(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044762
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20240326BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240326BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20240326BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20240326BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240326BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240326BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240326BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20240326BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240326BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240326BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240326BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20240326BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20240326BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240326BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
H05B33/28
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/02
H05B33/04
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H01L27/32
C23C14/12
C23C14/24 U
G09F9/00 338
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150502
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
(72)【発明者】
【氏名】竹中 貴史
(72)【発明者】
【氏名】高山 健
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC05
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD22
3K107DD28
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3K107DD75
3K107DD89
3K107EE21
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG12
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG42
4K029BA62
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB06
4K029EA01
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094FB01
5C094GB01
5C094HA05
5C094HA08
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH01
5G435HH20
5G435KK05
5G435KK10
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】生産効率の低下を抑制する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極を形成した前記処理基板に第1有機材料を蒸着して、前記上電極の上に第1透明層を形成し、前記第1透明層を形成した前記処理基板に、前記第1有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有する第2有機材料を蒸着して、前記第1透明層の上に第2透明層を形成し、前記第2透明層を形成する前に蒸着源の第1ノズル及び第2ノズルから前記第2有機材料を放射し、前記第2ノズルに対向する膜厚測定器に含まれる複数の水晶振動子にそれぞれ前記第2有機材料を蒸着する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、
前記開口において前記下電極の上に有機層を形成し、
前記有機層の上に上電極を形成し、
前記上電極を形成した前記処理基板に第1有機材料を蒸着して、前記上電極の上に第1透明層を形成し、
前記第1透明層を形成した前記処理基板に、前記第1有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有する第2有機材料を蒸着して、前記第1透明層の上に第2透明層を形成し、
前記第2透明層を形成する前に蒸着源の第1ノズル及び第2ノズルから前記第2有機材料を放射し、前記第2ノズルに対向する膜厚測定器に含まれる複数の水晶振動子にそれぞれ前記第2有機材料を蒸着する、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2有機材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの少なくとも1つである、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記複数の水晶振動子のすべてに前記第2有機材料を蒸着した後に、前記蒸着源を挟んで前記膜厚測定器とは反対側の搬送経路に沿って、前記第1透明層を形成した前記処理基板を搬送する、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
少なくとも1つの水晶振動子が前記第2ノズルに対向した状態で、前記第1ノズルと対向するように前記処理基板を搬送し、前記第2ノズルに対向した前記水晶振動子の周波数に基づいて前記処理基板に蒸着した前記第2有機材料の厚さを測定する、請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記複数の水晶振動子は、円板状に形成されたホルダの上において円周方向に並び、
前記第2ノズルに対向した前記水晶振動子に所定の厚さの前記第2有機材料を蒸着した後に、前記ホルダが回転し、他の前記水晶振動子が前記第2ノズルに対向する、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記隔壁の前記上部の直上に形成された前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層は、前記開口において前記下電極の直上に形成された前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層から離間している、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第2透明層を形成した後に、前記第2透明層の屈折率よりも高い屈折率を有する無機材料で封止層を形成し、
前記封止層は、前記隔壁の上の前記第2透明層を覆うとともに前記下電極の直上の前記第2透明層を覆い、且つ、前記隔壁に接している、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記封止層を形成した後に、前記封止層の上にパターニングしたレジストを形成し、
前記レジストから露出した前記封止層、前記第2透明層、前記第1透明層、前記上電極、及び、前記有機層を順次エッチングにより除去する、請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記有機層を形成する工程は、
前記下電極の上に正孔注入層を形成し、
前記正孔注入層の上に正孔輸送層を形成し、
前記正孔輸送層の上に電子ブロック層を形成し、
前記電子ブロック層の上に発光層を形成し、
前記発光層の上に正孔ブロック層を形成し、
前記正孔ブロック層の上に電子輸送層を形成し、
前記電子輸送層の上に電子注入層を形成し、
前記上電極は、前記電子注入層の上に形成する、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を搬送しながら、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成する第1蒸着部と、
前記有機層の上に上電極を形成する第2蒸着部と、
前記上電極の上に第1有機材料を蒸着して、第1透明層を形成する第3蒸着部と、
前記第1透明層の上に、前記第1有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有する第2有機材料を蒸着して、第2透明層を形成する第4蒸着部と、を備え、
前記第4蒸着部は、
前記第2有機材料を放射する第1ノズル及び第2ノズルを有する蒸着源と、
複数の水晶振動子を含む膜厚測定器と、を備え、
前記第1ノズルは、前記第1透明層が形成された前記処理基板の搬送経路に対向し、
前記第2ノズルは、前記膜厚測定器に対向し、
前記第4蒸着部は、前記第2透明層を形成する前に前記第1ノズル及び前記第2ノズルから前記第2有機材料を放射し、前記複数の水晶振動子にそれぞれ前記第2有機材料を蒸着し、前記複数の水晶振動子のすべてに前記第2有機材料を蒸着した後に前記搬送経路に沿って前記処理基板を搬送するように構成されている、表示装置の製造装置。
【請求項11】
前記第2有機材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの少なくとも1つである、請求項10に記載の表示装置の製造装置。
【請求項12】
前記処理基板の前記搬送経路は、前記蒸着源を挟んで前記膜厚測定器とは反対側に設けられている、請求項10に記載の表示装置の製造装置。
【請求項13】
前記膜厚測定器は、前記第2ノズルに対向した前記水晶振動子の周波数に基づいて前記処理基板に蒸着した前記第2有機材料の厚さを測定するように構成されている、請求項10に記載の表示装置の製造装置。
【請求項14】
前記複数の水晶振動子は、円板状に形成されたホルダの上において円周方向に並び、
前記ホルダは、前記第2ノズルに対向した前記水晶振動子に所定の厚さの前記第2有機材料を蒸着した後に回転するように構成され、他の前記水晶振動子が前記第2ノズルに対向する、請求項10に記載の表示装置の製造装置。
【請求項15】
前記第1蒸着部は、
前記下電極の上に正孔注入層を形成する蒸着部と、
前記正孔注入層の上に正孔輸送層を形成する蒸着部と、
前記正孔輸送層の上に電子ブロック層を形成する蒸着部と、
前記電子ブロック層の上に発光層を形成する蒸着部と、
前記発光層の上に正孔ブロック層を形成する蒸着部と、
前記正孔ブロック層の上に電子輸送層を形成する蒸着部と、
前記電子輸送層の上に電子注入層を形成する蒸着部と、を備え、
前記第2蒸着部は、前記電子注入層の上に前記上電極を形成するように構成されている、請求項10に記載の表示装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示素子を形成するための製造装置において、生産効率の低下を抑制することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【特許文献8】特開2016-181468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極を形成した前記処理基板に第1有機材料を蒸着して、前記上電極の上に第1透明層を形成し、前記第1透明層を形成した前記処理基板に、前記第1有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有する第2有機材料を蒸着して、前記第1透明層の上に第2透明層を形成し、前記第2透明層を形成する前に蒸着源の第1ノズル及び第2ノズルから前記第2有機材料を放射し、前記第2ノズルに対向する膜厚測定器に含まれる複数の水晶振動子にそれぞれ前記第2有機材料を蒸着する。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置の製造装置は、
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を搬送しながら、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成する第1蒸着部と、前記有機層の上に上電極を形成する第2蒸着部と、前記上電極の上に第1有機材料を蒸着して、第1透明層を形成する第3蒸着部と、前記第1透明層の上に、前記第1有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有する第2有機材料を蒸着して、第2透明層を形成する第4蒸着部と、を備え、前記第4蒸着部は、前記第2有機材料を放射する第1ノズル及び第2ノズルを有する蒸着源と、複数の水晶振動子を含む膜厚測定器と、を備え、前記第1ノズルは、前記第1透明層が形成された前記処理基板の搬送経路に対向し、前記第2ノズルは、前記膜厚測定器に対向し、前記第4蒸着部は、前記第2透明層を形成する前に前記第1ノズル及び前記第2ノズルから前記第2有機材料を放射し、前記複数の水晶振動子にそれぞれ前記第2有機材料を蒸着し、前記複数の水晶振動子のすべてに前記第2有機材料を蒸着した後に前記搬送経路に沿って前記処理基板を搬送するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、蒸着部300の主要部を模式的に示す斜視図である。
【
図15】
図15は、蒸着部300の主要部を模式的に示す上面図である。
【
図16】
図16は、カバー322及びホルダ323の正面図である。
【
図17】
図17は、前蒸着工程を説明するためのフローチャートである。
【
図18】
図18は、処理基板SUBへの材料の蒸着工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAと、を有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0018】
周辺領域SAには、詳述しないが、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための端子が設けられている。
【0019】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。さらに、副画素SP2及び副画素SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。
【0020】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0021】
なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1,SP2,SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0022】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口AP1,AP2,AP3を有している。
【0023】
隔壁6は、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yと、を有している。複数の第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う開口AP2,AP3の間、及び、第2方向Yに隣り合う2つの開口AP1の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP2の間、及び、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP3の間にそれぞれ配置されている。
【0024】
図2の例においては、第1隔壁6x及び第2隔壁6yは、互いに接続されている。これにより、隔壁6は、全体として開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0025】
副画素SP1,SP2,SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201,202,203を備えている。
副画素SP1は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1を備えている。副画素SP2は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2を備えている。副画素SP3は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3を備えている。
【0026】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。下電極LE1、LE2、LE3のそれぞれの周縁部は、リブ5に重なっている。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0027】
下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1は、副画素SP1の表示素子201を構成する。下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2は、副画素SP2の表示素子202を構成する。下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3は、副画素SP3の表示素子203を構成する。
【0028】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0029】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0030】
図2の例においては、開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0031】
例えば、副画素SP1の表示素子201は、青波長域の光を放つように構成される。また、副画素SP2の表示素子202は、緑波長域の光を放つように構成され、また、副画素SP3の表示素子203は、赤波長域の光を放つように構成される。
【0032】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1などの各種回路や、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0033】
下電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12及び下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。つまり、下電極LE1,LE2,LE3の端部は、絶縁層12とリブ5との間に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12がリブ5により覆われている。
【0034】
隔壁6は、リブ5の上に配置された下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状ということもできる。上部62のうち、下部61よりも開口AP1に向かって突出した部分は突出部621と称し、下部61よりも開口AP2に向かって突出した部分は突出部622と称し、下部61よりも開口AP3に向かって突出した部分は突出部623と称する。
【0035】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、下電極LE1を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE1は、下電極LE1と対向するとともに、有機層OR1の上に配置されている。さらに、上電極UE1は、下部61の側面に接触している。有機層OR1及び上電極UE1は、上部62よりも下方に位置している。
【0036】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、下電極LE2を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE2は、下電極LE2と対向するとともに、有機層OR2の上に配置されている。さらに、上電極UE2は、下部61の側面に接触している。有機層OR2及び上電極UE2は、上部62よりも下方に位置している。
【0037】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、下電極LE3を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE3は、下電極LE3と対向するとともに、有機層OR3の上に配置されている。さらに、上電極UE3は、下部61の側面に接触している。有機層OR3及び上電極UE3は、上部62よりも下方に位置している。
【0038】
副画素SP1,SP2,SP3は、さらに、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が発する光の光学特性を調整するためのキャップ層(光学調整層)CP1、CP2、CP3を含む。
キャップ層CP1は、開口AP1に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE1の上に配置されている。キャップ層CP2は、開口AP2に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE2の上に配置されている。キャップ層CP3は、開口AP3に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE3の上に配置されている。
【0039】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。
封止層SE1は、キャップ層CP1、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。封止層SE2は、キャップ層CP2、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。封止層SE3は、キャップ層CP3、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE1,SE2,SE3は、保護層13により覆われている。
【0040】
図示した例では、有機層OR1の一部、上電極UE1の一部、及び、キャップ層CP1の一部は、隔壁6と封止層SE1との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR2の一部、上電極UE2の一部、及び、キャップ層CP2の一部は、隔壁6と封止層SE2との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR3の一部、上電極UE3の一部、及び、キャップ層CP3の一部は、隔壁6と封止層SE3との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
【0041】
絶縁層12は、有機絶縁層である。リブ5、及び、封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁層である。
【0042】
リブ5は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、リブ5は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、リブ5は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。
封止層SE1,SE2,SE3は、例えば、同一の無機絶縁材料で形成されている。
封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、封止層SE1,SE2,SE3は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、封止層SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。このため、封止層SE1,SE2,SE3は、リブ5と同一材料で形成される場合があり得る。
【0043】
隔壁6の下部61は、導電材料によって形成され、上電極UE1,UE2,UE3と電気的に接続されている。隔壁6の下部61及び上部62がいずれも導電材料によって形成されてもよい。
【0044】
リブ5の厚さは、隔壁6や絶縁層12の厚さに比べて十分に小さい。一例では、リブ5の厚さは、200nm以上かつ400nm以下である。
隔壁6の下部61の厚さ(リブ5の上面から上部62の下面までの厚さ)は、リブ5の厚さより大きい。
封止層SE1の厚さ、封止層SE2の厚さ、及び、封止層SE3の厚さは、ほぼ同等であり、例えば、1μm程度である。
【0045】
下電極LE1,LE2,LE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよいし、銀(Ag)などの金属材料と透明導電材料との積層構造を有してもよい。上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。上電極UE1,UE2,UE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよい。
【0046】
有機層OR1,OR2,OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。また、有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。発光層EM2は、発光層EM1とは異なる材料で形成されている。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM3は、発光層EM1及びEM2とは異なる材料で形成されている。
【0047】
発光層EM1を形成する材料、発光層EM2を形成する材料、及び、発光層EM3を形成する材料は、互いに異なる波長域の光を放つ材料である。
一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
【0048】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、例えば、透明な薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、薄膜として、有機材料によって形成された薄膜を含んでいる。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1、UE2、UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1、SE2、SE3の材料とも異なる。
【0049】
保護層13は、透明な薄膜の多層体によって形成され、例えば、薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでいる。
【0050】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0051】
下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1のうちの発光層EM1が青波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2のうちの発光層EM2が緑波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3のうちの発光層EM3が赤波長域の光を放つ。
【0052】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0053】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL1、電子ブロック層EBL1、発光層EM1、正孔ブロック層HBL1、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
キャップ層CP1は、第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含む。第1透明層TL11は、上電極UE1の上に配置されている。第2透明層TL12は、第1透明層TL11の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0054】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL2、電子ブロック層EBL2、発光層EM2、正孔ブロック層HBL2、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL2の厚さT2は、正孔輸送層HTL1の厚さT1より大きい。
キャップ層CP2は、第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含む。第1透明層TL21は、上電極UE2の上に配置されている。第2透明層TL22は、第1透明層TL21の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0055】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL3、電子ブロック層EBL3、発光層EM3、正孔ブロック層HBL3、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL3の厚さT3は、正孔輸送層HTL2の厚さT2より大きい。
キャップ層CP3は、第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含む。第1透明層TL31は、上電極UE3の上に配置されている。第2透明層TL32は、第1透明層TL31の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0056】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、第1有機材料によって形成された透明な有機層であり、また、上電極UE1、UE2、UE3よりも大きい屈折率を有する高屈折率層である。一例では、第1透明層TL11、TL21、TL31の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0057】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、第2有機材料によって形成された透明な有機層であり、第1透明層TL11、TL21、TL31よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率は、1.3以上であり、1.6以下である。
【0058】
なお、第2透明層TL12、TL22、TL32に接する封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率よりも大きい。一例では、封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0059】
第2透明層TL12、TL22、TL32を形成するため第2有機材料としては、主鎖が炭素によって構成され、置換基にフッ素を含むフッ素系樹脂が好適である。一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの少なくとも1つの第2有機材料で形成することができる。ポリテトラフルオロエチレンの屈折率は、1.35である。ポリフッ化ビニリデンの屈折率は、1.42である。2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの屈折率は、1.35である。
【0060】
これらの第2有機材料を適用した第2透明層TL12、TL22、TL32は、蒸着法により形成することができる。このような第2透明層TL12、TL22、TL32の厚さは、例えば、20nm~500nmである。
【0061】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第1透明層TL11、TL21、TL31のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、第1透明層TL11、TL21、TL31のうちの1つの透明層が他の2つの透明層とは異なる材料で形成される場合があり得るし、第1透明層TL11、TL21、TL31のすべてが互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0062】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第2透明層TL12、TL22、TL32のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、第2透明層TL12、TL22、TL32のうちの1つの透明層が他の2つの透明層とは異なる材料で形成される場合があり得るし、第2透明層TL12、TL22、TL32のすべてが互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0063】
第1透明層TL11、TL21、TL31の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
また、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
【0064】
一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さはすべて同一であり、青用の表示素子201における第1透明層TL11の厚さは、赤用の表示素子203における第1透明層TL31の厚さより小さい。
そして、表示素子201においては、第2透明層TL12の厚さは第1透明層TL11の厚さより大きい。また、表示素子203においては、第1透明層TL31の厚さは第2透明層TL32の厚さより小さい。
【0065】
キャップ層CP1乃至CP3のすべての層構成が同一である場合があり得るし、キャップ層CP1乃至CP3のうちの1つキャップ層の層構成が他の2つのキャップ層の層構成とは異なる場合があり得るし、キャップ層CP1乃至CP3のすべての層構成が互いに異なる場合もあり得る。
また、キャップ層CP1、CP2、CP3は、3層以上の積層体であってもよい。
【0066】
有機層OR1、OR2、OR3は、上記した機能層の他に、必要に応じてキャリア発生層などの他の機能層を含んでいてもよいし、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0067】
正孔輸送層HTL1、HTL2、HTL3の各々は、一例では、図中に点線で示すように、互いに異なる材料で形成した2つの薄膜の多層体であるが、単一材料で形成した単層体であってもよい。
【0068】
表示素子201乃至203は、図示したようなシングル構成に限らず、タンデム構成であってもよい。
【0069】
次に、表示装置DSPの製造方法の一例について説明する。
【0070】
図5は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
ここに示す製造方法は、大別して、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3を有する処理基板SUBを用意する工程(ステップST1)と、副画素SP1の表示素子201を形成する工程(ステップST2)と、副画素SP2の表示素子202を形成する工程(ステップST3)と、副画素SP3の表示素子203を形成する工程(ステップST4)と、を含む。
【0071】
ステップST1においては、まず、基板10の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3、リブ5、及び、隔壁6を形成した処理基板SUBを用意する。
図3に示したように、基板10と下電極LE1、LE2、LE3との間には、回路層11及び絶縁層12も形成される。
【0072】
ステップST2においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM1を含む第1薄膜31を形成する(ステップST21)。第1薄膜31は、
図3に示した有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1の積層体である。その後、第1薄膜31の上に所定の形状にパターニングされた第1レジスト41を形成する(ステップST22)。その後、第1レジスト41をマスクとしたエッチングにより第1薄膜31の一部を除去する(ステップST23)。このとき、例えば、副画素SP2及び副画素SP3に配置された第1薄膜31が除去される。その後、第1レジスト41を除去する(ステップST24)。これにより、副画素SP1が形成される。副画素SP1は、所定の形状の第1薄膜31を有する表示素子201を備える。
【0073】
ステップST3においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM2を含む第2薄膜32を形成する(ステップST31)。第2薄膜32は、
図3に示した有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2、及び、封止層SE2の積層体である。その後、第2薄膜32の上に所定の形状にパターニングされた第2レジスト42を形成する(ステップST32)。その後、第2レジスト42をマスクとしたエッチングにより第2薄膜32の一部を除去する(ステップST33)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP3に配置された第2薄膜32が除去される。その後、第2レジスト42を除去する(ステップST34)。これにより、副画素SP2が形成される。副画素SP2は、所定の形状の第2薄膜32を有する表示素子202を備える。
【0074】
ステップST4においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM3を含む第3薄膜33を形成する(ステップST41)。第3薄膜33は、
図3に示した有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3、及び、封止層SE3の積層体である。その後、第3薄膜33の上に所定の形状にパターニングされた第3レジスト43を形成する(ステップST42)。その後、第3レジスト43をマスクとしたエッチングにより第3薄膜33の一部を除去する(ステップST43)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP2に配置された第3薄膜33が除去される。その後、第3レジスト43を除去する(ステップST44)。これにより、副画素SP3が形成される。副画素SP3は、所定の形状の第3薄膜33を有する表示素子203を備える。
【0075】
なお、第2薄膜32、第2レジスト42、第3薄膜33、及び、第3レジスト43の詳細な図示は省略する。
【0076】
以下、ステップST1及びステップST2について
図6乃至
図12を参照しながら説明する。なお、
図6乃至
図12に示す各断面は、例えば
図2中のA-B線に沿う断面に相当する。
【0077】
まず、ステップST1においては、
図6に示すように、処理基板SUBを用意する。処理基板SUBを用意する工程は、基板10の上に回路層11を形成する工程と、回路層11の上に絶縁層12を形成する工程と、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成する工程と、リブ5の上に配置された下部61及び下部61の上に配置され下部61の側面から突出した上部62を含む隔壁6を形成する工程と、を含む。リブ5は、例えばシリコン窒化物で形成する。隔壁6のうち、少なくとも下部61は、導電材料で形成する。なお、
図7乃至
図12の各図においては、絶縁層12よりも下層の基板10及び回路層11の図示を省略する。
【0078】
続いて、ステップST21においては、
図7に示すように、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、第1薄膜31を形成する。第1薄膜31を形成する工程は、処理基板SUBの上に、発光層EM1を含む有機層OR1を形成する工程と、有機層OR1の上に上電極UE1を形成する工程と、上電極UE1の上にキャップ層CP1の第1透明層TL11を形成する工程と、第1透明層TL11の上にキャップ層CP1の第2透明層TL12を形成する工程と、第2透明層TL12の上に封止層SE1を形成する工程と、を含む。つまり、図示した例では、第1薄膜31は、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1を含む。
【0079】
有機層OR1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の上にそれぞれ形成されるとともに、隔壁6の上にも形成されている。有機層OR1のうち、上部62の上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の上に形成された部分から離間している。有機層OR1の発光層EM1及び各種機能層は、蒸着法により形成される。
【0080】
上電極UE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、有機層OR1の上にそれぞれ形成され、リブ5を覆い、隔壁6の下部61に接している。また、上電極UE1は、上部62の直上において、有機層OR1の上にも形成されている。上電極UE1のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。上電極UE1は、蒸着法により、マグネシウム及び銀の合金で形成される。
【0081】
キャップ層CP1の第1透明層TL11は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、上電極UE1の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、上電極UE1の上にも形成されている。第1透明層TL11のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。第1透明層TL11は、蒸着法により、第1有機材料で形成される。
【0082】
キャップ層CP1の第2透明層TL12は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、第1透明層TL11の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、第1透明層TL11の上にも形成されている。第2透明層TL12のうち、上部62の直上に形成された部分は、下電極LE1、LE2、LE3の直上に形成された部分から離間している。第2透明層TL12は、蒸着法により、上記の第2有機材料で形成される。第2有機材料は、第1有機材料とは異なる材料である。また、第2有機材料の屈折率は、第1有機材料の屈折率より低い。
【0083】
封止層SE1は、第2透明層TL12、及び、隔壁6を覆うように形成されている。つまり、封止層SE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、第2透明層TL12の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、第2透明層TL12の上にも形成されている。しかも、封止層SE1は、隔壁6の下部61も接している。封止層SE1において、上部62の直上に形成された部分は、各下電極の直上に形成された部分と繋がっている。封止層SE1は、CVD法により、シリコン窒化物で形成される。
【0084】
続いて、ステップST22においては、
図8に示すように、封止層SE1の上のパターニングした第1レジスト41を形成する。第1レジスト41は、副画素SP1の第1薄膜31を覆い、副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を露出する。つまり、第1レジスト41は、下電極LE1の直上に位置する封止層SE1に重なっている。また、第1レジスト41は、副画素SP1から隔壁6の上方に延出している。副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6の直上において、第1レジスト41は、副画素SP1側(図の左側)に配置され、副画素SP2側(図の右側)では封止層SE1を露出している。また、第1レジスト41は、副画素SP2及び副画素SP3において、封止層SE1を露出している。
【0085】
その後、ステップST23においては、
図9乃至
図11に示すように、第1レジスト41をマスクとしてエッチングを行い、第1レジスト41から露出した副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を除去し、副画素SP1に第1薄膜31が残留する。
【0086】
第1薄膜31を除去する工程は、例えば、以下の通りである。
まず、
図9に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、ドライエッチングを行い、第1レジスト41から露出した封止層SE1を除去する。これにより、キャップ層CP1のうち、一部の第2透明層TL12が封止層SE1から露出する。
【0087】
その後、
図10に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシング(酸素プラズマを照射するドライエッチング)を行い、封止層SE1から露出した第2透明層TL12を除去する。
これに続いて、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシングを行い、第2透明層TL12から露出した第1透明層TL11を除去する。これにより、一部の上電極UE1がキャップ層CP1から露出する。
【0088】
その後、
図11に示すように、第1レジスト41をマスクとして利用し、ウエットエッチングを行い、第1透明層TL11から露出した上電極UE1を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、アッシングを行い、上電極UE1から露出した有機層OR1を除去する。
これにより、副画素SP2において下電極LE2が露出し、また、下電極LE2を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP3において下電極LE3が露出し、また、下電極LE3を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6において、副画素SP2側が露出する。また、副画素SP2と副画素SP3との間の隔壁6が露出する。
【0089】
その後、ステップST24においては、
図12に示すように、第1レジスト41を除去する。これにより、副画素SP1の封止層SE1が露出する。これらのステップST21乃至ST24を経て、副画素SP1において、表示素子201が形成される。表示素子201は、下電極LE1、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、及び、第2透明層TL12によって構成される。また、表示素子201は、封止層SE1によって覆われている。
【0090】
副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6の上には、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、第2透明層TL12、及び、封止層SE1の積層体が形成される。隔壁6の上の積層体は、表示素子201を構成する有機層OR1、上電極UE1、第1透明層TL11、第2透明層TL12、及び、封止層SE1からそれぞれ離間している。また、隔壁6のうち、副画素SP1の側の部分は、封止層SE1で覆われる。なお、
図12に示した隔壁6上の積層体は、完全に除去される場合があり得る。
【0091】
図5に示したステップST31乃至ST34は、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST31乃至ST34を経て、
図3に示した副画素SP2において、表示素子202が形成される。表示素子202は、下電極LE2、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、第1透明層TL21、及び、第2透明層TL22によって構成される。また、表示素子202は、封止層SE2によって覆われている。
【0092】
図5に示したステップST41乃至ST44も、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST41乃至ST44を経て、
図3に示した副画素SP3において、表示素子203が形成される。表示素子203は、下電極LE3、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、第1透明層TL31、及び、第2透明層TL32によって構成される。また、表示素子203は、封止層SE3によって覆われている。
【0093】
本実施形態によれば、表示素子201乃至203の各々は、光学調整層として機能するキャップ層CP1乃至CP3をそれぞれ備えている。このため、発光層EM1乃至EM3でそれぞれ放射された光は、キャップ層CP1乃至CP3を構成する第1透明層と第2透明層との界面で反射され、上電極で再び反射される。このような反射光の干渉を利用したマイクロキャビティ効果により、1つの表示素子当たりの光取出効率を向上することができる。
【0094】
次に、表示装置DSPの製造装置について説明する。ここでは、一例として、表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成するための製造装置100について説明する。なお、表示素子202の有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2を形成するための製造装置、及び、表示素子203の有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3を形成するための製造装置は、ここに説明する製造装置100と同様に構成することができる。
【0095】
図13は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
製造装置100は、
図5及び
図7を参照して説明した第1薄膜31を形成する工程のうち、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程に適用される。なお、表示素子201の構成は、
図4に示したシングル構成であることを想定している。
【0096】
製造装置100は、前処理部101と、方向転換部102と、後処理部103と、第1蒸着部110と、第2蒸着部120と、第3蒸着部130と、第4蒸着部140と、搬送経路Tに沿って処理基板SUBを搬送する搬送機構と、を備えている。このような製造装置100において、少なくとも第1蒸着部110から第4蒸着部140までは、所定の減圧状態に維持されている。
【0097】
前処理部101は、例えば、ステップST1で説明した下電極、リブ、隔壁などを備えた処理基板SUBを形成する処理基板形成部や、処理基板SUBに対して、洗浄処理、乾燥処理、プラズマ処理などの各種処理を行う処理部などを備えている。また、前処理部101は、処理基板SUBを所定の搬送姿勢に設定する機構や、静電チャックにより処理基板SUBを専用のキャリアに固定する機構などを備えている。キャリアは、搬送機構により搬送経路Tに沿って搬送される。
【0098】
後処理部103は、静電チャックによる固定を解除してキャリアから処理基板SUBを取り外す機構や、処理基板SUBを所定の姿勢に設定する機構などを備えている。
【0099】
第1蒸着部110は、
図4に示した有機層OR1を形成するように構成され、複数の蒸着部を備えている。図示した例では、第1蒸着部110は、8個の蒸着部111乃至118を備えているが、より多くの蒸着部を備えていてもよい。
【0100】
蒸着部111乃至115は、搬送経路Tに沿って一列に並び、互いに連結されている。蒸着部116乃至118は、搬送経路Tに沿って一列に並び、互いに連結されている。蒸着部115及び蒸着部116は、方向転換部102に連結されている。図示した例では、方向転換部102は、処理基板SUBの搬送方向を180°転換するように構成されている。
【0101】
前処理部101に連結された蒸着部111は、下電極LE1の上に、正孔注入層HIL1を形成するように構成されている。
蒸着部111に連結された蒸着部112は、正孔注入層HIL1の上に、正孔輸送層HTL1を構成する第1薄膜HTL1-1を形成するように構成されている。
蒸着部112に連結された蒸着部113は、第1薄膜HTL1-1の上に、正孔輸送層HTL1を構成する第2薄膜HTL1-2を形成するように構成されている。
蒸着部113に連結された蒸着部114は、第2薄膜HTL1-2の上に、電子ブロック層EBL1を形成するように構成されている。
蒸着部114に連結された蒸着部115は、電子ブロック層EBL1の上に、発光層EM1を形成するように構成されている。さらに、蒸着部115は、方向転換部102に連結されている。
【0102】
方向転換部102に連結された蒸着部116は、発光層EM1の上に、正孔ブロック層HBL1を形成するように構成されている。
蒸着部116に連結された蒸着部117は、正孔ブロック層HBL1の上に、電子輸送層ETL1を形成するように構成されている。
蒸着部117に連結された蒸着部118は、電子輸送層ETL1の上に、電子注入層EIL1を形成するように構成されている。
【0103】
蒸着部118に連結された第2蒸着部120は、電子注入層EIL1の上に、上電極UE1を形成するように構成されている。
第2蒸着部120に連結された第3蒸着部130は、上電極UE1の上に第1有機材料を蒸着して、第1透明層TL11を形成するように構成されている。
第3蒸着部130に連結された第4蒸着部140は、第1透明層TL11の上に第2有機材料を蒸着して、第2透明層TL12を形成するように構成されている。さらに、第4蒸着部140は、後処理部103に連結されている。
【0104】
以下に、製造装置100における製造工程について説明する。
【0105】
製造装置100に搬入された処理基板SUBは、搬送経路Tに沿って搬送され、まず、前処理部101に搬入される。前処理部101においては、処理基板SUBに対して、所定の前処理が行われる。
その後、処理基板SUBは、蒸着部111に搬入される。蒸着部111においては、処理基板SUBに対して、正孔注入層HIL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部112に搬入される。蒸着部112においては、処理基板SUBに対して、正孔輸送層の第1薄膜HTL1-1を形成するための有機材料が蒸着される。
【0106】
その後、処理基板SUBは、蒸着部113に搬入される。蒸着部113においては、処理基板SUBに対して、正孔輸送層の第2薄膜HTL1-2を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部114に搬入される。蒸着部114においては、処理基板SUBに対して、電子ブロック層EBL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部115に搬入される。蒸着部115においては、処理基板SUBに対して、発光層EM1を形成するための有機材料が蒸着される。
【0107】
その後、処理基板SUBは、方向転換部102を経由して蒸着部116に搬入される。蒸着部116においては、処理基板SUBに対して、正孔ブロック層HBL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部117に搬入される。蒸着部117においては、処理基板SUBに対して、電子輸送層ETL1を形成するための有機材料が蒸着される。
蒸着部111乃至117においては、処理基板SUBに対して、互い異なる有機材料が蒸着される。
【0108】
その後、処理基板SUBは、蒸着部118に搬入される。蒸着部118においては、処理基板SUBに対して、電子注入層EIL1を形成するための無機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、第2蒸着部120に搬入される。第2蒸着部120においては、処理基板SUBに対して、上電極UE1を形成するための無機材料が蒸着される。
蒸着部118及び第2蒸着部120においては、処理基板SUBに対して、互いに異なる無機材料が蒸着される。
【0109】
その後、処理基板SUBは、第3蒸着部130に搬入される。第3蒸着部130においては、処理基板SUBに対して、第1透明層TL11を形成するための第1有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、第4蒸着部140に搬入される。第4蒸着部140においては、処理基板SUBに対して、第2透明層TL12を形成するための第2有機材料が蒸着される。
第3蒸着部130及び第4蒸着部140においては、処理基板SUBに対して、互い異なる有機材料が蒸着される。
【0110】
その後、処理基板SUBは、後処理部103に搬入される。後処理部103においては、処理基板SUBに対して、所定の後処理が行われる。その後、処理基板SUBは、製造装置100から搬出される。
【0111】
次に、蒸着部の代表的な構成について説明する。
【0112】
図14は、蒸着部300の主要部を模式的に示す斜視図である。
蒸着部300は、蒸着源310と、膜厚測定器320と、を備えている。
【0113】
蒸着源310は、材料を加熱する坩堝311と、坩堝311に接続された複数の蒸着ヘッド312と、蒸着ヘッド312の各々から気化した材料を放射する第1ノズル313及び第2ノズル314(
図14では図示していない)と、を備えている。複数の第1ノズル313は、処理基板SUBの搬送経路Tに対して直交する方向に並んでいる。
【0114】
膜厚測定器320は、蒸着源310に対向している。搬送経路Tは、蒸着源310を挟んで膜厚測定器320とは反対側に設けられている。
【0115】
図14に示した蒸着部300の構成は、
図13に示した各蒸着部に適用することができる。
【0116】
図15は、蒸着部300の主要部を模式的に示す上面図である。ここでは、複数の蒸着ヘッドのうち1つの蒸着ヘッド312を図示している。
【0117】
蒸着源310及び膜厚測定器320は、チャンバー301の内部に収容されている。第1ノズル313は、一点鎖線で示す処理基板SUB、あるいは、二点鎖線で示す搬送経路Tに対向している。第2ノズル314は、膜厚測定器320に対向している。つまり、処理基板SUBに向けて材料を放射するノズルと、膜厚測定器320に向けて材料を放射するノズルとは、別個のものである。
【0118】
膜厚測定器320は、開孔321Aを有するシャッター321と、開孔322Aを有するカバー322と、回転軸323Aを中心として回転可能に構成されたホルダ323と、ホルダ323の同一面上に配置された複数の水晶振動子Cと、を備えている。カバー322は、シャッター321と水晶振動子Cとの間に位置している。第2ノズル314から放射された材料を水晶振動子Cに蒸着する場合、シャッター321は、開孔321Aが開孔322Aと同軸上に位置するように駆動される。
【0119】
水晶振動子Cは、例えば、一対の金属電極の間に水晶板を挟持した構造を有している。第2ノズル314から放射された材料が金属電極に蒸着されると、水晶振動子Cの周波数が変化する。水晶振動子Cの周波数は、材料の付着に伴って減衰する。このため、膜厚測定器3230では、水晶振動子Cの周波数に基づいて材料の蒸着レートが測定され、さらに、水晶振動子Cの上に形成された薄膜の厚さ、及び、処理基板SUBの上に形成された薄膜の厚さが測定される。
【0120】
例えば、図示した蒸着部300が
図13に示した第4蒸着部140に相当する場合、蒸着源310は、坩堝311に収容した第2有機材料を加熱し、気化した第2有機材料を第1ノズル313及び第2ノズル314から放射する。第2ノズル314から放射された第2有機材料は、開孔321A及び開孔322Aを介して少なくとも1つの水晶振動子Cに蒸着される。膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数に基づいて、第2有機材料の蒸着レート、水晶振動子Cに蒸着した第2有機材料の厚さ、及び、処理基板SUBに蒸着した第2有機材料の厚さを測定することができる。
【0121】
図16は、カバー322及びホルダ323の正面図である。
【0122】
ホルダ323は、円板状に形成されている。複数の水晶振動子Cは、ホルダ323の円周方向に間隔をおいて並んでいる。図示した例では、10個の水晶振動子Cがホルダ323に設けられている。なお、ホルダ323に設けられる水晶振動子Cの個数は、図示した例に限らない。
【0123】
カバー322は、ホルダ323及び水晶振動子Cを覆うように形成されている。カバー322の開孔322Aは、1つの水晶振動子Cに対向するように形成されている。なお、開孔322Aは、複数の水晶振動子Cに対向するように形成されてもよい。
【0124】
開孔322Aに対向する水晶振動子Cには、蒸着源から放射された材料が蒸着される。所定の厚さの材料が蒸着された後、あるいは、所定の蒸着レートに達した後、ホルダ323は、回転軸323Aを中心として回転し、他の水晶振動子Cが開孔322Aを介して第2ノズル314に対向する。
【0125】
ところで、処理基板SUBに形成された薄膜の厚さを上述の方法で正確に算出するためには、処理基板SUBへの蒸着と水晶振動子Cへの蒸着とが同時に開始され、同等に進行することが要求される。ところが、処理基板SUBに形成される薄膜の材料の中には、未使用の水晶振動子Cに蒸着されにくいものがある。例えば、上記の第2透明層TL12を形成する第2有機材料は、水晶振動子Cの上に薄膜を形成しにくい。このため、第2有機材料の厚さを正確に測定できないおそれがある。
【0126】
そこで、本実施形態では、第4蒸着部140において、処理基板SUBへの第2有機材料の蒸着を開始する前に、蒸着源310の第1ノズル313及び第2ノズル314から第2有機材料を放射し、ホルダ323の上のすべての水晶振動子Cに予め第2有機材料を蒸着するものである。このような工程を前蒸着(Pre-deposition)工程と称する。
【0127】
図17は、前蒸着工程を説明するためのフローチャートである。ここで説明する前蒸着工程は、第1透明層TL11を形成した処理基板SUBに第2透明層TL12を形成する前、つまり、第4蒸着部140に処理基板SUBを搬入する前に行われる。また、この前蒸着工程は、処理基板SUBに有機層OR1を形成する前、つまり、第1蒸着部110に処理基板SUBを搬入する前に行うことが望ましい。
【0128】
まず、坩堝311に収容した第2有機材料を加熱する。これにより、第1ノズル313及び第2ノズル314から第2有機材料の放射が開始される(ステップST51)。
【0129】
そして、シャッター321を駆動し、開孔321Aが第2ノズル314及びカバー322の開孔322Aと同軸上に配置される。これにより、少なくとも1つの水晶振動子Cが第2ノズル314に対向し、第2有機材料の水晶振動子Cへの蒸着が開始される(ステップST52)。水晶振動子Cへの第2有機材料の蒸着が進行することにより、水晶振動子Cに下地膜が形成される。
【0130】
その後、第2ノズル314と対向した水晶振動子Cの周波数に基づいて、水晶振動子Cへの第2有機材料の蒸着が完了したか否か(つまり、水晶振動子Cに所定の厚さの下地膜が形成されたか否か)を判断する(ステップST53)。例えば、水晶振動子Cの周波数に基づいて測定される蒸着レートと設定蒸着レートとの差分が±2%以内であり、その蒸着レートが10分以上継続する場合に、第2有機材料の蒸着が完了したと判断することができる。あるいは、水晶振動子Cへの蒸着が開始されてから所定時間が経過した場合に、第2有機材料の蒸着が完了したと判断してもよい。さらには、水晶振動子Cの周波数が所定周波数に達した場合に、第2有機材料の蒸着が完了したと判断してもよい。
【0131】
第2有機材料の蒸着が完了したと判断された場合(ステップST53、YES)、ホルダ323が回転し、他の水晶振動子Cが第2ノズル314に対向し、この水晶振動子Cへの第2有機材料の蒸着が開始される(ステップST54)。
【0132】
これらのステップST52乃至ST54は、ホルダ323の上に位置するすべての水晶振動子Cに対して第2有機材料の蒸着が完了するまで繰り返し行われる。
【0133】
すべての水晶振動子Cに対して第2有機材料の蒸着が完了した場合(ステップST55、YES)、前蒸着工程を終了する。その後、搬送経路Tに沿った処理基板SUBの搬送が開始される(ステップST60)。
【0134】
図18は、処理基板SUBへの材料の蒸着工程を説明するためのフローチャートである。ここで説明する蒸着工程は、
図17に示したステップST60の処理基板SUBの搬送が開始された後に行われる。なお、ここで説明する蒸着工程が開始される前には、使用限度に達していない水晶振動子Cが開孔321A及び開孔322Aに重畳するようにセットされている。
【0135】
まず、第1透明層TL11が形成された処理基板SUBが第4蒸着部140に搬入され、搬送経路Tに沿って一定の速度で搬送される(ステップST61)。
【0136】
そして、処理基板SUBは、第2有機材料を放射している複数の第1ノズル313と対向するように搬送される。これにより、第1ノズル313から放射された第2有機材料は、処理基板SUBに蒸着される。
【0137】
一方で、第2ノズル314から放射された第2有機材料は、膜厚測定器320において、開孔321A及び開孔322Aを介して水晶振動子Cに蒸着される。膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数に基づいて、蒸着レートや、処理基板SUBに蒸着した第2有機材料の厚さを測定する(ステップST62)。膜厚測定器320で測定された蒸着レートに基づいて、坩堝311の加熱温度や、処理基板SUBの搬送速度が制御される。
【0138】
その後、第2有機材料の厚さが目標厚さに到達したことを確認した上で(ステップST63、YES)、処理基板SUBが第4蒸着部140から搬出される。
【0139】
その後、水晶振動子Cの周波数に基づいて、水晶振動子Cの使用限度に到達したか否かを判断する(ステップST64)。上記の通り、水晶振動子Cへの材料の付着に伴い、水晶振動子Cの周波数は減衰する。水晶振動子Cに多量の材料が付着すると、周波数の減衰率を正確に検出することができず、また、蒸着した材料の厚さを正確に検出することができない。このため、厚さを正確に検出可能な範囲で、水晶振動子Cに付着する材料の厚さに上限値を設定している。つまり、水晶振動子Cに付着した材料の厚さが上限値に到達した場合、水晶振動子Cの使用限度に到達したと判断することができる。なお、第4蒸着部140に搬入された処理基板SUBの個数(水晶振動子Cの使用回数)、蒸着工程の経過時間(水晶振動子Cの使用時間)などに上限値を設定し、これらの上限値に到達した場合に、水晶振動子Cの使用限度に到達したと判断してもよい。
【0140】
水晶振動子Cが使用限度に到達したと判断した場合(ステップST64、YES)、ホルダ323が回転し、他の水晶振動子Cが開孔321A及び開孔322Aに重畳するようにセットされる(ステップST65)。
【0141】
このように、本実施形態によれば、材料を蒸着する蒸着部では、水晶振動子Cを備えた膜厚測定器320により蒸着レートをモニタリングし、一定の蒸着レートに維持するように材料の加熱温度などを制御している。
【0142】
未使用の水晶振動子Cに蒸着されにくい第2有機材料を蒸着する第4蒸着部140では、処理基板SUBへの蒸着が開始される前に、予め全ての水晶振動子Cに対して第2有機材料を蒸着する前蒸着工程が行われる。このため、全ての水晶振動子Cは、第2有機材料の下地膜を有している。このため、処理基板SUBに蒸着された第2有機材料の厚さを正確に測定することができる。
【0143】
そして、測定に用いていた水晶振動子Cが使用限度に到達した場合、下地膜を有する他の水晶振動子Cに変更された後に、直ちに蒸着工程を行うことができる。したがって、生産効率の低下が抑制される。
【0144】
なお、ここでは、第4蒸着部140において前蒸着工程を行う例について説明したが、上電極UE1を形成するためのマグネシウムも第2有機材料と同様に、未使用の水晶振動子Cに蒸着されにくい。このため、第2蒸着部120においても、上記の前蒸着工程を行うことが望ましい。
【0145】
以上説明したように、本実施形態によれば、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0146】
以上、本発明の実施形態として説明した製造装置及び製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての製造装置及び製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0147】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0148】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0149】
DSP…表示装置
10…基板 SUB…処理基板
5…リブ AP1,AP2,AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1,SP2,SP3…副画素
20,201,202,203…表示素子(有機EL素子)
LE1,LE2,LE3…下電極
UE1,UE2,UE3…上電極
OR1,OR2,OR3…有機層
CP1,CP2,CP3…キャップ層
TL11、TL21、TL31…第1透明層
TL12、TL22、TL32…第2透明層
SE1,SE2,SE3…封止層
100…製造装置 110…第1蒸着部 120…第2蒸着部 130…第3蒸着部 140…第4蒸着部
300…蒸着部 310…蒸着源 313…第1ノズル 314…第2ノズル
320…膜厚測定器 322…カバー 323…ホルダ C…水晶振動子