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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044788
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240326BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240326BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240326BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
B60C11/12 A
B60C11/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150532
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC44
3D131EB14V
3D131EB14X
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB91X
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EB99X
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
3D131EC24V
3D131EC24W
3D131EC24X
(57)【要約】
【課題】ノイズ性能及びウェット性能を両立させ、かつ、トレッド部の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保できるタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、踏面2sと、複数の周方向溝5とを含む。複数の周方向溝5は、第1周方向溝6と、第2周方向溝7とを含む。第1周方向溝6の横断面の形状は、半円形である。第2周方向溝7は、その横断面において記踏面2sからタイヤ半径方向内側に延び、かつ、溝幅が1.5mm以下であるサイプ部11と、サイプ部11のタイヤ半径方向内側に連なり、かつ、サイプ部11よりも大きい溝幅を有する拡幅部12とを含む。第2周方向溝7の最大の深さは、第1周方向溝6の最大の深さよりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、踏面と、前記踏面で開口してタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝とを含み、
前記複数の周方向溝は、少なくとも1本の第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接する少なくとも1本の第2周方向溝とを含み、
前記第1周方向溝の横断面の形状は、半円形であり、
前記第2周方向溝は、その横断面において、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延び、かつ、溝幅が1.5mm以下であるサイプ部と、前記サイプ部のタイヤ半径方向内側に連なり、かつ、前記サイプ部よりも大きい溝幅を有する拡幅部とを含み、
前記第2周方向溝の最大の深さは、前記第1周方向溝の最大の深さよりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記サイプ部の前記踏面での開口幅は、0.6~1.0mmである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記拡幅部の最大の溝幅は、3.6mm以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記拡幅部の最大の溝幅は、4.0mm以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2周方向溝の前記拡幅部は、前記最大の溝幅を維持してタイヤ半径方向に延びる本体部を含み、
前記本体部のタイヤ半径方向外側の端は、前記第1周方向溝の底よりも0.5mm以上タイヤ半径方向外側に位置している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1周方向溝は、前記トレッド部の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第1トレッドウェアインジケータを含み、
前記第1トレッドウェアインジケータは、前記第1周方向溝の底面で局所的に凹む凹部と、前記凹部の底面から局所的に突出した突部とを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記踏面から前記凹部の底面までの最大の深さは、前記第2周方向溝の最大の深さと同じである、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2周方向溝は、前記トレッド部の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第2トレッドウェアインジケータを含み、
前記第2トレッドウェアインジケータは、前記第2周方向溝の底面から局所的に突出した突部を含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部にタイヤ周方向に連続して延びる主溝が設けられたタイヤが提案されている。このタイヤの主溝は、略一定の溝幅で前記主溝の深さ方向に延びる第1部分と、前記第1部分から溝底側に向かって溝幅が拡大した第2部分とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-182246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の高性能化及び静粛化に伴い、タイヤにおいてもウェット性能及びノイズ性能の両立が求められている。また、タイヤには、トレッド部の摩耗が進行してもウェット性能を確保できることが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ノイズ性能及びウェット性能を両立させ、かつ、トレッド部の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保できるタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、踏面と、前記踏面で開口してタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝とを含み、前記複数の周方向溝は、少なくとも1本の第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接する少なくとも1本の第2周方向溝とを含み、前記第1周方向溝の横断面の形状は、半円形であり、前記第2周方向溝は、その横断面において、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延び、かつ、溝幅が1.5mm以下であるサイプ部と、前記サイプ部のタイヤ半径方向内側に連なり、かつ、前記サイプ部よりも大きい溝幅を有する拡幅部とを含み、前記第2周方向溝の最大の深さは、前記第1周方向溝の最大の深さよりも大きい、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能及びノイズ性能を両立させ、かつ、トレッド部の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のトレッド部のタイヤ回転軸を含む横断面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】従来の周方向溝の横断面図である。
図5】トレッド部が摩耗したときの第1周方向溝及び第2周方向溝の横断面図である。
図6】第1周方向溝の拡大斜視図である。
図7】第2周方向溝の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1の正規状態におけるトレッド部2の展開図である。図2は、前記タイヤ1のトレッド部2のタイヤ回転軸を含む横断面図である。図1及び図2に示されるように、本発明は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤに適用されるのが望ましい。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明は、例えば、自動二輪車用や重荷重用のタイヤに適用されても良い。
【0010】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカスやベルト層等のタイヤ構成部材が配されている(図示省略)。これらのタイヤ構成部材には、公知の態様が適宜採用される。
【0014】
図1に示されるように、トレッド部2は、踏面2sと、踏面2sで開口してタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝5とを含む。なお、本実施形態のトレッド部2には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝4が設けられている。但し、本明細書の他の図では、これらの横溝4が省略されている場合がある。
【0015】
複数の周方向溝5は、2つのトレッド端Teの間に設けられている。2つのトレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。また、この状態で前記平面に接地するトレッド部2の外面が、踏面2sに相当する。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
複数の周方向溝5は、少なくとも1本の第1周方向溝6と、第1周方向溝6に隣接する少なくとも1本の第2周方向溝7とを含む。なお、図1において、第1周方向溝6には、ドットが施されている。
【0018】
本実施形態のトレッド部2には、複数の第1周方向溝6が設けられている。複数の第1周方向溝6は、タイヤ赤道Cを挟む様に配置された2本の内側第1周方向溝6Aと、これら2本の内側第1周方向溝6Aを挟む様に配置された2本の外側第1周方向溝6Bとで構成されている。すなわち、本実施形態のトレッド部2には、4本の第1周方向溝6が設けられている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
タイヤ赤道Cから内側第1周方向溝6Aの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%である。タイヤ赤道Cから外側第1周方向溝6Bの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0020】
トレッド部2は、複数の第1周方向溝6に区分された複数の陸部8を含む。本実施形態のトレッド部2は、5つの陸部8で構成されている。第2周方向溝7は、これらの各陸部8に1本ずつ配置されている。これにより、本実施形態では、トレッド部2に5本の第2周方向溝7が配置されている。また、本実施形態の周方向溝5は、上述の4本の第1周方向溝6、及び、5本の第2周方向溝7のみで構成されており、トレッド部2にはこれら以外の周方向溝5は設けられていない。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
図3には、2本の第1周方向溝6及び1本の第2周方向溝7の拡大断面図が示されている。図3は、図1のA-A線断面図に相当する。図3に示されるように、第1周方向溝6の横断面の形状は、半円形である。一方、第2周方向溝7は、その横断面において、サイプ部11と拡幅部12とを含む。サイプ部11は、踏面2sからタイヤ半径方向内側に延び、かつ、溝幅が1.5mm以下である。拡幅部12は、サイプ部11のタイヤ半径方向内側に連なり、かつ、サイプ部11よりも大きい溝幅を有している。また、本発明では、第2周方向溝7の最大の深さd2は、第1周方向溝6の最大の深さd1よりも大きい。ここで、「周方向溝の最大の深さ」とは、後述するトレッドウェアインジケータを除外した最大の深さを意味する。本発明のタイヤ1は、上述の構成を採用したことにより、ウェット性能及びノイズ性能を両立させ、かつ、トレッド部2の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保することができる。その理由は、以下の通りである。
【0022】
図4には、従来の周方向溝aの横断面図が示されている。図4に示されるように、従来の周方向溝aは、平面状の2つの溝壁bと、平面状の溝底面cと、これらの間で比較的大きな曲率で湾曲する溝底コーナ部dとを含む。このような従来の周方向溝aでは、溝底コーナ部dにおいて水の流れが停滞し易く、溝の排水量が低い傾向があった。これに対し、図3に示されるように、本発明では、第1周方向溝6の横断面の形状が半円形である。このような第1周方向溝6は、水の流れが停滞する部分が減じられていることに加え、溝壁の面積の減少に伴って排水抵抗が小さくなるため、優れた排水性を発揮できる。
【0023】
また、本発明では第1周方向溝6が優れた排水性を発揮するため、従来の周方向溝a(図4に示す)と比較して溝の断面積を小さくすることが可能であり、ひいてはノイズ性能を向上させることが可能である。
【0024】
一方、横断面の形状が半円形である第1周方向溝6は、その深さが踏面での開口幅の半分となる。このため、第1周方向溝6の深さを大きくしようとすると、踏面での開口幅が大きくなって、接地面積の減少を招き、ひいてはブレーキ性能や操縦安定性、耐摩耗性の低下が生じるおそれがある。このため、第1周方向溝6は、十分な深さを確保し難い。したがって、第1周方向溝6のみでは、トレッド部2の摩耗が進行すると、ウェット性能を損ねる傾向がある。
【0025】
これに対し、本発明の第2周方向溝7は、その横断面において、上述のサイプ部11及び拡幅部12を含む。このような第2周方向溝7は、トレッド部2の摩耗に伴って、拡幅部12が開口し、第1周方向溝6で不足しがちな排水性を補うことができる。また、第2周方向溝7は、タイヤ新品時においては、サイプ部11が開口しているため、第2周方向溝7内を通る空気の量が小さく、優れたノイズ性能を発揮するのにも役立つ。
【0026】
しかも、本発明では、第2周方向溝7の最大の深さd2が第1周方向溝6の最大の深さd1よりも大きいため、図5に示されるように、第1周方向溝6が消失するような状態までトレッド部2が摩耗しても、第2周方向溝7が残存し、ウェット性能を確保することができる。このような理由により、本発明のタイヤ1は、ウェット性能及びノイズ性能を両立させ、かつ、トレッド部2の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保することができる。
【0027】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0028】
図3に示されるように、第1周方向溝6に十分な排水性を発揮させる観点から、この溝の開口幅W1(踏面2s上での溝幅である。)は、少なくとも3mm以上とされる。また、第1周方向溝6における、半円形の断面形状の半径は、タイヤのカテゴリに応じて適宜決定される。本実施形態の前記半径は、例えば、3~7mmとされる。これにより、第1周方向溝6の前記開口幅W1は、望ましくは6~14mmである。第1周方向溝6の最大の深さd1は、例えば、3~7mmである。
【0029】
1つの第1周方向溝6の断面積は、例えば、40~50mm2である。また、トレッド部2に設けられた複数の第1周方向溝6の断面積の合計は、例えば、160~200mm2である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0030】
望ましい態様として、本実施形態の第1周方向溝6の横断面は、開口幅を直径(すなわち、中心角が180°)とする完全な半円形の円弧で構成されている。但し、本発明は、タイヤ等のゴム製品において不可避な製造誤差を許容し得る。この観点から、第1周方向溝6の横断面は、中心角が170°~180°となる円弧であれば良い。
【0031】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の第1周方向溝6は、上述の横断面の形状を維持したまま、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、第1周方向溝6は、上述の横断面の形状を維持したまま、トレッド平面視においてタイヤ軸方向に振幅してタイヤ周方向に延びるものでも良い。
【0032】
図3に示されるように、サイプ部11の踏面2sでの開口幅W2は、例えば、0.6~1.0mmである。本実施形態のサイプ部11は、開口幅W2を維持したまま、タイヤ半径方向内側に延びている。サイプ部11の最大の深さd3は、第1周方向溝6の最大の深さd1よりも小さい。具体的には、サイプ部11の前記深さd3は、第1周方向溝6の前記深さd1の40%~55%である。より望ましい態様として、サイプ部11の前記深さd3は、第2周方向溝7の最大の深さd2の35%~45%である。このようなサイプ部11は、ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く高めることができる。なお、サイプ部11のタイヤ半径方向の内端は、その溝幅が1.5mmとなる位置である。
【0033】
拡幅部12は、外側部15と本体部16とを含む。外側部15は、サイプ部11に連なっており、サイプ部11からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなっている。本体部16は、外側部15のタイヤ半径方向内側に連なっており、第2周方向溝7の最大の溝幅を構成している。また、本体部16は、第2周方向溝7の最大の溝幅を維持してタイヤ半径方向に延びている。
【0034】
本体部16のタイヤ半径方向外側の端16eは、第1周方向溝6の底6dよりも0.5mm以上タイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。具体的には、踏面2sから本体部16の前記端16eまでの深さd4は、第1周方向溝6の前記深さd1の80%~90%である。これにより、トレッド部2の摩耗が進行して第1周方向溝6の排水性が低下したときに、本体部16がトレッド部2の踏面2sに現れ、優れた排水性が発揮される。
【0035】
拡幅部12の最大の溝幅W3(第2周方向溝7の最大の溝幅と同義である。)は、3.6mm以上であるのが望ましい。また、拡幅部12の最大の溝幅W3は、4.0mm以下であるのが望ましい。これにより、加硫成形時の脱型性を維持しつつ、優れたウェット性能を発揮することができる。また、前記脱型性をさらに高める観点から、サイプ部11の開口幅W2と、拡幅部12の最大の溝幅W3との差は、3mm以下であるのが望ましい。
【0036】
上述の通り、本発明のタイヤ1は、第1周方向溝6の深さが小さいため、トレッド部2の摩耗の限界を示すトレッドウェアインジケータが第2周方向溝7に設けられるのが望ましい。但し、この場合、第2周方向溝7のサイプ部11が残存している状況では、第2周方向溝7に設けられたトレッドウェアインジケータを視認し難く、トレッド部2の残り厚さを把握し難い。このため、本実施形態では、以下の態様でトレッドウェアインジケータが配置されている。
【0037】
図6には、第1周方向溝6の拡大斜視図が示されている。図6に示されるように、第1周方向溝6は、トレッド部2の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第1トレッドウェアインジケータ21を含んでいる。この第1トレッドウェアインジケータ21は、タイヤ周方向に複数配置されても良い。第1トレッドウェアインジケータ21は、第1周方向溝6の底面で局所的に凹む凹部23と、凹部23の底面から局所的に突出した突部24とを含む。この実施形態では、突部24の外面24sがトレッド部2の踏面2sに現れることにより、タイヤ1の使用者はトレッド部2の摩耗の限界を認識することができる。また、この第1トレッドウェアインジケータ21は、トレッド部2が摩耗して第1周方向溝6が消失しても、凹部23及び突部24が残存し、その役割を果たすことができる。また、他の実施形態として、第1周方向溝6が消失する前にトレッド部2の摩耗の限界を迎えるように設計されたタイヤの場合、突部24の外面24sは、第1周方向溝6の底よりもタイヤ半径方向外側に位置させるのが望ましい。これにより、上記の設計に応じた時期に、突部24の外面24sがトレッド部2の踏面2sに現れることとなる。
【0038】
第1トレッドウェアインジケータ21によって、トレッド部2の摩耗の限界を示す観点から、踏面2sから凹部23の底面までの最大の深さは、第2周方向溝7の最大の深さと同じとされる。
【0039】
図7には、第2周方向溝7の拡大斜視図が示されている。図7に示されるように、第2周方向溝7は、トレッド部2の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第2トレッドウェアインジケータ22を含む。この第2トレッドウェアインジケータ22は、タイヤ周方向に複数配置されても良い。望ましい態様では、第1トレッドウェアインジケータ21と第2トレッドウェアインジケータ22とが、タイヤ周方向に近い位置で配置される。具体的には、これらのトレッドウェアインジケータの間のタイヤ周方向の距離が、50mm以下とされるのが望ましい。これにより、第2周方向溝7のサイプ部11が残存しているかどうかに関わらず、これらのトレッドウェアインジケータの少なくとも一方によって、トレッド部2の摩耗の限界を確認することができる。
【0040】
第2トレッドウェアインジケータ22は、第2周方向溝7の底面から局所的に突出した突部26を含む。踏面2sから突部26の外面26sまでの深さは、踏面から第1トレッドウェアインジケータ21の突部24の外面24sまでの深さと同じとされる。これにより、これら2つのトレッドウェアインジケータのいずれによっても、トレッド部2の摩耗の限界を確認することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0042】
実施例のタイヤとして、サイズ215/55R17の空気入りタイヤが製造された。この実施例のタイヤは、図1の基本パターンを有し、かつ、各周方向溝が図2に示される断面形状を有している。比較例として、図1の基本パターンを有し、かつ、第1周方向溝が図4で示される従来の周方向溝の断面形状で構成されているタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、実質的に実施例のタイヤと同じである。これらのテストタイヤについて、耐ハイドロプレーニング性能及びノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×7.5
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪230kPa
テスト車両:排気量2500cc、後輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0043】
<耐ハイドロプレーニング性能>
テストドライバーが、前記テスト車両をウェットアスファルト路面のテストコースにて高速走行させた。このときのグリップや安定性に関する耐ハイドロプレーニング性能がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点で示される。数値が大きい程、耐ハイドロプレーニング性能が優れていることを示す。
【0044】
<ノイズ性能>
上記テスト車両の走行ノイズ(100~3000Hz)の全音圧(デシベル)が、集音マイクによって測定された。結果は、比較例との差で示される。テスト車両は、ロードノイズ計測路(アスファルト路面)を速度50km/h で走行された。集音マイクは、運転席の背もたれの中央部に取り付けられた。
テストの結果が表1に示される。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示される通り、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、第1周方向溝の断面積の合計を約6%低減しているにも関わらず、耐ハイドロプレーニング性能が同等となっていることが確認できる。一方、実施例のタイヤは、ノイズ性能については比較例に対して-1.0dBとなっており、ノイズ性能について顕著に向上している。すなわち、実施例のタイヤは、第1周方向溝によって、ウェット性能とノイズ性能とが両立していることが理解できる。また、本発明では、上述の説明の通り、第2周方向溝によって、トレッド部の摩耗が進行しても十分なウェット性能を確保することができる。
【0047】
[付記]
本発明は、以下の態様を含む。
【0048】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、踏面と、前記踏面で開口してタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝とを含み、
前記複数の周方向溝は、少なくとも1本の第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接する少なくとも1本の第2周方向溝とを含み、
前記第1周方向溝の横断面の形状は、半円形であり、
前記第2周方向溝は、その横断面において、前記踏面からタイヤ半径方向内側に延び、かつ、溝幅が1.5mm以下であるサイプ部と、前記サイプ部のタイヤ半径方向内側に連なり、かつ、前記サイプ部よりも大きい溝幅を有する拡幅部とを含み、
前記第2周方向溝の最大の深さは、前記第1周方向溝の最大の深さよりも大きい、
タイヤ。
[本発明2]
前記サイプ部の前記踏面での開口幅は、0.6~1.0mmである、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記拡幅部の最大の溝幅は、3.6mm以上である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記拡幅部の最大の溝幅は、4.0mm以下である、本発明1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明5]
前記第2周方向溝の前記拡幅部は、前記最大の溝幅を維持してタイヤ半径方向に延びる本体部を含み、
前記本体部のタイヤ半径方向外側の端は、前記第1周方向溝の底よりも0.5mm以上タイヤ半径方向外側に位置している、本発明1ないし43のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記第1周方向溝は、前記トレッド部の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第1トレッドウェアインジケータを含み、
前記第1トレッドウェアインジケータは、前記第1周方向溝の底面で局所的に凹む凹部と、前記凹部の底面から局所的に突出した突部とを含む、本発明1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記踏面から前記凹部の底面までの最大の深さは、前記第2周方向溝の最大の深さと同じである、本発明6に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記第2周方向溝は、前記トレッド部の摩耗の限界を示す少なくとも1つの第2トレッドウェアインジケータを含み、
前記第2トレッドウェアインジケータは、前記第2周方向溝の底面から局所的に突出した突部を含む、本発明1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0049】
2 トレッド部
2s 踏面
5 周方向溝
6 第1周方向溝
7 第2周方向溝
11 サイプ部
12 拡幅部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7