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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044761
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240326BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20240326BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L9/00
C08L9/02
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150501
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛和
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC09
3D131BC12
3D131BC18
4J002AC011
4J002AC022
4J002AC032
4J002AC034
4J002AC082
4J002BG093
4J002FA103
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD203
4J002FD204
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】タイヤリサイクルのために再生カーボンブラック(再生CB)をスタッドレスタイヤに使用するに際し、発熱性およびスノー性能が実用上十分であることが求められる。
【解決手段】ジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラック(CB)および再生CBを含有し、再生CBのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満、再生CBの窒素吸着比表面積NSAと沃素吸着量IAの比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満、ジエン系ゴム100質量部中、NRおよびBRの割合が30質量部以上であり、ジエン系ゴム100質量部に対しシリカを20~100質量部および再生CBを1~10質量部配合してなり、CBおよび再生CBの合計の総量が、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部であるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに液状ブタジエンゴムを1~30質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに中空ポリマーを0.5~20質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関するものであり、詳しくは再生カーボンブラックを配合しても、発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の保全や環境保護が注目される中、タイヤにおいてもリサイクル率の向上が求められている。そこで廃タイヤなど使用済みのゴム製品を熱分解して得られる再生カーボンブラックや(例えば下記特許文献1~3参照)、非石油原料由来の再生カーボンブラックの使用が提案されている。
しかし再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、タイヤの強度や発熱性が大幅に低下するという問題点がある。
一方で、スタッドレスタイヤにおいても、再生カーボンブラックを使用して環境保護に配慮しつつ、優れたスノー性能(氷雪上路面での制動性)を付与する技術が模索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6553959号公報
【特許文献2】特開2012-1682号公報
【特許文献3】特許6856781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、再生カーボンブラックを配合しても、発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物において、再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)並びに窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAを適切な範囲に定め、かつシリカ並びにカーボンブラックおよび再生カーボンブラックの配合量を特定の範囲に定めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、発熱性が悪化するという問題点があった。また、当業界においてオールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤにおいてスノー性能をさらに高めることが求められている。本発明者は鋭意検討を重ねた結果、再生カーボンブラックに不純物(例えば灰分)が存在する場合でも、特定範囲の前記ΔDBPおよび前記NSA/IAを満たす再生カーボンブラックを採用することにより、前記課題を解決できることを見出した。
これにより本発明によれば、再生カーボンブラックを配合しても、発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能を有するタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、スノー性能向上のために、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)を必須成分とする。なお、イソプレンゴム(IR)は本発明でいうNRに含まれるものとする。本発明において、前記ジエン系ゴム100質量部中、NRおよびBRは、30質量部以上、好ましくは40質量部以上を占めることが好ましい。なお、本発明の前記効果が向上するという観点から、本発明で使用されるジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、NRの配合量が20質量部以上、好ましくは30~80質量部であるのがよい。
なお、前記ジエン系ゴムには、前記NRおよびBR以外にも必要に応じてスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また、ジエン系ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以下であることが好ましい。このようにTgを規定することにより、スノー性能が向上する。
なおジエン系ゴムが複数種類含まれる場合において、本明細書で言うTgは、各ゴムのガラス転移温度に、各ゴムの重量分率を乗じた積の合計、すなわち加重平均に基づき算出される値とする。なお計算時には各成分の重量分率の合計を1.0とする。本発明で言うガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度を指すものとする。
【0010】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカは、スノー性能向上の観点から、CTAB吸着比表面積が90~250m/gであるのが好ましく、100~210m/gであるのがさらに好ましい。
なお、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0011】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラック(CB)は、とくに制限されないが、窒素吸着比表面積NSAが70~160m/gであり、かつDBP吸油量が100~140ml/100gであるのが好ましい。
前記カーボンブラックのNSAおよびDBP吸油量が前記範囲であることにより、本発明の前記効果がさらに向上する。
本発明において、カーボンブラックのNSAは75~150m/gがさらに好ましい。また、DBP吸油量は100~130ml/100gがさらに好ましい。
【0012】
(再生カーボンブラック)
本発明で使用する再生カーボンブラック(以下、再生CBと言うことがある)は、DBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、かつ窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあることが必要である。前記ΔDBP並びにNSA/IAが前記範囲を外れると、本発明の効果を奏することができない。
【0013】
前記ΔDBPは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、19ml/100g以下が好ましく、18ml/100g以下がさらに好ましい。
前記NSA/IAは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、0.8~1.9が好ましく、0.8~1.7がさらに好ましい。
【0014】
なお本発明において、DBP吸油量はASTM D2414に準拠して測定され、圧縮DBP(24M4DBP)はJIS K6217-4(圧縮試料)に基づいた24M4-DBP吸油量として測定され、NSAはJIS K6217-2に準拠して測定され、IAはJIS K6217-1に準拠して測定される。
【0015】
前記圧縮DBP吸油量は、再生カーボンブラックのアグリゲーションを崩して測定されるものであり、該アグリゲーションを維持したDBP吸油量との差を測定することにより、ストラクチャーの崩れやすさを把握することができる。
ΔDBPが小さいほどストラクチャーが崩れにくく、つまりカーボンブラックとしての補強性能が低下していないと考えられる。
また、再生カーボンブラックの場合、その素原料となるタイヤの製造時に配合された複数種類のカーボンブラックは熱分解により破壊されずにその分布を保っていると推測される。よって、NSA/IAを最適な範囲にすることにより再生カーボンブラックであっても必要上十分な補強性を示すことができる。
再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAは、好ましくは65~105m/gである。好ましいDBP吸油量は70~105ml/100gである。
【0016】
本発明で使用する再生カーボンブラックは、例えば次のような再生カーボンブラックであることができる。
(1)天然資源から誘導された再生カーボンブラック。天然資源としては各種製品の製造過程で生じた副産物等を挙げることができ、再生可能な原料と言える。前記副産物としてはとくに制限されないが、動植物油等が挙げられる。動植物油とは、動物油または植物油を意味し、動物油としては、魚油、タラ、サメなどの魚類肝臓から得られる脂肪油(肝油)、クジラから採取可能な海獣油のような水産動物油、並びに牛脂、豚脂等の陸産動物油等が挙げられる。植物油とは、植物の種子、果実、核等から採取される脂肪酸グリセリドを成分とする油脂が挙げられ、乾性油、半乾性油、不乾性油などのいずれでもよい。
天然資源から誘導された再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばOrion Engineered Carbons S.A.社製商品名ECORAX NATURE 200等が挙げられる。
(2)廃タイヤを加熱分解し、得られた熱分解油を原料として製造した再生カーボンブラック。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができる。
(3)廃タイヤを熱分解して生じた残渣カーボンブラックからなる再生カーボンブラック。廃タイヤの熱分解は公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、300℃以上、より具体的には600℃以上の温度の熱分解法が挙げられる。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばEnrestec社製商品名PB365、Birla Carbon社製CONTINUA8000、山東開元社製LN607等が挙げられる。
【0017】
上述のように、再生カーボンブラックに不純物が存在する。不純物の一例としては灰分が挙げられ、例えば前記(1)および(2)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には0.5質量%以下、さらに具体的には0.4質量%以下含んでいる。
また前記(3)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には1~30質量%、さらに具体的には3~25質量%含んでいる。
このように灰分を含む再生カーボンブラックを使用する場合でも、本発明では特定範囲の前記ΔDBPおよび前記NSA/IAを満たす再生カーボンブラックを使用するため、発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能をタイヤに付与することができる。
なお灰分は、公知のICP法により測定される。
【0018】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム、シリカ、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックを含み、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して5~80質量部であることを特徴とする。
前記シリカの配合量が20質量部未満であるとゴム組成物の耐摩耗性や機械的特性が悪化し、逆に100質量部を超えるとスノー性能が悪化する。
前記再生カーボンブラックの配合量が1質量部未満であると配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に10質量部を超えるとスノー性能が悪化する。
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し5質量部未満であると配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に80質量部を超えると発熱性およびスノー性能が共に悪化する。
【0019】
また、本発明の効果が向上するという観点から、下記の配合条件を満たすことが好ましい。
(i)前記シリカの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、30~70質量部であるのが好ましい。
(ii)前記再生カーボンブラックの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し3~8質量部であるのが好ましい。
(iii)前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し8~70質量部であるのが好ましく、10~60質量部であるのがさらに好ましい。
【0020】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;充填剤;シランカップリング剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
本発明におけるゴム組成物には、本発明の効果が向上するという観点から、20℃で液状のブタジエンゴム(液状BR) を配合することが好ましい。
液状BRの平均分子量(Mw)は1000~100000が好ましく、1500~75000がさらに好ましい。なお、本発明で言う平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。本発明で使用される液状ゴムBRは、20℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記のジエン系ゴムとは区別される。
液状BRを使用する場合、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~25質量部がさらに好ましい。
【0022】
また、本発明におけるゴム組成物には、スノー性能を高めるという観点から、中空ポリマー、とくに熱膨張性マイクロカプセルを配合することが好ましい。
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃~190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU-80」または「EXPANCEL 092DU-120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F-85D」、「マツモトマイクロスフェアー F-100」または「マツモトマイクロスフェアー F-100D」等を使用することができる。
なお、熱膨張性マイクロカプセルを配合する場合、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.5~20質量部が好ましい。
【0023】
(製造方法)
本発明の製造方法は、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有し、これらの成分の混合の順番および混合時のミキサー温度に特徴を有する。
すなわち、前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し、混練する第1工程と、前記第1工程後、必要に応じて複数回の混練工程(第2工程)があり、そして最後に加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有する。
前記第1工程において、前記再生カーボンブラックとともに投入する成分は、加硫系成分を除いてはとくに制限されない。例えば、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラック並びに必要に応じて添加される各種成分を同時に投入することができる。なお必要に応じて添加される各種成分とは、各種樹脂、酸化亜鉛、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を指す。
また、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび必要に応じて添加される各種成分から選択された1種以上の成分を続く第2工程で投入し混練してもよいが、少なくとも、前記再生カーボンブラックと、ジエン系ゴムと、シリカとは第1工程で同時に混合するのが好ましい。
前記第1工程終了後、得られた混合物に最終工程で加硫系成分を投入し、さらに混練する。加硫系成分とは、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤を含む。
【0024】
前記第1工程において、再生カーボンブラックの分散性を高めるという理由から、再生カーボンブラックの投入時温度は100℃未満、好ましくは50~90℃であるのがよい。前記第1工程において、再生カーボンブラックの投入はその他の成分と共に行ってもよく、また例えば60秒以下の範囲でその他の成分を先に混練した後に、再生カーボンブラックを投入してもよい。再生カーボンブラック投入後の混練時間は例えば1.5分~5分である。第1工程におけるミキサーの到達温度は140℃~180℃であるのが好ましい。ミキサー内の混練温度は、例えばミキサーに設置された熱電対等の公知の温度制御手段で制御することができる。
最終工程において、ミキサー内の混練温度は、例えば80~120℃が好ましい。混練時間は例えば0.5分~3分である。
なお、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは、ゴム組成物に一般的に使用される公知のバンバリーミキサー、ロール等であることができる。また、工程間で混合物を一旦ミキサー外に放出し、冷却してもよいし、工程間でミキサー内で時間的間隔をあけて混合物を冷却してもよい。また、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
本発明のゴム組成物は、再生カーボンブラックを使用しても発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能を有することから、オールシーズンタイヤまたはスタッドレスタイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0027】
標準例1~2、実施例1~19および比較例1~9
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで90℃または130℃で5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0028】
発熱性:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、低発熱性であることを示す。
スノー性能:表1~2に示す配合からなる各ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドゴムに使用し、タイヤサイズが285/60R18 116Vである空気入りタイヤ(試験タイヤ)を製造した。各試験タイヤをリムサイズ18×8JのJATMA標準のリムホイールに組み付けて、空気圧を230kPaとして四輪駆動のSUV車両の評価車両に装着し、氷雪路面において速度40km/hの走行状態から制動し、完全停止までの制動距離を測定した。結果は、測定値の逆数を用い、標準例1または2を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、制動距離が短く、スノー性能が優れていることを示す。
【0029】
なお、比較例1~5および実施例1~10は標準例1と比較され、比較例6~9および実施例11~19は標準例2と比較される。
【0030】
結果を表1および2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
*1:NR(PT.KIRANA SAPTA製SIR20)
*2:SBR(ZSエラストマー株式会社製 NS616)
*3:BR(ZSエラストマー株式会社製 Nipol BR1220)
*4:シリカ(Solvay社製ZEOSIL1165MP、CTAB比表面積=160m/g)
*5:HAF CB(東海カーボン株式会社製シースト3、窒素吸着比表面積(NSA)=79m/g、DBP吸油量=101ml/100g)
*6:再生CB(Enrestec社製商品名PB365、DBP吸油量=88ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=11ml/100g、NSA=76m/g、IA=95mg/g、NSA/IA=0.8)
*7:再生CB(メーカーサンプル品、DBP吸油量=98ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=96ml/100g、ΔDBP=2ml/100g、NSA=102m/g、IA=86mg/g、NSA/IA=1.2)
*8:再生CB(OEC社製商品名ECORAX NATURE200、DBP吸油量=72ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=69ml/100g、ΔDBP=3ml/100g、NSA=82m/g、IA=86mg/g、NSA/IA=1.0)
*9:再生CB(LDC社製商品名GCB774G、DBP吸油量=97ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=22ml/100g、NSA=70m/g、IA=109mg/g、NSA/IA=0.6)
*10:液状BR(十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ブタジエンゴムを得た。得られた未変性液状ブタジエンゴムは、20℃で液状であり、Mwが38,000であった。)
*11:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製マツモトマイクロスフェアF100)
*12:樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製YSレジン TO-125)
*13:シランカップリング剤(Evonik社製Si69)
*14:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*15:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*16:老化防止剤(EASTMAN社製6PPD)
*17:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*18:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*19:加硫促進剤CZ(三新化学工業株式会社製サンセラーCM-G)
*20:加硫促進剤DPZ(住友化学株式会社製ソクシールD-G)
【0034】
表1~2の結果から、各実施例のゴム組成物は、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含有し、前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部であるので、標準例1~2のゴム組成物に比べ、発熱性を悪化させることなく、優れたスノー性能を有することが分かる。
【0035】
一方、比較例1は、再生カーボンブラックのΔDBPが本発明で規定した上限を超え、NSA/IAが本発明で規定した下限未満であるので、スノー性能が悪化した。
比較例2は、再生カーボンブラックの配合量が本発明で規定した上限を超えているので、スノー性能が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックおよび前記カーボンブラックの合計の総量が本発明で規定する下限未満であるので、スノー性能が悪化した。
比較例4は、カーボンブラックおよび前記カーボンブラックの合計の総量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性およびスノー性能が悪化した。
比較例5は、ジエン系ゴム100質量部中、NRおよびBRの割合が本発明で規定する下限未満であるので、スノー性能が悪化した。
比較例6は、再生カーボンブラックのΔDBPが本発明で規定した上限を超え、NSA/IAが本発明で規定した下限未満であるので、スノー性能が悪化した。
比較例7は、再生カーボンブラックの配合量が本発明で規定した上限を超えているので、スノー性能が悪化した。
比較例8は、カーボンブラックおよび前記カーボンブラックの合計の総量が本発明で規定する下限未満であるので、スノー性能が悪化した。
比較例9は、カーボンブラックおよび前記カーボンブラックの合計の総量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性およびスノー性能が悪化した。
【0036】
本発明は、下記実施形態を包含する。
実施形態1:
天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
実施形態2:
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに液状ブタジエンゴムを1~30質量部配合してなることを特徴とする実施形態1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態3:
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに中空ポリマーを0.5~20質量部配合してなることを特徴とする実施形態1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態4:
天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSA(単位m/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるNSA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムおよび前記ブタジエンゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20~100質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、5~80質量部である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
実施形態5:
実施形態1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。