IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図1
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図2
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図3
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図4
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図5
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図6
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図7
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図8
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図9
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図10
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図11
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図12
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図13
  • 特開-通風量制御装置及びそれを備えた車両 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044852
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】通風量制御装置及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/36 20060101AFI20240326BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240326BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20240326BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F04D29/36 A
B60K11/04 G
F04D29/32 D
F04D25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150628
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 慧
【テーマコード(参考)】
3D038
3H130
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC14
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB12
3H130AB52
3H130AB62
3H130AB65
3H130AC13
3H130BA62C
3H130BA73C
3H130CB07
3H130CB11
3H130DD01Z
3H130DE01X
3H130DE12X
3H130DF03X
3H130EA03C
(57)【要約】
【課題】状況に応じて走行風の通風量の制御を効果的に行うことができる通風量制御装置を提供する。
【解決手段】ラジエターの前方又は後方に配置されてエンジン房内に冷却風を送風する通風量制御装置であって、軸周りに回転し、駆動モータと接続した第1羽根と、前記第1羽根と同軸上に配置される第2羽根と、前記第1羽根と前記第2羽根が軸方向から見て相互に重なる第1状態と、軸方向から見て前記第1状態より投影面積が大きい第2状態と、の間で回転可能な位置を切り替える第1切替機構と、を備える通風量制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエターの前方又は後方に配置されてエンジン房内に冷却風を送風する通風量制御装置であって、
軸周りに回転し、駆動モータと接続した第1羽根と、
前記第1羽根と同軸上に配置される第2羽根と、
前記第1羽根と前記第2羽根が軸方向から見て相互に重なる第1状態と、軸方向から見て前記第1状態より投影面積が大きい第2状態と、の間で回転可能な位置を切り替える第1切替機構と、
を備えることを特徴とする、通風量制御装置。
【請求項2】
前記第1切替機構は、
前記第1羽根と第2羽根との相対位置を検出するセンサーと、
前記第1羽根と前記第2羽根が離間した第2状態で第2羽根を軸周りに固定するクラッチ機構を含む、請求項1に記載の通風量制御装置。
【請求項3】
前記第1状態と前記第2状態との間の任意の角度を有する第3状態に回転移動させるための角度調整機構をさらに有する、請求項2に記載の通風量制御装置。
【請求項4】
前記第1羽根又は前記第2羽根と軸方向から見て重なり得る第3羽根をさらに有し、
前記第2羽根と前記第3羽根が軸方向から見て相互に重なる第4状態と、軸方向から見て前記第4状態より投影面積が大きい第5状態と、の間で回転可能な位置を切り替える第2切替機構と、を備える、
請求項2に記載の通風量制御装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の通風量制御装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通風量制御装置及びそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に限らず、冷却を制御するためのファンやシャッター等の部品において、様々な構成が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、送風機において、モータシャフトを有するモータと、モータシャフトに軸方向へ摺動するように取り付けられ、モータの動力により回転して気流を発生させる第1ファンと、第1ファンの回転により発生する気流の上流側に配置され、モータシャフトに回転自在に取り付けられた第2ファンと、第1ファンを気流の下流側へ付勢する弾性体と、に設けられた第1連結部と、第2ファンに設けられた第2連結部とを有し、第1ファンが第2ファン側へ摺動したとき、第1連結部と第2連結部とが連結するファン連結部とを備えた構成が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、ロータリーシャッタにおいて、同一回転軸を中心に回転可能に備えられる複数のシャッタブレードと、前記複数のシャッタブレードを回転させて、空気の通過する面積を可変させるシャッタアクチュエータとを含み、前記シャッタブレードは、前記シャッタアクチュエータの作動によって前記回転軸を中心に回転する作動ブレードと、前記作動ブレードの回転に伴って扇状(fanwise)に展開または折り畳まれるように前記回転軸を中心に重なって備えられる複数のサブブレードとを含む構成が開示されている。
【0005】
特許文献3には、熱交換器コアに送風する熱交換器用ファンにおいて、夫々複数の翼を有するプロペラ型の第一ファンと第二ファンとを同一軸線の回りに互いに反対向きに回転するように且つ、該軸線方向に互いに離間して配設し、両ファンの翼取り付は角度を互いに逆向きにして両ファンによる夫々の送風方向を一致させた構成が開示されている。
【0006】
特許文献4には、エンジン冷却水を冷却する放熱器に送風する車両用電動送風機において、電動機軸に固定された内側ファンと、この電動機軸に回転可能に支承された支持部材と、この支持部材に固定され上記内側ファンの外周に配置された外側ファンと、上記支持部材と電動機軸とを接動自在に連結する電磁クラッチとからなる構成が開示されている。
【0007】
特許文献5には、自動車のラジエターの後部に配設される冷却ファンにおいて、冷却ファンの外周とラジエターの外周とをファンシュラウドで覆い、ファンシュラウドに開口部を設け、この開口部に、走行風圧に応じて開口面積が変わる弾性材からなるリードバルブを取付け、このリードバルブの後方に、その動きの最終位置を規制するストッパを設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開公報WO2019/159282
【特許文献2】特開2017-180447号公報
【特許文献3】特開昭60-098719号公報
【特許文献4】特開昭60-012621号公報
【特許文献5】特開平10-317963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車両のラジエター後方に配置される冷却ファンは、走行風を取り入れてエンジン冷却を行う際の通風量を増加させることに寄与する。一方で車両の走行状況に応じて通風量の制御を行うことが望まれていた。
【0010】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、状況に応じて走行風の通風量制御を効果的に行うことができる通風量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態における通風量制御装置は、ラジエターの前方又は後方に配置されてエンジン房内に冷却風を送風する通風量制御装置であって、軸周りに回転し、駆動モータと接続した第1羽根と、前記第1羽根と同軸上に配置される第2羽根と、前記第1羽根と前記第2羽根が軸方向から見て相互に重なる第1状態と、軸方向から見て前記第1状態より投影面積が大きい第2状態と、の間で回転可能な位置を切り替える第1切替機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、走行状況に応じて走行風の通風量の制御を効果的に行うことができる通風量制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態における通風量制御装置を示す正面図である。
図2】第一実施形態における通風量制御装置を示す側面図である。
図3】第一実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図4】第一実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図5】本実施形態の通風量制御装置の車両への適用例を示す図である。
図6】第二実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図7】第二実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図8】第三実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図9】第三実施形態における通風量制御装置を示す正面図である。
図10】第四実施形態における通風量制御装置を示す側方断面図である。
図11】第四実施形態における通風量制御装置を示す正面図である。
図12】第四実施形態における通風量制御装置を示す断面図である。
図13】変形例を示す側方図である。
図14】他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本開示の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。また、本開示は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0015】
<第一実施形態>
図1図4に、本開示の一実施形態に係る通風量制御装置100を示している。図1は通風量制御装置100の正面図であり、図2は通風量制御装置100の側面図である。また、図3図1におけるA-A’断面図であり、図4図3におけるB-B’断面図である。
本実施形態における通風量制御装置100は、車両に搭載することが可能であると共に、ラジエターの前方又は後方に配置されてエンジン房内に冷却風を送風することができる。
本実施形態における通風量制御装置100は、回転軸O周りに回転する第1羽根10、第1羽根10と同じ回転軸上に配置される第2羽根20、第1羽根10に接続する駆動モータM1、を有する。なお第1羽根10と第2羽根20とを纏めて以下「ファン」とも称する。また回転軸Oは図におけるY方向に沿って設置されるものとし、明細書中「正面」とは図における-Y方向側を意味し、「後方」とは図におけるY方向側を意味するものとする。
【0016】
(第1羽根10)
第1羽根10は、駆動モータM1と接続して回転することにより、後述する第2羽根20と協働して、通風量制御装置100の送風方向上流から下流に送風し、又は通風量を制御する機能を有する。図1(a)及び図1(b)に示されるとおり、第1羽根10は、4枚のブレード(10a、10b、10c、10d)を有する。なお第1羽根10のブレード枚数は4枚に制限されるものではない。第1羽根10の回転軸O周りにおける回転方向は、特に制限されるものではなく、時計回りの回転とすることもできるし、反時計回りの回転とすることも可能である。
【0017】
第1羽根10は、一例として、ステンレスやアルミニウム等の金属、またはアクリルやポリプロピレン等の樹脂で製造される。なお、第1羽根10のブレード形状としては、例えば図2では各ブレード羽根が回転軸Oに対して斜めに傾いた形状(仰角α)を有しているが、これに限られるものではない。すなわち、通風量制御の機能を達成する限りにおいて、ブレードの投影面積、迎角、反り等は、適宜公知の形状を適用することが可能である。
【0018】
(第2羽根20)
第2羽根20は、第1羽根10と駆動モータM1との間に、第1羽根10と同じ回転軸O上で回転可能に配置される。第2羽根20は、上述の第1羽根10と協働して、通風量制御装置100の送風方向上流から下流に対して送風し、又は通風量を制御する機能を有する。第2羽根20は、4枚のブレード(20a、20b、20c、20d)を有する。なお第2羽根20のブレード枚数は4枚に制限されるものではない。なお、図3の断面図で示されるとおり、第2羽根20と駆動モータM1とは接続されていないため、第2羽根20は、駆動モータM1から直接的に駆動力を受けた回転は行わない。一方で図4に示されるように、第2羽根20は、第1羽根10との間に形成されるカップリング(第1切替機構30)により駆動モータM1の駆動力を受けることができる。
【0019】
(第1切替機構30)
本実施形態の通風量制御装置100が有する第1切替機構30について以下に説明する。第1羽根10は、駆動モータM1に接続されて当該駆動モータM1の駆動力により回転する。一方で、第2羽根20は、上記した駆動モータM1には直接的に接続されていない。本実施形態では、第1羽根10と駆動モータM1との間に第2羽根20が配置されると共に、第1羽根10と第2羽根20との間には第1切替機構30としてのカップリング30aが配設される。本実施形態におけるカップリング30aは、図4に示されるように、外周面側に形成される第1羽根10の内方突起部10xと、第1羽根10の内周において同じ回転軸上に配置される第2羽根20の外方突起部20xと、を含んで構成される。内方突起部10xは、第1羽根10の内側の中空部分で周方向に突出した領域である。外方突起部20xは、第2羽根20の外側かつ第1羽根10の内側で周方向に突出した領域である。周方向(回転軸周りの方向)において隣り合う複数の内方突起部10xの間が、第1羽根10と第2羽根20の相互の回転における遊びであるバックラッシュ32となっている。そして本実施形態の通風量制御装置100のカップリング30aは、このバックラッシュ32を含むものとなっている。なお図4では回転方向に2箇所のバックラッシュ32が設けられているが、これに制限されるものではない。すなわち後述のような第1羽根10と第2羽根20の回転タイミングのズレを生じさせる機能を達成できる限りにおいて、バックラッシュ32の設置数に制限はない。
【0020】
(回転開始時における状態遷移)
図4(a)~(c)を用いて、第1羽根10と第2羽根20とが回転を開始する場合の各部材の状態を説明する。図4(a)は、図1(a)及び図2(a)と対応するカップリング30aの内部を示す断面図である。
【0021】
図1(a)、図2(a)及び図4(a)は、第1羽根10と前記第2羽根20とが回転軸O方向から見て相互に重なる状態(第1状態)となっている。図4(a)に示されるとおり、回転内周側の第2羽根20は、バックラッシュ32の回転方向先端32aに位置して停止している。なお回転方向は時計回り(図に示すR方向)とする。次いで図4(b)に示すとおり、回転外周側の第1羽根10は、駆動モータM1からの駆動力を受け、回転軸O周りに時計回りR方向に回転する。
【0022】
このとき第2羽根20は、駆動モータM1に接続されていないため、慣性の法則に従って停止状態を継続する。その結果、第2羽根20は、バックラッシュ32の回転方向後端32bに位置することになる。なお図4(b)は、図1(b)及び図2(b)と対応している。図4(b)において、第1羽根10と第2羽根20は、回転軸O方向から見て相互に重ならない状態(第2状態)となっている。言い換えれば、第2状態は、第1羽根10と第2羽根20とが展開した状態ということができる。なお、第2状態の場合、回転軸O方向から見て上述の第1状態よりも羽根の投影面積が大きい状態となる。
【0023】
図4(c)は、図4(b)の状態から引き続きR方向に回転を継続させた場合の図である。図4(c)に示すように、第2羽根20がバックラッシュ32の回転方向後端32bに位置したままで、駆動モータM1の駆動力により第1羽根10が回転する。その結果、第1羽根10の内方突起部10xと、第2羽根20の外方突起部20xの係合により、第1羽根10と第2羽根20が一体化したまま回転を継続することとなる。また、第1羽根10と第2羽根20とは第2状態で保持され続ける。
【0024】
上述のとおり、本実施形態における通風量制御装置100は、カップリング(第1切替機構30)を上記の如き構成とすることにより、第1羽根10と第2羽根20の回転開始のタイミングにズレを生じさせる事ができる。それにより、図1(a)に示されるような第2羽根20が第1羽根10の後方に重なって位置する状態(第1状態)と、図1(b)に示されるような第1羽根10と第2羽根20が重ならない状態(第2状態)とを切り替える事ができる。
【0025】
(回転停止時における状態遷移)
次に、第1羽根10と第2羽根20とが第2状態を保ったまま回転している状態から、回転が停止するまでの流れを以下に説明する。すなわち、まず駆動モータM1が回転を停止することにより、第1羽根10の回転が停止する。一方で第2羽根20は駆動モータM1に接続されていないことから、慣性力に従って回転を継続する。そして、第2羽根20は、バックラッシュ32の回転方向先端32aで第1羽根10の内方突起部10xに突き当たることにより、回転を停止する。この際、第1羽根10と第2羽根20の位置関係としては、第1状態となっている。回転を停止した後において、走行中の車両VHが受ける走行風RWの風圧により、第1羽根10と第2羽根20の位置関係は、第2状態に移行することなく、第1状態に維持される。
【0026】
(駆動モータM1)
本実施形態において、駆動モータM1としては、例えばサーボモータ、スピンドルモータ、等の公知の汎用モータを適宜使用してもよい。
【0027】
(車両への適用)
本実施形態の通風量制御装置100は、図5に示すように車両VHに適用され得る。具体的には、車両VHの走行時・停止時を問わず、ファンの作動が必要な場合にはファンを回転させることができると共に、ファン回転時に第2状態を維持するため、翼面積を最大限発揮することができる。一方で、車両VHの走行時であって、ファンが停止している場合には、走行風によって第1状態が保持されると共に、ファンの投影面積が最小となるため、通風抵抗を最小限とすることができる。すなわち本実施形態の通風量制御装置100は、ファン停止時には投影面積を相対的に小さくできると共に、ファン作動時には有効な翼面積を相対的に大きくできる。
【0028】
本実施形態の通風量制御装置100は、図5に示すように車両のエンジン冷却のための冷却経路に適用され得る。すなわち、本実施形態の車両VHは、エンジンEGの冷却のためのラジエターRD及び冷却管CPを備えている。冷却管CP中にはウォーターポンプWPにより冷却水が循環される。エンジンEGの近傍には通風量制御装置100が配置され、走行中の車両VHが受ける走行風RWの通風量が制御される。具体的には、通風量制御装置100の駆動モータM1を回転させることにより第1羽根10が回転すると共に、この回転の作用によって第2羽根20が展開して第2状態となる。これにより例えば駆動モータM1の回転数等に応じて効果的にエンジンEGを冷却する事が可能となる。なおラジエターRDに対する各羽根の大きさや設置個数は、求められる通風量等に基づいて適宜変更が可能である。
【0029】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係る通風量制御装置200について図6などを用いて説明する。なお第二実施形態に係る通風量制御装置200は、第1切替機構30が、第1羽根10と第2羽根20との相対位置を検出するセンサー34、及び、第1羽根10と第2羽根20が離間した第2状態で第2羽根20を軸周りに固定するクラッチ機構36、を含む点において上述の第一実施形態と相違する。そのため、上記相違点について主に説明し、既述した第一実施形態と共通する部材については共通の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図6は、第二実施形態の通風量制御装置200の側方断面図である。図7は、図6におけるC-C’断面図である。
【0031】
(センサー34)
本実施形態におけるセンサー34は、第2羽根20が展開した状態か否かを検知する機能を有する。上述したとおり、第1状態から第2状態に遷移する際に、第2羽根20における外方突起部20xの位置は、バックラッシュ32の回転方向先端32aから回転方向後端32bに遷移する。センサー34は、例えばバックラッシュ32の回転方向後端32bに設置され、第2羽根20が回転方向後端32bに近接したこと(すなわち第2羽根20が展開したこと)を検知することができる。センサー34の具体例としては、上記機能を達成する限りにおいて特に制限はなく、例えば公知の測距センサーや感圧センサー等を使用することができる。
【0032】
(クラッチ機構36)
クラッチ機構36は、第1羽根10と第2羽根20とを固定する機能を有する。さらに具体的には、クラッチ機構36は、第1羽根10と第2羽根20との相対位置(展開角度)を固定することが可能である。クラッチ機構36としては、例えば公知の電磁クラッチが適用される。これにより本実施形態では、ファンが第2状態を保持して回転している際、クラッチ機構36を作動させ第1羽根10と第2羽根20との相対位置を固定し、すなわち第1羽根10と第2羽根20とを一体化することができる。その結果、駆動モータM1の回転と第2羽根20の回転が同期されることとなる。なおクラッチ機構36としては、電磁クラッチに制限されるものではなく、第1羽根10と第2羽根20とを固定可能な機能を有する機構であれば適用することが可能である。クラッチ機構36として、具体的にはかみ合いクラッチや油圧・機械的に動作する摩擦クラッチ等を適用してもよい。
【0033】
(第二実施形態:回転開始時における状態遷移)
第二実施形態に係る通風量制御装置200における回転開始時の流れは、上述の第一実施形態に係る回転開始時の流れと同様である。すなわち、まず、駆動モータM1が回転を開始することにより、第1羽根10が回転を開始する。第2羽根20は、走行風及び慣性の法則の影響により、上述のように第1羽根10とは異なるタイミングで回転を開始する。
【0034】
(第二実施形態:回転停止時における状態遷移)
第二実施形態に係る通風量制御装置200において、回転停止時の状態遷移例についても、上述の第一実施形態に係る回転停止時の流れと同様である。まず駆動モータM1が停止すると共に第1羽根10の回転が停止する。一方で第2羽根20は、走行風及び慣性の法則に基づいて回転を継続しようとするが、第1羽根10のバックラッシュ32の回転方向先端32aに突き当たることにより回転を停止する。
【0035】
(シャッター機能)
第二実施形態に係る通風量制御装置200は、上記構成により、シャッターとしての機能を兼ね備えることができる。具体的には、第1羽根10及び第2羽根20を第2状態で保持したまま駆動モータM1の回転を行わない状態を取ることで、走行風を遮断するシャッター機能を実現できる。上記状態を実現する方法として、まず、通風量制御装置200の回転が停止した状態で、センサー34により、第2羽根20が展開した状態ではないことを検知する。次に、駆動モータM1を駆動させて、第1羽根10と第2羽根20が展開するように回転させる。このとき再度センサー34により、第2羽根20が展開状態であることを検知してもよい。駆動モータM1の駆動を停止し、直後にクラッチ機構36を作動させることにより、第2羽根20の位置を固定し第2状態を保持させることができる。このように通風量制御装置200は、第1羽根10と第2羽根20を展開した第2状態を保持することにより、走行風の通風を抑制して、シャッターとしての機能を達成することができる。なお、ファンが第2状態を保持して回転している際に駆動モータM1の回転を停止させ、慣性力に従って回転する第2羽根20に対してクラッチ機構36を作動させることにより、このシャッター機能を達成する事も可能である。
【0036】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態に係る通風量制御装置200の奏する効果は、以下のとおりである。すなわち、本実施形態の通風量制御装置200は、上述のクラッチ機構36を備えることにより、回転羽根をシャッターとして使用することができる。すなわち、従来の車両では、低負荷走行時の通風量抑制による走行抵抗低減やエンジンの暖気促進を効果的に行うために、ラジエター前方にグリルシャッターが配置される場合があった。このようなグリルシャッターの機能は、一般的にラジエター後方に配置される冷却ファンの機能と相反するものと言うことができる。これに対して本実施形態における通風量制御装置200は、相互に反する冷却ファンの機能とシャッターの機能とを単一の部品で兼ね備えることができ、車両の軽量化に貢献する事ができる。
【0037】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係る通風量制御装置300について図8などを用いて説明する。なお第三実施形態に係る通風量制御装置300は、第1羽根10と第2羽根20とを、上述した第1状態と第2状態だけではなく、第1状態と第2状態の間の任意の角度を有する第3状態に回転移動させるための角度調整機構をさらに有する点において、上述の第二実施形態と相違する。そのため、以下では相違点について主に説明し、既述の形態と共通する部材については共通の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
(角度調整機構38)
図8は第三実施形態の通風量制御装置300の側方断面図であり、図9は第三実施形態の通風量制御装置300の正面図である。
第三実施形態に係る通風量制御装置300は、図8に示されるように、クラッチ機構36と駆動モータM1との間に、角度調整機構38を備える。角度調整機構38は、クラッチ機構36の回転を制御する機能を有する。角度調整機構38としては、具体的には、公知のステッピングモータを適用する事ができる。クラッチ機構36をステッピングモータで回転制御することにより、第1羽根10と第2羽根20の関係(開度)を、第1状態と第2状態の間の任意の角度を有する第3状態に遷移させることができる。
【0039】
具体的には、第1羽根10と第2羽根20が停止中であって、クラッチ機構36が作用している(第1羽根10と第2羽根20の相対位置が第2状態である)際に、角度調整機構38としてのステッピングモータ38aがクラッチ機構36を回転軸周りに回転させて、第1羽根10と第2羽根20の相対位置を変化させる。なお第1羽根10と第2羽根20の相対位置は、上述したバックラッシュ32の範囲内において変化させることができる。その結果、第1羽根10と第2羽根20とを、第1状態と第2状態との間の任意の角度を有する第3状態で固定することができる。なお図9においては、第3状態における第1羽根10と第2羽根20との相対位置が実線で示される。
【0040】
(第三実施形態の効果)
第三実施形態に係る通風量制御装置300の奏する効果は、以下のとおりである。すなわち、本実施形態の通風量制御装置300は、クラッチ機構36と共に角度調整機構38を備えることにより、第1羽根10と第2羽根20との相対位置をバックラッシュ32の大きさに関わらず多段階で変化させることができる。この構成により、第三実施形態に係る通風量制御装置300をシャッターとして使用する場合に、羽根の回転を停止した状態で羽根の投影面積を増加させ又は減少させることにより、通風量を制御することができる。
【0041】
また、本実施形態の通風量制御装置300は、角度調整機構38を備えることにより、第2羽根20をクラッチ機構36で押さえた状態から自在に第1羽根10と第2羽根20との相対位置(角度)を調整することができる。すなわち通風量制御装置300におけるファンは、第1状態、第2状態、又は第3状態のいずれの状態からも、別の状態に素早く遷移する事ができる。また通風量制御装置300は、第1羽根10と第2羽根20との位相又は角度を、多段階に制御することができる。
【0042】
<第四実施形態>
本開示の第四実施形態に係る通風量制御装置400について図10などを用いて説明する。なお第四実施形態に係る通風量制御装置400は、第2羽根20と駆動モータM1との間に、第3羽根40を備える点において、上述の実施形態と相違する。そのため、以下ではこの相違点について主に説明し、既述した形態と共通する部材については共通の符号を付してその説明を省略する。なお図10は、第四実施形態の通風量制御装置400の側方断面図である。また図11は、図10におけるD-D’断面図及びE-E’断面図である。
【0043】
図10図11に示すように、通風量制御装置400は、第1羽根10の後方に第2羽根20を備えると共に、第2羽根20と駆動モータM1との間に第3羽根40を備える。ここで第1羽根10は駆動モータM1に接続されており、第2羽根20と第3羽根40は駆動モータM1には直接的に接続されていない。第3羽根40は、回転軸O回りの回転により、第1羽根10又は第2羽根20に対して重なる位置と展開した位置の両方を取り得る。図11(a)では、第1羽根10、第2羽根20及び第3羽根40が全て展開した状態が示される。一方で図11(b)では、第1羽根10の後方に第2羽根20及び第3羽根40が全て重なった状態が示される。
なお本実施形態では、第2羽根20と第3羽根40との相対位置において、軸方向から見て相互に重なる状態(図11(b))を「第4状態」と称する。さらに前記第4状態より投影面積が大きい状態を「第5状態」と称するものとする。なお図11に示されるブレード形状は、上述の実施例とは異なるがこれに限られるものではなく、求められるファン効率やシャッター効果に基づいて、公知のブレード形状を適宜用いることができる。
【0044】
本実施形態の通風量制御装置400は、第1羽根10と第2羽根20との間の相対位置を切り替える第1切替機構30と、第2羽根20と第3羽根40との間の相対位置を切り替える第2切替機構50とを備える。第2切替機構50は、上述した第1切替機構30と同様に、回転方向に設けられたバックラッシュ32を含むカップリングを使用してもよい。第1羽根10は、駆動モータM1に接続されており、駆動モータの駆動力により回転及び回転停止を行う。第2羽根20は、第1切替機構30により回転軸周りの回転及びその回転停止を行い得る。第3羽根40は、第2切替機構50により回転軸周りの回転及びその回転停止を行い得る。クラッチ機構36は第3羽根40を固定する機能を有する。図示は省略するが、本実施形態の通風量制御装置400は、第三実施形態で説明したごとき角度調整機構をさらに有してもよい。
【0045】
なお図10に示す第四実施形態に係る通風量制御装置400は、クラッチ機構36を有し、角度調整機構38は有しない構成となっているが、これに限られるものではない。すなわち、通風量制御装置400は、クラッチ機構36を有しない構成であっても良いし、クラッチ機構36と角度調整機構38を共に備える構成であってもよい。
【0046】
また図10及び図11に示す通風量制御装置400は、第1羽根~第3羽根の合計3体の羽根を備えるが、これに限られるものではなく、4体以上の羽根を備えていてもよい。
【0047】
<変形例1>
上述した通風量制御装置の変形例について図を用いて説明する。図13は、上述の実施形態の第1の変形例を示す側面図である。図13(b)は、第1羽根10と第2羽根20が回転軸Oから見て相互に重なる第1状態を示す図である。図13(a)は、第1羽根10と第2羽根20が、回転軸Oから見て第1状態より投影面積が大きい第2状態を示す図である。図13に示されるように、第1羽根10のブレードは、第2羽根20側に一部が突出している。一方で第2羽根20のブレードは、第1羽根10側に一部が突出している。第1羽根10のブレードと第2羽根20のブレードは、同様の角度で湾曲していてもよい。各羽根のブレードをこのような形状とすることにより、第1状態とした際に第1羽根10のブレードと第2羽根20のブレードを周方向で重なり合わせる事が可能となる。
【0048】
変形例1の構成とした場合、第1実施形態と比較した効果は以下のとおりである。すなわち、第1実施形態で示した第1状態では、第1羽根10のブレードと第2羽根20のブレードは軸方向の前後で重なり合うところ、本変形例1では第1羽根10のブレードと第2羽根20のブレードは周方向に重なり合うため、通風量制御装置全体の奥行き(Y方向における長さ)を短くでき、省スペース化に貢献し得る。
【0049】
<変形例2>
さらに、本実施形態の通風量制御装置に適用可能な、他の変形例について図を用いて説明する。本変形例2は、複数のブレード(「小ブレード」と称する)を展開することにより1枚のブレード(「大ブレード」と称する)を構成できる点において上述の例と相違する。図14(a)は、本変形例のブレードを回転軸Oの正面から見た場合の模式図である。図14(b)及び(c)は、同ブレードを側方から見た場合の模式図である。図14(a)~(c)に示すとおり、点線の小ブレード20a及び40aの2枚を、実線の小ブレード10aの後方に収容し(図14(c))、又は収容した状態から展開(図14(b))することができる。小ブレードを収容した状態は(図14(c))、展開した状態(図14(b))よりも羽根の投影面積が小さいといえる。なお図14(d)に示すように、大ブレードを構成する小ブレード同士は、各々において嵌合やボルト締めなど公知の連結手段で連結されてもよい。
なお図14においては3枚の小ブレードにより1枚の大ブレードが構成される例が示されるが、これに限られるものではなく2枚又は4枚以上の任意の枚数で大ブレードを構成してもよい。本変形例2の構成においても、上述の実施形態と同様に通風量制御の効果を得ることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、かかる例に限定されるものではない。すなわち当業者であれば上記した実施形態に対して更なる修正を試みることは明らかであるものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
100,200,300,400:通風量制御装置、10:第1羽根、10a,10b,10c,10d:ブレード、20:第2羽根、20a,20b,20c,20d: ブレード、30:第1切替機構、32:バックラッシュ、32a:回転方向先端、32b:回転方向後端、34:センサー、36:クラッチ機構、38角度調整機構、40:第3羽根、50:第2切替機構、O:回転軸、M1:駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14