IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢後 智恵の特許一覧

<>
  • 特開-天井・床面兼用の害虫捕捉具 図1
  • 特開-天井・床面兼用の害虫捕捉具 図2
  • 特開-天井・床面兼用の害虫捕捉具 図3
  • 特開-天井・床面兼用の害虫捕捉具 図4
  • 特開-天井・床面兼用の害虫捕捉具 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044882
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】天井・床面兼用の害虫捕捉具
(51)【国際特許分類】
   A01M 3/04 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A01M3/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150675
(22)【出願日】2022-09-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】522374559
【氏名又は名称】矢後 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢後 智恵
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA16
2B121AA17
2B121BA12
2B121BB32
2B121EA01
2B121EA30
2B121FA02
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】床面の害虫も天井の害虫も共通の1つの捕捉具で捕捉でき、捕捉後は姿が見えない状態で処理できる。
【解決手段】
上粘着面2を備えた横板部3、及び前粘着面4を備えた縦板部5を備えた側面視が略逆L字型の捕虫部6と、鉛直方向に沿って伸縮可能な支持棒部7と、縦板部5の下端Tを把持する把持状態と前記下端Tを解放する解放状態とを切り替え可能な把持切替部8とを有し、天井Cを這う害虫Gを上粘着面2に粘着させて捕捉可能とし、床面Fを這う害虫を前粘着面4に粘着させて捕捉可能とする天井・床面兼用の害虫捕捉具1であって、上粘着面2及び前粘着面4を露出させる露出状態と、上粘着面2又は前粘着面4の粘着により捕捉された害虫Gを隠蔽する隠蔽状態とを、切り替え可能な隠蔽機構が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に延設され上側に害虫を捕捉するための上粘着面を備えた横板部、及び、略鉛直に延設されて前側に害虫を捕捉するための前粘着面を備えた縦板部、を備えた、側面視が略逆L字型の捕虫部と、
前記捕虫部の下方に略鉛直方向に延設され、当該鉛直方向に沿って伸縮可能な支持棒部と、
前記支持棒部の上端に設けられ、前記縦板部の下端を把持する把持状態と前記縦板部の下端を解放して別の縦板部に付け替え可能とする解放状態とを切り替え可能な把持切替部と、
を有し、
前記支持棒部を略鉛直方向の姿勢とすることで、建造物の天井を這う害虫を前記横板部の前記上粘着面に粘着させて捕捉可能とし、
前記支持棒部を略水平方向の姿勢とすることで、建造物の床面を這う害虫を前記縦板部の前記前粘着面に粘着させて捕捉可能とする、
天井・床面兼用の害虫捕捉具であって、
前記上粘着面及び前記前粘着面を露出させて前記害虫を粘着可能な露出状態と、前記上粘着面又は前記前粘着面の粘着により捕捉された前記害虫を隠蔽する隠蔽状態と、を切り替え可能な隠蔽機構を設けた
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具。
【請求項2】
請求項1記載の天井・床面兼用の害虫捕捉具において、
前記隠蔽機構は、
前記横板部のうち前記縦板部との接続側と反対側の端部にて当該横板部に接続された第1シール部材であって、前記捕虫部の前記略逆L字型の形状に倣うように前記横板部の前記上粘着面と前記縦板部の前記前粘着面とを被う被覆位置から、前記端部を接続した状態でめくり上げられた後に前記略L字型の内方空間へと収納される収納位置へ、と切り替えられる前記第1シール部材であり、
前記収納位置にある前記第1シール部材により前記露出状態を実現するとともに、当該露出状態において前記上粘着面又は前記前粘着面に貼り付いて捕捉された前記害虫を覆うように前記収納位置から前記被覆位置に戻された前記第1シール部材により前記隠蔽状態を実現する
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具。
【請求項3】
請求項1記載の天井・床面兼用の害虫捕捉具において、
前記隠蔽機構は、
前記捕虫部の前記横板部を、前記縦板部側の端部において当該縦板部に対し回動可能に接続し、かつ、当該回動可動な範囲の途中の前記縦板部に対し略直角となる位置にて前記略逆L字型をなす姿勢で保持可能な、支持機構であり、
前記支持機構は、
前記横板部を前記略直角となる位置として前記露出状態を実現するとともに、前記略直角となる位置から回動させて、前記露出状態にて前記上粘着面又は前記前粘着面に貼り付いて捕捉された前記害虫を挟み込みつつ前記縦板部へ近接又は密着させることにより前記隠蔽状態を実現する
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具。
【請求項4】
請求項3記載の天井・床面兼用の害虫捕捉具において、
前記天井・床面兼用の害虫捕捉具の使用前に前記捕虫部の前記上粘着面及び前記前粘着面を被い、前記天井・床面兼用の害虫捕捉具の使用時には当該上粘着面及び当該前粘着面から引き剥がされて分離される、第2シール部材をさらに有し、
前記捕虫部は、前記使用前は、
前記第2シール部材が粘着された状態で、前記支持機構による回動により前記縦板部のうち前記前粘着面の反対側の第1面と前記横板部のうち前記上粘着面の反対側の第2面とが互いに近接又は密着した、折り畳み姿勢とされている
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具。
【請求項5】
請求項4記載の天井・床面兼用の害虫捕捉具において、
前記第2シール部材は、
前記上粘着面及び前記前粘着面への粘着状態においてそれら上粘着面及び前粘着面の外方へはみ出して粘着しない、把持用舌片部を有しており、
前記把持用舌片部は、
前記捕虫部の折り畳み姿勢においては、前記折り畳まれて近接又は密着する前記第1面と前記第2面との間に挟み込まれて収納されており、
前記捕虫部が前記折り畳み姿勢から前記第1面と前記第2面とが離間する方向に開き操作されると、前記挟み込まれた状態から解放されて前記捕虫部の側方に突出するように現出する
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井・床面兼用の害虫捕捉具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴキブリ等の害虫を捕獲するための駆除具が知られている。例えば、特許文献1の第1図、第2図、第4頁1~8行目、第6頁第7~11行目等には、柄1の先端に設けた略U字状の支持部2に、粘着性を備えたシート状体4を張り渡すことで、叩いた害虫を下に落とすことなくシート状体4に貼りつかせる、害虫等の駆除具について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-201578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術における害虫等の駆除具によれば、水平に構えることで床上にいる害虫を貼りつかせて捕捉駆除することができるが、その構造的に、天井にいる害虫を駆除することはできない。また、害虫の外観に対して不快感や恐怖感を感じるユーザが、捕捉後の害虫の姿を極力見ないで処理したいと要望している点については特に配慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、床面の害虫も天井の害虫も共通の1つの捕捉具で捕捉でき、捕捉後は姿が見えない状態で処理できる、天井・床面兼用の害虫捕捉具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、略水平に延設され上側に害虫を捕捉するための上粘着面を備えた横板部、及び、略鉛直に延設されて前側に害虫を捕捉するための前粘着面を備えた縦板部、を備えた、側面視が略逆L字型の捕虫部と、前記捕虫部の下方に略鉛直方向に延設され、当該鉛直方向に沿って伸縮可能な支持棒部と、前記支持棒部の上端に設けられ、前記縦板部の下端を把持する把持状態と前記縦板部の下端を解放して別の縦板部に付け替え可能とする解放状態とを切り替え可能な把持切替部と、を有し、前記支持棒部を略鉛直方向の姿勢とすることで、建造物の天井を這う害虫を前記横板部の前記上粘着面に粘着させて捕捉可能とし、前記支持棒部を略水平方向の姿勢とすることで、建造物の床面を這う害虫を前記縦板部の前記前粘着面に粘着させて捕捉可能とする、天井・床面兼用の害虫捕捉具であって、前記上粘着面及び前記前粘着面を露出させて前記害虫を粘着可能な露出状態と、前記上粘着面又は前記前粘着面の粘着により捕捉された前記害虫を隠蔽する隠蔽状態と、を切り替え可能な隠蔽機構を設けた
ことを特徴とする天井・床面兼用の害虫捕捉具であることを特徴としている。
【0007】
本願発明においては、捕虫部が、前粘着面を備えた縦板部と上粘着面を備えた横板部とを含む、略逆L字状形状を備えている。
【0008】
ユーザが例えば床面を移動している害虫(例えばゴキブリ、アリ、カメムシ、クモ、蛾、その他の昆虫等。以下同様)を駆除したい場合は、捕虫部を下方から支持する支持棒部を略水平方向の姿勢とする。これにより、この姿勢において床面の上方にて床面と平行に近い略水平向きとなった縦板部の前粘着面を床面に対向させ、床面上にいる害虫に対し上方から前粘着面を振り下ろして粘着させることで、当該害虫を捕捉することができる。
【0009】
ユーザが例えば天井を移動している害虫を駆除したい場合は、捕虫部を下方から支持する支持棒部を略鉛直方向の姿勢とする。これにより、この姿勢において天井の下方において天井と平行に近い略水平向きとなった横板部の上粘着面を天井に対向させ、天井にいる害虫に対し下方から上粘着面を突き上げて粘着させることで、当該害虫を捕捉することができる。このとき特に、支持棒部が鉛直方向に沿って伸縮可能に構成されていることにより、天井までの高さに応じて支持棒部の長さを適宜に調整することで、上粘着面を天井の害虫まで確実に届かせることができる。
【0010】
また本願発明においては、隠蔽機構が設けられており、露出状態と隠蔽状態とを切り替え可能に構成されている。露出状態に切り替えることで前粘着面及び上粘着面を露出させることができるので、その露出した前粘着面又は上粘着面により上記のようにして床面又は天井の害虫を粘着して捕捉することができる。捕捉後は、上記露出状態から隠蔽状態に切り替えることで、上記上粘着面又は前粘着面により捕捉された害虫を隠蔽することができる。そして本願発明においては、支持棒部の上端に設けられた把持切替部が、捕虫部の縦板部の下端を把持する把持状態と縦板部の下端を解放する解放状態とを切り替え可能となっている。
【0011】
これにより、ユーザは、上記のように捕虫部で害虫を捕捉してその捕捉された害虫を隠蔽機構で隠蔽して姿を見えないようにした後、その見えない状態のまま、捕虫部を支持棒部から解放して切り離し、ゴミとして始末することができる。また隠蔽された状態の害虫に対して外力を加えて押しつぶすこともできる。
【0012】
以上のように、本願発明によれば、床面の害虫も天井の害虫も1つの害虫捕捉具で確実に捕捉することができ、いずれの害虫についても捕捉後はその姿を見えない状態のままで処理することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、床面の害虫も天井の害虫も共通の1つの捕捉具で捕捉でき、捕捉後は姿が見えない状態で処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る害虫捕捉具の斜視図である。
図2図1の害虫捕捉具の使用方法を説明する概念図である。
図3】害虫捕捉具の使用手順の一例を示す概念図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る害虫捕捉具の斜視図である。
図5図4の害虫捕捉具の使用手順の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1図3により説明する。
【0017】
図1に本発明の第1実施形態に係る害虫捕捉具1の斜視図を示す。図1に示す方角は、鉛直方向に平行な上下方向と、水平方向に平行な前後方向及び左右方向とからなり、これらの方向は互いに直交する。同様の方角が図2図5にも適宜適用される。
【0018】
害虫捕捉具1は、天井・床面兼用の害虫捕捉具1であって、捕虫部6と、支持棒部7と、把持切替部8とを有する。捕虫部6は、横板部3と縦板部5とを備える。横板部3は略水平に延設され、上側の面に害虫を捕捉するための上粘着面2を備える。縦板部5は略鉛直に延設され、前側の面に害虫を捕捉するための前粘着面4を備える。横板部3と縦板部5とは、側面視が略逆L字型となるように一体的に成形され、捕虫部6を構成する。なお、横板部3と縦板部5とは、それぞれ別個の板状の部材で、互いに接着剤等で接着されていてもよい。
【0019】
横板部3及び縦板部5の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック等の樹脂素材や、強度のある紙素材等を用いることができる。上粘着面2及び前粘着面4としては、公知の粘着面を用いることができる。
【0020】
支持棒部7は、捕虫部6の下方に略鉛直方向に延設され、当該鉛直方向に沿って伸縮可能となっている。この伸縮構造としては公知の構造を適用することができる。支持棒部7の上端には把持切替部8が設けられ、支持棒部7の下端には握り部10が設けられている。支持棒部7と把持切替部8と握り部10とは互いに接続され、固定されている。
【0021】
把持切替部8は、縦板部5の下端を把持する把持状態と、縦板部5の下端を解放して別の縦板部5に付け替え可能とする解放状態とを切り替え可能となっている。この図では、把持切替部8は把持状態にある。
【0022】
把持切替部8は公知の構造で構成することができる。一例として、ここではは、把持切替部8は2個の把持爪11と、スライドスイッチ12と、把持アーム13とを備え、把持爪11はスライドスイッチ12に連動して動作可能となっている。スライドスイッチ12を下方向に下ろすと、2個の把持爪11が縦板部5の下端を前後方向から挟みつけ把持する。スライドスイッチ12を上方向に上げると、2個の把持爪11が縦板部5の下端を解放し、縦板部5は把持爪11を介して支持棒部7から分離する。このためスライドスイッチ11を操作するだけで支持棒部7の上端に設けられた把持切替部8に、捕虫部6を取り付けたり取り外したりすることができる。把持切替部8の構成は上述に限られずその他の公知の構成を用いてもかまわない。
【0023】
害虫捕捉具1には、上粘着面2及び前粘着面4を露出させて害虫を粘着可能な露出状態と、上粘着面2又は前粘着面4の粘着により捕捉された害虫を隠蔽する隠蔽状態と、を切り替え可能な隠蔽機構が設けられる。この図の害虫捕捉具1は露出状態にある。この図では、煩雑を避けるため、図示を省略しているが、害虫捕捉具1には、隠蔽機構の一例として、後述する第1シール部材9が設けられている。
【0024】
図2に害虫捕捉具1の使用方法を説明する概念図を示す。図2(a)は床面Fの害虫Gを捕捉する場合、図2(b)は天井Cの害虫Gを捕捉する場合の概念図である。図2(a)に示すように、ユーザMは害虫捕捉具1の支持棒部7を略水平方向の姿勢とすることで、建造物の床面Fを這う害虫Gを縦板部5の前粘着面4に粘着させて捕捉することができる。また、図2(b)に示すように、ユーザMは害虫捕捉具1の支持棒部7を略鉛直方向の姿勢とすることで、建造物の天井Cを這う害虫Gを横板部3の上粘着面2に粘着させて捕捉することができる。このようにして害虫捕捉具1は天井・床面兼用の害虫捕捉具1とすることができる。
【0025】
図3に害虫捕捉具1の使用手順の一例を示す概念図を示す。図3(a)は使用前の害虫捕捉具1の補虫部6近傍を左方から見た側面図である。害虫捕捉具1の補虫部6は第1シール部材9を備え、第1シール部材9は、前後方向において横板部3のうち縦板部5との接続側と反対側の端部Tにて、公知の接着剤等により、横板部3に接続されている。この図において、第1シール部材9は、捕虫部6の前記略逆L字型の形状に倣うように横板部3の上粘着面2と縦板部5の前粘着面4とを被う被覆位置に配置されている。
【0026】
第1シール部材9は例えばフィルム状の樹脂や紙、アルミ等で構成されている。またシリコン等の樹脂により表面処理された紙等であってもよい。第1シール部材9は害虫を隠蔽する目的から不透明であることが好ましく、すぐに破れたりすることがない程度の強度や耐水性を有することが好ましい。
【0027】
害虫捕捉具1の使用時には、図3(b)に示すように、第1シール部材9を縦板部5の下端からめくり上げる。そのまま第1シール部材9をめくり上げると、図3(c)に示すように、第1シール部材9は、横板部3の前記端部Tと接続された状態で、捕虫部6の前記略L字型の内方空間に向けて下垂し、少なくともその一部が前記内方空間に収納される収納位置となる。これにより、害虫捕捉具1の露出状態が実現され、害虫を粘着可能となる。
【0028】
なお、この手順の例では、捕虫部6を把持切替部8に取り付けた後、第1シール部材9をめくり上げて露出状態にしているが、捕虫部6を露出状態とした後に把持切替部8に取り付けてもよい。
【0029】
図3(c)に示した露出状態の害虫捕捉具1を用いて、図2(a)に示した方法により、床面Fの害虫Gを前粘着面4に粘着して捕捉した状態が、図3(d)に示される図である。
【0030】
図3(e)において、前粘着面4に貼り付いて捕捉された害虫Gを覆うように、第1シール部材9を収納位置から被覆位置に戻すことにより、捕捉された害虫Gが見えないように隠蔽することで、隠蔽状態が実現される。
【0031】
また、図3(c)に示した露出状態の害虫捕捉具1を用いて、図2(b)に示した方法により、天井Cの害虫Gを上粘着面2に粘着して捕捉した状態が、図3(f)に示される図である。
【0032】
図3(g)において、上粘着面2に貼り付いて捕捉された害虫Gを覆うように、第1シール部材9を収納位置から被覆位置に戻すことにより、捕捉された害虫Gが見えないように隠蔽することで、隠蔽状態が実現される。
【0033】
ユーザは図3(e)及び図3(g)において隠蔽状態となった害虫捕捉具1の捕虫部6を、把持切替部8から解放して取り外し、ごみとして破棄すればよい。
なお、図3(e)及び図3(g)では、説明のため、害虫Gの姿が見えるように図示しているが、実際には、害虫は着面4又は上粘着面2と、第1シール部材9との間に全方向から密閉され、その姿は全方向から隠蔽されるとともに、脱出できないようになっている。
【0034】
<第1実施形態の効果>
本実施形態においては、捕虫部6が、前粘着面4を備えた縦板部5と上粘着面2を備えた横板部3とを含む、略逆L字状形状を備えている。
【0035】
図2に示したように、ユーザMが例えば床面Fを移動している害虫G(例えばゴキブリ、アリ、カメムシ、クモ、蛾、その他の昆虫等。以下同様)を駆除したい場合は、捕虫部6を下方から支持する支持棒部7を略水平方向の姿勢とする。これにより、この姿勢において床面Fの上方にて床面Fと平行に近い略水平向きとなった縦板部5の前粘着面4を床面Fに対向させ、床面F上にいる害虫Gに対し上方から前粘着面4を振り下ろして粘着させることで、当該害虫Gを捕捉することができる。
【0036】
ユーザが例えば天井Cを移動している害虫Gを駆除したい場合は、捕虫部6を下方から支持する支持棒部7を略鉛直方向の姿勢とする。これにより、この姿勢において天井Cの下方において天井Cと平行に近い略水平向きとなった横板部3の上粘着面2を天井Cに対向させ、天井Cにいる害虫Gに対し下方から上粘着面2を突き上げて粘着させることで、当該害虫Gを捕捉することができる。このとき特に、支持棒部7が鉛直方向に沿って伸縮可能に構成されていることにより、天井Cまでの高さに応じて支持棒部7の長さを適宜に調整することで、上粘着面2を天井の害虫Gまで確実に届かせることができる。
【0037】
また本実施形態においては、隠蔽機構が設けられており、露出状態と隠蔽状態とを切り替え可能に構成されている。露出状態に切り替えることで前粘着面4及び上粘着面2を露出させることができるので、その露出した前粘着面4又は上粘着面2により上記のようにして床面F又は天井Cの害虫Gを粘着して捕捉することができる。捕捉後は、上記露出状態から隠蔽状態に切り替えることで、上記上粘着面2又は前粘着面4により捕捉された害虫Gを隠蔽することができる。そして本実施形態においては、支持棒部7の上端に設けられた把持切替部8が、捕虫部6の縦板部5の下端を把持する把持状態と縦板部5の下端を解放する解放状態とを切り替え可能となっている。
【0038】
これにより、ユーザは、上記のように捕虫部6で害虫Gを捕捉してその捕捉された害虫Gを隠蔽機構で隠蔽して姿を見えないようにした後、その見えない状態のまま、捕虫部6を支持棒部7から解放して切り離し、ゴミとして始末することができる。また隠蔽された状態の害虫Gに対して外力を加えて押しつぶすこともできる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、床面Fの害虫Gも天井Cの害虫Gも1つの害虫捕捉具1で確実に捕捉することができ、いずれの害虫Gについても捕捉後はその姿を見えない状態のままで処理することができる。
【0040】
また、本実施形態では特に、隠蔽機構として、横板部3のうち反縦板部5側の端部Tにて接続された第1シール部材9が用いられる。
第1シール部材9は、使用前は捕虫部6の略逆L字型の形状に倣うような被覆位置にあり、横板部3の上粘着面2と縦板部5の前粘着面4とを被っている。ユーザが捕虫を行おうとする場合は、横板部3の上記端部Tに接続された第1シール部材9を縦板部5の下部からめくり上げた後、上記略L字型の内方空間へと収納する。
【0041】
これにより前述の露出状態を実現し、上粘着面2又は前粘着面4に害虫Gを貼り付かせて捕捉したら、ユーザは、当該害虫Gを覆うように第1シール部材9を上記収納位置から上記被覆位置に戻すことで、第1シール部材9により害虫Gを隠蔽することができる。
本実施形態によれば、横板部3及び縦板部5から第1シール部材9をめくり上げたりその後に元に戻すだけで、害虫の捕捉Gとその後の隠蔽を簡便に行うことができる。
【0042】
また、捕捉した害虫Gを処理する際、たとえ間接的にであっても触りたくないというユーザも多いが、本実施形態では、めくり上げた第1シール部材9を上粘着面2と前粘着面4に貼り直すだけでよいため、やり方や害虫Gの粘着位置にもよるが、害虫Gにほとんど間接的にも触れずにこれを隠蔽及び密閉することも可能であるとともに、把持切替部8により簡単に捕虫部6を支持棒部7から解放できるので、害虫Gを粘着した使用後の捕虫部6に触れることなく、これを破棄することができる。
【0043】
本実施形態においては、把持切替部8及び握り部10と接続された支持棒部7のみを使い回し、捕虫部6は、使い捨てとなっている。
【0044】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1実施形態を図4図5により説明する。
【0045】
図4に本発明の第2実施形態に係る害虫捕捉具1′の斜視図を示す。なお、図4(a)の害虫捕捉具1′は露出状態にあり、図4(b)は捕虫部6′の上粘着面2及び前粘着面4が第2シール部材14で覆われた、非使用時の状態にある。
【0046】
害虫捕捉具1′の捕虫部6′には、隠蔽機構の別の例として、捕虫部6′の横板部3′を、縦板部5′側の端部において縦板部5′に対し回動可能に接続し、かつ、当該回動可動な範囲の途中の縦板部5′に対し略直角となる位置にて前記略逆L字型をなす姿勢で保持可能な、支持機構15が設けられている。
【0047】
支持機構15には公知の構成を採用することができる。この図では、円柱状の支持機構15の内部で、それぞれ別個の板状の部材である横板部3′と、縦板部5′とが軸心Kに沿って回動し互いに任意の角度を形成するように支持されるようになっている。前記回動は略360°の範囲で可能であるが、横板部3′が縦板部5′に対して略直角となる位置においては、支持機構15の内部に設けられた公知のロック機構によって、一旦回動が停止し、ロック位置での角度を保持可能となっている。その後、強めの力を加える事等により、ロックは解除され、再び角度を変えることができる。ここに示した支持機構15の構成は一例であり、公知の他の構成を採用してもかまわない。
【0048】
図4(b)に示すように、害虫捕捉具1′は、非使用時の状態において、捕虫部6′の上粘着面2及び前粘着面4を被う第2シール部材14を有する。第2シール部材14は、使用時には、上粘着面2及び前粘着面4から引き剥がされて捕虫部6′から分離されたのち、破棄される。第2シール部材14は例えば第1シール部材9と同様の材質で構成される。
【0049】
第2シール部材14は、上粘着面2及び前粘着面4の外方にはみ出した領域に、上粘着面2及び前粘着面4に対して粘着しない、把持用舌片部16を有する。把持用舌片部16の形状は限定されないが、この図では、略扇状となっている。第2シール部材14は、長二点鎖線で表示されるミシン目Qにより、上粘着面2に粘着している領域と、前粘着面4に粘着している領域とをそれぞれ分離できるようになっていてもよい。この図では、把持用舌片部16もそれぞれの領域に対応して二分割されるようになっている。
【0050】
これ以外の構成については第1実施形態の害虫捕捉具1と同様であるため説明は省略する。
【0051】
図5に害虫捕捉具1′の使用手順の一例を示す概念図を示す。図5(a)は、非使用時の捕虫部6′が第2シール部材14に粘着された状態で、捕虫部6′は、支持機構15による回動により縦板部5′のうち前粘着面4の反対側の第1面17と横板部3′のうち上粘着面2の反対側の第2面18とが互いに密着した折り畳み姿勢にある。第1面17と第2面18とは、近接した状態であってもよい。捕虫部6′は、例えばこの折り畳み姿勢の状態で、販売され、又は保管される。また、把持用舌片部16の少なくとも一部は、捕虫部6′の折り畳み姿勢において、第1面17と第2面18との間に挟み込まれて収納されている。把持用舌片部16は、例えば上述したミシン目Qに沿って谷折りされて収納される。
【0052】
図5(b)は、捕虫部6′の支持機構15により、縦板部5′の第1面17と横板部3′の第2面18との角度が略45°となるように回動操作した状態である。この回動操作により、把持用舌片部16のうち第1面17と第2面18との間に挟み込まれた状態にあった部分の一部が解放されて現出する。
【0053】
図5(c)は、縦板部5′の第1面17と横板部3′の第2面18との角度が略直角となる状態まで回動操作した後、角度保持した状態である。この回動操作により、把持用舌片部16のうち第1面17と第2面18との間に挟み込まれた状態にあった部分の全てが、解放されて捕虫部6′の側方に突出するように現出する。
【0054】
このように現出させた把持用舌片部16を把持し、ミシン目Qにより第2シール部材14を分離しながら、前粘着面4と上粘着面2とから、それぞれ第2シール部材14をめくり上げて剥がし、剥がした第2シール部材14は破棄する。このようにして害虫捕捉具1′の露出状態が実現する。
【0055】
次いで、露出状態となった害虫捕捉具1′により、図2に示したような方法で害虫を粘着し捕捉する。図5(d)は床面Fの害虫Gを前粘着面4に貼り付けて捕捉した状態を表す。また、図5(g)は天井Cの害虫Gを上粘着面2に貼り付けて捕捉した状態を表す。
【0056】
次いで、図5(e)及び図5(f)において、支持機構15により、横板部3′を図の矢印方向に回動させて、前粘着面4と上粘着面2とが近接又は密着するように、横板部3′と縦板部5′とを近接又は密着させる。この時、上粘着面2又は前粘着面4に貼り付いて捕捉された害虫は上粘着面2と前粘着面4とを介して横板部3′と縦板部5′との間に挟み込まれ、前記隠蔽状態が実現される。なお、図5(e)及び図5(f)では、説明のため、害虫の厚みを強調しているが、実際には、横板部3′と縦板部5′との距離はさらに近接又は前粘着面4と上粘着面2を介して実質的に密着させることができる。
【0057】
<第2実施形態の効果>
本実施形態においては、隠蔽機構として、横板部3′を縦板部5′に対し回動可能に接続するとともに、その回動途中で横板部3′を縦板部5′に対し略直角となる姿勢で保持可能な支持機構15が用いられる。
【0058】
ユーザが捕虫を行おうとする場合には、横板部3′を上記略直角となる位置に保持することで露出状態を実現し、上粘着面2又は前粘着面4に害虫Gを貼り付かせて捕捉する。その後、ユーザは、上記直角となる位置から横板部3′を回動させて、捕捉した害虫Gを挟み込むように横板部3′を縦板部5′へ近接又は密着させることで、横板部3′と縦板部5′との間に害虫Gを隠蔽することができる。
【0059】
本実施形態によれば、捕虫後に横板部3′を回動させ縦板部5′との間に害虫Gを挟み込むので、害虫の隠蔽Gを確実に行うことができる。また、害虫Gに触らずに処理することができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、捕虫部6′を使用前に折り畳み姿勢とすることにより、非使用時にはいわゆるI字型にコンパクト化することができる。また非使用時には上粘着面2及び前粘着面4を第2シール部材14で覆うことにより、不用意に周囲の他の部材に粘着してしまうのを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、第2シール部材14は、引き剥がすときにユーザが手で把持するのに便利な把持用舌片部16を備えている。
把持用舌片部16は、非使用時の捕虫部6′の折り畳み姿勢においては、互いに近接又は密着する第1面17と第2面18との間に挟み込まれて収納され、特に邪魔にならない状態になっている。
【0062】
使用時においてユーザが捕虫部6′を上記折り畳み姿勢から開き操作すると、把持用舌片部16が前述の挟み込まれた状態から解放され、開きながら離間していく第1面17と第2面18との間から、それらの外方すなわち捕虫部6′の側方に向かって突出するように現出する。その後、横板部3′が縦板部5′に対し略直角となる姿勢で保持されたら、その状態でユーザが上記現出した把持用舌片部16を手でつまんで軽くひっぱることで、第2シール部材を容易に第1面17及び第2面18から引き剥がすことができる。
【0063】
なお、第1実施形態の害虫捕捉具1と、第2実施形態の支持機構15を組み合わせることもできる。この場合、支持機構15は横板部3と縦板部5との角度を0°~90°の範囲内のみにおいて回動し、90°のみに保持可能とする。これにより、I字型のコンパクトな折り畳み姿勢で捕虫部6を販売、保管することができる。この場合の隠蔽機構は第1実施形態と同様に第1シール部材9が用いられ、使用時や使用後の処理については、最初に横板部3と縦板部5とを略直角とする以外は、第1実施形態の使い方と同様である。
【0064】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0065】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0066】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 害虫捕捉具
2 上粘着面
3 横板部
4 前粘着面
5 縦板部
6 捕虫部
7 支持棒部
8 把持切替部
9 第1シール部材
10 握り部
11 把持爪
12 スライドスイッチ
13 把持アーム
14 第2シール部材
15 支持機構
16 把持用舌片部
17 第1面
18 第2面
図1
図2
図3
図4
図5