(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044787
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B60C19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150531
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岡川 洋士
(72)【発明者】
【氏名】前田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】木元 隆平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC31
3D131CB12
3D131LA05
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】優れた耐久性を発揮し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明のタイヤは、トレッド部2と、サイドウォール部3と、ビード部4と、カーカス6と、インナーライナ層10とを含む。カーカス6は、複数のカーカスコード15と、トッピングゴム層16とを含む。インナーライナ層10は、ブチル系ゴム層11と、接着ゴム層12とを含む。カーカス6と接着ゴム層12との間に、電子モジュール20が配置されている。電子モジュール20は、電子部品21と、カバーゴム22とを含む。カバーゴム22は、内側層26と、外側層27とを含む。電子部品21が、カバーゴム22の内側層26と外側層27との間に被覆されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、一対のサイドウォール部と、ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びるカーカスと、前記カーカスの内側に配されたインナーライナ層とを含み、
前記カーカスは、複数のカーカスコードと、前記複数のカーカスコードを被覆するトッピングゴム層とを含み、
前記インナーライナ層は、タイヤ内腔面側を形成するブチル系ゴム層と、タイヤ内側面が前記ブチル系ゴム層と接触し、かつ、タイヤ外側面が前記カーカスと接触する接着ゴム層とを含み、
前記カーカスと前記接着ゴム層との間に、少なくとも1つの電子モジュールが配置されており、
前記電子モジュールは、電子部品と、前記電子部品を被覆するカバーゴムとを含み、
前記カバーゴムは、前記接着ゴム層と接触している内側層と、前記カーカスの前記トッピングゴム層と接触している外側層とを含み、
前記電子部品が、前記カバーゴムの前記内側層と前記外側層との間に配置されている、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カバーゴムは、前記内側層と前記外側層との間の境界面を有し、
前記境界面は、前記複数のカーカスコードの表面を連ねる仮想カーカスコード基準面までの最短距離である第1距離d1を有し、
前記境界面は、前記ブチル系ゴム層までの最短距離である第2距離d2を有し、
前記第1距離d1と前記第2距離d2との比d1/d2が0.50~1.50である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記比d1/d2は、0.85~1.15である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1距離d1は、1.0~2.0mmである、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2距離d2は、1.0~2.0mmである、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記電子部品は、前記ビードコアのタイヤ半径方向の外面から3mm以上の距離をタイヤ半径方向外側に隔てて位置する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部は、金属製のベルトコードを含むベルト層を備えており、
前記電子部品は、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端から3mm以上の距離をタイヤ半径方向内側に隔てて位置する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記カバーゴムにおいて、前記内側層の最大厚さは、前記外側層の最大厚さよりも小さい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記カバーゴムにおいて、前記内側層の最大厚さは、前記外側層の最大厚さの40%~60%である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記接着ゴム層の最大厚さは、前記内側層の最大厚さの100%~250%である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内部に電子部品が配されたタイヤが提案されている。このタイヤでは、電子部品を被覆するゴム組成物が特定されている。具体的には、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が10~50質量部である。また、前記ゴム組成物の体積が500~10000mm3である。さらに、前記ゴム組成物の915MHzにおける比誘電率が7以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のタイヤは、耐久性について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、優れた耐久性を発揮し得る空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びるカーカスと、前記カーカスの内側に配されたインナーライナ層とを含み、前記カーカスは、複数のカーカスコードと、前記複数のカーカスコードを被覆するトッピングゴム層とを含み、前記インナーライナ層は、タイヤ内腔面側を形成するブチル系ゴム層と、タイヤ内側面が前記ブチル系ゴム層と接触し、かつ、タイヤ外側面が前記カーカスと接触する接着ゴム層とを含み、前記カーカスと前記接着ゴム層との間に、少なくとも1つの電子モジュールが配置されており、前記電子モジュールは、電子部品と、前記電子部品を被覆するカバーゴムとを含み、前記カバーゴムは、前記接着ゴム層と接触している内側層と、前記カーカスの前記トッピングゴム層と接触している外側層とを含み、前記電子部品が、前記カバーゴムの前記内側層と前記外側層との間に配置されている、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた耐久性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの横断面図である。
【
図2】
図1のカーカス及びインナーライナ層の拡大断面図である。
【
図5】
図3のカーカス、インナーライナ層及び電子モジュールの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある)の正規状態における横断面を示す断面図である。なお、
図1は、円環状に延びるタイヤ1を、タイヤ回転軸を通り、かつ、タイヤ周方向と直交する仮想平面で切断したときの、タイヤ1の断面を示す図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用として好適に用いられる。
【0010】
前記正規状態とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含む。それぞれのビード部4には、ビードコア5が埋設されている。また、タイヤ1は、カーカス6及びインナーライナ層10を含んでいる。
【0014】
カーカス6は、一方のビード部4のビードコア5から他方のビード部4のビードコア5まで延びている。本実施形態のカーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、2つのビード部4の間を延びている。これにより、本体部6aは、少なくともトレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
【0015】
図2には、カーカス6及びインナーライナ層10の拡大断面図が示されている。
図2は、後述する電子モジュールを避けた位置でのカーカス6及びインナーライナ層10の断面図である。また、
図2において、カーカス6よりタイヤ外面側のゴム部材は、省略されている。
図2に示されるように、カーカス6は、複数のカーカスコード15と、複数のカーカスコード15を被覆するトッピングゴム層16とを含む。
【0016】
カーカスコード15は、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコード15は、例えば、タイヤ赤道Cに対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。
【0017】
カーカス6のトッピングゴム層16のゴム成分としては、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、イソプレン系ゴム、SBR、BRが好ましい。
【0018】
インナーライナ層10は、カーカス6の内側に配されており、タイヤ内腔面1iを構成している。インナーライナ層10は、ブチル系ゴム層11と接着ゴム層12とを含む。なお、
図1では、これらの各層の区別は省略されている。
図2に示されるように、ブチル系ゴム層11は、タイヤ内腔面1i側を形成している。ブチル系ゴム層11は、極めて低い空気透過率を有し、タイヤ内圧を保持することができる。ブチル系ゴム層11は、例えば、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムを80%以上含有している。
【0019】
接着ゴム層12は、タイヤ内側面12iが前記ブチル系ゴム層11と接触し、かつ、タイヤ外側面12oがカーカス6と接触している。接着ゴム層12は、ブチル系ゴム層11よりも優れた接着性を有する。これにより、カーカス6とインナーライナ層10とが強固に接着され、これらの剥離が抑制される。接着ゴム層12は、例えば、天然ゴムやスチレン・ブタジエンゴムを含むエラストマー組成物からなるのが望ましい。
【0020】
上述のカーカス6及びインナーライナ層10の構成は、一例であり、本発明におけるカーカス6及びインナーライナ層10には、公知の構成を適用することが可能である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、例えば、金属性のベルトコードを含むベルト層7を備えている。ベルト層7は、例えば、2枚のベルトプライ7A、7Bを含む。2枚のベルトプライ7A、7Bのそれぞれには、タイヤ周方向に対して15~45°の角度で配列された複数のベルトコードが配されている。一方のベルトプライ7Aのベルトコードと、他方のベルトプライ7Bのベルトコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜している。これにより、トレッド部2が効果的に補強される。
【0022】
図3には、
図1の左側のビード部4の拡大図が示されている。
図3に示されるように、本発明では、カーカス6と接着ゴム層12との間に、少なくとも1つの電子モジュール20が配置されている。本実施形態では、電子モジュール20がビード部4に配置されているが、このような態様に限定されるものでない。このため、電子モジュール20は、例えば、サイドウォール部3(
図1)に配置されても良い。
【0023】
図4には、電子モジュール20の拡大斜視図が示されている。
図4における電子モジュール20の外面には、ドットが施されている。
図4に示されるように、電子モジュール20は、電子部品21と、この電子部品21を被覆するカバーゴム22とを含む。電子部品21としては、例えば、REIDタグ、圧力センサ、温度センサ、加速度センサ及び磁気センサが挙げられる。本実施形態の電子部品21は、RFIDタグである。RFIDタグは、送受信回路、制御回路、メモリ等をチップ化した本体部21aと、アンテナ21bとから構成される小型軽量の電子部品である。RFIDタグは、質問電波を受信すると、これを電気エネルギーとして使用し、メモリ内の諸データを応答電波として発信する。このRFIDタグには、公知の構成が採用され、本明細書において詳細な説明は省略される。
【0024】
カバーゴム22には、接着性に優れた公知のゴムが適宜採用される。カバーゴム22には、上述のカーカス6のトッピングゴム層16と同様のゴムが採用されても良い。
【0025】
図5には、カーカス6、インナーライナ層10及び電子モジュール20の拡大断面図が示されている。なお、
図5では、発明を理解し易いように、各層が一定の厚さを備えており、カーカスコード15が等間隔で配置されているが、実際のタイヤ1は、ゴム製品において不可避な変形や歪を含み得る。
【0026】
本発明のカバーゴム22は、接着ゴム層12と接触している内側層26と、カーカス6のトッピングゴム層16と接触している外側層27とを含んでいる。また、本発明では、電子部品21が、カバーゴム22の内側層26と外側層27との間に配置されている。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れた耐久性を発揮することができる。その理由は以下の通りである。
【0027】
一般に、カーカスコード15やインナーライナ層10のブチル系ゴム層11は、他の部材との接着性が低いことが知られている。一方、電子部品21が配されたタイヤにおいて、電子部品21とカーカスコード15が接触している場合や、電子部品21とブチル系ゴム層11とが接触している場合には、これらの接触部分がセパレーションの起点となり易く、耐久性を損ねる傾向があった。
【0028】
これに対し、本発明では、電子部品21を被覆するカバーゴム22が、接着ゴム層12と接触する内側層26と、カーカス6のトッピングゴム層16と接触している外側層27とを含み、かつ、電子部品21がこれら内側層26と外側層27との間に被覆されている。これにより、電子部品21とカーカスコード15又はブチル系ゴム層11との接触が抑制されるため、上述のセパレーションを防ぐことができ、タイヤの耐久性が向上する。
【0029】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0030】
図1に示されるように、電子部品21は、ビードコア5のタイヤ半径方向の外面から3mm以上の距離をタイヤ半径方向外側に隔てて位置するのが望ましい。また、電子部品21は、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端から3mm以上の距離をタイヤ半径方向内側に隔てて位置するのが望ましい。これにより、ビードコア5やベルト層7に含まれる金属の部材から電子部品21が離れて配置されるため、電子部品の電波障害等の動作不良を抑制することができる。なお、前記距離は、ビードコア5の外面又はベルト層7の外端から、電子部品21の重心までのタイヤ半径方向に平行な方向の距離で特定される。
【0031】
図3に示されるように、電子モジュール20は、ビード部4に配置されるのが望ましく、本実施形態ではビードエーペックス8のタイヤ軸方向内側に配置されている。これにより、電子モジュール20周辺の変形がビードエーペックス8によって抑制されるため、タイヤの耐久性がさらに向上する。
【0032】
電子部品21とビードコア5との距離を十分に確保しつつ、上述の効果を得る観点から、電子モジュール20のタイヤ半径方向の内端からビードコア5の外面までのタイヤ半径方向の距離L1は、ビードエーペックス8のタイヤ半径方向の高さh1の50%~60%であるのが望ましい。また、電子モジュール20のタイヤ半径方向の外端からビードエーペックス8のタイヤ半径方向の外端までの距離L2は、ビードエーペックス8の前記高さh1の25%~35%であるのが望ましい。
【0033】
より具体的には、ビードエーペックス8の前記高さh1が35mm以上の場合、前記距離L1が5mm以上であり、かつ、前記距離L2が7mm以上であるのが望ましい。一方、ビードエーペックス8の前記高さh1が35mm未満の場合、前記距離L1及び前記距離L2の両方を十分に確保するのが難しい場合がある。このため、前記高さh1が35mm未満の場合、前記距離L1を5mm以上と優先して確保し、前記距離L2が7mm未満となっても良い。
【0034】
図4に示されるように、電子モジュール20に含まれる電子部品21は、その全長(アンテナ21bを含む全長である)が、例えば、35~50mm程度となる。一方、カバーゴム22は、この電子部品21を完全に被覆するできるように、電子部品21の前記全長よりも大きい全長を有している。具体的には、カバーゴム22は、第1長さLa、第2長さLb及び厚さtaを有する横長かつ扁平した直方体形状で構成されている。第1長さLaは、タイヤ周方向の長さであり、例えば、60~80mmである。第2長さLbは、第1長さLbと直交する方向の長さであり、タイヤ横断面における電子モジュール20のカーカス6に沿った長さに相当する。第2長さLbは、第1長さLaよりも小さく、例えば、10~15mmである。厚さtaは、第1長さLa及び第2長さLbと直交する方向の厚さである。厚さtaは、第1長さLa及び第2長さLbよりも小さく、例えば、2.0~3.0mmであり、望ましくは2.2~2.4mmである。
【0035】
図5に示されるように、カバーゴム22は、内側層26と外側層27との間の境界面28を有している。本実施形態の電子モジュール20は、境界面28から仮想カーカスコード基準面30までの最短距離である第1距離d1が確保される様に配置されている。仮想カーカスコード基準面30は、複数のカーカスコード15の表面を連ねる仮想の面を意味し、具体的には、各カーカスコード15のタイヤ内腔面1i側の端を通る平面又は滑らかな湾曲面である。
図5では、仮想カーカスコード基準面30が2点鎖線で示されている。
【0036】
また、本実施形態の電子モジュール20は、境界面28からブチル系ゴム層11までの最短距離である第2距離d2が確保される様に配置されている。第1距離d1は、例えば、1.0~2.0mmである。また、第2距離d2は、例えば、1.0~2.0mmである。これにより、電子部品21とカーカスコード15又はブチル系ゴム層11との接触が確実に抑制される。
【0037】
第1距離d1と第2距離d2との比d1/d2は、望ましくは0.50以上、より望ましくは0.85以上であり、望ましくは1.50以下、より望ましくは1.15以下である。これにより、電子部品21が複数のカーカスコード15とブチル系ゴム層11との間の中央部に配置され、タイヤの耐久性がより一層向上する。
【0038】
カバーゴム22において、内側層26の最大厚さt2は、外側層27の最大厚さt1よりも小さい。具体的には、内側層26の最大厚さt2は、外側層27の最大厚さt1の40%~60%である。これにより、電子モジュール20の全体の厚さta(
図4に示す)を小さくでき、タイヤ重量の増加や、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
【0039】
接着ゴム層12の最大厚さt3(内側層26と接触している領域の最大厚さである。)は、内側層26の最大厚さt2の100%~250%であるのが望ましい。これにより、インナーライナ層10と電子モジュール20とが強固に接着される。
【0040】
トッピングゴム層16の最大厚さt4(外側層27と接触している領域における、仮想カーカスコード基準面30からカーカス6の外面までの最大厚さである。)は、例えば、外側層27の最大厚さt1よりも小さい。具体的には、トッピングゴム層16の最大厚さt4は、外側層27の最大厚さt1の10%~30%である。これにより、カーカス6の厚さを小さくでき、タイヤ重量を小さくすることができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0042】
図1の基本構造を有するサイズ285/65R17の乗用車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、電子モジュールにおいて内側層がなく、電子部品が接着ゴム層と接しているタイヤが試作された。比較例2として、電子モジュールにおいて外側層がなく、電子部品がカーカスのトッピングゴム層と接しているタイヤが試作された。比較例1及び2は、上述の事項を除き、実質的に実施例のタイヤと同じである。各テストタイヤについて、タイヤの耐久性がテストされた。タイヤの共通仕様やテスト方法は、下記の通りである。
リム:17×8.0
タイヤ内圧:250kPa
【0043】
<タイヤの耐久性>
各テストタイヤをドラム試験機上で一定の縦荷重(7.33kN)を負荷して120km/hで20000kmの距離を走行させた。その後、タイヤが解体され、電子部品周辺における損傷の有無及び損傷の程度が確認された。損傷の程度は、下記のA~Cの三段階で評価された。
A:軽微な損傷であり、使用を継続してもタイヤの寿命や電子部品の動作には悪影響がない状態である。
B:Aより大きい損傷であるが、タイヤの実用上、問題は生じない状態である。
C:Bより大きい損傷であり、改善が望まれる状態である。
テスト結果が表1に示される。
【0044】
【0045】
表1で示されるように、比較例1及び2は、大きな損傷が発生しているのに対し、実施例のタイヤは、損傷が発生していないか、損傷が発生しても軽微であることが確認できた。
【0046】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0047】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、一対のサイドウォール部と、ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びるカーカスと、前記カーカスの内側に配されたインナーライナ層とを含み、
前記カーカスは、複数のカーカスコードと、前記複数のカーカスコードを被覆するトッピングゴム層とを含み、
前記インナーライナ層は、タイヤ内腔面側を形成するブチル系ゴム層と、タイヤ内側面が前記ブチル系ゴム層と接触し、かつ、タイヤ外側面が前記カーカスと接触する接着ゴム層とを含み、
前記カーカスと前記接着ゴム層との間に、少なくとも1つの電子モジュールが配置されており、
前記電子モジュールは、電子部品と、前記電子部品を被覆するカバーゴムとを含み、
前記カバーゴムは、前記接着ゴム層と接触している内側層と、前記カーカスの前記トッピングゴム層と接触している外側層とを含み、
前記電子部品が、前記カバーゴムの前記内側層と前記外側層との間に配置されている、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記カバーゴムは、前記内側層と前記外側層との間の境界面を有し、
前記境界面は、前記複数のカーカスコードの表面を連ねる仮想カーカスコード基準面までの最短距離である第1距離d1を有し、
前記境界面は、前記ブチル系ゴム層までの最短距離である第2距離d2を有し、
前記第1距離d1と前記第2距離d2との比d1/d2が0.50~1.50である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記比d1/d2は、0.85~1.15である、本発明2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記第1距離d1は、1.0~2.0mmである、本発明2又は3に記載の空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記第2距離d2は、1.0~2.0mmである、本発明2又は3に記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記電子部品は、前記ビードコアのタイヤ半径方向の外面から3mm以上の距離をタイヤ半径方向外側に隔てて位置する、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記トレッド部は、金属製のベルトコードを含むベルト層を備えており、
前記電子部品は、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端から3mm以上の距離をタイヤ半径方向内側に隔てて位置する、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記カバーゴムにおいて、前記内側層の最大厚さは、前記外側層の最大厚さよりも小さい、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記カバーゴムにおいて、前記内側層の最大厚さは、前記外側層の最大厚さの40%~60%である、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記接着ゴム層の最大厚さは、前記内側層の最大厚さの100%~250%である、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。