(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044905
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基板洗浄装置および基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240326BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 644C
H01L21/304 644E
H01L21/304 644F
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150729
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉文
(72)【発明者】
【氏名】沖田 展彬
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA21
5F131AA32
5F131AA33
5F131AA34
5F131BA37
5F131CA01
5F131CA12
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA06
5F131EA15
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5F131EA23
5F131EA24
5F131EB01
5F131EB55
5F131EB72
5F131HA28
5F157AA14
5F157AA16
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
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5F157AB90
5F157AC04
5F157AC26
5F157BA07
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB22
5F157CB13
5F157CE08
5F157CE10
5F157CE27
5F157CF30
5F157CF32
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】洗浄後の基板の下面の清浄度を向上させることが可能な基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置1は、基板Wの外周端部を保持する上側保持装置10A,10Bと、基板Wの下面に接触して当該基板Wの下面を洗浄する下面ブラシ51とを備える。下面ブラシ51は、上側保持装置10A,10Bにより保持される基板Wの下面に接触する接触位置と、上側保持装置10A,10Bにより保持される基板Wから一定距離離間した離間位置との間を移動する。離間位置において、下面ブラシ51は第1の回転速度で回転する。接触位置において下面ブラシ51が基板Wの下面に接触する時点および下面ブラシ51が基板Wの下面から離間する時点で、下面ブラシ51は第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の外周端部を保持する第1の基板保持部と、
前記基板の下面に接触して当該基板の下面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させる洗浄具回転駆動部と、
前記洗浄具回転駆動部により回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させる洗浄具移動部とを備え、
前記洗浄具回転駆動部は、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させ、
前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させる、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具には洗浄液が供給され、
前記第1の回転速度は、前記洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度の回転速度である、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄具回転駆動部は、前記洗浄具が前記接触位置にありかつ前記洗浄具が前記基板の下面に接触する状態で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第3の回転速度で回転させ、
前記第2の回転速度は、前記第3の回転速度以上の回転速度である、請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄具回転駆動部は、
前記第1の時点よりも前でかつ前記洗浄具が前記離間位置から移動して前記接触位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度まで上昇させる、請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄具回転駆動部は、
前記第2の時点よりも後でかつ前記洗浄具が前記接触位置から移動して前記離間位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第2の回転速度から前記第1の回転速度まで下降させる、請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄具移動部は、前記基板が前記第1の基板保持部により保持された状態で、前記基板の下面中央領域に接触するように前記洗浄具を移動させることにより前記基板の下面中央領域を洗浄し、
前記基板洗浄装置は、
前記基板の前記下面中央領域の洗浄後、前記下面中央領域を吸着保持しつつ上下方向の軸の周りで前記基板を回転させる第2の基板保持部をさらに備え、
前記洗浄具移動部は、前記洗浄具が前記基板の前記下面中央領域を取り囲む下面外側領域に接触するように、前記第2の基板保持部により保持されて回転する前記基板に対して前記洗浄具を相対的に移動させる、請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記第1の基板保持部は、前記基板を回転させることなく前記基板の外周端部を保持するように構成された、請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
第1の基板保持部により基板の外周端部を保持するステップと、
洗浄具を前記基板の下面に接触させて当該基板の下面を洗浄するステップと、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップと、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップにより回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させるステップとを含み、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させることと、
前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させることとを含む、基板洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具には洗浄液が供給され、
前記第1の回転速度は、前記洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度の回転速度である、請求項8記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、前記洗浄具が前記接触位置にありかつ前記洗浄具が前記基板の下面に接触する状態で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第3の回転速度で回転させることを含み、
前記第2の回転速度は、前記第3の回転速度以上の回転速度である、請求項8または9記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記第1の時点よりも前でかつ前記洗浄具が前記離間位置から移動して前記接触位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度まで上昇させることを含む、請求項8または9記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記第2の時点よりも後でかつ前記洗浄具が前記接触位置から移動して前記離間位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第2の回転速度から前記第1の回転速度まで下降させることを含む、請求項8または9記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄具を移動させるステップは、前記基板が前記第1の基板保持部により保持された状態で、前記基板の下面中央領域に接触するように前記洗浄具を移動させることにより前記基板の下面中央領域を洗浄することを含み、
前記基板洗浄方法は、
前記基板の前記下面中央領域の洗浄後、第2の基板保持部により前記下面中央領域を吸着保持しつつ上下方向の軸の周りで前記基板を回転させるステップをさらに含み、
前記洗浄具を移動させるステップは、前記洗浄具が前記基板の前記下面中央領域を取り囲む下面外側領域に接触するように、前記第2の基板保持部により保持されて回転する前記基板に対して前記洗浄具を相対的に移動させることをさらに含む、請求項8または9記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記第1の基板保持部は、前記基板を回転させることなく前記基板の外周端部を保持するように構成された、請求項1または2記載の基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面を洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。基板を洗浄するために、基板洗浄装置が用いられる。
【0003】
特許文献1に記載された基板洗浄装置は、上側保持装置、下側保持装置および下面洗浄装置を備える。
【0004】
上側保持装置は、一対の下チャックおよび一対の上チャックを含む。一対の下チャックの間でかつ一対の上チャックの間に配置された基板が、一対の下チャックおよび一対の上チャックにより挟み込まれる。それにより、基板の外周端部に一対の下チャックおよび一対の上チャックが接する状態で、洗浄対象となる基板が保持される。下面洗浄装置は、上側保持装置により保持される基板の下面中央領域を洗浄する。
【0005】
下側保持装置は、いわゆるスピンチャックであり、基板の下面中央領域を吸着保持しつつ、基板を水平姿勢で回転させる。下面洗浄装置は、下側保持装置により保持される基板の下面のうち下面中央領域を取り囲む領域(以下、下面外側領域と呼ぶ。)をさらに洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の下面洗浄装置は、下面ブラシ(洗浄具)を基板の下面に接触させることにより、基板の下面中央領域および下面外側領域を洗浄する。このように、基板を物理的に洗浄する場合には、洗浄具が基板に接触することに起因して洗浄後の基板の清浄度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、洗浄後の基板の下面の清浄度を向上させることが可能な基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う基板洗浄装置は、基板の外周端部を保持する第1の基板保持部と、前記基板の下面に接触して当該基板の下面を洗浄する洗浄具と、前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させる洗浄具回転駆動部と、前記洗浄具回転駆動部により回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させる洗浄具移動部とを備え、前記洗浄具回転駆動部は、前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させ、前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させる。
【0010】
本発明の他の局面に従う基板洗浄方法は、第1の基板保持部により基板の外周端部を保持するステップと、洗浄具を前記基板の下面に接触させて当該基板の下面を洗浄するステップと、前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップと、前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップにより回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させるステップとを含み、前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させることと、前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させることとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄後の基板の下面中央領域の清浄度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態に係る基板洗浄装置の模式的平面図である。
【
図2】
図1の基板洗浄装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の制御部による基板洗浄処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態に係る基板に定義される下面中央領域を説明するための基板の下面図である。
【
図5】本実施の形態に係る基板に定義される下面外側領域を説明するための基板の下面図である。
【
図6】本実施の形態に係る基板に定義される接触領域および離間領域を説明するための基板の下面図である。
【
図7】本実施の形態に係る基板に定義される隙間領域を説明するための基板の下面図である。
【
図8】基板の下面洗浄時の基板洗浄装置の各部の動作の詳細を説明するための図である。
【
図9】基板の下面洗浄時の基板洗浄装置の各部の動作の詳細を説明するための図である。
【
図10】基板の下面洗浄時の基板洗浄装置の各部の動作の詳細を説明するための図である。
【
図11】
図8~
図10に示される基板の下面洗浄時における
図1の下面ブラシの回転速度の変化を示すタイムチャートである。
【
図12】
図8~
図10に示される基板の下面洗浄時における基板の回転速度の変化を示すタイムチャートである。
【
図13】実施例に係る洗浄後基板の下面の汚染分布図である。
【
図14】比較例に係る洗浄後基板の下面の汚染分布図である。
【
図15】他の実施の形態に係る下面ブラシの回転制御を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る基板洗浄装置および基板洗浄方法について図面を用いて説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(ウエハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、以下の説明では、基板の上面が回路形成面(表面)であり、基板の下面が回路形成面と反対側の面(裏面)である。また、基板は、ノッチを除いて円形状を有する。
【0014】
1.基板洗浄装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係る基板洗浄装置の模式的平面図である。
図2は、
図1の基板洗浄装置1の内部構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。
図1および
図2以降の所定の図では、X方向、Y方向およびZ方向が適宜矢印で示される。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は上下方向(鉛直方向)に相当する。
【0015】
図1および
図2に示すように、基板洗浄装置1は、ユニット筐体2内に、上側保持装置10A,10B、下側保持装置20、台座装置30、受渡装置40、下面洗浄装置50、カップ装置60、上面洗浄装置70、端部洗浄装置80および開閉装置90が収容された構成を有する。
図2では、ユニット筐体2が点線で示される。
【0016】
ユニット筐体2は、直方体形状を有し、矩形の底面部および底面部の4辺から上方に延びる4つの側壁部を含む。4つの側壁部のうち2つの側壁部はY方向において互いに対向する。4つの側壁部のうち他の2つの側壁部はX方向において互いに対向する。4つの側壁部のうち1つの側壁部中央には、基板Wの搬入搬出口2xが形成されている。搬入搬出口2xの近傍には、開閉装置90が設けられている。開閉装置90は、シャッタ91を含み、シャッタ91により搬入搬出口2xを開閉可能に構成されている。
【0017】
ユニット筐体2の底面部に、台座装置30が設けられている。台座装置30は、リニアガイド31および可動台座32を含む。リニアガイド31は、X方向に並ぶ2本のレールを含み、X方向における底面部の中央部分を横切るようにY方向に延びている。台座装置30は、リニアガイド31の2本のレール上で、可動台座32をY方向における複数の位置に移動させることが可能に構成されている。
【0018】
可動台座32上に、下側保持装置20および下面洗浄装置50がY方向に並ぶように設けられている。下側保持装置20は、可動台座32の上面に固定され、吸着保持部21を含む。吸着保持部21は、いわゆるスピンチャックであり、基板Wの下面を吸着保持可能な円形状の吸着面を有する。また、吸着保持部21は、上下方向に延びる軸(Z方向の軸)の周りで回転可能に構成される。下側保持装置20は、吸着保持部21により、基板Wの下面を吸着保持するとともに、吸着保持された基板Wを上下方向に延びる軸の周りで回転させる。
【0019】
以下の説明では、吸着保持部21により基板Wが吸着保持される際に、基板Wの下面のうち吸着保持部21の吸着面が吸着保持する領域を下面中央領域と呼ぶ。また、基板Wの下面のうち下面中央領域を取り囲む領域を下面外側領域と呼ぶ。
【0020】
可動台座32上には、下側保持装置20の近傍に受渡装置40が設けられている。受渡装置40は、平面視で吸着保持部21を取り囲みかつ上下方向に延びるように設けられた複数(本例では3本)の支持ピン41を有する。複数の支持ピン41は、予め定められた複数の高さ位置の間で昇降可能に設けられている。
【0021】
後述するように、上側保持装置10A,10Bは、下側保持装置20よりも上方の位置で基板Wを保持可能に構成されている。受渡装置40は、複数の支持ピン41を昇降させることにより、下側保持装置20に保持された基板Wを受け取って上側保持装置10A,10Bに渡すことが可能である。また、受渡装置40は、上側保持装置10A,10Bに保持された基板Wを受け取って下側保持装置20に渡すことが可能である。
【0022】
下面洗浄装置50は、下面ブラシ51、2つの液ノズル52、気体噴出部53、昇降回転支持部54および図示しない各種駆動部を含む。昇降回転支持部54は、Y方向において下側保持装置20に隣り合うように、可動台座32の上面に固定されている。
図1に示すように、下面ブラシ51は、基板Wの下面に接触可能な円形状の洗浄面を有する。また、下面ブラシ51は、洗浄面が上方を向くようにかつ洗浄面が当該洗浄面の中心を通って上下方向に延びる軸の周りで回転可能となるように、昇降回転支持部54に取り付けられている。下面ブラシ51の洗浄面の面積は、吸着保持部21の吸着面の面積よりも大きい。なお、下面ブラシ51は、例えばPVA(ポリビニールアルコール)スポンジまたは砥粒が分散されたPVAスポンジにより形成される。
【0023】
昇降回転支持部54は、下面ブラシ51を昇降させる昇降機構と、下面ブラシ51を回転させるブラシ駆動機構とを含む。昇降回転支持部54は、その昇降機構により、基板Wが下側保持装置20または上側保持装置10A,10Bにより保持された状態で昇降動作する。これにより、昇降回転支持部54は、下面ブラシ51を、基板Wの下面に接触する高さ位置(後述する第2の高さ位置および第3の高さ位置)と基板Wから一定距離下方に離間した高さ位置(後述する第1の高さ位置)との間で移動させる。
【0024】
また、昇降回転支持部54は、そのブラシ駆動機構により、下面ブラシ51を回転させる。これにより、下面ブラシ51が基板Wの下面に接触する高さ位置にある状態で回転することにより、基板Wの下面における下面ブラシ51との接触部分が洗浄される。
【0025】
2つの液ノズル52の各々は、下面ブラシ51の近傍に位置しかつ液体噴射口が下面ブラシ51の洗浄面を向くように、昇降回転支持部54に取り付けられている。液ノズル52には、図示しない洗浄液供給系が接続されている。下面ブラシ51が待機位置にある状態で、各液ノズル52から下面ブラシ51に向けて洗浄液が供給され、下面ブラシ51が回転する。この場合、下面ブラシ51に供給された洗浄液は、下面ブラシ51が回転することにより発生する遠心力で、下面ブラシ51の表面またはその内部を円滑に流れる。それにより、待機位置において、下面ブラシ51に付着する汚染物質が洗浄液により円滑に洗い流される。また、下面ブラシ51に洗浄液が浸み込むことにより、下面ブラシ51が乾燥することが抑制される。
【0026】
気体噴出部53は、一方向に延びる気体噴出口を有するスリット状の気体噴射ノズルである。気体噴出部53は、平面視で下面ブラシ51と吸着保持部21との間に位置しかつ気体噴射口が上方を向くように、昇降回転支持部54に取り付けられている。気体噴出部53には、図示しない噴出気体供給系が接続されている。本実施の形態では、気体噴出部53に供給される気体として窒素ガスが用いられる。気体噴出部53は、下面ブラシ51による基板Wの洗浄時および後述する基板Wの下面の乾燥時に、噴出気体供給系から供給される気体を基板Wの下面に噴射する。それにより、下面ブラシ51と吸着保持部21との間に、X方向に延びる帯状の気体カーテンが形成される。
【0027】
カップ装置60は、ユニット筐体2内の略中央部に設けられ、カップ61を含む。カップ61は、平面視で下側保持装置20および台座装置30を取り囲むようにかつ昇降可能に設けられている。
図2においては、カップ61が点線で示される。カップ61は、下面ブラシ51が基板Wの下面におけるどの部分を洗浄するのかに応じて、予め定められた下カップ位置と上カップ位置との間で移動する。下カップ位置はカップ61の上端部が吸着保持部21により吸着保持される基板Wよりも下方にある高さ位置である。また、上カップ位置はカップ61の上端部が吸着保持部21よりも上方にある高さ位置である。
【0028】
上側保持装置10A,10Bは、カップ61よりも上方の高さ位置に設けられている。上側保持装置10A,10Bは、平面視で台座装置30を挟んで対向する。上側保持装置10Aは、下チャック11Aおよび上チャック12Aを含む。上側保持装置10Bは、下チャック11Bおよび上チャック12Bを含む。
【0029】
下チャック11A,11Bは、平面視で吸着保持部21の中心を通ってY方向に延びる鉛直面に関して対称に配置され、共通の水平面内でX方向に移動可能に設けられている。下チャック11A,11Bの各々は、基板Wの下面外側領域を基板Wの下方から支持可能な2本の支持片を有する。上チャック12A,12Bは、下チャック11A,11Bと同様に、平面視で吸着保持部21の中心を通ってY方向に延びる鉛直面に関して対称に配置され、共通の水平面内でX方向に移動可能に設けられている。上チャック12A,12Bの各々は、基板Wの外周端部の2つの部分に当接して基板Wの外周端部を保持可能に構成された2本の保持片を有する。
【0030】
上側保持装置10A,10Bにおいては、下チャック11Aおよび上チャック12Aと、下チャック11Bおよび上チャック12Bとの間の距離が調整される。それにより、上側保持装置10A,10Bは、下チャック11Aおよび上チャック12Aと下チャック11Bおよび上チャック12Bとの間で基板Wを挟み込むことにより、下側保持装置20の上方の位置で基板Wを保持することが可能である。また、上側保持装置10A,10Bにおいては、下チャック11Aおよび上チャック12Aと下チャック11Bおよび上チャック12Bとを互いに遠ざけることにより、保持された基板Wを解放することが可能である。
【0031】
図1に示すように、X方向におけるカップ61の一側方に上面洗浄装置70が設けられている。
図2に示すように、上面洗浄装置70は、回転支持軸71、アーム72およびスプレーノズル73を含む。回転支持軸71は、上下方向に延びるようにかつ昇降可能かつ回転可能に設けられている。アーム72は、上側保持装置10A,10Bよりも上方の位置で、回転支持軸71の上端部から水平方向に延びるように設けられている。アーム72の先端部には、スプレーノズル73が取り付けられている。スプレーノズル73には、図示しない流体供給系が接続されている。図示しない流体供給系からスプレーノズル73に洗浄液および気体が供給される。それにより、スプレーノズル73において洗浄液と気体とが混合され、混合流体が生成される。生成された混合流体は、スプレーノズル73から下方に向かって噴射される。
【0032】
上面洗浄装置70においては、例えば基板Wが下側保持装置20により保持されて回転する状態で、スプレーノズル73が基板Wの上方を移動するように、回転支持軸71の高さ位置が調整され、回転支持軸71が回転する。この状態で、スプレーノズル73から基板Wに混合流体が噴射される。それにより、基板Wの上面全体が洗浄される。
【0033】
図1に示すように、X方向におけるカップ61の他側方に端部洗浄装置80が設けられている。
図2に示すように、端部洗浄装置80は、回転支持軸81、アーム82およびベベルブラシ83を含む。回転支持軸81は、上下方向に延びるようにかつ昇降可能かつ回転可能に設けられている。アーム82は、上側保持装置10A,10Bよりも上方の位置で、回転支持軸81の上端部から水平方向に延びるように設けられている。アーム82の先端部には、下方に向かって突出するようにかつ上下方向の軸の周りで回転可能となるようにベベルブラシ83が設けられている。
【0034】
端部洗浄装置80においては、例えば基板Wが下側保持装置20により保持されて回転する状態で、ベベルブラシ83が基板Wの外周端部に接触するように、回転支持軸81の高さ位置が調整され、回転支持軸81が回転する。さらに、アーム82の先端部に設けられるベベルブラシ83が上下方向の軸の周りで回転する。それにより、基板Wの外周端部全体が洗浄される。
【0035】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、制御部9をさらに含む。制御部9は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリまたはマイクロコンピュータを含む。メモリには、基板洗浄プログラムが記憶されている。制御部9のCPUは、メモリに記憶された基板洗浄プログラムを実行することにより、上記の各構成要素(10A,10B,20,30,40,50,60,70,80,90)の動作を制御する。
【0036】
2.基板洗浄処理の基本的な流れ
以下、上記の基板洗浄装置1において
図1の制御部9により実行される基板洗浄処理について説明する。
図3は、
図1の制御部9による基板洗浄処理を示すフローチャートである。
【0037】
本実施の形態に係る基板洗浄乾燥処理は、制御部9のCPUが記憶装置に記憶された基板洗浄プログラムを実行することにより行われる。初期状態で、台座装置30は、下側保持装置20の吸着保持部21が平面視でカップ61の中央に位置するように可動台座32が位置決めされているものとする。
【0038】
まず、制御部9が、開閉装置90を制御することにより、搬入搬出口2xを開放し、基板洗浄装置1の外部から搬入される基板Wをユニット筐体2内に受け入れる(ステップS1)。
【0039】
次に、制御部9は、受渡装置40を制御することにより、基板Wを複数の支持ピン41により受け取り、受け取られた基板Wを上側保持装置10A,10Bに渡す(ステップS2)。このとき、制御部9は、上側保持装置10A,10Bを制御することにより、下側保持装置20の上方の位置で基板Wの外周端部を保持する(ステップS3)。なお、基板洗浄装置1の外部から搬入される基板Wが、下チャック11A,11B上に載置可能である場合、ステップS2の処理は省略されてもよい。ステップS1で開放された搬入搬出口2xは、基板Wが受渡装置40により受け取られた後、シャッタ91により閉塞される。
【0040】
その後、制御部9は、台座装置30および下面洗浄装置50を制御することにより、基板Wの下面中央領域の洗浄を行う(ステップS4)。基板Wの下面中央領域の洗浄時における基板洗浄装置1の各部の動作の詳細は後述する。
【0041】
ステップS4の洗浄時には、洗浄液が浸み込んだ下面ブラシ51により基板Wの下面中央領域が洗浄される。それにより、基板Wの下面中央領域に洗浄液が付着する。そこで、制御部9は、さらに台座装置30および下面洗浄装置50を制御することにより、基板Wの下面中央領域を乾燥させる(ステップS5)。具体的には、制御部9は、気体噴出部53から基板Wの下面に向けて気体が噴射された状態(気体カーテンが発生した状態)で、台座装置30を制御することにより、平面視で下面中央領域を通過するように基板Wの下面に対して気体噴出部53を移動させる。それにより、下面中央領域に基板Wに付着した洗浄液が気体カーテンにより基板Wの下面中央領域から外れた位置まで押し出され、下面中央領域が乾燥する。
【0042】
次に、制御部9は、受渡装置40を制御することにより、上側保持装置10A,10Bに保持された基板Wを複数の支持ピン41により受け取り、受け取った基板Wを下側保持装置20に渡す(ステップS6)。
【0043】
次に、制御部9は、下側保持装置20を制御することにより、基板Wの下面中央領域を吸着保持部21で吸着保持する(ステップS7)。ステップS6,S7の処理中には、平面視で基板Wの中心が吸着保持部21の中心に位置するように、台座装置30が位置決めされ。それにより、基板Wは、その基板Wの中心が吸着保持部21の回転中心(回転軸)上に位置する状態で、吸着保持部21により吸着保持される。
【0044】
さらに、制御部9は、下側保持装置20、台座装置30、下面洗浄装置50、上面洗浄装置70、端部洗浄装置80および乾燥装置100を制御することにより、基板Wの上面全体、外周端部および下面外側領域の洗浄を行う(ステップS8)。基板Wの下面外側領域の洗浄時における基板洗浄装置1の各部の動作の詳細は後述する。
【0045】
基板Wの上面全体、外周端部および下面外側領域の洗浄終了後、制御部9は、下側保持装置20を制御することにより、基板Wを高速で回転させ、基板Wの全体を乾燥させる(ステップS9)。基板Wを高速で回転させて基板Wの全体を乾燥させる乾燥方法は、スピン乾燥と呼ばれる。
【0046】
最後に、制御部9は、開閉装置90を制御することにより、搬入搬出口2xを開放する。それにより、基板Wが基板洗浄装置1の外部に搬送され(ステップS10)、基板洗浄処理が終了する。ステップS10で開放された搬入搬出口2xは、基板Wが搬出された後、シャッタ91により閉塞される。
【0047】
なお、制御部9は、上記の一連の処理のうちステップS8,S9の処理中、カップ装置60を制御することにより、カップ61を上カップ位置に保持する。それにより、基板Wの上面全体、外周端部および下面外側領域の洗浄時、および基板Wのスピン乾燥時に基板Wから飛散する液滴は、カップ61により受け止められ、基板洗浄装置1の外部に排出される。また、制御部9は、上記の一連の処理のうちステップS8,S9を除く処理(ステップS1~S7,S10)の間、カップ装置60を制御することにより、カップ61を下カップ位置に保持する。
【0048】
3.基板Wの下面上に定義される複数の領域
基板Wの下面中央領域および下面外側領域の洗浄時における基板洗浄装置1の各部の動作の詳細を説明するために、まず、基板Wの下面上に定義される複数の領域について説明する。それらの複数の領域は、上記の下面中央領域および下面外側領域に加えて、接触領域、離間領域および隙間領域を含む。
【0049】
図4は、本実施の形態に係る基板Wに定義される下面中央領域を説明するための基板Wの下面図である。下面中央領域R1は、上記のように、基板Wの下面のうち吸着保持部21の吸着面が吸着する領域である。そのため、下面中央領域R1は、
図4にハッチングで示すように、吸着保持部21の吸着面と同じ円形状を有する。下面中央領域R1の中心は、基板Wの中心WCに一致するか、またはほぼ一致する。また、下面中央領域R1の面積は、下面ブラシ51の洗浄面の面積よりも小さい。
図4では、下面中央領域R1とともに、基板Wの中心WCに下面ブラシ51の中心が位置合わせされたときの下面ブラシ51の外周円が一点鎖線で示される。なお、本実施の形態に係る基板Wは、例えば300mmの直径を有する。また、下面ブラシ51は、108mm程度の直径を有する。吸着保持部21の直径は、108mmよりも小さい。
【0050】
図5は、本実施の形態に係る基板Wに定義される下面外側領域を説明するための基板Wの下面図である。
図5にハッチングで示すように、下面外側領域R2は、基板Wの外周端部を含みかつ下面中央領域R1を取り囲む円環形状を有する。
図5では、下面外側領域R2とともに、
図4の下面中央領域R1の外形が点線で示される。さらに、基板Wの中心WCに下面ブラシ51の中心が位置合わせされたときの下面ブラシ51の洗浄面の外周円が一点鎖線で示される。本例では、下面外側領域R2の内径は、下面ブラシ51の洗浄面の外径よりも小さい。これに限らず、下面外側領域R2の内径と下面ブラシ51の洗浄面の外径とは、一致していてもよい。
【0051】
図6は、本実施の形態に係る基板Wに定義される接触領域および離間領域を説明するための基板Wの下面図である。本実施の形態に係る接触領域は、基板Wの下面中央領域R1を洗浄する場合に、基板Wから離間状態にある下面ブラシ51を基板Wの下面に接触させるときの基板Wの下面上の位置を意味する。また、本実施の形態に係る離間領域は、基板Wの下面中央領域R1を洗浄する場合に、基板Wに対して接触状態にある下面ブラシ51を基板Wの下面から離間させるときの基板Wの下面上の位置を意味する。
【0052】
図6にハッチングで示すように、本実施の形態に係る接触領域R3および離間領域R4は、基板Wの下面のうち共通の位置に定義され、ともに下面ブラシ51の洗浄面と同じ円形状を有する。また、接触領域R3および離間領域R4は、基板Wの外周端部と上記の下面中央領域R1との間に位置する。換言すれば、本実施の形態に係る接触領域R3および離間領域R4は、基板Wの下面のうち下面中央領域R1に重ならない。
図6では、接触領域R3および離間領域R4とともに、
図4の下面中央領域R1の外周円が点線で示される。また、
図6では、
図5の下面外側領域R2の内周円が二点鎖線で示される。
【0053】
図7は、本実施の形態に係る基板Wに定義される隙間領域を説明するための基板Wの下面図である。
図7にドットパターンで示すように、本実施の形態に係る隙間領域R5は、基板Wの外周端部の一部と
図6の接触領域R3および離間領域R4との間に位置する領域である。
図7では、隙間領域R5とともに、
図6の接触領域R3および離間領域R4の外周円が点線で示される。
【0054】
4.基板Wの下面洗浄時の基板洗浄装置1の各部の動作の詳細
図8~
図10は、基板Wの下面洗浄時の基板洗浄装置1の各部の動作の詳細を説明するための図である。ここでいう基板Wの下面洗浄時とは、
図3のステップS4の開始時点からステップS9の終了までの間の期間を意味する。
図8~
図10の各々には、基板Wの下面洗浄時の複数の時点における基板洗浄装置1の一部(主として下側保持装置20、台座装置30および下面洗浄装置50)の動作状態が左から右に時系列順で並ぶように示される。また、
図8~
図10では、各時点における基板洗浄装置1の動作状態が、模式的平面図および模式的側面図で示される。
図8~
図10に示される模式的側面図は、
図1のA-A線における模式的側面図に相当する。さらに、
図8~
図10では、各時点における基板Wの下面の洗浄状態が基板Wの下面図で示される。
【0055】
図11は、
図8~
図10に示される基板Wの下面洗浄時における
図1の下面ブラシ51の回転速度の変化を示すタイムチャートである。
図11のタイムチャートは、グラフにより示される。
図11のグラフにおいては、縦軸が下面ブラシ51の回転速度を表し、横軸が時間を表す。
図12は、
図8~
図10に示される基板Wの下面洗浄時における基板Wの回転速度の変化を示すタイムチャートである。
図12のタイムチャートは、グラフにより示される。
図12のグラフにおいては、縦軸が基板Wの回転速度を表し、横軸が時間を表す。
【0056】
ここで、基板洗浄装置1における基板Wの下面洗浄時には、台座装置30の可動台座32は、Y方向において、リニアガイド31上で予め定められた第1の水平位置P1、第2の水平位置P2および第3の水平位置P3の間を移動する。
図8~
図12の模式的側面図において符号P1が付された点は、可動台座32が第1の水平位置P1にある時の可動台座32の中心部の位置を示す。また、符号P2が付された点は、可動台座32が第2の水平位置P2にある時の可動台座32の中心部の位置を示す。さらに、符号P3が付された点は、可動台座32が第3の水平位置P3にある時の可動台座32の中心部の位置を示す。
【0057】
また、基板洗浄装置1における基板Wの下面洗浄時には、下面ブラシ51は、Z方向(上下方向)において、可動台座32上で予め定められた第1の高さ位置、第2の高さ位置および第3の高さ位置の間を移動する。第1の高さ位置は、昇降回転支持部54により昇降可能な範囲のうち下面ブラシ51が最も低い位置にあるときの下面ブラシ51の高さ位置である。第2の高さ位置は、第1の高さ位置よりも高く、下面ブラシ51の洗浄面が上側保持装置10A,10Bにより保持された基板Wの下面に接触するときの下面ブラシ51の高さ位置である。第3の高さ位置は、第1の高さ位置よりも高く、第2の高さ位置よりも低く、下面ブラシ51の洗浄面が下側保持装置20により吸着保持された基板Wの下面に接触するときの下面ブラシ51の高さ位置である。
【0058】
以下、
図8~
図12を用いて、基板Wの下面洗浄時の台座装置30および下面洗浄装置50の動作の詳細を説明する。
図8の左部分に示すように、基板Wの下面洗浄が開始される時点t1においては、基板Wが、上側保持装置10A,10Bにより水平姿勢で保持され、基板洗浄装置1内に固定される。この状態で、台座装置30の可動台座32は、第1の水平位置P1にある。このとき、吸着保持部21の回転中心(回転軸)は、基板Wの中心WCを通る鉛直軸上に位置する。また、平面視で、下面ブラシ51の洗浄面の大部分(一部分)が基板Wに重なり、下面ブラシ51の洗浄面の微小部分(残りの他の部分)が基板Wの外周端部の外側に位置する。基板Wの半径方向において、基板Wの下面に対する下面ブラシ51の洗浄面のはみだし量の最大値は、例えば7mmである(
図8の左部分上段の符号d1参照)。
【0059】
さらに、時点t1においては、基板Wの下方で第1の高さ位置に下面ブラシ51が保持される。それにより、下面ブラシ51は、基板Wから所定距離離間している。また、下面ブラシ51は予め定められた第1の回転速度bv1で回転し(
図11参照)、液ノズル52から下面ブラシ51に洗浄液が供給されている。第1の回転速度bv1は、下面ブラシ51に供給される洗浄液が下面ブラシ51の周囲に飛散しない程度(例えば60rpm以上130rpm以下)に設定され、本実施の形態では60rpmである。なお、時点t1から後述する時点t8にかけては、吸着保持部21の回転は停止されている(
図12参照)。
【0060】
基板Wの下面洗浄が開始されると、基板Wの下面中央領域を洗浄するために、時点t1から時点t2にかけて可動台座32が第1の水平位置P1から第2の水平位置P2に向かって移動する。
図8の中央部分に示すように、時点t2で可動台座32が第2の水平位置P2にある状態で、吸着保持部21の回転中心(回転軸)は、基板Wの中心WCを通る鉛直軸からずれる。また、平面視で、下面ブラシ51の洗浄面の全体が基板Wに重なる。このとき、基板Wの半径方向において、下面ブラシ51の外周端部と基板Wの外周端部との間には、隙間が形成されている。下面ブラシ51の外周端部と基板Wの外周端部との間の隙間の大きさの最小値は、例えば3mmである(
図8の中央部分上段の符号d2参照)。可動台座32が第2の水平位置P2にある状態で、上下方向において下面ブラシ51の洗浄面に対向する基板Wの下面上の領域が、
図6の接触領域R3となる。
【0061】
次に、時点t2で、液ノズル52から下面ブラシ51への洗浄液の供給が停止される。また、時点t2から、昇降回転支持部54により下面ブラシ51が基板Wの下面に向かって上昇する。それにより、
図8の右部分に示すように、時点t3で下面ブラシ51が第2の高さ位置に到達することにより、下面ブラシ51が基板Wの下面の接触領域R3に接触する。ここで、下面ブラシ51の回転速度は、
図11に示すように、時点t2から時点t3にかけて、下面ブラシ51の上昇とともに第1の回転速度bv1から予め定められた第2の回転速度bv2まで上昇する。第2の回転速度bv2は、第1の回転速度bv1よりも高い所定の速度範囲(例えば100rpm以上200rpm以下)内に設定され、本実施の形態では150rpmである。
【0062】
上記のように、基板Wの下面に洗浄液が浸み込んだ下面ブラシ51が接触し、当該下面ブラシ51が回転することにより、基板Wの下面における下面ブラシ51の接触部分(接触領域R3)が洗浄される。
図8の右部分下段の基板Wの下面図では、下面ブラシ51による洗浄箇所がハッチングで示される。このとき、平面視で基板Wの外周端部と接触領域R3との間の隙間領域R5には、下面ブラシ51が接触しない。それにより、接触領域R3で下面ブラシ51により除去された汚染物質が、隙間領域R5を超えて基板Wの外周端部から基板Wの上面側に回り込むことが抑制される。したがって、基板Wの外周端部および基板Wの上面の清浄度の低下が抑制される。
【0063】
次に、基板Wの下面に下面ブラシ51が接触した状態で、時点t3から時点t4にかけて可動台座32が第2の水平位置P2から第3の水平位置P3に向かってY方向に移動する。このとき、下面ブラシ51の回転速度は、第2の回転速度bv2で維持される。それにより、
図9の左部分下段の基板Wの下面図にハッチングで示すように、基板Wの下面のうち下面中央領域R1を含む一部の領域が下面ブラシ51により洗浄される。
【0064】
さらに、その後、基板Wの下面に下面ブラシ51が接触した状態で、時点t4から時点t5にかけて可動台座32が第3の水平位置P3から第2の水平位置P2に向かってY方向に移動する。これにより、
図9の中央部分に示すように、下面ブラシ51が基板Wの下面における離間領域R4に到達する。ここで、時点t3から時点t5までの間、気体噴出部53から基板Wの下面に向けて気体が噴射され、気体カーテンが形成される。それにより、下面ブラシ51に含まれる洗浄液が基板Wの下面に付着する場合でも、それらの洗浄液が下面中央領域R1に残留することが抑制される。
【0065】
時点t5においては、平面視で基板Wの外周端部と隙間領域R5との間の隙間領域R5に、下面ブラシ51が接触しない。それにより、隙間領域R5で下面ブラシ51により除去された汚染物質が、隙間領域R5を超えて基板Wの外周端部から基板Wの上面側に回り込むことが抑制される。したがって、基板Wの外周端部および基板Wの上面の清浄度の低下が抑制される。
【0066】
次に、時点t5から時点t6にかけて、下面ブラシ51が基板Wから遠ざかるように下降する。それにより、下面ブラシ51が基板Wの離間領域R4から離間し、
図9の右部分に示すように、時点t6で下面ブラシ51が第1の高さ位置に到達する。ここで、下面ブラシ51の回転速度は、
図11に示すように、時点t5から時点t6にかけて、下面ブラシ51の下降とともに第2の回転速度bv2から第1の回転速度bv1まで下降する。また、時点t6では、液ノズル52から下面ブラシ51への洗浄液の供給が再開される。これにより、下面ブラシ51に付着した汚染物質が、供給された洗浄液により洗い流される。
【0067】
次に、時点t6から時点t7にかけて可動台座32が第2の水平位置P2から第1の水平位置P1に向かって移動する。これにより、
図10の左部分に示すように、下面ブラシ51が基板Wの下面洗浄開始時である時点t1の状態に戻る(
図8の左部分参照)。
【0068】
続いて、時点t6から時点t7にかけて、基板Wが
図1の受渡装置40により上側保持装置10A,10Bから下側保持装置20に渡される。それにより、
図10の中央部分に示すように、時点t8で、台座装置30の可動台座32が第1の水平位置P1にある状態で、基板Wの下面中央領域R1が下側保持装置20の吸着保持部21により吸着保持される。
【0069】
その後、液ノズル52から下面ブラシ51への洗浄液の供給が停止され、
図12に示すように、下側保持装置20による基板Wの回転が開始される。下側保持装置20により回転する基板Wの回転速度wv1は、例えば200rpm以上500rpm以下に設定され、本実施の形態では500rpmである。また、下側保持装置20により回転する基板Wの下面に向けて、図示しないバックリンスノズルから洗浄液が供給される。
【0070】
次に、下面ブラシ51が基板Wの下面に向かって上昇する。それにより、
図10の右部分に示すように、時点t9で下面ブラシ51が第3の高さ位置に到達することにより、下面ブラシ51が回転する基板Wの下面外側領域R2に接触する。
【0071】
時点t9から一定期間経過後の時点t10まで、基板Wの回転が維持されつつ基板Wの下面外側領域R2に下面ブラシ51が接触する状態が維持される。それにより、基板Wの下面外側領域R2が洗浄される。
図10の右部分下段の基板Wの下面図では、下面ブラシ51による洗浄箇所がハッチングで示される。
【0072】
時点t9から時点t10の期間においては、回転する基板Wに対して
図1の上面洗浄装置70による当該基板Wの上面の洗浄がさらに行われる。また、回転する基板Wに対して
図1の端部洗浄装置80による当該基板Wの外周端部の洗浄がさらに行われる。これにより、基板Wの下面外側領域R2の洗浄時には、基板Wの外周端部から基板Wの上面への汚染物質の回り込みが生じない。基板Wの上面および外周端部の洗浄についての詳細な説明は省略する。
【0073】
その後、時点t10から時点t11にかけて、昇降回転支持部54により下面ブラシ51が基板Wから遠ざかるように下降する。また、所定期間、基板Wの回転速度wv1が維持される。これにより、基板Wがスピン乾燥される。最後に、
図12に示すように、時点t12で、基板Wの回転が停止され、基板Wの下面洗浄が完了する。
【0074】
5.実施の形態の効果
(a)基板Wの下面から離間した状態にある下面ブラシ51が基板Wの下面の一部の領域に接触する場合、基板Wの下面の当該一部の領域には、下面ブラシ51の接触に起因する汚染物質が残留しやすい。この場合の汚染物質の残留の程度は、下面ブラシ51が基板Wの下面の一部の領域に接触するときの下面ブラシ51と基板Wとの間の相対速度差が大きい場合に低くなる。
【0075】
また、基板Wの下面の一部の領域に接触した状態にある下面ブラシ51が基板Wの下面から離間する場合、基板Wの下面の当該一部の領域には、下面ブラシ51の離間に起因する汚染物質が残留しやすい。この場合の汚染物質の残留の程度は、下面ブラシ51が基板Wの下面の一部の領域から離間するときの下面ブラシ51と基板Wとの間の相対速度差が大きい場合に低くなる。
【0076】
上記の基板洗浄装置1においては、基板Wの下面中央領域R1の洗浄時に下面ブラシ51が第2の高さ位置に配置される。基板Wの下面に接触する下面ブラシ51が回転することにより、基板W上に付着する汚染物質が除去される。一方、基板Wの下面の洗浄が行われない場合には、下面ブラシ51が第1の高さ位置に配置される。第1の高さ位置においては、下面ブラシ51は第1の回転速度bv1で回転する。このとき、下面ブラシ51の回転速度が過剰に高いと、下面ブラシ51に付着する汚染物質または液滴等が下面ブラシ51の周辺に飛散し、基板洗浄装置1内部の清浄度を低下させる。そのため、第1の回転速度bv1は、少なくとも基板Wの下面中央領域R1の洗浄時の第2の回転速度bv2よりも低く設定される。
【0077】
上記の構成によれば、下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)で、下面ブラシ51が第1の回転速度bv1よりも高い第2の回転速度bv2で回転する。また、下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)で、下面ブラシ51が第1の回転速度bv1よりも高い第2の回転速度bv2で回転する。それにより、下面ブラシ51が基板Wに接触する時点および基板Wから離間する時点で下面ブラシ51が第1の回転速度bv1で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板Wの下面の清浄度が向上する。
【0078】
なお、基板Wの下面外側領域R2の洗浄時には、基板Wが吸着保持部21により吸着保持された状態で比較的高い回転速度(例えば500rpm)で回転する。そのため、下面ブラシ51の回転速度が第1の回転速度bv1に維持される場合であっても、下面ブラシ51と基板Wとの間には、比較的高い回転速度差が発生する。したがって、下面ブラシ51が基板Wに接触する際および基板Wから離間する際に、基板Wの下面に当該接触および離間に起因する汚染物質が残留することが抑制される。
【0079】
(b)下面ブラシ51の接触に起因する汚染物質の残留の程度は、下面ブラシ51が基板Wに接触するときの下面ブラシ51と基板Wとの間の相対速度差が特定の相対速度差よりも大きい場合に著しく低下する。また、下面ブラシ51の離間に起因する汚染物質の残留の程度も、下面ブラシ51の接触に起因する汚染物質の残留の程度と同様に、下面ブラシ51が基板Wから離間するときの下面ブラシ51と基板Wとの間の相対速度差が特定の相対速度差よりも大きい場合に著しく低下する。さらに、それらの特定の相対速度差は、基板Wの下面中央領域R1が洗浄されるときの第2の回転速度bv2よりも低い。
【0080】
上記の基板洗浄装置1によれば、下面ブラシ51が基板Wに接触する時点および基板Wから離間する時点で、下面ブラシ51が第2の回転速度bv2で回転する。それにより、下面ブラシ51が第1の回転速度bv1で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板Wの下面の清浄度がより向上する。
【0081】
なお、上記の特定の相対速度差は、基板Wと下面ブラシ51との組み合わせ等に応じて、実験またはシミュレーションにより求められてもよい。この場合、基板Wに対する下面ブラシ51の接触時点および離間時点の下面ブラシ51の回転速度を求められた特定の相対速度差よりも大きく設定することにより、洗浄後の基板Wの下面の清浄度を向上させることができる。
【0082】
(c)上記実施の形態においては、基板Wの下面中央領域R1を洗浄するために、第1の高さ位置にある下面ブラシ51が第2の高さ位置に上昇する。このとき、下面ブラシ51の回転速度は、下面ブラシ51の上昇とともに第1の回転速度bv1から第2の回転速度bv2に上昇する(
図11の時点t2~時点t3)。
【0083】
この場合、下面ブラシ51の上昇と下面ブラシ51の回転速度の調整とが並行して行われるので、下面ブラシ51の回転速度を調整することによる基板Wの洗浄効率の低下が抑制される。
【0084】
なお、下面ブラシ51の回転速度は、下面ブラシ51が第2の高さ位置に到達するときに第2の回転速度bv2であればよい。したがって、下面ブラシ51の回転速度は、
図11の例に限らず、時点t2から時点t3にかけて段階的に上昇してもよいし、加速度を変化させつつ連続的に上昇してもよい。
【0085】
(d)上記実施の形態においては、基板Wの下面中央領域R1の洗浄後に、第2の高さ位置にある下面ブラシ51が第1の高さ位置に下降する。このとき、下面ブラシ51の回転速度は、下面ブラシ51の下降とともに第2の回転速度bv2から第1の回転速度bv1に下降する(
図11の時点t5~時点t6)。
【0086】
この場合、下面ブラシ51の下降と下面ブラシ51の回転速度の調整とが並行して行われるので、下面ブラシ51の回転速度を調整することによる基板Wの洗浄効率の低下が抑制される。
【0087】
なお、下面ブラシ51の回転速度は、下面ブラシ51が第2の高さ位置から下降を開始するときに第2の回転速度bv2であればよい。したがって、下面ブラシ51の回転速度は、
図11の例に限らず、時点t5から時点t6にかけて段階的に下降してもよいし、加速度を変化させつつ連続的に下降してもよい。
【0088】
(e)基板Wの下面から離間した状態にある下面ブラシ51が基板Wの下面の一部の領域に接触する場合、当該一部の領域には下面ブラシ51の接触に起因する汚染物質が残留しやすい。また、基板に接触した状態にある洗浄具が基板の下面の一部の領域から離間する場合、当該一部の領域には下面ブラシ51の離間に起因する汚染物質が残留しやすい。
【0089】
以下の説明では、
図11および
図12に示すように、下面ブラシ51が基板Wの下面に接触する期間を接触期間と呼ぶ。
【0090】
上記の基板洗浄装置1においては、下面ブラシ51が基板Wの下面に接触する接触期間のうち少なくとも一部の期間で下面ブラシ51が基板Wの下面中央領域R1に接触する。それにより、基板Wの下面中央領域R1が洗浄される。また、接触領域R3および離間領域R4が、基板Wの下面中央領域R1に重ならない。それにより、接触領域R3および離間領域R4が下面中央領域R1に重なる場合に比べて、洗浄後の基板Wの下面中央領域R1に汚染物質が残留しにくい。したがって、洗浄後の基板Wの下面中央領域R1の清浄度が向上する。
【0091】
(f)上記の基板洗浄装置1においては、基板Wの下面中央領域R1の洗浄後、下側保持装置20により下面中央領域R1が吸着保持されつつ基板Wの下面外側領域R2が洗浄される。ここで、接触領域R3および離間領域R4は、大部分が下面外側領域R2に重なる。それにより、基板Wの下面中央領域R1の洗浄後に、接触領域R3および離間領域R4に汚染物質が残留する場合でも、その汚染物質が基板Wの下面外側領域R2の洗浄時に除去される。したがって、基板Wの下面中央領域R1および下面外側領域R2の洗浄後の基板Wの下面全体の清浄度が向上する。
【0092】
また、上記の構成によれば、基板Wの下面外側領域R2の洗浄時に下面中央領域R1が高い清浄度を有するので、複数の基板Wが順次洗浄される場合でも、吸着保持部21を介した複数の基板W間のクロスコンタミネーションの発生が抑制される。
【0093】
6.下面ブラシ51の接触および離間に起因する汚染についての試験
本発明者らは、上記の基板洗浄装置1において、接触領域R3および離間領域R4が基板Wの下面中央領域R1に重ならないことにより、洗浄後の基板Wの清浄度がどれだけ向上するのかを確認するために以下の試験を行った。
【0094】
まず、本発明者らは、上記の
図8~
図12の例に従う下面洗浄後の基板Wを実施例に係る洗浄後基板として用意した。また、本発明者らは、下面中央領域R1に重なるように接触領域R3および隙間領域R5が設定される点を除いて
図8~
図12の例と同様の手順で下面洗浄が行われた洗浄後の基板Wを、比較例に係る洗浄後基板として用意した。
【0095】
具体的には、比較例に係る基板Wの下面中央領域R1の洗浄時には、可動台座32が第3の水平位置P3に保持された状態で、下面ブラシ51を第1の高さ位置から第2の高さ位置に上昇させることにより下面ブラシ51の洗浄面を基板Wの接触領域R3(下面中央領域R1)に接触させた。また、可動台座32が第3の水平位置P3に保持された状態で、下面ブラシ51を第2の高さ位置から第1の高さ位置に下降させることにより下面ブラシ51の洗浄面を基板Wの離間領域R4(下面中央領域R1)から離間させた。
【0096】
さらに、本発明者らは、上記のようにして用意した実施例および比較例に係る洗浄後基板の各々の下面について、パーティクルカウンタにより汚染状態を確認した。
図13は実施例に係る洗浄後基板の下面の汚染分布図であり、
図14は比較例に係る洗浄後基板の下面の汚染分布図である。
図13および
図14では、実施例および比較例に係る洗浄後基板の下面に付着した汚染物質の分布が複数の黒点で示される。
【0097】
図13および
図14に示すように、実施例に係る洗浄後基板の下面に付着した汚染物質の量は、比較例に係る洗浄後基板の下面に付着した汚染物質の量よりも少ない。また、実施例に係る洗浄後基板の下面においては、下面中央領域R1の外周部およびその近傍周辺に吸着保持部21によるチャック痕が認められるが、その他の領域に付着する汚染物質の量は比較的少ない。
【0098】
一方、比較例に係る洗浄後基板の下面においては、下面中央領域R1の外周部およびその近傍周辺に吸着保持部21によるチャック痕とともに多数の汚染物質が付着している。また、その他の領域に付着する汚染物質の量も比較的多い。
【0099】
これらの結果、接触領域R3および離間領域R4が基板Wの下面中央領域R1に重ならないように設定されることにより、下面ブラシ51の接触または離間に起因する汚染物質が、下面中央領域R1に残留しにくいことが明らかとなった。
【0100】
7.他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、接触領域R3および離間領域R4がともに下面中央領域R1に重ならないように定められるが、本発明はこれに限定されない。接触領域R3および離間領域R4のうちいずれか一方が下面中央領域R1に重なってもよい。あるいは、接触領域R3および離間領域R4の両方が下面中央領域R1に重なってもよい。
【0101】
(b)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)で、下面ブラシ51は第2の回転速度bv2で回転する。上記実施の形態に係る第2の回転速度bv2は、基板Wの下面中央領域R1を洗浄するときの下面ブラシ51の回転速度である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0102】
下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)に対応する第2の回転速度bv2は、下面ブラシ51が下面中央領域R1に接触して下面中央領域R1を洗浄するときの回転速度(以下、第3の回転速度と呼ぶ。)よりも高く設定されてもよい。ここで、第3の回転速度は、例えば下面ブラシ51が下面中央領域R1に接触する状態で当該下面中央領域R1を好適に洗浄可能な速度である。
【0103】
また、上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)で、下面ブラシ51は第2の回転速度bv2で回転する。上記実施の形態に係る第2の回転速度bv2は、基板Wの下面中央領域R1を洗浄するときの下面ブラシ51の回転速度である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0104】
下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)に対応する第2の回転速度bv2は、下面ブラシ51が下面中央領域R1に接触して下面中央領域R1を洗浄するときの回転速度(第3の回転速度と呼ぶ。)よりも高く設定されてもよい。
【0105】
また、下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)の回転速度は、下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)の回転速度とは異なっていてもよい。
【0106】
上記のように、基板Wに対する下面ブラシ51の接触時点および離間時点に対応する下面ブラシ51の第2の回転速度bv2が第3の回転速度よりも高く設定される例を説明する。
図15は、他の実施の形態に係る下面ブラシ51の回転制御を説明するためのタイムチャートである。
図15のタイムチャートは、
図11のタイムチャートに対応し、基板Wの下面洗浄時における
図1の下面ブラシ51の回転速度の変化を示す。
図15のタイムチャートにおいて、
図11のタイムチャートとは異なる点を説明する。
【0107】
図15に示すように、本例では、下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)および下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)の下面ブラシ51の第2の回転速度bv2が、第1の回転速度bv1および第3の回転速度bv3よりも高く設定されている。例えば、第3の回転速度bv3が150rpmである場合に、第2の回転速度bv2は例えば200rpm以上250rpm以下に設定される。
【0108】
上記のように、下面ブラシ51の接触および離間に起因する汚染物質の残留の程度は、下面ブラシ51と基板Wとの間の相対速度差が大きい場合に低くなる。したがって、
図15の例によれば、下面ブラシ51の接触および離間に起因する汚染物質の残留の程度がより低くなる。
【0109】
(c)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、下面中央領域R1を洗浄するために下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)と、下面中央領域R1の洗浄後に下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)との両方の時点で、下面ブラシ51が第2の回転速度bv2で回転する。本発明はこれに限定されない。下面ブラシ51が基板Wに接触する時点(
図11の時点t3)および下面ブラシ51が基板Wから離間する時点(
図11の時点t5)のうち一方の時点で、下面ブラシ51は、第2の回転速度bv2よりも低い回転速度で回転してもよい。
【0110】
(d)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、基板Wに隙間領域R5が定められている。それにより、上側保持装置10A,10Bにより保持された基板Wの下面中央領域R1の洗浄時に、下面ブラシ51は基板Wの外周端部に接触しない。しかしながら、本発明はこれに限定されない。基板Wには、隙間領域R5が設定されなくてもよい。
【0111】
(e)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、基板Wの下面中央領域R1および下面外側領域R2がともに下面洗浄装置50により洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの下面中央領域R1を洗浄するための構成と、基板Wの下面外側領域R2を洗浄するための構成とが個別に設けられてもよい。
【0112】
8.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0113】
上記実施の形態においては、上側保持装置10A,10Bが第1の基板保持部の例であり、下面ブラシ51が洗浄具の例であり、昇降回転支持部54が洗浄部回転駆動部の例であり、第2の高さ位置が接触位置の例であり、第1の高さ位置が離間位置の例であり、台座装置30および昇降回転支持部54が洗浄具移動部の例であり、第1の回転速度bv1が第1の回転速度の例であり、第2の回転速度bv2が第2の回転速度の例であり、第3の回転速度bv3が第3の回転速度の例である。
【0114】
また、
図8~
図12に示される基板Wの下面洗浄時における時点t3が第1の時点の例であり、
図8~
図12に示される基板Wの下面洗浄時における時点t5が第2の時点の例であり、基板洗浄装置1が基板洗浄装置の例であり、下面中央領域R1が下面中央領域の例であり、下側保持装置20が第2の基板保持部の例であり、下面外側領域R2が下面外側領域の例である。
【0115】
9.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る基板洗浄装置は、
基板の外周端部を保持する第1の基板保持部と、
前記基板の下面に接触して当該基板の下面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させる洗浄具回転駆動部と、
前記洗浄具回転駆動部により回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させる洗浄具移動部とを備え、
前記洗浄具回転駆動部は、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させ、
前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させる。
【0116】
基板の下面から離間した状態にある洗浄具が基板の下面の一部の領域に接触する場合、基板の下面の当該一部の領域には、洗浄具の接触に起因する汚染物質が残留しやすい。この場合の汚染物質の残留の程度は、洗浄具が基板の下面の一部の領域に接触するときの洗浄具と基板との間の相対速度差が大きい場合に低くなる。
【0117】
また、基板の下面の一部の領域に接触した状態にある洗浄具が基板の下面から離間する場合、基板の下面の当該一部の領域には、洗浄具の離間に起因する汚染物質が残留しやすい。この場合の汚染物質の残留の程度は、洗浄具が基板の下面の一部の領域から離間するときの洗浄具と基板との間の相対速度差が大きい場合に低くなる。
【0118】
その基板洗浄装置においては、基板の下面の洗浄時に洗浄具が接触位置に配置される。基板の下面に接触する洗浄具が回転することにより、基板上に付着する汚染物質が除去される。一方、基板の下面の洗浄が行われない場合には、洗浄具が離間位置に配置される。離間位置においては、洗浄具は第1の回転速度で回転する。このとき、洗浄具の回転速度が過剰に高いと、洗浄具に付着する汚染物質または液滴等が洗浄具の周辺に飛散し、基板洗浄装置内部の清浄度を低下させる。そのため、第1の回転速度は、少なくとも基板の洗浄時の回転速度よりも低く設定される。
【0119】
上記の構成によれば、第1の時点および第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、洗浄具が第1の回転速度よりも高い回転速度で回転する。それにより、第1の時点および第2の時点の両方の時点で、洗浄具が第1の回転速度で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板の下面の清浄度が向上する。
【0120】
(第2項)第1項に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具には洗浄液が供給され、
前記第1の回転速度は、前記洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度の回転速度であってもよい。
【0121】
この場合、離間位置で洗浄具に供給される洗浄液は、洗浄具が第1の回転速度で回転することにより発生する遠心力で、洗浄具の表面またはその内部を円滑に流れる。したがって、離間位置において洗浄具に付着する汚染物質が洗浄液により円滑に洗い流される。また、第1の回転速度が洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度に設定されているので、離間位置における洗浄具の回転に起因して、基板洗浄装置内部の清浄度が低下することが抑制される。
【0122】
(第3項)第1項または第2項に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄具回転駆動部は、前記洗浄具が前記接触位置にありかつ前記洗浄具が前記基板の下面に接触する状態で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第3の回転速度で回転させ、
前記第2の回転速度は、前記第3の回転速度以上の回転速度であってもよい。
【0123】
洗浄具の接触に起因する汚染物質の残留の程度は、洗浄具が基板に接触するときの洗浄具と基板との間の相対速度差が特定の相対速度差よりも大きい場合に著しく低下する。また、洗浄具の離間に起因する汚染物質の残留の程度も、洗浄具の接触に起因する汚染物質の残留の程度と同様に、洗浄具が基板から離間するときの洗浄具と基板との間の相対速度差が特定の相対速度差よりも大きい場合に著しく低下する。さらに、それらの特定の相対速度差は、基板の下面が洗浄されるときの第3の回転速度よりも低い。
【0124】
上記の基板洗浄装置によれば、第1の時点および第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、洗浄具が第3の回転速度以上の回転速度で回転する。それにより、第1の時点および第2の時点の両方の時点で、洗浄具が第1の回転速度で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板の下面の清浄度がより向上する。
【0125】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄具回転駆動部は、
前記第1の時点よりも前でかつ前記洗浄具が前記離間位置から移動して前記接触位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度まで上昇させてもよい。
【0126】
この場合、第1の時点で洗浄具の回転速度を第2の回転速度にすることができる。また、洗浄具の移動と洗浄具の回転速度の調整とが並行して行われるので、洗浄具の回転速度を調整することによる基板の洗浄効率の低下が抑制される。
【0127】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄具回転駆動部は、
前記第2の時点よりも後でかつ前記洗浄具が前記接触位置から移動して前記離間位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第2の回転速度から前記第1の回転速度まで下降させてもよい。
【0128】
この場合、第2の時点で洗浄具の回転速度を第2の回転速度にすることができる。また、洗浄具の移動と洗浄具の回転速度の調整とが並行して行われるので、洗浄具の回転速度を調整することによる基板の洗浄効率の低下が抑制される。
【0129】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄具移動部は、前記基板が前記第1の基板保持部により保持された状態で、前記基板の下面中央領域に接触するように前記洗浄具を移動させることにより前記基板の下面中央領域を洗浄し、
前記基板洗浄装置は、
前記基板の前記下面中央領域の洗浄後、前記下面中央領域を吸着保持しつつ上下方向の軸の周りで前記基板を回転させる第2の基板保持部をさらに備え、
前記洗浄具移動部は、前記洗浄具が前記基板の前記下面中央領域を取り囲む下面外側領域に接触するように、前記第2の基板保持部により保持されて回転する前記基板に対して前記洗浄具を相対的に移動させてもよい。
【0130】
この場合、基板の下面中央領域の洗浄後、第2の基板保持部により下面中央領域が吸着保持されつつ基板の下面外側領域が洗浄される。したがって、基板の下面中央領域および下面外側領域の洗浄後の基板の下面全体の清浄度が向上する。
【0131】
また、上記の構成によれば、基板の下面外側領域の洗浄時に下面中央領域が高い清浄度を有するので、複数の基板が順次洗浄される場合でも、第2の基板保持部を介した複数の基板間のクロスコンタミネーションの発生が抑制される。
【0132】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載の基板洗浄装置において、
前記第1の基板保持部は、前記基板を回転させることなく前記基板の外周端部を保持するように構成されてもよい。
【0133】
この場合、一定姿勢で固定された基板の下面を効率よく洗浄することができる。
【0134】
(第8項)第8項に係る基板洗浄方法は、
第1の基板保持部により基板の外周端部を保持するステップと、
洗浄具を前記基板の下面に接触させて当該基板の下面を洗浄するステップと、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップと、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップにより回転する前記洗浄具を、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面に接触する接触位置と、当該洗浄具が前記第1の基板保持部により保持される前記基板の下面から一定距離離間した離間位置との間で移動させるステップとを含み、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具を第1の回転速度で回転させることと、
前記洗浄具が前記離間位置から前記接触位置へ移動する場合に前記基板の下面から離間した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面に接触する時点を第1の時点とし、前記洗浄具が前記接触位置から前記離間位置へ移動する場合に前記基板の下面に接触した状態にある前記洗浄具が前記基板の下面から離間する時点を第2の時点とした場合に、前記第1の時点および前記第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させることとを含む。
【0135】
その基板洗浄方法においては、基板の下面の洗浄時に洗浄具が接触位置に配置される。基板の下面に接触する洗浄具が回転することにより、基板上に付着する汚染物質が除去される。一方、基板の下面の洗浄が行われない場合には、洗浄具が離間位置に配置される。離間位置においては、洗浄具は、少なくとも基板の洗浄時の回転速度よりも低い第1の回転速度で回転する。
【0136】
上記の基板洗浄方法によれば、第1の時点および第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、洗浄具が第1の回転速度よりも高い回転速度で回転する。それにより、第1の時点および第2の時点の両方の時点で、洗浄具が第1の回転速度で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板の下面の清浄度が向上する。
【0137】
(第9項)第8項に記載の基板洗浄方法において、
前記洗浄具が前記離間位置にあるときに、前記洗浄具には洗浄液が供給され、
前記第1の回転速度は、前記洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度の回転速度であってもよい。
【0138】
この場合、離間位置で洗浄具に供給される洗浄液は、洗浄具が第1の回転速度で回転することにより発生する遠心力で、洗浄具の表面またはその内部を円滑に流れる。したがって、離間位置において洗浄具に付着する汚染物質が洗浄液により円滑に洗い流される。また、第1の回転速度が洗浄具に供給される洗浄液が飛散しない程度に設定されているので、離間位置における洗浄具の回転に起因して、離間位置を含む洗浄環境の清浄度が低下することが抑制される。
【0139】
(第10項)第8項または第9項に記載の基板洗浄方法において、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、前記洗浄具が前記接触位置にありかつ前記洗浄具が前記基板の下面に接触する状態で、前記洗浄具を前記第1の回転速度よりも高い第3の回転速度で回転させることを含み、
前記第2の回転速度は、前記第3の回転速度以上の回転速度であってもよい。
【0140】
この場合、第1の時点および第2の時点のうち少なくとも一方の時点で、洗浄具が第3の回転速度以上の回転速度で回転する。それにより、第1の時点および第2の時点の両方の時点で、洗浄具が第1の回転速度で回転するかまたは無回転である場合に比べて、洗浄後の基板の下面の清浄度がより向上する。
【0141】
(第11項)第8項~第10項のいずれか一項に記載の基板洗浄方法において、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記第1の時点よりも前でかつ前記洗浄具が前記離間位置から移動して前記接触位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度まで上昇させることを含んでもよい。
【0142】
この場合、第1の時点で洗浄具の回転速度を第2の回転速度にすることができる。また、洗浄具の移動と洗浄具の回転速度の調整とが並行して行われるので、洗浄具の回転速度を調整することによる基板の洗浄効率の低下が抑制される。
【0143】
(第12項)第8項~第11項のいずれか一項に記載の基板洗浄方法において、
前記洗浄具を上下方向の軸の周りで回転させるステップは、
前記第2の時点よりも後でかつ前記洗浄具が前記接触位置から移動して前記離間位置に到達するまでの間に、前記洗浄具の回転速度を前記第2の回転速度から前記第1の回転速度まで下降させることを含んでもよい。
【0144】
この場合、第2の時点で洗浄具の回転速度を第2の回転速度にすることができる。また、洗浄具の移動と洗浄具の回転速度の調整とが並行して行われるので、洗浄具の回転速度を調整することによる基板の洗浄効率の低下が抑制される。
【0145】
(第13項)第8項~第12項のいずれか一項に記載の基板洗浄方法において、
前記洗浄具を移動させるステップは、前記基板が前記第1の基板保持部により保持された状態で、前記基板の下面中央領域に接触するように前記洗浄具を移動させることにより前記基板の下面中央領域を洗浄することを含み、
前記基板洗浄方法は、
前記基板の前記下面中央領域の洗浄後、第2の基板保持部により前記下面中央領域を吸着保持しつつ上下方向の軸の周りで前記基板を回転させるステップをさらに含み、
前記洗浄具を移動させるステップは、前記洗浄具が前記基板の前記下面中央領域を取り囲む下面外側領域に接触するように、前記第2の基板保持部により保持されて回転する前記基板に対して前記洗浄具を相対的に移動させることをさらに含んでもよい。
【0146】
この場合、基板の下面中央領域の洗浄後、第2の基板保持部により下面中央領域が吸着保持されつつ基板の下面外側領域が洗浄される。したがって、基板の下面中央領域および下面外側領域の洗浄後の基板の下面全体の清浄度が向上する。
【0147】
また、上記の構成によれば、基板の下面外側領域の洗浄時に下面中央領域が高い清浄度を有するので、複数の基板が順次洗浄される場合でも、第2の基板保持部を介した複数の基板間のクロスコンタミネーションの発生が抑制される。
【0148】
(第14項)第8項~第13項のいずれか一項に記載の基板洗浄方法において、
前記第1の基板保持部は、前記基板を回転させることなく前記基板の外周端部を保持するように構成されてもよい。
【0149】
この場合、一定姿勢で固定された基板の下面を効率よく洗浄することができる。
【0150】
上記の実施形態に係る基板洗浄装置によれば、洗浄後の基板の下面中央領域の清浄度が向上するので、基板処理により得られる製品の歩留まりが向上する。したがって、無駄な基板処理が低減されるので、基板処理の省エネルギー化が実現できる。また、基板の下面の清浄度を向上させるために、基板の下面の洗浄期間を長く設定する必要がない。それにより、無駄な薬液等の利用を低減することができるので、地球環境の汚染の低減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0151】
1…基板洗浄装置,2…ユニット筐体,2x…搬入搬出口,9…制御部,10A,10B…上側保持装置,11A,11B…下チャック,12A,12B…上チャック,20…下側保持装置,21…吸着保持部,30…台座装置,31…リニアガイド,32…可動台座,40…受渡装置,41…支持ピン,50…下面洗浄装置,51…下面ブラシ,52…液ノズル,53…気体噴出部,54…昇降回転支持部,60…カップ装置,61…カップ,70…上面洗浄装置,71…回転支持軸,72,82…アーム,73…スプレーノズル,80…端部洗浄装置,81…回転支持軸,83…ベベルブラシ,90…開閉装置,91…シャッタ,100…乾燥装置,P1…第1の水平位置,P2…第2の水平位置,P3…第3の水平位置,R1…下面中央領域,R2…下面外側領域,R3…接触領域,R4…離間領域,R5…隙間領域,W…基板,WC…中心