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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044912
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】分光測定装置及び分光測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/32 20060101AFI20240326BHJP
   G01J 3/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01J3/32
G01J3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150738
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲典
(72)【発明者】
【氏名】舩▲崎▼ 草吉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 由美子
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020CB04
2G020CC02
2G020CC52
2G020CC55
2G020CD03
2G020CD06
(57)【要約】
【課題】試料の分光特性に対する測定を改善できる分光測定装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る分光測定装置1は、分光特性を測定する対象である試料Sに対して照射光L1を照射する光源部11と、試料Sに照射された照射光L1に基づく被測定光L2であって、試料Sの分光特性の情報を有する被測定光L2を波長ごとに分散させる波長分散素子12と、波長分散素子12を通過した被測定光L2を反射させるミラーアレイ13と、ミラーアレイ13で反射した被測定光L2を検出する受光部14と、ミラーアレイ13に含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して受光部14から出力される受光信号の信号強度を変調する駆動部26と、受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに適正波形となるように駆動信号を補正する補正部24と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射する光源部と、
前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長ごとに分散させる波長分散素子と、
前記波長分散素子を通過した前記被測定光を反射させるミラーアレイと、
前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出する受光部と、
前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記受光部から出力される受光信号の信号強度を変調する駆動部と、
前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正する補正部と、
を備える、
分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置であって、
前記補正部は、補正信号を生成する生成部と、信号発生器から出力された信号に対し前記補正信号を加算して前記駆動部に前記駆動信号として出力する加算部と、を有する、
分光測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記駆動部による駆動に対する前記ミラーの応答特性を含み、
前記生成部は、前記応答特性の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第1補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記ミラーと前記受光部との間の位置関係を含み、
前記生成部は、前記位置関係の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第2補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記ミラーの共振を含み、
前記生成部は、前記共振の影響に基づく前記適正波形からの変動が生じないように第3補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の分光測定装置であって、
較正作業において予め取得された前記補正信号をデータとして記憶する記憶部を有する、
分光測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分光測定装置であって、
前記駆動部は、制限部を含み、
前記補正部は、前記駆動部に入力される前記駆動信号の電流を前記制限部により制限する、
分光測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分光測定装置であって、
前記補正部は、前記受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように前記駆動信号を補正する、
分光測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分光測定装置であって、
前記ミラーアレイは、2次元に配列された複数のMEMSミラーを含む、
分光測定装置。
【請求項10】
分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射するステップと、
前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長分散素子で波長ごとに分散させるステップと、
前記波長分散素子で分散した前記被測定光をミラーアレイで反射させるステップと、
前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出するステップと、
前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記検出するステップにおける受光信号の信号強度を変調するステップと、
前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正するステップと、
を含む、
分光測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分光測定装置及び分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを含むミラーアレイと回折格子などの波長分散素子とを組み合わせて試料の分光特性を測定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2次元ミラーアレイと波長分散素子とを組み合わせた分光器が開示されている。このような分光器は、波長分散素子で分散した光を、2次元ミラーアレイに入射させ、各ミラーを異なる変調周波数で偏向することで、各波長の光に対し個別の変調周波数を関連付けて単一の検出器で受光する。分析装置は、検出器からの出力を、デジタル処理技術を用い、個別の変調周波数に関連付けられた波長の強度値に復調することで、試料の分光特性をリアルタイムに測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公報第6128078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような分光器では、検出器から出力される受光信号の波形がミラーアレイに含まれるミラーに関する様々な変動要因の影響を受けて適正波形から変動する場合がある。その結果、分光特性の測定において測定速度、測定効率、及び測定精度などが低下していた。
【0006】
本開示は、試料の分光特性に対する測定を改善できる分光測定装置及び分光測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る分光測定装置は、分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射する光源部と、前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長ごとに分散させる波長分散素子と、前記波長分散素子を通過した前記被測定光を反射させるミラーアレイと、前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出する受光部と、前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記受光部から出力される受光信号の信号強度を変調する駆動部と、前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正する補正部と、を備える。
【0008】
これにより、分光測定装置は、試料の分光特性に対する測定を改善できる。例えば、分光測定装置は、補正部を有することで、後述するミラーに関する変動要因の影響を受けていたとしても、その影響を抑制して、受光信号の波形を適正波形に近付けることができる。これにより、受光信号が、高い変調周波数に関連付けられた光の波長においても低い変調周波数に関連付けられた光の波長と同様のレベルとなり、分光計における波長ごとのS/N偏差が抑制される。ミラーアレイに含まれる各ミラーを高速に駆動したときであっても光の波長間でのレベル偏差が抑制される。
【0009】
一実施形態における分光測定装置では、前記補正部は、補正信号を生成する生成部と、信号発生器から出力された信号に対し前記補正信号を加算して前記駆動部に前記駆動信号として出力する加算部と、を有してもよい。これにより、分光測定装置は、信号発生器から出力された信号に対し補正信号を加算して駆動信号の電圧を補正することができる。
【0010】
一実施形態における分光測定装置では、前記変動要因は、前記駆動部による駆動に対する前記ミラーの応答特性を含み、前記生成部は、前記応答特性の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第1補正信号を前記補正信号として生成してもよい。
【0011】
これにより、分光測定装置は、駆動部による駆動に対するミラーの応答特性の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動量を補うことができる。したがって、分光測定装置は、駆動信号による変調周波数特性を低周波数から高周波数にわたり平坦化可能である。すなわち、分光測定装置は、分光計における波長ごとのS/N偏差を抑制可能である。
【0012】
一実施形態における分光測定装置では、前記変動要因は、前記ミラーと前記受光部との間の位置関係を含み、前記生成部は、前記位置関係の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第2補正信号を前記補正信号として生成してもよい。
【0013】
これにより、分光測定装置は、ミラーと受光部との間の位置関係の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動量を補うことができる。したがって、分光測定装置は、駆動信号による変調周波数特性を各MEMSミラーの位置にわたり平坦化可能である。すなわち、分光測定装置は、分光計における波長ごとのS/N偏差を抑制可能である。
【0014】
一実施形態における分光測定装置では、前記変動要因は、前記ミラーの共振を含み、前記生成部は、前記共振の影響に基づく前記適正波形からの変動が生じないように第3補正信号を前記補正信号として生成してもよい。
【0015】
これにより、分光測定装置は、ミラーの共振の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動が生じないようにすることができる。すなわち、分光測定装置は、ミラーの共振による受光信号の不要な減衰振動を抑制可能である。これにより、分光測定装置は、減衰振動が収まるまで分光測定を実行できない、及び減衰振動の平均値で受光信号の誤ったレベルを検出するといったことを抑制可能である。
【0016】
一実施形態における分光測定装置は、較正作業において予め取得された前記補正信号をデータとして記憶する記憶部を有してもよい。これにより、分光測定装置は、分光測定にあたり、補正テーブルの情報を記憶部から読み出して補正処理を実行することが可能である。
【0017】
一実施形態における分光測定装置では、前記駆動部は、制限部を含み、前記補正部は、前記駆動部に入力される前記駆動信号の電流を前記制限部により制限してもよい。
【0018】
これにより、分光測定装置は、信号発生器から出力された駆動信号の電流を補正することができる。分光測定装置は、ミラーの共振の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動が生じないようにすることができる。すなわち、分光測定装置は、ミラーの共振による受光信号の不要な減衰振動を抑制可能である。これにより、分光測定装置は、減衰振動が収まるまで分光測定を実行できない、及び減衰振動の平均値で受光信号の誤ったレベルを検出するといったことを抑制可能である。
【0019】
一実施形態における分光測定装置では、前記補正部は、前記受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように前記駆動信号を補正してもよい。これにより、分光測定装置は、このような過渡的な時間領域における受光信号の適正波形からの変動を抑制可能である。
【0020】
一実施形態における分光測定装置では、前記ミラーアレイは、2次元に配列された複数のMEMSミラーを含んでもよい。これにより、分光測定装置は、ミラーアレイを高速に動作させることも可能である。
【0021】
幾つかの実施形態に係る分光測定方法は、分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射するステップと、前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長分散素子で波長ごとに分散させるステップと、前記波長分散素子で分散した前記被測定光をミラーアレイで反射させるステップと、前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出するステップと、前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記検出するステップにおける受光信号の信号強度を変調するステップと、前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正するステップと、を含む。
【0022】
これにより、分光測定方法では、試料の分光特性に対する測定が改善される。例えば、分光測定方法は、補正するステップを含むことで、後述するミラーに関する変動要因の影響を受けていたとしても、その影響を抑制して、受光信号の波形を適正波形に近付けることができる。これにより、受光信号が、高い変調周波数に関連付けられた光の波長においても低い変調周波数に関連付けられた光の波長と同様のレベルとなり、分光計における波長ごとのS/N偏差が抑制される。ミラーアレイに含まれる各ミラーを高速に駆動したときであっても光の波長間でのレベル偏差が抑制される。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、試料の分光特性に対する測定を改善できる分光測定装置及び分光測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の第1実施形態に係る分光測定装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1の分光測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図2の受光部から出力される受光信号の適正波形を示す模式図である。
図4図2の受光部から出力される受光信号の第1波形を示す模式図である。
図5図2の受光部から出力される受光信号の第2波形を示す模式図である。
図6図2の受光部から出力される受光信号の第3波形を示す模式図である。
図7図2の生成部により生成される補正信号の一例を示す模式図である。
図8図2の加算部から出力される駆動信号の一例を示す模式図である。
図9】較正作業を行うための分光測定装置の概略構成を示す、図2に対応する機能ブロック図である。
図10図2の分光測定装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図11】本開示の第2実施形態に係る分光測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図12】本開示の変形例に係る分光測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0026】
従来技術においても使用されている2次元ミラーアレイの面積は、より広い方が望ましい。2次元ミラーアレイに含まれる各ミラーの面積が大きくなることで、反射させて偏向することが可能な光のパワーが大きくなり、より大きなS/N比を得ることが可能であるためである。
【0027】
しかしながら、このようなミラーのサイズが大きくなると、駆動信号がオフのときの待機姿勢から駆動信号がオンのときの偏向姿勢へと所定の角度で傾く動作の応答速度が低下する。当該ミラーの角度を駆動信号により変調して受光部から出力される受光信号の信号強度を変調するときに、このような応答速度の低下が制約となり、ミラーの駆動信号への追従が困難になる。このとき、例えば後述する図4に示すように、受光部から出力される受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域において、実線の波形が適正値となる適正波形の基線であって破線で示す基線に届かないといった、いわゆる波形なまりが生じる。
【0028】
2次元ミラーアレイに含まれるミラーの傾きが変化して光が偏向するときに、光が完全に偏向するまでの過程で、例えば受光部に含まれるピンホール及びスリットなどに形成されている開口の縁などの障害物に光が当たり、影が生じることがある。ミラーと受光部との間の位置関係によっては、偏向の過程でこのような影が生じ、その分だけ受光部から出力される受光信号の信号強度が低下することになる。このときも同様に、例えば後述する図5に示すように、受光部から出力される受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域において、実線の波形が適正値となる適正波形の基線であって破線で示す基線に届かないといった現象が生じる。
【0029】
2次元ミラーアレイに含まれるミラーは機械的なミラーであり、所定の共振周波数を有する。例えば、駆動信号によりミラーの傾き動作をオンオフするときの変調周波数が当該共振周波数に略一致すると、駆動信号の立ち上がりに従ってミラーが傾いた直後も減衰振動を起こす。ミラーの偏向直後にこのような共振が生じることで、受光部から出力される受光信号の信号強度も減衰振動することになる。例えば後述する図6に示すように、受光部から出力される受光信号の立ち上がり直後において、減衰振動するような波形が得られてしまう。
【0030】
以上のように、ミラーに関する変動要因の影響を受けて、受光信号としての光波形信号のデューティが変化する。結果として、波形の応答の低下によるジッタが生じ、試料の分光特性の測定における安定度が低下する。
【0031】
リアルタイムで高速に複数波長の被測定光を測定する用途においては、2次元ミラーアレイに含まれるミラーごとに互いに異なる変調周波数で駆動する必要がある。この場合、波長分散素子によって分散した光の各々は、2次元ミラーアレイに含まれる各ミラーに割り当てられた変調周波数で変調を受ける。しかしながら、受光部に含まれる検出器が受光する受光信号は、上記のミラーに関する変動要因の影響で、変調周波数に依存して変化するという問題があった。
【0032】
その結果、受光信号は、高い変調周波数に関連付けられた光の波長において、低い変調周波数に関連付けられた光の波長よりも低下する。これは、分光計における波長ごとのS/N偏差につながる。
【0033】
以上のように、従来技術では、2次元ミラーアレイを高速に駆動したときに光の波長間でレベル偏差が生じる。高速に駆動できるMEMSミラーであっても、MEMSミラーが十分に応答できる低い変調周波数でMEMSミラーを駆動する必要があり、高速で高精度な分光測定を行うことが困難であった。
【0034】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、試料の分光特性に対する測定を改善できる分光測定装置及び分光測定方法を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る分光測定装置1の概略構成を示す模式図である。図1において、理解を容易にするために、後述のミラーアレイ13に含まれる複数のミラーのうち一のミラーのみが示されている。
【0036】
分光測定装置1は、試料Sの分光特性を測定する。本開示において、「試料S」は、例えばフィルムなどを含む。「分光特性」は、例えば吸収スペクトルなどによって示される光の吸収特性などを含む。分光測定装置1は、大きな構成要素として、光学系10と回路系20とを有する。
【0037】
図1を主に参照しながら、光学系10の構成について主に説明する。光学系10は、光源部11、波長分散素子12、ミラーアレイ13、及び受光部14を有する。
【0038】
光源部11は、所定の発光スペクトルを有する照射光L1を、分光特性を測定する対象である試料Sに対して照射する。光源部11は、広帯域な光源11aを有する。光源11aは、白色光源、例えば白色LED光源を含む。光源11aから照射される照射光L1は、白色光を含む。
【0039】
光源部11は、光源11aから照射された照射光L1を平行光として広げるコリメーションレンズ11bを有する。コリメーションレンズ11bによって平行光となった照射光L1は、試料Sに入射する。試料Sに入射した照射光L1の一部は試料Sで吸収され、残りの一部が試料Sを透過して被測定光L2として波長分散素子12へと進む。すなわち、本開示において、「被測定光L2」は、例えば透過光などを含む。
【0040】
波長分散素子12は、例えば回折格子などを含む。波長分散素子12は、試料Sに照射された照射光L1に基づく被測定光L2であって、試料Sの分光特性の情報を有する被測定光L2を波長ごとに分散させる。波長分散素子12で分散した分散光としての被測定光L2は、ミラーアレイ13に入射する。波長分散素子12によって被測定光L2を分散させるときの分散方向は、ミラーアレイ13において複数のミラーが配列されているアレイ方向に一致する。
【0041】
ミラーアレイ13は、例えば2次元に配列された複数のMEMSミラーを含む。ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーに対して、波長分散素子12で波長ごとに分散した被測定光L2が入射する。各MEMSミラーに対して、波長分散素子12で分散した被測定光L2の異なる波長が関連付けられる。ミラーアレイ13は、波長分散素子12を通過した被測定光L2を受光部14側に向けて反射させる。ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーで反射した反射光としての被測定光L2は、試料Sの分光特性に関する波長軸の個々の波長に関連付けられる。
【0042】
ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーは、駆動信号に基づく後述する駆動部26による駆動を受けて動作する。例えば、ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーは、矩形パルスとしての駆動信号のレベルがHighであるときにオンとなり、所定の角度で傾いて偏向姿勢を維持する。ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーは、矩形パルスとしての駆動信号のレベルがLowであるときにオフとなり、傾きがゼロとなる待機姿勢を維持する。各MEMSミラーは、矩形パルスとしての駆動信号の立ち上がり及び立ち下がりによって待機姿勢と偏向姿勢との間を遷移する。各MEMSミラーは、互いに異なる変調周波数を有する駆動信号で駆動部26により駆動される。このとき、各MEMSミラーを駆動部26により駆動するための駆動信号は、互いに同期されていてもよいし、同期されていなくてもよい。
【0043】
受光部14は、被測定光L2を検出して所定の信号強度を有する受光信号を出力可能な任意の検出器14aを含む。検出器14aは、例えばフォトダイオードを受光素子として含む。検出器14aの波長帯域は、照射光L1の波長帯域に適合する。受光部14は、検出器14aの前段に配置されているピンホール及びスリットなどの開口素子14bと、開口素子14bと検出器14aとの間に配置され、開口素子14bを通過した被測定光L2を検出器14aに集光する集光レンズ14cと、をさらに有する。
【0044】
受光部14は、ミラーアレイ13で反射し開口素子14b及び集光レンズ14cを通過した被測定光L2を検出器14aで検出する。受光部14は、照射光L1が試料Sに照射されることで生じる被測定光L2を検出器14aで検出する。
【0045】
被測定光L2の任意の波長に関連付けられたMEMSミラーは、駆動信号を受けた駆動部26による駆動により、図1に示すようにオフ時からオン時のミラー角度に変化する。このとき、被測定光L2における、当該MEMSミラーに関連付けられている所定の波長の光のみが受光部14に入射し、受光部14により検出される。オフ時にMEMSミラーで反射した被測定光L2は、受光部14の外側に向けて進み、受光部14に入射しない。
【0046】
波長分散素子12によって分散した光の各々は、ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーに割り当てられた変調周波数で変調を受ける。このとき、駆動信号によりオンとなるMEMSミラーで反射した光のみが受光部14に入射する。オフとなるMEMSミラーで反射した光は、受光部14における開口素子14bの外側に進み、受光部14に入射せずに完全に遮断される。
【0047】
ミラーアレイ13における動作において、各MEMSミラーに対し互いに異なる変調周波数の駆動信号を駆動部26に印加すると、各MEMSミラーが互いに異なる変調周波数で振動する。各MEMSミラーは、被測定光L2において対応する波長の光をオンのタイミングで反射させ、当該光を反射光として偏向させる。各MEMSミラーにより偏向された光は、波長多重化されて単一の受光素子を含む検出器14aにより検出される。
【0048】
図2は、図1の分光測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。図2を主に参照しながら、回路系20の構成について主に説明する。図2において、実線の矢印は光の流れを示す。破線は、電気信号の流れを示す。以下の図においても同様である。回路系20は、検波器21、A/D(Analog to digital)コンバータ22、処理部23、補正部24、記憶部25、駆動部26、及び信号発生器27を有する。
【0049】
検波器21は、複数のMEMSミラーのオンオフの繰り返しにより信号強度が複数の変調周波数でそれぞれ変調された受光部14からの複数の受光信号のうち、所定の変調周波数のものを抽出する任意の回路を含む。検波器21は、信号発生器27からの信号を受けて、当該信号に対応する変調周波数の受光信号のみを抽出する。これにより、受光信号は、個別の変調周波数に関連付けられた波長の強度値に復調される。
【0050】
A/Dコンバータ22は、検波器21から出力されるアナログ信号としての受光信号をデジタル信号に変換する。
【0051】
処理部23は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。処理部23は、A/Dコンバータ22によりデジタル信号に変換された受光信号に対して必要なデジタル処理を実行する。処理部23は、A/Dコンバータ22によりデジタル信号に変換された受光信号に基づいて、試料Sの分光特性をリアルタイムに測定する。
【0052】
処理部23は、受光部14から出力される受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに適正波形となるように駆動信号を補正するよう補正部24を制御する。本開示において、「ミラーに関する変動要因」は、例えば駆動部26による駆動に対するミラーの応答速度を含む応答特性、ミラーと受光部14との間の位置関係、及びミラーの共振などを含む。
【0053】
補正部24は、受光部14から出力される受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに適正波形となるように駆動信号を補正する任意の回路を含む。補正部24は、補正信号を生成する生成部24aと、信号発生器27から出力された信号に対し補正信号を加算して駆動部26に駆動信号として出力する加算部24bと、を有する。
【0054】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部25は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部25は、分光測定装置1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
【0055】
記憶部25は、分光測定装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部25は、較正作業において予め取得された補正信号をデータとして記憶する。記憶部25は、受光部14により検出された被測定光L2の受光信号の情報を記憶する。記憶部25は、処理部23により算出された試料Sの分光特性の情報を記憶する。記憶部25は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。
【0056】
駆動部26は、補正部24の加算部24bから出力され駆動信号に基づいてミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーを駆動する任意の駆動モジュールを含む。駆動部26は、ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーの角度を駆動信号に基づき変調して受光部14から出力される受光信号の信号強度を変調する。
【0057】
信号発生器27は、駆動信号の元となる信号を出力する任意の回路を含む。例えば、信号発生器27は、所定の変調周波数を有する矩形パルスを出力する。補正部24による駆動信号の補正が実行されないときは、信号発生器27から出力される信号が駆動信号としてそのまま駆動部26に入力される。
【0058】
MEMSミラーを駆動するための駆動部26へ印加する駆動信号は、信号発生器27を用いて生成される。信号発生器27は、駆動信号の変調周波数の数が、複数のMEMSミラーにより生成される波長多重の波長の数に一致するように各変調周波数を設定する。例えば、波長多重の波長の数が10個であれば、変調周波数の数も10個となる。
【0059】
複数のMEMSミラーは、複数の変調周波数の駆動信号に基づいて駆動部26によりそれぞれ駆動される。受光部14は、波長多重化された被測定光L2を受光し、複数の変調周波数で信号強度がそれぞれ変調する複数の受光信号を出力する。検波器21は、受光部14から出力された複数の受光信号のうち、信号発生器27から受けた信号に基づいて変調周波数ごとに同期検波する。これにより、検波器21は、変調周波数ごとに関連付けられた波長の強度値に受光信号を復調する。
【0060】
処理部23は、復調された受光信号をデジタル信号として受け、波長ドメインのデータとして処理する。処理部23は、横軸を波長、縦軸を強度値としたときに、変調周波数ごとに関連付けられていた波長に対し強度値をプロットすることで、複数の波長に対する強度値の変化を示す分光特性プロファイルを算出する。
【0061】
図3は、図2の受光部14から出力される受光信号の適正波形を示す模式図である。図4は、図2の受光部14から出力される受光信号の第1波形を示す模式図である。図5は、図2の受光部14から出力される受光信号の第2波形を示す模式図である。図6は、図2の受光部14から出力される受光信号の第3波形を示す模式図である。図4乃至図6にそれぞれ示す第1波形乃至第3波形は、ミラーに関する変動要因の影響を受けて所定の変調周波数における受光信号の波形が適正波形から変動したときの波形の例である。
【0062】
従来技術の問題点で述べたように、受光部14から出力される受光信号の波形は、ミラーに関する変動要因の影響を受けて、図3に示す適正波形から図4乃至図6に一例として示す波形に変動する。
【0063】
例えば、図4に示すように、受光部14から出力される受光信号の波形は、MEMSミラーの応答速度の低下に起因して、立ち上がり及び立ち下がりを含む過渡的な時間領域で波形なまりを示す。例えば、図5に示すように、受光部14から出力される受光信号の波形は、MEMSミラーと受光部14との間の位置関係に基づき偏向の過程で生じる影に起因して、過渡的な時間領域で信号強度が低下する様子を示す。例えば、図6に示すように、受光部14から出力される受光信号の波形は、MEMSミラーの共振に起因して、過渡的な時間領域の直後から減衰振動を示す。
【0064】
補正部24は、受光信号における波形の変動を抑制して当該波形が適正波形になるように駆動信号を補正する。以下では、補正部24によるこのような補正処理について主に説明する。
【0065】
図7は、図2の生成部24aにより生成される補正信号の一例を示す模式図である。図8は、図2の加算部24bから出力される駆動信号の一例を示す模式図である。図8に示す駆動信号は、信号発生器27から出力される矩形パルスに対し、生成部24aにおいて生成された補正信号を、加算部24bにおいて加算することで得られる。
【0066】
補正信号は、変動要因に含まれる応答特性の影響に基づく適正波形からの変動量を補うための第1補正信号を含む。補正信号は、変動要因に含まれる位置関係の影響に基づく適正波形からの変動量を補うための第2補正信号を含む。補正信号は、変動要因に含まれる共振の影響に基づく適正波形からの変動が生じないようにするための第3補正信号を含む。
【0067】
記憶部25は、以上のような補正信号のデータを補正テーブルとして記憶する。例えば、補正テーブルは、第1補正テーブル、第2補正テーブル、及び第3補正テーブルを含む。
【0068】
第1補正テーブルは、例えば、対応する駆動信号の変調周波数及び第1補正信号を互いに関連付けたデータを含む。当該データでは、ミラーアレイ13におけるMEMSミラーのサイズ及び重量などを含む個体情報も必要に応じて関連付けられていてもよい。第1補正テーブルは、第1補正信号を、変動要因に含まれる応答特性の影響に基づく適正波形からの変動量を補うための補正値のデータとして含む。
【0069】
第2補正テーブルは、例えば、ミラーアレイ13におけるMEMSミラーの配置情報、対応する駆動信号の変調周波数、及び第2補正信号を互いに関連付けたデータを含む。第2補正テーブルは、第2補正信号を、変動要因に含まれる位置関係の影響に基づく適正波形からの変動量を補うための補正値のデータとして含む。
【0070】
第3補正テーブルは、例えば、ミラーアレイ13におけるMEMSミラーの共振周波数、対応する駆動信号の変調周波数、及び第3補正信号を互いに関連付けたデータを含む。第3補正テーブルは、第3補正信号を、変動要因に含まれる共振の影響に基づく適正波形からの変動が生じないようにするための補正値のデータとして含む。
【0071】
生成部24aは、補正テーブルの情報を記憶部25から読み出して補正信号を生成する。例えば、生成部24aは、変動要因に含まれる応答特性の影響に基づく適正波形からの変動量を補うように、第1補正テーブルに基づいて第1補正信号を生成する。例えば、生成部24aは、変動要因に含まれる位置関係の影響に基づく適正波形からの変動量を補うように、第2補正テーブルに基づいて第2補正信号を生成する。例えば、生成部24aは、変動要因に含まれる共振の影響に基づく適正波形からの変動が生じないように、第3補正テーブルに基づいて第3補正信号を生成する。
【0072】
生成部24aは、信号発生器27から矩形パルスが加算部24bに出力されるタイミングで補正信号を加算部24bに出力する。生成部24aは、信号発生器27から出力される矩形パルスと同一の変調周波数に関連付けられている補正信号を記憶部25の補正テーブルから読み出して補正信号を加算部24bに出力する。生成部24aは、信号発生器27から出力される矩形パルスと同一の変調周波数に関連付けられている補正信号が第1補正信号乃至第3補正信号において複数あるときは、複数の補正信号を足し合わせて加算部24bに出力する。
【0073】
補正部24は、図4乃至図6に示す受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように駆動信号を補正する。例えば、生成部24aは、図4及び図5に示すように受光信号の波形が適正波形に対して遅い時間応答を示すとき、図7において実線で示すような正の方向に瞬間的に立ち上がるパルス信号を補正信号として生成する。生成部24aは、図6に示すように受光信号の波形が適正波形に対して速い時間応答を示すとき、図7において破線で示すような負の方向に瞬間的に立ち下がるパルス信号を補正信号として生成する。
【0074】
図8に示すように、加算部24bは、信号発生器27からの矩形パルスとしての信号と図7に示すような生成部24aからの補正信号とを加算して、駆動信号を駆動部26に印加する。図8に示す例では、加算部24bは、受光信号の波形が適正波形に対して遅い時間応答を示すとき、実線で示すような瞬間的に大きく立ち上がって所定のレベルまで下がるパルス信号を駆動信号として出力する。加算部24bは、受光信号の波形が適正波形に対して速い時間応答を示すとき、破線で示すような遅く立ち上がるパルス信号を駆動信号として出力する。
【0075】
このような駆動信号に基づき駆動部26により駆動されたMEMSミラーで変調された受光信号の波形は、上述したミラーに関する変動要因の影響が抑制されるように補正される。より具体的には、図4及び図5に示すように受光信号の波形が適正波形に対して遅い時間応答を示すとき、瞬間的に大きく立ち上がって所定のレベルまで下がる駆動信号によって、過渡的な時間領域における受光信号の信号強度が増大する。これにより、受光信号の波形が適正波形に近づく。図6に示すように受光信号の波形が減衰振動による速い時間応答を示すとき、遅く立ち上がる駆動信号により共振周波数からずれてMEMSミラーの共振が抑制される。これにより、受光信号の波形が適正波形に近づく。
【0076】
図9は、較正作業を行うための分光測定装置1の概略構成を示す、図2に対応する機能ブロック図である。図9では、上述した補正テーブルを記憶部25に予め格納するための較正作業に用いられる分光測定装置1の構成が示されている。図9を参照しながら、補正テーブルを予め取得する方法について主に説明する。
【0077】
図9に示す構成では、分光測定装置1は、図2の検波器21に代えて、差動増幅器としての増幅器28及び誤差増幅器29を有する。加えて、分光測定装置1では、A/Dコンバータ22は、処理部23を介さずに、補正部24の生成部24aに直接接続されている。
【0078】
第1補正テーブルは、分光特性を測定する対象である試料Sを除いた状態で受光部14から受光信号を得ることで取得される。このとき、補正部24は、複数のMEMSミラーのうち一のMEMSミラーについて、すなわち一の変調周波数について第1補正信号を取得した後、他のMEMSミラーについても同様の処理を繰り返すことで、全ての変調周波数に対して第1補正信号を個別に取得する。第1補正テーブルは、変動要因に含まれるMEMSミラーと受光部14との間の位置関係の影響を受けないようなミラー配置で取得される。
【0079】
例えば、変動要因に含まれるMEMSミラーの応答速度を含む応答特性は、MEMSミラーのサイズが同一であれば任意の位置のMEMSミラーにおいて変化しない。したがって、第1補正テーブルは、同一サイズの複数のMEMSミラーのうち、特定の位置にあるMEMSミラーを代表的に用いて取得されてもよい。当該特定の位置は、変動要因に含まれるMEMSミラーと受光部14との間の位置関係の影響を受けないような位置を含む。当該特定の位置は、較正作業を行うにあたり予め確認される。
【0080】
より具体的には、試料Sを除いた状態で、受光部14の出力と信号発生器27の出力とを差動増幅器としての増幅器28で差分検出し、誤差増幅器29を用いて受光信号の応答と信号発生器27の応答との差が基準内に収まるまで生成部24aの出力を調整し、生成部24aが生成した第1補正信号のデータを第1補正テーブルに格納する。
【0081】
第2補正テーブルは、分光特性を測定する対象である試料Sを除いた状態で受光部14から受光信号を得ることで取得される。このとき、補正部24は、複数のMEMSミラーのうち一のMEMSミラーについて、すなわち一の変調周波数について第2補正信号を取得した後、他のMEMSミラーについても同様の処理を繰り返すことで、全ての変調周波数に対して第2補正信号を個別に取得する。第2補正テーブルは、変動要因に含まれるMEMSミラーの応答速度を含む応答特性の影響を受けないような方法で取得される。
【0082】
例えば、第2補正テーブルは、変動要因に含まれるMEMSミラーの応答速度を含む応答特性の影響を受けないように、MEMSミラーの角度を変化させ取得されてもよい。駆動信号とMEMSミラーの角度との間には相関があるので、時間変化に対する受光信号の変化が推定可能である。
【0083】
より具体的には、試料Sを除いた状態で、受光部14の出力と信号発生器27の出力とを差動増幅器としての増幅器28で差分検出し、誤差増幅器29を用いて受光信号の応答と信号発生器27の応答との差が基準内に収まるまで生成部24aの出力を調整し、生成部24aが生成した第2補正信号のデータを第2補正テーブルに格納する。
【0084】
第3補正テーブルは、第1補正テーブル及び第2補正テーブルと異なり、図2及び図9のいずれの構成を用いても取得可能である。第3補正テーブルは、ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーにおいて共振が発生したときに適宜取得される。このとき、補正部24は、複数のMEMSミラーのうち共振が発生している一のMEMSミラーについて、すなわち一の変調周波数について第3補正信号を個別に取得する。第3補正テーブルは、変動要因に含まれるMEMSミラーの応答速度を含む応答特性の影響及びMEMSミラーと受光部14との間の位置関係の影響を受けないような方法で取得される。
【0085】
例えば、変動要因に含まれるMEMSミラーの共振は、MEMSミラーのサイズが同一であれば任意の位置のMEMSミラーにおいて変化しない。したがって、第3補正テーブルは、同一サイズの複数のMEMSミラーのうち、特定の位置にあるMEMSミラーを代表的に用いて取得されてもよい。当該特定の位置は、変動要因に含まれるMEMSミラーの応答速度を含む応答特性の影響及びMEMSミラーと受光部14との間の位置関係の影響を受けないような位置を含む。当該特定の位置は、較正作業を行うにあたり予め確認される。
【0086】
より具体的には、生成部24aは、受光部14の出力において減衰振動が抑制されるまで生成部24aの出力を調整し、生成した第3補正信号のデータを第3補正テーブルに格納する。
【0087】
図10は、図2の分光測定装置1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。図10を参照しながら、図2の分光測定装置1により実行される分光測定方法の一例について説明する。
【0088】
ステップS100では、分光測定装置1は、分光特性を測定する対象である試料Sに対して照射光L1を光源部11により照射する。
【0089】
ステップS101では、分光測定装置1は、ステップS100において試料Sに照射された照射光L1に基づく被測定光L2であって、試料Sの分光特性の情報を有する被測定光L2を波長分散素子12で波長ごとに分散させる。
【0090】
ステップS102では、分光測定装置1は、ミラーアレイ13に含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調する。これにより、分光測定装置1は、後述するステップS104における受光信号の信号強度を変調する。
【0091】
ステップS103では、分光測定装置1は、ステップS101において波長分散素子12で分散した被測定光L2をミラーアレイ13で反射させる。
【0092】
ステップS104では、分光測定装置1は、ステップS103においてミラーアレイ13で反射した被測定光L2を、受光部14を用いて検出する。
【0093】
ステップS105では、ステップS104における受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したか否かでその後のフローを分ける。受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したとき、分光測定装置1は、ステップS106の処理を実行する。受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けないとき、フローは、ステップS107に進む。
【0094】
ステップS106では、分光測定装置1は、受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに適正波形となるように駆動信号を補正する。
【0095】
ステップS107では、測定が終了したか否かでその後のフローを分ける。測定が終了したとき、フローは終了する。測定が終了していないとき、分光測定装置1は、ステップS100の処理を再度実行する。
【0096】
以上のような一実施形態に係る分光測定装置1によれば、試料Sの分光特性に対する測定を改善できる。例えば、分光測定装置1は、補正部24を有することで、上述したミラーに関する変動要因の影響を受けていたとしても、その影響を抑制して、受光信号の波形を適正波形に近付けることができる。これにより、受光信号が、高い変調周波数に関連付けられた光の波長においても低い変調周波数に関連付けられた光の波長と同様のレベルとなり、分光計における波長ごとのS/N偏差が抑制される。ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーを高速に駆動したときであっても光の波長間でのレベル偏差が抑制される。
【0097】
したがって、分光測定装置1は、ミラーアレイ13を高速で駆動することができる。これにより、分光測定装置1は、高速で高精度な分光測定を行うことができる。すなわち、分光測定装置1は、分光特性の測定において測定速度、測定効率、及び測定精度などを向上させることが可能である。分光測定装置1は、ミラーに関する変動要因の影響を抑制し、受光信号としての光波形信号のデューティ変化を抑制可能であるので、波形の応答の低下によるジッタの発生を抑制可能である。結果として、分光測定装置1は、試料Sの分光特性の測定における安定度を向上させることが可能である。
【0098】
分光測定装置1は、低周波数から高周波数までの広範囲にわたり変調周波数を各MEMSミラーに関連付けることが可能である。したがって、分光測定装置1は、試料Sの分光特性の測定における変調周波数の帯域を広げることが可能である。
【0099】
加えて、分光測定装置1は、試料Sの分光特性の測定における変調周波数の帯域が広がることで、周波数ステップの数を固定したときに周波数ステップの間隔を広げることができる。分光測定装置1は、変調周波数が狭帯域のときと比較して、各MEMSミラーに対する周波数ステップの幅を広げることが可能である。したがって、分光測定装置1は、検波器21で所定の変調周波数の受光信号を抽出するときに、波長ごとの受光信号の切り分けを良好に行うことができる。分光測定装置1は、ロックイン検出を行うことにより、個別の変調周波数に対する異なる変調周波数の受光信号の混入を抑制し、雑音を低減可能である。このようにフィルタとしての検波器21での受光信号の切り分けが良好になることで、分光測定装置1は、波長分解能を向上させることができる。
【0100】
分光測定装置1は、試料Sの分光特性の測定における変調周波数の帯域が広がることで、周波数ステップの幅を固定したときにより多くの変調周波数を用いることができ、受光信号の数を増やすことができる。したがって、分光測定装置1は、より多くの変調周波数を利用でき、分光測定における測定点としての波長の数を増やすことができる。周波数軸において狭帯域で同一の周波数ステップの幅で変調周波数を各MEMSミラーに関連付ける場合と比較して、各MEMSミラーに対する周波数ステップの数、すなわちミラーアレイ13における変調周波数の分割数を増やすことが可能である。以上のように、分光測定装置1は、フィルタとしての検波器21での受光信号の切り分けが良好になると共に、同時に選択可能な波長ステップが増えることで、同時に取得できる波長の受光信号の種類を増やすことができる。
【0101】
分光測定装置1は、補正部24が生成部24aと加算部24bとを有することで、信号発生器27から出力された信号に対し補正信号を加算して駆動信号の電圧を補正することができる。
【0102】
分光測定装置1は、生成部24aが第1補正信号を生成することで、駆動部26による駆動に対するMEMSミラーの応答特性の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動量を補うことができる。これにより、分光測定装置1は、駆動信号による変調周波数特性を低周波数から高周波数にわたり平坦化可能である。すなわち、分光測定装置1は、分光計における波長ごとのS/N偏差を抑制可能である。
【0103】
分光測定装置1は、生成部24aが第2補正信号を生成することで、MEMSミラーと受光部14との間の位置関係の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動量を補うことができる。これにより、分光測定装置1は、駆動信号による変調周波数特性を各MEMSミラーの位置にわたり平坦化可能である。すなわち、分光測定装置1は、分光計における波長ごとのS/N偏差を抑制可能である。
【0104】
分光測定装置1は、生成部24aが第3補正信号を生成することで、MEMSミラーの共振の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動が生じないようにすることができる。すなわち、分光測定装置1は、MEMSミラーの共振による受光信号の不要な減衰振動を抑制可能である。これにより、分光測定装置1は、減衰振動が収まるまで分光測定を実行できない、及び減衰振動の平均値で受光信号の誤ったレベルを検出するといったことを抑制可能である。
【0105】
分光測定装置1は、較正作業において予め取得された補正信号をデータとして記憶する記憶部25を有することで、分光測定にあたり、補正テーブルの情報を記憶部25から読み出して補正処理を実行することが可能である。
【0106】
分光測定装置1は、補正部24が受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように駆動信号を補正することで、このような過渡的な時間領域における受光信号の適正波形からの変動を抑制可能である。
【0107】
分光測定装置1は、ミラーアレイ13が2次元に配列された複数のMEMSミラーを含むことで、ミラーアレイ13を高速に動作させることも可能である。
【0108】
(第2実施形態)
図11は、本開示の第2実施形態に係る分光測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。図11を参照しながら、第2実施形態に係る分光測定装置1の構成及び機能について主に説明する。第2実施形態に係る分光測定装置1では、補正部24の構成が第1実施形態と相違する。
【0109】
その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る分光測定装置1にも当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0110】
第2実施形態では、補正部24は、加算部24bを有さずに生成部24aのみを有する。駆動部26は、制限部26aを含むように構成される。制限部26aは、信号発生器27から出力され、駆動部26に入力される駆動信号の電流を駆動部26において制限する。補正部24は、受光信号の応答を、ミラーアレイ13を駆動する駆動部26への駆動信号の補正により適正化する点では、第1実施形態と同様である。ただし、補正部24は、受光信号の波形における適正波形からの変動量に相当する補正信号を加算するのではなく、駆動信号の波形における立ち上がり時間を、制限部26aに基づく駆動部26での電流制限で遅らせることで、受光信号の応答を適正化する。より具体的には、補正部24は、第1実施形態における第3補正信号と同様に、ミラーアレイ13に含まれるMEMSミラーの共振の影響に基づく適正波形からの変動を抑制する。
【0111】
記憶部25は、制限部26aに基づく電流制限のための第4補正テーブルを記憶する。第4補正テーブルは、例えば、ミラーアレイ13におけるMEMSミラーの共振周波数、対応する駆動信号の変調周波数、及び電流制限のための補正値を互いに関連付けたデータを含む。
【0112】
生成部24aは、変動要因に含まれる共振の影響に基づく適正波形からの変動が生じないように、第4補正テーブルに基づいて制限部26aに制御信号を出力する。生成部24aは、信号発生器27から矩形パルスが制限部26aに出力されるタイミングで制御信号を制限部26aに出力する。生成部24aは、信号発生器27から出力される矩形パルスと同一の変調周波数に関連付けられている補正値を記憶部25の第4補正テーブルから読み出して制御信号を制限部26aに出力する。
【0113】
以上により、補正部24は、受光信号の波形がミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに適正波形となるように駆動信号を駆動部26の制限部26aを用いて補正する。より具体的には、補正部24は、駆動部26に入力される駆動信号の電流を制限部26aにより制限する。
【0114】
図6に示すように受光信号の波形が減衰振動による速い時間応答を示すとき、遅く立ち上がる駆動信号により共振周波数からずれてMEMSミラーの共振が抑制される。これにより、受光信号の波形が適正波形に近づく。
【0115】
補正部24は、ミラーアレイ13に含まれる各MEMSミラーにおいて共振が発生したときに電流制限のための補正値を適宜第4補正テーブルに格納する。このとき、補正部24は、複数のMEMSミラーのうち共振が発生している一のMEMSミラーについて、すなわち一の変調周波数について当該補正値を個別に取得する。より具体的には、生成部24aは、受光部14の出力において減衰振動が抑制されるまで生成部24aの出力を調整し、生成した電流制限のための補正値を第4補正テーブルに格納する。
【0116】
分光測定装置1は、駆動部26が制限部26aを有することで、信号発生器27から出力された駆動信号の電流を補正することができる。分光測定装置1は、MEMSミラーの共振の影響に基づく受光信号の適正波形からの変動が生じないようにすることができる。すなわち、分光測定装置1は、MEMSミラーの共振による受光信号の不要な減衰振動を抑制可能である。これにより、分光測定装置1は、減衰振動が収まるまで分光測定を実行できない、及び減衰振動の平均値で受光信号の誤ったレベルを検出するといったことを抑制可能である。
【0117】
上記第2実施形態では、補正部24は生成部24aのみを有し、駆動部26は制限部26aを含むように構成されると説明したが、これに限定されない。制限部26aは、駆動部26に代えて、補正部24に含まれていてもよい。このとき、信号発生器27からの出力は駆動部26を介して補正部24の制限部26aに接続され、補正部24の制限部26aから最終的にミラーアレイ13に接続されてもよい。
【0118】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0119】
例えば、本開示は、上述した分光測定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0120】
例えば、上述した各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0121】
図12は、本開示の変形例に係る分光測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。分光測定装置1は、ミラーに関する変動要因とは異なる他の要因の影響を受けて受光信号の波形が適正波形から変動したときに適正波形となるように、処理部23においてソフトウェア上で補正処理を実行してもよい。本開示において、「他の要因」は、例えばミラーアレイ13に含まれるMEMSミラーのオン時の傾斜角度の個体ごとのバラつき、並びに波長分散素子12の分散効率及び受光部14の受光効率に関する波長依存性などを含む。
【0122】
処理部23は、受光信号の波形に乗算する適切な補正係数をデータとして含む第5補正テーブルを記憶部25から読み出して、当該補正係数を用いて受光信号の波形をデータ上で補正してもよい。このような補正処理は、第1実施形態及び第2実施形態での補正処理と並行して実行されてもよい。
【0123】
上記各実施形態では、補正部24は、受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように駆動信号を補正すると説明したが、これに限定されない。補正部24は、受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域以外の他の時間領域に対応するように駆動信号を補正してもよい。
【0124】
上記各実施形態では、ミラーアレイ13は、2次元に配列された複数のMEMSミラーを含むと説明したが、これに限定されない。ミラーアレイ13は、任意に配置された複数の任意のミラーを含んでもよい。
【0125】
上記各実施形態では、光源部11は白色LED光源を含み、照射光L1は白色光を含むと説明したが、これに限定されない。光源部11は、可視光領域において任意の波長帯域を有する照射光L1を照射してもよい。
【0126】
上記実施形態では、被測定光L2は、照射光L1が試料Sを透過することで生じる透過光を含むと説明したが、これに限定されない。被測定光L2は、反射光を含んでもよい。
【0127】
上記実施形態では、試料Sは、例えばフィルムなどを含むと説明したが、これに限定されない。試料Sは、分光特性を測定する対象となり得る任意のものを含んでもよい。
【0128】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射する光源部と、
前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長ごとに分散させる波長分散素子と、
前記波長分散素子を通過した前記被測定光を反射させるミラーアレイと、
前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出する受光部と、
前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記受光部から出力される受光信号の信号強度を変調する駆動部と、
前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正する補正部と、
を備える、
分光測定装置。
[付記2]
付記1に記載の分光測定装置であって、
前記補正部は、補正信号を生成する生成部と、信号発生器から出力された信号に対し前記補正信号を加算して前記駆動部に前記駆動信号として出力する加算部と、を有する、
分光測定装置。
[付記3]
付記2に記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記駆動部による駆動に対する前記ミラーの応答特性を含み、
前記生成部は、前記応答特性の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第1補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
[付記4]
付記2又は3に記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記ミラーと前記受光部との間の位置関係を含み、
前記生成部は、前記位置関係の影響に基づく前記適正波形からの変動量を補うように第2補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
[付記5]
付記2乃至4のいずれか1つに記載の分光測定装置であって、
前記変動要因は、前記ミラーの共振を含み、
前記生成部は、前記共振の影響に基づく前記適正波形からの変動が生じないように第3補正信号を前記補正信号として生成する、
分光測定装置。
[付記6]
付記2乃至5のいずれか1つに記載の分光測定装置であって、
較正作業において予め取得された前記補正信号をデータとして記憶する記憶部を有する、
分光測定装置。
[付記7]
付記1乃至6のいずれか1つに記載の分光測定装置であって、
前記駆動部は、制限部を含み、
前記補正部は、前記駆動部に入力される前記駆動信号の電流を前記制限部により制限する、
分光測定装置。
[付記8]
付記1乃至7のいずれか1つに記載の分光測定装置であって、
前記補正部は、前記受光信号の立ち上がりを含む過渡的な時間領域に対応するように前記駆動信号を補正する、
分光測定装置。
[付記9]
付記1乃至8のいずれか1つに記載の分光測定装置であって、
前記ミラーアレイは、2次元に配列された複数のMEMSミラーを含む、
分光測定装置。
[付記10]
分光特性を測定する対象である試料に対して照射光を照射するステップと、
前記試料に照射された前記照射光に基づく被測定光であって、前記試料の分光特性の情報を有する前記被測定光を波長分散素子で波長ごとに分散させるステップと、
前記波長分散素子で分散した前記被測定光をミラーアレイで反射させるステップと、
前記ミラーアレイで反射した前記被測定光を検出するステップと、
前記ミラーアレイに含まれる各ミラーの角度を駆動信号に基づき変調して前記検出するステップにおける受光信号の信号強度を変調するステップと、
前記受光信号の波形が前記ミラーに関する変動要因の影響を受けて適正波形から変動したときに前記適正波形となるように前記駆動信号を補正するステップと、
を含む、
分光測定方法。
【符号の説明】
【0129】
1 分光測定装置
10 光学系
11 光源部
11a 光源
11b コリメーションレンズ
12 波長分散素子
13 ミラーアレイ
14 受光部
14a 検出器
14b 開口素子
14c 集光レンズ
20 回路系
21 検波器
22 A/Dコンバータ
23 処理部
24 補正部
24a 生成部
24b 加算部
25 記憶部
26 駆動部
26a 制限部
27 信号発生器
28 増幅器
29 誤差増幅器
L1 照射光
L2 被測定光
S 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12