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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044756
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/22 20060101AFI20240326BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L23/22
C08K3/04
B60C5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150494
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】野口 侑利
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞哉
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131BA05
3D131BA18
3D131BB03
3D131BC09
4J002BB181
4J002BB241
4J002DA036
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】タイヤリサイクルのために再生カーボンブラック(再生CB)をインナーライナーに使用した場合は、空気透過防止性能や発熱性が大幅に悪化するという問題点がある。
【解決手段】ブチル系ゴムを含むジエン系ゴム、カーボンブラック(CB)および再生CBを含み、前記再生CBのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、前記再生CBの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、かつ前記CBおよび前記再生CBの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部であるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量に対し、前記再生カーボンブラックの割合が0.1~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが20~62m/gであり、かつDBP吸油量が55~164ml/100gであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに、無機充填剤を55質量部以下の割合で配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、かつ
前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項7】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を、インナーライナーに用いたタイヤ。
【請求項8】
前記インナーライナーの厚さが、0.2mm~20mmである請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関するものであり、詳しくは再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チューブレス空気入りタイヤの最内層には、インナーライナーが配置されており、空気透過防止性能や酸化劣化防止性能等の特性をタイヤに付与している。
【0003】
一方、近年、資源の保全や環境保護が注目される中、タイヤにおいてもリサイクル率の向上が求められている。そこで廃タイヤなど使用済みのゴム製品を熱分解して得られる再生カーボンブラックや(例えば下記特許文献1~3参照)、非石油原料由来の再生カーボンブラックの使用が提案されている。
しかし再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、ゴムの空気透過防止性能や発熱性が大幅に悪化するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6553959号公報
【特許文献2】特開2012-1682号公報
【特許文献3】特許6856781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物において、再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)並びに窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAを適切な範囲に定め、かつカーボンブラックおよび再生カーボンブラックの配合量を特定の範囲に定めるとともに、ゴム成分の組成を特定化することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、十分な空気透過防止性能および低発熱性が得られないという問題点があった。本発明者は鋭意検討を重ねた結果、再生カーボンブラックに不純物(例えば灰分)が存在する場合でも、特定範囲の前記ΔDBPおよび前記NSA/IAを満たす再生カーボンブラックを採用することにより、前記問題点の発現を極力抑制できることを見出した。
これにより本発明によれば、再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、ゴム成分全体を100質量部としたときに、ブチル系ゴムを80~100質量部含む。
ブチル系ゴムとしては、インナーライナー用として使用されている任意のブチル系ゴム、例えばブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体およびそのハロゲン化物等を挙げることができる。ブチル系ゴムの市販品としては、例えば臭素化ブチルゴムであるEXXON MOBILE社製、商品名BROMOBUTYL2255等が挙げられる。また、ブチル系ゴムは、再生ブチルゴムを利用できる。再生ブチルゴムは、使用済みのタイヤやチューブから回収されたゴムを脱硫処理したブチルゴムを主成分にしたリサイクルゴムである。ここでブチルゴムが主成分であるとは、再生ブチルゴム100質量%中、ブチルゴム成分が50質量%以上であることをいう。再生ブチルゴムは、ブチルゴムの他、無機充填剤や残留する加硫剤等を含有してよいものとする。再生ブチルゴムを使用する場合は、再生ブチルゴムに含まれるブチル系ゴムの量を基準として前記配合量に算入される。
また、ゴム成分には、ブチル系ゴム以外に、任意のジエン系ゴムを配合することが必要である。ジエン系ゴムとしては、ゴム組成物として使用されるジエン系ゴムをいずれも使用することができ、例えば天然ゴム(NR)や合成イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。
【0011】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラック(以下、CBと言うことがある)は、窒素吸着比表面積NSAが好ましくは20~62m/gであり、さらに好ましくは20~50m/gであり、かつDBP吸油量が好ましくは55~164ml/100gであり、さらに好ましくは55~150ml/100gである。
前記カーボンブラックのNSAおよびDBP吸油量が前記範囲であることにより、本発明の前記効果がさらに向上する。
【0012】
(再生カーボンブラック)
本発明で使用する再生カーボンブラック(以下、再生CBと言うことがある)は、DBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、かつ窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあることが必要である。前記ΔDBP並びにNSA/IAが前記範囲を外れると、本発明の効果を奏することができない。
【0013】
前記ΔDBPは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、19ml/100g以下が好ましく、18ml/100g以下がさらに好ましい。
前記NSA/IAは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、0.8~1.9が好ましく、0.8~1.7がさらに好ましい。
【0014】
なお本発明において、DBP吸油量はASTM D2414に準拠して測定され、圧縮DBP(24M4DBP)はJIS K6217-4(圧縮試料)に基づいた24M4-DBP吸油量として測定され、NSAはJIS K6217-2に準拠して測定され、IAはJIS K6217-1に準拠して測定される。
【0015】
前記圧縮DBP吸油量は、再生カーボンブラックのアグリゲーションを崩して測定されるものであり、該アグリゲーションを維持したDBP吸油量との差を測定することにより、ストラクチャーの崩れやすさを把握することができる。
ΔDBPが小さいほどストラクチャーの崩れにくく、つまりカーボンブラックとしての補強性能が低下していないと考えられる。
また、再生カーボンブラックの場合、その素原料となるタイヤの製造時に配合された複数種類のカーボンブラックは熱分解により破壊されずにその分布を保っていると推測される。よって、NSA/IAを最適な範囲にすることにより再生カーボンブラックであっても必要上十分な補強性を示すことができる。
再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAは、好ましくは65~105m/gである。好ましいDBP吸油量は70~105ml/100gである。
【0016】
本発明で使用する再生カーボンブラックは、例えば次のような再生カーボンブラックであることができる。
(1)天然資源から誘導された再生カーボンブラック。天然資源としては各種製品の製造過程で生じた副産物等を挙げることができ、再生可能な原料と言える。前記副産物としてはとくに制限されないが、動植物油等が挙げられる。動植物油とは、動物油または植物油を意味し、動物油としては、魚油、タラ、サメなどの魚類肝臓から得られる脂肪油(肝油)、クジラから採取可能な海獣油のような水産動物油、並びに牛脂、豚脂等の陸産動物油等が挙げられる。植物油とは、植物の種子、果実、核等から採取される脂肪酸グリセリドを成分とする油脂が挙げられ、乾性油、半乾性油、不乾性油などのいずれでもよい。
天然資源から誘導された再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばOrion Engineered Carbons S.A.社製商品名ECORAX NATURE 200等が挙げられる。
(2)廃タイヤを加熱分解し、得られた熱分解油を原料として製造した再生カーボンブラック。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができる。
(3)廃タイヤを熱分解して生じた残渣カーボンブラックからなる再生カーボンブラック。廃タイヤの熱分解は公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、300℃以上、より具体的には600℃以上の温度の熱分解法が挙げられる。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばEnrestec社製商品名PB365、Birla Carbon社製CONTINUA8000、山東開元社製LN607等が挙げられる。
【0017】
上述のように、再生カーボンブラックに不純物が存在する。不純物の一例としては灰分が挙げられ、例えば前記(1)および(2)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には0.5質量%以下、さらに具体的には0.4質量%以下含んでいる。
また前記(3)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には1~30質量%、さらに具体的には3~25質量%含んでいる。
このように灰分を含む再生カーボンブラックを使用する場合でも、本発明では特定範囲の前記ΔDBPおよび前記NSA/IAを満たす再生カーボンブラックを使用するため、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性をタイヤに付与することができる。
なお灰分は、公知のICP法により測定される。
【0018】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックを含み、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部であることを特徴とする。
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し20質量部未満または80質量部を超えると実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を維持することができない。
【0019】
また、本発明の効果が向上するという観点から、下記の配合条件を満たすことが好ましい。
(i)前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量に対し、前記再生カーボンブラックの割合が0.1~50質量%であるのが好ましく、0.1~35質量%であるのがさらに好ましい。
(ii)前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し20~70質量部であるのが好ましい。
【0020】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
(無機充填剤)
本発明のゴム組成物は、その効果向上のために、無機充填剤を配合するのが好ましい。
前記無機充填剤としては、例えばクレー、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト等の板状無機充填剤が挙げられる。
板状無機充填剤の粒子径は、本発明の効果向上の観点から、例えば4.9~7.5μm、好ましくは5.5~7.1μmである。本明細書において、板状無機充填剤の粒子径はレーザー回折法により測定したメディアン径(D50:粒子径累積分布で50%のものの粒子径)である。
板状無機充填剤のアスペクト比Arは、本発明の効果向上の観点から、例えば2.4~3.4、好ましくは2.6~3.0である。板状無機充填剤のアスペクト比Arは、下記式(1)により測定することができる。
Ar=(Ds-Dl)/Ds (1)
(式中、Arはアスペクト比、Dsは遠心沈降法で測定された累積分布により求められた50%粒子径、Dlはコヒーレント光のレーザー回折法で測定された累積分布により求められた50%粒子径を表す。)
遠心沈降法で測定された50%粒子径Dsは、例えばマイクロメリテックス計器社製セディグラグ5100粒子径測定装置を使用して測定することができる。またコヒーレント光のレーザー回折法で測定された50%粒子径Dlは、マルバーン社製レーザー・マルバーン・マスターサイザー2000回折式粒子分布測定装置を使用して測定することができる。
板状無機充填剤としては、タルクがとくに好ましい。
無機充填剤の窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以下が好ましく、10~30m/gであるのがさらに好ましい。
無機充填剤の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し、55質量部以下であるのが好ましく、20~45質量部であるのがさらに好ましい。
【0022】
(製造方法)
本発明の製造方法は、前記ジエン系ゴム、前記無機充填剤、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有し、これらの成分の混合の順番および混合時のミキサー温度に特徴を有する。
すなわち、前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し、混練する第1工程と、前記第1工程後、必要に応じて複数回の混練工程(第2工程)があり、そして最後に加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有する。
前記第1工程において、前記再生カーボンブラックとともに投入する成分は、加硫系成分を除いてはとくに制限されない。例えば、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラック並びに必要に応じて添加される各種成分を同時に投入することができる。なお必要に応じて添加される各種成分とは、各種樹脂、酸化亜鉛、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を指す。
また、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび必要に応じて添加される各種成分から選択された1種以上の成分を続く第2工程で投入し混練してもよいが、少なくとも、前記再生カーボンブラックと、前記カーボンブラックと、前記無機充填剤とは第1工程で同時に投入するのが好ましい。
前記第1工程終了後、得られた混合物に最終工程で加硫系成分を投入し、さらに混練する。加硫系成分とは、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤を含む。
【0023】
前記第1工程において、再生カーボンブラックの分散性を高めるという理由から、再生カーボンブラックの投入時温度は100℃未満、好ましくは50~90℃であるのがよい。前記第1工程において、再生カーボンブラックの投入はその他の成分と共に行ってもよく、また例えば60秒以下の範囲でその他の成分を先に混練した後に、再生カーボンブラックを投入してもよい。再生カーボンブラック投入後の混練時間は例えば1.5分~5分である。第1工程におけるミキサーの到達温度は140℃~180℃であるのが好ましい。ミキサー内の混練温度は、例えばミキサーに設置された熱電対等の公知の温度制御手段で制御することができる。
最終工程において、ミキサー内の混練温度は、例えば80~120℃が好ましい。混練時間は例えば0.5分~3分である。
なお、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは、ゴム組成物に一般的に使用される公知のバンバリーミキサー、ロール等であることができる。また、工程間で混合物を一旦ミキサー外に放出し、冷却してもよいし、工程間でミキサー内で時間的間隔をあけて混合物を冷却してもよい。また、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
本発明のゴム組成物は、再生カーボンブラックを使用しても実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を有することから、タイヤのインナーライナーとして好適に用いられ得る。前記インナーライナーの厚さ(ゲージ厚)は、0.2mm~20mmであるのが好ましい。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0025】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0026】
標準例1~4、実施例1~9および比較例1~4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで90℃または130℃で5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0027】
発熱性:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例1~4の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。なお、指数が105以下である場合は実用上十分な低発熱性を有すると判断できる。
空気透過防止性能:JIS K7126 A法に準拠し、70℃の空気透過係数を測定した。結果は、標準例1~4の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、高い空気透過防止性能であることを示す。なお、指数が105以下である場合は実用上十分な空気透過防止性能を有すると判断できる。
タイヤ空気漏れ指数:上記で得られた5種類のゴム組成物を用い、押出成形機を通してシート成形し、未加硫のインナーライナーを成形した。得られたインナーライナーを使用し、タイヤサイズ275/70R22.5のタイヤを加硫成形し、これを標準リムに装着し、空気を圧力900kPaで封入した。そのタイヤを5万km走行させ、経時の空気圧変化の傾きを測定した。結果は、標準例1~4の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、タイヤ空気漏れが抑制されていることを示す。なお、指数が105以下である場合は実用上十分な空気透過防止性能を有すると判断できる。
【0028】
結果を表1に示す。なお、比較例1および実施例1~4は標準例1と比較され、比較例2および実施例5は標準例2と比較され、比較例3および実施例6は標準例3と比較され、比較例4および実施例7~9は標準例4と比較される。
【0029】
【表1】
【0030】
*1:NR(PT.KIRANA SAPTA製SIR20)
*2:BR-IIR(日本ブチル株式会社製BROMOBUTYL 2255)
*3:再生ブチルゴム(村岡ゴム工業株式会社製ブチルチューブリク、Brゴム含有量=55質量%、カーボンブラック含有量=32質量%、その他成分=13質量%)
*4:GPF CB(日鉄カーボン株式会社製ニテロン#GN、窒素吸着比表面積(NSA)=32m/g、DBP吸油量=82ml/100g)
*5:SRF CB(東海カーボン株式会社製シーストS、窒素吸着比表面積(NSA)=27m/g、DBP吸油量=68ml/100g)
*6:再生CB(Enrestec社製商品名PB365、DBP吸油量=88ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=11ml/100g、NSA=76m/g、IA=95mg/g、NSA/IA=0.8)
*7:再生CB(メーカーサンプル品、DBP吸油量=98ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=96ml/100g、ΔDBP=2ml/100g、NSA=102m/g、IA=86mg/g、NSA/IA=1.2)
*8:再生CB(OEC社製商品名ECORAX NATURE200、DBP吸油量=72ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=69ml/100g、ΔDBP=3ml/100g、NSA=82m/g、IA=86mg/g、NSA/IA=1.0)
*9:再生CB(LDC社製商品名GCB774G、DBP吸油量=97ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=22ml/100g、NSA=70m/g、IA=109mg/g、NSA/IA=0.6)
*10:無機充填剤(タルク)(イメリス社製HARtalc)
*11:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*13:樹脂(ストラクトール社製ストラクトール40MS)
*14:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*15:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*16:加硫促進剤DM(三新化学工業株式会社製サンセラーDM)
【0031】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含み、前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部であるので、標準例1~4のゴム組成物に比べ、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性を有することが分かる。
【0032】
一方、比較例1~4は、再生カーボンブラックのΔDBPが本発明で規定した上限を超え、NSA/IAが本発明で規定した下限未満であるので、実用上十分な空気透過防止性能および低発熱性が得られなかった。
【0033】
本発明は、下記実施形態を包含する。
実施形態1:
ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
実施形態2:
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量に対し、前記再生カーボンブラックの割合が0.1~50質量%であることを特徴とする実施形態1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態3:
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが20~62m/gであり、かつDBP吸油量が55~164ml/100gであることを特徴とする実施形態1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態4:
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに、無機充填剤を55質量部以下の割合で配合してなることを特徴とする実施形態1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態5:
ブチル系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、かつ
前記ゴム成分100質量部中、前記ブチル系ゴムを80質量部以上含み、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、20~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
実施形態6:
実施形態1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
実施形態7:
実施形態1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をインナーライナーに用いたタイヤ。
実施形態8:
前記インナーライナーの厚さが、0.2mm~20mmである実施形態7に記載のタイヤ。