹脂とは異なる他の樹脂を前記第一ダイと前記第二ダイの間から前記第二ダイに供給する他の供給路と、をさらに備えてもよい。
【0020】
本開示の樹脂塗布装置は、複数のダイと他の供給路をさらに備えるため、二つの樹脂をガラスファイバにほぼ同時に塗布することができる。
【0021】
(本開示の一形態の詳細)
本開示の一形態に係る樹脂塗布装置1の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂塗布装置1の概要断面図である。樹脂塗布装置1は、ガラスファイバGを通過させて、ガラスファイバGの表面に樹脂を塗布するように構成されている。ガラスファイバGの直径は例えばφ80からφ125μmである。
図1に例示するように、樹脂塗布装置1は、ポイント10と、ダイ20と、第一樹脂供給路50と、第二樹脂供給路60と、第三樹脂供給路70と、を備える。
【0023】
ポイント10は、樹脂塗布装置1の入口に配置されている。ポイント10は、ガラスファイバGを挿通させるポイント孔11を有する。ガラスファイバGの進行方向に垂直な面における、ポイント孔の断面は円形である。ポイント孔11の直径は、例えばφ0.30からφ0.35mmである。ガラスファイバGの進行方向における、ポイント孔11の長さは、例えば2.0mmである。
【0024】
ダイ20は、第一ダイ30と、第二ダイ40と、を有する。第一ダイ30は、ガラスファイバGの進行方向において、ポイント10の直下に配置されている。第一ダイ30は、第一調心部31と、第二調心部32と、ガラスファイバGを挿通させる第一ダイ孔39と、を有する。更に第一ダイ30は、第一調心部31と第二調心部32の間に配置された中間部37を有する。第一調心部31と、中間部37と、第二調心部32は、それぞれ個別に形成されてもよいし、互いに一体的に形成されてもよい。例えば第一調心部31と、中間部37と、第二調心部32は、それぞれ同じ材質で形成されたのち、圧着によって一体的に形成されてもよい。
【0025】
第一調心部31は、第一ダイ30の入口に配置されている。第一調心部31は、第一縮径部33と、第一ランド部34と、を有する。第一縮径部33は、ガラスファイバGの進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなっている。第一ランド部34は、第一縮径部33の直下に配置され、第一縮径部33につながっており、ガラスファイバGの進行方向において直径が一定である。第一縮径部33および第一ランド部34はそれぞれ、第一ダイ孔39の一部である。第一調心部31の出口(第一ランド部34の出口)には、ガラスファイバGの進行方向に沿って第一調心部31の出口から突出する突起部(不図示)が形成されていることが好ましい。
【0026】
ガラスファイバGの進行方向に垂直な面における、第一縮径部33の断面と、第一ランド部34の断面は、ともに円形である。第一調心部31の入口における、第一縮径部33の直径は、例えばφ0.48からφ0.53mmである。第一ランド部34の直径D34は、例えばφ0.30からφ0.35mmである。ガラスファイバGの進行方向における、第一調心部31の長さ(第一縮径部33の長さと第一ランド部34の長さの合計)は、例えば4.5mmである。本実施形態において、第一ランド部34の直径D34は、後述する第二ランド部36の直径D36よりも大きい。
【0027】
中間部37は、ガラスファイバGを挿通させる孔37aを有する。孔37aは、第一ダイ孔39の一部である。孔37aは、ガラスファイバGの進行方向において直径が一定である。ガラスファイバGの進行方向に垂直な面における、孔37aの断面は円形である。中間部37の孔37aの直径D37は、第一ランド部34の直径D34及び第二ランド部36の直径D36よりも大きい。孔37aの直径D37は、例えばφ8.0mmである。ガラスファイバGの進行方向における中間部37の長さは、例えば18.0mmである。
【0028】
第二調心部32は、ガラスファイバGの進行方向において、第一調心部31よりも下に配置されている。本実施形態の第二調心部32は、中間部37の真下であって、第一ダイ30の出口に配置されている。第二調心部32は、第二縮径部35と、第二ランド部36と、を有する。第二縮径部35は、ガラスファイバGの進行方向において入口から下にいくにつれて直径が狭くなっている。第二ランド部36は、第二縮径部35の直下に配置され、第二縮径部35につながっており、ガラスファイバGの進行方向において直径が一定である。第二縮径部35および第二ランド部36はそれぞれ、第一ダイ孔39の一部である。
【0029】
ガラスファイバGの進行方向に垂直な面における、第二縮径部35の断面と、第二ランド部36の断面は、ともに円形である。第二調心部32の入口における、第二縮径部35の直径は、例えばφ0.28からφ0.38mmである。第二ランド部36の直径D36は、例えばφ0.10からφ0.20mmである。ガラスファイバGの進行方向における、第二調心部32の長さ(第二縮径部35の長さと第二ランド部36の長さの合計)は、例えば4.5mmである。第二調心部32の出口(第二ランド部36の出口)には、ガラスファイバGの進行方向に沿って第二調心部32の出口から突出する突起部(不図示)が形成されていることが好ましい。
【0030】
第二ダイ40は、第一ダイ30の真下に配置されている。第二ダイ40は、ガラスファイバGを挿通させる第二ダイ孔41を有する。ガラスファイバGの進行方向に垂直な面における、第二ダイ孔41の断面は円形である。第二ダイ孔41の直径は、例えばφ0.20からφ0.30mmである。ガラスファイバGの進行方向における、第二ダイ孔41の長さは、例えば1.0mmである。
【0031】
第一樹脂供給路50は、第一ダイ孔39の入口につながっている。本実施形態においては、第一樹脂供給路50は、第一調心部31の第一縮径部33の入口につながっている。第一樹脂供給路50は、ガラスファイバGの表面に塗布されるプライマリ樹脂を、第一ダイ孔39へ供給するように構成されている。
【0032】
プライマリ樹脂は、例えばウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂である。プライマリ樹脂は、ガラスファイバGの表面に塗布される樹脂の一例である。
【0033】
第二樹脂供給路60は、中間部37の孔37aにつながっている。第二樹脂供給路60は、中間部37内にプライマリ樹脂が充填されやすくなるように、中間部37の上部につながっていることが好ましい。本実施形態では、第二樹脂供給路60は、中間部37の入口につながっている。第二樹脂供給路60は、中間部37の孔37aへプライマリ樹脂を供給するように構成されている。
【0034】
第三樹脂供給路70は、第一ダイ30と第二ダイ40の間に配置されている。本実施形態においては、第三樹脂供給路70は、第二ダイ40の入口につながっている。第三樹脂供給路70は、プライマリ樹脂とは異なるセカンダリ樹脂を、第二ダイ40の第二ダイ孔41へ供給するように構成されている。第三樹脂供給路70は、他の供給路の一例である。
【0035】
セカンダリ樹脂は、ガラスファイバGの表面を覆うプライマリ樹脂上に塗布される。セカンダリ樹脂は、例えばウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂である。セカンダリ樹脂は、硬化後のヤング率が、プライマリ樹脂の硬化後のヤング率よりも高くなる樹脂である。セカンダリ樹脂は、プライマリ樹脂の周囲に塗布される他の樹脂の一例である。
【0036】
次に樹脂塗布装置1がガラスファイバGにプライマリ樹脂及びセカンダリ樹脂をどのように塗布するかについて説明する。
まずガラスファイバGは、樹脂塗布装置1の入口に配置されているポイント10のポイント孔11に挿通される。ポイント孔11に挿通されたガラスファイバGは、第一ダイ30へと挿通される。
【0037】
ポイント10から挿通されたガラスファイバGは、第一ダイ30の第一ダイ孔39内を通過する。具体的にガラスファイバGは、第一調心部31の第一縮径部33及び第一ランド部34と、中間部37と、第二調心部32の第二縮径部35及び第二ランド部36と、を通過する。このとき、第一ダイ30の第一ダイ孔39内には、第一樹脂供給路50及び第二樹脂供給路60からプライマリ樹脂が供給され、プライマリ樹脂が充填されている。プライマリ樹脂が充填された第一ダイ孔39内にガラスファイバGが挿通されることで、ガラスファイバGの表面にプライマリ樹脂が塗布される。
【0038】
まずガラスファイバGは、第一ダイ30のうち、第一調心部31の第一縮径部33に挿通される。第一縮径部33の直径はガラスファイバGの進行方向に沿って徐々に狭くなっているため、第一縮径部33では、入口から出口に向かうプライマリ樹脂の樹脂流による調心力が高い。ガラスファイバGはこの第一縮径部33を通過するため、進行方向に垂直な方向におけるガラスファイバGの振れが抑制される。その後ガラスファイバGは、第一ランド部34へ挿通される。
【0039】
第一ランド部34の直径D34は、第一ダイ孔39内において比較的小さいため、第一ランド部34に挿通されるガラスファイバGの振動は抑制され、ガラスファイバGがポイント孔11や第一ダイ孔39に接触することを抑制することができる。第一ランド部34を挿通したガラスファイバGは、中間部37へ挿通される。
【0040】
中間部37の孔37a内には、第二樹脂供給路60によりプライマリ樹脂が充填されている。ガラスファイバGは、プライマリ樹脂が充填された孔37aに挿通される。その後、ガラスファイバGは第二調心部32へ挿通される。
【0041】
第二調心部32の第二縮径部35の直径はガラスファイバGの進行方向に沿って徐々に狭くなっているため、第二縮径部35では、入口から出口に向かうプライマリ樹脂の樹脂流による調心力が高い。ガラスファイバGは、第一縮径部33だけでなく第二縮径部35も通過するため、第一縮径部33及び第二縮径部35の二点で拘束され、進行方向に垂直な方向におけるガラスファイバGの振れがより抑制される。その後ガラスファイバGは、第二縮径部35から第二ランド部36へ挿通される。
【0042】
第二ランド部36の直径は、第一ダイ孔39内において最も小さい。ガラスファイバGは、この第二ランド部36を通過することで、振動が抑制されるとともに、プライマリ樹脂によるガラスファイバGの被覆径が定まる。その後ガラスファイバGは、第二ダイ40へ挿通される。
【0043】
第一ダイ30によってプライマリ樹脂が塗布されたガラスファイバGは、第二ダイ40の第二ダイ孔41内を通過する。このとき、第二ダイ孔41内には、第三樹脂供給路70からセカンダリ樹脂が供給され、セカンダリ樹脂が充填されている。セカンダリ樹脂が充填された第二ダイ孔41内にガラスファイバGが挿通されることで、ガラスファイバGのプライマリ樹脂上にセカンダリ樹脂が塗布される。このようにして樹脂塗布装置1は、ガラスファイバGにプライマリ樹脂とセカンダリ樹脂を塗布する。
【0044】
以上説明したように、樹脂塗布装置1の第一ダイ30は第一縮径部33と第二縮径部35を有するため、ガラスファイバGは第一縮径部33及び第二縮径部35の二点で拘束される。進行方向に垂直な方向におけるガラスファイバGの振れがより抑制されるため、ガラスファイバGにプライマリ樹脂を周方向により均一に、より高い寸法精度で塗布することができ、偏肉を低減させることができる。
【0045】
本実施形態の樹脂塗布装置1の第一ダイ30は、中間部37を備えることにより、ガラスファイバGがプライマリ樹脂に接触する長さがより長くなる。例えば、第一ダイ30が中間部37を有する場合の、ガラスファイバGがプライマリ樹脂に接触する長さは約30mmである一方、第一ダイ30が中間部37を有さない場合の長さは約10mmである。このようにガラスファイバGがプライマリ樹脂に接触する長さを長くすることで、中間部37が設けられない場合と比較して、プライマリ樹脂によりガラスファイバGの振動を抑制することができる。
【0046】
また、中間部37の孔37aの直径D37は、第一ランド部34の直径D34及び第二ランド部36の直径D36よりも大きい。このため、孔37aの直径D37が直径D34及び直径D36と比較して同じあるいは小さい場合と比較して、孔37aを加工しやすく、製造コストを低減させることができる。
【0047】
本実施形態の樹脂塗布装置1は、中間部37の孔37aにつながる第二樹脂供給路60を備える。第一樹脂供給路50から第一調心部31へプライマリ樹脂が供給されるだけでなく、第二樹脂供給路60から中間部37の孔37aへもプライマリ樹脂が供給されるため、第一ダイ孔39内のプライマリ樹脂の樹脂圧が高まる。このため、第一ダイ孔に気泡が紛れ込むことを防ぎ、ガラスファイバGの振動を抑制しつつ、ガラスファイバGにプライマリ樹脂を塗布することができる。
【0048】
本実施形態の第二樹脂供給路60は、中間部37の上部につながっている。このため第二樹脂供給路60が中間部37の他の位置につながっている場合と比較して、プライマリ樹脂が孔37aに充填されやすい。中間部37におけるプライマリ樹脂の樹脂圧により、ガラスファイバGの振動も抑制される。したがって、第一ダイ孔39への気泡の流入を防ぎつつ、偏肉の発生を抑制することができる。
【0049】
本実施形態では、第一ランド部34の直径D34は、第二ランド部36の直径D36よりも大きい。このため、ポイント孔11や第一ダイ孔39にガラスファイバGが接触することによる、ガラスファイバGの断線を防ぐことができる。さらにプライマリ樹脂の塗布量を微調整する際には、第二調心部32を回転中心として、樹脂塗布装置1全体を前後左右に微傾斜させることができる。このような微調整により、偏肉をより低減させることができる。
【0050】
本実施形態の樹脂塗布装置1は、第二ダイ40及び第三樹脂供給路70を備えるため、プライマリ樹脂とは異なるセカンダリ樹脂もガラスファイバGに塗布することができる。したがって、二つの樹脂をガラスファイバGに一つの装置でほぼ同時に塗布することができる。
【0051】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0052】
例えば、本実施形態の第一ダイ30は中間部37を有しているが、中間部37は設けられなくてもよい。このような場合でも、ガラスファイバGは第一縮径部33及び第二縮径部35の二点で拘束されるため、ガラスファイバGの振動が抑制され、偏肉を低減させることができる。さらに第一ダイ30の構成がシンプルになり、製造コストも低減させることができる。
【0053】
本実施形態の樹脂塗布装置1は第二樹脂供給路60を備えるが、第二樹脂供給路60は設けられなくてもよい。このような場合でも、ガラスファイバGは第一縮径部33及び第二縮径部35の二点で拘束されるため、ガラスファイバGは振動しにくく、偏肉を低減させることができる。また、第一ダイ30に中間部37が設けられない場合には、第一樹脂供給路50からの供給により、ガラスファイバGにプライマリ樹脂を塗布し得る。
【0054】
第二樹脂供給路60は中間部37の中間部あるいは下部につながっていてもよい。こうすることで、第二樹脂供給路60が設けられない場合と比較して、中間部37の孔37aへプライマリ樹脂を充填させ、ガラスファイバGにプライマリ樹脂を塗布し得る。
【0055】
樹脂塗布装置1は、第二ダイ40および第三樹脂供給路70を備えなくてもよい。ガラスファイバGに一種類の樹脂のみを塗布する場合には、これら構成を備える必要はない。
【符号の説明】
【0056】
1:樹脂塗布装置
10:ポイント
11:ポイント孔
20:ダイ
30:第一ダイ
31:第一調心部
32:第二調心部
33:第一縮径部
34:第一ランド部
35:第二縮径部
36:第二ランド部
37:中間部
37a:孔
39:第一ダイ孔
40:第二ダイ
41:第二ダイ孔
50:第一樹脂供給路
60:第二樹脂供給路
70:第三樹脂供給路
G:ガラスファイバ
D34,D36,D37:直径