(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044800
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】塩化銀粒子および塩化銀含有ペースト
(51)【国際特許分類】
C01G 5/02 20060101AFI20240326BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C01G5/02
H01B1/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150549
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】518107497
【氏名又は名称】東洋化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 陽介
(72)【発明者】
【氏名】神保 己幸
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペーストにしたときに二次粒子が形成されにくく、結果、ペースト内に大径の塩化銀粒子が形成されにくい塩化銀粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応により塩化銀粒子を析出させることを含む塩化銀粒子の製造方法であって、前記塩化銀粒子の析出前もしくは析出後またはその両方に分散剤を添加する塩化銀粒子の製造方法であり、この製造方法により製造された塩化銀粒子は、レーザ回折/散乱法で湿式測定して得られた体積基準の粒子径分布において小粒径側からの累積粒度分布における累積50%粒子径D50が8μm以上25μm以下であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応により塩化銀粒子を析出させることを含む塩化銀粒子の製造方法であって、前記塩化銀粒子の析出前もしくは析出後またはその両方に分散剤を添加することを特徴とする塩化銀粒子の製造方法。
【請求項2】
前記銀のアンミン錯体は、硝酸銀とアンモニアとの反応により生成させる、請求項1に記載の塩化銀粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤は、陰イオン系の界面活性剤である、請求項1に記載の塩化銀粒子の製造方法。
【請求項4】
前記塩化物イオンを与える塩素源は塩酸を含む、請求項1に記載の塩化銀粒子の製造方法。
【請求項5】
レーザ回折/散乱法で湿式測定して得られた体積基準の粒子径分布において小粒径側からの累積粒度分布における累積50%粒子径D50が8μm以上25μm以下であることを特徴とする塩化銀粒子。
【請求項6】
前記累積粒度分布における、累積10%粒子径D10および累積90%粒子径D90ならびに前記累積50%粒子径D50が、下記式(1)を満たす、請求項5に記載の塩化銀粒子。
(D90-D10)/D50≦2.2 (1)
【請求項7】
前記体積基準の粒子径分布の最頻度粒子径Dmが10μm以上である、請求項5に記載の塩化銀粒子。
【請求項8】
前記累積50%粒子径D50と前記体積基準の粒子径分布の最頻度粒子径Dmとが下記式(2)を満たす、請求項5に記載の塩化銀粒子。
Dm/D50≦1.7 (2)
【請求項9】
前記体積基準の粒子径分布において、最頻度粒子径Dmよりも小粒径側に位置するピークであるサブピークの頻度分布値Psは、前記最頻度粒子径Dmにおける頻度分布値Pmと下記式(3)を満たす、請求項5に記載の塩化銀粒子。
Ps≦Pm×0.6 (3)
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか1項に記載される塩化銀粒子の製造方法である、請求項1に記載の塩化銀粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項5から請求項9のいずれか1項に記載される塩化銀粒子とビヒクルとを含むことを特徴とする塩化銀含有ペースト。
【請求項12】
導電粒子をさらに含有する、請求項11に記載の塩化銀含有ペースト。
【請求項13】
前記導電粒子が銀粉を含む、請求項12に記載の塩化銀含有ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極や配線などの導電体を形成するためなどに用いられる塩化銀含有ペーストおよびこの塩化銀含有ペーストの原材料となる塩化銀粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化銀粒子を含むペースト(本明細書において、「塩化銀含有ペースト」ともいう。)は、生体電極を具体例とする電極・配線を形成するための原材料などに使用される。例えば、特許文献1には、エラストマーと銀粉と塩化銀粒子とを含む導電性組成物であって、前記銀粉が表面処理されたものであり、前記銀粉は、その平均一次粒子径が1.0μm以下で、かつみかけ空隙率が50~95%であり、導電性組成物中において、前記銀粉および塩化銀粒子の二次粒子の粒度分布における累積95%粒子径(D95粒子径)が、3.0~25.0μmであることを特徴とする、導電性組成物が開示されている。
【0003】
また、塩化銀含有ペーストは、塩化銀や銀の優れた光化学的性質に基づき、光触媒などとして、医薬を含む広い分野に使用されうる(例えば特許文献2参照。)。この特許文献2には、硝酸銀と塩酸との反応モル比によって形成されたナノ凝集体の形状と構造が変化されるナノ凝集体の製造方法として、前記硝酸銀と塩酸との反応モル比が1:2-1:30である場合、50-2000nmのサイズの塩化銀ナノキューブが形成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-55918号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1209175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩化銀含有ペーストは、これを用いた部材、例えば電極の特性を安定させる観点などから、含有される塩化銀粒子は可能な限り均一に分散していることが好ましい。それゆえ、塩化銀含有ペーストに含有される塩化銀粒子の一次粒径を小さくすることが好ましいと考えられていた。
【0006】
本発明は、例えば電極・配線の原材料となる塩化銀含有ペーストを調製するためなどに用いられる塩化銀粒子であって、塩化銀含有ペーストにしたときに良好な分散性が得られる塩化銀粒子の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、塩化銀含有ペーストにしたときに良好な分散性が得られる塩化銀粒子、およびかかる塩化銀粒子を含む塩化銀含有ペーストを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために提供される本発明の一態様に係る塩化銀粒子の製造方法は、銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応により塩化銀粒子を析出させることを含む塩化銀粒子の製造方法であって、前記塩化銀粒子の析出前もしくは析出後またはその両方に分散剤を添加することを特徴とする。
【0008】
かかる製造方法を採用することにより、一次粒径が比較的大きく、かつ一次粒子が凝集しにくい塩化銀粒子を得ることができる。
【0009】
上記の製造方法において、銀のアンミン錯体は、硝酸銀とアンモニアとの反応により生成させてもよい。
【0010】
上記の製造方法において、分散剤は、陰イオン系の界面活性剤であることが好ましい。
【0011】
上記の製造方法において、塩化物イオンを与える塩素源は塩酸を含むことが好ましい場合がある。
【0012】
本発明は、他の一態様として、レーザ回折/散乱法で湿式測定して得られた体積基準の粒子径分布(本明細書において、ことわりのない「体積基準の粒子径分布」はこの意味で用いる。)において小粒径側からの累積粒度分布(本明細書において、ことわりのない「累積粒度分布」はこの意味で用いる。)における累積50%粒子径D50が8μm以上25μm以下であることを特徴とする塩化銀粒子を提供する。
【0013】
かかる塩化銀粒子は、一次粒径が小さく凝集力が大きい塩化銀粒子の存在割合が少ないため、凝集しにくく、結果、粗大粒子が発生しにくい。
【0014】
上記の塩化銀粒子において、累積粒度分布における、累積10%粒子径D10および累積90%粒子径D90ならびに累積50%粒子径D50が、下記式(1)を満たすことが好ましい場合がある。
(D90-D10)/D50≦2.2 (1)
【0015】
上記の塩化銀粒子において、体積基準の粒子径分布の最頻度粒子径Dmが10μm以上であることが好ましい場合がある。
【0016】
上記の塩化銀粒子において、累積50%粒子径D50と体積基準の粒子径分布における最頻度粒子径Dmとが下記式(2)を満たすことが好ましい場合がある。
Dm/D50≦1.7 (2)
【0017】
上記の塩化銀粒子の体積基準の粒子径分布において、最頻度粒子径Dmよりも小粒径側に位置するピークであるサブピークの頻度分布値Psは、最頻度粒子径Dmにおける頻度分布値Pmと下記式(3)を満たす
Ps≦Pm×0.6 (3)
【0018】
上記の塩化銀粒子の製造方法は、上記の塩化銀粒子を製造するためのものであってもよい。
【0019】
本発明は、他の一態様として、上記の塩化銀粒子とビヒクルとを含むことを特徴とする塩化銀含有ペーストを提供する。この塩化銀含有ペーストは、導電粒子をさらに含有していてもよく、導電粒子が銀粉を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、過大な二次粒径を有する塩化銀粒子が生じにくい塩化銀粒子の製造方法が提供される。また、本発明により、塩化銀含有ペーストにしたときに良好な分散性が得られる塩化銀粒子、およびかかる塩化銀粒子を含む塩化銀含有ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1および比較例1の塩化銀粒子についての、体積基準の粒子径分布を示すグラフである。
【
図2】実施例1および比較例1の塩化銀粒子についての、体積基準の累積粒度分布を示すグラフである。
【
図3】実施例1の塩化銀粒子の観察画像(500倍)を示す図である。
【
図4】実施例1の塩化銀粒子の観察画像(2000倍)を示す図である。
【
図5】実施例1の塩化銀粒子の観察画像(10000倍)を示す図である。
【
図6】比較例1の塩化銀粒子の観察画像(500倍)を示す図である。
【
図7】比較例1の塩化銀粒子の観察画像(2000倍)を示す図である。
【
図8】比較例1の塩化銀粒子の観察画像(10000倍)を示す図である。
【
図9】実施例22の塩化銀粒子についての、体積基準の粒子径分布を示すグラフである。
【
図10】実施例22の塩化銀粒子についての、体積基準の累積粒度分布を示すグラフである。
【
図11】実施例22の塩化銀粒子の観察画像(10000倍)を示す図である。
【
図12A】実施例1に基づく配線パターン(配線パターン1、測定箇所2)の形状の測定結果を示す図である。
【
図12B】実施例21に基づく配線パターン(配線パターン1、測定箇所2)の形状の測定結果を示す図である。
【
図12C】比較例1に基づく配線パターン(配線パターン2、測定箇所1)の形状の測定結果を示す図である。
【
図13A】実施例1に基づく配線パターン(配線パターン2、測定箇所4)の形状の測定結果を示す図である。
【
図13B】実施例21に基づく配線パターン(配線パターン1、測定箇所4)の形状の測定結果を示す図である。
【
図13C】比較例1に基づく配線パターン(配線パターン1、測定箇所5)の形状の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係る塩化銀粒子は、レーザ回折/散乱法で湿式測定して得られた体積基準の粒子径分布において小粒径側からの累積粒度分布における累積50%粒子径D50が8μm以上25μm以下である。累積50%粒子径D50が8μm以上25μm以下であることにより、一次粒径が小さく凝集力が大きい塩化銀粒子の存在割合が少なくなり、結果、粗大な二次粒子が生成されにくくなる。一次粒径が小さい塩化銀粒子の存在割合をより安定的に少なくする観点から、累積50%粒子径D50は、20μm以下であることがより好ましい場合がある。
【0023】
本実施形態に係る塩化銀粒子において、累積粒度分布における、累積10%粒子径D10および累積90%粒子径D90ならびに累積50%粒子径D50が、下記式(1)を満たすことが好ましい場合がある。
(D90-D10)/D50≦2.2 (1)
【0024】
上記式(1)の左辺は、累積粒度分布の立ち上がりの急峻さの程度を示しており、左辺の数値が小さいほど急峻に立ち上がり、粒子径分布では分布幅が狭くなる。塩化銀粒子の分布は、可能な範囲で狭いことが塩化銀含有ペーストの品質安定性(粗大な二次粒子が生じにくいこと)の観点から好ましい場合があるため、上記式(1)の左辺は、2.0以下であることがより好ましい場合があり、1.5以下であることが特に好ましい場合がある。
【0025】
本実施形態に係る塩化銀粒子は、最頻度粒子径Dmが10μm以上であることが好ましい場合がある。最頻度粒子径Dmが10μm以上である場合には、一次粒径が小さい塩化銀の量が相対的に少なく、塩化銀含有ペーストの品質安定性に優れる。累最頻度粒子径Dmの上限は特に限定されないが、35μm以下であることが好ましい場合があり、30μm以下であることがより好ましい場合がある。
【0026】
累積50%粒子径D50と体積基準の粒子径分布の最頻度粒子径Dmとが下記式(1)を満たしてもよい。
1.0<Dm/D50≦1.7 (1)
【0027】
累積50%粒子径D50は体積基準の粒子径分布において粒子体積の小径側からの累計値と大径側からの累積値とが等しくなる粒子径である。一方、最頻度粒子径Dmは、体積基準の粒子径分布の最大ピークが位置する粒子径である。
【0028】
これらの粒子径の比(Dm/D50)が1.7以下であることにより、最大ピークよりも小径側に位置するサブピークが顕在化しにくく、一次粒径が小さな銀粒子の存在割合が小さい。それゆえ、かかる塩化銀粒子を含む塩化銀含有ペーストには大径の二次粒子が発生にくい。この観点から、Dm/D50は、1.6以下であることが好ましい場合があり、1.5以下であることがより好ましい場合があり、1.4以下であることがさらに好ましい場合があり、1.3以下であることが特に好ましい場合がある。
【0029】
Dm/D50の下限値は特に限定されない。Dm/D50が1.0未満であることは、最頻度粒子径Dmが累積50%粒子径D50よりも小径側に位置することを意味する。したがって、一次粒径が小さい塩化銀粒子の存在割合をより安定的に少なくする観点から、Dm/D50は、0.5以上であることが好ましい場合があり、0.6以上であることがより好ましい場合があり、0.7以上であることがさらに好ましい場合があり、0.8以上であることが特に好ましい場合がある。
【0030】
本実施形態に係る塩化銀粒子は、体積基準の粒子径分布において、最頻度粒子径Dmよりも小粒径側に位置するピークであるサブピークの頻度分布値Psと、最頻度粒子径Dmにおける頻度分布値Pmとが下記式(3)を満たすことが好ましい場合がある。
Ps≦Pm×0.6 (3)
【0031】
後述する実施例で示すように、一次粒径が10μm程度以上の塩化銀粒子は、塩化銀含有ペーストにしたときに、粗大な二次粒子を形成しにくいが、一次粒径が6μm以下の塩化銀粒子は、粗大な二次粒子を形成しやすい。したがって、最頻度粒子径Dmが10μm以上である粒子径分布を有する塩化銀粒子が塩化銀含有ペーストの原料として好ましいが、塩化銀粒子の製造方法によっては、最頻度粒子径Dmが10μm以上であるが、最頻度粒子径Dmのみがピークとなるシングルピーク型の粒度分布ではなく、最頻度粒子径Dmよりも小径側にサブピークを有するダブルピーク型の粒度分布を有する塩化銀粒子が得られる場合がある。そのような場合であっても、サブピークの頻度分布値Psが最頻度粒子径Dmを与えるピーク(メインピーク)の頻度分布値Pmよりも十分に低いことが好ましく、具体的には、上記式(3)に示されるように、Ps/Pmは0.6以下であることが好ましい。
【0032】
上記の一次粒径が6μm以下の塩化銀粒子の存在割合を管理するための簡易的な尺度として、体積基準の粒子径分布において、粒径が3μm程度の頻度分布値P3と、粒径が10μm程度の頻度分布値P10との比(P10/P3)を挙げることができる。一次粒径が6μm以下の塩化銀粒子の存在割合を低くする観点から、この比(P10/P3)は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましく、7以上であることが特に好ましい。
【0033】
本実施形態に係る塩化銀粒子は一次粒径が比較的大きいため、粉体状態を走査型電子顕微鏡にて10000倍の倍率で観察して視野を9μm×13μmとしたときに、重なりなく全体を観察できる塩化銀粒子が10個未満となりやすい。
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係る塩化銀粒子の製造方法を説明する。本実施形態に係る製造方法により製造された塩化銀粒子は、上記の本実施形態に係る塩化銀粒子の特徴を有していてもよく、粗大な二次粒子を生じにくいため、かかる塩化銀粒子を含有する塩化銀含有ペーストは優れた品質を有する。
【0035】
本実施形態に係る製造方法は、銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応により塩化銀粒子を析出させることを含む。反応液の溶媒は水が一般的であるが、これに限定されない。銀のアンミン錯体の調製方法は任意である。限定されない一例として、銀のアンミン錯体は、硝酸銀とアンモニアとの反応により生成させることが挙げられる。
【0036】
反応液への塩化物イオンの供給源となる物質、すなわち塩素源は限定されない。塩素源として塩酸や、塩化ナトリウムや塩化カリウムを具体例とする塩化物が例示される。塩素源が塩酸の場合には、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属イオンを含まないため、電子材料の用途に適している。
【0037】
銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応は、銀のアンミン錯体を含有する液体に塩化物イオン(塩素源)が供給されることにより生じてもよいし、塩化物イオンを含有する液体に銀のアンミン錯体が供給されてもよい。供給形態は限定されない。例えば塩素源が塩酸の場合には、塩酸を含む液体が銀のアンミン錯体を含む液体に供給されてもよい。例えば、塩化ナトリウムが塩素源である場合には、塩化ナトリウムを固体として、あるいは塩化ナトリウム溶液として、銀のアンミン錯体を含む液体に供給されてもよい。
【0038】
銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの量的関係は限定されない。銀の全量が塩化銀になるように、銀のモル量と等量以上のモル量の塩化物イオンが供給されることが好ましい。銀のアンミン錯体を硝酸銀などの銀塩とアンモニアから生成させる場合には、銀の全量がアンミン錯体となるように、銀のモル量に対して2倍以上のモル量のアンモニアが供給されることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る製造方法では、塩化銀粒子の析出前もしくは析出後またはその両方に分散剤を添加する。分散剤を添加することにより、一次粒子の凝集が生じにくくなる。ここで、塩化銀粒子の析出前、とは、銀のアンミン錯体と塩化物イオンとの液中反応が開始される前の段階であり、塩化物イオンが供給される前の銀のアンミン錯体を含有する液体に分散剤を存在させてもよいし、銀のアンミン錯体が供給される前の塩化物イオンを含有する液体に分散剤を存在させてもよい。
【0040】
界面活性剤を分散剤として用いてよく、分散剤は陰イオン系の界面活性剤であることが好ましい。陰イオン系の界面活性剤の具体例として、炭素数6以上の高級脂肪酸に基づく脂肪酸系界面活性剤;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などの直鎖アルキルベンゼン系界面活性剤;炭素数12以上の高級アルコールに基づくアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩などの高級アルコール系界面活性剤;アルキルスルホン酸ナトリウムなどのパラフィン系界面活性剤;ポリアクリル酸、アクリル酸-フタル酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸系モノマー共重合体などに基づくポリカルボン酸系界面活性剤などが挙げられる。これらのうち、ポリカルボン酸系界面活性剤については、重量平均分子量として、5,000~500,000の範囲を用いることが好ましい場合があり、10,000~200,000の範囲を用いることがより好ましい場合がある。
【0041】
分散剤の供給量は特に限定されない。生成する塩化銀粒子の質量基準で、0.1~10%の範囲で供給してもよく、0.5~5%の範囲で供給することが好ましい場合がある。
【0042】
分散剤の機能(粗大粒子の発生防止)を適切に果たす観点から、分散剤は、塩化銀の析出前および析出後に供給することが好ましい。この場合の供給バランスは任意であり、析出前後で等量供給することが一具体例として挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る製造方法を採用することにより、上記の本実施形態に係る塩化銀粒子を得ることが容易となる場合がある。
【0044】
こうして得られた塩化銀をろ過洗浄し、ろ取物を乾燥することにより、所望の塩化銀粒子が得られる。ろ取物を乾燥させて得られた塩化銀粒子について、取り扱い性を高めるために粉砕処理を行ってもよい。この粉砕処理を行っても、一次粒子のレベルで粒径が大きな塩化銀粒子を形成しているため、塩化銀含有ペーストの品質安定性には影響しない。
【0045】
続いて、本発明の一実施形態に係る塩化銀含有ペーストについて説明する。本実施形態に係る塩化銀含有ペーストは、前述の本実施形態に係る塩化銀粒子または前述の本実施形態に係る塩化銀粒子の製造方法により製造された塩化銀粒子を含有し、さらにビヒクルを含有する。
【0046】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストが含有するビヒクルの種類は特に限定されず、ペースト組成物の分野で公知の各種溶剤を好適に用いることができる。
【0047】
具体的には、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;これらグリコールエーテル類の酢酸エステル(その具体例として、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチルが挙げられる。);二塩基酸エステル(DBE)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類;シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;ターピネオール、水添ターピネオール等のモノテルペンアルコール類;これらモノテルペンアルコール類の酢酸エステル;γ-ブチロラクトン;リモネン;等が挙げられる。これらの物質は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストが、スクリーン印刷によってパターンを作成する用途に用いられる場合には、ビヒクルは、その沸点が200℃以上である物質を含むことが好ましい。の高沸点溶剤であることが好ましい。このような高沸点溶剤としては特に限定されないが、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、ターピネオール等が具体例として挙げられる。これらの物質は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストは導電粒子をさらに含有してもよい。導電粒子としては、銀粉、銅粉、銀コート銅粉などの金属系粒子、アセチレンブラック、グラファイト粉、ケッチャンブラックなどカーボン系粒子が例示される。生体電極として使用される場合には、導電粒子は銀粉または銀コート銅粉であることが好ましい。
【0050】
導電粒子のサイズは特に限定されないが、累積50%粒子径D50が15μm以下であることが、ペーストから作成されるパターン(例えば印刷パターン)の形状安定性の観点から好ましい場合がある。なお、導電粒子の形状は限定されず、球状、鱗片状、不定形状のいずれであってもよいし、導電粒子はこれらの混合であってもよい。
【0051】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストはバインダー樹脂をさらに含有してもよい。バインダー樹脂は耐熱性を有していること、すなわち耐熱性樹脂であることが求められる場合がある。耐熱性樹脂の具体例として、セルロース系樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの耐熱性樹脂は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストは硬化性成分をさらに含有してもよい。そのような硬化性成分として、エポキシ樹脂が例示される。エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A型、F型、AD型等)、フェノールおよびクレゾール型エポキシ樹脂(ノボラック型等)、ポリオールのグルシジルエーテル型エポキシ樹脂、ポリアッシドのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリアミンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、および複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストが硬化性成分を含有する場合には、硬化剤がさらに含有されていることが好ましい。本実施形態に係る塩化銀含有ペーストが硬化性成分としてエポキシ樹脂用を含有する場合における硬化剤の具体例として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸等の酸無水物類;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノエチルアミン、メチルジデエシルアミン、メチルジオレイルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、トリ-n-オクチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等の第三級アミン類;三フッ化ホウ素エチルエーテル、三フッ化ホウ素フェノール、三フッ化ホウ素ピペリジン、酢酸三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン等のフッ化ホウ素を含むルイス酸あるいはその化合物などが挙げられる。これら化合物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本実施形態に係る塩化銀含有ペーストは、ペースト組成物の分野で公知の各種添加剤をさらに含有してもよい。そのような添加剤の具体例として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、粘度調整剤などが挙げられる。これらの添加剤の添加量は、本実施形態に係る塩化銀含有ペーストが本来の機能を発揮しうる範囲で適宜設定される。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0056】
例えば、本実施形態に係る銀粒子は、本実施形態に係る製造方法を採用することなく製造されてもよい。そのような製造方法の一具体例として、塩化銀粒子のごく一般的な製造方法(例えば硝酸銀の塩酸による中和)により製造された塩化銀粒子について、分級などの粒径選別手段を用いて、上記の条件を満たす塩化銀粒子を得てもよい。粒径選別手段を用いる場合には、大まかな目安として、粒径が6μm程度以上の塩化銀粒子を選び取るようにすることが好ましいことがある。
【実施例0057】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
硝酸銀の結晶20.0gを純水23gに溶解し、これに25%アンモニア水を18.0g加えて、銀のアンミン錯体を含む溶液(銀含有溶液)を得た。銀含有溶液にポリアクリル酸(重量平均分子量25,000)からなる分散剤を1.27g添加した後、12%塩酸を41.5g加えて、中和反応および塩化銀の析出反応を行って塩化銀含有液体を得た。塩化銀含有液体に、ポリアクリル酸(重量平均分子量25,000)を1.27g添加した後、ろ過し、ろ取物を純水400gで洗浄し、その後、エタノール40gを加えてろ取物に含まれる純水を置換した。ろ取物を乾燥温度60℃で14時間乾燥して、塩化銀粒子を得た。
【0059】
得られた塩化銀粒子について、レーザ回折/散乱法(使用機器:島津製作所社製「SALD-7100」)で湿式測定して体積基準の粒子径分布を得た。また、乾燥状態の塩化銀粒子について、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JCM-5700」)により観察を行った。
【0060】
上記の塩化銀粒子を2.0gと、球状銀粉(東洋化学社製「KT058」、累積50%粒子径D50:2.1μm)を2.0gと、ビヒクルとしての酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル95%とエチルセルロース(100cps)5%との混合体1.5gとを混合して、塩化銀含有ペーストを調製した。得られた塩化銀含有ペーストを用いて印刷により幅1mmのパターンを作成した。表面粗さ形状測定機(東京精密社製「SURFCOM TOUCH 50」)を用いて、作成したパターンの形状を測定した。
【0061】
パターン形状測定の詳細は次のとおりであった。印刷によりガラス基板上にテープ・シール等で長さ4cm×幅1mmの溝を4本作り、各溝内に塩化銀含有ペーストを塗布し、ヘラで平坦化することで4本の配線パターンを作成した。その後、150℃の乾燥機で1時間以上加熱した。
【0062】
得られた配線パターン4本の中から、かすれの無い任意の2本を選んだ(配線パターン1、配線パターン2)。各配線パターンを目視で見て、最も凹凸が大きい3箇所を選び、測定箇所1から測定箇所3とした。また、同パターンにおいて目視で平坦な2箇所を選び、測定箇所4および測定箇所5とした。この5つの測定箇所について、配線パターンの短手方向(断面方向)に表面粗さ測定を行い、得られた断面曲線から算術平均高さPaおよび最大断面高さPtを求めた。
【0063】
(比較例1)
アンモニア水を加えることなく銀含有溶液を調製したこと以外は実施例1と同様の方法により、塩化銀粒子を得た。得られた塩化銀粒子について、実施例1と同様の測定・観察を行った。また、実施例1と同様に塩化銀含有ペーストを調製し、このペーストを用いて幅1mmの配線パターンを、印刷により作成し、配線パターンの形状を実施例1と同様に測定した。
【0064】
(実施例2~22)
製造方法の再現性を確認する観点から、実施例1と同様の製造方法により、塩化銀粒子を製造し、実施例1と同様の測定・観察を行った。なお、実施例10~実施例22は、実施例1の1000倍以上のスケールで塩化銀粒子の製造を行った。これらのうち、実施例21の塩化銀粒子を用いて、実施例1と同様に塩化銀含有ペーストを調製して、配線パターンの形状測定を行った。
【0065】
(粒子径分布)
実施例1の塩化銀粒子についての体積基準の粒子径分布および累積粒度分布を表1に示す。表1において、0μm超0.064μm未満の範囲の粒径の塩化銀粒子は測定されなかったので「中略」とした。57.648μm超300μm未満の範囲の粒径についても同様である。
【0066】
【0067】
比較例1の塩化銀粒子についての体積基準の粒子径分布および累積粒度分布を表2に示す。表2の「中略」は表1と同様の意味で用いた。
【0068】
【0069】
表1および表2の分布をグラフ化したものが
図1および
図2である。
【0070】
図1に示されるように、実施例1の塩化銀粒子の体積基準の粒子径分布と比較例1の塩化銀粒子の体積基準の粒子径分布とは、基本傾向が異なっていた。実施例1の塩化銀粒子は、概ね10μmにピークを有するシングルピーク型の分布であった。
【0071】
実施例1の塩化銀粒子の粒子径分布について、粒径が3μm程度の頻度分布値P3と、粒径が10μm程度の頻度分布値P10との比(P10/P3)を次のようにして算出した。表1では粒径が10μmの頻度分布値は計測されていないため、粒径が9μmの頻度分布値(P9)と粒径が11μmの頻度分布値(P11)との平均値をP10とした。こうして求めたP10/P3は、6.4(=(7.984+9.562)/5.605)であり、6以上となった。
【0072】
一方、比較例1の塩化銀粒子は、10μm強にピークを有するメインピークと、メインピークよりも小径側にピークを有するサブピークとを有するダブルピーク型の分布であった。表2から、メインピークが位置する粒子径(最頻度粒子径Dm)は13.614μmであり、このときの頻度分布値Pmは10.179%であった。サブピークが位置する粒子径は3.215μmであり、このときの頻度分布値Psは5.065%であった。したがって、Ps/Pmは0.50であり、上記式(3)を満たさなかった。P10/P3についても実施例1の場合と同様に計算すると、2.2となり、3未満となった。
【0073】
こうした粒子径分布の基本傾向の相違を反映して、比較例1の塩化銀粒子の累積粒度分布は、立ち上がりが実施例1の塩化銀粒子の場合よりも緩やかであった。
【0074】
粒子径分布の傾向を定量的にさらに評価するために、実施例1から実施例22および比較例1の塩化銀粒子について、累積10%粒子径D10、累積90%粒子径D90および累積50%粒子径D50ならびに最頻度粒子径Dmを求め、これらから(D90-D10)/D50およびDm/D50を計算した結果を表3に示す。
【0075】
【0076】
表3に示されるように、実施例1から実施例22の塩化銀粒子は、上記式(1)および上記式(2)の双方を満たしたが、比較例1の塩化銀粒子は、上記式(1)も上記式(2)も満たさなかった。
【0077】
図3から
図5は、実施例1の塩化銀粒子の観察画像(500倍、2000倍、10000倍)を示す図である。
図6から
図8は、比較例1の塩化銀粒子の観察画像(500倍、2000倍、10000倍)を示す図である。これらの対比により、実施例1の塩化銀粒子は、比較例1の塩化銀粒子に比べて、一次粒径が大きいことが確認された。特に、
図6や
図7から、比較例1の塩化銀粒子では、一次粒子が凝集してなる50μm以上の大きさを有する二次粒子が存在することが確認された。こうした粗大な二次粒子は、ペースト化する際にも残留し、塩化銀含有ペーストの品質安定性を低下させる。
【0078】
実施例22の塩化銀粒子は、実施例1のスケールアップ品である。
図9は、実施例22の塩化銀粒子についての、体積基準の粒子径分布を示すグラフであり、
図10は、実施例22の塩化銀粒子についての、体積基準の累積粒度分布を示すグラフであり、
図11は、実施例22の塩化銀粒子の観察画像(10000倍)を示す図である。
図11に示される様に、実施例22の塩化銀粒子は実施例1の塩化銀粒子と同等以上の一次粒径を有し、
図9および
図10に示されるように、実施例1の場合よりもシャープな(幅が狭い)分布を有していた。この点は、表3の(D90-D10)/D50を対比することによっても確認できる。すなわち、実施例1では(D90-D10)/D50は1.96とほぼ2であったが、実施例22では1.2となり、塩化銀粒子の粒径の均一性が高まっている。
【0079】
配線パターンの形状の測定結果を表4および表5に示す。表4は断面曲線の算術平均高さPa(JIS B0601:2001)であり、表5は断面曲線の最大断面高さPt(JIS B0601:2001)である。表中の測定結果を示す数字の単位はいずれもμmである。算術平均高さPaおよび最大断面高さPtのいずれについても、すべての平均値は、比較例1>実施例1>実施例21となった。この傾向は、凹凸の大きな測定箇所1から3の平均値および凹凸の少ない平坦な測定箇所4および5の平均値でも同様であった。
【0080】
【0081】
【0082】
配線パターンの測定結果の具体例を
図12Aから
図13Cに示す。
図12Aから
図12Cは、凹凸の大きい測定箇所の測定結果であり、
図13Aから
図13Cは、凹凸の小さな平坦な測定箇所の測定結果である。表4および表5ならびに
図12Aから
図13Cに示されるように、比較例1の塩化銀粒子を用いた塩化銀含有ペーストから形成された配線パターンは、実施例1の塩化銀粒子や実施例21の塩化銀粒子を用いた塩化銀含有ペーストから形成された配線パターンに比べ、断面曲線パラメータ(算術平均高さPa)および(最大断面高さPt)の平均値が高かった(1.5倍から2倍程度)。比較例1の配線パターンの形状パラメータの数値が大きくなったのは、比較例1の塩化銀粒子を用いて調製された塩化銀含有ペーストに、相対的に粗大粒子が多く含まれていたためと考えられる。
【0083】
(実施例23~実施例24、比較例2)
次のとおり分散剤の投入条件を変更したこと以外は実施例1と同様の製造方法により、塩化銀粒子を製造した。
実施例23:銀含有溶液への分散剤の添加なし
実施例24:塩化銀含有液体への分散剤の添加なし
比較例2:銀含有溶液への分散剤の添加なし、かつ塩化銀含有液体への分散剤の添加なし
【0084】
得られた塩化銀粒子について、目視による外観確認を行った。実施例23および実施例24では、実施例1の塩化銀粒子に比べて粗大な二次粒子が増えたが、粉砕することにより実施例1と同等の粒子となった。これに対し、比較例2では、得られた塩化銀は、粒子状というよりも実質的に塊状であり、粉砕しても実施例23や実施例24の塩化銀粒子よりも粗大な粒子が含まれた状態であった。
【0085】
(実施例25~実施例27)
次のとおり分散剤の種類を変更したこと以外は実施例1と同様の製造方法により塩化銀粒子を製造した。
実施例25:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(東京化成社製「ツイン20」)
実施例26:ベンゼトニウムクロリド
実施例27:ステアリン酸
【0086】
得られた塩化銀粒子について、目視による外観確認を行った。実施例25および実施例26では、実施例1の塩化銀粒子に比べて粗大な二次粒子が増えたが、粉砕することにより実施例1と同等の粒子となった。実施例27の塩化銀粒子はパウダー状であり、累積50%粒子径D50は5.8μmであった。