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特開2024-44771燃料電池装置、運転制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044771
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃料電池装置、運転制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04537 20160101AFI20240326BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04313
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150512
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB23
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA13
5H127BB02
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB69
(57)【要約】
【課題】ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制する。
【解決手段】平均値と設定されたメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する運転状態判定部34と、判定結果に基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する運転制御部35と、を備え、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、運転状態判定部34は、予め定められたタイミングで、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メリット低下抑制を実行可能な燃料電池装置であって、
エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する負荷計測部と、
所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する負荷演算部と、
メリット判定閾値を設定する閾値設定部と、
前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する運転状態判定部と、
前記運転状態判定部の判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する運転制御部と、
を備え、
前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記運転状態判定部は、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
負荷計測部と、負荷演算部と、閾値設定部と、運転状態判定部と、運転制御部と、を備え、メリット運転低下抑制を実行可能な燃料電池装置における運転制御方法であって、
前記負荷計測部が、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する第1の工程と、
前記負荷演算部が、所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する第2の工程と、
前記閾値設定部が、メリット判定閾値を設定する第3の工程と、
前記運転状態判定部が、前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する第4の工程と、
前記運転制御部が、前記第4の工程における判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する第5の工程と、
を備え、
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記第4の工程において、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または運転停止を判定することを特徴とする運転制御方法。
【請求項5】
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とする請求項4に記載の運転制御方法。
【請求項6】
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とする請求項5に記載の運転制御方法。
【請求項7】
負荷計測部と、負荷演算部と、閾値設定部と、運転状態判定部と、運転制御部と、を備え、メリット運転低下抑制を実行可能な燃料電池装置における運転制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記負荷計測部が、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する第1の工程と、
前記負荷演算部が、所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する第2の工程と、
前記閾値設定部が、メリット判定閾値を設定する第3の工程と、
前記運転状態判定部が、前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する第4の工程と、
前記運転制御部が、前記第4の工程における判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する第5の工程と、
を備え、
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記第4の工程において、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または運転停止を判定することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置、運転制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、次世代エネルギーとして、水素ガスと酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができる燃料電池と、この燃料電池を稼動するための補機類とを外装ケースに収納してなる燃料電池装置およびその運転方法が提案されている。
【0003】
燃料電池は、燃料が内包している化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換するシステムとして優れた利便性を有する。
また、燃料電池は、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させて直接電気を取り出すものであるため、高い効率で電気エネルギーを取り出すことができると同時に、静かで有害な排ガスを出さないという利点を有し、環境に優しいシステムである。
【0004】
一方で、燃料電池は、電力負荷の大きさに応じて、その発電電力を変化させるような電力負荷追従運転が可能であるが、電力負荷が非常に小さい場合や熱負荷が非常に小さい場合などでは、燃料電池を最低出力で運転しても燃料電池で発生した電力や熱の余剰が生じるため、燃料電池を運転することによって得られるはずであった運転メリット(例えば、消費一次エネルギーの削減量、エネルギーコストの削減量、排出二酸化炭素の削減量等)が減少する。
そのため、電力負荷が非常に小さい場合や熱負荷が非常に小さい場合等では、燃料電池の運転を停止することが要求される。
【0005】
上記のような問題に対して、適切なタイミングで固体酸化物形燃料電池の運転と停止を行うことで、運転メリットの低下を抑制する技術として、エネルギー負荷部で要求される負荷エネルギーを計測する負荷計測部と、所定の判定対象期間で計測された負荷計測部の負荷計測値の平均演算値を算出する負荷演算部と、平均演算値または平均演算値から導出される代替値のいずれかと判定しきい値とに基づいて運転継続または運転停止を判定する運転判定部と、判定しきい値を設定するしきい値設定部と、運転判定部の判定結果に基づいて、固体酸化物形燃料電池に対する運転継続指令または運転停止指令を与える運転制御部と、を備えた燃料電池システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-174750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、家庭内負荷計測値の平均演算値もしくは平均演算値から導出される代替値を、月に1度の頻度でメリット判定閾値を比較して、燃料電池システムの運転継続あるいは運転停止を判断するものであり、しかも、判定閾値も一定であるため、一旦停止してしまうと少なくとも1か月間は、運転されないことから、特に、ユーザの要求負荷が急増する、例えば、秋から冬の時期には、かえって、運転メリットを損ねることになるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制する燃料電池装置、運転制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、メリット低下抑制を実行可能な燃料電池装置であって、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する負荷計測部と、所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する負荷演算部と、メリット判定閾値を設定する閾値設定部と、前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する運転状態判定部と、前記運転状態判定部の判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する運転制御部と、を備え、前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記運転状態判定部は、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定することを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0012】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、負荷計測部と、負荷演算部と、閾値設定部と、運転状態判定部と、運転制御部と、を備え、メリット運転低下抑制を実行可能な燃料電池装置における運転制御方法であって、前記負荷計測部が、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する第1の工程と、前記負荷演算部が、所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する第2の工程と、前記閾値設定部が、メリット判定閾値を設定する第3の工程と、前記運転状態判定部が、前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する第4の工程と、前記運転制御部が、前記第4の工程における判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する第5の工程と、を備え、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記第4の工程において、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または運転停止を判定することを特徴とする運転制御方法を提案している。
【0013】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とする運転制御方法を提案している。
【0014】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とする運転制御方法を提案している。
【0015】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、負荷計測部と、負荷演算部と、閾値設定部と、運転状態判定部と、運転制御部と、を備え、メリット運転低下抑制を実行可能な燃料電池装置における運転制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記負荷計測部が、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する第1の工程と、前記負荷演算部が、所定の判定対象期間にわたって計測された前記負荷計測部による負荷計測値の平均値を算出する第2の工程と、前記閾値設定部が、メリット判定閾値を設定する第3の工程と、前記運転状態判定部が、前記平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する第4の工程と、前記運転制御部が、前記第4の工程における判定結果に基づいて、前記メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する第5の工程と、を備え、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、前記第4の工程において、予め定められたタイミングで、前記メリット低下抑制における運転継続または運転停止を判定することを特徴とするプログラムを提案している。
【0016】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有していることを特徴とするプログラムを提案している。
【0017】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第3の工程において設定される前記メリット判定閾値は、前記メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となることを特徴とするプログラムを提案している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る制御ユニットの構成を示す図である。
図3】本実施形態に係るメリット時におけるメリット判定閾値の変遷を示した図である。
図4】本実施形態に係る制御ユニットの処理を示す図である。
図5】本実施形態に係る制御ユニットの処理を示す図である。
図6】本実施形態に係る制御ユニットの処理を示す図である。
図7】本実施形態に係る制御ユニットの処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
図1から図7を用いて、本実施形態に係る燃料電池装置1について説明する。
【0021】
<燃料電池装置1の構成>
図1に示すように、燃料電池装置1は、燃料電池モジュール11と、貯湯タンク12と、電力負荷部13と、熱負荷部14と、湯水供給路15と、排熱回収路16と、排熱回収用ポンプ17と、放熱器18と、補助熱源部21と、インバータ22と、商用電源25と、制御ユニット30と、を含んで構成されている。
【0022】
燃料電池モジュール11は、箱状の収容容器の内部にセルスタックと、改質器と、を収容して構成されている。
燃料電池モジュール11は、燃料電池セルが複数積み重なったスタック構造となっている。
燃料電池セルは、平板型、中空平板型、円筒型、横縞型等、公知のタイプのものを利用することができる。燃料電池セルスタックは、例えば、内部を燃料ガスが長手方向(稼動時上下方向)に流通する燃料ガス流路(図示せず)を有する中空平板型の燃料電池セルを立設させた状態で一列に配列し、隣接する燃料電池セル間が集電部材を介して電気的に直列に接続されて構成されている。
【0023】
貯湯タンク12は、熱交換器19において生成されたお湯を蓄える。
貯湯タンク210と後述する排熱回収路16とを含む循環配管が設けられており、循環配管を循環させることによって、貯湯タンク12に蓄えられるお湯の温度を管理している。
【0024】
電力負荷部13は、熱負荷部14とともに、エネルギー負荷を構成する。
燃料電池モジュール11の運転により発生した電気エネルギーは電力負荷部13に供給され、燃料電池モジュール11の運転により発生した熱エネルギーは熱負荷部14に供給される。
電力負荷部13は、商用電源25から供給される電力を消費することもでき、熱負荷部14は、例えば燃料を燃焼して熱を発生する補助熱源部21から供給される熱を消費することもできる。
【0025】
排熱回収用ポンプ17は、排熱回収路16における湯水を流動させる。
排熱回収用ポンプ17の動作は、制御ユニット30により制御され、例えば、制御ユニット30は、お湯を生成するために、排熱回収用ポンプ17を動作させて、貯湯タンク12の下部に貯えられている相対的に低温の湯水を排熱回収路16に流す。
【0026】
放熱器18は、排熱回収路16内に設けられ、排熱回収路16を通って貯湯タンク12から熱交換器19へと流れる湯水からの放熱を行う。
制御ユニット30は、貯湯タンク12から熱交換器19へと流れる湯水の温度が設定上限温度未満の場合には、放熱器18の動作を停止させる。
一方で、制御ユニット30は、貯湯タンク12から熱交換器19へと流れる湯水の温度が上記設定上限温度以上である場合には、放熱器18を放熱作動させて湯水の温度を低下させる。
【0027】
インバータ22は、燃料電池モジュール11の発電電力としての直流電力を交流電力に変換する。
インバータ22は、発電電力供給ラインL1を介して受電電力供給ラインL2に電気的に接続され、燃料電池モジュール11からの発電電力がインバータ22及び発電電力供給ラインL1及び受電電力供給ラインL2を介して電力負荷部13に供給される。
【0028】
制御ユニット30は、図示しないROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにより、燃料電池装置1全体の動作を制御する。
制御ユニット30は、通常運転制御に加え、メリット低下抑制に関する制御を実行する。
ここで、「メリット低下抑制」とは、ユーザによる電力需要が少ない場合に、燃料ガスや水の消費量と発電電力量のバランスが崩れてしまい、燃料電池装置1を通常運転するよりも燃料電池装置1の運転を停止した方がランニングコスト等の観点から有利である場面において、燃料電池装置1を運転させるメリットの有無を判定して、燃料電池装置1の運転あるいは停止を制御することである。
本実施形態において、制御ユニット30は、メリット判定閾値を設定し、電力需要の平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定し、その判定結果に基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する。
ここで、「メリット判定閾値」とは、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定するための閾値である。
【0029】
<制御ユニット30の構成>
図2に示すように、本実施形態に係る制御ユニット30は、負荷計測部31と、負荷演算部32と、閾値設定部33と、運転状態判定部34と、運転制御部35と、を含んで構成されている。
【0030】
負荷計測部31は、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギー量を計測する。
負荷計測部31は、エネルギー負荷(電力負荷および熱負荷)として要求される負荷エネルギーを所定の判定対象期間(例えば、14日間)にわたって所定のサンプリング間隔(例えば、1時間から数時間)で計測して、負荷計測値をする計測プロセスを繰り返す。
【0031】
負荷演算部32は、所定の判定対象期間にわたって計測された負荷計測部31による負荷計測値の移動平均値を算出する。
なお、移動平均値を例示したが、所定期間における負荷計測値群を代表する値である算術平均値、重み付き平均値、中間値、最頻値等であってもよい。
【0032】
閾値設定部33は、メリット判定閾値を設定する。
メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下するよう設定される。
また、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有している。
また、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、一定値となる。
【0033】
運転状態判定部34は、移動平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する。
具体的には、メリット判定閾値には、通常運転中において運転継続を判定するための停止閾値と、運転停止中において通常運転への再起動を判定するめの再起動閾値がある。
運転状態判定部34は、負荷計測値の移動平均値と閾値設定部33に設定されたメリット判定閾値とに基づいて、図3に示すように、例えば、移動平均値が停止閾値を下回ったときに、通常運転からの運転停止(メリット低下抑制への移行)の判定を行う。
そして、運転状態判定部34が通常運転からの運転停止の判定を行った後に、閾値設定部33により設定される再起動閾値を移動平均値が上回ったときに、通常運転への再起動を判定する。
なお、判定のタイミングとしては、24時間間隔を例示することができる。
また、再起動閾値は、所定の期間が経過すると一定値になるが、この一定値は停止閾値よりも高い値としている。
【0034】
運転制御部35は、運転状態判定部34の判定結果に基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する。
【0035】
<制御ユニット30の処理1>
図4を用いて、本実施形態に係る制御ユニット30における移動平均値の計測処理までの流れについて説明する。
【0036】
まず、制御ユニット30は、ユーザのリモコン操作により燃料電池装置1が通常運転モードになったか否かを判定する(ステップS110)。
そして、制御ユニット30は、ユーザのリモコン操作により燃料電池装置1が通常運転モードになっていないと判定する場合(ステップS110の「NO」)には、処理を終了する。
【0037】
一方で、制御ユニット30は、ユーザのリモコン操作により燃料電池装置1が通常運転モードになっていると判定する場合(ステップS110の「YES」)には、制御ユニット30は、予め定めた需要電力算出期間(例えば24時間)が経過しているか否かを判定する(ステップS120)。
そして、制御ユニット30は、予め定めた需要電力算出期間が経過していないと判定する場合(ステップS120の「NO」)には、処理を終了する。
【0038】
また、制御ユニット30は、予め定めた需要電力算出期間が経過していると判定する場合(ステップS120の「YES」)には、負荷計測部31に対して、需要電力の算出処理を実行させる(ステップS130)。
そして、負荷計測部31において計測された需要電力は、負荷演算部32に送出される。
【0039】
次いで、制御ユニット30は、負荷演算部32に対して、平均需要電力(移動平均値)を算出する処理を実行させる(ステップS140)。
そして、負荷演算部32において算出された平均需要電力は、運転状態判定部34に送出される。
【0040】
制御ユニット30は、負荷演算部32において判定対象期間が経過したか否かを判定する(ステップS150)。
そして、制御ユニット30は、負荷演算部32において判定対象期間が経過していないと判定する場合(ステップS150の「NO」)には、処理を終了し、再び処理が開始される。
【0041】
一方で、制御ユニット30は、負荷演算部32において判定対象期間が経過したと判定する場合(ステップS150の「YES」)には、運転状態判定部34によるメリット低下抑制判定処理に処理を移行させて終了する。
【0042】
<制御ユニット30における処理2>
図5を用いて、本実施形態に係る制御ユニット30におけるメリット判定閾値の設定処理までの流れについて説明する。
【0043】
制御ユニット30は、燃料電池装置1にメリット低下抑制による運転停止が発生したか否かを判定する(ステップS210)。
そして、制御ユニット30は、燃料電池装置1にメリット低下抑制による運転停止が発生していないと判定する場合(ステップS210の「NO」)には、メリット判定閾値に初期値を設定し(ステップS220)、処理を終了する。
【0044】
一方で、制御ユニット30は、燃料電池装置1にメリット低下抑制による運転停止が発生したと判定する場合(ステップS210の「YES」)には、計時処理を実行する(ステップS230)。計時処理によって、次回のメリット低下抑制の判定(判定タイミング)までの時間を計測する。
【0045】
制御ユニット30は、計時処理において所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS240)。
なお、本実施形態においては、24時間ごとに運転継続または通常運転への再起動を判定しているので、運転停止が発生してから24時間経過したかを判定する。
そして、制御ユニット30は、計時処理において所定時間が経過していないと判定する場合(ステップS240の「NO」)には、計時処理を継続する。
【0046】
制御ユニット30は、メリット判定閾値の初期値に対して、時間経過とともに、所定の傾きをもってメリット判定閾値が低下するようなメリット判定閾値減算処理を実行する(ステップS250)。
【0047】
次いで、制御ユニット30は、メリット判定閾値減算処理結果を受けて、処理結果を所定の判定タイミングにおけるメリット判定閾値に設定するメリット判定閾値設定処理を実行する(ステップS260)。
そして、その後、計時を初期化する(ステップS270)。
【0048】
そして、制御ユニット30は、メリット判定閾設定算処理で設定されたメリット判定閾値と予め定められたメリット判定閾値の設定下限値とを比較し、メリット判定閾値演算処理で得られたメリット判定閾値が、予め定められたメリット判定閾値の設定下限値以上であるか否かを判定する(ステップS280)。
このとき、制御ユニット30は、メリット判定閾値演算処理で得られたメリット判定閾値が、予め定められたメリット判定閾値の設定下限値以上であると判定する場合(ステップS280の「YES」)には、処理を終了する。
【0049】
一方で、制御ユニット30は、メリット判定閾値演算処理で得られたメリット判定閾値が、予め定められたメリット判定閾値の設定下限値以上ではないと判定する場合(ステップS280の「NO」)には、メリット判定閾値演算処理で得られたメリット判定閾値を下限値として(ステップS280)、処理を終了する。
【0050】
なお、処理を終了した場合は、ステップS220、S260、S290のいずれかで設定されたメリット判定閾値を記憶して、再び処理が開始される。
【0051】
<制御ユニット30における処理3>
図6図7を用いて、本実施形態に係る制御ユニット30におけるメリット低下抑制処理について説明する。
【0052】
制御ユニット30は、メリット判定閾値が平均需要電力よりも大きいか否かを判定する(ステップS310)。
そして、制御ユニット30は、メリット判定閾値が平均需要電力よりも大きいと判定した場合(ステップS310の「YES」)には、処理をステップS320に遷移させる。
【0053】
制御ユニット30は、燃料電池装置1が運転中か否かを判定する(ステップS320)。そして、制御ユニット30は、燃料電池装置1が運転中ではないと判定する場合(ステップS320の「NO」)には、処理をステップS310に戻す。
【0054】
一方で、制御ユニット30は、燃料電池装置1が運転中であると判定する場合(ステップS320の「YES」)には、ユーザに対して、燃料電池装置1の運転を中止する旨を報知する(ステップS330)。
【0055】
次いで、制御ユニット30は、ユーザからメリット運転への移行に伴う通常運転停止を不許可とする入力があったか否かを判定する(ステップS340)。
そして、制御ユニット30は、ユーザからメリット運転への移行に伴う通常運転停止を不許可とする入力があったと判定する場合(ステップS340の「YES」)には、メリット運転への移行に伴う通常運転停止を実行することなく、通常運転を継続させる処理を行って(ステップS350)、処理を終了する。
【0056】
一方で、制御ユニット30は、ユーザからメリット運転への移行に伴う通常運転停止を不許可とする入力はなかったと判定する場合(ステップS340の「NO」)には、所定のタイミングが経過したか否かを判断する(ステップS380)。
そして、制御ユニット30は、所定のタイミングが経過していないと判断する場合(ステップS380の「NO」)には、ステップS380の判定を継続する。
【0057】
他方で、制御ユニット30は、所定のタイミングが経過したと判断する場合(ステップS380の「YES」)には、メリット低下抑制による燃料電池装置1の運転停止処理を実行して(ステップS390)、処理を終了する。
【0058】
また、制御ユニット30は、ステップS310において、メリット判定閾値が平均需要電力よりも小さいと判定した場合(ステップS310の「NO」)には、燃料電池装置1の現在の状態が、メリット低下抑制による運転停止であるか否かを判定する(ステップS360)。
【0059】
そして、制御ユニット30は、メリット低下抑制による燃料電池装置1の運転停止ではないと判定する場合(ステップS360の「NO」)には、処理を終了する。
一方で、制御ユニット30は、メリット低下抑制による燃料電池装置1の運転停止であると判定する場合(ステップS360の「YES」)には、メリット低下抑制による燃料電池装置1の現在の運転停止状態から燃料電池装置1を再起動させる処理を行って(ステップS370)、終了する。
【0060】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る燃料電池装置1における制御ユニット30の移動平均値とメリット判定閾値とに基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する運転状態判定部34と、運転状態判定部の判定結果に基づいて、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動の制御を実行する運転制御部35と、を備え、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下し、運転状態判定部34は、予め定められたタイミングで、メリット低下抑制における運転継続または通常運転への再起動を判定する。
つまり、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値が最も高く、それ以降は、閾値が低下するようにすることによって、電力需要の急増に、機動的に対応することができる。
そのため、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る燃料電池装置1における制御ユニット30の負荷演算部32は、所定の判定対象期間にわたって計測された負荷計測部31による負荷計測値の移動平均値を算出するが、この所定の判定対象期間を適正化することにより、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1における制御ユニット30のメリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間を有している。
つまり、メリット低下抑制に移行した場合、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間、すなわち、メリット低下抑制に移行した後の時間経過に比例して、メリット判定閾値が低下する期間を有している。
換言すれば、メリット低下抑制に移行した後は、時間経過とともに、メリット低下抑制から通常運転に切り替わるハードルが低くなる。
そのため、様々な要因によって、電力需要が増した場合であっても、ユーザの要望に機動的に対応することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1における制御ユニット30のメリット判定閾値は、メリット低下抑制における運転停止後、最初の運転状態判定における閾値から所定の傾きで低下する期間の経過後、通常運転における予め定められた運転停止を判定する閾値よりも高い値で、一定値となる。
つまり、メリット低下抑制に移行した後、相当な時間が経過した場合には、メリット低下抑制の恩恵を欲するユーザの要望と、急激な電力需要の増大に機動的に対応して欲しいというユーザの要望とを両立できるようなメリット判定閾値の設定となっている。
そのため、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
【0063】
<変形例1>
本実施形態においては、エネルギー負荷として要求される負荷エネルギーを所定の判定対象期間として、14日間を例示したが、季節や地域差等のパラメータを加味して、流動的に期間を設定できるようにしてもよい。
このようにすることにより、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
【0064】
<変形例2>
本実施形態においては、メリット判定閾値は、メリット低下抑制における初回の運転停止判定時の値から所定の傾きで低下することを例示したが、季節や地域差等のパラメータを加味して、メリット判定閾値の傾きを流動的に設定できるようにしてもよい。
このようにすることにより、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
【0065】
<変形例3>
本実施形態においては、運転状態判定部34の判定タイミングを24時間と例示したが、電力需要の動きが上昇局面に転じ、メリット判定閾値に近い値を推移している場合には、判定タイミングを短い間隔に可変してもよい。
このようにすることにより、ユーザの要望に的確に応えるとともに、運転メリットの低下を抑制することができる。
【0066】
なお、制御ユニット30等の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを制御ユニット30等に読み込ませ、実行することによって本発明の燃料電池装置1を実現することができる。
ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0067】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1;燃料電池装置
11;燃料電池モジュール
12;貯湯タンク
13;電力負荷部
14;熱負荷部
15;湯水供給路
16;排熱回収路
17;排熱回収用ポンプ
18;放熱器
21;補助熱源部
22;インバータ
25;商用電源
30;制御ユニット
31;負荷計測部
32;負荷演算部
33;閾値設定部
34;運転状態判定部
35;運転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7