(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004484
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20240109BHJP
B65G 15/34 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08L23/16
B65G15/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104901
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022103358
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】尻池 寛之
【テーマコード(参考)】
3F024
4J002
【Fターム(参考)】
3F024AA07
3F024BA07
3F024CA02
3F024CA04
3F024CB03
3F024CB09
4J002BB151
4J002BC112
4J002BK001
4J002EB096
4J002EB136
4J002ED076
4J002EF126
4J002EH146
4J002EU186
4J002FD132
4J002FD136
4J002GM01
(57)【要約】
【課題】難燃性と接着性とに優れたゴム組成物を提供し、優れた接着性と難燃性とを発揮する接着ゴムを備えたコンベヤベルトを提供すること。
【解決手段】
ゴム成分と難燃剤成分とを含むゴム組成物であって、前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で含まれているゴム組成物、を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と難燃剤成分とを含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で含まれているゴム組成物。
【請求項2】
芯体と、該芯体を覆うカバーゴムと、該カバーゴムと前記芯体との間に配された接着ゴムとを備えたコンベヤベルトに用いられ、
前記接着ゴムとして用いられる請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチリデンノルボルネンを含み、且つ、該エチリデンノルボルネンの含有量が6質量%以上の高ジエンEPDMである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレンの含有量が53質量%以下の高プロピレンEPDMである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項5】
芯体と、該芯体を覆うカバーゴムと、前記芯体と前記カバーゴムとの間に配された接着ゴムとを備えたコンベヤベルトであって、
前記接着ゴムは、
ゴム成分と難燃剤成分とを含み、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で前記接着ゴムに含まれているコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物とコンベヤベルトとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルトは、空港や工場などの各種施設において人や物品を搬送するためのベルトコンベヤの主要部品として用いられている。この種のコンベヤベルトとしては、例えば、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂で芯体を覆ったものやゴム組成物で芯体を覆ったものなどが知られている。ところでゴムは、一般的なプラスチックに比べて充填材などの受容性が高く、プラスチックでは引張り破断伸びなどの特性を大きく低下させてしまうような量比で充填材を含有させることができる。ゴム自体がプラスチックに比べて靱性に優れる上にゴム成分と充填材成分との量比によって機械的強度の調整が容易であることもあってゴム組成物はコンベヤベルト以外にも各種製品の原材料として用いられている。
【0003】
ゴム製品は、一般的なプラスチック製品に比べて耐熱変形性にも優れることから高温に晒されるおそれのある環境下においても広く用いられている。そして、ゴム成分とともに難燃剤成分を有するゴム組成物でゴム製品を形成することも行われている。例えば、下記特許文献1には、難燃剤を含むゴム組成物でコンベヤベルトのカバーゴムを形成させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム製品は、単独で用いられる他に布製品や金属製品などと接着させて用いられたりもしている。そのような複合製品ではゴム製品と他の製品とが接着性において良好な関係を有することが求められる。そのためゴム組成物には接着性に優れることが求められることがある。例えば、コンベヤベルトなどでは、芯体からカバーゴムが剥離する不具合を生じさせないように芯体とカバーゴムとの間に接着性に優れた接着ゴムを介在させたりしている。一方で難燃剤成分などを含む場合、ゴム成分に対する割合を増やすとゴム組成物の接着性が低下し易い。
【0006】
上記のようにゴム組成物においては難燃性と接着性とがトレードオフの関係となっている。そのためそれらを両立させることが求められているもののそのような要望は満たされる状況にはなっていない。そのため、コンベヤベルトにおいては接着ゴムに優れた接着性と難燃性とを発揮させることが困難になっている。本発明は、そのような問題に鑑みてなされたもので、難燃性と接着性とに優れたゴム組成物を提供し、優れた接着性と難燃性とを発揮する接着ゴムを備えたコンベヤベルトを提供することを課題としている。尚、難燃性と接着性との両立は、コンベヤベルトに用いられるゴム組成物に限らず広く一般に求められている課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、
ゴム成分と難燃剤成分とを含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で含まれているゴム組成物、を提供する。
【0008】
上記課題を解決すべく本発明は、
芯体と、該芯体を覆うカバーゴムと、前記芯体と前記カバーゴムとの間に配された接着ゴムとを備えたコンベヤベルトであって、
前記接着ゴムは、
ゴム成分と難燃剤成分とを含み、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で前記接着ゴムに含まれているコンベヤベルト、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば難燃性と接着性とに優れたゴム組成物が提供され、優れた接着性と難燃性とを発揮する接着ゴムを備えたコンベヤベルトが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態のコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤを示した概略正面図である。
【
図2】
図2は、コンベヤベルトの断面構造を示した概略断面図(
図1のII-II線矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下においてはゴム組成物をコンベヤベルトの接着ゴムとして利用する場合を例に本発明の実施形態について説明する。
【0012】
まず、本実施形態のコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤの一例について説明する。
図1に例示のベルトコンベヤ1は、主要構成材として長尺帯状のコンベヤベルト10を備えている。該コンベヤベルト10は、長さ方向における一方の端部と他方の端部とが接続されて無端状となってベルトコンベヤ1に備えられている。本実施形態のベルトコンベヤ1は、無端状となったコンベヤベルト10を巻き掛けてコンベヤベルト10を周回させるための駆動プーリー20aと従動プーリー20bとの2つのプーリー20を備えている。駆動プーリー20aと従動プーリー20bとはそれぞれの回転軸が、水平方向に沿って延びるように配されている。該駆動プーリー20aと従動プーリー20bとは、ベルトコンベヤの搬送方向に距離を隔てて配されている。
【0013】
本実施形態のコンベヤベルト10は、これらのプーリー20に巻き掛けられ、且つ、複数の支持ローラー30によって下方から支持された状態でベルトコンベヤ1に備えられている。該ベルトコンベヤ1に備えられている状態でのコンベヤベルト10の外周面10aは、被搬送物Aの搭載される搬送面となっている。該搬送面とは反対側のコンベヤベルト10の内周面10bは、前記駆動プーリー20aや前記従動プーリー20bに接する背面となっている。
【0014】
本実施形態のコンベヤベルト10は、
図2に示すように平帯状のベルト本体のみによって構成されている。尚、本実施形態のコンベヤベルト10は、
図2に例示のものに限定されるものではなく、例えば、ベルト本体以外に横桟や耳桟などを備えたものであってもよい。また、本実施形態のコンベヤベルト10は、パイプコンベアのように筒状にして用いられるものであってもよい。
【0015】
図2に示すコンベヤベルト10は、長さ方向Lと、該長さ方向Lに直交する幅方向Wと、該長さ方向Lと該幅方向Wとの両方に直交する厚さ方向Tとを備える。コンベヤベルト10は、該厚さ方向Tでの両表層に設けられた2つのカバーゴム110を有する。2つのカバーゴム110の一方は、コンベヤベルト10の外周面10aを構成する表カバーゴム111であり、他方はコンベヤベルト10の内周面10bを構成する裏カバーゴム112である。コンベヤベルト10は、表カバーゴム111と裏カバーゴム112との間に介装された芯体120を備える。表カバーゴム111と裏カバーゴム112とがコンベヤベルト10と同じ幅であるのに対して前記芯体120は、コンベヤベルト10よりも幅方向Wでの寸法が小さい。図に示すコンベヤベルト10は、芯体120の両側に配された耳ゴム130をさらに備えている。
【0016】
前記コンベヤベルト10は、カバーゴム110と芯体120との接着、及び、芯体120と耳ゴム130とを接着する接着ゴム140をさらに備えている。図に例示のコンベヤベルト10での芯体120は、複数の帆布121が積層されて構成されており、該帆布121どうしの接着にも接着ゴム140が用いられている。
【0017】
本実施形態においては、前記コンベヤベルト10に難燃性を賦与すべく前記カバーゴム110、前記耳ゴム130、及び、前記接着ゴム140を形成するゴム組成物に難燃性を有するゴム組成物が用いられている。ここで前記接着ゴム140は、難燃性とともに接着性に優れることが求められるため特定のゴム組成物で構成されている。
【0018】
前記接着ゴム140は、ゴム成分と、難燃剤成分と、充填材成分と、添加剤成分とを含むゴム組成物で構成されている。該ゴム組成物は、前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含む。該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合でゴム組成物に含まれている。
【0019】
本実施形態での接着ゴム140を構成するゴム組成物では、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とは別のゴムをゴム成分に含んでもよい。エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)以外にゴム組成物に含有させ得るゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンブテンゴム(EBR)、エチレンヘキセンゴム(EHR)などのエチレンαオレフィンゴムが挙げられる。また、ゴム組成物に含有させ得るゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、シリコンゴム(SR)、ウレタンゴム(UR)、フッ素ゴム(FR)等が挙げられる。
【0020】
ゴム組成物に含まれるゴム成分は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を50質量%以上含むことが好ましい。ゴム成分に占めるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の割合は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。ゴム成分に占めるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の割合は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。ゴム組成物に含まれるゴム成分は、実質的にエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のみ(100質量%)であってもよい。
【0021】
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、エチレン、プロピレン、及び、ジエンモノマーを構成単位として含むゴムである。該ジエンモノマーとしては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、及び、ジシクロペンタジエン(DCPD)などが挙げられる。本実施形態のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、エチリデンノルボルネンなどのジエンモノマーをエチレンやプロピレン以外の構成単位として含有することが好ましい。一般的なエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)でのジエンの含有量は4~5質量%であるが、本実施形態のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、エチリデンノルボルネンなどのジエンモノマーの含有量が6質量%以上の高ジエンEPDMであることが好ましい。高ジエンEPDMは、加工性に優れ、接着ゴム140を帆布121などに被覆する作業の作業性を改善するのに有効である。さらに、高ジエンEPDMは、接着ゴム140の接着性を保ちつつ、優れた難燃性を発揮させるのに有効である。本実施形態のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)でのジエンモノマー(好ましくはエチリデンノルボルネン)の含有量は、6.5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよい。エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)でのジエンモノマー(例えばエチリデンノルボルネン)の含有量は、例えば、14質量%以下とされる。エチリデンノルボルネンの含有量は、12質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0022】
一般的なエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ではエチレンコンテントが54質量%~67質量%であるが、本実施形態のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、接着ゴム140に対して優れた弾性復元性を発揮させる上においてエチレンの含有量が53質量%以下の高プロピレンEPDMであることが好ましい。なお、前記EPMは、ジエンモノマーを含まない点において、EPDMとは区別されるものである。
【0023】
ゴム成分に含まれるジエンモノマー(好ましくは、エチリデンノルボルネン)の含有量は、接着ゴム140の難燃性を向上させる観点から、6.5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。ゴム成分に含まれるジエンモノマーの含有量の上限は、接着ゴム140の接着力を大きく損なわない範囲であればよく、14質量%以下であってもよく、12質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0024】
本実施形態では、接着ゴム140に優れた難燃性を発揮させる上で、ゴム組成物に難燃剤が含まれている。接着ゴム140に優れた難燃性を発揮させる上において難燃剤の含有量は、多い方が好ましい。難燃剤は、接着ゴム140に優れた接着性を発揮させる上で、ゴム組成物における含有量が少ない方が好ましい。本実施形態では、少量で優れた難燃性を発揮し、優れた接着性と難燃性との両立が容易である点において難燃剤成分が臭素系難燃剤を含んでいる。
【0025】
ゴム組成物は、接着ゴム140に優れた耐熱性を発揮させる上で、300℃以上の融点を有する臭素系難燃剤を含むことが好ましい。臭素系難燃剤の融点は、330℃以上であってもよく、400℃以上であってもよい。臭素系難燃剤の融点は、例えば、500℃以下とされる。該臭素系難燃剤の融点は、例えば、DSC法(昇温速度:10℃/min)によって求めることができる。
【0026】
本実施形態での臭素系難燃剤としては、例えば、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモフタレートエステル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジブロモフェノール及びそのポリマー、2,6-ジブロモフェノール及びそのポリマー、臭素化ポリスチレン及びそのポリマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート及びそのポリマーなどが挙げられる。本実施形態での臭素系難燃剤は、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンであることが好ましい。
【0027】
接着ゴム140を構成するゴム組成物では、難燃剤成分に臭素系難燃剤以外の難燃剤を含んでいてもよい。該臭素系難燃剤以外の難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、金属水和物系難燃剤などが挙げられる。本実施形態での難燃剤成分には、三酸化アンチモンなどのハロゲン系難燃剤と協働して難燃効果を発揮する難燃剤が含有されてもよい。
【0028】
前記臭素系難燃剤は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する臭素系難燃剤の割合は、18質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。前記臭素系難燃剤は、前記ゴム成分100質量部に対して70質量部以下となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する臭素系難燃剤の割合は、60質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。臭素系難燃剤は、1種単独のものが上記のような割合でゴム組成物に含有されてもよく、2種以上のものが合計量として上記のような割合となるようにゴム組成物に含有されてもよい。
【0029】
前記三酸化アンチモンは、前記臭素系難燃剤100質量部に対して15質量部以上の割合でゴム組成物に含有され得る。臭素系難燃剤100質量部に対する三酸化アンチモンの割合は、18質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。前記三酸化アンチモンは、前記臭素系難燃剤100質量部に対して50質量部以下の割合でゴム組成物に含有され得る。臭素系難燃剤100質量部に対する三酸化アンチモンの割合は、45質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。
【0030】
接着ゴム140を構成するゴム組成物には、前記充填材成分としてカーボンブラックやシリカなどを含有させることができる。前記充填材成分には、炭酸カルシウム、クレー、タルクなどを含ませることもできる。
【0031】
カーボンブラックは、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの割合は、25質量部以上であってもよく、30質量部以上であってもよい。前記カーボンブラックは、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部以下となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの割合は、55質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよい。カーボンブラックは、1種単独のものが上記のような割合でゴム組成物に含有されてもよく、2種以上のものが合計量として上記のような割合となるようにゴム組成物に含有されてもよい。
【0032】
本実施形態のカーボンブラックは、ハードカーボンであってもソフトカーボンであってもよい。本実施形態のカーボンブラックはソフトカーボンであることが好ましい。本実施形態のカーボンブラックは、例えば、GPF(N600)、FEF(N550)などとすることができる。
【0033】
シリカは、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部以上となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対するシリカの割合は、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよい。前記シリカは、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以下となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対するシリカの割合は、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。シリカは、1種単独のものが上記のような割合でゴム組成物に含有されてもよく、2種以上のものが合計量として上記のような割合となるようにゴム組成物に含有されてもよい。
【0034】
本実施形態のシリカは、乾式シリカであっても湿式シリカであってもよい。本実施形態のシリカは、ゴム組成物を調製する際の分散性に優れる点で湿式シリカであることが好ましい。湿式シリカは、ゲル法シリカであってもよく沈降法シリカであってもよい。本実施形態のシリカは、ゴム組成物を調製する際に加わるせん断力によって二次粒子を解体し易く、二次粒子を構成している一次粒子を分散させて高い補強効果を発揮させ易い点において沈降法シリカであることが好ましい。
【0035】
接着ゴム140を構成するゴム組成物には、前記添加剤成分として接着剤(粘着付与剤)、軟化剤、各種ゴム薬品などを含有させることができる。
【0036】
前記接着剤(粘着付与剤)としては、例えば、ロジンエステル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、石炭酸系樹脂、ホルムアルデヒド系接着剤などが挙げられる。ゴム組成物には、複数の接着剤(粘着付与剤)を含有させることが好ましい。なかでもゴム組成物は、複数のホルムアルデヒド系接着剤を含むことが好ましい。ゴム組成物は、クレゾールホルムアルデヒド共重合体、ホルムアルデヒドメラミン重合物のメチル化物、及び、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂の内の1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0037】
接着剤(粘着付与剤)は、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する接着剤(粘着付与剤)の割合は、6質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよい。前記接着剤(粘着付与剤)は、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以下となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する接着剤(粘着付与剤)の割合は、15質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。接着剤(粘着付与剤)は、1種単独のものが上記のような割合でゴム組成物に含有されてもよく、2種以上のものが合計量として上記のような割合となるようにゴム組成物に含有されてもよい。
【0038】
接着ゴム140を構成するゴム組成物には、前記軟化剤として、フタル酸エステル系可塑剤や各種オイルなどを含有させることができる。該オイルは、パラフィン系のものであってもナフテン系のものであってもよい。前記オイルは、エチレンとαオレフィンとが構成単位として含まれている液状のコオリゴマーなどの炭化水素系オイルであってもよい。
【0039】
前記軟化剤は、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する軟化剤の割合は、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよい。前記軟化剤は、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以下となる割合でゴム組成物に含まれ得る。ゴム成分100質量部に対する軟化剤の割合は、35質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。軟化剤は、1種単独のものが上記のような割合でゴム組成物に含有されてもよく、2種以上のものが合計量として上記のような割合となるようにゴム組成物に含有されてもよい。
【0040】
接着ゴム140は、通常、前記ゴム成分が架橋された状態でコンベヤベルト10に備えられる。従って、カバーゴム110と帆布121との接着に用いられる前のゴム組成物には、有機過酸化物や硫黄などの架橋剤が含まれる。
【0041】
有機過酸化物としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3等が挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる
【0042】
接着ゴム140は、共架橋剤を含んでいてもよい。共架橋剤としては、例えば、メタクリル酸金属塩、メタクリレート系共架橋剤、マレイミド系共架橋剤、アリル系共架橋剤等が挙げられる。メタクリル酸金属塩としては、例えば、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛等が挙げられる。メタクリレート系共架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。マレイミド系共架橋剤としては、例えば、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、マレイミド、フェニルマレイミド等が挙げられる。アリル系共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリメタリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0043】
接着ゴム140を構成するためのゴム組成物は、上記のような成分をオープンロールやニーダーなどの混練機で混練することによって調製することができる。
【0044】
前記表カバーゴム111、前記裏カバーゴム112、及び、前記耳ゴム130を構成するゴム組成物は、接着ゴム140と同様のゴム成分と難燃剤成分とを接着ゴム140と同様の割合で含むゴム組成物で構成させることができる。尚、これらを構成するゴム組成物には、接着剤(粘着付与剤)を含有させないようにすることができる。また、これらを構成するゴム組成物のゴム成分は、エチレンプロピレンゴム(EPM)やエチレンブテンゴム(EBR)などのジエンモノマーを実質的に含んでいないゴムを含んでもよい。これらを構成するゴム組成物におけるゴム成分は、ジエンモノマーを構成単位に含んでいないゴムを50質量%以上の割合で含有してもよい。カバーゴム110や耳ゴム130を構成するゴム組成物におけるゴム成分でのジエンモノマーを構成単位に含んでいないゴムの割合は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。カバーゴム110や耳ゴム130を構成するゴム組成物でのゴム成分に占めるこの種のゴムの割合は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。ゴム組成物に含まれるゴム成分は、実質的にこの種のゴムのみ(100質量%)であってもよい。
【0045】
前記芯体120に備えられる前記帆布121は、ポリエステル帆布やポリアミド帆布などの一般的なものを採用可能である。該帆布121は、RFL処理が施されたものであってもよい。尚、コンベヤベルト10は、帆布121に代えて、又は、帆布121に加えて各種のコード(スチールコード、アラミドコードなど)を芯体120に設けてもよい。
【0046】
上記のようなゴム組成物や帆布121を用いてコンベヤベルト10を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0047】
本実施形態では、優れた難燃性と接着性との両立が強く要望されている点においてゴム組成物の用途として上記のような接着ゴムを例示しているが、本発明のゴム組成物は、接着ゴムに限らず各種用途に用いられる。即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【0048】
上記のように本明細書は以下の開示を含む。
【0049】
(1)
ゴム成分と難燃剤成分とを含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で含まれているゴム組成物。
【0050】
(2)
芯体と、該芯体を覆うカバーゴムと、該カバーゴムと前記芯体との間に配された接着ゴムとを備えたコンベヤベルトに用いられ、
前記接着ゴムとして用いられる(1)記載のゴム組成物。
【0051】
(3)
前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチリデンノルボルネンを含み、且つ、該エチリデンノルボルネンの含有量が6質量%以上の高ジエンEPDMである(1)又は(2)記載のゴム組成物。
【0052】
(4)
前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレンの含有量が53質量%以下の高プロピレンEPDMである(1)乃至(3)の何れか1つに記載のゴム組成物。
【0053】
(5)
芯体と、該芯体を覆うカバーゴムと、前記芯体と前記カバーゴムとの間に配された接着ゴムとを備えたコンベヤベルトであって、
前記接着ゴムは、
ゴム成分と難燃剤成分とを含み、
前記ゴム成分がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含み、
前記難燃剤成分が臭素系難燃剤を含み、
該臭素系難燃剤は、融点が300℃以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上70質量部以下の割合で前記接着ゴムに含まれているコンベヤベルト。
【実施例0054】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
まず、下記の表1に示すような配合剤を用意した。そして、表2及び表3に示すように、各種成分の配合割合を変化させたゴム組成物を調製し、下記の評価方法によって評価した。
【0056】
【0057】
(難燃性評価)
表2に記載の配合内容でテストピースを作製し、JIS K6324に規定される布層コンベヤベルトの試験方法に準拠して難燃性の評価を実施した。
評価は、バーナーを取り除いた後の炎の持続時間を測定することにより実施した。評価基準としては、燃焼持続時間が60秒未満であれば所望の難燃性を有するものと評価した。
結果を表2及び表3に示す。
【0058】
(接着性評価)
コンベヤベルトの接着ゴムを模擬すべく、表2に記載の配合内容で厚さ0.7mmの未架橋ゴムシート(ゴムシート1)を作製した。
更に、コンベヤベルトのカバーゴムを模擬すべく、全く別配合の厚さ2mmの未架橋ゴムシート(ゴムシート2)を調製した。
これとは別にRFLが施された0.75mm厚さのポリアミド織布を用意した。
上記のゴムシート1を2枚のポリアミド織布の間に挟んで3層構造の積層体を作製した。
この積層体をさらに2枚のゴムシート1で挟んで5層構造とした後に2枚のゴムシート2で挟んで合計7層の層構造を有する積層体を作製した。
この7層の積層体を積層方向に加圧する熱プレス(158℃×35分)を実施して未架橋のゴムシートを架橋させるとともにゴムシートとポリアミド織布とを接着させて5枚のゴムシートと2枚のポリアミド織布とが一体化した成形体を作製した。
即ち、「カバーゴム/接着ゴム/帆布/接着ゴム/帆布/接着ゴム/カバーゴム」の層構造を有するコンベヤベルトを模擬した形の成形体を作製した。
この成形体から、幅25mmの短冊状の試験片を切り出した。
この試験片について、JIS K6256-1に準じて剥離試験を行った。
具体的には、この試験片の長さ方向一端側を厚さ方向に二分するように2枚のポリアミド織布の間に切込を入れた。
そして、それぞれを引張試験機のチャックに取り付け、試験温度23℃の下、剥離スピードを100mm/分として、剥離試験を行った。
そして、剥離試験で測定された応力(N)を試験片の幅(25mm)で除して単位幅当たりの平均剥離力(接着力)を求めた。評価基準としては、接着力が4N/mm以上であれば、所望の接着性を有するものと評価した。
結果を表2及び表3に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
上記のことからも本発明によれば、難燃性と接着性とに優れたゴム組成物が提供されることがわかる。