(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044810
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】評価プログラム、評価方法および評価装置
(51)【国際特許分類】
H04W 16/22 20090101AFI20240326BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20240326BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
H04W16/22
G06N3/08
G06N3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150567
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 菜月
(72)【発明者】
【氏名】檀 隼人
(72)【発明者】
【氏名】大川 佳寛
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅俊
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測すること。
【解決手段】評価装置は、対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた施設の位置および施設の規模を示す2次元の第1行列と対象エリアに既に設置されている対象物の位置および対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、対象物が対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、第1行列と、第2行列の対象物の位置または対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、対象物が対象エリアに与える影響度を予測する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする評価プログラム。
【請求項2】
前記第1行列と、前記第2行列と前記第2行列とを重ね合わせた3次元データと、前記曜日の種類と、前記時刻とを含む入力データと、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を正解ラベルとする学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の評価プログラム。
【請求項3】
前記機械学習を実行する処理は、前記対象エリアに施設が含まれない場合には、施設が含まれるまで、前記対象エリアの範囲が拡大された第1行列と、前記第2行列とを重ね合わせた3次元データを前記入力データに含む前記学習データを用いて、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする請求項2に記載の評価プログラム。
【請求項4】
前記学習データの入力データは、前記第1行列と、前記対象エリアに既に設置されている基地局の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを含み、前記正解ラベルは、前記対象エリアに配置された基地局の通信容量を含み、前記機械学習を実行する処理は、前記学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする請求項3に記載の評価プログラム。
【請求項5】
前記予測する処理は、前記第1行列と、前記第2行列の前記基地局の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを前記学習モデルに入力することで、通信容量を予測することを特徴とする請求項4に記載の評価プログラム。
【請求項6】
前記予測する処理によって、予測された通信容量と、前記対象エリアの通信容量の需要とを基にして、前記対象エリアの通信容量の需要を満たすか否かを判定する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項5に記載の評価プログラム。
【請求項7】
対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理をコンピュータが実行することを特徴とする評価方法。
【請求項8】
対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理を実行する制御部を有する評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの人数、位置に応じて、サービスを提供する対象物の数、位置、容量を評価、最適化することが求められている。ここでは、RAN(Radio Access Network)における基地局(Base Station)を対象物とし、係る基地局の設置を評価する場合について説明する。以下の説明では、基地局を「BS」と表記する。また、BSを利用するユーザ端末(User Equipment)を「UE」と表記する。
【0003】
RANの設定、運用において、各UEのトラフィック需要を満たすようにBSを設置することは重要であるが、必要以上にBSを配置すると、電波の干渉や消費電力の増加につながる。
【0004】
たとえば、シャノンの定理では、通信路容量C[bit/s]を、式(1)のように定義する。式(1)において、「B」は、帯域幅[Hz]である。「S」は、信号の総電力である。Nは、ノイズの総電力である。「I」は、干渉の総電力である。各エリアの通信路容量を算出することで、各エリアのトラフィック需要を満たすか否か評価することができる。
【0005】
【0006】
シャノンの定理によって、通信路容量を算出するためには、各エリアについて、UE数、UEとBSとの相対的な位置関係、大まかな地域区分に従った電波の減衰度合いの計算式が必要となる。しかし、エリアごとに、UE数、UEとBSとの相対的な位置関係を仮定することは難しい。
【0007】
なお、シャノンの定理ではなく、NN(Neural Network)を用いて、対象となるエリアでのトラフィック需要を満たすために稼働すべきBS数を推定する従来技術がある。係る従来技術で用いられるNNの入力は、エリア内のPOI(Point of Interest)の数、BS数、SNS(Social Networking Service)のツイート数であり、NNの出力は、エリアの通信容量である。
【0008】
POIは、地図上に表示される地点のカテゴリや種別を示す。たとえば、図書館、カフェ、公園は、POIの一例である。従来技術では、エリアの通信容量として、各エリアでのトラフィックデータの実績値の最大値を用いて、NNの機械学習に利用する。
【0009】
従来技術では、NNに入力するPOIの数、BS数、SNSのツイート数のうち、BS数のみを変化させて通信容量を予測することで、BS密度と、通信容量との関係を求め、トラフィック需要に対するBSの数の過不足を評価する。BS密度は、エリア内のBS数に相当する。
【0010】
図13は、従来技術によって求められるBS密度と通信容量との関係を示す図である。
図13に示すグラフG1の横軸がBS密度に対応し、縦軸が通信容量に対応する。たとえば、BS数が過剰なエリアでは、BSをスリープモードにするような省エネ対策を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-68163号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0014487号明細書
【特許文献3】特開2021-78096号公報
【特許文献4】特開2019-161341号公報
【特許文献5】特表2021-530821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来技術では、エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測することができないという問題がある。
【0013】
たとえば、従来技術では、トラフィック需要を満たすBS数を推定することは可能であるが、BSの位置を推定し、POIと、BSとの相対的な位置関係を考慮して、エリア内の通信容量を推定するものではない。
【0014】
かかる課題は、BSに限定されるものではなく、ユーザの人数、位置に応じて、サービスを提供する対象物に対しても同様に発生し得る。
【0015】
1つの側面では、本発明は、エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測することができる評価プログラム、評価方法および評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の案では、コンピュータに次の処理を実行させる。コンピュータは、3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、対象物が対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルを利用する。3次元データは、対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた施設の位置および施設の規模を示す2次元の第1行列と対象エリアに既に設置されている対象物の位置および対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせたデータである。コンピュータは、機械学習された学習モデルに対し、第1行列と、第2行列の対象物の位置または対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、対象物が対象エリアに与える影響度を予測する。
【発明の効果】
【0017】
エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、機械学習モデルの入力および出力の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本実施例に係るマップデータを説明するための図である。
【
図2B】
図2Bは、POIの規模を考慮した数値設定の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、評価装置の予測フェーズにおける処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施例に係る評価装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、機械学習モデルの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、前処理部の処理を説明するための図(1)である。
【
図7】
図7は、前処理部の処理を説明するための図(2)である。
【
図8】
図8は、本実施例に係る評価装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、通信容量の予測精度の比較結果を示す図である。
【
図10】
図10は、評価装置のその他の処理を説明するための図である。
【
図11】
図11は、対象エリアを拡大した場合の予測精度の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例の評価装置と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、従来技術によって求められるBS密度と通信容量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願の開示する評価プログラム、評価方法および評価装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例0020】
本実施例に係る評価装置は、畳み込みニューラルネットワークを用いて、対象エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測する。本実施例では、一例として、対象エリア内の施設を「POI」として説明し、対象物を「BS」として説明する。たとえば、POIは、library、park、bank、cafe、school、hospital、bar、restaurant、store、subway stations等の施設である。また、対象エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を「通信容量」として説明する。また、畳み込みニューラルネットワークを「機械学習モデル」と表記する。
【0021】
まず、評価装置が利用する機械学習モデルの入力および出力の一例について説明する。
図1は、機械学習モデルの入力および出力の一例を示す図である。
図1に示すように、機械学習モデル50の入力は、マップデータ、曜日種、時刻となる。機械学習モデル50の出力は、通信容量となる。
【0022】
たとえば、マップデータは、対象エリア内のPOIの位置および対象エリア内のBSの位置を示す。曜日種は、「平日」または「休日」が設定される。時刻は、30分毎の時刻が設定される。通信容量は、対象エリア内に設置されたBSの通信容量の最大値である。
【0023】
ここで、マップデータについて説明する。
図2は、本実施例に係るマップデータを説明するための図である。マップデータは、C×H×Wの3次元データである。「C」はPOIまたはBSのチャネルを示し、「H」は対象エリアの縦軸方向の位置(緯度)を示し、「W」は対象エリアの横軸方向の位置(経度)を示す。マップデータには、チャネル毎の面データが配置される。
【0024】
評価装置は、対象エリアおよび面データを小エリアに分割する。評価装置は、対象エリアの小エリアおいて、チャネルに対応するPOIまたはBSが存在する場合には、面データの該当する小エリアに「1」を設定し、存在しない場合には、該当する小エリアに「0」を設定する。
【0025】
たとえば、
図2に示すマップデータm10は、対象エリアA10の施設位置情報を基にして生成される。たとえば、施設位置情報は、対象エリアA10に含まれるBSおよびPOI(POIの種別)と位置とを対応付ける情報である。マップデータm10には、各POIに対応する面データ10-1,10-2,・・・,10-10と、BSに対応する面データ10-BSとが含まれる。面データ10-3~10-9の図示を省略する。面データ10-1~10-10,10-BSは、対象エリアA10と同じ小エリアに区切られる。以下の説明では、対象エリア、面データ10-1~10-10,10-BSの小エリアのうち、i行目、j列目の小エリアを(i,j)と表記する。
【0026】
面データ10-1は、チャネル「library」に対応する面データである。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にlibraryが位置している場合には、面データ10-1の小エリア(i,j)に「1」を設定する。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にlibraryが位置してない場合には、面データ10-1の小エリア(i,j)に「0」を設定する。評価装置は、i、jの値を変更しつつ、上記の処理を繰り返すことで、面データ10-1の各小エリアに「1」または「0」を設定する。
【0027】
面データ10-2は、チャネル「park」に対応する面データである。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にparkが位置している場合には、面データ10-2の小エリア(i,j)に「1」を設定する。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にparkが位置してない場合には、面データ10-2の小エリア(i,j)に「0」を設定する。評価装置は、i、jの値を変更しつつ、上記の処理を繰り返すことで、面データ10-2の各小エリアに「1」または「0」を設定する。
【0028】
面データ10-3は、チャネル「bank」に対応する面データである。面データ10-4は、チャネル「cafe」に対応する面データである。面データ10-5は、チャネル「school」に対応する面データである。面データ10-6は、チャネル「hospital」に対応する面データである。面データ10-7は、チャネル「bar」に対応する面データである。面データ10-8は、チャネル「restaurant」に対応する面データである。面データ10-9は、チャネル「store」に対応する面データである。面データ10-10は、チャネル「subway stations」に対応する面データである。
【0029】
評価装置は、面データ10-3~10-10についても、面データ10-1,10-2と同様にして、対象エリアA10を基にして、各小エリアに対し、「1」または「0」を設定する。
【0030】
面データ10-BSは、チャネル「BS」に対応する面データである。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にBSが位置している場合には、面データ10-BSの小エリア(i,j)に「1」を設定する。評価装置は、対象エリアA10の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にBSが位置してない場合には、面データ10-BSの小エリア(i,j)に「0」を設定する。評価装置は、i、jの値を変更しつつ、上記の処理を繰り返すことで、面データ10-BSの各小エリアに「1」または「0」を設定する。
【0031】
なお、上記の説明では、面データ10-1~10-10、10-BSの小エリアに設定する数値を「0」または「1」とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、対象エリアに設定される各POIの広さ、BSの送信電力の大きさに応じて、「0~1」の連続値を小エリアに設定してもよい。POIの広さが大きいほど、BSの送信電力の大きいほど、「1」に近い値とする。
【0032】
図2Bは、POIの規模を考慮した数値設定の一例を示す図である。たとえば、評価装置は、小エリア(2、2)に設置されたPOI(hospital)の敷地面積が第1閾値以上となる場合、小エリア(2、2)の数値を「1」に設定する。評価装置は、小エリア(6、3)に設置されたPOIの敷地面積が第1閾値未満、第2閾値以上となる場合、小エリア(6、3)の数値を「0.5」に設定する。評価装置は、小エリア(4、5)に設置されたPOIの敷地面積が第2閾値未満となる場合、小エリア(4、5)の数値を「0.3」に設定する。なお、上記の閾値と、閾値に応じた数値は一例であり、適宜、変更可能である。
【0033】
続いて、評価装置が実行する学習フェーズの処理、予測フェーズの処理について説明する。
【0034】
まず、評価装置が実行する学習フェーズの処理について説明する。評価装置は、学習フェーズにおいて、学習データセットを用いて、機械学習モデル50の機械学習を実行する。学習データセットには、複数の学習データが含まれる。各学習データには、入力データと、正解ラベルとの組が設定される。入力データには、マップデータ、曜日種、時刻が含まれる。正解ラベルには、通信容量が設定される。
【0035】
評価装置は、入力データを機械学習モデル50に入力し、機械学習モデル50から出力される値が、正解ラベルに近づくように、誤差逆伝播法等を基にして、機械学習モデル50のパラメータを更新(機械学習)する。
【0036】
続いて、評価装置が実行する予測フェーズの処理について説明する。
図3は、評価装置の予測フェーズにおける処理を説明するための図である。ここでは、評価装置が、ある対象エリアA11の通信容量を予測する場合について説明する。
【0037】
評価装置は、入力データ20を生成する。入力データ20には、マップデータ20aと、曜日種20bと、時刻20cとが含まれる。曜日種20b、時刻20cについては、ユーザによって、評価対象となる曜日種、時刻が設定される。
【0038】
マップデータ20aには、面データ11-1,11-2,・・・,11-10と、BSに対応する面データ11-BSとが含まれる。面データ11-3~11-9の図示を省略する。
【0039】
評価装置は、対象エリアA11および面データ11-1~11-10、11-BSを小エリアに分割する。評価装置は、
図2で説明した処理と同様にして、対象エリアA11の小エリアおいて、チャネルに対応するPOIが存在する場合には、面データの該当する小エリアに「1」を設定し、存在しない場合には、該当する小エリアに「0」を設定する。
【0040】
評価装置は、面データ11-BSに対して、評価したいBSの配置情報を設定する。たとえば、評価装置は、ユーザの指示に応じて、面データ11-BSを小エリアに対し、BSを配置する小エリアに「1」を設定し、BSを配置しない小エリアに「0」を設定する。
【0041】
なお、評価装置は、対象エリアA11に実際にBSが設置された小エリアを基にして、面データ11-BSの各小エリアに、「1」または「0」を設定してもよい。たとえば、評価装置は、対象エリアA11の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にBSが位置している場合には、面データ11-BSの小エリア(i,j)に「1」を設定する。評価装置は、対象エリアA11の各小エリアのうち、小エリア(i,j)にBSが位置してない場合には、面データ11-BSの小エリア(i,j)に「0」を設定する。評価装置は、i、jの値を変更しつつ、上記の処理を繰り返すことで、面データ11-BSの各小エリアに「1」または「0」の初期値を設定する。
【0042】
評価装置は、上記のように、面データ11-BSの各小エリアに初期値を設定した後、ランダムで何れかの小エリアの「1」を「0」に変更する、あるいは、何れかの小エリアの「0」を「1」に変更する。または、評価装置は、面データ11-BSの各小エリアに初期値を設定した後、「1」が設定された小エリアの隣の小エリアを選択し、「1」が設定された小エリアの値を「0」に変更し、選択した小エリアの値を「1」に設定する。
【0043】
評価装置は、上述した面データ11-1~11-10と、面データ11-BSとを重ね合わせることで、マップデータ20aを生成する。
【0044】
評価装置は、マップデータ20a、曜日種20b、時刻20cを含む入力データを、機械学習実行済みの機械学習モデル50に入力することで、通信容量を予測する。評価装置は、予測した通信容量が、対象エリアA11のトラフィック需要を満たすか否かを判定する。
【0045】
上記のように、本実施例に係る評価装置は、対象エリアのPOIの位置に基づく面データおよび対象エリアのBSの位置に基づく面データを重ね合わせたマップデータと、曜日種と、時刻とを機械学習モデル50に入力し、対象エリアの通信容量を予測する。これによって、対象エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測することができる。
【0046】
次に、
図1~
図3で説明した処理を実行する評価装置の構成例について説明する。
図4は、本実施例に係る評価装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、この評価装置100は、通信部110と、入力部120と、表示部130と、記憶部140と、制御部150とを有する。
【0047】
通信部110は、ネットワークを介して、外部装置等との間でデータ通信を実行する。後述する制御部150は、通信部110を介して、外部装置との間でデータをやり取りする。
【0048】
入力部120は、評価装置100の制御部150に各種の情報を入力する入力装置である。入力部120は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。ユーザは、入力部120を操作して、曜日種、時刻、マップデータの値を設定する。
【0049】
表示部130は、制御部150から出力される情報を表示する表示装置である。たとえば、表示部130は、通信容量の予測結果を表示する。
【0050】
記憶部140は、機械学習モデル50、施設位置情報60、学習データセット141を有する。記憶部140は、メモリなどの記憶装置に対応する。
【0051】
機械学習モデル50は、
図1等で説明した畳み込みニューラルネットワークである。ここでは、機械学習モデルの構成の一例について説明する。
図5は、機械学習モデルの構成の一例を示す図である。
図5に示すように、この機械学習モデル50は、Conv2d-ReLU層51、Max pooling層52、Conv2d-ReLU層53、Linear-ReLU層54、Linear-ReLU層55、Linear層56を有する。
【0052】
入力データのうち、マップデータが、Conv2d-ReLU層51に入力され、曜日種、時刻は、Linear-ReLU層54に入力される。
【0053】
Conv2d-ReLU層51は、マップデータが入力されると、畳み込み計算を実行し、計算結果を出力する。Conv2d-ReLU層51から出力された値は、Max pooling層52に入力される。たとえば、Conv2d-ReLU層51の出力チャネル数を「16」、カーネルサイズを「3」とする。
【0054】
Max pooling層52は、値が入力されると、最大値プーリングを実行し、実行結果を出力する。Max pooling層52から出力された値は、Conv2d-ReLU層53に入力される。たとえば、Max pooling層52のカーネルサイズを「2」とする。
【0055】
Conv2d-ReLU層53は、値が入力されると、畳み込み計算を実行し、計算結果を出力する。Conv2d-ReLU層53から出力された値は、Linear-ReLU層54に入力される。Conv2d-ReLU層53の出力チャネル数を「32」、カーネルサイズを「3」とする。
【0056】
Linear-ReLU層54は、Conv2d-ReLU層53から出力された値と、曜日種、時刻が入力される。Linear-ReLU層54は、Conv2d-ReLU層53から出力された値と、曜日種、時刻が入力されると、パラメータに応じた計算を行い、計算結果を出力する。Linear-ReLU層54から出力された値は、Linear-ReLU層55に入力される。Linear-ReLU層54のノード数を「300」とする。
【0057】
Linear-ReLU層55は、Linear-ReLU層54から出力された値が入力されると、パラメータに応じた計算を行い、計算結果を出力する。Linear-ReLU層54から出力された値は、Linear層56に入力される。Linear-ReLU層55のノード数を「300」とする。
【0058】
Linear層56は、Linear-ReLU層54から出力された値が入力されると、パラメータに応じた計算を行い、計算結果を出力する。計算結果は、通信容量に対応するスカラーとなる。
【0059】
図4の説明に戻る。施設位置情報は、所定の領域に含まれる、各POIの位置、規模および各BSの位置、規模に関する情報を含む。
【0060】
学習データセット141は、機械学習モデル50の機械学習を実行するための複数の学習データを含む。各学習データには、入力データと、正解ラベルとの組が設定される。入力データには、マップデータ、曜日種、時刻が含まれる。正解ラベルには、通信容量が設定される。学習データセット141は、予め生成されていてもよいし、後述する前処理部152によって生成されてもよい。
【0061】
制御部150は、取得部151、前処理部152、機械学習部153、予測部154を有する。制御部150は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等である。
【0062】
取得部151は、ネットワークを介して、外部装置等から各種のデータを取得する。たとえば、取得部151は、施設位置情報60を取得し、取得した施設位置情報60を、記憶部140に登録する。取得部151は、学習データセット141を取得し、記憶部140に登録してもよい。
【0063】
前処理部152は、施設位置情報60を基にして、学習データセット141を生成する。
図6および
図7は、前処理部の処理を説明するための図である。まず、
図6について説明する。たとえば、前処理部152は、マップ70を表示部130に表示させ、ユーザに対し、対象区域の指定を要求する。ユーザは、表示部に表示されたマップ70を参照し、入力部120を操作して、対象区域70aを選択する。
【0064】
前処理部152は、対象区域70aの指定を受け付けると、対象区域70aを複数のエリアに分割する。たとえば、前処理部152は、縦を100分割、横を100分割することで、合計、10000個のエリアを生成する。
図6では、一部のエリアのみを表示する。前処理部152は、下記の処理を実行して、エリアごとに、マップデータを生成する。たとえば、前処理部152は、エリア(対象エリア)A12を基にして、マップデータm12を生成する場合について説明する。
【0065】
前処理部152は、対象エリアA12に対応する施設位置情報60を基にして、対象エリアA12に含まれるPOIおよびBSの位置を特定する。前処理部152は、特定した結果を基にして、面データ12-1~12-10,12-BSを生成する。前処理部152が、対象エリアA12を基にして、面データ12-1~12-10,12-BSを生成する処理は、
図2で説明した、対象エリアA10から、面データ10-1~10-10,10-BSを生成する処理と同様である。前処理部152は、面データ12-1~12-10,12-BSを重ね合わせることで、マップデータm12を生成する。
【0066】
また、前処理部152は、予め設定された曜日種と、時刻とを準備する。予め設定される曜日種を「平日」、「休日」の2種類とする。予め設定される時刻を、0時~24時について、30分毎に0~48を割り当てる。たとえば、0時には「0」が割り当てられ、0時30分には「1」が割り当てられる。前処理部152は、マップデータm12、各曜日種、各時刻の組合せを、学習データの入力データとして生成する。たとえば、対象エリアA12の入力データの数は、96となる。
【0067】
図7の説明に移行する。前処理部152は、
図7の処理を実行することで、学習データの正解ラベルであって、対象エリアA12の入力データと対になる正解ラベル(通信容量)を特定する。
【0068】
前処理部152は、対象エリアA12の所定期間の通信容量の実績値セットを外部装置等から取得する。
図7では一例として、実績値セット80,81を示す。実績値セット80は、対象エリアA12の曜日種「平日」の実績値セットである。実績値セット80には、所定期間の各日付の実績値情報80a,80b,80cが含まれる。実績値情報80a,80b,80cの縦軸は、通信容量の実績値であり、横軸は、時刻に対応する。ただし、横軸の数値は、0時~24時(30分刻みの時刻)に、0~48の数値を割り当てた値となる。
【0069】
実績値セット81は、対象エリアA12の曜日種「休日」の実績値セットである。実績値セット81には、所定期間の各日付の実績値情報81a,81b,81cが含まれる。実績値情報81a,81b,81cの縦軸は、通信容量の実績値であり、横軸は、時刻に対応する。ただし、横軸の数値は、0時~24時(30分刻みの時刻)に、0~48の数値を割り当てた値となる。
【0070】
ここで、入力データの曜日種を「平日」とし、時刻を「14時0分(28)」とする。この場合、前処理部152は、実績値セット80に含まれる実績値情報80a,80b,80cの時刻「28」に対応する通信容量のうち、最大の通信容量(19Mbps)を特定する。前処理部152は、学習データの入力データ「マップデータm12、曜日種「平日」、時刻「28」」に対応する正解ラベルを、特定した通信容量(19Mbps)に設定し、入力データと正解ラベルとの学習データを、学習データセットに登録する。
【0071】
一方、入力データの曜日種を「休日」とし、時刻が「20時0分(40)」とする。この場合、前処理部152は、実績値セット81に含まれる実績値情報81a,81b,81cの時刻「40」に対応する通信容量のうち、最大の通信容量(11Mbps)を特定する。前処理部152は、学習データの入力データ「マップデータm12、曜日種「休日」、時刻「40」」に対応する正解ラベルを、特定した通信容量(11Mbps)に設定し、入力データと正解ラベルとの学習データを、学習データセットに登録する。
【0072】
前処理部152は、対象エリアA12の各入力データに対して、上記処理を繰り返し実行することで、対象エリアA12に関する複数の学習データを生成し、学習データセット141に登録する。
【0073】
前処理部152は、
図6に示した各対象エリアについても、上記処理を繰り返し実行することで、各対象エリアに関する複数の学習データを生成し、学習データセット141に登録する。
【0074】
図4の説明に戻る。機械学習部153は、学習フェーズにおいて、学習データセット141を基にして、機械学習モデル50の機械学習を実行する。機械学習部153は、学習データセット141から、学習データを取得し、学習データの入力データ(マップデータ、曜日種、時刻)を、機械学習モデル50に入力する。機械学習部153は、機械学習モデル50から出力される値が、学習データの正解ラベルに近づくように、誤差逆伝播法等を基にして、機械学習モデル50のパラメータを更新する。機械学習部153は、上記の処理を繰り返し実行する。
【0075】
予測部154は、予測フェーズにおいて、対象エリアの通信容量を予測する。たとえば、ユーザは、入力部120を操作して、対象エリア、曜日種、時刻を指定する。予測部154は、ユーザに指定された対象エリアの施設位置情報60を基にして、マップデータを生成する。予測部154が、対象エリアのマップデータを生成する処理は、
図3で説明した対象エリアA11から、マップデータ20aを生成する処理と同様である。
【0076】
予測部154は、マップデータ、曜日種、時刻を含む入力データを、機械学習済みの機械学習モデル50に入力することで、通信容量を得る。予測部154は、通信容量が、所定のトラフィック需要以上となるか否かを判定し、判定結果を表示部130に出力する。
【0077】
なお、予測部154は、通信容量が、所定のトラフィック需要未満となる場合には、マップデータに含まれるBSの面データを更新して、入力データを更新する。予測部154は、更新した入力データを、機械学習モデル50に入力することで、通信容量を得る。予測部154は、通信容量が、所定のトラフィック需要以上となるまで、入力データの更新を繰り返し実行する。
【0078】
予測部154は、マップデータに含まれるBSの面データを更新する場合には、BSの面データについて、ランダムで何れかの小エリアの「1」を「0」に変更する(BSの数を減らす)、あるいは、何れかの小エリアの「0」を「1」に変更する(BSの数を増やす)。または、予測部154は、面データの小エリアのうち「1」が設定された小エリアの隣の小エリアを選択し、「1」が設定された小エリアの値を「0」に変更し、選択した小エリアの値を「1」に設定する。
【0079】
更に、予測部154は、上記処理を繰り返し、通信容量が、所定のトラフィック需要以上となり、かつ、BSの数が最小となるような、BSの面データを探索する処理を実行してもよい。また、予測部154は、対象エリアの各曜日種と各時刻との全ての組合せについて、所定のトラフィック需要以上となり、かつ、BSの数が最小となるような、BSの面データを探索する処理を実行してもよい。たとえば、予測部154は、BS数を最小化する目的関数とし、全ての曜日種、時刻の組合せについて、通信容量が閾値以上となる制約条件を設定して、BSの面データを探索する処理を実行してもよい。
【0080】
次に、本実施例に係る評価装置の処理手順の一例について説明する。
図8は、本実施例に係る評価装置の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図8の処理で利用する機械学習モデル50は、学習フェーズによって、機械学習済みの機械学習モデルとする。
図8に示すように、評価装置100の予測部154は、入力部120から、対象エリア、曜日種、時刻の指定を受け付ける(ステップS101)。
【0081】
予測部154は、対象エリアに対応する施設位置情報60を基にして、各POIの面データを生成する(ステップS102)。予測部154は、評価対象となるBSの面データを生成する(ステップS103)。予測部154は、各POIの面データと、BSの面データとを重ね合わせて、マップデータを生成する(ステップS104)。
【0082】
予測部154は、マップデータ、曜日種、時刻を設定した入力データを、機械学習モデル50に入力して、通信容量を予測する(ステップS105)。予測部154は、予測した通信容量が、所定のトラフィック需要以上となるか否かを判定する(ステップS106)。予測部154は、判定結果を表示部130に表示させる(ステップS107)。
【0083】
次に、本実施例に係る評価装置100の効果について説明する。本実施例に係る評価装置100は、マップデータ、曜日種、時刻を入力とし、対象物の影響度を出力とする機械学習モデルを利用する。マップデータは、対象エリアに既に配置されているPOI毎に設けられた位置および規模を示す2次元の面データと対象エリアの対象物の位置および規模を示す2次元の面データとを重ね合わせた3次元データである。評価装置100は、POI毎の面データと、評価対象の対象物の配置、規模に関する面データとを重ね合わせたマップデータと、曜日種と、時刻とを、機械学習済みの機械学習モデル50に入力して、対象エリアの影響度を予測する。これによって、エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を予測することができる。
【0084】
たとえば、評価装置100は、対象物を基地局とし、対象物の影響度を、対象エリアのBS配置による通信容量とすることで、エリア内のPOIと基地局との相対的な位置関係を考慮した通信容量を予測することができる。
【0085】
評価装置100は、マップデータ、曜日種、時刻を含む入力データと、通信容量の正解ラベルとを対応付けた学習データを用いて、機械学習モデル50の機械学習を実行する。これによって、マップデータ、曜日種、時刻を、機械学習モデル50に入力して、対象エリアの通信容量を予測することができる。
【0086】
評価装置100は、予測した通信容量と、対象エリアのトラフィック需要とを比較することで、配置したBSによって、対象エリアのトラフィック需要を満たすことが可能であるか否かを予測することできる。
【0087】
評価装置100は、機械学習モデル50を利用して、通信容量を予測することで、従来技術と比較して、より正確に通信容量を予測することも可能である。
図9は、通信容量の予測精度の比較結果を示す図である。
図9のグラフG2は、従来技術の通信容量の精度を示すグラフである。グラフG3は、評価装置100の通信容量の精度を示すグラフである。グラフG2、G3の縦軸は、通信容量(予測)であり、横軸は、通信容量(正解)である。
【0088】
グラフG2の決定変数は「0.82」であり、平均誤差は「0.61」である。グラフG3の決定変数は「0.91」であり、平均誤差は「0.41」である。決定変数が「1」に近づくほど、また、平均誤差が0に近づくほど、通信容量の予測精度が良いことを示す。すなわち、本実施例に係る評価装置100の予測精度は、従来技術の予測精度よりもよいことが示される。
【0089】
ところで、上述した評価装置100の処理は一例であり、評価装置100はその他の処理を実行してもよい。たとえば、対象エリアには、POIがほとんど存在していないが、隣接エリアにPOIが密集していたり、規模の大きなPOIが存在していたりして、通信容量が大きくなっている場合がある。この場合、評価装置100は、対象エリアを設定する際に、一つ以上の何らかのPOIが含まれるように、対象エリアの大きさを調整する。
【0090】
図10は、評価装置のその他の処理を説明するための図である。たとえば、初期の対象エリアを、A20とすると、対象エリアA20には、POIが存在していない。このような場合、評価装置100は、対象エリアA20を、対象エリアA21に拡大し、いずれかのPOIを含ませる。評価装置100は、対象エリアに少なくとも含めるPOIとして、地域特性に応じてUEの集まりそうなPOIを選択する。評価装置100は、考慮するPOIを重要度等によって絞り込むことで、計算負荷を軽減することもできる。各地域特性に応じたPOIの重要度は、予め設定されているものとする。
【0091】
図11は、対象エリアを拡大した場合の予測精度の一例を示す図である。ここでは、初期の対象エリアを12×12マスとし、周辺3マス分、対象エリアを拡大したものとする。評価装置100がかかる手法によって、対象エリアを設定し、機械学習モデル50を用いて、通信容量を予測すると、通信容量の精度を示すグラフは、グラフG4となった。グラフG4の縦軸は、通信容量(予測)であり、横軸は、通信容量(正解)である。グラフG4の決定変数は「0.96」であり、平均誤差は「0.29」となった。グラフG2と比較して、決定変数がより1に近づき、平均誤差も減少しているため、通信容量の精度が向上していることが示される。
【0092】
なお、本実施例では、対象物を「BS」として説明し、対象エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度を「通信容量」として説明したが、これに限定されるものではない。対象物は、ユーザの人数、位置に応じて、サービスを提供する対象物(飲食店、コンビニ、スーパー、自販機、タクシー)であってもよい。対象エリア内の施設と対象物との相対的な位置関係を考慮した影響度は、売上高や、サービス品質等であってもよい。
【0093】
次に、上述した評価装置100と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例について説明する。
図12は、実施例の評価装置と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0094】
図12に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置202と、ディスプレイ203とを有する。また、コンピュータ200は、有線または無線ネットワークを介して、外部装置等との間でデータの授受を行う通信装置204と、インタフェース装置205とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するRAM206と、ハードディスク装置207とを有する。そして、各装置201~207は、バス208に接続される。
【0095】
ハードディスク装置207は、取得プログラム207a、前処理プログラム207b、機械学習プログラム207c、予測プログラム207dを有する。また、CPU201は、各プログラム207a~207dを読み出してRAM206に展開する。
【0096】
取得プログラム207aは、取得プロセス206aとして機能する。前処理プログラム207bは、前処理プロセス206bとして機能する。機械学習プログラム207cは、機械学習プロセス206cとして機能する。予測プログラム207dは、予測プロセス206dとして機能する。
【0097】
取得プロセス206aの処理は、取得部151の処理に対応する。前処理プロセス206bの処理は、前処理部152の処理に対応する。機械学習プロセス206cの処理は、機械学習部153の処理に対応する。予測プロセス206dの処理は、予測部154の処理に対応する。
【0098】
なお、各プログラム207a~207dについては、必ずしも最初からハードディスク装置207に記憶させておかなくても良い。例えば、コンピュータ200に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVD、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ200が各プログラム207a~207dを読み出して実行するようにしてもよい。
【0099】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0100】
(付記1)対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする評価プログラム。
【0101】
(付記2)前記第1行列と、前記第2行列と前記第2行列とを重ね合わせた3次元データと、前記曜日の種類と、前記時刻とを含む入力データと、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を正解ラベルとする学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする付記1に記載の評価プログラム。
【0102】
(付記3)前記機械学習を実行する処理は、前記対象エリアに施設が含まれない場合には、施設が含まれるまで、前記対象エリアの範囲が拡大された第1行列と、前記第2行列とを重ね合わせた3次元データを前記入力データに含む前記学習データを用いて、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記2に記載の評価プログラム。
【0103】
(付記4)前記学習データの入力データは、前記第1行列と、前記対象エリアに既に設置されている基地局の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを含み、前記正解ラベルは、前記対象エリアに配置された基地局の通信容量を含み、前記機械学習を実行する処理は、前記学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記3に記載の評価プログラム。
【0104】
(付記5)前記予測する処理は、前記第1行列と、前記第2行列の前記基地局の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを前記学習モデルに入力することで、通信容量を予測することを特徴とする付記4に記載の評価プログラム。
【0105】
(付記6)前記予測する処理によって、予測された通信容量と、前記対象エリアの通信容量の需要とを基にして、前記対象エリアの通信容量の需要を満たすか否かを判定する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする付記5に記載の評価プログラム。
【0106】
(付記7)対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理をコンピュータが実行することを特徴とする評価方法。
【0107】
(付記8)前記第1行列と、前記第2行列と前記第2行列とを重ね合わせた3次元データと、前記曜日の種類と、前記時刻とを含む入力データと、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を正解ラベルとする学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行する処理を更にコンピュータが実行することを特徴とする付記7に記載の評価方法。
【0108】
(付記9)前記機械学習を実行する処理は、前記対象エリアに施設が含まれない場合には、施設が含まれるまで、前記対象エリアの範囲が拡大された第1行列と、前記第2行列とを重ね合わせた3次元データを前記入力データに含む前記学習データを用いて、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記8に記載の評価方法。
【0109】
(付記10)前記学習データの入力データは、前記第1行列と、前記対象エリアに既に設置されている基地局の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを含み、前記正解ラベルは、前記対象エリアに配置された基地局の通信容量を含み、前記機械学習を実行する処理は、前記学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記9に記載の評価方法。
【0110】
(付記11)前記予測する処理は、前記第1行列と、前記第2行列の前記基地局の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを前記学習モデルに入力することで、通信容量を予測することを特徴とする付記10に記載の評価方法。
【0111】
(付記12)前記予測する処理によって、予測された通信容量と、前記対象エリアの通信容量の需要とを基にして、前記対象エリアの通信容量の需要を満たすか否かを判定する処理を更にコンピュータが実行することを特徴とする付記11に記載の評価方法。
【0112】
(付記13)対象エリアに既に配置されている施設毎に設けられた前記施設の位置および前記施設の規模を示す2次元の第1行列と前記対象エリアに既に設置されている対象物の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力とし、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を出力として機械学習された学習モデルに対し、
前記第1行列と、前記第2行列の前記対象物の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを入力することで、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を予測する
処理を実行する制御部を有する評価装置。
【0113】
(付記14)前記制御部は、前記第1行列と、前記第2行列と前記第2行列とを重ね合わせた3次元データと、前記曜日の種類と、前記時刻とを含む入力データと、前記対象物が前記対象エリアに与える影響度を正解ラベルとする学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行する処理を更に実行することを特徴とする付記13に記載の評価装置。
【0114】
(付記15)前記機械学習を実行する処理は、前記対象エリアに施設が含まれない場合には、施設が含まれるまで、前記対象エリアの範囲が拡大された第1行列と、前記第2行列とを重ね合わせた3次元データを前記入力データに含む前記学習データを用いて、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記14に記載の評価装置。
【0115】
(付記16)前記学習データの入力データは、前記第1行列と、前記対象エリアに既に設置されている基地局の位置および前記対象物の規模を示す2次元の第2行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを含み、前記正解ラベルは、前記対象エリアに配置された基地局の通信容量を含み、前記機械学習を実行する処理は、前記学習データを基にして、前記学習モデルの機械学習を実行することを特徴とする付記15に記載の評価装置。
【0116】
(付記17)前記予測する処理は、前記第1行列と、前記第2行列の前記基地局の位置または前記対象物の規模の少なくとも一方を変更した第3行列とを重ね合わせた3次元データと、曜日の種類と、時刻とを前記学習モデルに入力することで、通信容量を予測することを特徴とする付記16に記載の評価装置。
【0117】
(付記18)前記制御部は、前記予測する処理によって、予測された通信容量と、前記対象エリアの通信容量の需要とを基にして、前記対象エリアの通信容量の需要を満たすか否かを判定する処理を更に実行することを特徴とする付記17に記載の評価装置。