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特開2024-44847電力需給制御システム、及び電力需給制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044847
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力需給制御システム、及び電力需給制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240326BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240326BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240326BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240326BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 53/51 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 53/52 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 53/64 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20240326BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240326BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240326BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20240326BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240326BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14 160
H02J3/00 180
H02J7/00 B
G06Q50/06
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/51
B60L53/52
B60L53/64
B60L55/00
B60L58/13
G16Y20/20
G16Y20/30
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150622
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐志
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H125
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AA07
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA11
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE09
5G066HA17
5G066HB09
5G066JB03
5G066KA12
5G066KB07
5G503AA01
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA07
5G503FA06
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC12
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE01
5H125CC04
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE61
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されている蓄電池をリソースとして行われる電力系統の需給バランスの制御を安定して行う。
【解決手段】電力需給制御システムは、電力系統に接続する車両に搭載されている蓄電池の充電又は放電を制御することにより、電力系統の需給バランスを調整する。電力需給制御システムは、SOC管理サーバと、蓄電池と当該蓄電池の充電又は放電の制御を行う情報処理装置とを有する車両と、を含む。SOC管理サーバと車両は通信可能に接続される。SOC管理サーバは、車両の過去の利用実績を記憶し、利用実績に基づき、車両の1回の利用機会における消費電力量を推定し、推定した消費電力量に基づき車両の蓄電池のSOCを決定し、蓄電池のSOCが決定したSOCになるように、蓄電池の充電又は放電を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続する車両に搭載されている蓄電池の充電又は放電を制御することにより、前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御システムであって、
プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置であるSOC管理サーバと、
蓄電池と前記蓄電池の充電又は放電の制御を行う情報処理装置とを有する車両と、
を含み、
前記SOC管理サーバと前記車両は通信可能に接続され、
前記SOC管理サーバは、
前記車両の過去の利用実績を記憶し、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用機会における消費電力量を推定し、
推定した前記消費電力量に基づき前記車両の蓄電池のSOCを決定し、
前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用機会における時間帯毎の消費電力量を推定し、
推定した前記消費電力量に基づき、時間帯毎の前記蓄電池のSOCを決定し、
時間帯毎の前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用時における曜日毎の消費電力量を推定し、
推定した前記消費電力量に基づき、曜日毎の前記蓄電池のSOCを決定し、
曜日毎の前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
電力価格の時系列の予測情報を記憶し、
前記予測情報に基づき、買電料金が安くなるように前記蓄電池の前記充電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
電力価格の時系列の予測情報を記憶し、
前記予測情報に基づき、売電料金が高くなるように前記蓄電池の前記放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記車両の利用についての予約の有無を示す情報を記憶し、
前記予約が有る場合、前記蓄電池のSOCを当該利用で必要とされる値に決定し、
前記蓄電池のSOCが、前記予約の利用開始時間までに決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
電力価格の時系列の予測情報を記憶し、
前記予約の利用開始時間までの前記予測情報に基づき、買電料金が安くなるように前記蓄電池の前記充電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項8】
請求項6に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
電力価格の時系列の予測情報を記憶し、
前記予約の利用開始時間までの前記予測情報に基づき、売電料金が高くなるように前記蓄電池の前記放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記車両の利用についての予約の有無を示す情報を記憶し、
前記予約が無い場合、前記蓄電池のSOCを予め設定された値に決定し、
前記蓄電池のSOCが、決定した上記値になるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御する、
電力需給制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記電力系統における再生可能エネルギーの出力の予測情報を記憶し、
前記SOCを前記予測情報に応じた値に決定する、
電力需給制御システム。
【請求項11】
請求項9に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記電力系統の電力需要予測情報を記憶し、
前記SOCを前記電力需要予測情報に応じた値に決定する、
電力需給制御システム。
【請求項12】
請求項9に記載の電力需給制御システムであって、
前記SOC管理サーバは、
前記電力系統が存在する地域の気象予測情報を取得し、
前記気象予測情報に気象警報が含まれている場合、前記SOCを災害対策で必要とされる値に決定する、
電力需給制御システム。
【請求項13】
電力系統に接続する車両に搭載されている蓄電池の充電又は放電を制御することにより、前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御方法であって、
プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置であるSOC管理サーバが、
車両の過去の利用実績を記憶するステップ、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用機会における消費電力量を推定するステップ、
推定した前記消費電力量に基づき前記車両の蓄電池のSOCを決定するステップ、及び、
前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御するステップ、を実行する、
電力需給制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電力需給制御方法であって、
前記SOC管理サーバが、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用機会における時間帯毎の消費電力量を推定するステップ、
推定した前記消費電力量に基づき、時間帯毎の前記蓄電池のSOCを決定するステップ、及び、
時間帯毎の前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御するステップ、
を更に実行する電力需給制御方法。
【請求項15】
請求項13に記載の電力需給制御方法であって、
前記SOC管理サーバが、
前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用時における曜日毎の消費電力量を推定するステップ、
推定した前記消費電力量に基づき、曜日毎の前記蓄電池のSOCを決定するステップ、及び、
曜日毎の前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御するステップ、
を更に実行する電力需給制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給制御システム、及び電力需給制御方法に関し、とくに車両に搭載されている蓄電池をリソースとして行われる電力系統の需給バランスを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)においては、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの利用により生じる余剰電力や不足電力の調整に用いる蓄電池として、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等の車両(移動体)に搭載されている蓄電池の活用が想定されている。
【0003】
蓄電池を用いた需給バランス制御では、蓄電池の充電又は放電を制御することにより電力系統に対して供給もしくは電力系統から吸収する電力を制御する。このため、例えば、蓄電池の蓄電量(以下、SOC(State of Charge)と称する。)が100%になると充電することができず、太陽光発電の余剰分の吸収や上げDR指令(DR:Demand Response)に対応することができない。また、例えば、蓄電池のSOCが0%になると放電することができず、ピークカットや下げDR指令に対応することができない。従って、蓄電池を用いた需給バランス制御では、蓄電池のSOCを適切なレベルに維持することが求められる。
【0004】
電力系統の需給バランスの制御に関し、例えば、特許文献1には、BCP(事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan))対応等のために確保する蓄電池容量を適正化し、平常時に提供するサービスの範囲を拡大することを目的として構成された蓄電池管理装置について記載されている。蓄電池管理装置は、蓄電池を有する需要家の需要電力量を予測し、需要家毎に定められた蓄電池の最低蓄電量と、電力系統からの電力供給が停止した場合の需要家毎の時間単位毎の負荷である非常時想定負荷と、に基づき、時間単位毎の蓄電池の蓄電量下限値を算出し、需要家毎に、需要電力量と、蓄電量下限値と、に基づき、蓄電池の蓄電量が蓄電量下限値を下回らない範囲で蓄電池の時間単位毎の充電電力量及び放電電力量を規定する充放電計画を作成する。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、より高い応答率でデマンドレスポンスに対する応答を行うことを目的として構成された蓄電池制御装置について記載されている。蓄電池制御装置は、デマンドレスポンス情報と、需要家の受電電力情報とに基づき、需要家に対するデマンドレスポンスの要請の有無及びその時刻を予測し、デマンドレスポンスの要請があると予測した場合に、予測結果に基づき、デマンドレスポンスの発動時間帯及びそれより前の所定の時間帯である調整時間帯での蓄電池における充放電量に係る計算を行い、計算結果に基づき蓄電池の充放電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-184682号公報
【特許文献2】特開2020-202631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両に搭載されている蓄電池を電力系統の需給バランスを調整するためのリソースとして用いた場合、蓄電池の容量の管理(SOCの管理)は、利用者の車両の利用態様によって左右される。例えば、車両の外出時、車両は電力系統から電気的に切り離され、車両に搭載されている蓄電池の充電又は放電を制御することができない。そのため、車両に搭載されている蓄電池のSOCを適切なレベルに常時維持するためには、利用者の車両の利用態様を考慮する必要がある。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されている蓄電池をリソースとして行われる電力系統の需給バランスの制御を安定して行うことが可能な、電力需給制御システム、及び電力需給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、電力系統に接続する車両に搭載されている蓄電池の充電又は放電を制御することにより、前記電力系統の需給バランスを調整する電力需給制御システムであって、プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置であるSOC管理サーバと、蓄電池と前記蓄電池の充電又は放電の制御を行う情報処理装置とを有する車両と、を含み、前記SOC管理サーバと前記車両は通信可能に接続され、前記SOC管理サーバは、前記車両の過去の利用実績を記憶し、前記利用実績に基づき、前記車両の1回の利用機会における消費電力量を推定し、推定した前記消費電力量に基づき前記車両の蓄電池のSOCを決定し、前記蓄電池のSOCが、決定した前記SOCになるように、前記蓄電池の充電又は放電を制御する。
【0010】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両に搭載されている蓄電池をリソースとして行われる電力系統の需給バランスの制御を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電力需給制御システムの概略的な構成を示す図である。
図2】需給調整サーバが備える主な機能を説明する図である。
図3】SOC管理サーバが備える主な機能を説明する図である。
図4】車両利用実績情報の一例である。
図5】車両利用予約情報の一例である。
図6】車両毎SOC情報の一例である。
図7】ECUが備える主な機能を説明する図である。
図8】SOC制御処理を説明するフローチャートである。
図9】需給調整サーバやSOC管理サーバの実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態として示す電力需給制御システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、電力需給制御システム1は、電力系統3、一つ以上の電源装置20、一つ以上の車両30、需給調整サーバ100、及びSOC管理サーバ200を含む。
【0015】
需給調整サーバ100及びSOC管理サーバ200は、通信ネットワーク5を介して、電力系統3を構成している各種設備、電源装置20、車両30、及び情報提供サーバ7と通信可能に接続している。通信ネットワーク5は、有線方式又は無線方式による通信を実現する通信基盤であり、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、無線LAN、電力線通信網(Power Line Communication Network)、各種公衆通信網、Bluetooth(登録商標)、専用線等である。
【0016】
電力系統3は、例えば、火力発電設備等の従来型の発電設備、風力発電設備や太陽光発電設備(PV:PhotoVoltaic)と称する。)等の再生可能エネルギー利用型の発電設備等を含む。尚、電力系統3は、VPP(Virtual Power Plant)としての機能を含むものであってもよい。
【0017】
情報提供サーバ7は、Webサーバのようにインターネットを介して他の装置に情報提供を行う情報処理装置であり、車両30の蓄電池31のSOCの適正量の決定やSOCの制御に際して利用される各種の情報を提供する。情報提供サーバ7は、例えば、官公庁や企業等の組織によって運用される。上記の情報は、電力価格の時系列の予測情報(以下、「電力価格予測情報」と称する。)、再生可能エネルギー利用型の発電設備の出力(以下「再エネ出力」と称する。)の時系列の予測情報(以下、「再エネ出力予測情報」と称する。)、電力系統3における電力需要の時系列の予測情報(以下、「電力需要予測情報」と称する。)、電力系統3が存在する地域(電力系統3への電力の供給元が存在する地域や電力系統3が電力を提供する需要家が存在する地域)における気象の時系列の予測情報(以下、「気象予測情報」と称する。)を含む。
【0018】
電源装置20は、例えば、電力系統3が展開される地域の各所に設けられる、家庭用もしくは公共用の車両用給電設備(Electric Vehicle Supply Equipment)である。電源装置20は、電力系統3からの車両30に搭載されている蓄電池31への充電電力の供給や、蓄電池31の放電電力の電力系統3への供給等を行う。電源装置20は、通信ネットワーク5を介して、車両30、需給調整サーバ100、及びSOC管理サーバ200と通信するための通信設備を備える。
【0019】
車両30は、蓄電池31に蓄えられている電力を用いて走行する移動体であり、例えば、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)である。車両30は、例えば、V2X機器(V2L(Vehicle to Live)、V2H(Vehicle to home)、V2G(Vehicle to Grid))機器として動作する。車両30は、例えば、社用車や公用車のように、時間帯や曜日に応じてその利用の態様に一定の傾向を有する。蓄電池31は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の二次電池である。
【0020】
車両30は、ECU32(Electronic Control Unit)を備える。ECU32は、蓄電池31の状態の監視や蓄電池31の充電又は放電の制御を行う。車両30は、ケーブル等を介して電源装置20と電気的に接続され、電源装置20を介して電力系統3と接続される。車両30は、蓄電池31の充電又は放電の制御を行う充放電制御装置33を備える。充放電制御装置33は、例えば、双方向充電ユニットを有し、充電又は放電の制御を行う回路の他、各種センサ(電圧センサ、電流センサ、温度センサ等)の計測値により蓄電池31の状態監視を行う回路、電力変換回路(双方向コンバータ等)等を含む。充放電制御装置33は、ECU32と通信可能に接続し、ECU32からの指令に従い蓄電池31の充電又は放電の制御を行う。また、充放電制御装置33は、蓄電池31の状態に関する情報(電圧(充電電圧、放電電圧)、電流(充電電流、放電電流)、SOC(State of charge)、温度、内部抵抗等の監視)をEUC32に通知する。
【0021】
車両30は、通信設備を備えており、ECU32が充放電制御装置33から取得した蓄電池31の状態に関する情報を、通信ネットワーク5を介して需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200に送信する。車両30は、例えば、コネクテッドカー(Connected Car)として位置付けられるものでもよい。また、車両30は、テレマティクス(telematics)通信網を介して提供される各種サービスを享受するための設備を備えていてもよい。
【0022】
需給調整サーバ100は、送配電事業者等の電力系統3の運用主体によって運用される情報処理装置である。需給調整サーバ100は、電力系統3に接続する各種発電設備の電力のリアルタイムな供給量と、電力系統3に接続する需要家に設置されているスマートメータ等の計測値に基づく電力のリアルタイムな使用量を取得し、取得した供給量及び使用量に基づき、電力系統3における電力需給バランスの調整(負荷平準化、再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時における必要電力の供給等)を行う。
【0023】
需給調整サーバ100は、需給バランスの調整指令、例えば、DR(Demand Response)により電力系統3における電力の需給バランスの調整を行う。例えば、需給調整サーバ100は、再生可能エネルギーの過剰出力分を消費させるために蓄電池31の充電を促す指令(以下、「上げDR」と称する。)をSOC管理サーバ200に送信する。また例えば、需給調整サーバ100は、電気のピーク需要の時間体等の電力の供給量の不足時に、蓄電池31の放電(電力系統3への供給)を促す指令(以下、「下げDR」と称する。)をSOC管理サーバ200に送信する。
【0024】
SOC管理サーバ200は、車両30に搭載されている蓄電池31のSOCが適正値になるように、車両30に蓄電池31の充電指令や放電指令を送信する。SOC管理サーバ200は、需給調整サーバ100から送られてくる制御指令(DR等)や、車両30の利用予約の状況、情報提供サーバ7から提供される、再エネ出力予測情報、電力需要予測情報、及び気象予測情報(以下、これらの情報を「SOC決定参酌情報」と総称する。)に基づき、車両30(管理対象となる各車両30)に搭載されている蓄電池31のSOCの値を決定し、車両30に搭載されている蓄電池31のSOCが決定した値になるようにするための充電又は放電の制御指令を車両30に送信する。尚、SOC管理サーバ200は、例えば、需給調整サーバ100からSOC管理サーバ200に送られてくるDR指令(上げDR又は下げDR)に応じて車両30に充電又は放電の制御指令を送信する情報処理装置(いわゆるアグリゲーターサーバ(Aggregator Server))として機能するものであってもよい。
【0025】
図2は、需給調整サーバ100が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、需給調整サーバ100は、記憶部110及び需給バランス調整部125の各機能を備える。
【0026】
上記機能のうち、記憶部110は、電力需給状況情報111を記憶する。電力需給状況情報111は、電力系統3に接続する各種発電設備からの電力の供給量の時系列情報や、需要家のスマートメータから送られてくる計測値に基づく電力の使用量の時系列情報を含む。
【0027】
需給バランス調整部125は、電力需給状況情報111に基づき、需給バランスの調整が必要か否かを判定する。需給バランスの調整が必要と判定した場合、需給バランス調整部125は、電力需給状況情報111に基づき需給バランスの調製方法(制御方法)を立案し、立案した調製方法に基づくDR指令を生成してSOC管理サーバ200に送信する。尚、需給バランスの調製方法の立案は、例えば、公知の手法を用いて行われる。
【0028】
図3は、SOC管理サーバ200が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、SOC管理サーバ200は、記憶部210、情報取得管理部220、電力価格予測部225、再エネ出力予測部230、電力需要予測部235、気象予測部240、車両利用実績管理部245、車両毎SOC決定部255、需給バランス調整指令受信部260(DR指令受信部)、及び蓄電池充放電制御部265の各機能を備える。
【0029】
上記機能のうち、記憶部210は、電力価格予測情報211,再エネ出力予測情報212、電力需要予測情報213、気象予測情報214、車両利用実績情報215、車両利用予約情報216、車両毎SOC管理情報217、需給バランス調整指令218、及びカレンダー情報219(各日の曜日を示す情報を含む)の各情報(データ)を記憶する。尚、上記情報のうち、再エネ出力予測情報212、電力需要予測情報213、気象予測情報214、及び車両利用予約情報216は、前述したSOC決定参酌情報に相当する。
【0030】
情報取得管理部220は、通信ネットワーク5を介して、情報提供サーバ7や需給調整サーバ100から、電力価格予測情報211、再エネ出力予測情報212、電力需要予測情報213、気象予測情報214、及び需給バランス調整指令218を受信し、受信した情報を記憶部210に管理する。
【0031】
電力価格予測部225は、記憶部210が記憶している電力価格予測情報211に基づき、未来の所定の期間について予測される電力価格の時系列の予測情報を出力する。尚、本実施形態では、このように電力価格予測部225が、外部から提供される電力価格予測情報211に基づき未来の所定の期間における電力価格の時系列の予測情報を提供する仕組みとしているが、例えば、電力価格予測部225が、取得した情報や所定のアルゴリズム(各種統計手法、AI(Artificial Intelligence)、機械学習等)に基づき上記予測情報を提供する仕組みとしてもよい。
【0032】
再エネ出力予測部230は、記憶部210が記憶している再エネ出力予測情報212に基づき、未来の所定の期間について予測される再エネ出力の時系列の予測情報を出力する。尚、本実施形態では、このように再エネ出力予測部230が、外部から提供される再エネ出力予測情報212に基づき未来の所定の期間における再エネ出力の時系列の予測情報を提供する仕組みとしているが、例えば、再エネ出力予測部230が、取得した情報や所定のアルゴリズム(各種統計手法、AI、機械学習等)に基づき上記予測情報を提供する仕組みとしてもよい。
【0033】
電力需要予測部235は、記憶部210が記憶している電力需要予測情報213に基づき、未来の所定の期間について予測される電力需要の時系列の予測情報を出力する。尚、本実施形態では、このように電力需要予測部235が、外部から提供される電力需要予測情報213に基づき未来の所定の期間における電力需要の時系列の予測情報を提供する仕組みとしているが、例えば、電力需要予測部235が、取得した情報や所定のアルゴリズム(各種統計手法、AI、機械学習等)に基づき上記予測情報を提供する仕組みとしてもよい。
【0034】
気象予測部240は、記憶部210が記憶している気象予測情報214に基づき、所定の地域の未来の所定の期間について予測される気象の時系列の予測情報を出力する。尚、本実施形態では、このように気象予測部240が、外部から提供される気象予測情報214に基づき所定の地域の未来の所定の期間における気象の時系列の予測情報を提供する仕組みとしているが、例えば、気象予測部240が、取得した情報や所定のアルゴリズム(各種統計手法、AI、機械学習等)に基づき上記予測情報を提供する仕組みとしてもよい。
【0035】
車両利用実績管理部245は、車両30の利用実績(利用履歴)を車両利用実績情報215として管理する。
【0036】
図4に車両利用実績情報215の一例を示す。同図に示すように、例示する車両利用実績情報215は、車両ID411、利用期間412、利用時間413、走行距離414、及びSOC変化量415の各項目を有する一つ以上のレコードで構成される。車両利用実績情報215の一つのレコードは、一つの車両30の一回の利用機会(ある充電機会から次の充電機会までの期間)に対応している。
【0037】
上記項目のうち、車両ID411には、車両30の識別子である車両IDが格納される。利用期間412には、当該車両30の一回の利用機会における利用開始日時と利用終了日時が格納される。利用時間413には、当該利用機会における利用時間が格納される。走行距離414には、当該利用機会における当該車両30の走行距離が格納される。SOC変化量415には、当該利用機会の利用開始日時における蓄電池31のSOCと当該利用機会の利用終了時における蓄電池31のSOCとの差が格納される。
【0038】
図3に戻り、車両利用予約受付部250は、車両30の利用予約を受け付け、受け付けた利用予約の内容を車両利用予約情報216として管理する。車両利用予約受付部250は、例えば、通信ネットワーク5を介して利用者から利用予約を受け付ける。利用者は、例えば、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の通信端末を利用して利用予約を行うことができる。
【0039】
図5に車両利用予約情報216の一例を示す。同図に示すように、例示する車両利用予約情報216は、車両ID511、利用者ID512、及び利用予定期間513の各項目を有する一つ以上のレコードで構成される。車両利用予約情報216の一つのレコードは、ある利用者の一回の利用機会に対応している。
【0040】
上記項目のうち、車両ID511には、予約の対象となる車両30の車両IDが格納される。利用者ID512には、利用者の識別子である利用者IDが格納される。利用予定期間513には、利用開始日時と利用終了日時が格納される。
【0041】
図3に戻り、車両毎SOC決定部255は、車両利用予約情報216から把握される車両30の利用予約の状況やSOC決定参酌情報に基づき、車両30に搭載されている蓄電池31のSOC(現在又は未来の時点又は期間(曜日、時間帯)におけるSOC)を決定し、決定したSOCを車両毎SOC管理情報217に管理する。車両毎SOC決定部255は、例えば、次のようにして車両30のSOCを決定する。
【0042】
例えば、車両毎SOC決定部255は、車両利用実績情報215に基づき、車両30の1回の利用機会における走行距離を推定し、推定した走行距離に基づき単位時間当たりの消費電力量を乗算することにより車両30の1回の利用機会における消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき蓄電池31のSOCを決定する。車両毎SOC決定部255は、例えば、過去の1回の利用機会における走行距離の平均値を走行距離の推定値とする。尚、車両利用実績情報215が、車両利用実績情報215に基づき、例えば、統計手法やAI、機械学習等の手法を用いて上記の推定を行う構成としてもよい。
【0043】
また例えば、車両毎SOC決定部255は、車両利用実績情報215に基づき、車両30の1回の利用機会における「時間帯毎」の走行距離を推定し、推定した走行距離に基づき単位時間当たりの消費電力量を乗算することにより車両30の1回の利用機会における時間帯毎の消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき時間帯毎の蓄電池31のSOCを決定する。車両毎SOC決定部255は、例えば、過去の1回の利用機会における時間帯毎の走行距離の平均値を走行距離の推定値とする。尚、車両利用実績情報215が、車両利用実績情報215に基づき、例えば、統計手法やAI、機械学習等の手法を用いて上記の推定を行う構成としてもよい。
【0044】
また例えば、車両毎SOC決定部255は、車両利用実績情報215に基づき、車両30の1回の利用機会における「曜日毎」の走行距離を推定し、推定した走行距離に基づき単位時間当たりの消費電力量を乗算することにより車両30の1回の利用機会における曜日毎の消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき曜日毎の蓄電池31のSOCを決定する。車両毎SOC決定部255は、例えば、過去の1回の利用機会における曜日毎の走行距離の平均値を走行距離の推定値とする。尚、車両利用実績情報215が、車両利用実績情報215に基づき、例えば、統計手法やAI、機械学習等の手法を用いて上記の推定を行う構成としてもよい。
【0045】
また例えば、車両毎SOC決定部255は、車両30の利用予約が有る車両30について、蓄電池31のSOCを当該利用に必要とされる所定値(例えば、満充電(100%))に決定する。
【0046】
また例えば、車両毎SOC決定部255は、車両30の利用予約が無い場合、蓄電池31のSOCを低い値に決定する。例えば、車両30が社用車や公用車であり、土曜、日曜、祝日等における利用頻度が平日に比べて低い場合(例えば、利用頻度が予め設定した閾値回数未満である場合)、当日朝の時点におけるSOCを予め設定された最低値(例えば0%)に決定する。
【0047】
また例えば、車両毎SOC決定部255は、車両30の利用予約が無い場合、SOC決定参酌情報に基づきSOCを決定する。
【0048】
例えば、車両毎SOC決定部255は、再エネ出力予測情報212に基づきSOCを決定する(再エネ出力の低下が見込まれる場合はSOCを多めにする等)。
【0049】
また、例えば、車両毎SOC決定部255は、電力需要予測情報213に基づきSOCを決定する(電力需要の増大が見込まれる場合はSOCを多めにする等)。
【0050】
また、例えば、車両毎SOC決定部255は、気象予測情報214に基づきSOCを決定する(悪天候が予測される場合はSOCを多めにする等)。
【0051】
尚、以上のいずれの方法でSOCを決定する場合においても、車両毎SOC決定部255が、例えば、決定したSOCに対し、予め設定された値や統計的に算出された所定量(マージン)を考慮した値としてもよい。例えば、車両30の走行距離(消費電力量)に応じてSOCを決定する場合、車両毎SOC決定部255は、走行距離(消費電力量)の度数分布における平均値(μ)±標準偏差(σ)に応じた値をSOCとする。
【0052】
図6に、車両毎SOC管理情報217の一例を示す。同図に示すように、例示する車両毎SOC管理情報217は、車両ID611、SOC612、対象期間613、及び利用予約614の各項目を有する一つ以上のレコードで構成される。車両毎SOC管理情報217の一つのレコードは一つの車両30に対応している。
【0053】
上記項目のうち、車両ID611には、車両IDが格納される。SOC612には、当該車両30の蓄電池31について決定したSOCの値が格納される。対象期間613には、当該車両について当該SOCが適用される期間(時間帯、曜日等)を示す情報が格納される。利用予約614には、当該車両についての利用予約の有無を示す情報が格納される。
【0054】
図3に戻り、需給バランス調整指令受信部260は、需給調整サーバ100から需給バランスの調整指令を受信し、受信した調整指令の内容を需給バランス調整指令218として管理する。
【0055】
蓄電池充放電制御部265は、車両30に蓄電池31の充電又は放電の制御指令を送信する。例えば、蓄電池充放電制御部265は、蓄電池31のSOCが車両毎SOC管理情報217のSOC612の値になるように車両30に充電又は放電の制御指令を送信する。また例えば、蓄電池充放電制御部265は、需給バランス調整指令218に応じて車両30に蓄電池31の充電又は放電の制御指令を送信する。
【0056】
図7は、車両30に搭載されているECU32が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、ECU32は、記憶部310、蓄電池情報取得部325、蓄電池情報送信部327、充放電制御指令受信部330、及び充放電制御部335の各機能を備える。
【0057】
同図に示すように、記憶部110は、蓄電池情報311を記憶する。蓄電池情報311は、蓄電池31からリアルタイムに取得される各種の情報(電源装置20への接続の有無、接続中の電源装置20の電源装置ID、蓄電池ID、蓄電池31の累積使用時間、蓄電池31の最大容量、蓄電池31の充電電圧又は放電電圧、蓄電池31のSOC等)を含む。
【0058】
蓄電池情報取得部325は、充放電制御装置33から上記各種の情報を取得し、取得した情報を蓄電池情報311として管理する。
【0059】
蓄電池情報送信部327は、蓄電池情報311のリアルタイムな内容を需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200に送信する。
【0060】
充放電制御指令受信部330は、需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200から送られてくる、蓄電池31の充電又は放電の制御指令を受信する。
【0061】
充放電制御部335は、充放電制御指令受信部330から受信した充電又は放電の制御指令に従い、蓄電池31の充電又は放電を制御する。
【0062】
図8は、SOC管理サーバ200が車両30の蓄電池31のSOCの制御に関して行う処理(以下、「SOC制御処理S800」と称する。)の一例を説明するフローチャートである。尚、SOC制御処理S800は、SOC管理サーバ200の管理対象である各車両30について行われる。また、SOC制御処理S800は、所定時間毎等の予め設定されたタイミングで繰り返し実行される。以下、同図とともにSOC制御処理S800について説明する。
【0063】
まず、SOC管理サーバ200は、気象予測情報214を取得し、気象予測情報214に気象警報が含まれているか(電力系統3が存在する地域に気象警報(台風接近予報、線状降水帯発生予報等)が発せられているか)否かを判定する(S811~S812)。気象警報が含まれている場合(S812:YES)、処理はS831に進む。気象警報が含まれていない場合(S812:NO)、処理はS813に進む。
【0064】
S831では、SOC管理サーバ200は、気象警報が発せられていることを前提としてSOCを決定(例えば、災害対策に必要なSOC(例えば100%(満充電))に決定)し、車両30に対し、蓄電池31のSOCを決定した値にするための制御指令(例えば、蓄電池31を満充電にするための充電指令)を送信する(S832)。その後、処理はS811に戻る。
【0065】
S813では、SOC管理サーバ200は、車両利用予約情報216を取得し、車両30の利用予約の有無を判定する(S814)。利用予約が有る場合(S814:YES)、処理はS815に進む。利用予約が無い場合(S814:NO)、処理はS817に進む。
【0066】
S815では、SOC管理サーバ200は、利用予約が有ることを前提としてSOCを決定する(S815)。尚、SOC管理サーバ200の車両毎SOC決定部255は、前述した各種の方法により上記SOCを決定する。
【0067】
続いて、SOC管理サーバ200は、車両30の利用開始時間に間に合うように、蓄電池31のSOCを決定した値にするための制御指令を車両30に送信する(S816)。その後、処理はS811に戻る。
【0068】
S817では、SOC管理サーバ200は、利用予約が無いことを前提としてSOCを決定する(S817)。尚、SOC管理サーバ200の車両毎SOC決定部255は、前述した各種の方法により上記SOCを決定する。
【0069】
続いて、SOC管理サーバ200は、蓄電池31のSOCを決定した値にするための制御指令を車両30に送信する(S818)。その後、処理はS711に戻る。
【0070】
尚、S816、S818、及びS832の各処理において、蓄電池31の充電を行う場合、例えば、電力価格予測情報211に基づき、電気料金(買電料金)が安くなるように蓄電池31の充電を制御するようにしてもよい。また上記各処理において、蓄電池31の放電を行う場合、例えば、電力価格予測情報211に基づき、電気料金(売電料金)が高くなるように蓄電池31の充電を制御するようにしてもよい。
【0071】
また、S816、S818、及びS832の各処理の実行中に気象警報を含む気象予測情報214を受信した場合、例えば、SOC管理サーバ200が、現在行っている充電又は放電の制御を、災害対策に必要なSOC(例えば100%(満充電))となるようにする制御に切り換えるようにしてもよい。
【0072】
また、SOC制御処理S800の実行中に需給バランス調整指令受信部260が、需給調整サーバ100から需給バランスの調整指令を受信した場合、蓄電池充放電制御部265は、原則として、車両毎SOC管理情報217による蓄電池31の制御から、需給バランス調整指令218に応じた蓄電池31の制御に切り換える(需給バランスの調整指令を優先して蓄電池31の充電又は放電を制御)。
【0073】
以上に説明したように、SOC管理サーバ200は、車両30の利用実績に基づき車両30の1回の利用機会における消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき車両30の蓄電池31のSOCを決定し、蓄電池31のSOCが決定したSOCになるように蓄電池31の充電又は放電を制御するので、利用者の車両30の利用態様を考慮して蓄電池31のSOCを適切に管理することができる。
【0074】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用実績に基づき車両30の1回の利用機会における時間帯毎の消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき車両30の時間帯毎の蓄電池31のSOCを決定し、時間帯毎の蓄電池31のSOCが決定したSOCになるように蓄電池31の充電又は放電を制御するので、利用者の車両30の時間帯毎の利用態様を考慮して蓄電池31のSOCを適切に管理することができる。
【0075】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用実績に基づき車両30の1回の利用機会における曜日毎の消費電力量(SOC変化量)を推定し、推定した消費電力量に基づき車両30の曜日毎の蓄電池31のSOCを決定し、曜日毎の蓄電池31のSOCが決定したSOCになるように蓄電池31の充電又は放電を制御するので、利用者の車両30の曜日毎の利用態様を考慮して蓄電池31のSOCを適切に管理することができる。これにより、例えば、車両30が社用車や公用車であり、土曜、日曜、祝日等の車両30の利用状況が低い場合、SOCを低い値(例えば0%)にすることができ、電力系統の需給バランスの調製の幅を確保することができる。
【0076】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用予約が有る場合、蓄電池31のSOCを当該利用で必要とされる値に設定し、蓄電池31のSOCが、予約の利用開始時間までに決定したSOCになるように蓄電池31の充電又は放電を制御するので、車両30の利用者の利便性を確保することができる。
【0077】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用予約が無い場合、蓄電池31のSOCを予め設定された所定値に決定し、蓄電池31のSOCが、決定したSOCになるように、蓄電池31の充電又は放電を制御するので、車両30の利用予約が無い場合は、蓄電池31を電力系統3の需給バランスを調整するためのリソースとして有効に活用することができる。
【0078】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用予約が無い場合、再エネ出力予測情報212に応じた値に上記の所定値を決定するので、再エネ出力を考慮して蓄電池31のSOCを適切な値に管理することができる。
【0079】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用予約が無い場合、電力需要予測情報213に応じた値に上記の所定値を決定するので、電力需要を考慮して蓄電池31のSOCを適切な値に管理することができる。
【0080】
また、SOC管理サーバ200は、車両30の利用予約が無い場合、電力系統が存在する地域の気象予測情報214に応じた値(災害対策で必要とされる値)に上記の所定値を決定するので、気象予測情報を考慮して蓄電池31のSOCを適切な値に管理することができる。
【0081】
また、SOC管理サーバ200は、蓄電池31の充電を行う際、電力価格予測情報211に基づき、電気料金(買電料金)が安くなるように蓄電池31の充電を制御するので、車両30の利用者に対して、電力系統3の需給バランスの調整に貢献することへのインセンティブを与えることができる。
【0082】
また、SOC管理サーバ200は、蓄電池31の放電を行う際、電力価格予測情報211に基づき、電気料金(売電料金)が高くなるように蓄電池31の充電を制御するので、車両30の利用者に対して、電力系統3の需給バランスの調整に貢献することへのインセンティブを与えることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態の電力需給制御システム1によれば、車両30の蓄電池31のSOCを適切に管理することができ、例えば、電力系統3における余剰電力の吸収や不足電力の調整(再生可能エネルギーによる発電の余剰分の吸収や上げDR指令、ピークカットや下げDR指令等)に柔軟に対応することができる。従って、車両30に搭載されている蓄電池31をリソースとして行われる電力系統3の需給バランスの制御を安定して行うことができる。
【0084】
<情報処理装置の例>
図9は、需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0085】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0086】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0087】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0088】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0089】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0090】
入力装置14および出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0091】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0092】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0093】
需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0094】
<結語>
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0095】
例えば、以上では、車両30側に蓄電池31の充電又は放電の制御の仕組みや蓄電池31の状態監視の仕組みを設けたが、これらの仕組みを電源装置20側に設け、電源装置20が、需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200に対する蓄電池31の状態に関する情報の提供、需給調整サーバ100やSOC管理サーバ200からの充電又は放電の制御指令の受信、上記制御指令に応じた蓄電池31の充電又は放電の制御等を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 電力需給制御システム、3 電力系統、5 通信ネットワーク、7 情報提供サーバ、20 電源装置、30 車両、31 蓄電池、32 ECU、33 充放電制御装置、100 需給調整サーバ、111 電力需給状況情報、110 記憶部、125 需給バランス調整部、200 SOC管理サーバ、210 記憶部、211 電力価格予測情報、212 再エネ出力予測情報、213 電力需要予測情報、214 気象予測情報、215 車両利用実績情報、216 車両利用予約情報、217 車両毎SOC管理情報、218 需給バランス調整指令、219 カレンダー情報、220 情報取得管理部、225 電力価格予測部、230 再エネ出力予測部、235 電力需要予測部、240 気象予測部、245 車両利用実績管理部、250 車両利用予約受付部、255 車両毎SOC決定部、260 需給バランス調整指令受信部、265 蓄電池充放電制御部、S800 SOC制御処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9