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特開2024-44898高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044898
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B01D21/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150719
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤
(72)【発明者】
【氏名】杉山 太一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 平
(57)【要約】
【課題】建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法を提供する。
【解決手段】高速沈殿装置1は、沈殿槽2内に配置されたシリンダ20の外周面に複数のプレート30が取り付けられたセパレータ10を備える。シリンダ20は、帯状部材21を複数連結し円筒状を形成することにより構成され、セパレータ10は、帯状部材21の外面に取り付けられた螺旋形状プレート30を有して構成されるブレードユニット40を複数連結することによりシリンダ20の外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられる。各ブレードユニット40の帯状部材21同士を鉛直方向に順次連結することで、円筒状のシリンダ20が組み立てられるとともに、各螺旋形状プレート30がシリンダ20の外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられたセパレータ10が組み立てられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の沈殿槽と、前記沈殿槽内に配置され、シリンダの外周面に複数のプレートが取り付けられたセパレータとを備え、
前記シリンダは、帯状部材を複数連結し円筒状を形成することにより構成され、
前記セパレータは、前記帯状部材と、該帯状部材の外面に取り付けられた螺旋形状プレートと、を有して構成されるブレードユニットを複数連結することにより前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられる構造を備えており、
前記各ブレードユニットの前記帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状の前記シリンダが組み立てられるとともに、前記各螺旋形状プレートが前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた前記セパレータが組み立てられることを特徴とする高速沈殿装置。
【請求項2】
前記帯状部材同士を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の高速沈殿装置。
【請求項3】
前記各帯状部材には、前記螺旋形状プレートが複数取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高速沈殿装置。
【請求項4】
有底筒状の沈殿槽と、前記沈殿槽内に配置され、シリンダの外周面に複数のプレートが取り付けられたセパレータとを備えた高速沈殿装置の製造方法であって、
前記シリンダは、帯状部材を複数連結し円筒状を形成することにより構成され、
前記セパレータは、前記帯状部材と、該帯状部材の外面に取り付けられた螺旋形状プレートと、を有して構成されるブレードユニットを複数連結することにより前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられる構造を備えており、
前記帯状部材を円筒形成治具の外周部に螺旋形状に固定する工程と、前記帯状部材に対して前記螺旋形状プレートを取り付ける工程とを含むブレードユニット形成工程と、
前記ブレードユニット形成工程により形成した複数の前記ブレードユニットの前記帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状の前記シリンダを組み立てるとともに、前記各螺旋形状プレートが前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた前記セパレータを組み立てるセパレータ組立工程と、を備えることを特徴とする高速沈殿装置の製造方法。
【請求項5】
前記帯状部材同士を連結する連結部材を備え、
前記ブレードユニット形成工程は、前記帯状部材に前記連結部材を取り付ける連結部材取付工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の高速沈殿装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場、浄水場、産業排水処理設備の沈殿濃縮装置として、螺旋状のプレートを備えたセパレータを沈殿槽の内部に配置し、これを回転させることで沈殿(固液分離)の高速化を実現した高速沈殿装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
セパレータを構成する螺旋状のプレートを、樹脂と繊維とを含む複合体である繊維強化プラスチック(FRP)により形成すると、破損や損傷を生じる可能性がある。このため、螺旋状のプレートの破損や損傷を未然に防止するための方策として、高速沈殿装置を建設する現地において、円筒状のシリンダに対して螺旋状のプレートを1枚ずつ取り付けてセパレータを組み立てる作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3291626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高速沈殿装置は、高速沈殿装置を建設する現地において、螺旋状のプレートをシリンダに1枚ずつ取り付けてセパレータを組み立てる必要があるため、高速沈殿装置の建設期間が長くなるとともに、建設コストが嵩むという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した問題である、製造工程及び製造工場から建設する現地までの輸送工程における破損や損傷の問題を解決し、建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明の高速沈殿装置は、有底筒状の沈殿槽と、前記沈殿槽内に配置され、シリンダの外周面に複数のプレートが取り付けられたセパレータとを備えている。前記シリンダは、帯状部材を複数連結し円筒状を形成することにより構成されている。前記セパレータは、前記帯状部材と、該帯状部材の外面に取り付けられた螺旋形状プレートと、を有して構成されるブレードユニットを複数連結することにより前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられる構造を備えている。
【0008】
そして、前記各ブレードユニットの前記帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状の前記シリンダが組み立てられるとともに、前記各螺旋形状プレートが前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた前記セパレータが組み立てられる。
【0009】
ここで、螺旋形状とは、円筒の外周面の周方向に回りながら、上下方向に角度を有するように軌跡を描く形状のことを意味する。
【0010】
本発明の高速沈殿装置では、帯状部材の外面に螺旋形状プレートが取り付けられたブレードユニットを複数組用意し、各ブレードユニットの帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状のシリンダを組み立てることができるとともに、各螺旋形状プレートがシリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられたセパレータを組み立てることができる。
【0011】
これにより、従来のように、シリンダに対して螺旋状のプレートを1枚ずつ取り付ける煩雑な作業が不必要となり、セパレータを簡単に製造できる。したがって、高速沈殿装置の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0012】
また、本発明の高速沈殿装置では、セパレータを金属製とすることができる。すなわち、帯状部材に対して螺旋形状プレートが取り付けられる構造であるので、これらを金属製として溶接する場合の溶接スペースを容易に確保でき、螺旋形状プレートを溶接により確実に固定できる。
【0013】
仮に、従来のように、円筒状のシリンダを形成した後に螺旋状のプレートを1枚ずつ溶接により取り付ける場合には、螺旋状のプレート同士が近接することから溶接スペースを十分に確保できず、溶接できる箇所が限定されるおそれがある。これに対して、本発明は、帯状部材の周囲に溶接スペースを容易に確保できるので、螺旋形状プレートを溶接により容易に取り付けることができる。したがって、強度の高いセパレータが得られる。
【0014】
また、強度の高いセパレータが得られるので、セパレータの組み立て及び沈殿槽の内部へのセパレータの組み付けを、工場内において実施することが可能となる。したがって、高速沈殿装置の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0015】
また、本発明の高速沈殿装置は、前記帯状部材同士を連結する連結部材を備えていることが好ましい。
【0016】
この構成では、連結部材を介して帯状部材同士(ブレードユニット同士)を容易に連結することができるので、セパレータの組み立てがより簡単になる。したがって、高速沈殿装置の建設期間をより短縮できるとともに、建設コストをより低減できる。
【0017】
また、本発明の高速沈殿装置は、前記各帯状部材に対して、前記螺旋形状プレートを複数取り付けることもできる。
【0018】
この構成では、1枚の帯状部材に対して1枚の螺旋形状プレートが取り付けられたものに比べて、帯状部材同士の連結個数を少なくすることができるので、セパレータの製造が簡単になる。
【0019】
前記課題を解決するため本発明の高速沈殿装置の製造方法は、有底筒状の沈殿槽と、前記沈殿槽内に配置され、シリンダの外周面に複数のプレートが取り付けられたセパレータとを備えた高速沈殿装置の製造方法である。
【0020】
そして、高速沈殿装置の製造方法における前記シリンダは、帯状部材を複数連結し円筒状を形成することにより構成され、前記セパレータは、前記帯状部材と、該帯状部材の外面に取り付けられた螺旋形状プレートと、を有して構成されるブレードユニットを複数連結することにより前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられる構造を備えている。
【0021】
さらに、高速沈殿装置の製造方法は、前記帯状部材を円筒形成治具の外周部に螺旋形状に固定する工程と、前記帯状部材に対して前記螺旋形状プレートを取り付ける工程とを含むブレードユニット形成工程をさらに含んでいる。
【0022】
また、高速沈殿装置の製造方法は、前記ブレードユニット形成工程により形成した複数の前記ブレードユニットの前記帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状の前記シリンダを組み立てるとともに、前記各螺旋形状プレートが前記シリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた前記セパレータを組み立てるセパレータ組立工程を含んでいる。
【0023】
本発明の高速沈殿装置の製造方法では、円筒形成治具を用いて帯状部材と螺旋形状プレートとが一体となったブレードユニットを形成できる。この形成時には、円筒形成治具に対して帯状部材を固定しておいてから螺旋形状プレートを取り付けることができるので、取り付けに要する作業スペースを容易に確保することができる。
【0024】
そして、ブレードユニットを複数形成しておいてから、複数のブレードユニットの帯状部材同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状のシリンダを組み立てることができるとともに、各螺旋形状プレートがシリンダの外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられたセパレータを組み立てることができる。
【0025】
これにより、従来のように、シリンダに対して螺旋状のプレートを1枚ずつ取り付ける煩雑な作業が不必要となり、セパレータを簡単に製造できる。したがって、高速沈殿装置の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0026】
また、本発明の高速沈殿装置の製造方法では、セパレータを金属製とすることができる。すなわち、ブレードユニット形成工程により、帯状部材に対して螺旋形状プレートが取り付けられるので、これらを金属製として溶接する場合の溶接スペースを容易に確保でき、螺旋形状プレートを溶接により確実に固定できる。
【0027】
仮に、従来のように、円筒状のシリンダを形成した後に螺旋状のプレートを1枚ずつ溶接により取り付ける場合には、螺旋状のプレート同士が近接することから溶接スペースを十分に確保できず、溶接箇所が限定されるおそれがある。これに対して、本発明は、帯状部材の周囲に溶接スペースを容易に確保できるので、螺旋形状プレートを溶接により容易に取り付けることができる。したがって、強度の高いセパレータが得られる。
【0028】
さらに、強度の高いセパレータが得られるので、セパレータの組み立て及び沈殿槽の内部へのセパレータの組み付けを、工場内において実施することが可能となる。したがって、高速沈殿装置の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0029】
また、本発明の高速沈殿装置の製造方法は、前記セパレータが前記帯状部材同士を連結する連結部材を備えており、前記ブレードユニット形成工程が、前記帯状部材に前記連結部材を取り付ける連結部材取付工程を含むことが好ましい。
【0030】
この構成では、ブレードユニット形成工程における連結部材取付工程により取り付けた連結部材を介して、各ブレードユニットを容易に連結することができるので、セパレータの組み立てがより簡単になる。したがって、高速沈殿装置の建設期間をより短縮できるとともに、建設コストをより低減できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の高速沈殿装置及び高速沈殿装置の製造方法では、建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置を示した概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置に備わるセパレータを示した拡大正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置に備わるセパレータを示した図であり、(a)は平面図、(b)は図3(a)におけるIIIb-IIIb線に沿う断面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のセパレータを構成するブレードユニット(螺旋形状プレート)を示した図であり、(a)は平面図、(b)はシリンダと対比して示した正面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のセパレータを構成するブレードユニット(螺旋形状プレート)を鉛直方向に連結する際の様子を示した正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のセパレータを構成するブレードユニットを示した図であり、(a)は斜視図、(b)はシリンダ部材と螺旋形状プレートとの固定構造を示した部分拡大断面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のブレードユニットを構成するシリンダ部材の要素を示した図であり、(a)は帯状部材の展開図、(b)は連結部材の展開図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のブレードユニットを構成するシリンダ部材の展開図である。
図6C】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダ部材を示した拡大説明図である。
図6D】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダ部材を示した図であり、図6CのVID-VID線に沿う拡大断面図である。
図6E】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダ部材同士を連結する際の様子を示した図6CのVID-VID線に相当する部分の拡大断面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダ部材同士を模式的に複数連結して示した展開図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダの成り立ちを模式的に示した斜視図である。
図7C】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置の組み上がったシリンダの構成を模式的に示した斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のシリンダを示した図であり、(a)は平面図、(b)は図8(a)のVIIIb-VIIIb線に沿う断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置の螺旋形状プレートを示した展開図である。
図10】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のセパレータを構成するブレードユニットの円筒形成治具を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は円筒形成治具にシリンダ部材固定治具を固定した状態を示した斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のブレードユニットを形成するための円筒形成治具のシリンダ部材固定治具に対してシリンダ部材を固定した状態を示した斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のブレードユニットを形成するための円筒形成治具において、シリンダ部材固定治具に固定したシリンダ部材に螺旋形状プレートを取り付ける際の様子を示した斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置のブレードユニットを形成する際に、シリンダ部材固定治具に固定したシリンダ部材に対して螺旋形状を成すプレートが取り付けられた状態を断面で示した説明図である。
図14】本発明の一実施形態に係る高速沈殿装置の製造工程により製造されたセパレータを示した拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、上下の方向は、高速沈殿装置が設置される面に直交する鉛直方向である。
【0034】
図1は、高速沈殿装置1の全体構成を概略的に示した図である。図1に示すように、高速沈殿装置1は、沈殿槽2と、沈殿槽2内に設置されるセパレータ10とを備えている。高速沈殿装置1は、沈殿槽2内においてセパレータ10を被処理懸濁水の上昇速度に合わせて回転させることにより、効率的に固液分離を行う装置である。
【0035】
図1に示すように、沈殿槽2は、円筒状の胴部3aと、胴部3aの下部を塞ぐ底部3bとを備えており、有底円筒状を呈している。胴部3aには、処理対象となる被処理懸濁水が導入される流入パイプ2aが貫通している。流入パイプ2aは、セパレータ10の後記するシリンダ20内を延在しており、シリンダ20内の上部位置に吐出口2bを有する。胴部3aの上部には、集水トラフ2fが取り付けられている。
【0036】
集水トラフ2fには、胴部3aの越流堰を越えた被処理懸濁水の沈殿処理液を排出するための排出口2cが取り付けられている。集水トラフ2fの上部には、胴部3aの径方向に延在するブリッジ部4が設けられている。ブリッジ部4の延在方向の中央部には、セパレータ10を回転駆動するための駆動機構11が配置されている。駆動機構11は、収容部12に収容されており、収容部12の側部に配置された電動モータ6の駆動力により駆動される。
【0037】
図1に示すように、駆動機構11は、セパレータ10のシリンダ20の上端部に連結された駆動軸筒13を回転駆動する。駆動軸筒13は、シリンダ20の外径よりも小径とされた上筒部13aと、上筒部13aの下部に連続して下方にテーパー状に広がるテーパー状筒部13bとを備えている。テーパー状筒部13bの下端部は、シリンダ20の後記する上部フランジ25(図2参照)に連結されている。
【0038】
底部3bは、ロート状(断面略V字形状)に形成されている。沈殿槽2の下部には、沈殿した粒子を含む汚泥を掻き寄せるための汚泥掻寄機5が設けられている。汚泥掻寄機5は、底部3bの上面に接触して汚泥をかき寄せるスクレーパーブレード5aを備えている。スクレーパーブレード5aは、底部3bの中央部に設けられた凹部5bに汚泥を掻き寄せる機能を有する。凹部5bには、排泥パイプ5cが接続されている。
【0039】
なお、底部3bは、上記した略V字形状に形成されたものに限られることはなく、中央部から径方向の外側に向けて下り傾斜状(断面略逆V字形状)に形成されているものであってもよい。この場合には、スクレーパーブレード5aを底部3bの形状に対応させるとともに、底部3bの外周部に排泥パイプ5cが接続された環状の凹部等を設けて、底部3bの外周部に汚泥を掻き寄せる機能をスクレーパーブレード5aにもたせるように構成する。
【0040】
図1に示すように、汚泥掻寄機5は、駆動軸8により回転駆動される。駆動軸8は、沈殿槽2の中心軸上に配置されてセパレータ10を貫通しており、沈殿槽2の上部の収容部12の上側に設けられた電動モータ7の駆動力により駆動される。
【0041】
図2は、沈殿槽2内に設置されるセパレータ10の正面図を示している。セパレータ10は、図2に示すように、円筒状のシリンダ20(図1も併せて参照)と、シリンダ20の外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた複数の螺旋形状プレート30とを備えている。
【0042】
ここで、螺旋形状とは、シリンダ20の外周面を周方向に回りながら、上下方向に角度を有するように軌跡を描く形状のことを意味し、シリンダ20の外周面を巻回しない湾曲形状の構成を含むという意味である。また、後記する螺旋形状の帯状部材21(図4A(b),図5(a)等)としては、軌跡の延在方向に1つの部材からなるものの他、軌跡の延在方向に複数個の部材を繋げて成るものも含まれる。
【0043】
シリンダ20及び螺旋形状プレート30の材料としては、軽量化及びコスト低減を図ることができるステンレス鋼板を用いている。なお、ステンレス鋼板の他に、各種鋼板やチタン合金板等、種々の金属材料を用いることができる。また、これらの他に、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂系材料や、ポリカーボネイト、アクリル、フッ素樹脂等の高分子材料を用いてもよい。
【0044】
図2に示すように、セパレータ10は、正面視で略全体が複数の螺旋形状プレート30で覆われており、シリンダ20の一部がセパレータ10の上部に露出する外観を有している。
【0045】
図3(a)は、セパレータ10の平面図を示し、図3(b)は、セパレータ10と螺旋形状プレート(仮想線)30とを対比した断面図を示している。
図3(a)(b)に示すように、セパレータ10は、シリンダ20の径方向外側に複数の螺旋形状プレート30が張り出す構造を有している。螺旋形状プレート30は、後記のように複数部品が組み合わされてなるブレードユニットとして構成されている。
【0046】
図4A(a)(b)は、ブレードユニット40として構成された螺旋形状プレート30を示している。図4A(a)は、螺旋形状プレート30の平面図を示し、図4A(b)は、螺旋形状プレート30とシリンダ(仮想線)20とを対比した正面図を示している。
【0047】
図4Bは、ブレードユニット40を鉛直方向に順次連結する過程の正面図を示している。図4Bでは、後記するセパレータ10の製造工程に対応して、ブレードユニット40を上下逆向きの姿勢で鉛直方向に順次連結する際の様子を示している。なお、セパレータ10は、沈殿槽2に設置する段階で、上下逆向きの姿勢からセパレータ10を転倒させる方向に180度回転させるものであり。図2に示したセパレータ10の姿勢が設置する際の姿勢である。図5(a)は、ブレードユニット40として構成された螺旋形状プレート30の斜視図を示している。
【0048】
本実施形態のセパレータ10は、図4A(a)(b),図5(a)に示した略円錐形の1つのブレードユニット40を、後記する製造工程によりシリンダ20の鉛直方向に複数連結する(組み付ける)ことにより構成されている。つまり、図4Bに示すように、ブレードユニット40を上下逆向きの姿勢で鉛直方向に順次連結することにより、螺旋形状の板面を備えた各シリンダ部材21Aが連結されて、シリンダ20の壁部を形成することで、図1図2図3(a)(b)に示すような円筒状のシリンダ20の壁部が形作られる。また、これとともに、そのシリンダ部材21Aの外面に個々に備わる螺旋形状プレート30が、形作られたシリンダ20の外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた状態となり、図2に示すような外観のセパレータ10が組み立てられる。なお、セパレータ10の製造工程の詳細は後記する。
【0049】
図5(b)は、ブレードユニット40の構成を説明するための断面図を示している。図5(a)(b)に示すように、ブレードユニット40は、シリンダ20を構成するシリンダ部材21Aと、シリンダ部材21Aに取り付けられた螺旋形状プレート30とを備えている。シリンダ部材21Aは、シリンダ20の壁部の一部を構成する螺旋形状の帯状部材21と、帯状部材21に取り付けられた帯状の連結部材22とを備えている。帯状部材21及び連結部材22は、中心軸O1から所定の距離(シリンダ20の半径を成す距離)に配置されるとともに、中心軸O1に対して板面がそれぞれ平行となるように配置されている。
【0050】
図6A(a)(b)は、シリンダ部材21Aを構成する帯状部材21及び連結部材22を示している。図6A(a)は、帯状部材21の展開図を示し、図6A(b)は、連結部材22の展開図を示している。なお、図6A(a)(b)及び後記する図6B図6Cでは、後記する製造工程における上下の配置に合わせて、後記する他端部21eを図の紙面の上側、後記する一端部21dを図の紙面の下側として示している。
【0051】
図6A(a)に示すように、帯状部材21は、展開した状態で直線状に延在する平板であり、曲げ加工機により螺旋形状に曲げ加工される。帯状部材21は、シリンダ20の円筒体の一部を成しており、後記する製造工程によりブレードユニット40を複数連結することにより、図1図2図3(a)(b)に示すような円筒状のシリンダ20を成す。
【0052】
図6A(a)に示すように、本実施形態の帯状部材21は、短尺の帯状部材21a,21cと長尺の帯状部材21bとの3つの部材を連結部21f,21gにおいて溶接することにより長尺板としたものである。なお、帯状部材21は、複数部材を繋ぎ合わせて長尺板としたものに限られることはなく、一枚の長尺板で形成してもよい。
【0053】
帯状部材21の一側縁部21mには、所定の間隔を空けて複数のナット23が取り付けられている。帯状部材21の一側縁部21mには、後記する図6Dに示されるように、ナット23に連通する孔部21jが形成されている。
【0054】
帯状部材21の長手方向の一端部21dは、帯状部材21の長手方向に対して傾斜する傾斜角度γを有して切り欠かれている(図6A図6C参照)。傾斜角度γは、約20~60度に設定することが好ましい。さらに好ましくは、傾斜角度γを45度にするのがよい。また、これとは反対側となる帯状部材21の長手方向の他端部21eの傾斜角度γ(図6A参照)も同様の傾斜角度γを有して切り欠かれている。
【0055】
なお、一端部21dは、後記する上部フランジ25により保持される部位である(図8(b)参照)。また、他端部21eは、後記する下部フランジ26により保持される部位である(図8(b)参照)。
【0056】
図6A(a)において、帯状部材21の幅方向の中央部に二点鎖線で示したラインは、螺旋形状プレート30の基端部31(図5(b)参照)が溶接により取り付けられる取付箇所27を示している。この取付箇所27は、図6Aに示すように、長尺の帯状部材21bから連結部21f,21gを越えて短尺の帯状部材21a,21cに延びている。なお、溶接作業の効率化を図るために、取付箇所27に沿って溝や目印等を形成してもよい。
【0057】
図6A(b)に示すように、連結部材22は、展開状態において直線状に延在する平板であり、曲げ加工機により螺旋形状に曲げ加工される。連結部材22は、短尺の連結部材22a,22cと長尺の連結部材22bとの3つの部材を溶接することにより長尺板としたものである。なお、連結部材22は、複数部材を繋ぎ合わせて長尺板としたものに限られることはなく、一枚の長尺板で形成してもよい。
【0058】
連結部材22には、所定の間隔を空けて挿通孔24が複数形成されている。各挿通孔24は、帯状部材21の各ナット23に対応して形成されている。各挿通孔は、後記する固定用ボルト28の挿通孔として機能する(図6E参照)。
【0059】
図6Bは、帯状部材21に連結部材22を取り付けて成るシリンダ部材21Aを示している。図6Cは、シリンダ部材21Aの一端部21dを拡大して示している。図6Dは、帯状部材21に対する連結部材22の取り付けを断面で示している。さらに、図6Eは、シリンダ部材21A同士を連結する際の様子を断面で示している。なお、図6Eでは、隣接するシリンダ部材21Aに、符号21A-1,21A-2を付している。
【0060】
図6B図6に示すように、シリンダ部材21Aは、帯状部材21の他側縁部21nにおいて裏面側に連結部材22を溶接により取り付けることで構成される。なお、シリンダ部材21Aの製造工程では、帯状部材21及び連結部材22を個別に曲げ加工した後に、帯状部材21に対して連結部材22を溶接により取り付ける。
【0061】
帯状部材21に連結部材22が取り付けられると、図6C図6Dに示すように、帯状部材21の他側縁部21nの側方において、連結部材22との間に一段低くなった段差部21hが形成される。そして、この段差部21hを利用して、図6Eに示すように、シリンダ部材21A-1に隣接するシリンダ部材21A-2の一側縁部21mが配置される。
【0062】
そして、後記する製造工程において、隣接するシリンダ部材21A-1,21A-2を連結する際には、図6Eに示すように、連結部材22の挿通孔24を通じて挿入される固定用ボルト28を、段差部21hに配置された帯状部材21のナット23に螺合する。さらに、図示はしないが、シリンダ部材21A-3~21A-16を順次連結することにより、シリンダ部材21A-1~21A-16の集合体となる連結体21B(図7A参照)が形成される。
【0063】
図7A図7Cは、複数のシリンダ部材21Aが連結された連結体21Bを丸めることにより、シリンダ20が形作られることを模式的に順次示している。つまり、図7A図7Cは、シリンダ構造を将来形作るための仮想であり、シリンダ部材21Aを順次連結することにより、将来的にシリンダ20の壁面を生成することを示している。なお、後記する製造工程では、単体のシリンダ部材21A同士が連結されるものではないが、ここでは、シリンダ20が形作られることを簡易的に説明するために、複数のシリンダ部材21Aを連結してシート状にしたものを用いている。
【0064】
図7Aは、複数のシリンダ部材21Aを連結することで連結体21B(シート状)が形成されることを示している。図7Aでは、複数のシリンダ部材21Aに対して符号21A-1~21A-16(計16個)を付している。図7Bは、16個の帯状部材21(シリンダ部材21A)を鉛直方向に連結した結果として、筒が生成されることを示している。図7Cは、生成された筒を示している。なお、本実施形態では、16個の帯状部材21を用いて説明したが、帯状部材21の数は限定されるものではない。
【0065】
図7Aに示すように、複数のシリンダ部材21A-1~21A-16を図示しない固定用ボルト28で連結すると、シート状の略ひし形を成す連結体21Bが形成される。図7Aにおいて、連結体21Bの4辺をそれぞれ符号S1~S4とした場合、丸めて立体的な筒状にする際に繋げる辺は、辺S2と辺S4である。
【0066】
図7Bに示すように、連結体21Bを丸め、丸まった状態で周方向に近づく辺S2,S4同士を図示しない固定用ボルト28で繋げて閉じると、丸まったものを連結した結果として、将来的に筒状のシリンダ20となる(図7C参照)。
【0067】
ここで、図7Aに示した帯状部材21の有効幅Wは、シリンダの円周長をL1、螺旋形状プレート30の枚数をnとした場合に、W=L1/nの式により求められる。なお、連結体21Bを成すシリンダ部材21Aの合計数は、セパレータ10の設計に基づいて適宜設定される。
【0068】
図8(a)(b)は、前記した図6Aから図7Cに基づいて説明したフランジ20の最終形態(組み立て後の形態)を示している。図8(a)は、最終形態のシリンダ20の平面図を示し、図8(b)は、最終形態のシリンダ20の縦断面図を示している。
【0069】
図8(a)(b)に示すように、上部フランジ25は、シリンダ20の上縁部となる一端部21dを保持する部材である。上部フランジ25は、シリンダ20の一端部21dを径方向外側から締め付けて補強している。図8(a)に示すように、上部フランジ25のフランジ部25aには、ボルト穴25bが複数形成されている。上部フランジ25は、ボルト穴25bに挿入される図示しないボルトにより、駆動機構11の駆動軸筒13(図1参照)に固定される。
【0070】
一方、下部フランジ26は、図8(b)に示すように、シリンダ20の下縁部となる他端部21eを保持する部材である。下部フランジ26は、シリンダ20の他端部21eを補強している。
【0071】
図8(b)に示すように、シリンダ20の内面には、帯状部材21及び連結部材22が螺旋形状に交互に露出している。なお、図8(b)では、固定用ボルト28の頭部を省略している。
【0072】
次に、螺旋形状プレート30について、図4A(a)(b),図5(a)(b),図9を参照して説明する。図9は、螺旋形状プレート30の展開図を示している。
【0073】
図4A(a)に示すように、螺旋形状プレート30は、平面視で略C字状を呈している。螺旋形状プレート30の上端部33から下端部34までの角度(平面視における中心軸O1周りの角度α)は、約150~300度に設定することが好ましい。さらに好ましくは、角度αを180度にするのがよい。なお、螺旋形状プレート30の上記角度は、セパレータ10の大きさ(シリンダ20の軸長や外径等)に合わせて、例えば、150~300度の範囲で適宜設定することができる。
【0074】
図4A(b)に示すように、螺旋形状プレート30は、上部フランジ25の近傍部分を起点として斜め下方へ外縁部32が突出するように螺旋形状に延び、下部フランジ26の下方へ螺旋形状プレート30の下端部34の一部が張り出すように配置される。
【0075】
図5(b)に示すように、螺旋形状プレート30は、鉛直に配置される帯状部材21に対して約30度の傾斜角度βをもって溶接により取り付けられている。螺旋形状プレート30は、図9に示すように、展開した状態で湾曲している平板であり、曲げ加工機により、図4A(a)(b)に示すような螺旋形状に曲げ加工される。
【0076】
つまり、螺旋形状プレート30は、シリンダ部材21Aの帯状部材21の板面に対して約30度の傾斜角度βとなるように曲げ加工されている。螺旋形状プレート30がシリンダ部材21Aに対して約30度の傾斜角度βで取り付けられることにより、被処理懸濁水に含まれる懸濁粒子が、螺旋形状プレート30の上面に沿って好適に滑り落ちるようになる。本実施形態では、1つのシリンダ部材21Aに対して1枚の螺旋形状プレート30が取り付けられている。
【0077】
セパレータ10における螺旋形状プレート30の枚数は、水面積負荷(m/m×日)を算出する次式(1)(2)により求められる。
水面積負荷(m/m×日)=流入する被処理懸濁液水量(m/日)/螺旋形状プレートの水平投影面積の総和面積(m) ・・・(1)
螺旋形状プレートの水平投影面積の総和面積(m)=螺旋形状プレート1枚の水平投影面積(m)×螺旋形状プレートの枚数 ・・・(2)
【0078】
次に、図10(a)(b),図11から図13を参照して、セパレータ10の製造工程について説明する。図10(a)(b)は、円筒形成治具50を示している。図10(a)は、円筒形成治具50の斜視図を示し、図10(b)は、シリンダ部材固定治具55が取り付けられた円筒形成治具50の斜視図を示している。
【0079】
図11は、シリンダ部材固定治具55に対してシリンダ部材21Aを固定した状態を示している。図12は、固定したシリンダ部材21Aの帯状部材21に対して螺旋形状プレート30を取り付ける際の様子を示している。図13は、帯状部材21に対して取り付けられた螺旋形状プレート30の取付態様を部分的な断面で示している。図14は、製造されたセパレータを示している。
【0080】
本実施形態のセパレータ10の製造工程では、図10(a)に示した円筒形成治具50を用いてブレードユニット40を形成する。そして、セパレータ製造工程では、溶接作業の行い易さを考慮して、上下逆向き状態でブレードユニット40を形成する(図12参照)。
【0081】
セパレータ10の製造工程は、ブレードユニット40の形成工程とセパレータ10の組立工程とを含んでいる。ブレードユニット形成工程は、ブレードユニット40を複数形成する工程である。なお、本実施形態のブレードユニット形成工程は、連結部材取付工程を含んでいる。一方、セパレータ組立工程は、ブレードユニット形成工程により形成した複数のブレードユニット40を連結して(組み合わせて)、セパレータ10を組み立てる工程である。
【0082】
図10(a)に示すように、円筒形成治具50は、複数のリング状部材51を複数の柱部材52により上下方向に間隔を空けて円筒状の骨組みを成すものである。図10(b)に示すように、円筒形成治具50の外周面には、前後2本の螺旋形状に延びるシリンダ部材固定治具55が取り付けられている。
【0083】
シリンダ部材固定治具55は、シリンダ部材21A(図11図4A(b)参照)を位置決めするための治具であり、シリンダ部材21Aに沿う状態となるように取り付けられている。なお、シリンダ部材固定治具55は、円筒形成治具50に前後2本取り付けたものを示したが、いずれか1本備わるものであってもよい。前後2本取り付けた場合にはブレードユニット40の量産性が向上する。
【0084】
ブレードユニット形成工程では、はじめに、連結部材取付工程により、帯状部材21の他端部に連結部材22を溶接により取り付けてシリンダ部材21Aを形成する。この場合、連結部材取付工程では、同様の作業を繰り返し、必要な個数分のシリンダ部材21Aを形成する。なお、連結部材取付工程では、円筒形成治具50のシリンダ部材固定治具55に帯状部材21を先に固定しておいてから、これに連結部材22を溶接により固定してもよい。
【0085】
図11に示すように、ブレードユニット形成工程では、シリンダ部材固定治具55に当てつけるようにしてシリンダ部材21Aを取り付ける。この場合、クランプ具56を用いて、シリンダ部材固定治具55にシリンダ部材21Aを位置決めする。なお、この際、帯状部材21の他端部21e(図12参照)が円筒形成治具50の上端部に位置するようにシリンダ部材21Aを配置する。
【0086】
シリンダ部材固定治具55に対してシリンダ部材21Aを取り付けたら、図12に示すように、螺旋形状プレート30の基端部31をシリンダ部材21Aに近づけ、帯状部材21の取付箇所27(図6A参照)に対して螺旋形状プレート30を溶接により取り付ける。溶接による取り付け方の一例は、図13に示すとおりである。図13では、螺旋形状プレート30の基端部31の下側(裏面側)から溶接を行っている。なお、基端部31の上側(表面側)から溶接を行ってもよく、下側と上側との両方から溶接を行ってもよい。
【0087】
この組立工程の場合、上下逆向きにして螺旋形状プレート30の基端部31を帯状部材21の取付箇所27(図6A参照)に当て付けるので、帯状部材21に対して螺旋形状プレート30の基端部31がくさび状に当接してズレにくくなるとともに、溶接部分の角度が広がり、溶接作業が行い易い。そして、図11図12に基づいて説明した同様の作業を繰り返し行うことにより、必要な個数分(本実施形態では、例えば16枚)のブレードユニット40を個々に形成する。なお、必要な個数分としては、16枚に限定されるものではない。
【0088】
なお、溶接にあたって、帯状のシリンダ部材21Aの周囲に溶接スペースを容易に確保できるので、溶接作業が行い易く、シリンダ部材21A(帯状部材21)に対して螺旋形状プレート30を確実に固定できる。
【0089】
仮に、従来のように、円筒状のシリンダを形成した後に螺旋形状プレートを1枚ずつ溶接により取り付ける場合には、円筒状のシリンダの壁が邪魔になってシリンダの外側から内空側に手を延ばすことができず、あるいは、円筒状のシリンダの内空側から外側に手を延ばすことができない上に、螺旋形状プレート同士が近接することから溶接スペースを十分に確保できず、溶接箇所が限定されるおそれがある。
【0090】
これに対して、本実施形態では、ブレードユニット形成工程において、帯状部材21の上下が開放された状態となるので、手の届く範囲が増え、帯状部材21の周囲に溶接スペースを容易に確保できるので、螺旋形状プレート30を溶接により容易に取り付けることができる。
【0091】
次に、ブレードユニット形成工程により形成した複数のブレードユニット40をセパレータ取付工程により鉛直方向に順次連結する。その結果、シリンダ20が形成される。
【0092】
図14は、セパレータ取付工程によって複数のブレードユニット40を順次連結することにより、円筒状のシリンダ20が組み立てられるとともに、各螺旋形状プレート30がシリンダ20の外周面を螺旋形状に巻回するように取り付けられた製品を示している。つまり、セパレータ取付工程では、図12において上下逆向きで形成した複数のブレードユニット40をその向きのまま順次連結する(図4B参照)ことによりセパレータ10を組み上げている。
【0093】
セパレータ取付工程では、各連結部材22を介して帯状部材21同士を鉛直方向に連結する際(図4Bではブレードユニット40を3組図示)、ブレードユニット40の内側から連結部材22の挿通孔24を通じて固定用ボルト28を挿通して、これを帯状部材21のナット23に螺合する。この場合、ブレードユニット40の内側から固定用ボルト28を挿通してナット23に対する締め付けを行うことができるので、ブレードユニット40同士の連結作業が行い易い。
【0094】
そして、同様の作業を複数回行い、シリンダ20の鉛直方向にブレードユニット40を順次連結する。その後、最後のブレードユニット40を最初のブレードユニット40に連結して、ブレードユニット40の連結作業を終える。これにより、図14に示すように、円筒状のシリンダ20が形成されるとともに、シリンダ20の外周面に所定枚数の螺旋形状プレート30が取り付けられたセパレータ10が組み立てられる。
【0095】
その後、図14に示した上下逆向きの状態のセパレータ10に対して、上部フランジ25及び下部フランジ26をシリンダ20に取り付ける。この場合、セパレータ10は、上下逆向きの状態であるので、上部フランジ25及び下部フランジ26もシリンダ20に対して上下逆向きに取り付ける。つまり、沈殿槽2に設置する際の将来上縁部となる部分に上部フランジ部25を取り付けるとともに、沈殿槽2に設置する際の将来下縁部となる部分に下部フランジ部26を取り付ける。
これにより、セパレータ10の最終製品が完成する。
【0096】
このように製造工程では、上下逆向きの姿勢でセパレータ10を製造する。また、製造後に製造工場においてセパレータ10を保管する場合や製造工場から建設する現地までの輸送工程においても上下逆向きの姿勢でセパレータ10の保管、輸送を行う。そして、沈殿槽2内にセパレータ10を設置する段階で、上下逆向きの姿勢からセパレータ10を転倒させる方向に180度回転させて、図2に示すように、上部フランジ25が上側に位置する姿勢にする。そして、この姿勢で、沈殿槽2内にセパレータ10を設置する。
【0097】
以上説明した本実施形態の高速沈殿装置1によれば、螺旋形状の帯状部材21(シリンダ部材21A)に対して螺旋形状プレート30を取り付けたブレードユニット40を複数組用意し、各ブレードユニット40をシリンダ20の鉛直方向に順次連結することにより、円筒状のシリンダ20の外周面に複数の螺旋形状プレート30が取り付けられたセパレータ10が組み立てられる。
【0098】
これにより、従来のように、シリンダに対して螺旋形状プレートを1枚ずつ取り付ける煩雑な作業が不必要となり、セパレータ10を簡単に製造できる。したがって、高速沈殿装置1の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0099】
また、本実施形態の高速沈殿装置1では、セパレータ10を金属製とすることができる。すなわち、帯状部材21に対して螺旋形状プレート30が取り付けられる構造であるので、これらを金属製として溶接する場合の溶接スペースを容易に確保でき、螺旋形状プレート30を溶接により確実に固定できる。したがって、強度の高いセパレータ10が得られる。
【0100】
さらに、本実施形態の高速沈殿装置1では、強度の高いセパレータ10が得られるので、セパレータ10の組み立て及び沈殿槽2の内部へのセパレータ10の組み付けを、工場内において実施することが可能となる。つまり、セパレータ10を組み立てた状態でも運搬や搬入作業時に作用する外力に耐えることができる。工場で組み立てたセパレータ10を高速沈殿装置1の設置場所に運搬できるようになると、高速沈殿装置1の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0101】
また、本実施形態の高速沈殿装置1では、連結部材22を介して帯状部材21同士(ブレードユニット40同士)を容易に連結することができるので、セパレータ10の組み立てがより簡単になる。したがって、高速沈殿装置1の建設期間をより短縮できるとともに、建設コストをより低減できる。
【0102】
また、本実施形態の高速沈殿装置1の製造方法では、ブレードユニット形成工程により、円筒形成治具50を用いて帯状部材21(シリンダ部材21A)と螺旋形状プレート30とが一体となったブレードユニット40を形成できる。この形成時には、円筒形成治具50に対して帯状部材21(シリンダ部材21A)を固定しておいてから螺旋形状プレート30を取り付けることができるので、取り付けに要する作業スペースを容易に確保することができる。
【0103】
そして、ブレードユニット40を所定の数を複数形成しておいてから、セパレータ取付工程により、複数のブレードユニット40の帯状部材21(シリンダ部材21A)同士を鉛直方向に順次連結することにより、円筒状のシリンダ20を形成できるとともに、各帯状部材21(シリンダ部材21A)に取り付けられた各螺旋形状プレート30がシリンダ20の外周に並設されてなるセパレータ10が製造される。
【0104】
これにより、従来のように、シリンダに対して螺旋形状プレートを1枚ずつ取り付ける煩雑な作業が不必要となり、セパレータ10を簡単に製造できる。したがって、高速沈殿装置1の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0105】
また、本実施形態の高速沈殿装置1の製造方法では、セパレータ10を金属製とすることができる。すなわち、ブレードユニット形成工程により、帯状部材21(シリンダ部材21A)に対して螺旋形状プレート30が取り付けられるので、これらを金属製として溶接する場合の溶接スペースを容易に確保でき、螺旋形状プレート30を溶接により確実に固定できる。したがって、強度の高いセパレータが得られる。
【0106】
さらに、強度の高いセパレータ10が得られるので、セパレータ10の組み立て及び沈殿槽2の内部へのセパレータ10の組み付けを、工場内において実施することが可能となる。したがって、高速沈殿装置1の建設期間を短縮できるとともに、建設コストを低減できる。
【0107】
また、本実施形態の高速沈殿装置1の製造方法では、ブレードユニット形成工程における連結部材取付工程により取り付けた連結部材22を介して、各ブレードユニット40を容易に連結することができるので、セパレータ10の組み立てがより簡単になる。したがって、高速沈殿装置1の建設期間をより短縮できるとともに、建設コストをより低減できる。
【0108】
次に、実施形態の変形例について説明する。本変形例は、帯状部材21の有効幅W(図7Aに相当する部位)を前記実施形態のものよりも大きく形成して、帯状部材21の表面積を大きくしたものであり、1枚の帯状部材21に対して複数枚の螺旋形状プレート30を取り付けたものである。
【0109】
この変形例のように、1枚の帯状部材21に対して螺旋形状プレート30を複数枚取り付ける場合の帯状部材21の有効幅Wは、シリンダの円周長をL1、全体の螺旋形状プレート30の枚数をn、1枚の帯状部材21に取り付けようとする螺旋形状プレート30の枚数をmとした場合に、W=L1/(n/m)の式により求められる。
【0110】
変形例の高速沈殿装置1では、1枚の帯状部材21に対して1枚の螺旋形状プレート30が取り付けられたものに比べて、帯状部材21同士の連結個数を少なくすることができるので、セパレータ10をより簡単に製造できる。
【0111】
なお、セパレータ10を金属製とした場合に、1枚の帯状部材21に対して取り付け可能な螺旋形状プレート30の枚数(m枚)は、各螺旋形状プレート30の溶接スペースを確保できる範囲内で適宜設定可能である。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、セパレータ10を金属製としたが、これに限られることはなく、セパレータ10に要求される強度を満たすものであれば繊維強化プラスチック(FRP)等により形成することも可能である。
【0113】
また、前記実施形態では、連結部材22として板状のものを用いたが、これに限られることはなく、帯状部材21同士の連結が可能なものであれば、種々の形状のものを採用することができる。
【0114】
また、前記実施形態及び変形例では、1枚の帯状部材21に1枚の螺旋形状プレート30が取り付けられた構成、及び1枚の帯状部材21に対して複数枚(m枚)の螺旋形状プレート30が取り付けられた構成について説明したが、これに限られることはなく、これら両者を混在させてシリンダ20を形成してもよい。
【0115】
また、形状や仕様の異なる螺旋形状プレート30を形成して、セパレータ10の一部に用いてもよい。
【0116】
また、前記実施形態及び変形例では、有底円筒状の沈殿槽2を備えた高速沈殿装置1について説明したが、これに限られることはなく、円筒状以外の形状の沈殿槽を備えたものに対しても本発明を好適に適用することができる。
【0117】
また、前記実施形態では、短尺の帯状部材21a,21cと長尺の帯状部材21bとの3つの部材を連結して帯状部材21を構成したものを示したが、これに限られることはなく、小分けした4つ以上の円弧状(湾曲状)の部材を連結して螺旋形状を成すように帯状部材21を構成してもよい。これと同様に、連結部材22も、小分けした4つ以上の部材を連結して螺旋形状を成すように構成してもよい。さらに、螺旋形状プレート30も、小分けした複数のプレートを連結して螺旋形状を成すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 高速沈殿装置
2 沈殿槽
10 セパレータ
20 シリンダ
21 帯状部材
22 連結部材
30 螺旋形状プレート
40 ブレードユニット
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14