(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044764
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240326BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240326BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240326BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240326BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240326BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/5415
C08L65/00
C08L45/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150504
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 美幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 侑利
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 和弘
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BC02
3D131BC09
3D131BC19
4J002AC08W
4J002BK00X
4J002CE00X
4J002DA037
4J002DJ016
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX088
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD158
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】タイヤリサイクルのために再生カーボンブラック(再生CB)をタイヤトレッドに使用するに際し、実用上十分な発熱性およびウェット性能が求められる。
【解決手段】ジエン系ゴム、シリカ、および再生CBを含有し、再生CBのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満、再生CBの窒素吸着比表面積N2SAと沃素吸着量IAの比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満、ジエン系ゴム100質量部中、SBRの割合が30質量部以上であり、ジエン系ゴム100質量部に対しシリカを40~150質量部および再生CBを1~10質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記シリカに対し、シランカップリング剤を5~15質量%の割合で配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカのCTAB比表面積が90~260m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、前記シリカと相互作用可能な官能基を有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、軟化点が100~160℃の炭化水素樹脂をさらに1~60質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項8】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関するものであり、詳しくは再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の保全や環境保護が注目される中、タイヤにおいてもリサイクル率の向上が求められている。そこで廃タイヤなど使用済みのゴム製品を熱分解して得られる再生カーボンブラックや(例えば下記特許文献1~3参照)、非石油原料由来の再生カーボンブラックの使用が提案されている。
しかし再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、タイヤの発熱性やウェット性能(湿潤状態の路面における制動性)に代表される各種性能が大幅に低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6553959号公報
【特許文献2】特開2012-1682号公報
【特許文献3】特許6856781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物において、再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)並びに窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAを適切な範囲に定め、かつシリカおよび再生カーボンブラックの配合量を特定の範囲に定めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれ、および/または、製造時の熱分解工程由来の不純物が含まれるため、発熱性やウェット性能が悪化するという問題点があった。その理由として、例えば再生カーボンブラックに含まれる不純物がゴム組成物に添加される充填剤の分散性を低下させることが原因の一つであると考えられる。そこで本発明者は鋭意検討を重ねた結果、再生カーボンブラックに不純物(例えば灰分)が存在する場合でも、特定範囲の前記ΔDBPおよび前記N2SA/IAを満たす再生カーボンブラックを採用することにより、前記課題を解決できることを見出した。
これにより本発明によれば、再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持し得るタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持するために、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を必須成分とする。なおSBRは、前記ジエン系ゴム100質量部中、30質量部以上、好ましくは50質量部以上を占めることが好ましい。
なお、前記ジエン系ゴムには、前記SBR以外にも必要に応じて、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
また本発明で使用されるSBRは、シリカと相互作用可能な官能基を有することが好ましい。
このようなSBRは、例えばシリカ表面のシラノール基と反応する化合物に由来する官能基を好ましくは末端に有し、具体的には、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基等を例示することができる。
シリカと相互作用可能な官能基を有するSBRは、公知の方法にしたがい合成することができ、あるいは、市販されているものを適宜採用することができる。例えば、エポキシ基で変性されたSBRとしては、ZSエラストマー株式会社製NS616等が挙げられ、ヒドロキシル基で変性されたSBRとしては、旭化成株式会社製TUFDENE E581等が挙げられる。
【0011】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカは、ウェット性能向上の観点から、CTAB吸着比表面積が90~260m2/gであるのが好ましく、130~230m2/gであるのがさらに好ましい。
なお、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である
【0012】
(再生カーボンブラック)
本発明で使用する再生カーボンブラック(以下、再生CBと言うことがある)は、DBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、かつ窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあることが必要である。前記ΔDBP並びにN2SA/IAが前記範囲を外れると、本発明の効果を奏することができない。
【0013】
前記ΔDBPは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、19ml/100g以下が好ましく、18ml/100g以下がさらに好ましい。
前記N2SA/IAは、本発明の効果がさらに高まるという観点から、0.8~1.9が好ましく、0.8~1.7がさらに好ましい。
【0014】
なお本発明において、DBP吸油量はASTM D2414に準拠して測定され、圧縮DBP(24M4DBP)はJIS K6217-4(圧縮試料)に基づいた24M4-DBP吸油量として測定され、N2SAはJIS K6217-2に準拠して測定され、IAはJIS K6217-1に準拠して測定される。
【0015】
前記圧縮DBP吸油量は、再生カーボンブラックのアグリゲーションを崩して測定されるものであり、該アグリゲーションを維持したDBP吸油量との差を測定することにより、ストラクチャーの崩れやすさを把握することができる。
ΔDBPが小さいほどストラクチャーの崩れにくく、つまりカーボンブラックとしての補強性能が低下していないと考えられる。
また、再生カーボンブラックの場合、その素原料となるタイヤの製造時に配合された複数種類のカーボンブラックは熱分解により破壊されずにその分布を保っていると推測される。よって、N2SA/IAを最適な範囲にすることにより再生カーボンブラックであっても必要上十分な補強性を示すことができる。
再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SAは、好ましくは65~105m2/gである。好ましいDBP吸油量は70~105ml/100gである。
【0016】
本発明で使用する再生カーボンブラックは、例えば次のような再生カーボンブラックであることができる。
(1)天然資源から誘導された再生カーボンブラック。天然資源としては各種製品の製造過程で生じた副産物等を挙げることができ、再生可能な原料と言える。前記副産物としてはとくに制限されないが、動植物油等が挙げられる。動植物油とは、動物油または植物油を意味し、動物油としては、魚油、タラ、サメなどの魚類肝臓から得られる脂肪油(肝油)、クジラから採取可能な海獣油のような水産動物油、並びに牛脂、豚脂等の陸産動物油等が挙げられる。植物油とは、植物の種子、果実、核等から採取される脂肪酸グリセリドを成分とする油脂が挙げられ、乾性油、半乾性油、不乾性油などのいずれでもよい。
天然資源から誘導された再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばOrion Engineered Carbons S.A.社製商品名ECORAX NATURE 200等が挙げられる。
(2)廃タイヤを加熱分解し、得られた熱分解油を原料として製造した再生カーボンブラック。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができる。
(3)廃タイヤを熱分解して生じた残渣カーボンブラックからなる再生カーボンブラック。廃タイヤの熱分解は公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、300℃以上、より標準的には600℃以上の温度の熱分解法が挙げられる。このような再生カーボンブラックは市販されているものを利用することができ、例えばEnrestec社製商品名PB365、Birla Carbon社製CONTINUA8000、山東開元社製LN607等が挙げられる。
【0017】
上述のように、再生カーボンブラックに不純物が存在する。不純物の一例としては灰分が挙げられ、例えば前記(1)および(2)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には0.5質量%以下、さらに具体的には0.4質量%以下含んでいる。
また前記(3)の再生カーボンブラックは、灰分を具体的には1~30質量%、さらに具体的には3~25質量%含んでいる。
このように灰分を含む再生カーボンブラックを使用する場合でも、本発明では特定範囲の前記ΔDBPおよび前記N2SA/IAを満たす再生カーボンブラックを使用するため、発熱性およびウェット性能の低下を大幅に抑制することができる。
なお灰分は、公知のICP法により測定される。
【0018】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム、シリカおよび前記再生カーボンブラックを含み、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなることを特徴とする。
前記シリカの配合量が40質量部未満であるとウェット性能が悪化し、逆に150質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記再生カーボンブラックの配合量が1質量部未満であると配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に10質量部を超えるとウェット性能が悪化する。
【0019】
また、本発明の効果が向上するという観点から、下記の配合条件を満たすことが好ましい。
(i)前記シリカの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、50~130質量部であるのが好ましい。
(ii)前記再生カーボンブラックの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し3~8質量部であるのが好ましい。
【0020】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;カーボンブラック(前記再生カーボンブラックを除く);シランカップリング剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであればよく、例えばビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカに対し、例えば5~15質量%の割合が好ましい。
【0022】
(アルキルアルコキシシラン)
本発明では、ウェット性能をさらに高めるという観点から、下記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。
【0023】
【0024】
(式(1)中、R1は炭素数3~20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
ここで、R1の炭素数3~20のアルキル基としては、中でも、炭素数7~20のアルキル基が好ましく、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8~10のアルキル基がさらに好ましく、オクチル基、ノニル基であるのがとくに好ましい。
前記アルキルアルコキシシランは市販されているものを利用することができ、例えばn-オクチルトリエトキシシランである信越化学工業株式会社製KBE-3083等が挙げられる。
アルキルアルコキシシランの配合量は、前記シリカに対して3~20質量%が好ましく、5~15質量%であるのがさらに好ましい。
【0025】
(カーボンブラック)
本発明においてカーボンブラック(以下、CBと言うことがある)を使用する形態において、カーボンブラックは、とくに制限されないが、窒素吸着比表面積N2SAが50~170m2/gであり、かつDBP吸油量が60~140ml/100gであるのが好ましい。
前記カーボンブラックのN2SAおよびDBP吸油量が前記範囲であることにより、本発明の前記効果がさらに向上する。
なお、カーボンブラックを配合する場合、その配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し1~50質量部であるのが好ましく、5~20質量部であるのがさらに好ましい。
また、カーボンブラックを配合する場合、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計の総量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し5~30質量部であるのが好ましい。
【0026】
また本発明のゴム組成物は、本発明の効果が向上するという観点から、軟化点が100~160℃の炭化水素樹脂を配合するのが好ましい。炭化水素樹脂としては、具体的には芳香族変性テルペン樹脂が挙げられ、芳香族変性テルペン樹脂としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペン樹脂と、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が有効に使用される。芳香族変性テルペン樹脂は、市販されているものを利用することができ、例えばヤスハラケミカル株式会社製YSレジン TO-125(テルペンスチレン樹脂、Mw=2000、軟化点120~130℃)等が挙げられる。
炭化水素樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~60質量部が好ましく、5~40質量部がさらに好ましい。
【0027】
(製造方法)
本発明の製造方法は、SBRを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有し、これらの成分の混合の順番および混合時のミキサー温度に特徴を有する。
すなわち、前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し、混練する第1工程と、前記第1工程後、必要に応じて複数回の混練工程(第2工程)があり、そして最後に加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有する。
前記第1工程において、前記再生カーボンブラックとともに投入する成分は、加硫系成分を除いてはとくに制限されない。例えば、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラック並びに必要に応じて添加される各種成分を同時に投入することができる。なお必要に応じて添加される各種成分とは、各種樹脂、酸化亜鉛、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を指す。
また、前記ジエン系ゴム、前記カーボンブラックおよび必要に応じて添加される各種成分から選択された1種以上の成分を続く第2工程で投入し混練してもよいが、少なくとも、前記再生カーボンブラックと、前記カーボンブラックと、前記シリカとは第1工程で同時に投入するのが好ましい。
前記第1工程終了後、得られた混合物に最終工程で加硫系成分を投入し、さらに混練する。加硫系成分とは、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤を含む。
【0028】
前記第1工程において、再生カーボンブラックの分散性を高めるという理由から、再生カーボンブラックの投入時温度は100℃未満、好ましくは50~90℃であるのがよい。前記第1工程において、再生カーボンブラックの投入はその他の成分と共に行ってもよく、また例えば60秒以下の範囲でその他の成分を先に混練した後に、再生カーボンブラックを投入してもよい。再生カーボンブラック投入後の混練時間は例えば1.5分~5分である。第1工程におけるミキサーの到達温度は140℃~180℃であるのが好ましい。ミキサー内の混練温度は、例えばミキサーに設置された熱電対等の公知の温度制御手段で制御することができる。
最終工程において、ミキサー内の混練温度は、例えば80~120℃が好ましい。混練時間は例えば0.5分~3分である。
なお、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは、ゴム組成物に一般的に使用される公知のバンバリーミキサー、ロール等であることができる。また、工程間で混合物を一旦ミキサー外に放出し、冷却してもよいし、工程間でミキサー内で時間的間隔をあけて混合物を冷却してもよい。また、第1工程、第2工程および最終工程において使用されるミキサーは同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明のゴム組成物は、再生カーボンブラックを配合しても、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持し得ることから、タイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。また、タイヤとしてはオールシーズンタイヤまたはスタッドレスタイヤであることもできる。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0031】
標準例1~2、実施例1~20および比較例1~9
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで90℃または130℃で5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0032】
発熱性:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、低発熱性であることを示す。
ウェット性能:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほどウェット性能に優れることを示す。
【0033】
なお、比較例1~5および実施例1~11は標準例1と比較され、比較例6~9および実施例12~20は標準例2と比較される。
【0034】
結果を表1および2に示す。
【0035】
【0036】
【0037】
*1:SBR(ZSエラストマー株式会社製 NS616)
*2:BR(ZSエラストマー株式会社製 Nipol BR1220)
*3:NR(PT.KIRANA SAPTA製SIR20)
*4:シリカ1(Solvay社製ZEOSIL1165MP、CTAB比表面積=160m2/g)
*5:シリカ2(Evonik社製Ultrasil 9000GR、CTAB比表面積=200m2/g)
*6:HAF カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シースト3、窒素吸着比表面積(N2SA)=79m2/g、DBP吸油量=101ml/100g)
*7:再生カーボンブラック(Enrestec社製商品名PB365、DBP吸油量=88ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=11ml/100g、N2SA=76m2/g、IA=95mg/g、N2SA/IA=0.8)
*8:再生カーボンブラック(メーカーサンプル品、DBP吸油量=98ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=96ml/100g、ΔDBP=2ml/100g、N2SA=102m2/g、IA=86mg/g、N2SA/IA=1.2)
*9:再生カーボンブラック(OEC社製商品名ECORAX NATURE200、DBP吸油量=72ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=69ml/100g、ΔDBP=3ml/100g、N2SA=82m2/g、IA=86mg/g、N2SA/IA=1.0)
*10:再生カーボンブラック(LDC社製商品名GCB774G、DBP吸油量=97ml/100g、圧縮DBP吸油量(24M4DBP)=77ml/100g、ΔDBP=22ml/100g、N2SA=70m2/g、IA=109mg/g、N2SA/IA=0.6)
*11:加工助剤(Struktol社製HT207)
*12:アルキルアルコキシシラン(信越化学工業株式会社製KBE-3083)
*13:シランカップリング剤(Evonik社製Si69)
*14:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*15:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*16:老化防止剤(EASTMAN社製6PPD)
*17:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*18:炭化水素樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製YSレジン TO-125)
*19:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*20:加硫促進剤CZ(三新化学工業株式会社製サンセラーCM-G)
*21:加硫促進剤DPZ(住友化学株式会社製ソクシールD-G)
【0038】
表1~2の結果から、各実施例のゴム組成物は、SBRを含むジエン系ゴム、シリカ、および再生カーボンブラックを含有し、前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなることを特徴としているので、標準例1~2のゴム組成物に比べ、実用上十分な発熱性およびウェット性能を維持し得ることが分かる。
【0039】
一方、比較例1は、再生カーボンブラックのΔDBPが本発明で規定した上限を超え、N2SA/IAが本発明で規定した下限未満であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例2は、再生カーボンブラックの配合量が本発明で規定した上限を超えているので、ウェット性能が悪化した。
比較例3は、シリカの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例4は、シリカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性およびウェット性能が悪化した。
比較例5は、ジエン系ゴム100質量部中、SBRの割合が本発明で規定する下限未満であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例6は、再生カーボンブラックのΔDBPが本発明で規定した上限を超え、N2SA/IAが本発明で規定した下限未満であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例7は、再生カーボンブラックの配合量が本発明で規定した上限を超えているので、発熱性およびウェット性能が悪化した。
比較例8は、シリカの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例9は、シリカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性およびウェット性能が悪化した。
【0040】
本発明は、下記実施形態を包含する。
実施形態1:
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
実施形態2:
前記シリカに対し、シランカップリング剤を5~15質量%の割合で配合してなることを特徴とする実施形態1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態3:
前記シリカのCTAB比表面積が90~260m2/gであることを特徴とする実施形態1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態4:
前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、前記シリカと相互作用可能な官能基を有することを特徴とする実施形態1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態5:
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、軟化点が100~160℃の炭化水素樹脂をさらに1~60質量部配合してなることを特徴とする実施形態1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
実施形態6:
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム、シリカおよび再生カーボンブラック並びに加硫系成分を混合する工程を有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記再生カーボンブラックを100℃未満で投入し混練する第1工程と、
前記第1工程後、加硫系成分を投入しさらに混練する最終工程と、を有し、
前記再生カーボンブラックのDBP吸油量と圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の差(ΔDBP)が20ml/100g未満であり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SA(単位m2/g)と沃素吸着量IA(単位mg/g)の比であるN2SA/IAが0.8以上2.0未満の範囲にあり、かつ
前記ジエン系ゴム100質量部中、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの割合が30質量部以上であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを40~150質量部および前記再生カーボンブラックを1~10質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
実施形態7:
実施形態1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
実施形態8:
実施形態1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤ。