(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044779
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
B29B 15/14 20060101AFI20240326BHJP
B29K 105/18 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
B29B15/14
B29K105:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150520
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晋大
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AC06
4F072AC10
4F072AD46
4F072AH06
4F072AH42
4F072AH49
4F072AL01
4F072AL02
4F072AL11
4F072AL17
(57)【要約】
【課題】圧縮強度を高めることができる繊維強化複合材を提供する。
【解決手段】本発明に係る繊維強化複合材は、繊維束と、樹脂と、無機フィラーとを含み、下記式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aが、7.3×10
5個/cm
3以上1.1×10
12個/cm
3以下である。
【数1】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm
3)
D:特定の無機フィラー径の測定方法により求められる無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm
3)
W:特定の無機フィラーの重量Wの測定方法により求められる無機フィラーの重量W(g)
V:特定の試験片(2)の体積(cm
3)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束と、樹脂と、無機フィラーとを含み、
下記式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aが、7.3×10
5個/cm
3以上1.1×10
12個/cm
3以下である、繊維強化複合材。
【数1】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm
3)
D:下記の無機フィラー径の測定方法により求められる無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm
3)
W:下記の無機フィラーの重量Wの測定方法により求められる無機フィラーの重量W(g)
V:下記の試験片(2)の体積(cm
3)
無機フィラー径の測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(1)を得る。試験片(1)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の試料をコールターカウンターにより分析したときの粒子の最頻径を、無機フィラーの最頻径Dとする。
無機フィラーの重量Wの測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(2)を得る。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を、無機フィラーの重量Wとする。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を測定し、第1の重量とする。加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の残留物の重量を測定し、第2の重量とする。第1の重量から第2の重量を差し引いた値を、無機フィラーの重量Wとする。
【請求項2】
前記無機フィラーの最頻径Dが、0.4×10-4cm以上である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
【請求項3】
前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、0.05以上である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
【請求項4】
前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、0.05以上1.0以下であり、
前記無機フィラーの個数密度Aが、1.8×109個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
【請求項5】
前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、1.0を超え3.0以下であり、
前記無機フィラーの個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上2.6×106個/cm3以下である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
【請求項6】
前記無機フィラーが、球状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項7】
前記無機フィラーが、シリカ粒子、金属粒子又は炭素粒子である、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項8】
前記繊維束が、炭素繊維束、アラミド繊維束又はガラス繊維束である、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束と樹脂と無機フィラーとを含む繊維強化複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス樹脂が、炭素繊維等の強化繊維によって強化された繊維強化複合材が知られている。繊維強化複合材は、軽量でありながら、強度、剛性及び寸法安定性に優れるという利点を有する。そのため、繊維強化複合材は、自動車及び航空機等の車両、事務機器、ICトレイ、ノートパソコンの筐体、止水板、並びに風車翼等の様々な用途に用いられており、その需要は年々増加しつつある。
【0003】
繊維強化複合材は、一般に、繊維間部分に樹脂を含浸させることにより製造されている。
【0004】
下記の特許文献1には、繊維間部分への樹脂の含浸性を高めるために、開繊された炭素繊維束を用いる方法が記載されている。具体的には、下記の特許文献1には、上記開繊された炭素繊維束として、炭素繊維束に、特定の有機化合物(A)と特定の微粒子(B)とを含むサイジング剤が塗布された炭素繊維束を用いる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような、フィラーによって開繊された炭素繊維束を用いることにより、繊維間部分に樹脂をある程度良好に含浸させることができる。
【0007】
しかしながら、フィラーによって開繊された繊維束を用いて繊維強化複合材を製造したとしても、繊維強化複合材の圧縮強度を十分に高めることができないことがある。繊維強化複合材の圧縮強度が低いと、使用時にひび又は割れが生じることがある。
【0008】
本発明の目的は、圧縮強度を高めることができる繊維強化複合材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、以下の繊維強化複合材を開示する。
【0010】
項1.繊維束と、樹脂と、無機フィラーとを含み、下記式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である、繊維強化複合材。
【0011】
【0012】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm3)
D:下記の無機フィラー径の測定方法により求められる無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm3)
W:下記の無機フィラーの重量Wの測定方法により求められる無機フィラーの重量W(g)
V:下記の試験片(2)の体積(cm3)
【0013】
無機フィラー径の測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(1)を得る。試験片(1)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の試料をコールターカウンターにより分析したときの粒子の最頻径を、無機フィラーの最頻径Dとする。
【0014】
無機フィラーの重量Wの測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(2)を得る。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を、無機フィラーの重量Wとする。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を測定し、第1の重量とする。加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の残留物の重量を測定し、第2の重量とする。第1の重量から第2の重量を差し引いた値を、無機フィラーの重量Wとする。
【0015】
項2.前記無機フィラーの最頻径Dが、0.4×10-4cm以上である、項1に記載の繊維強化複合材。
【0016】
項3.前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、0.05以上である、項1又は2に記載の繊維強化複合材。
【0017】
項4.前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、0.05以上1.0以下であり、前記無機フィラーの個数密度Aが、1.8×109個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である、項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【0018】
項5.前記無機フィラーの最頻径Dの、前記繊維束の繊維の平均繊維径に対する比が、1.0を超え3.0以下であり、前記無機フィラーの個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上2.6×106個/cm3以下である、項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【0019】
項6.前記無機フィラーが、球状である、項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【0020】
項7.前記無機フィラーが、シリカ粒子、金属粒子又は炭素粒子である、項1~6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【0021】
項8.前記繊維束が、炭素繊維束、アラミド繊維束又はガラス繊維束である、項1~7のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る繊維強化複合材は、繊維束と、樹脂と、無機フィラーとを含み、特定の式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である。本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、圧縮強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材の第1の方向(第1の繊維の配向方向)に沿う断面を模式的に示す図であり、
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材の第2の方向(第1の方向とは直交する方向)に沿う断面を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、無機フィラーの分散度の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
(繊維強化複合材)
本発明に係る繊維強化複合材は、繊維束と、樹脂と、無機フィラーとを含む。本発明に係る繊維強化複合材では、下記式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である。
【0026】
【0027】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm3)
D:下記の無機フィラー径の測定方法により求められる無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm3)
W:下記の無機フィラーの重量Wの測定方法により求められる無機フィラーの重量W(g)
V:下記の試験片(2)の体積(cm3)
【0028】
無機フィラー径の測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(1)を得る。試験片(1)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の試料をコールターカウンターにより分析したときの粒子の最頻径を、無機フィラーの最頻径Dとする。
【0029】
無機フィラーの重量Wの測定方法:繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(2)を得る。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を、無機フィラーの重量Wとする。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を測定し、第1の重量とする。加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の残留物の重量を測定し、第2の重量とする。第1の重量から第2の重量を差し引いた値を、無機フィラーの重量Wとする。
【0030】
本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、圧縮強度を高めることができる。
【0031】
繊維間部分に樹脂を良好に含浸させるために、無機フィラーによって開繊された繊維束を用いて繊維強化複合材を製造することがある。しかしながら、無機フィラーによって開繊された繊維束を単に用いた場合には、繊維強化複合材の圧縮強度を高めることができないことがある。本発明者は、鋭意検討の結果、繊維強化複合材の圧縮強度と、繊維強化複合材中の無機フィラーの上記個数密度Aとが関連していることを見出した。本発明者は、無機フィラーの上記個数密度Aが過度に小さい場合には、繊維束の開繊が不十分となり、繊維間部分に樹脂を良好に含浸させることができず、繊維強化複合材の圧縮強度を高めることができなくなることを見出した。また、本発明者は、無機フィラーの上記個数密度Aが過度に大きい場合には、繊維間部分に樹脂を良好に含浸させることができるものの、無機フィラー自体が破壊起点となり、繊維強化複合材の圧縮強度を高めることができなくなることを見出した。すなわち、本発明者は、無機フィラーの上記個数密度Aを特定の範囲とすることにより、繊維強化複合材の圧縮強度を高めることができることを見出した。
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図において、図示の便宜上、各構成要素の大きさは、実際の大きさと異なる場合がある。
【0033】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材の第1の方向(繊維の配向方向)に沿う断面を模式的に示す図であり、
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材の第2の方向(第1の方向とは直交する方向)に沿う断面を模式的に示す図である。
【0034】
繊維強化複合材5は、繊維束と、樹脂2と、無機フィラー3とを含む。繊維束は、複数の第1の繊維1を含む。繊維強化複合材5は、複数の無機フィラー3を含む。繊維強化複合材5では、上記式(1)により求められる無機フィラー3の個数密度Aが、7.3×105個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である。
【0035】
上記繊維束に含まれる第1の繊維1は、第1の方向に配向している。上記第1の方向は、通常、第1の繊維1の長さ方向である。
図1(a)では、左右方向が上記第1の方向であり、
図1(b)では、手前-奥方向が上記第1の方向である。
【0036】
図1(b)では、上記第1の方向とは直交する第2の方向に沿う繊維強化複合材5の断面が示されている。上記第2の方向は、通常、第1の繊維1の径方向である。
【0037】
無機フィラー3は、繊維束の第1の繊維1に接着している無機フィラーと、繊維束の第1の繊維1に接着していない無機フィラーとを含む。無機フィラー3は、第1の繊維1間に配置された無機フィラーを含む。
【0038】
以下、上記個数密度Aについて、説明する。
【0039】
上記個数密度Aは、下記式(1)により求められる。
【0040】
【0041】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm3)
D:下記の無機フィラー径の測定方法により求められる無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm3)
W:下記の無機フィラーの重量Wの測定方法により求められる無機フィラーの重量W(g)
V:下記の試験片(2)の体積(cm3)
【0042】
<無機フィラー径の測定方法>
繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(1)を得る。試験片(1)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の試料をコールターカウンターにより分析したときの粒子の最頻径を、無機フィラーの最頻径Dとする。
【0043】
試験片(1)は、繊維強化複合材の厚み方向の中央の位置を含むように繊維強化複合材を切断して得ることが好ましい。
【0044】
試験片(1)を900℃で12時間加熱する方法としては、マッフル炉を用いて試験片(1)を加熱する方法が挙げられる。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、900℃で12時間加熱することにより、試験片(1)中の樹脂成分及び繊維が燃焼によって除去され、無機フィラーを分離することができる。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、900℃で12時間加熱することにより、試験片(1)中の樹脂成分が燃焼によって除去され、無機フィラー及びガラス繊維束を分離することができる。
【0045】
試験片(1)を900℃で12時間加熱して残った残留物と水とを混合する。残留物と水との混合割合は特に限定されないが、例えば、残留物と、水10gとを混合することができる。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。孔径40μmのフィルターの市販品としては、例えば、3M社製「ポリプロピレンプリーツフィルターディスク 40μm」が挙げられる。混合液に含まれる成分のうち、孔径40μmのフィルターを通過可能な固体成分は、通常、無機フィラーのみである。孔径40μmのフィルターを通過したろ液を、100℃で15分間加熱して水を除去し、ろ過後の試料を得る。ろ過後の試料をコールターカウンター(例えば、ベックマン・コールター社製「Multisizer 4e」)により分析する。コールターカウンターでのろ過後の試料の分析条件は、例えば、以下の通りである。
【0046】
1級塩化ナトリウムを水に溶解させて1重量%の塩化ナトリウム水溶液を調製し、電解液とする。なお、上記電解液の市販品としては、例えば、コールターサイエンティフィックジャパン社製「ISOTON R-II」が挙げられる。上記電解液150mLに、分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)5mLと、ろ過後の試料とを添加する。得られた液を、超音波分散器を用いて約1分間~3分間処理し、液中の粒子を分散させる。この液を、口径が100μmのアパーチャーを用いて、コールターカウンターにより分析する。
【0047】
コールターカウンターでの分析により、粒子の粒子径分布を得ることができる。粒子の粒子径を、球相当径として算出する。算出した粒子の粒子径(球相当径)における最頻径を求め、この最頻径を無機フィラーの最頻径D(cm)とする。
【0048】
<無機フィラーの重量Wの測定方法>
繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(2)を得る。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を、無機フィラーの重量Wとする。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱し、加熱後に残った残留物の重量を測定し、第1の重量とする。加熱後に残った残留物と水とを混合する。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。ろ過後の残留物の重量を測定し、第2の重量とする。第1の重量から第2の重量を差し引いた値を、無機フィラーの重量Wとする。
【0049】
試験片(2)は、繊維強化複合材の幅方向及び長さ方向の中央の位置を含むように繊維強化複合材を切断して得ることが好ましい。試験片(2)は、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズを有するため、試験片(2)の体積Vは、3.125cm3である。なお、繊維強化複合材の厚みが5mm未満である場合には、複数個の繊維強化複合材を厚み方向に重ね合わせて、体積Vが3.125cm3である試験片(2)を作製してもよい。
【0050】
繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱する。試験片(2)を900℃で12時間加熱する方法としては、マッフル炉を用いて試験片(2)を加熱する方法が挙げられる。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束以外の繊維束である場合、試験片(2)を900℃で12時間加熱することにより、試験片(2)中の樹脂成分及び繊維が燃焼によって除去され、無機フィラーを分離することができる。試験片(2)を900℃で12時間加熱して残った残留物の重量を測定し、無機フィラーの重量W(g)とする。
【0051】
繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱する。試験片(2)を700℃で12時間加熱する方法としては、マッフル炉を用いて試験片(2)を加熱する方法が挙げられる。繊維強化複合材に含まれる繊維束がガラス繊維束である場合、試験片(2)を700℃で12時間加熱することにより、試験片(2)中の樹脂成分が燃焼によって除去され、無機フィラー及びガラス繊維束を分離することができる。試験片(2)を700℃で12時間加熱して残った残留物の重量を測定し、第1の重量とする。第1の重量は、通常、残留物中の無機フィラーとガラス繊維との合計重量である。次いで、試験片(2)を700℃で12時間加熱して残った残留物と水とを混合する。残留物と水との混合割合は特に限定されないが、例えば、残留物と、水10gとを混合することができる。得られた混合液を、孔径40μmのフィルターでろ過する。孔径40μmのフィルターの市販品としては、例えば、3M社製「ポリプロピレンプリーツフィルターディスク 40μm」が挙げられる。混合液に含まれる成分のうち、孔径40μmのフィルターを通過不可能な成分は、通常、ガラス繊維のみである。ろ過後の残留物(孔径40μmのフィルターを通過しなかった残留物)の重量を測定し、第2の重量とする。第2の重量は、通常、残留物中のガラス繊維の重量である。第1の重量から第2の重量を差し引いた値(第1の重量-第2の重量)を、無機フィラーの重量W(g)とする。
【0052】
<無機フィラーの密度の測定方法>
無機フィラーの密度ρ(g/cm3)として、SEM-EDSを用いて無機フィラーを元素分析したときの構成元素の密度を用いることができる。SEM-EDSでの無機フィラーの分析条件は、例えば、以下の通りである。
【0053】
繊維強化複合材を切削し、上記繊維強化複合材の断面Xを露出させたサンプルXを作製する。上記断面Xは、上記繊維束の繊維の径方向に沿う上記繊維強化複合材の断面であることが好ましい。繊維強化複合材を切削せずに、断面が露出するように、繊維強化複合材を切断してもよい。なお、上記断面Xは、表面研磨されていてもよい。
【0054】
上記繊維束の形態が綾織である場合など、上記繊維束が、例えば、第1の方向に配向した第1の繊維と第2の方向に配向した第2の繊維とを含む場合には、上記断面Xとして、上記第2の繊維が存在しない位置の断面又は上記第2の繊維の本数が少ない位置の断面を選択することが好ましい。この場合には、画像解析を容易にすることができる。画像解析を容易にする観点から、上記断面Xにおける上記第1の繊維以外の繊維の本数は少ないほど好ましい。
【0055】
上記断面Xは、繊維強化複合材の厚み方向の中央の位置における断面であることが好ましい。
【0056】
走査型電子顕微鏡を用いて、上記断面Xを撮影する。上記走査型電子顕微鏡の倍率は、例えば、10000倍とすることができる。走査型電子顕微鏡の倍率を10000倍とすることにより、無機フィラーのみを容易に選択して、EDSでの分析対象とすることができ、無機フィラーの元素分析を好適に行うことができる。
【0057】
上記のようにして求めた無機フィラーの最頻径D、無機フィラーの密度ρ、無機フィラーの重量W及び試験片(2)の体積Vから、上記式(1)により、無機フィラーの個数密度Aを算出する。
【0058】
本発明の効果を発揮する観点から、上記式(1)により求められる無機フィラーの個数密度Aは、7.3×105個/cm3以上1.1×1012個/cm3以下である。
【0059】
上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましくは1.0×106個/cm3以上、より好ましくは2.5×106個/cm3以上、好ましくは3.1×1011個/cm3以下、より好ましくは3.2×1010個/cm3以下、更に好ましくは1.9×109個/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0060】
上記無機フィラーの最頻径Dが20×10-4cm以上30×10-4cm未満である場合、上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましくは7.3×105個/cm3以上、より好ましくは1.0×106個/cm3以上、好ましく2.6×106個/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0061】
上記無機フィラーの最頻径Dが3×10-4cm以上20×10-4cm未満である場合、上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましくは2.6×106個/cm3以上、より好ましくは1.3×107個/cm3以上、好ましくは2.0×109個/cm3以下、より好ましくは1.9×109個/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0062】
上記無機フィラーの最頻径Dが0.4×10-4cm以上3×10-4cm未満である場合、上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましくは1.9×109個/cm3以上、より好ましくは3.1×1010個/cm3以上、好ましくは1.1×1012個/cm3以下、より好ましくは3.0×1011個/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0063】
上記無機フィラーの最頻径Dの、繊維束の繊維の平均繊維径に対する比(無機フィラーの最頻径D/繊維束の繊維の平均繊維径)が0.05以上1.0以下である場合、上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましく1.8×109個/cm3以上、好ましくは1.1×1012個/cm3以下、より好ましくは3.1×1011個/cm3以下、更に好ましくは3.2×1010個/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0064】
上記無機フィラーの最頻径Dの、繊維束の繊維の平均繊維径に対する比(無機フィラーの最頻径D/繊維束の繊維の平均繊維径)が1.0を超え3.0以下である場合、上記無機フィラーの個数密度Aは、好ましくは7.3×105個/cm3以上、より好ましくは1.0×106個/cm3以上、好ましくは2.6×106/cm3以下である。上記無機フィラーの個数密度Aが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0065】
上記無機フィラーの最頻径Dは、好ましくは0.4×10-4cm以上、より好ましくは1.0×10-4cm以上、好ましくは30×10-4cm以下、より好ましくは20×10-4cm以下、より一層好ましくは10×10-4cm以下、更に好ましくは5×10-4cm以下である。上記無機フィラーの最頻径Dが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記無機フィラーの最頻径Dは、30×10-4cm未満であってもよく、20×10-4cm未満であってもよく、3×10-4cm以下であってもよく、3×10-4cm未満であってもよい。
【0066】
上記無機フィラーの最頻径Dの、繊維束の繊維の平均繊維径に対する比(無機フィラーの最頻径D/繊維束の繊維の平均繊維径)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.4以上、好ましくは3.0以下である。上記比(無機フィラーの最頻径D/繊維束の繊維の平均繊維径)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0067】
なお、上記繊維束の繊維の平均繊維径は、上記繊維強化複合材の断面を観察することにより求められる。具体的には、上記繊維束の繊維の平均繊維径は、以下のようにして求められる。
【0068】
繊維強化複合材を切削し、上記繊維強化複合材の断面Xを露出させたサンプルXを作製する。上記断面Xは、上記繊維束の繊維の径方向に沿う上記繊維強化複合材の断面であることが好ましい。繊維強化複合材を切削せずに、断面が露出するように、繊維強化複合材を切断してもよい。なお、上記断面Xは、表面研磨されていてもよい。
【0069】
上記繊維束の形態が綾織である場合など、上記繊維束が、例えば、第1の方向に配向した第1の繊維と第2の方向に配向した第2の繊維とを含む場合には、上記断面Xとして、上記第2の繊維が存在しない位置の断面又は上記第2の繊維の本数が少ない位置の断面を選択することが好ましい。この場合には、画像解析を容易にすることができる。画像解析を容易にする観点から、上記断面Xにおける上記第1の繊維以外の繊維の本数は少ないほど好ましい。
【0070】
上記断面Xは、繊維強化複合材の厚み方向の中央の位置における断面であることが好ましい。
【0071】
電子顕微鏡(好ましくは走査型電子顕微鏡)を用いて、上記断面Xを撮影する。上記電子顕微鏡の倍率は、例えば、500倍とすることができる。電子顕微鏡の倍率を500倍とすることにより、断面Xの電子顕微鏡写真の短辺方向に存在する繊維の本数を30本~40本程度、かつ、断面Xの電子顕微鏡写真に存在する繊維の本数を400本~700本程度とすることができ、画像解析を容易にすることができる。したがって、電子顕微鏡の撮影箇所は、断面Xの電子顕微鏡写真の短辺方向に存在する繊維の本数が30本~40本程度、かつ、断面Xの電子顕微鏡写真に存在する繊維の本数が400本~700本程度となる箇所であることが好ましい。なお、上記電子顕微鏡の倍率は、500倍以上であってもよい。
【0072】
上記断面Xの電子顕微鏡写真から、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用いて、繊維の繊維径をそれぞれ算出し、平均繊維径を算出する。上記平均繊維径は、数平均繊維径であり、上記断面Xで観察される繊維の繊維径の相加平均値である。上記繊維径とは、上記断面Xで観察される繊維の形状が円の場合は、該円の直径を意味し、上記断面Xで観察される繊維の形状が楕円の場合は、該楕円の長径を意味する。また、上記断面Xで観察される繊維の形状が円及び楕円以外の形状の場合は、上記繊維径とは、円相当径の直径を意味する。
【0073】
上記平均繊維径は、400本以上の繊維から求められることが好ましい。得られた電子顕微鏡写真に400本以上の繊維が存在しない場合には、繊維の本数が400本以上となるまで、新たな領域を電子顕微鏡で撮影することが好ましい。
【0074】
上記繊維束の繊維の平均繊維径は、5×10-4cm以上であってもよく、7×10-4cm以上であってもよく、10×10-4cm以上であってもよく、20×10-4cm以下であってもよく、15×10-4cm以下であってもよく、13×10-4cm以下であってもよい。
【0075】
上記繊維強化複合材の断面を観察したときに、上記無機フィラーの分散度は、好ましくは0.004以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。上記分散度が上記下限以上であると、繊維間部分に樹脂が良好に含浸された繊維強化複合材が得られており、従って、繊維強化複合材の圧縮強度を高めることができる。なお、上記無機フィラーの分散度は、1.0以下であってもよく、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよい。
【0076】
上記無機フィラーの分散度は、具体的には、以下のようにして求められる。
【0077】
繊維強化複合材を切削し、上記繊維強化複合材の断面Xを露出させたサンプルXを作製する。サンプルX及び断面Xの詳細については、上述した通りである。
【0078】
上記断面Xの電子顕微鏡写真を、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用いて、1辺の長さが上記繊維束の繊維の平均繊維径の1.4倍である複数の正方形の領域(U)に分割したときに、下記式(P)にて算出される。電子顕微鏡写真の1つの角を起点に、電子顕微鏡写真の縦方向及び横方向に上記正方形の領域(U)を順に付与する。例えば、上記繊維束の繊維の平均繊維径が10×10-4cm(10μm)である場合には、上記断面Xの電子顕微鏡写真を、縦14μm×横14μmの正方形の領域に分割する。電子顕微鏡写真に上記正方形の領域(U)を付与可能な位置まで、該領域を付与する。
【0079】
無機フィラーの分散度=P1/P2 ・・・(P)
P1:無機フィラーが含まれる正方形の領域(U)の数
P2:正方形の領域(U)の総数
【0080】
上記分散度は、400本以上の繊維が存在する断面Xの電子顕微鏡写真から求められることが好ましい。得られた電子顕微鏡写真に400本以上の繊維が存在しない場合には、繊維の本数が400本以上となるまで、新たな領域を電子顕微鏡で撮影することが好ましい。
【0081】
図2を参照しつつ、上記分散度の算出方法についてより詳細に説明する。なお、図示の都合上、
図2では、上記断面Xの電子顕微鏡写真中の9個の正方形の領域(U)が示されており、また、上記断面Xの電子顕微鏡写真で観察される無機フィラーのうち、4個の無機フィラー31,32,33,34が示されている。また、
図2では、樹脂及び繊維は図示されていない。
【0082】
図2では、上記正方形の領域(U)(1辺の長さが繊維束の繊維の平均繊維径の1.4倍である正方形の領域)として、領域U1~U9が示されている。無機フィラー31は領域U2に存在する。無機フィラー32は領域U4に存在する。無機フィラー33は領域U9に存在する。無機フィラー34は領域U8,U9をまたいで存在する。なお、無機フィラー34のように1つの無機フィラーが複数の領域をまたいで存在する場合には、該無機フィラーがまたいで存在するそれぞれの領域に、該無機フィラーが存在するものとする。したがって、無機フィラー34は、領域U8と領域U9とに存在するとみなす。
【0083】
実際の電子顕微鏡写真では多数の上記正方形の領域(U)に分割することができるが、
図2の9個の正方形の領域(U)及び4個の無機フィラーから上記分散度を算出すると仮定すると、P1は、領域U2,U4,U8,U9の数である「4」であり、P2は、領域U1~U9の数である「9」である。したがって、
図2の場合には、上記分散度は、0.444(=4/9)として求められる。
【0084】
上記繊維強化複合材の空隙率は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。上記繊維強化複合材の空隙率が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記繊維強化複合材の空隙率は小さいほど好ましい。上記繊維強化複合材の空隙率は、0%以上であってもよく、0%を超えていてもよく、0.5%以上であってもよい。
【0085】
上記繊維強化複合材の空隙率は、具体的には、以下のようにして求められる。
【0086】
繊維強化複合材を切削し、上記繊維強化複合材の断面Xを露出させたサンプルXを作製する。サンプルX及び断面Xの詳細については、上述した通りである。上記繊維強化複合材の空隙率は、上記断面Xの面積(繊維強化複合材の断面積)100%に対して空隙(ボイド)が占める面積の割合である。
【0087】
以下、本発明に係る繊維強化複合材について更に説明する。
【0088】
<繊維束>
上記繊維強化複合材は、繊維束を含む。上記繊維強化複合材は、1つの繊維束のみを含んでいてもよく、複数の繊維束を含んでいてもよい。上記繊維束は、複数の繊維により形成されている。上記繊維束は、複数の繊維により形成されている。上記繊維束は、第1の方向に配向した第1の繊維を含むことが好ましい。上記繊維束の繊維は、第1の繊維を含むことが好ましい。上記第1の繊維は、上記第1の方向に引き揃えられていることが好ましい。上記繊維束は、上記第1の方向とは異なる方向に配向した繊維を含んでいてもよい。上記繊維束は、上記第1の繊維と、上記第2の方向(上記第1の方向とは直交する方向)に配向した第2の繊維とを含んでいてもよい。上記繊維束は、上記第1の繊維と、上記第2の繊維とを含んでいてもよい。上記第1の繊維と上記第2の繊維とを含む上記繊維束は、例えば、綾織の繊維束である。上記繊維束の繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記繊維束は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記繊維束に含まれる繊維の本数は、好ましくは1000本以上、より好ましくは3000本以上、好ましくは50000本以下、より好ましくは30000本以下である。
【0090】
上記繊維束の繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。上記第1の繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。上記第2の繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。
【0091】
繊維強化複合材の曲げ強度及び圧縮強度をより一層高める観点からは、上記繊維束の繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維を含むことが好ましく、上記第1の繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維を含むことが好ましく、上記第2の繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維を含むことが好ましい。繊維強化複合材の曲げ強度及び圧縮強度をより一層高める観点からは、上記繊維束は、炭素繊維束、アラミド繊維束又はガラス繊維束であることが好ましい。
【0092】
繊維強化複合材の軽量化の観点及び繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記繊維束の繊維は、炭素繊維、又はアラミド繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。繊維強化複合材の軽量化の観点及び繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記第1の繊維は、炭素繊維、又はアラミド繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。繊維強化複合材の軽量化の観点及び繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記第2の繊維は、炭素繊維、又はアラミド繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。繊維強化複合材の軽量化の観点及び繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記繊維束は、炭素繊維束、又はアラミド繊維束であることが好ましく、炭素繊維束であることがより好ましい。
【0093】
繊維強化複合材の製造コストを抑える観点からは、上記繊維束の繊維は、ガラス繊維であることが好ましく、上記第1の繊維は、ガラス繊維であることが好ましく、上記第2の繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。繊維強化複合材の製造コストを抑える観点からは、上記繊維束は、ガラス繊維束であることが好ましい。
【0094】
上記炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、及びPITCH系炭素繊維等が挙げられる。
【0095】
上記第1の繊維は連続繊維であることが好ましい。上記第2の繊維は連続繊維であることが好ましい。上記連続繊維は、例えば、一方向連続繊維(UD;Uni Direction繊維)及び織物等に含まれる繊維であり、断面方向に連続的に存在する。なお、本発明における繊維形態は特に限定されず、例えば、上記繊維は長繊維として、チョップドマット及び不織布等に含まれていてもよい。
【0096】
上記繊維束の目付は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは100g/m2以上、更に好ましくは150g/m2以上、好ましくは1000g/m2以下、より好ましくは800g/m2以下、更に好ましくは500g/m2以下である。上記目付が上記下限以上であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。上記目付が上記上限以下であると、樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度及び圧縮強度をより一層高めることができる。
【0097】
上記繊維束の形態としては、一方向連続繊維(UD;Uni Direction)、織物、編物、及び不織布等が挙げられる。
【0098】
繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記繊維束の形態は、一方向連続繊維又は織物であることが好ましく、織物であることがより好ましい。上記繊維束は、複数の繊維束が厚み方向に積層された繊維束であってもよい。
【0099】
上記繊維束は、繊維束本体と、繊維の外表面に配置されたバインダ剤部とを備えていてもよい。上記バインダ剤部は、バインダ剤により形成された部分である。上記バインダ剤を用いることにより、上記繊維束と上記樹脂とを良好に接着させることができ、また、上記繊維束と上記フィラーとを良好に接着させることができる。
【0100】
上記バインダ剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。上記バインダ剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記繊維束100重量%中、上記バインダ剤の含有量(繊維束本体に付着しているバインダ剤の量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1.0重量%以上、好ましくは7.0重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以下である。
【0102】
上記繊維束本体と上記バインダ剤部とを備える繊維束として、市販されているバインダ剤付きの繊維束をそのまま用いてもよい。また、バインダ剤が付着していない繊維束(繊維束本体)に別途バインダ剤を付与して、上記繊維束本体と上記バインダ剤部とを備える繊維束を得てもよい。
【0103】
上記繊維強化複合材100体積%中、上記繊維束の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記繊維束の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。
【0104】
<樹脂>
上記繊維強化複合材は、樹脂(マトリックス樹脂)を含む。上記繊維強化複合材は、樹脂により構成された樹脂部を含む。上記樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PEKK)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0106】
成形加工性、リサイクル性及び連続生産性を高める観点から、上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリアリールエーテルケトン樹脂であることがより好ましく、ポリフェニレンサルファイド樹脂であることが更に好ましい。
【0107】
上記繊維強化複合材100体積%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、好ましくは65体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。
【0108】
<無機フィラー>
上記繊維強化複合材は、無機フィラーを含む。上記無機フィラーを用いることにより、繊維強化複合材の製造時に繊維束を良好に開繊させることができ、繊維間部分への樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度をより一層高めることができる。上記無機フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
上記無機フィラーとしては、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、及び炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。上記金属粒子としては、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、フェライト粒子、鉄粒子、及び銅粒子等が挙げられる。上記炭素粒子としては、アモルファスカーボン粒子、及びグラファイト粒子等が挙げられる。
【0110】
上記無機フィラーは、シリカ粒子、金属粒子又は炭素粒子であることが好ましく、シリカ粒子であることがより好ましい。この場合には、繊維束の開繊状態が良好に維持されるので樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の圧縮強度をより一層高めることができる。
【0111】
上記フィラーの形状は特に限定されない。上記フィラーの形状は、球状であってもよく、扁平状、鱗片状及び立方体状等の球形状以外の形状であってもよい。繊維強化複合材の圧縮強度をより一層高める観点からは、上記フィラーの形状は、球状であることが好ましい。球状は、真球状に限定されず、略球状も含まれ、例えば、アスペクト比(長径/短径)が1.5以下である形状も含まれる。
【0112】
上記繊維束100重量部に対して、上記無機フィラーの含有量は、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは2.0重量部以下である。上記無機フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記無機フィラーの個数密度Aを上述した範囲に制御しやすくなる。また、上記無機フィラーの含有量が上記上限以下であると、上記無機フィラーの分散度を適度に大きくすることができる。
【0113】
<他の成分>
上記繊維強化複合材は、上述した成分(繊維束、樹脂及び無機フィラー)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、有機フィラー及び界面活性剤等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0114】
上記有機フィラーとしては、エポキシ系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、尿素樹脂粒子、不飽和ポリエステル樹脂粒子及びオキサジン樹脂粒子等の熱硬化性樹脂粒子;ジビニルベンゼン樹脂粒子;ポリオレフィン樹脂粒子;ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子;ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子;アクリル系樹脂粒子;ポリカーボネート系樹脂粒子等が挙げられる。
【0115】
(繊維強化複合材の製造方法)
上記繊維強化複合材は、繊維束と樹脂と無機フィラーとを用いて製造することができる。上記繊維強化複合材の製造方法は、(1)無機フィラーによって開繊された繊維束である開繊繊維束を得る工程と、(2)上記開繊繊維束の繊維間部分に、樹脂を含浸させる含浸工程とを備えることが好ましい。
【0116】
<開繊繊維束を得る工程>
上記開繊繊維束を得る方法としては、複数の無機フィラーを含む開繊液を、繊維束に接触させて、繊維束の繊維の外表面に無機フィラーを接着する方法等が挙げられる。
【0117】
なお、上記開繊液と繊維束との接触方法としては、スプレー、塗布、及び浸漬等の方法が挙げられる。
【0118】
無機フィラーと接触した繊維束を回転又は振動させたり、ローラー等を用いたりすることにより、上記開繊液が繊維表面に濡れ拡がり、無機フィラーが繊維間部分に入り込み、開繊繊維束を得ることができる。
【0119】
上記開繊液の繊維表面への濡れ拡がり性を高める観点から、上記開繊液は、有機溶媒を含むことが好ましい。上記有機溶媒としては特に限定されない。作業性の観点からは、上記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、又はアセトンを含むことが好ましい。上記有機溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0120】
上記開繊液は、水を含んでいてもよい。また、上記開繊液は、無機フィラー、有機溶媒及び水のこれら3種以外の成分を含んでいてもよい。
【0121】
上記開繊液100重量%中、上記無機フィラーの含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.5重量%以下である。上記無機フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記無機フィラーの個数密度A及び上記無機フィラーの分散度を上記の好ましい範囲に制御しやすくなる。
【0122】
なお、溶媒(有機溶媒及び水等)を除去するために、上記開繊繊維束を得る工程では、上記開繊液と繊維束とを接触させた後、加熱又は乾燥して、上記開繊繊維束を得ることが好ましい。
【0123】
<含浸工程>
上記開繊繊維束の繊維間部分に樹脂を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、溶融した樹脂を、シートダイ等を用いてフィルム状に押し出し、上記開繊繊維束上に積層した後、加熱しながら圧縮することにより樹脂を開繊繊維束の繊維間部分に含浸させる方法等が挙げられる。上記含浸工程時には、加熱及び加圧しながら、樹脂を繊維束の繊維間部分に含浸させることが好ましい。
【0124】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0125】
以下の材料を用意した。
【0126】
(繊維束)
炭素繊維束(帝人社製「HTS40-12K/5HS」、第1の方向に配向した第1の繊維(炭素繊維)と、該第1の方向とは直交する第2の方向に配向した第2の繊維(炭素繊維)とを含む織物)
【0127】
(樹脂)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS、東レ社製「トレリナ」)
【0128】
(無機フィラー)
シリカ粒子1(AGCエスアイテック社製「サンスフェア H201」)
シリカ粒子2(AGCエスアイテック社製「サンスフェア L31」)
シリカ粒子3(日本触媒社製「シーホスター KE-P100」)
シリカ粒子4(日本触媒社製「シーホスター KE-P50」)
シリカ粒子5(日本触媒社製「シーホスター KE-P30」)
シリカ粒子6(日本触媒社製「シーホスター KE-P10」)
【0129】
(実施例1)
開繊繊維束を得る工程:
エタノール60重量部と蒸留水40重量部とを混合し、60重量%エタノール水を調製した。12196重量部の60重量%エタノール水に対して、138重量部の1,5-ジヒドロキシナフタレン、54重量部の40重量%メチルアミン水溶液(富士フイルム和光純薬社製「132-01857」)、112重量部の37重量%ホルムアルデヒド水溶液(富士フイルム和光純薬社製「064-0046」)、及び118重量部のシリカ粒子1を添加し、開繊液を得た。したがって、開繊液100重量%中のシリカ粒子1の含有量は0.9重量%である。得られた開繊液中に炭素繊維束を浸漬した。次いで、炭素繊維束を取り出し、ローラーで余分な液を除去しながら、均一に押し拡げた。次いで、290℃で3分間加熱して揮発成分(エタノール及び水等)を除去し、開繊繊維束を得た。
【0130】
含浸工程:
溶融した樹脂をフィルム状に押し出して、得られた開繊繊維束上に積層した。次いで、320℃(含浸温度)に加熱しながら4MPaの圧力で10分間圧縮することにより、樹脂を開繊繊維束の繊維間部分に含浸させた。このようにして、縦230mm×横230mm×厚み5.1mmの板状の繊維強化複合材を作製した。
【0131】
(実施例2)
開繊液の調製時のシリカ粒子1の使用量を「118重量部」から「270重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0132】
(実施例3)
シリカ粒子としてシリカ粒子2を用いたこと、開繊液の調製時のシリカ粒子の使用量を「118重量部」から「405重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0133】
(実施例4)
シリカ粒子としてシリカ粒子3を用いたこと、開繊液の調製時のシリカ粒子の使用量を「118重量部」から「270重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0134】
(実施例5)
シリカ粒子としてシリカ粒子4を用いたこと、開繊液の調製時のシリカ粒子の使用量を「118重量部」から「270重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0135】
(比較例1)
開繊液の調製時のシリカ粒子1の使用量を「118重量部」から「29重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0136】
(比較例2)
開繊液の調製時のシリカ粒子1の使用量を「118重量部」から「59重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0137】
(比較例3)
シリカ粒子としてシリカ粒子5を用いたこと、開繊液の調製時のシリカ粒子の使用量を「118重量部」から「270重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0138】
(比較例4)
シリカ粒子としてシリカ粒子6を用いたこと、開繊液の調製時のシリカ粒子の使用量を「118重量部」から「270重量部」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
【0139】
(評価)
(1)無機フィラーの最頻径D
得られた繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(1)を得た。試験片(1)を900℃で12時間加熱した。加熱後に残った残留物と水10gとを混合し、得られた混合液を、孔径40μmのフィルター(3M社製「ポリプロピレンプリーツフィルターディスク 40μm」)でろ過した。ろ過後の試料をコールターカウンター(ベックマン・コールター社製「Multisizer 4e」)により、上述した分析条件で分析し、無機フィラーの最頻径D(cm)を算出した。
【0140】
(2)無機フィラーの重量W
得られた繊維強化複合材を、縦25mm、横25mm及び厚み5mmのサイズに切断し、試験片(2)を得た。試験片(2)を900℃で12時間加熱して残った残留物の重量を測定し、無機フィラーの重量W(g)とした。
【0141】
(3)無機フィラーの密度ρ
SEM-EDS(日本電子社製「JCM-7000 NeoScope」)を用いて上述した分析条件で分析し、無機フィラーを元素分析したときの構成元素の密度を求めた。この密度を無機フィラーの密度ρ(g/cm3)とした。
【0142】
(4)無機フィラーの個数密度A
無機フィラーの最頻径D、無機フィラーの重量W、無機フィラーの密度ρ、及び試験片(2)の体積から、下記式により、無機フィラーの個数密度A(個/cm3)を求めた。
【0143】
【0144】
A:無機フィラーの個数密度A(個/cm3)
D:無機フィラーの最頻径D(cm)
ρ:無機フィラーの密度(g/cm3)
W:無機フィラーの重量W(g)
V:試験片(2)の体積(cm3)
【0145】
(5)繊維束の繊維の平均繊維径
得られた繊維強化複合材に含まれる繊維束は、第1の方向に配向した第1の繊維を有する。繊維強化複合材を切削し、上記第1の方向とは直交する第2の方向に沿う上記繊維強化複合材の断面Xを露出させたサンプルX(縦11mm×横9mm×厚み5mm)を作製した。なお、断面Xは、繊維強化複合材の厚み方向の中央の位置における断面である。
【0146】
日本電子社製「クロスセクションポリッシャ」を用いて、サンプルXの断面Xの表面研磨を行った。次いで、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JCM-7000 NeoScope」、測定倍率500倍)を用いて、得られたサンプルXにおける上記断面Xを撮影した。
【0147】
次いで、上記断面Xの電子顕微鏡写真から、画像解析ソフト(三谷商事社製「WinROOF」)を用いて、上記第1の方向に配向している繊維(第1の繊維)の繊維径をそれぞれ算出し、繊維束の繊維の平均繊維径を求めた。なお、上記平均繊維径は、400本以上の繊維から算出した。
【0148】
(6)繊維強化複合材の圧縮強度
得られた繊維強化複合材の圧縮強度を、ASTMD6641に準拠して測定した。繊維強化複合材の積層構成は、[(0,90)/(45,-45)/(0,90)/(45,-45)/(0,90)/(45,-45)/(-45,45)/(90,0)/(-45,45)/(90,0)/(-45,45)/(90,0)]とした。圧縮強度を以下の基準で評価した。
【0149】
<繊維強化複合材の圧縮強度の判定基準>
○:圧縮強度が200MPa以上
△:圧縮強度が180MPa以上200MPa未満
×:圧縮強度が180MPa未満
【0150】
構成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0151】
【0152】
【符号の説明】
【0153】
1…第1の繊維
2…樹脂
3…無機フィラー
5…繊維強化複合材
31,32,33,34…無機フィラー
U1,U2,U3,U4,U5,U6,U7,U8,U9…領域(1辺の長さが繊維束の繊維の平均繊維径の1.4倍である正方形の領域)