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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044828
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20240326BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240326BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20240326BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20240326BHJP
   A61F 13/512 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/534 110
A61F13/536
A61F13/537 210
A61F13/512 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150595
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 彩
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BB17
3B200CA11
3B200CA12
3B200DA12
3B200DA13
3B200DA14
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB12
3B200DB15
3B200DB16
3B200DB18
3B200DC04
3B200DC05
3B200DC06
3B200DC07
3B200EA01
3B200EA05
(57)【要約】
【課題】吸収性物品において、軟便を効率的に吸収する。
【解決手段】軟便パッド100(吸収性物品)は、厚さ方向Dにおいて、着用者の肌に近い側から順に、トップシート10、ろ過シート20、吸水シート(SAPシート)50、吸収体30が積層され、トップシート10は、多数の開孔11が形成され、ろ過シート20は、トップシート10に対向する表面から反対の裏面に向けて厚さ方向Dに凹んだ凹部15が複数形成され、SAPシート50は、高吸収性樹脂(SAP)を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で凹部15を除いた部分16に重なる領域に比べて凹部15に重なる領域に、単位面積当たりのSAP量が相対的に多いSAP部51が配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、吸水シート、吸収体が積層され、
前記トップシートは、多数の開孔が形成され、
前記ろ過シートは、前記トップシートに対向する面から反対の面に向けて積層方向に凹んだ凹部が複数形成され、
前記吸水シートは、高吸収性樹脂を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で前記凹部を除いた部分に重なる領域に比べて前記凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記平面視で前記ろ過シートの前記凹部に重なる部分に、前記ろ過シートに対向する面から前記積層方向に凹んだ凹みが形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記凹部は、腹側部、股部及び背側部が連なる長さ方向に対して傾いた方向に沿って一直線上に整列した、千鳥状の配置で配列されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸水シートは、前記積層方向に2枚以上重ねて配置され、かつ、それぞれの前記吸水シートは、平面視で前記凹部を除いた部分に重なる領域に比べて前記凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、平面視で前記凹部を除いた部分に重なる領域に比べて前記凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの内側に重ねて使用される補助的な吸収性物品であるインナーパッドとして、主に軟便の吸収を目的とした軟便パッドが知られている。一般的なインナーパッドは、水分である尿を主に吸収することを目的として構成されている。一方、軟便は固形分を含むため、一般的なインナーパッドでは、固形分がトップシート上に残留し易い。そして、固形分がトップシート上に残留すると、固形分と肌との接触が長く継続し、肌のトラブルが発生するおそれがある。
【0003】
そこで、軟便に適したインナーパッド(以下、軟便パッドという。)は、着用者の肌に直接触れるトップシートに、軟便の固形分を下層に移行させるための大きな孔が複数形成された開孔シートが使用されている。開孔シートを備えた軟便パッドは、軟便の固形分を、開孔シートの開孔を通して下層のろ過シートに移行させることができる。この結果、軟便パッドは、肌に接触するシート上に固形分が留まるのを抑制して、肌のトラブルが発生するのを防止又は抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1で開示された軟便パッドは、さらに、ろ過シートに、部分的に凹ませた凹部を形成し、軟便を凹部に収容することで、軟便を拡散して吸収する速度を高めるとともに、軟便の保持性を高めることができる。
【0005】
また、トップシートの下層に吸収体を配置し、吸収体の下層に拡散層を配置したおむつにおいて、トップシートと吸収体に、軟便等の粘性の高い排泄物を通過させる貫通孔を形成し、その貫通孔を通過して拡散層に到達した排泄物を、拡散層で拡散させることで、吸収体の背面側(被肌面側)から吸収体に吸収させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-153897号公報
【特許文献2】特開2016-112232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術文献1の軟便パッドは、排泄量が多い場合や、繰り返しの排泄があると、凹部における開孔シートの開孔の目詰まりが発生して、軟便を吸収する速度が低下し、凹部での軟便の滞留が発生し、軟便を効率的に吸収することができないおそれがある。この問題は、先行技術文献2のおむつにおいても同様に起こり得る。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、軟便を効率的に吸収することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、吸水シート、吸収体が積層され、前記トップシートは、多数の開孔が形成され、前記ろ過シートは、前記トップシートに対向する面から反対の面に向けて積層方向に凹んだ凹部が複数形成され、前記吸水シートは、高吸収性樹脂を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で前記凹部を除いた部分に重なる領域に比べて前記凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている吸収性物品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る吸収性物品によれば、軟便を効率的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】軟便パッドの内面側の平面視を示す平面図である。
図2図1に示した軟便パッドのA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
図3図1に示した軟便パッドのB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
図4】軟便パッドの凹部の詳細を示す、図3相当の断面図である。
図5】吸水シートの高吸収性樹脂が重点的に配置されたSAP部と凹部との位置関係を示す平面図である。
図6】軟便パッドの作用を説明する図4相当の模式図であり、SAP部の膨張前の状態を示す。
図7】軟便パッドの作用を説明する図4相当の模式図であり、SAP部の膨張後で凹部が塞がった状態を示す。
図8】軟便パッドの作用を説明する図4相当の模式図であり、図7の状態で軟便が排出された場合の軟便の拡散を示す。
図9】本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッドの平面視を示す、図1相当の平面図である。
図10】本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッドに用いられているSAPシートの断面を示す模式図であり、SAP部の膨張前の状態を示す。
図11】本発明の実施形態3の軟便パッドに用いられているSAPシートの断面を示す模式図であり、SAP部の膨張後の状態を示す。
図12図10,11に示したSAPシートが用いられた軟便パッドの、SAP部の膨張後の状態を示す模式図である。
図13】本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部及び高目付部の膨張前の状態を示す。
図14】本発明の実施形態4の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部及び高目付部の膨張後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る吸収性物品の実施形態は、以下において、図面を参照して説明される。
【0013】
<実施形態1>
[構成]
図1は軟便パッド100の内面側の平面視を示す平面図、図2図1に示した軟便パッド100のA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、図3図1に示した軟便パッド100のB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、図4は軟便パッド100の凹部15の詳細を示す、図3相当の断面図、図5は吸水シート50の高吸収樹脂(SAP)が重点的に配置されたSAP部51と凹部15との位置関係を示す平面図である。
【0014】
図示の軟便パッド100は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したインナーパッドである。軟便パッド100は、使い捨ておむつ(以下、おむつという。)に重ねて使用され、おむつが着用者に着用された状態において、おむつの、着用者の肌面に近い側である内面側に、重ねて使用される。軟便パッド100は、特に、着用者の軟便を吸収するのに適したインナーパッドである。なお、軟便パッド100は、使い捨ておむつに重ねて使用されるものに限定されず、使い捨てではないおむつ、例えば布タイプのおむつ、に重ねて使用されてもよい。
【0015】
軟便パッド100は、図1に示すように、腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成されている。軟便パッド100は、図1に示した平面図において、長さ方向(前後方向)Lに直交する方向を幅方向Wとする。腹側部110は、おむつの着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。
【0016】
なお、軟便パッド100は、背側部130と股部120との間や、腹側部110と股部120との間に、境界や構造的な差異があるわけではなく、軟便パッド100の領域を特定して説明する便宜上、おおまかな3つの部分として、背側部130、股部120及び腹側部110に分けているに過ぎない。
【0017】
軟便パッド100は、図2に示すように、着用者の肛門に対向する部分を含む周辺領域を除いて、厚さ方向Dにおいて、トップシート10、ろ過シート20、吸収体30及びバックシート40が、この順序で積層して形成されている。トップシート10は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面に最も近い側(以下、内側又は肌面側ということもある。)に配置され、バックシート40は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面から最も遠い側(以下、外側又は非肌面側ということもある。)に配置されている。
【0018】
また、軟便パッド100は、図3に示すように、着用者の肛門に対向する部分を含む周辺領域において、厚さ方向Dにおいて、トップシート10、ろ過シート20、吸水シート50(以下、SAPシート50という)、吸収体30及びバックシート40が、この順序で積層して形成されている。つまり、軟便パッド100は、着用者の肛門に対向する部分を含む周辺領域では、それ以外の領域には設けられていないSAPシート50が、ろ過シート20と吸収体30との間に設けられている。
【0019】
軟便パッド100は、幅方向Wの両側部において、トップシート10の幅方向Wの両側部を、トップシート10の図2の上方(内面側)から覆う立体ギャザー60がそれぞれ設けられている。立体ギャザー60は幅方向Wの外側端部がバックシート40に接合され、幅方向Wの内側端部に糸ゴム61が固定されていて、糸ゴム61の弾性力によって、幅方向Wの内側、厚さ方向Dの内面側に立ち上がるように形成されている。立体ギャザー60は液不透過性である。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、液透過性のシートであり、図1に示すように、厚さ方向Dに貫通した多数の開孔11が形成されている。開孔11は、トップシート10上に排出された軟便のうち固定状の成分(固形分)を、厚さ方向Dにおいてトップシート10の下層に通過させる。開孔11は、例えば、幅方向Wの寸法に比べて長さ方向Lの寸法が長い長円状に形成されている。開孔11の長円は、一例として、幅方向Wの寸法が3[mm]、長さ方向Lの寸法が4[mm]である。開孔11の具体的な寸法は、この例に限定するものではなく、軟便の固形分を、ある程度、通過し得る程度の寸法であれば、他の寸法で形成されてもよい。
【0021】
また、開孔11は、長さ方向Lに長い長円状に限定するものでもなく、幅方向Wに長い長円であってもよいし、長さ方向Lと幅方向Wとの寸法が等しい真円であってもよいし、また、円に限定されず、ひし形や矩形やその他の多角形であってもよい。
【0022】
トップシート10は、開孔11が、長さ方向Lと幅方向Wとに対してそれぞれ傾いた斜め方向に並んで形成されている。つまり、多数の開孔11は、図1に示すように、千鳥状に配列されている。なお、トップシート10は、開孔11が千鳥状に配列されたものに限定されず、長さ方向Lと幅方向Wとに並ぶ格子状に配列されたものであってもよい。
【0023】
なお、開孔11が千鳥状に配列されたトップシート10は、開孔11が格子状に配列されたトップシートに比べて、開孔11を形成する密度を高めることができ、軟便を開孔11に導き易くすることができる。
【0024】
(ろ過シート)
ろ過シート20は、トップシート10の直下に配置されている。ろ過シート20は、液透過性である。ろ過シート20は、トップシート10の開孔11を通過した軟便から固形分を絡めとることで濾し取り、固形分が濾し取られた後に残った液状成分を下層に通過させる、ろ過作用を有する。ろ過シート20は、厚さ方向Dの寸法であるかさ高が、例えば10~20[mm]程度に形成されている。
【0025】
(凹部)
ろ過シート20は、図1に示すように、股部120から背側部130に跨る部分に、凹部15が形成されている。この凹部15が形成されている部分は、着用者が着用した際に、着用者の肛門に対向する部分を含む周辺領域である。凹部15は、例えば、図1に示すように、長さ方向Lに3か所ずつ、幅方向Wに3か所ずつの、合計9か所に形成されている。なお、凹部15の数は、9個の限定されるものではなく、9個より多く形成してもよいし、9個より少なくてもよいが、2個以上であることを要する。
【0026】
凹部15はそれぞれ、図3,4の断面図に示すように、トップシート10に対向する表面(着用者の肌に接する肌面側(内側面))から、吸収体30に対向する、反対の裏面(着用者の肌から遠い非肌面側(外面側))に向けて、積層方向である厚さ方向Dに凹んで形成されている。
【0027】
なお、トップシート10は、ろ過シート20の表面に沿っているため、凹部15の凹んだ面に沿って凹み、軟便パッド100の内面側が、凹部15の輪郭に沿って凹んだ状態を呈している。凹部15は、トップシート10に形成された開孔11に比べて十分大きい寸法であるため、1つの凹部15の表面には、多数の開孔11が面した状態である。
【0028】
(吸水(SAP)シート)
図5は、ろ過シート20の凹部15と、SAPシート50のSAP部との平面視での位置関係を示す模式図である。
【0029】
SAPシート50は、粒状の高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を、厚さ方向Dの内面側及び外面側からそれぞれ、液透過性の不織布で形成された液透過性シートで挟んで、シート状に形成したものである。このSAPシート50は、SAPが重点的に配置されたSAP部51を有している。つまり、SAPシート50は、単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置されたSAP部51と、SAP部51に比べて単位面積当たりのSAPの量が少ないか又はSAPが全く配置されていない非SAP部52とが、平面視において分布して形成されている。なお、SAPは、接した水分を吸収して膨潤することで、水分を保持する。
【0030】
なお、このようなSAP部51と非SAP部52との領域の仕切りは、内面側の液透過性シートと外面側の液透過性シートとを厚さ方向Dに接合することによって、容易に形成することができる。SAPシート50が、非SAP部52を、SAPが全く配置されていない領域として形成されている場合、非SAP部52は、内面側の液透過性シートと外面側の液透過性シートとが重ね合わされただけの領域となる。
【0031】
軟便パッド100に用いられているSAPシート50は、図4の断面図及び図5の平面図に示すように、平面視で凹部15に重なる領域にSAP部51が配置され、凹部15を除いた部分16に重なる領域には、SAP部51が配置されずに、非SAP部52が配置されている。
【0032】
なお、本実施形態の軟便パッド100におけるSAP部51は、平面視の外形輪郭が図5に示すように楕円形であるが、本発明に係る吸収性物品におけるSAPシートのSAP部の外形輪郭は、楕円形に限定されず、円形でもよいし、矩形でもよいし、多角形でもよいし、その他の形状であってもよい。
【0033】
ただし、後述するように、本発明に係る吸収性物品は、SAP部を膨張させて、厚さ方向Dのかさ高を高くすることが好ましい。したがって、本発明に係る吸収性物品は、個々の凹部15に、平面視で複数個の小さいSAP部を配置したものよりも、膨張した状態での厚さ方向Dのかさ高を高くすることができる単一のSAP部を配置したものであることが好ましい。
【0034】
(吸収体)
吸収体30は、図2に示すように、吸収部材31と包装体32とを備えている。吸収部材31は、繊維質のパルプに、粒状のSAPを絡めて配置したものであり、SAPが、接した水分を吸収して膨潤することで、水分を保持する。包装体32は吸収部材31を包む、例えばクレープ紙等の液透過性の材料で形成されている。なお、吸収体30は、吸収部材31のみで形成され、包装体32で包まれていなくてもよい。
【0035】
吸収体30は、図4に示すように、平面視でろ過シート20の凹部15に重なる部分に、ろ過シート20に対向する面から積層方向である厚さ方向Dに凹んだ凹み35が形成されている。これにより、吸収体30の凹み35に、SAPシート50のSAP部51と、凹部15の形成によって凹部15の反対側(厚さ方向Dにおいて吸収体30の側)に突出したろ過シートの凸部17が、嵌め合わされた状態となっている。
【0036】
なお、軟便パッド100は、吸収体30に凹み35を形成したものに限定されない。この場合、ろ過シート20の裏面側に凸部が17が形成されないように凹部15を形成すればよい。
【0037】
(バックシート)
バックシート40は液不透過性であり、軟便パッド100の内面側に排出された尿や、軟便の液状成分が、厚さ方向Dにおいてバックシート40よりも外面側に浸透して漏れるのを防止する。
【0038】
[作用]
図6,7,8は軟便パッド100の作用を説明する図4相当の模式図であり、図6はSAP部51の膨張前の状態を示し、図7はSAP部51の膨張後で凹部が塞がった状態を示し、図8図7の状態で軟便200が排出された場合の軟便200の拡散を示す。
【0039】
軟便パッド100は、使い捨ておむつの内側に、トップシート10を着用者の肌に向けた状態(バックシート40を使い捨ておむつの内面に向けた状態)で装着される。これにより、軟便パッド100は、着用者に装着された状態で、トップシート10が着用者の肌に接した状態で使用される。
【0040】
着用者が排泄した軟便200は、最初、軟便パッド100のトップシート10が受け止めるが、図6の矢印で示すように、股部120と背側部130とに跨って形成された凹部15に移行する。そして、軟便200のうち固形分は、凹部15の底面や周面に配置されているトップシート10の開孔11を通って、下層であるろ過シート20に移行する。軟便200の液状成分は、固形分とともに開孔11を通ってろ過シート20に移行する他、トップシート10の開孔11以外の部分も通ってろ過シート20に移行する。
【0041】
ろ過シート20は、そのろ過作用によって、軟便200の固形分を濾し取ることで固形分を保持し、軟便200の液状成分を拡散して通過させる。ろ過シート20を通過した軟便200の液状成分は、ろ過シート20の下層のSAPシート50に到達する。
【0042】
SAPシート50に到達した軟便の液状成分のうち、平面視で凹部15に重なる位置に配置されたSAP部51に到達した液状成分は、SAP部51のSAPに吸収されて保持される。このとき、SAP部51のSAPは、図7に示すように、液状成分の吸収によって膨潤する。液状成分は、このSAPによって保持される。
【0043】
そして、SAP部51は、膨潤による体積の増大によって、ろ過シート20の凹部15の底の部分を、厚さ方向Dの内面側に押し上げる。ろ過シート20の凹部15の底部が、凹部15を除いた部分16の表面と同程度の高さ位置まで押し上げられた軟便パッド100は、凹部15が塞がれた状態となる。
【0044】
このように、軟便200が収容されて、凹部15を除いた部分16と同程度の高さ位置まで盛り上がって塞がれた凹部15に、図8に示すように、さらに軟便200が排出されると、軟便は、矢印に示すように、塞がれた凹部15には収容されず、塞がれた凹部15に隣接する他の凹部に移行する。
【0045】
そして、隣接した凹部15に収容された軟便200は、前述した軟便200を吸収する作用と同様に吸収することができる。
【0046】
このように、本実施形態の軟便パッド100は、軟便200を凹部15で収容することで、着用者の肌面との接触機会を減らすことができる。そして、軟便パッド100は、凹部15に収容された軟便200の固形分を、開孔11を通じてろ過シート20に移行させることができる。さらに、軟便パッド100は、ろ過シート20を通過した液状成分によってSAP部51のSAPを膨張させて凹部15を塞ぐことで、トップシート10の同じ部位に繰り返し排出される軟便200を、塞がれた凹部15以外の他の凹部15に移行させることができる。
【0047】
この結果、本実施形態の軟便パッド100は、同じ部位に軟便200が繰り返して排出されたり、量の多い軟便200が排出されたりした場合も、軟便200を同じ凹部15で受け止め続けることなく、他の凹部15に迅速に移行させることで軟便200の拡散性を高め、軟便200を効率的に吸収することができる。
【0048】
<実施形態2>
[構成]
図9は本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッド300の平面視を示す、図1相当の平面図である。
【0049】
図示の軟便パッド300は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド300は、実施形態1の軟便パッド100に対して、図9に示すように、平面視における、ろ過シート20の凹部15の配列が異なる以外は、軟便パッド100と同じである。
【0050】
したがって、実施形態2の軟便パッド300については、凹部15の配列を除いた構成、効果の説明を省略する。なお、図9には、トップシート10に形成されている開孔11を表示していないが、開孔11の図示が省略されているだけであり、軟便パッド300は軟便パッド100と同様に、トップシート10に開孔11が形成されている。
【0051】
(凹部)
実施形態1の軟便パッド100は、ろ過シート20に形成された凹部15が、長さ方向Lと幅方向Wとにそれぞれ沿って一直線上に整列した、格子状の配置で配列されている。これに対して、実施形態2の軟便パッド300は、ろ過シート20に形成された凹部15が、幅方向Wに沿って一直線上に整列しているが、長さ方向Lには沿わずに、長さ方向Lに対して傾いた方向に沿って一直線上に整列した、千鳥状の配置で配列されている。
【0052】
(SAP部)
また、軟便パッド300は、軟便パッド100と同様、SAPシート50におけるSAP部51が、平面視で凹部15に重なる部位に形成されている。したがって、軟便パッド300は、SAP部51も凹部15と同様に幅方向Wに沿って一直線上に整列しているが、長さ方向Lには沿わずに、長さ方向Lに対して傾いた方向に沿って一直線上に整列した、千鳥状の配置で配列されている。
【0053】
[作用]
実施形態2の軟便パッド300は、軟便パッド100と同様、ろ過シート20を通過した液状成分によってSAP部51のSAPを膨張させて凹部15を塞ぐことで、トップシート10の同じ部位に繰り返し排出される軟便200を、塞がれた凹部15以外の他の凹部15に移行させることができる。
【0054】
この結果、軟便パッド300は、同じ部位に軟便200が繰り返して排出されたり、量の多い軟便200が排出されたりした場合も、軟便200を同じ凹部15で受け止め続けることなく、他の凹部15に迅速に移行させることで軟便200の拡散性を高め、軟便200を効率的に吸収することができる。
【0055】
さらに、軟便パッド300は、凹部15が長さ方向Lに沿って一直線上に配置されていないため、凹部15を除いた部分16が、長さ方向Lに沿って一直線上に連続することがない。このため、軟便パッド300は、軟便200が、凹部15を除いた部分16上に排出された軟便200が、トップシート10上を長さ方向Lに沿って一直線上に移動しても、近接した凹部15に、必ず流れ込むことができる。
【0056】
したがって、上述したように凹部15を除いた部分16を移動した軟便200も、確実に凹部15に受容されて、軟便200の拡散性を一層高めて、軟便200を、より効率的に吸収することができる。
【0057】
なお、本発明に係る吸収性物品は、ろ過シートに形成された凹部及びSAPシートのSAP部が、格子状の配置で配列されているものや、千鳥状の配置で配列されたものに限定されるものではなく、これら凹部やSAP部は、格子状の配置や千鳥状の配置とは異なる他の配置で配列されたものであってもよい。
【0058】
<実施形態3>
[構成]
図10,11は本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッド400に用いられているSAPシート50,70の断面を示す模式図であり、図10はSAP部51,71の膨張前の状態を示し、図11はSAP部51,71の膨張後の状態を示す。また、図12は、図10,11に示したSAPシート50,70が用いられた軟便パッド400の、SAP部51,71の膨張後の状態を示す断面の模式図である。
【0059】
実施形態3の軟便パッド400は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。実施形態1の軟便パッド100は、SAPシート50が1枚であるが、実施形態3の軟便パッド400は、図10,11に示すように、SAPシート50に、別のSAPシート70を厚さ方向Dに重ねて配置したものである。
【0060】
軟便パッド400は、2枚重ねのSAPシート50,70を備えた点が異なる以外は、1枚のSAPシート50だけを備えた軟便パッド100と同じである。したがって、実施形態3の軟便パッド400については、SAPシート50,70を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0061】
なお、図10,11は、軟便パッド400におけるSAPシート50,70のみを記載したものであり、軟便パッド400は、軟便パッド100と同様に、トップシート10、ろ過シート20、吸収体30及びバックシート40を備えている。
【0062】
(SAPシート)
実施形態3の軟便パッド400は、軟便パッド100におけるSAPシート50と吸収体30との間に、SAPシート50とは別のSAPシート70を積層して備えた構成である。SAPシート70は、SAPシート50と同様に、粒状のSAPを、厚さ方向Dの内面側及び外面側からそれぞれ、液透過性の不織布で形成された液透過性シートで挟んで、シート状に形成したものである。
【0063】
このSAPシート70も、SAPシート50と同様、図10に示すように、SAPが重点的に配置されたSAP部71を有している。つまり、SAPシート70は、単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置されたSAP部71と、SAP部71に比べて単位面積当たりのSAPの量が少ないか又はSAPが全く配置されていない非SAP部72とが、平面視において分布して形成されている。そして、SAPシート70のSAP部71は、平面視でSAPシート50のSAP部51と重なるように分布して形成されている。
【0064】
なお、図10において、軟便パッド400におけるSAPシート70のSAP部71は、SAPシート50のSAP部51よりも大きく(平面視では広く)形成されているが、SAP部71はSAP部51と同じ大きさであってもよいし、SAP部51よりも小さくてもよい。
【0065】
ただし、軟便パッド400は、SAP部71とSAP部51との少なくとも一部同士が、平面視で重なる配置であることが必要である。
【0066】
[作用]
本実施形態の軟便パッド400は、凹部15に軟便200を受容する。凹部15に受容された軟便200は、凹部15におけるトップシート10の開孔11を通じてろ過シート20に移行し、軟便200の液状成分が、SAPシート50のSAP部51、SAPシート70のSAP部71に到達する。これにより、液状成分が触れたSAP部51及びSAP部71は、液状成分を吸収して、図11に示すようにそれぞれ膨張する。
【0067】
この結果、軟便パッド400の、SAP部51とSAP部71とが平面視で重ねて配置された部分は、図11に示すように、SAPシート70の位置を基準として、厚さ方向Dに高さHだけ高くなる。
【0068】
これにより、軟便パッド400は、図12に示すように、SAP部51の膨張とSAP部71の膨張との重なりで、凹部15の形成されていた部分が塞がれるだけでなく、凹部15を除いた部分16よりも、厚さ方向Dの内面側に、高さhだけ盛り上がった状態となる。
【0069】
したがって、軟便パッド400は、トップシート10の同じ部位に繰り返し排出される軟便200を、盛り上がった凹部15以外の他の凹部15に、より速く移行させることができ、軟便200の拡散性をさらに高め、軟便200を一層効率的に吸収することができる。
【0070】
なお、上述したように、軟便パッド400におけるSAPシート70のSAP部71の、SAP部51に対する大きさについて限定は無いが、SAPシート50のSAP部51については、比較的小さく形成することが好ましい。SAP部51を比較的小さく形成した軟便パッド400は、凹部15が塞がれて盛り上がったときの盛り上がりの輪郭の、幅方向Wに対する傾斜角度が、SAP部51を相対的に大きく形成した場合に比べて大きくなり、その盛り上がりに排出された後続の軟便を、その盛り上がりから落下させ易くすることができるからである。
【0071】
また、本実施形態の軟便パッド400は、SAPシート50とSAPシート70という2枚のSAPシートを重ねて、SAP部51とSAP部71とを平面視で重なるように配置したものであるが、本発明に係る吸収性物品は、3枚以上のSAPシートを重ねて、これら3枚以上のSAPシートのSAP部同士を平面視で重なるように配置してもよい。
【0072】
<実施形態4>
[構成]
図13,14は本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッド500を示す断面の模式図であり、図13はSAP部51及び高目付部37の膨張前の状態を示し、図14はSAP部51及び高目付部37の膨張後の状態を示す。
【0073】
図示の軟便パッド500は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド500は、実施形態3の軟便パッド400におけるSAPシート70に代えて、図13に示すように、吸収体30の、平面視でSAPシート50のSAP部51に重なる部分を、単位面積当たりのSAPの量を相対的に多く含んだ高目付部37としたものである。
【0074】
そして、軟便パッド500は、上述したSAPシート70と吸収体30とが異なる以外は、軟便パッド400と同じである。したがって、実施形態4の軟便パッド500については、吸収体30を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0075】
吸収体30は、SAPが重点的に配置された高目付部37を有している。つまり、吸収体30は、他の領域に比べて単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置された高目付部37を有している。そして、吸収体30の高目付部37は、平面視でSAPシート50のSAP部51と重なるように分布して形成されている。
【0076】
[作用]
本実施形態の軟便パッド500は、凹部15に軟便200を受容する。凹部15に受容された軟便200は、凹部15におけるトップシート10の開孔11を通じてろ過シート20に移行し、軟便200の液状成分が、SAPシート50のSAP部51、吸収体30の高目付部37に到達する。これにより、液状成分が触れたSAP部51及び高目付部37は、液状成分を吸収して、図14に示すようにそれぞれ膨張する。
【0077】
これにより、軟便パッド500は、SAP部51の膨張と高目付部37の膨張との重なりで、凹部15の形成されていた部分が塞がれるだけでなく、凹部15を除いた部分16よりも、厚さ方向Dの内面側に、高さhだけ盛り上がった状態となる。
【0078】
したがって、軟便パッド500は、トップシート10の同じ部位に繰り返し排出される軟便200を、盛り上がった凹部15以外の他の凹部15に、より速く移行させることができ、軟便200の拡散性をさらに高め、軟便200を一層効率的に吸収することができる。
【0079】
上述した本発明に係る吸収性物品の各実施形態1~4については、2つ以上の形態を組み合わせて構成してもよく、そのように2つ以上の形態が組み合わされた実施形態も、本発明に係る吸収性物品の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
10 トップシート
11 開孔
15 凹部
16 凹部を除いた部分
20 ろ過シート
30 吸収体
50 吸水シート(SAPシート)
51 SAP部
100 軟便パッド(吸収性物品)
200 軟便
D 厚さ方向
L 長さ方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14