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特開2024-44790トンネル内壁面の結露抑制方法、およびトンネル内壁面の結露抑制システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044790
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】トンネル内壁面の結露抑制方法、およびトンネル内壁面の結露抑制システム
(51)【国際特許分類】
   E21F 1/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E21F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150535
(22)【出願日】2022-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試験による公開 (1)公開者:株式会社ケー・エフ・シー 公開日:令和4年6月22日(令和4年6月22日から令和4年6月24日まで) 公開した場所(試験場所):中国自動車道の仏坂トンネル
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一郎
(72)【発明者】
【氏名】森岡 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓真
(72)【発明者】
【氏名】山田 豪司
(57)【要約】
【課題】トンネルの内壁面について効果的に結露を抑制する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るトンネル内壁面の結露抑制方法は、送風口を複数設けたダクトを、トンネルの内壁面に沿って該トンネルの軸方向に延び、かつ、トンネルの内壁面の結露抑制対象区間の鉛直下方に複数の送風口のそれぞれが位置する、ように配置し、係るダクトに高温の空気を供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送風口が互いに間隔を空けて設けられた送風ダクトを、
トンネルの内壁面に沿って、該トンネルの軸方向に延び、
かつ、
前記トンネルの内壁面の、前記トンネルの軸方向に延びた、結露を抑制したい区間である結露抑制対象区間の鉛直下方に、前記複数の送風口のそれぞれが位置する、
ように、配置する配置ステップと、
前記送風ダクトに高温の空気を供給して、前記複数の送風口のそれぞれから前記トンネルの内壁面に向けて前記高温の空気を噴き出させる噴出ステップと、
を含む、
トンネル内壁面の結露抑制方法。
【請求項2】
前記送風ダクトに前記高温の空気を供給する熱風発生機、および、前記熱風発生機に動力を供給する動力供給源の少なくとも一方を搭載する車両の位置を、前記結露抑制対象区間の位置に応じて調整する位置調整ステップをさらに含む、
請求項1に記載のトンネル内壁面の結露抑制方法。
【請求項3】
前記送風ダクトの外径は50mm~250mmである、
請求項1または2に記載のトンネル内壁面の結露抑制方法。
【請求項4】
前記トンネルの軸方向における前記結露抑制対象区間の開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に、
上端が、前記トンネルの天端から前記トンネルの周方向に所定の長さで前記トンネルの天上面に接し、鉛直下方に延びる第1風止め部材と、
前記開始位置または前記終了位置から、前記トンネルの軸方向に直交する水平方向に延び、下端が、前記複数の送風口のそれぞれよりも鉛直下方に位置する第2風止め部材と、
の少なくとも一方を含む風止め部材を設置する風止め部材設置ステップをさらに含む、
請求項1または2に記載のトンネル内壁面の結露抑制方法。
【請求項5】
複数の送風口が互いに間隔を空けて設けられた送風ダクトであって、
トンネルの内壁面に沿って、該トンネルの軸方向に延び、
かつ、
前記トンネルの内壁面の、前記トンネルの軸方向に延びた、結露を抑制したい区間である結露抑制対象区間の鉛直下方に、前記複数の送風口のそれぞれが位置する、
ように配置される送風ダクトと、
前記送風ダクトに高温の空気を供給して、前記複数の送風口のそれぞれから前記トンネルの内壁面に向けて前記高温の空気を噴き出させる熱風発生機と、
を備える、
トンネル内壁面の結露抑制システム。
【請求項6】
前記熱風発生機、および、前記熱風発生機に動力を供給する動力供給源の少なくとも一方を搭載する車両をさらに備える、
請求項5に記載のトンネル内壁面の結露抑制システム。
【請求項7】
前記送風ダクトの外径は50mm~250mmである、
請求項5または6に記載のトンネル内壁面の結露抑制システム。
【請求項8】
前記トンネルの軸方向における前記結露抑制対象区間の開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に設置される風止め部材であって、
上端が、前記トンネルの天端から前記トンネルの周方向に所定の長さで前記トンネルの天上面に接し、鉛直下方に延びる第1風止め部材と、
前記開始位置または前記終了位置から、前記トンネルの軸方向に直交する水平方向に延び、下端が、前記複数の送風口のそれぞれよりも鉛直下方に位置する第2風止め部材と、
の少なくとも一方を含む風止め部材を、さらに含む、
請求項5または6に記載のトンネル内壁面の結露抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内壁面の結露を抑制する、トンネル内壁面の結露抑制方法、およびトンネル内壁面の結露抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内壁面(覆工面を含む)には、様々な理由から、各種のシートが貼り付けられたり、各種の塗料、樹脂などが塗布されたりする。例えば、下掲の特許文献1には、トンネルの天井面等に接着される剥落防止用の繊維シートが開示されている。また、特許文献2には、トンネルのコンクリート表面に塗布される樹脂および塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-127843号公報
【特許文献2】特開2020-148008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にトンネル内は湿度が高く、結露しやすい環境にあるが、トンネルの内壁面に結露が発生していると、シートを貼り付けたり、塗料、樹脂などを塗布したりするなどの施工が困難になる。そのため、従来、例えば、囲いを設けて、ジェットヒーターで覆工面付近を温めながら施工するなどの対策が試みられている。しかしながら、係る従来の方法では、局所的、局部的にしか結露の抑制ができず、施工効率が大きく低下する。また、工程を優先するあまり、十分に結露が消失していない状態で接着、塗布などの施工を行なった場合、内壁面における結露は、係る施工の品質低下、および、その後の剥がれ等の要因ともなる。そのため、トンネルの内壁面について効果的に結露を抑制する方法、装置等が望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、トンネルの内壁面について効果的に結露を抑制する方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、第1の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法は、複数の送風口が互いに間隔を空けて設けられた送風ダクトを、(1)トンネルの内壁面に沿って、該トンネルの軸方向に延び、かつ、(2)前記トンネルの内壁面の、前記トンネルの軸方向に延びた、結露を抑制したい区間である結露抑制対象区間の鉛直下方に、前記複数の送風口のそれぞれが位置する、ように配置する配置ステップと、前記送風ダクトに高温の空気を供給して、前記複数の送風口のそれぞれから前記トンネルの内壁面に向けて前記高温の空気を噴き出させる噴出ステップと、を含む。
【0008】
当該構成では、前記結露抑制方法は、前記送風ダクトを、(1)前記トンネルの内壁面に沿って、前記トンネルの軸方向に延び、かつ、(2)前記複数の送風口のそれぞれが、前記トンネルの内壁面の前記結露抑制対象区間の鉛直下方に位置する、ように配置する。そして、前記結露抑制方法は、前記送風ダクトに、前記高温の空気を供給して、前記複数の送風口のそれぞれから、前記トンネルの内壁面に向けて、前記高温の空気を噴き出させる。
【0009】
ここで、トンネルの内壁面は一般に、該トンネルの軸方向に直交する面(言い換えれば、前記トンネルの周方向)において、アーチ部(天井面)と側壁(側壁面)とが滑らかに接続した構造となっている。そのため、前記結露抑制対象区間の鉛直下方に位置する前記送風口から噴き出した、前記高温の空気は、前記トンネルの内壁面に沿って、特に、前記結露抑制対象区間における前記内壁面に沿って、前記トンネルの天端へと上昇していく。つまり、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間の鉛直下方から前記トンネルの天端へと前記内壁面に沿って上昇していく前記高温の空気によって、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を、効率的に上げることができる。特に、前記結露抑制方法は、前記高温の空気によって、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を、効率的に、露点温度よりも高くすることができる。しかも、前記送風ダクトには、前記送風口が複数設けられており、かつ、前記複数の送風口は、互いに間隔を空けて設けられている。そして、前記複数の送風口が互いに間隔を空けて設けられた前記送風ダクトは、前記トンネルの内壁面に沿って、前記トンネルの軸方向に延びるように、特に、前記複数の送風口のそれぞれが、前記結露抑制対象区間の鉛直下方に位置するように、配置される。つまり、前記結露抑制方法において、前記複数の送風口のそれぞれは、前記トンネルの軸方向に延びた前記結露抑制対象区間の、鉛直下方に位置する。そして、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間の鉛直下方に位置する前記複数の送風口のそれぞれから噴き出させる、前記高温の空気によって、前記結露抑制対象区間の全体について一斉に、前記内壁面の付近の温度を、露点温度よりも高くする。
【0010】
それゆえ、前記結露抑制方法は、前記複数の送風口のそれぞれから噴き出させる、前記高温の空気によって、前記トンネルの軸方向に延びた前記結露抑制対象区間の全体について、効率的かつ同時に、結露を抑制することができる。つまり、前記結露抑制方法は、「局所的、局部的に逐次、トンネルの内壁面を乾燥させる」従来の方法とは異なり、前記結露抑制対象区間の全体の結露を一斉に抑制する。したがって、前記結露抑制方法は、前記トンネルの内壁面について、特に、前記結露抑制対象区間における前記内壁面について、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0011】
また、前記結露抑制方法は、前記送風ダクトに供給する前記高温の空気を利用して、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を露点温度よりも高くし、前記結露抑制対象区間の全体の結露を一斉に抑制する。つまり、前記結露抑制方法は、所望の時間(期間)にわたって前記高温の空気を前記送風ダクトに供給するだけで、係る期間、継続して、前記結露抑制対象区間の全体について、結露を抑制することができる。そして、前記結露抑制方法において、前記送風ダクトには、前記複数の送風口が、互いに間隔を空けて設けられており、つまり、前記送風ダクトは、所定の長さを有する。したがって、前記結露抑制方法は、所定の長さを有する前記送風ダクトを用いて、前記結露抑制対象区間(例えば、1日当りの施工面積に相当する、前記結露抑制対象区間)の結露を、継続的に、抑制することができるとの効果を奏する。
【0012】
さらに、前記結露抑制方法において、前記結露抑制対象区間の結露を抑制する前記高温の空気は、前記結露抑制対象区間の鉛直下方に位置する前記送風口から、噴き出される。そして、前記高温の空気は、前記結露抑制対象区間における前記内壁面に沿って前記トンネルの天端へと上昇していくのと共に、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を露点温度よりも高くし、前記内壁面の結露を抑制する。
【0013】
そのため、前記結露抑制方法において、前記結露抑制対象区間(特に、前記結露抑制対象区間における前記内壁面)を覆うのは、前記高温の空気だけであり、係る空気が、前記トンネル内で接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なうヒト、モノの邪魔になることはない。したがって、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間において接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なう際の支障となることなく、前記結露抑制対象区間について、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0014】
第2の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法は、上記第1の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法において、前記送風ダクトに前記高温の空気を供給する熱風発生機、および、前記熱風発生機に動力を供給する動力供給源の少なくとも一方を搭載する車両の位置を、前記結露抑制対象区間の位置に応じて調整する位置調整ステップをさらに含んでいてもよい。
【0015】
当該構成では、前記結露抑制方法は、前記熱風発生機および前記動力供給源の少なくとも一方を搭載する車両の位置を、前記結露抑制対象区間の位置に応じて調整する位置調整ステップを、さらに含む。そのため、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間の位置に応じて前記車両の位置を調整し、前記熱風発生機および前記動力供給源の少なくとも一方を、前記結露抑制対象区間の位置に応じて適宜配置することができる。また、前記車両は、例えば、前記熱風発生機および前記動力供給源の少なくとも一方を搭載する荷台を備えたトラックであり、容易に位置を変更することができる。そのため、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間の位置に応じて、前記熱風発生機および前記動力供給源の位置を、適宜かつ容易に、移動させることができる。
【0016】
したがって、前記結露抑制方法は、機動的に、前記熱風発生機および前記動力供給源の少なくとも一方を移動させて、前記送風ダクトに前記高温の空気を供給して、前記結露抑制対象区間の全体の結露を一斉に抑制することができるとの効果を奏する。
【0017】
第3の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法は、上記第1の観点または上記第2の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法において、前記送風ダクトの外径は50mm~250mmであってもよい。
【0018】
当該構成では、前記結露抑制方法において、前記送風ダクトの外径は50mm~250mmである。ここで、前記送風ダクトの径を小さくし過ぎると、前記送風ダクトによって前記高温の空気を長距離送ることが困難となり、また、圧をかけ過ぎると前記送気口の継手(ソケット)が外れるなどの不具合が発生する可能性もある。さらに、前記トンネルの軸方向に延びた前記結露抑制対象区間の全体について、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を一斉に露点温度よりも高くするためには、前記送風ダクト内を十分な量の前記高温の空気が流れるようにする必要がある。例えば、1日に施工する施工延長にわたるトンネル内壁面近傍の温度上昇を一度に(一斉に)図るのに十分な量の前記高温の空気が、前記送風ダクト内を流れるようにする必要がある。本件発明者らは、前記結露抑制対象区間の、前記トンネルの軸方向の長さを10m程度と想定した場合に、前記送風ダクトの外径を50mm~250mmとするのが望ましいことを確認した。
【0019】
そのため、前記結露抑制方法は、係るサイズの前記送風ダクトによって、「前記結露抑制対象区間の全体について、前記結露抑制対象区間における前記内壁面の付近の温度を一斉に露点温度よりも高くする」のに必要な量の、前記高温の空気を流すことができる。例えば、前記結露抑制方法は、前記送風ダクトによって、前記トンネルの軸方向の長さが10m程度である前記結露抑制対象区間の全体について、前記内壁面の付近の温度を一斉に露点温度よりも高くするのに必要な量の、前記高温の空気を流すことができる。
【0020】
また、係るサイズの前記送風ダクトは、例えば、前記トンネルの監査廊上に配置することができ、前記送風ダクトが一般走行車両の通行の妨げとなることはない。たとえ前記トンネルが監査廊を備えておらず、監査廊上に前記送風ダクトを配置するができない場合であっても、前記送風ダクトの外径は250mm以下であるため、前記トンネルの前記内壁面に沿って、前記トンネルの軸方向に延びるように配置される前記送風ダクトが、一般走行車両の通行の妨げとなることはない。
【0021】
第4の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法は、上記第1から上記第3の何れかの観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法において、前記トンネルの軸方向における前記結露抑制対象区間の開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に、(1)上端が、前記トンネルの天端から前記トンネルの周方向に所定の長さで前記トンネルの天上面に接し、鉛直下方に延びる第1風止め部材と、(2)前記開始位置または前記終了位置から、前記トンネルの軸方向に直交する水平方向に延び、下端が、前記複数の送風口のそれぞれよりも鉛直下方に位置する第2風止め部材と、の少なくとも一方を含む風止め部材を設置する風止め部材設置ステップをさらに含んでいてもよい。
【0022】
当該構成では、前記結露抑制方法は、前記結露抑制対象区間の前記開始位置および前記終了位置のそれぞれに相当する位置に、前記第1風止め部材と前記第2風止め部材との少なくとも一方を含む前記風止め部材を設置する風止め部材設置ステップを、さらに含む。そして、前記第1風止め部材は、上端が、前記トンネルの天端から前記トンネルの周方向に所定の長さで前記トンネルの天上面に接し、鉛直下方に延びる。また、前記第2風止め部材は、前記開始位置または前記終了位置から、前記トンネルの軸方向に直交する水平方向に延び、下端が、前記複数の送風口のそれぞれよりも鉛直下方に位置する。そのため、前記結露抑制方法は、前記風止め部材によって、前記高温の空気が、前記結露抑制対象区間から漏れ出てしまうのを抑制し、つまり、前記高温の空気を、前記結露抑制対象区間を含む空間内に留めることができる。したがって、前記結露抑制方法は、前記風止め部材を設置しない場合に比べて、前記高温の空気によって、前記結露抑制対象区間の全体について、より効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0023】
本発明の形態は、上記トンネル内壁面の結露抑制方法の形態に限られなくてもよい。上記各観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法の別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又はその一部を実現するトンネル内壁面の結露抑制システムであってもよい。
【0024】
第5の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムは、複数の送風口が互いに間隔を空けて設けられた送風ダクトであって、(1)トンネルの内壁面に沿って、該トンネルの軸方向に延び、かつ、(2)前記トンネルの内壁面の、前記トンネルの軸方向に延びた、結露を抑制したい区間である結露抑制対象区間の鉛直下方に、前記複数の送風口のそれぞれが位置する、ように配置される送風ダクトと、前記送風ダクトに高温の空気を供給して、前記複数の送風口のそれぞれから前記トンネルの内壁面に向けて前記高温の空気を噴き出させる熱風発生機と、を備える。当該構成では、前記結露抑制システムは、上記第1の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法が奏するのと同様の効果を奏する。
【0025】
第6の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムは、上記第5の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムにおいて、前記熱風発生機、および、前記熱風発生機に動力を供給する動力供給源の少なくとも一方を搭載する車両をさらに備えていてもよい。当該構成では、前記結露抑制システムは、上記第2の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法が奏するのと同様の効果を奏する。
【0026】
第7の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムは、上記第5の観点または上記第6の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムにおいて、前記送風ダクトの外径は50mm~250mmであってもよい。当該構成では、前記結露抑制システムは、上記第3の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法が奏するのと同様の効果を奏する。
【0027】
第8の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムは、上記第5から上記第7の何れかの観点に係るトンネル内壁面の結露抑制システムにおいて、前記トンネルの軸方向における前記結露抑制対象区間の開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に設置される風止め部材であって、(1)上端が、前記トンネルの天端から前記トンネルの周方向に所定の長さで前記トンネルの天上面に接し、鉛直下方に延びる第1風止め部材と、(2)前記開始位置または前記終了位置から、前記トンネルの軸方向に直交する水平方向に延び、下端が、前記複数の送風口のそれぞれよりも鉛直下方に位置する第2風止め部材と、の少なくとも一方を含む風止め部材を、さらに含んでいてもよい。当該構成では、前記結露抑制システムは、上記第4の観点に係るトンネル内壁面の結露抑制方法が奏するのと同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、トンネルの内壁面について効果的に結露を抑制する方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施の形態に係るトンネル内壁面の結露抑制システムの全体概要を例示する図である。
図2図2は、実施の形態に係る送風ダクトの配置の一例を示す図である。
図3図3は、図2の送風ダクトと結露抑制対象区間との関係を例示する図である。
図4図4は、実施の形態に係る送風ダクトの構成例を説明する図である。
図5図5は、図1の結露抑制システムにおいて実行される結露抑制方法のフロー例を示す図である。
図6図6は、温度上昇試験の概要を説明するための図である。
図7図7は、図6の温度上昇試験の試験結果を示すグラフである。
図8図8は、図6の温度上昇試験と併せて実施した、結露の有無についての観察結果を示す表である。
図9図9は、防風シートを設置する変形例1の概要を説明するための図である。
図10図10は、変形例1における防風シートの設置位置を説明するための図である。
図11図11は、複数の送風ダクトを用いる変形例2の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0031】
§1 適用例
図1は、実施の形態に係る結露抑制システムS0の全体概要を例示する図である。結露抑制システムS0は、トンネル内壁面の結露を抑制するシステムであり、具体的には、トンネルTlの内壁面Iwの結露を、特に、トンネルTlの軸方向Adに所定の長さで延びる結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの結露を、抑制するシステムである。図1に例示するように、結露抑制システムS0は、例えば、送風ダクト1、熱風発生機2、発電機3(動力供給源)、車両4を含む。なお、図1中の「GL」は、「地盤(設計地盤)」を示している。
【0032】
送風ダクト1は、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクトであり、所定の全長を有する送風ダクトである。以下の説明においては、係る「所定の全長」を、20000mm(すなわち、20メートル)とする例について説明するが、送風ダクト1の全長が20000mmであることは必須ではない。送風ダクト1の全長は、トンネルTlの軸方向Adにおける結露抑制対象区間Tsの長さに応じて、適宜決められればよい。例えば、送風ダクト1の全長を10000mmとしてもよいし、トンネルTlの軸方向Adにおける結露抑制対象区間Tsの長さに応じて、送風ダクト1の全長を変更(調整)できてもよい。
【0033】
図1に例示する送風ダクト1は、互いに間隔を空けて設けられた送風口11(1)、送風口11(2)、送風口11(3)、・・・、送風口11(n)、送風口11(n+1)を備えている。以下の説明において、送風口11(1)、送風口11(2)、送風口11(3)、・・・、送風口11(n)、送風口11(n+1)の各々を特に区別しない場合には、これらを総称して「送風口11」と表現する。また、複数の送風口11のそれぞれを区別する場合には、部材番号「11」の後に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」、「(n+1)」を付して、それぞれを区別する。なお、以下の説明において、「n」は「1」以上の整数とする。
【0034】
図1に例示する送風ダクト1において、送風口11(1)と送風口11(2)との間には間隔It(1)が設けられ、また、送風口11(2)と送風口11(3)との間には間隔It(2)が設けられている。以下の説明において、間隔It(1)、間隔It(2)、間隔It(3)、・・・、間隔It(n)の各々を特に区別しない場合には、これらを総称して「間隔It」と表現する。また、複数の間隔Itのそれぞれを区別する場合には、部材記号「It」の後に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」を付して、それぞれを区別する。間隔It(1)と間隔It(2)とは、同じ長さであってもよく、例えば、複数の間隔Itは全て同じ長さであってもよい。具体的には、複数の間隔Itは、全て、1000mm(すなわち、1メートル)であってもよい。ただし、送風ダクト1において、複数の間隔Itのそれぞれの長さが等しいことは、必須ではない。
【0035】
熱風発生機2は、高温の空気である熱風Haを送風ダクト1に供給する装置であり、係る熱風発生機2には、高温の空気を発生させることのできる公知の熱風発生機が適宜採用されてよい。例えば、熱風発生機2として、株式会社関西電熱社製のTSK102等の電気式熱風乾燥機を利用することができる。熱風発生機2は、所定の温度の熱風Haを発生させ、係る熱風Haを送風ダクト1に供給して、送風ダクト1において互いに間隔Itを空けて設けられた複数の送風口11のそれぞれから、熱風Haを噴き出させる。
【0036】
熱風発生機2が送風ダクト1に供給する熱風Haは、本発明の「高温の空気」の一例である。以下の説明においては、熱風発生機2が発生させ、送風ダクト1に供給する熱風Haの温度(上述の「所定の温度」)を、「摂氏75度」とする例について説明するが、結露抑制システムS0において、熱風Haの温度が「摂氏75度」であることは必須ではない。結露抑制システムS0において、熱風Haの温度は、トンネルTl内の(特に、結露抑制対象区間Tsにおける)露点温度よりも高ければよく、係る露点温度に応じて、適宜選択される。熱風Haの温度は、例えば、トンネルTl内の(特に、結露抑制対象区間Tsにおける)環境、季節などを考慮して、トンネルTl内の露点温度よりも高くなるように設定されればよい。詳細は後述するが、結露抑制システムS0は、露点温度よりも高温の熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を、露点温度よりも高くすることで、結露抑制対象区間Tsの全体について、内壁面Iwの結露を一斉に抑制することができる。
【0037】
発電機3は、本発明の「動力供給源」の一例であり、熱風発生機2に動力を供給する供給装置である。本実施形態では、熱風発生機2として電気式熱風乾燥機を採用したのに対応させて、係る熱風発生機2に動力(電力)を供給する動力供給源として、発電機3を用いている。しかしながら、熱風発生機2自体が動力供給源を備える場合、結露抑制システムS0は、熱風発生機2に動力を供給する動力供給源(図1に示す例では発電機3)を含んでいなくてもよい。また、熱風発生機2の利用する動力が電力ではない場合、結露抑制システムS0は、発電機3に代えて、熱風発生機2の利用する動力を熱風発生機2に供給する動力供給源を備えていてもよい。発電機3には、熱風発生機2に電力を供給することのできる公知の発電機が適宜採用されてよい。
【0038】
車両4は、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載する車両であり、例えば、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載可能な荷台を備える自走式車両(具体的には、トラック)である。図1には、熱風発生機2および発電機3の両方を荷台に搭載した車両4の例が示されているが、車両4は、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載することができればよい。また、車両4が荷台を備えることも必須ではない。
【0039】
以上に説明してきたように、結露抑制システムS0は、熱風発生機2、および、熱風発生機2に動力を供給する発電機3(動力供給源)の少なくとも一方を搭載する車両4を備えていてもよい。結露抑制システムS0は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて車両4の位置を調整し、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて適宜配置することができる。例えば、結露抑制システムS0は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて、車両4を適当な位置に移動させ、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて適宜配置することができる。また、車両4は、例えば、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載する荷台を備えたトラックであり、容易に位置を変更することができる。そのため、結露抑制システムS0は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて、熱風発生機2および発電機3の位置を、適宜かつ容易に、移動させることができる。したがって、結露抑制システムS0は、機動的に、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を移動させて、送風ダクト1に熱風Haを供給して、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制することができるとの効果を奏する。
【0040】
<本実施形態に係る結露抑制方法の概要>
トンネルTlの内壁面Iwには、各種のシートが貼り付けられたり、各種の塗料、樹脂などが塗布されたりすることがある。例えば、内壁面Iwの一例である覆工面には、剥落防止用の繊維シートが貼り付けられることがある。また、係る剥落防止用の繊維シートだけではなく、内装シートなども、トンネルTlの内壁面Iwに接着されるシートとして知られている。そして、内壁面Iwに、各種のシートを貼り付けたり、各種の塗料、樹脂(例えば、接着剤など)などを塗布したりする際には、内壁面Iwの結露を抑制する必要がある。例えば、内壁面Iwに結露が発生すると、各種のシートの接着、貼付、各種の塗料、樹脂などの塗布といった施工が困難となったり、係る施工の障害となったりすることがある。そのため、係る施工の対象の区間について、つまり、結露抑制対象区間Tsについて、内壁面Iwの結露を抑制することが必要となる。
【0041】
一般に、結露は、トンネルTl内の高湿度の空気が、トンネルTlの内壁面Iw(例えば、覆工コンクリート)の付近で冷やされ、空気中の水蒸気量が飽和水蒸気量を超えることによって発生する。そのため、結露を発生させないようにするためには、つまり、結露を抑制するためには、例えば、以下の対処方法が考えられる。すなわち、例えば、「トンネルTl内の空気中の湿度を下げる」、「内壁面Iwの温度を上げる」、「内壁面Iwの冷たい温度が、トンネルTl内の空気に、伝わりにくいようにする」、「内壁面Iwの付近の空気が冷やされないようにする」等の対処方法が考えられる。しかしながら、トンネルTl内は完全閉鎖空間ではなく、従来、これらの対処方法は何れも容易ではないとされてきた。
【0042】
そこで、本実施形態に係る結露抑制方法は、言い換えれば、結露抑制システムS0は、内壁面Iw(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)の付近の温度が冷やされにくくなるよう、熱風Haを利用する。すなわち、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、熱風Haを内壁面Iwに沿って送ることで、熱風Haを内壁面Iwの付近に滞留させて、図2に示すような「内壁面Iwに沿って熱風Haが上昇する」状態を実現することによって、内壁面Iwの結露を抑制する。
【0043】
なお、以下では、トンネルTlの覆工面(内壁面Iw)に剥落防止用の繊維シートを接着する際に必要となる、係る内壁面Iwの結露の抑制を、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)が実現する例を説明する。すなわち、以下では、或る期間(例えば、1日)において剥落防止用の繊維シートの接着を行う覆工面(内壁面Iw)の範囲(区間)を、結露抑制対象区間Tsとする例について説明する。言い換えれば、以下の説明において結露抑制対象区間Tsは、1日当りの施工面積に相当する、トンネルTlの軸方向Adに延びる内壁面Iwの一領域(一区間)であり、その施工日に繊維シートの接着を予定している覆工面(内壁面Iw)の範囲(区間)である。
【0044】
ただし、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、「内壁面Iw(特に、結露抑制対象区間Tsの内壁面Iw)への剥落防止用の繊維シートの接着に際して必要な、内壁面Iwの結露の抑制」だけに適用されるものではない。本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、「内壁面Iw(特に、結露抑制対象区間Tsの内壁面Iw)に、内装シートなどの各種のシートを貼り付けたり、各種の塗料、樹脂などを塗布したりする際に必要な、内壁面Iwの結露の抑制」一般に適用することができる。
【0045】
<送風ダクトの配置例>
図2は、本実施形態に係る送風ダクト1の配置の一例を示す図である。図2に例示するように、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1は、トンネルTlの軸方向Adに延びるように、トンネルTlの覆工面(内壁面Iw)の下方に、配置される。すなわち、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1の備える複数の送風口11は、トンネルTlの内壁面Iwの下方で、トンネルTlの軸方向Adにおいて互いに間隔Itを空けた状態で、配置される。そして、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係る態様に配置した送風ダクト1に、熱風発生機2から熱風Haを供給する。
【0046】
ここで、トンネルTlの内壁面Iwは、トンネルTlの軸方向Adに直交する面(言い換えれば、トンネルTlの周方向)において、アーチ部(天井面)と側壁(側壁面)とが滑らかに接続した構造となっている。そのため、トンネルTlの内壁面Iwの下方から送風口11から噴き出された熱風Haは、トンネルTlの天端へと、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、上昇していく。つまり、トンネルTlの内壁面Iwの下方から送風口11から噴き出された熱風Haは、トンネルTlの覆工面(内壁面Iw)に沿って、きれいに、トンネルTlの天端へと上がっていく。そのため、内壁面Iwの下方からトンネルTlの天端へと、内壁面Iwに沿って上昇していく熱風Haによって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、内壁面Iwの付近の温度を、効率的に上げることができ、特に、内壁面Iwの付近の温度を、効率的に、露点温度よりも高くすることができる。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係る熱風Haによって、効率的かつ効果的に、トンネルTlの覆工面(内壁面Iw)の結露を抑制することができる。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、トンネルTlの内壁面Iwの下方に配置した送風口11から熱風Haを噴き出させることで、高い結露抑制効果を実現するができる。
【0047】
特に、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1の備える複数の送風口11は、トンネルTlの内壁面Iwの下方で、トンネルTlの軸方向Adにおいて互いに間隔Itを空けた状態で、配置される。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係る複数の送風口11のそれぞれから噴き出された熱風Haによって、「トンネルTlの軸方向Adにおける長さが送風ダクト1の全長に相当する、トンネルTlの内壁面Iwの一領域(一区間)」の全体について、一斉に、内壁面Iwの結露を抑制することができる。例えば、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、複数の送風口11のそれぞれから噴き出させる熱風Haによって、「トンネルTlの軸方向Adに所定の長さで延びた、結露抑制対象区間Ts」の全体について、一斉に、内壁面Iwの結露を抑制することができる。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0048】
図3は、図2に例示する送風ダクト1と結露抑制対象区間Tsとの関係を例示する図である。図2を用いて説明したように、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1は、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように、トンネルTlの覆工面(内壁面Iw)の下方に、配置される。特に、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1は、「複数の送風口11が、それぞれ、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する」ように配置される。すなわち、図3に例示するように、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1の備える複数の送風口11は、それぞれ、「トンネルTlの軸方向Adに所定の長さで延びた、結露抑制対象区間Ts」の鉛直下方に位置するように、配置される。なお、図3においては図示の都合上、結露抑制対象区間Tsを上下方向に一定幅をなすハッチングで示したが、結露抑制対象区間Tsとはこのハッチングで囲まれた領域に留まるものではなく、このトンネル延長方向の区間において側壁部からアーチ部に至る内壁面Iw全体を示している。本発明の「結露抑制対象区間」は、トンネルTlの内壁面Iwの、トンネルTlの軸方向Adに延びた区間であればよく、係る「結露抑制対象区間」について、トンネルTlの周方向における長さは、特に限定されるものではない。
【0049】
熱風発生機2から送風ダクト1に熱風Haが供給されることで、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に互いに間隔Itを空けて配置された複数の送風口11は、それぞれ、内壁面Iw(特に、結露抑制対象区間Tsの内壁面Iw)に向かって、熱風Haを噴き出す。そのため、係る複数の送風口11のそれぞれから噴き出された熱風Haは、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方からトンネルTlの天端へと、結露抑制対象区間Ts(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)に沿って、上昇していく。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、「複数の送風口11のそれぞれが結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する」ように送風ダクト1を配置することで、以下の効果を実現する。すなわち、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsの全体について、効率的かつ効果的に、一斉に内壁面Iwの結露を抑制することができる。言い換えれば、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方からトンネルTlの天端へと、結露抑制対象区間Tsの内壁面Iwに沿って上昇する熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsの全体について、効率的かつ効果的に、一斉に内壁面Iwの結露を抑制することができる。
【0050】
以上に説明したとおり、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Ts(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)付近の温度が冷やされにくいよう、結露抑制対象区間Tsに沿って熱風Haを送る。これによって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Ts(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)の付近に熱風Haを滞留させることができる。熱風Haは、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方からトンネルTlの天端へと、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに沿って上昇していく。そのため、係る熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度は上昇し、特に、露点温度よりも高い温度へと上昇する。したがって、実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの結露を、抑制することができる。
【0051】
図3を用いて説明してきたように、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsの下方に、複数の送風口11のそれぞれがトンネルTlの軸方向Adに互いに間隔Itを空けて位置するように、送風ダクト1を配置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係る態様で配置された送風ダクト1に熱風Haを供給して、複数の送風口11のそれぞれから熱風Haを噴き出させる。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Tsの全体について、内壁面Iwの付近の温度を露点温度よりも高い温度へと一斉に上昇させることができる。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、結露抑制対象区間Ts全体の内壁面Iw(結露抑制対象区間Tsの側壁部からアーチ部の全体にわたる内壁面Iw)について、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0052】
§2 構成例
図4は、本実施形態に係る送風ダクト1の構成例を説明する図である。図4に例示するように、送風ダクト1は、複数の円筒112と、円筒112が接続される複数の継手(管継手)とを含んでいてもよい。係る複数の継手のうち、熱風発生機2から最も遠い継手は、図4に例示するようにエルボ115であってもよく、エルボ115以外の継手は、チーズ管114であってもよい。ただし、送風ダクト1において、円筒112が接続される全ての継手を、チーズ管114としてもよい。
【0053】
図4に例示するよう、送風ダクト1において、円筒112が接続される複数の継手のそれぞれは、円筒112が接続されていない開口に円筒113が接続されることで、送風口11を構成してもよい。例えば、チーズ管114の分枝管の開口に、つまり、円筒112が接続されている開口以外の開口に、円筒113を接続させて、送風口11を構成してもよい。同様に、エルボ115の円筒112が接続されている開口以外の開口に、円筒113を接続させて、送風口11を構成してもよい。ただし、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、円筒112が接続される各継手の、円筒112が接続されていない開口に円筒113を接続させることで、送風口11を構成することは必須ではない。本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、円筒112が接続される各継手の、円筒112が接続されていない開口を、円筒113を接続させることなくそのまま、送風口11として利用してもよい。
【0054】
図4に例示するよう、送風ダクト1は、ダクトホース111を備えていてもよい。送風ダクト1は、係るダクトホース111を、熱風発生機2との接続部として利用してもよい。ただし、送風ダクト1にとってダクトホース111を備えることは必須ではなく、送風ダクト1はダクトホース111を備えていなくてもよい。
【0055】
送風ダクト1がダクトホース111を備える場合、ダクトホース111の外径(内径)は、円筒112と接続可能な所定のサイズであればよく、例えば、ダクトホース111の外径は、50mm~250mmである。ただし、係る数値範囲は例示に過ぎず、ダクトホース111の外径は、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて適宜選択される。また、ダクトホース111の長さ(全長)についても、特に限定はなく、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて適宜選択される。例えば、ダクトホース111の長さは、2000mm程度であってもよい。送風ダクト1は、ダクトホース111として、例えばダクトEEを採用してもよい。
【0056】
図4に例示する送風ダクト1について、送風ダクト1を構成する管(円管)は、硬質ポリ塩化ビニル管であってもよい。例えば、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115は、それぞれ、VP管であってもよい。ただし、送風ダクト1を構成する管を、厚肉管であるVP管とすることは必須ではなく、VU管を用いてもよい。また、送風ダクト1を構成する管の材質について、特に限定はなく、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて適宜選択される。円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115は、それぞれ、ポリエチレン管であってもよいし、ガラス繊維強化樹脂管、鋼管などから好適な素材を採用してもよい。
【0057】
図4に示す例において円筒112は、直線状の円管(直管)である。円筒112の外径は、例えば、50mm~250mmであり、一例を挙げれば、円筒112として、外径が125mmであるVU管を用いてもよい。ただし、円筒112の外径はこの範囲(数値)に限られるものではなく、結露抑制システムS0の適用環境等に応じて適宜選択される。円筒112の長さは、例えば、168mm程度であるが、係る数値は例示に過ぎず、円筒112の長さは、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて適宜選択される。
【0058】
図4に示す例において円筒113は、直線状の円管(直管)である。円筒113の外径は、例えば、50mm~250mmであり、一例を挙げれば、円筒113として、外径が125mmであるVU管を用いてもよい。ただし、円筒113の外径はこの範囲(数値)に限られるものではなく、結露抑制システムS0の適用環境等に応じて適宜選択される。円筒113の長さは、例えば、65mm~125mmであり、一例を挙げれば、124mm程度である。ただし、係る範囲(数値)は例示に過ぎず、円筒113の長さは、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて適宜選択される。
【0059】
図4に示す例においてチーズ管114は、対向する開口のそれぞれに円筒112が接続される直管状パイプ部と、係る直管状パイプ部に直交して接続され、その開口に円筒113が接続される分枝管部と、から構成されるチーズ管継手である。チーズ管114の外径は50mm~250mmであり、例えば、チーズ管114として、外径が125mmであるVU管を用いてもよい。ただし、チーズ管114の外径はこの範囲(数値)に限られるものではなく、結露抑制システムS0の適用環境等に応じて適宜選択される。
【0060】
図4に示す例においてエルボ115は、エルボ形管継手(L字形をした接続管)である。エルボ115の外径は50mm~250mmであり、例えば、エルボ115として、外径が125mmであるVU管を用いてもよい。ただし、エルボ115の外径はこの範囲(数値)に限られるものではなく、結露抑制システムS0の適用環境等に応じて適宜選択される。
【0061】
上述のとおり、ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115のそれぞれについて、これまでに説明してきた寸法、サイズはあくまでも一例に過ぎない。ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115のそれぞれの寸法、サイズは、これに限られるものではない。ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115のそれぞれの寸法、サイズは、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)の適用環境等に応じて、例えば、送風ダクト1の用途、使用環境、熱風Haの温度などに応じて、適宜選択される。ただし、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1の外径は50mm~250mmであってもよい。
【0062】
当該構成では、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)において、送風ダクト1の外径は50mm~250mmである。ここで、送風ダクト1の径を小さくし過ぎると、送風ダクト1によって熱風Haを長距離送ることが困難となり、また、圧をかけ過ぎると送風口11(送気口)のソケット(図4に示す例では円筒113)が外れるなどの不具合が発生する可能性もある。さらに、トンネルTlの軸方向Adに延びた結露抑制対象区間Tsの全体について、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を一斉に露点温度よりも高くするためには、送風ダクト1内を十分な量の熱風Haが流れるようにする必要がある。例えば、1日に施工する施工延長にわたるトンネルTl内壁面の近傍の温度上昇を一度に(一斉に)図るのに十分な量の熱風Haが、送風ダクト1内を流れるようにする必要がある。本件発明者らは、結露抑制対象区間Tsの、トンネルTlの軸方向Adの長さを10m程度と想定した場合に、送風ダクト1の外径を50mm~250mmとするのが望ましいことを確認した。
【0063】
そのため、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、外径が50mm~250mmである送風ダクト1によって、「結露抑制対象区間Tsの全体について、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を一斉に露点温度よりも高くする」のに必要な量の、熱風Haを流すことができる。例えば、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係るサイズの送風ダクト1によって、トンネルTlの軸方向Adの長さが10m程度である結露抑制対象区間Tsの全体について、内壁面Iwの付近の温度を一斉に露点温度よりも高くするのに必要な量の、熱風Haを流すことができる。
【0064】
また、係るサイズの送風ダクト1は、例えば、トンネルTlの監査廊上に配置することができ、送風ダクト1が一般走行車両の通行の妨げとなることはない。たとえトンネルTlが監査廊を備えておらず、監査廊上に送風ダクト1を配置するができない場合であっても、送風ダクト1の外径は250mm以下であるため、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように配置される送風ダクト1が、一般走行車両の通行の妨げとなることはない。
【0065】
これまで、図4を用いて、送風ダクト1が、ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115を備える例について説明した。しかしながら、送風ダクト1が、ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115の全てを備えることは必須ではない。送風ダクト1は、ダクトホース111、円筒112、円筒113、チーズ管114、および、エルボ115の少なくとも何れかを、備えていなくてもよい。ただし、複数の部材、例えば、ダクトホース111に加えて、複数の円筒112と、複数の継手(チーズ管114、および、エルボ115の少なくとも一方)とを組み合わせて送風ダクト1を構成することで、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、以下の効果を実現することができる。すなわち、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、長さ(全長)の調整が容易で、かつ、分解して容易に移動させることのできる送風ダクト1を実現することができる。また、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、隣り合う2つの送風口11の間の間隔Itを容易に調整することができ、例えば、送風ダクト1の備える各送風口11の位置を容易に調整することができる。
【0066】
§3 作業例
次に、図5を用いて、結露抑制システムS0において実行される結露抑制方法の処理手順(作業手順)の一例を説明する。図5は、結露抑制システムS0において実行される結露抑制方法のフロー例を示す図である。ただし、以下で説明する作業手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。
【0067】
(ステップS110、配置ステップ)
まず、ステップS110では、作業者は、送風ダクト1を、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延び、かつ、(2)複数の送風口11のそれぞれが、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する、ように配置する。
【0068】
(ステップS120、噴出ステップ)
ステップS120では、作業者は、送風ダクト1に熱風Haを供給して、複数の送風口11のそれぞれからトンネルTlの内壁面Iwに向けて熱風Haを噴き出させる。例えば、作業者は、熱風発生機2を操作して、熱風発生機2に送風ダクト1へと熱風Haを供給させて、複数の送風口11のそれぞれからトンネルTlの内壁面Iwに向けて熱風Haを噴き出させる。
【0069】
図5に例示するように、本実施形態に係る結露抑制方法は、配置ステップ(S110)と、噴出ステップ(S120)と、を含む。配置ステップにおいて、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1は、以下のように配置される。すなわち、送風ダクト1は、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように配置され、かつ、(2)結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に、複数の送風口11のそれぞれが位置するように、配置される。結露抑制対象区間Tsは、トンネルTlの内壁面Iwの、トンネルTlの軸方向Adに延びた、結露を抑制したい区間である。噴出ステップにおいて、送風ダクト1には熱風Ha(高温の空気)が供給され、複数の送風口11のそれぞれから、トンネルTlの内壁面Iwに向けて、具体的には、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに向けて、熱風Haが噴き出される。
【0070】
当該構成では、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1を、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延び、かつ、(2)複数の送風口11のそれぞれが、トンネルTlの内壁面Iwの結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する、ように配置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1に熱風Haを供給して、複数の送風口11のそれぞれから、トンネルTlの内壁面Iwに向けて、熱風Haを噴き出させる。
【0071】
ここで、トンネルTlの内壁面Iwは一般に、トンネルTlの軸方向Adに直交する面(言い換えれば、トンネルTlの周方向)において、アーチ部(天井面)と側壁(側壁面)とが滑らかに接続した構造となっている。そのため、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する送風口11から噴き出した熱風Haは、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに沿って、トンネルTlの天端へと上昇していく。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方からトンネルTlの天端へと内壁面Iwに沿って上昇していく熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を、効率的に上げることができる。特に、本実施形態に係る結露抑制方法は、熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を、効率的に、露点温度よりも高くすることができる。しかも、送風ダクト1には、送風口11が複数設けられており、かつ、複数の送風口11は、互いに間隔Itを空けて設けられている。そして、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1は、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように、特に、複数の送風口11のそれぞれが、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置するように、配置される。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法において、複数の送風口11のそれぞれは、トンネルTlの軸方向Adに延びた結露抑制対象区間Tsの、鉛直下方に位置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する複数の送風口11のそれぞれから噴き出させる、熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsの全体について一斉に、内壁面Iwの付近の温度を、露点温度よりも高くする。
【0072】
それゆえ、本実施形態に係る結露抑制方法は、複数の送風口11のそれぞれから噴き出させる熱風Haによって、トンネルTlの軸方向Adに延びた結露抑制対象区間Tsの全体について、効率的かつ同時に、結露を抑制することができる。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、「局所的、局部的に逐次、トンネルTlの内壁面Iwを乾燥させる」従来の方法とは異なり、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制する。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、トンネルTlの内壁面Iwについて、特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0073】
また、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1に供給する熱風Haを利用して、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を露点温度よりも高くし、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制する。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、所望の時間(期間)にわたって熱風Haを送風ダクト1に供給するだけで、係る期間、継続して、結露抑制対象区間Tsの全体について、結露を抑制することができる。そして、本実施形態に係る結露抑制方法において、送風ダクト1には、複数の送風口11が、互いに間隔Itを空けて設けられており、つまり、送風ダクト1は、所定の長さ(所定の全長)を有する。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、所定の長さを有する送風ダクト1を用いて、結露抑制対象区間Ts(例えば、1日当りの施工面積に相当する、結露抑制対象区間Ts)の結露を、継続的に、抑制することができるとの効果を奏する。
【0074】
さらに、本実施形態に係る結露抑制方法において、結露抑制対象区間Tsの結露を抑制する熱風Haは、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する送風口11から、噴き出される。そして、熱風Haは、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに沿ってトンネルTlの天端へと上昇していくのと共に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を露点温度よりも高くし、内壁面Iwの結露を抑制する。
【0075】
そのため、本実施形態に係る結露抑制方法において、結露抑制対象区間Ts(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)を覆うのは、熱風Haだけであり、係る熱風Ha(空気)が、トンネルTl内で接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なうヒト、モノの邪魔になることはない。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsにおいて接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なう際の支障となることなく、結露抑制対象区間Tsについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0076】
なお、作業者は、配置ステップ(S110)の前に、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載する車両4の位置を、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて調整する位置調整ステップを実行してもよい。すなわち、本実施形態に係る結露抑制方法は、上述の位置調整ステップをさらに含んでいてもよい。位置調整ステップにおいて、送風ダクト1に熱風Haを供給する熱風発生機2、および、熱風発生機2に動力を供給する発電機3(動力供給源)の少なくとも一方を搭載する車両4の位置は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて、調整される。
【0077】
当該構成では、本実施形態に係る結露抑制方法は、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載する車両4の位置を、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて調整する位置調整ステップを、さらに含む。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて車両4の位置を調整し、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて適宜配置することができる。また、車両4は、例えば、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を搭載する荷台を備えたトラックであり、容易に位置を変更することができる。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの位置に応じて、熱風発生機2および発電機3の位置を、適宜かつ容易に、移動させることができる。
【0078】
したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、機動的に、熱風発生機2および発電機3の少なくとも一方を移動させて、送風ダクト1に熱風Haを供給して、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制することができるとの効果を奏する。
【0079】
§4 検証試験等
本件発明者らは、これまでに説明してきた本実施形態に係る結露抑制方法、および結露抑制システムS0の効果を検証するために、以下に示す検証試験および確認を行なった。
【0080】
図6は、本件発明者らが行なった温度上昇試験の概要を説明するための図である。温度上昇試験では、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1に熱風発生機2から熱風Haを供給して、トンネルTlの内壁面Iwの温度がどのように変化するかを確認した。温度上昇試験では、送風ダクト1において隣り合う2つの送風口11の間の間隔Itを1000mmとし、送風ダクト1として、外径が125mmであるVU管を用いた。図4の例に即して言えば、円筒112、チーズ管114、および、エルボ115として、外径が125mmであるVU管を用いた。また、外径が125mmであり、長さが65mm~125mm(例えば、124mm)であるVU管を、図4に例示する円筒113(ソケット)として用いて、送風口11を構成した。さらに、熱風発生機2から送風ダクト1に供給する熱風Haの温度を「摂氏75度」とした。係る温度上昇試験を、トンネルTlの内壁面Iwに結露の発生しやすい梅雨時に実施して、本実施形態に係る結露抑制方法、および結露抑制システムS0の効果を検証した。
【0081】
温度上昇試験において本件発明者らは、トンネルTlの軸方向Adにおいて熱風発生機2から所定の距離を隔てた内壁面Iwにおける、トンネルTlの周方向に互いに所定の距離を隔てた3つの観測地点Opのそれぞれの温度を計測した。具体的には、本件発明者らは、トンネルTlの軸方向Adにおいて熱風発生機2から20メートル離れた内壁面Iwにおける、トンネルTlの周方向に互いに所定の距離を隔てた観測地点Op(1)、Op(2)、Op(3)のそれぞれの温度を計測した。観測地点Op(1)、Op(2)、Op(3)は、トンネルTlの軸方向Adにおいて熱風発生機2から20メートル離れた内壁面Iwにおいて、トンネルTlの周方向にこの順で並ぶ三つの観測地点Opである。具体的には、図6に例示するように、観測地点Op(1)は、送風口11に近接する内壁面Iw上の観測地点Opであり、観測地点Op(2)は、トンネルTlの周方向に送風口11から3メートル離れた、内壁面Iw上の観測地点Opである。観測地点Op(3)は、トンネルTlの軸方向Adにおいて熱風発生機2から20メートル離れた位置の天端に相当する、内壁面Iw上の観測地点Opである。観測地点Op(1)、Op(2)、Op(3)のそれぞれについて、送風ダクト1への熱風Haの供給前(開始前)、供給開始から1時間後、供給開始から3時間後、供給開始から6時間後のそれぞれの時点において計測された温度を、図7に示す。
【0082】
図7は、図6を用いて説明してきた温度上昇試験の試験結果を示すグラフである。図7において、点線は露点温度を示しており、2点鎖線は観測地点Op(1)の温度を示しており、破線は観測地点Op(2)の温度を示しており、1点鎖線は観測地点Op(3)の温度を示している。ここで、内壁面Iwの温度が露点温度を上回ると、内壁面Iwに結露は発生しない。そのため、図7に示すように、本件発明者らは、熱風発生機2から送風ダクト1へ熱風Haの供給を開始してから3~6時間後には、トンネルTlの軸方向Adにおいて熱風発生機2から20メートル離れた内壁面Iwが、結露を抑制できる環境に改善されたことを確認した。
【0083】
図8は、本件発明者らが図6の温度上昇試験と併せて実施した、観測地点Op(1)、Op(2)、Op(3)のそれぞれにおける結露の有無についての観察結果を示す表である。図8の表においても、熱風発生機2から送風ダクト1への熱風Haの供給を開始してから3~6時間後には、観測地点Op(1)、Op(2)、Op(3)の何れについても、「結露なし」となっている。
【0084】
これまで図6図8を用いて説明してきたように、本件発明者らは、本実施形態に係る結露抑制方法、および結露抑制システムS0によって、トンネルTlの内壁面Iwについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができることを確認した。
【0085】
[特徴]
以上の通り、本実施形態に係る結露抑制方法は、配置ステップ(S110)と、噴出ステップ(S120)と、を含む。配置ステップにおいて、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1は、以下のように配置される。すなわち、送風ダクト1は、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように配置され、かつ、(2)結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に、複数の送風口11のそれぞれが位置するように、配置される。結露抑制対象区間Tsは、トンネルTlの内壁面Iwの、トンネルTlの軸方向Adに延びた、結露を抑制したい区間である。噴出ステップにおいて、送風ダクト1には熱風Ha(高温の空気)が供給され、複数の送風口11のそれぞれから、トンネルTlの内壁面Iwに向けて、熱風Haが噴き出される。
【0086】
当該構成では、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1を、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延び、かつ、(2)複数の送風口11のそれぞれが、トンネルTlの内壁面Iwの結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する、ように配置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1に熱風Haを供給して、複数の送風口11のそれぞれから、トンネルTlの内壁面Iwに向けて、熱風Haを噴き出させる。
【0087】
ここで、トンネルTlの内壁面Iwは一般に、トンネルTlの軸方向Adに直交する面(言い換えれば、トンネルTlの周方向)において、アーチ部(天井面)と側壁(側壁面)とが滑らかに接続した構造となっている。そのため、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する送風口11から噴き出した熱風Haは、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに沿って、トンネルTlの天端へと上昇していく。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方からトンネルTlの天端へと内壁面Iwに沿って上昇していく熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を、効率的に上げることができる。特に、本実施形態に係る結露抑制方法は、熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を、効率的に、露点温度よりも高くすることができる。しかも、送風ダクト1には、送風口11が複数設けられており、かつ、複数の送風口11は、互いに間隔Itを空けて設けられている。そして、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1は、トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように、特に、複数の送風口11のそれぞれが、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置するように、配置される。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法において、複数の送風口11のそれぞれは、トンネルTlの軸方向Adに延びた結露抑制対象区間Tsの、鉛直下方に位置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する複数の送風口11のそれぞれから噴き出させる、熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsの全体について一斉に、内壁面Iwの付近の温度を、露点温度よりも高くする。
【0088】
それゆえ、本実施形態に係る結露抑制方法は、複数の送風口11のそれぞれから噴き出させる熱風Haによって、トンネルTlの軸方向Adに延びた結露抑制対象区間Tsの全体について、効率的かつ同時に、結露を抑制することができる。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、「局所的、局部的に逐次、トンネルTlの内壁面Iwを乾燥させる」従来の方法とは異なり、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制する。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、トンネルTlの内壁面Iwについて、特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0089】
また、本実施形態に係る結露抑制方法は、送風ダクト1に供給する熱風Haを利用して、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を露点温度よりも高くし、結露抑制対象区間Tsの全体の結露を一斉に抑制する。つまり、本実施形態に係る結露抑制方法は、所望の時間(期間)にわたって熱風Haを送風ダクト1に供給するだけで、係る期間、継続して、結露抑制対象区間Tsの全体について、結露を抑制することができる。そして、本実施形態に係る結露抑制方法において、送風ダクト1には、複数の送風口11が、互いに間隔Itを空けて設けられており、つまり、送風ダクト1は、所定の長さ(所定の全長)を有する。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、所定の長さを有する送風ダクト1を用いて、結露抑制対象区間Ts(例えば、1日当りの施工面積に相当する、結露抑制対象区間Ts)の結露を、継続的に、抑制することができるとの効果を奏する。
【0090】
さらに、本実施形態に係る結露抑制方法において、結露抑制対象区間Tsの結露を抑制する熱風Haは、結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に位置する送風口11から、噴き出される。そして、熱風Haは、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwに沿ってトンネルTlの天端へと上昇していくのと共に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iwの付近の温度を露点温度よりも高くし、内壁面Iwの結露を抑制する。
【0091】
そのため、本実施形態に係る結露抑制方法において、結露抑制対象区間Ts(特に、結露抑制対象区間Tsにおける内壁面Iw)を覆うのは、熱風Haだけであり、係る熱風Ha(空気)が、トンネルTl内で接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なうヒト、モノの邪魔になることはない。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsにおいて接着、塗布、シート貼りなどの施工作業を行なう際の支障となることなく、結露抑制対象区間Tsについて、効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0092】
また、結露抑制システムS0は、複数の送風口11が互いに間隔Itを空けて設けられた送風ダクト1と、送風ダクト1に熱風Haを供給可能な熱風発生機2とを備える。結露抑制システムS0において送風ダクト1は、以下のように配置される。すなわち、送風ダクト1は、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延びるように配置され、かつ、(2)結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に、複数の送風口11のそれぞれが位置するように、配置される。また、結露抑制システムS0において熱風発生機2は、送風ダクト1に熱風Haを供給して、複数の送風口11のそれぞれからトンネルTlの内壁面Iwに向けて熱風Haを噴き出させる。係る構成を備えることにより、結露抑制システムS0は、本実施形態に係る結露抑制方法が奏する上述の効果と同様の効果を奏する。
【0093】
§5 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0094】
<5.1>
本実施形態に係る結露抑制方法は、これまでに説明してきた各ステップに加えて、結露抑制対象区間Tsの開始位置および終了位置のそれぞれに、空気の流れを抑制する風止め部材(例えば、防風シート5)を設置する風止め部材設置ステップをさらに含んでいてもよい。本実施形態に係る結露抑制方法は、風止め部材設置ステップによって、熱風Haが結露抑制対象区間Tsから漏れ出てしまうのを抑制して、結露抑制対象区間Tsについて、より効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるようになる。係る変形例1について、以下に図9および図10を用いて、その詳細を説明する。
【0095】
図9は、防風シート5を設置する変形例1の概要を説明するための図である。防風シート5は、本発明の「風止め部材」の一例である。図9に例示するように、変形例1において結露抑制システムS0は、空気の流れを抑制する風止め部材として、防風シート5を含んでいてもよい。図9には、結露抑制システムS0が、防風シート5として、垂れ幕51と妻側シート52とを含む例が示されている。
【0096】
垂れ幕51は、本発明の「第1風止め部材」の一例である。垂れ幕51は、上端が、トンネルTlの天端からトンネルTlの周方向に所定の長さでトンネルTlの天上面に接した状態で、鉛直下方へと延びる(例えば、鉛直下方に垂れ下がる)幕(シート)であり、空気の流れを抑制可能な部材である。ただし、本発明に係る「第1風止め部材」が幕(シート)であることは必須ではなく、本発明に係る「第1風止め部材」は、板であってもよく、空気の流れを抑制できるものであればよい。
【0097】
妻側シート52は、本発明の「第2風止め部材」の一例である。妻側シート52は、結露抑制対象区間Tsの開始位置または終了位置から、トンネルTlの軸方向Adに直交する水平方向に延び、下端が、複数の送風口11のそれぞれよりも鉛直下方に位置する幕(シート)であり、空気の流れを抑制可能な部材である。ただし、本発明に係る「第2風止め部材」がシート(幕)であることは必須ではなく、本発明に係る「第2風止め部材」は、板であってもよく、空気の流れを抑制できるものであればよい。
【0098】
なお、図9には、結露抑制システムS0が、防風シート5として、垂れ幕51と妻側シート52とを含む例が示されているが、結露抑制システムS0が、防風シート5として、垂れ幕51および妻側シート52の両方を含むことは必須ではない。結露抑制システムS0は、結露抑制対象区間Tsの、トンネルTlの周方向における高さ、および、トンネルTlの周方向における長さなどに応じて、防風シート5として、垂れ幕51および妻側シート52の少なくとも一方を含んでいればよい。
【0099】
図10は、変形例1における防風シート5の設置位置を説明するための図である。図10に例示するように、結露抑制システムS0において防風シート5(垂れ幕51および妻側シート52の少なくとも一方)は、トンネルTlの軸方向Adにおける結露抑制対象区間Tsの開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に、設置される。
【0100】
これまでに図9および図10を用いて説明してきたように、本実施形態に係る結露抑制方法は、風止め部材設置ステップをさらに含んでいてもよい。風止め部材設置ステップにおいて、防風シート5(風止め部材)は、トンネルTlの軸方向Adにおける結露抑制対象区間Tsの開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に、設置される。防風シート5は、垂れ幕51(第1風止め部材)と、妻側シート52(第2風止め部材)と、の少なくとも一方を含む。垂れ幕51は、上端が、トンネルTlの天端からトンネルTlの周方向に所定の長さでトンネルTlの天上面に接した状態で、鉛直下方へと延びる(例えば、鉛直下方に垂れ下がる)、幕(シート)、板などの、空気の流れを抑制可能な部材である。妻側シート52は、結露抑制対象区間Tsの開始位置または終了位置から、トンネルTlの軸方向Adに直交する水平方向に延び、下端が、複数の送風口11のそれぞれよりも鉛直下方に位置する、幕(シート)、板などの、空気の流れを抑制可能な部材である。
【0101】
当該構成では、本実施形態に係る結露抑制方法は、結露抑制対象区間Tsの開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に、垂れ幕51と妻側シート52との少なくとも一方を含む防風シート5(風止め部材)を設置する風止め部材設置ステップを、さらに含む。そして、垂れ幕51は、上端が、トンネルTlの天端からトンネルTlの周方向に所定の長さでトンネルTlの天上面に接し、鉛直下方に延びる。また、妻側シート52は、開始位置または終了位置から、トンネルTlの軸方向Adに直交する水平方向に延び、下端が、複数の送風口11のそれぞれよりも鉛直下方に位置する。そのため、本実施形態に係る結露抑制方法は、防風シート5(風止め部材)によって、熱風Haが、結露抑制対象区間Tsから漏れ出てしまうのを抑制し、つまり、熱風Haを、結露抑制対象区間Tsを含む空間内に留めることができる。したがって、本実施形態に係る結露抑制方法は、防風シート5(風止め部材)を設置しない場合に比べて、熱風Haによって、結露抑制対象区間Tsの全体について、より効率的かつ効果的に、結露を抑制することができるとの効果を奏する。
【0102】
また、結露抑制システムS0は、結露抑制対象区間Tsの開始位置および終了位置のそれぞれに相当する位置に設置される、防風シート5(風止め部材)を含んでいてもよい。防風シート5は、垂れ幕51(第1風止め部材)および妻側シート52(第2風止め部材)の少なくとも一方を含む。防風シート5を含む結露抑制システムS0は、風止め部材設置ステップを含む本実施形態に係る結露抑制方法が奏する効果と同様の効果を、奏する。
【0103】
<5.2>
図11は、複数の送風ダクト1を用いる変形例2の概要を説明するための図である。これまで、結露抑制システムS0が1つの送風ダクト1を含む例を説明してきた。しかしながら、結露抑制システムS0が含む送風ダクト1は、1つではなく、複数であってもよい。結露抑制システムS0は、複数の送風ダクト1を含んでいてもよい。
【0104】
図11には、2つ(複数)の送風ダクト1を含む結露抑制システムS0の例が示されている。すなわち、図11に例示される結露抑制システムS0は、トンネルTlの軸方向Adに並べて配置される2つの送風ダクト1を含んでいる。
【0105】
上述のとおり、本実施形態に係る結露抑制方法は、複数の送風ダクト1のそれぞれを、(1)トンネルTlの内壁面Iwに沿って、トンネルTlの軸方向Adに延び、かつ、(2)結露抑制対象区間Tsの鉛直下方に、複数の送風口11のそれぞれが位置する、ように配置する。さらに、本実施形態に係る結露抑制方法は、図11に例示するように、複数の送風ダクト1を、トンネルTlの軸方向Adに、並べて配置してもよい。そして、本実施形態に係る結露抑制方法は、係る複数の送風ダクト1のそれぞれに、熱風発生機2から熱風Haを供給してもよい。
【0106】
図11に例示するように、結露抑制システムS0は、各々が複数の送風ダクト1のそれぞれに熱風Haを供給する、複数の熱風発生機2を含んでいてもよい。図11に例示される結露抑制システムS0は、トンネルTlの軸方向Adに並べて配置される2つの送風ダクト1のそれぞれに熱風Haを供給する、2つの熱風発生機2を含んでいる。
【0107】
図11に示す例では、2つの送風ダクト1のうち、図面左側の送風ダクト1は、2つの熱風発生機2のうち、図面左側の熱風発生機2から熱風Haを供給される。同様に、2つの送風ダクト1のうち、図面右側の送風ダクト1は、2つの熱風発生機2のうち、図面右側の熱風発生機2から熱風Haを供給される。
【0108】
本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、複数の送風ダクト1をトンネルTlの軸方向Adに並べて配置することで、軸方向Adにおける結露抑制対象区間Tsの長さが、各送風ダクト1の長さよりも長い場合であっても、係る結露抑制対象区間Tsの全体について、一斉に結露を抑制することができる。図11に示す例では、結露抑制対象区間Tsは、トンネルTlの軸方向Adにおいて、送風ダクト1の長さ(全長)の2倍程度の長さを有する。そこで、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、係る結露抑制対象区間Tsに沿って、トンネルTlの軸方向Adに、2つの熱風発生機2を並べて配置する。そして、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、2つの熱風発生機2のそれぞれから、2つの熱風発生機2のそれぞれに、熱風Haを供給させる。これによって、本実施形態に係る結露抑制方法(結露抑制システムS0)は、トンネルTlの軸方向Adにおいて、送風ダクト1の長さ(全長)の2倍程度の長さを有する結露抑制対象区間Tsの全体について、内壁面Iwの結露を一斉に、効率的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
1…送風ダクト、2…熱風発生機、3…発電機(動力供給源)、4…車両、
5…防風シート(風止め部材)、11…送風口、51…垂れ幕(第1風止め部材)、
52…妻側シート(第2風止め部材)、Ad…軸方向、Ha…熱風(高温の空気)、
It…間隔、Iw…内壁面、S0…結露抑制システム、S110…配置ステップ、
S120…噴出ステップ、Tl…トンネル、Ts…結露抑制対象区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11