(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044850
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】シート温度調整装置及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
H05B 3/03 20060101AFI20240326BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240326BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05B3/03
A47C7/74 B
B60N2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150626
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3K092
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JF02
3B084JF04
3B087DE08
3B087DE10
3K092PP15
3K092QA05
3K092QB31
3K092QB33
3K092RF02
3K092RF17
3K092RF26
3K092UA12
3K092VV23
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成により効率的にシートの温度等の制御を行うことが可能なシート温度調整装置を提供する。
【解決手段】互いに所定の間隙を隔てて第1の方向に沿ってそれぞれ延びる複数の正極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿ってそれぞれ延びると共に、前記複数の正極とそれぞれ対向配置された複数の負極と、対向する前記正極と前記負極との間に介在し、前記正極と前記負極との間に印加される電流に応じて温度変化可能な温度調整手段と、前記正極と前記温度調整手段との間と、前記負極と前記温度調整手段との間と、の少なくとも一方に配置された感圧導電層と、を含んで構成されたシート温度調整装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の間隙を隔てて第1の方向に沿ってそれぞれ延びる複数の正極と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿ってそれぞれ延びると共に、前記複数の正極とそれぞれ対向配置された複数の負極と、
対向する前記正極と前記負極との間に介在し、前記正極と前記負極との間に印加される電流に応じて温度変化可能な温度調整手段と、
前記正極と前記温度調整手段との間と、前記負極と前記温度調整手段との間と、の少なくとも一方に配置された感圧導電層と、
を含んで構成されたシート温度調整装置。
【請求項2】
前記温度調整手段の電気抵抗値、前記正極と前記負極の間を流れる電流値又は電圧値、の少なくとも1つを計測する計測手段と、
前記計測手段により得られた計測値に基づいて、前記着座領域内の圧力分布を算出する圧力分布算出手段と、
をさらに備える、請求項1に記載のシート温度調整装置。
【請求項3】
前記正極と前記負極との間に電源を介して電流を印加する電流調整手段と、
算出された前記圧力分布に基づいて乗員の着座位置を推定する着座位置推定手段と、をさらに備え、
前記電流調整手段は、前記着座位置推定手段が推定した乗員の前記着座位置に基づいて、前記着座位置に対応する前記温度調整手段に対する印加電流量を可変する、請求項2に記載のシート温度調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のシート温度調整装置を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車等の車両に適用され得るシート温度調整装置及びそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両に適用されるシートに関して、着座した際の圧力を検知する面圧センサや、検知した圧力に基づいて座席を加温するシートヒータが提案されている。
【0003】
特許文献1には、車両用座席の着座部およびまたは背もたれ部の内部に設けられたシート状の感圧センサによって、座席にかかる乗員の圧力分布を測定する圧力分布検出装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、シート本体の内部に複数の感圧部を備えた着座センサが設けられ、着座センサによって検知された押圧力及び押圧位置のデータを所定時間計測しデジタル処理して乗員の身長や体重を算出し、その算出結果に基づいてエアバックの起爆装置等の各種装置の作動を制御可能な、着座センサ付きシートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、車両の座席に設けた圧力センサによって乗員の行動を内部情報として入手し制御システムにこれらの情報を出力することで車両の挙動を制御することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、車両のシートヒータにおいて、加熱対象者からの荷重により前記発熱手段に接触自在な正極及び負極と、それら電極及び発熱手段を離間させるスペーサとを備え、荷重により発熱手段と電極が接触することにより、発熱手段に通電され、発熱手段が発熱する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-48658号公報
【特許文献2】特開平10-244861号公報
【特許文献3】特開2019-207168号公報
【特許文献4】特開2010-40186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1~3に記載の技術では、シートの圧力をセンサで検知して、検知結果に基づいてシートの加熱等の制御が行われる。これは、圧力センサと加熱手段とを同時に備える必要があり、コスト面で問題がある。また、特許文献4に記載の技術では、着座を繰り返すことや経時によるスペーサの劣化により、発熱が制御できなくなる問題を有している。よって、専用の圧力センサを備えずに簡易な構成で効率的にシートの温度制御を行うことができる技術が望まれていた。
【0009】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、より簡易な構成により効率的にシートの温度等の制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態におけるシート温度調整装置は、互いに所定の間隙を隔てて第1の方向に沿ってそれぞれ延びる複数の正極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿ってそれぞれ延びると共に、前記複数の正極とそれぞれ対向配置された複数の負極と、対向する前記正極と前記負極との間に介在する温度調整手段と、前記正極と前記温度調整手段との間と、前記負極と前記温度調整手段との間と、の少なくとも一方に配置された感圧導電層と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、より簡易な構成により効率的にシートの温度等の制御を行うことができるシート温度調整装置と、それを備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係るシート温度調整装置の外観を示した模式図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るシート温度調整装置の構成を示した平面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るシート温度調整装置により得られた圧力分布結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本開示の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。また、本開示は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0014】
[シート温度調整装置]
図1~
図4に、本開示の一実施形態に係るシート温度調整装置を示している。
図1は、車両のシートSに本実施形態に係るシート温度調整装置100を取り付けた場合の斜視図を示している。
【0015】
車両のシートSは、座面部及び背面部を備える公知のシートであり、外表面は布や合成皮革で被覆されている。本実施形態に係るシート温度調整装置100はシートSの座面において、外表面の内側に設けられている。なお
図1では本実施形態に係るシート温度調整装置100は座面の一部に設けられているが、これに限られるものではなく、座面の全面に設けられてもよいし、座面に加えて背面やヘッドレストに設けられていてもよい。
【0016】
本実施形態のシート温度調整装置100は、図示しない制御部及び公知の記憶部(メモリおよびデータベース)を備えている。制御部は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えて構成される。制御部の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。上記した記憶部のうちメモリは、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の公知のメモリデバイスで構成されていてもよい。
【0017】
また、上記した記憶部のうちデータベースは、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)あるいはUSBフラッシュやストレージ装置等の更新可能な公知の記録媒体で構成されていてもよい。ただし、本実施形態では上記した記憶部の数や種類は特に限定されない。本実施形態の記憶部は、制御部により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、検出データ、演算結果等の情報を記録するように構成されていてもよい。
【0018】
図2は本実施形態に係るシート温度調整装置100の内部構成を示した平面図である。本実施形態に係るシート温度調整装置100は、互いに所定の間隙を隔ててX方向(第1の方向)に沿ってそれぞれ延びる複数の正極10(10a、10b、10c、10d・・・)と、X方向と交差するY方向(第2の方向)に沿ってそれぞれ延びる複数の負極20(20a、20b、20c、20d・・・)と、を有する。このようにマトリックス状に配置された正極10と負極20との間は、図示しない電源を介して電流が印加可能となっている。
【0019】
正極10及び負極20は共に、金属等の導電性の素材により形成されており、長尺の線状の形状を有している。なお
図1において正極10及び負極20は共に12本ずつ配置されているがこれに限られるものではなく、シート温度調整装置100のサイズに応じてそれぞれ必要な本数を備えていてもよい。複数の正極10及び負極20の幅、長さ、厚み等は特に制限はなく、適宜選択可能である、また、複数の正極10同士における相互の間隔や、複数の負極20における相互の間隔についても、特に制限はなく、適宜選択が可能である。
【0020】
図2に示されるように、複数の正極10と、複数の負極20とは、それぞれ交差した異なる方向(X方向及びY方向)にそれぞれ延びると共に対向して配置されることにより、正極10と負極20とが協働して格子形状をなしている。また、正極10と負極20との交点には、電流を付与することにより加熱が行われる温度調整手段30としての電熱線(ニクロム線や鉄クロム線)31が配置されている。そして、任意の正極10と負極20との間に電流が付与されることにより、電熱線31が加熱される。なお温度調整手段30として電熱線に限られるものではなく、公知のペルティエ素子などを適用することも可能である。なおペルティエ素子を温度調整手段30に適用した場合、加熱だけで無く冷却を行うことも可能となる。
【0021】
図1に示されるように、複数の正極10(10a、10b、10c、10d・・・)にはそれぞれ対応するスイッチSW(SW
10a、SW
10b、SW
10c、SW
10d、・・・)が電気的に接続されている。同様に複数の負極20(20a、20b、20c、20d・・・)には、それぞれ対応するスイッチSW(SW
20a、SW
20b、SW
20c、SW
20d、・・・)が電気的に接続されている。それぞれのスイッチは別々に動作可能とすることにより、正極10と負極20との間に電流を流すことが可能となる。
なお本実施形態では複数の正極と複数の負極にそれぞれスイッチを設けたが、本開示はこの形態に限られず、例えば上記スイッチを適宜省略して上記制御部(すなわちソフトウェアによる制御)で走査する形で複数の正極と複数の負極に対して所望のタイミングで電流を順次印加するようにしてもよい。
【0022】
図3の断面図に示されるように、正極10の負極20と対向する面には、感圧導電層12が設けられている。同様に、負極20の正極10と対向する面には、感圧導電層22が設けられている。そして、正極10の感圧導電層12と、負極20の感圧導電層22との間には、電熱線31が配置されている。換言すれば、電熱線31は、感圧導電層12及び22を介して、正極10及び負極20と電気的に接続されている。
【0023】
感圧導電層12及び22は、自然状態では絶縁状態であるが、加圧される度合いにより電気抵抗値がリニアに変化する(低下する)性質を有する機能を有する。感圧導電層12、感圧導電層22を形成する素材としては、公知の感圧導電性塗料等が適用される。感圧導電層12及び22は、具体的には、絶縁性を有する樹脂材料に、導電性のカーボン粒子等を分散することにより成形することが可能である。感圧導電層12及び22は、無加圧状態では導電性粒子は互いに接触しておらず導通経路を形成していないので、高い電気抵抗値を示す。そして、加圧することにより導電性粒子が次第に接触し始め、導通経路が形成されるので電気抵抗値が低下する。さらに、減圧すると樹脂の復元力で導電性粒子は再び非接触状態に戻り、電気抵抗値が高くなる。
【0024】
なお
図3では、正極10の負極20と対向する面には感圧導電層12、負極20の正極10と対向する面には感圧導電層22が設けられているが、必ずしも感圧導電層12と感圧導電層22を両方備える必要はなく、少なくとも一方が備えられていればよい。また、感圧導電層12及び22は、感圧導電性塗料ではなく、公知の感圧導電性ゴムや、感圧導電性エラストマー等が適用されてもよい。
【0025】
すなわち、本実施形態のシート温度調整装置100は、対向配置する正極10と負極20の間に電熱線31を介在させる。さらに、正極10と電熱線31との間、負極20と電熱線31との間、の少なくとも一方に、加圧により導電性を奏する感圧導電層12及び22を形成する。このような構成とすることにより、本実施形態のシート温度調整装置100を適用した場合、乗員のシートへの着座により圧力が加えられた場合、圧力が加えられた部分の感圧導電層の電気抵抗値が低下するので、正極10と負極20の間により多くの電流が流れ、電熱線31が加熱される。一方で、圧力が加えられない部分の電熱線31は電気抵抗値が低下しないため、必要領域のみの加温が実現でき、省エネルギーの実現に貢献できる。
【0026】
図4により本実施形態のシート温度調整装置100をさらに詳細に説明する。
図4に示されるように、本実施形態のシート温度調整装置100は、電熱線31の電気抵抗値を計測することが可能な、計測手段40として公知の電気抵抗計41を備えている。すなわち、本実施形態のシート温度調整装置100は、複数の正極10と複数の負極20とが交差する領域に設けられた電熱線31の電気抵抗計41が、公知の導線42を介して電気的に接続されている。なお、本実施形態では、計測手段40としては電気抵抗計を例示して説明するが、これに制限されるものではなく、例えば正極10と負極20の間を流れる電流値又は電圧値を計測可能な他の公知の計測機器であってもよいし、それら複数の組み合わせであってもよい。
【0027】
さらに本実施形態のシート温度調整装置100は、着座領域内の圧力分布を算出する圧力分布算出手段50を備えている。圧力分布算出手段50は、上記の電気抵抗計41に接続されており、電気抵抗計41により計測された電気抵抗値に基づいて、着座領域内の圧力分布を算出する機能を有する。圧力分布算出手段50は、具体的には一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成されていてもよく、上記したシート温度調整装置100の制御部に組み込まれていてもよい。
【0028】
圧力分布算出手段50による圧力分布を算出する方法を説明すると、まず、正極10に対して、正極10a、正極10b、正極10c・・・のように順々に電流を印加すると共に、負極20に対しても同様に、負極20a、負極20b、負極20c・・・のように順々に電流を印加し、任意の電熱線31における電気抵抗値を電気抵抗計41により取得する。得られた電気抵抗値と、その電気抵抗値を示す電熱線の箇所とを対応させると共に、複数の電熱線31ごとに電気抵抗値の測定と箇所の対応付けとを繰り返すことにより、着座領域内の圧力分布を算出することが可能となる。
【0029】
なお
図4においては、個々の電熱線31に一つの電気抵抗計41及び圧力分布算出手段50を有する例を用いて説明したがこれに限られるものではなく、上記機能を達成可能な限りにおいて、電気抵抗計41及び圧力分布算出手段50の設置数は制限はない。すなわち、シート温度調整装置100内に電気抵抗計41及び圧力分布算出手段50はそれぞれ一つずつ備えられるものとしてもよい。
【0030】
図5は、圧力分布算出手段50により算出された圧力分布結果の一例を示す。
図5には横12個×縦12個の温度調整手段30が格子状に均等に配置されている。個々の温度調整手段30において白抜きの四角で示されている箇所は着座圧力が「低」、ハッチングで示されている箇所は着座圧力が「中」、黒い四角で示されている箇所は着座圧力が「高」として示される。圧力分布算出手段50は具体的には、予め設定した着座圧力「低」の電気抵抗値の範囲、着座圧力「中」の電気抵抗値の範囲、及び着座圧力「高」の電気抵抗値の範囲に基づいて、圧力分布を算出することができる。
【0031】
本実施形態のシート温度調整装置100はさらに、乗員の着座位置を推定する着座位置推定手段60を備えるようにしてもよい。着座位置推定手段60は、具体的には一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成されていてもよく、上記したシート温度調整装置100の制御部に組み込まれていてもよい。着座位置推定手段60は、上述した圧力分布算出手段50により算出された圧力分布に基づいて、シート温度調整装置100における乗員の着座位置を推定する機能を有する。例えば着座位置推定手段60は、
図5において圧力分布算出手段50が着座圧力「中」及び着座圧力「高」とした範囲を、乗員の着座位置として推定することができる。
【0032】
さらに着座位置推定手段60は、圧力分布算出手段50により算出された圧力分布に基づいて、予め定められ記憶された圧力分布と乗員の身体箇所とのデータベースに照らし合わせて、乗員の身体箇所を推定するようにしてもよい。例えば、着座した乗員の臀部や大腿部等の箇所をそれぞれ推定するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態のシート温度調整装置100はさらに、正極10と負極20との間に印加される電流の量(印加電流量)を可変とする電流調整手段70を備えるようにしてもよい。電流調整手段70は、具体的には一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成されていてもよく、上記したシート温度調整装置100の制御部に組み込まれていてもよい。電流調整手段70は、上述した着座位置推定手段60が推定した乗員の着座位置に基づいて、その着座位置に対応する温度調整手段30に加えられる電流量を変更する機能を有する。例えば、上述のように圧力分布算出手段50が着座圧力「中」及び着座圧力「高」とした範囲を、着座位置推定手段60が乗員の着座位置として推定し、さらに電流調整手段70が、乗員の着座位置として推定された箇所の少なくとも一部における電熱線31に印加される電流を調整することができる。このように電流調整手段70は、着座によって生じた最も圧力が高い部分に対してそのまま電流を印加せずに、着座位置推定手段60が推定した乗員の着座位置に基づいて印加する電流量を変更してもよい。
【0034】
図5では、着座位置推定手段60は、圧力分布算出手段50が着座圧力「中」及び着座圧力「高」とした範囲を乗員の着座位置として推定するものとする。さらに着座位置推定手段60は、着座圧力「高」とした範囲を着座した乗員の臀部位置と推定し、臀部位置よりも身体前側(図の-Y方向)を大腿部位置と推定するものとする。そして、電流調整手段70は、臀部位置と推定した箇所の温度調整手段30への電流量を下げると共に、大腿部位置と推定した箇所の温度調整手段30への電流量を上げることができる。
【0035】
なお電流調整手段70による調整は、着座する乗員の指示に基づいて行われてもよい。具体的には、図示しない画像表示装置等に表示された着座位置推定結果及び推定された着座位置における推定温度に対して、乗員が温度を上げる又は下げる等の指示を行い、当該指示に基づいて電流調整手段70が電流量を上げる又は下げる等の処理を実行することとしてもよい。
【0036】
なお上述のとおり添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。すなわち当業者であれば上記した実施形態に対して更なる変形を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0037】
すなわち本実施形態のシート温度調整装置100において、正極10と負極20との間には、感圧導電層を介して、電熱線31等の温度調整手段30を配置する例を説明した。しかしながら、この温度調整手段30を例えば振動部材とし、乗員の着座圧力に応じて振動が発生する構成とすることもできる。
【0038】
本実施形態のシート温度調整装置100は、乗員による着座圧力が大きいほど、電気抵抗値が減少して温度調整手段30に大きな電流が流れる。よって、面圧センサを必要とせずに簡易な構成によりシートの温度調整が可能であり、効率的に省エネルギーに貢献できる。
【0039】
さらに本実施形態のシート温度調整装置100は、温度調整手段30の電気抵抗値や電流量、電圧値を計測手段40により取得し、その計測値に基づいて圧力分布算出手段50を用いて圧力分布を算出することにより、専用の面圧センサを用いずに面圧センサと同等の効果を得ることができる。
【0040】
さらに本実施形態のシート温度調整装置100は、乗員の着座位置を推定する着座位置推定手段と、推定した着座位置に基づいて温度調整手段30への電流を印加する電流調整手段を備えることにより、着座者の好みに応じた温度調整を行うことが可能となる。
【0041】
本実施形態のシート温度調整装置100は、公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関を駆動力源とする車両に適用することも可能であるし、駆動用モータを備えた電気自動車やハイブリッド電気自動車に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
100:シート温度調整装置、10:正極、12:感圧導電層、20:負極:、22:感圧導電層、30:温度調整手段、40:計測装置、50:圧力分布算出手段、60:着座位置推定手段、70:電流調整手段