(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044891
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】軸方向対向レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150701
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】留目 勇樹
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077AA47
2F077FF34
2F077PP26
2F077VV02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レゾルバの誤差の要因となる回転軸中心とレゾルバロータ中心のずれから生じる偏芯の影響を受けることなく角度検出可能なレゾルバ構造を提供する。
【解決手段】軸Aを中心として軸A方向上すなわちスラスト方向Tにロータ9R、ステータ9Sが配置されて構成される軸方向対向レゾルバ10とする。ロータ9Rにはロータ鉄芯3とロータトランス7、ステータ9Sにはステータ鉄芯1とステータトランス5が備えられている。ロータ鉄芯3にはコイル4が、ステータ鉄芯1にはコイル2が巻回され、またロータトランス7はボビン8に、ステータトランス5はボビン6に収容されている。ステータ鉄芯1-ロータ鉄芯3、ステータトランス5-ロータトランス7はそれぞれ、軸A方向上に対向して配置され、それにより角度検出のための磁束のやりとりはスラスト方向Tで行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ鉄芯、ロータ鉄芯、ステータトランス、およびロータトランスを備えてなるレゾルバであって、
該ステータ鉄芯-ロータ鉄芯、該ステータトランス-ロータトランスがそれぞれ軸方向上に対向して配置され、
それにより角度検出のための磁束のやりとりが軸方向で行われる
ことを特徴とする、軸方向対向レゾルバ。
【請求項2】
前記ロータ鉄芯に対して前記ステータ鉄芯の対向面の面積が大きく、かつ前記ロータトランスに対して前記ステータトランスの対向面の面積が大きく形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の軸方向対向レゾルバ。
【請求項3】
前記ステータ鉄芯およびステータトランスの各面積の大きさは、ロータに偏芯が生じても対向面積が変化しない程度の大きさであることを特徴とする、請求項2に記載の軸方向対向レゾルバ。
【請求項4】
前記ステータ鉄芯およびロータ鉄芯は、複数の鉄芯用板の積層により形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の軸方向対向レゾルバ。
【請求項5】
前記鉄芯用板は、二つのティースを有する略U字型板であることを特徴とする、請求項4に記載の軸方向対向レゾルバ。
【請求項6】
前記U字型板の積層により形成されている鉄芯は、該U字型板の内側に嵌装される腕部と、所要数の該腕部が周設される環部とからなる鉄芯支持体に固定されていることを特徴とする、請求項5に記載の軸方向対向レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸方向対向レゾルバに係り、特に、レゾルバの電気誤差を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のレゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。図示するように従来のレゾルバ510は、軸Aを中心として内側にロータ59R、その外側にステータ59Sが配置され、ロータ59Rにはロータ鉄芯53とロータトランス58、ステータ59Sにはステータ鉄芯51とステータトランス56が備えられている構成である。ロータ鉄芯53にはコイル54が、またステータ鉄芯51にはコイル52がそれぞれ巻回され、またロータトランス58にはコイル57が、ステータトランス56に収容されたボビンBにはコイル55がそれぞれ巻き付けられている。そして、ロータ鉄芯53とステータ鉄芯51、ロータトランス58とステータトランス56はそれぞれ、径方向(ラジアル方向)Rで対向し、角度検出のための磁束のやりとりは径方向Rでなされる。
【0003】
レゾルバにおける誤差低減技術については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、検出角度位置情報に含まれる誤差を低減できるレゾルバとして、サーチコイルにおける1層目のサーチコイル部とロータ側ロータリートランスとを接続する第1渡り線と、サーチコイルにおける2層目のサーチコイル部同士を接続する第2渡り線と、第1渡り線が第1コイル形成層に形成されているときに、第2渡り線を第2コイル形成層から第1コイル形成層へ誘導して第2渡り線の少なくとも一部を第1コイル形成層に形成するランドを有する、という構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-190968号公報「レゾルバ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示した従来のレゾルバ510は、軸Aの回転中心とロータ59Rとの同軸度を厳格に管理しないと、性能を満足に発揮することができない。同軸度が低い場合、回転中にコア同士の距離が変化し、電気誤差の要因となる。かかる問題の解決が求められる。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、レゾルバの誤差の要因となる回転軸中心とレゾルバロータ中心のずれから生じる偏芯の影響を受けることなく角度検出可能なレゾルバ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、対向するコア同士の距離が取り付いた位置のまま一定となり、コア同士の距離の変化が抑えられるよう、磁束のやり取りをスラスト方向で行う方式に想到した。さらには、ステータティースの面積がロータティースの面積よりも大きくなるように形成し、偏芯が生じた場合であってもロータティースの対向面がステータティースの対向面の範囲内に収まるような構造にも想到し、これらに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 ステータ鉄芯、ロータ鉄芯、ステータトランス、およびロータトランスを備えてなるレゾルバであって、該ステータ鉄芯-ロータ鉄芯、該ステータトランス-ロータトランスがそれぞれ軸方向上に対向して配置され、それにより角度検出のための磁束のやりとりが軸方向で行われることを特徴とする、軸方向対向レゾルバ。
〔2〕 前記ロータ鉄芯に対して前記ステータ鉄芯の対向面の面積が大きく、かつ前記ロータトランスに対して前記ステータトランスの対向面の面積が大きく形成されていることを特徴とする、〔1〕に記載の軸方向対向レゾルバ。
〔3〕 前記ステータ鉄芯およびステータトランスの各面積の大きさは、ロータに偏芯が生じても対向面積が変化しない程度の大きさであることを特徴とする、〔2〕に記載の軸方向対向レゾルバ。
【0009】
〔4〕 前記ステータ鉄芯およびロータ鉄芯は、複数の鉄芯用板の積層により形成されていることを特徴とする、〔3〕に記載の軸方向対向レゾルバ。
〔5〕 前記鉄芯用板は、二つのティースを有する略U字型板であることを特徴とする、〔4〕に記載の軸方向対向レゾルバ。
〔6〕 前記U字型板の積層により形成されている鉄芯は、該U字型板の内側に嵌装される腕部と、所要数の該腕部が周設される環部とからなる鉄芯支持体に固定されていることを特徴とする、〔5〕に記載の軸方向対向レゾルバ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軸方向対向レゾルバは上述のように構成されるため、これらによれば、レゾルバの誤差の要因となる回転軸中心とレゾルバロータ中心のずれから生じる偏芯の影響を受けることなく、角度検出することができる。すなわち本発明の軸方向対向レゾルバでは、ロータの偏芯が起きた場合でも、コアの動きは径方向(ラジアル方向)においてのみであり、コア間の距離の変化には繋がらない構造のため、2次の誤差成分を有効に低減することができる。
【0011】
また、ステータとロータで対向面の面積に差を設ける構成とすることにより、ロータ偏芯によるコア同士の対向面積の変化を防止することができ、偏芯があっても出力電圧の変化が起きず、検出精度への悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0012】
以上により本発明は、従来よりも、ロータと回転中心の同軸度に関してラフな公差設定が可能で、取り付け側の加工コストを下げることができる。また、削り出しによらず積層鉄芯でコアを製造する場合、それによってもコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の軸方向対向レゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。
【
図1-2】ロータとステータで対向面積に差を設けた本発明の軸方向対向レゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。
【
図2】本発明の軸方向対向レゾルバの鉄芯構成例を示す斜視の説明図である。
【
図3】本発明の軸方向対向レゾルバの鉄芯固定方法例を示す平面視の説明図である。
【
図4】従来のレゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の軸方向対向レゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。図示するように本軸方向対向レゾルバ10は、軸Aを中心として軸A方向上すなわちスラスト方向Tにロータ9R、ステータ9Sが配置されて構成される(図ではロータ9Rが上、スタータ9Sが下である)。ロータ9Rにはロータ鉄芯3とロータトランス8、ステータ9Sにはステータ鉄芯1とステータトランス6が備えられている。
【0015】
ロータ鉄芯3にはコイル4が、またステータ鉄芯1にはコイル2がそれぞれ巻回され、また、コイル7が巻かれたボビンBはロータトランス8に、コイル5が巻かれたボビンBはステータトランス6にそれぞれ収容されている。そして、ステータ鉄芯1-ロータ鉄芯3、ステータトランス6-ロータトランス8はそれぞれ、軸A方向上に対向して配置され、それにより角度検出のための磁束のやりとりは軸A方向で、すなわちスラスト方向Tで行われる。
【0016】
かかる構成の本発明軸方向対向レゾルバ10によれば、ラジアル方向ではなく、スラスト方向Tの磁束のやり取りによって角度を検出することができる。前出
図4に示した従来のレゾルバ510は、磁束をラジアル方向Rにやりとりしており、偏芯によってコア同士の距離が変化すると誤差の二次成分が増加する。しかし、本発明のように磁束のやりとりを軸方向で行うような構造とすることで、偏芯が起きてもコア同士の距離が変化しなくなるため、従来よりも偏芯を気にせずに取り付け、使用することができる。
【0017】
図1-2は、ロータとステータで対向面積に差を設けた本発明の軸方向対向レゾルバの構成を示す側断面視の説明図である。図示するように本軸方向対向レゾルバ210は、
図1により説明した構成に加え、ロータ鉄芯23に対してステータ鉄芯21の対向面の面積が大きく、かつロータトランス28に対してステータトランス26の対向面の面積が大きく形成されているものとすることができる。ステータ鉄芯21およびステータトランス26の各面積の大きさは、ロータに偏芯が生じても対向面積が変化しない程度の大きさとする。
【0018】
かかる構成により本軸方向対向レゾルバ210では、仮にロータ偏芯が生じた場合であっても、より大きなステータ鉄芯21の対向面によってロータ鉄芯23の対向面がカバーされ、かつ、より大きなステータトランス26の対向面によってロータトランス28の対向面がカバーされる。したがって、偏芯があっても、ロータ鉄芯23-ステータ鉄芯21間の対向面積にも、ロータトランス28-ステータトランス26間の対向面積にも変化が生じない。よって出力電圧の変化が起きず、検出精度に対し悪影響を及ぼすことがない。したがって、ロータと回転中心の同軸度に関してラフな公差設定が可能となる。
【0019】
図2は、本発明の軸方向対向レゾルバの鉄芯構成例を示す斜視の説明図である。図示するように本軸方向対向レゾルバのステータ鉄芯およびロータ鉄芯の形成方法は、複数の鉄芯用板K、K、・・・の積層によるものとすることができる。鉄芯用板Kとしては電磁鋼板を好適に用いることができる。また、図示するように鉄芯用板Kとしては、二つのティースKt、Ktを有する略U字型板を用い、その積層によって鉄芯を形成することができる。
【0020】
図3は、本発明の軸方向対向レゾルバの鉄芯固定方法例を示す平面視の説明図である。すなわち、上記U字型板Kの積層による鉄芯13は、所定の構造を有する鉄芯支持体Jを用いてケースに固定する方式とすることができる。図示するように鉄芯支持体Jは、U字型板の内側に嵌装される所要数の腕部Jaと、それら腕部Ja、Ja、・・・が周設される環部Jcとから形成される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の軸方向対向レゾルバによれば、レゾルバの誤差の要因となる回転軸中心とレゾルバロータ中心のずれから生じる偏芯の影響を受けることなく、角度検出することができる。したがって、レゾルバ製造分野、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0022】
1、21…ステータ鉄芯
2、22…コイル
3、23…ロータ鉄芯
4、24…コイル
5、25…コイル
6、26…ステータトランス
7、27…コイル
8、28…ロータトランス
9R、29R…ロータ
9S、29S…ステータ
10、210…軸方向対向レゾルバ
13…鉄芯
A…軸
B…ボビン
J…鉄芯支持体
Ja…腕部
Jc…環部
K…鉄芯用板
Kt…ティース
T…スラスト方向(軸方向)
【0023】
51…ステータ鉄芯
52…コイル
53…ロータ鉄芯
54…コイル
55…コイル
56…ステータトランス
57…コイル
58…ロータトランス
59R…ロータ
59S…ステータ
510…レゾルバ
A…軸
B…ボビン
R…径方向(ラジアル方向)