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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044934
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20240326BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16K17/04 C
F16F9/34
F16K17/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150768
(22)【出願日】2022-09-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】作田 敦
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【テーマコード(参考)】
3H059
3J069
【Fターム(参考)】
3H059AA02
3H059BB37
3H059CA03
3H059CA05
3H059CC02
3H059CC06
3H059CD05
3H059CF07
3H059EE01
3H059FF11
3J069AA50
3J069CC13
3J069DD26
3J069DD47
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】高度な加工精度を要求されることなく弁体の振動を抑制できるバルブの提供を目的としている。
【解決手段】本発明のバルブVは、中空であって内周に弁座3bを有するハウジングと、ハウジング3内に軸方向へ移動可能に収容されるとともに弁座3bに離着座可能な弁体20と、ハウジング3内に設けられるばね受21と、弁体20とばね受21との間に介装されて弁体20を弁座3bへ着座する方向へ付勢するばね22と、弁体20の軸方向への移動によって容積を増減させて弁体20の移動を抑制するダッシュポット室23とを備え、弁体20は、弁座3bに離着座する着座部24cを有してハウジング3に対して径方向への移動が規制される弁部24と、ばね22の一端を支承する弁体側ばね受25aを有して弁部24に対して径方向へ移動が許容されて当接するばね受部25とを有し、ダッシュポット室23は、ばね受部25とばね受21との間で形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空であって内周に弁座を有するハウジングと、
前記ハウジング内に軸方向へ移動可能に収容されるとともに前記弁座に離着座可能な弁体と、
前記ハウジング内に設けられるばね受と、
前記弁体と前記ばね受との間に介装されて前記弁体を前記弁座へ着座する方向へ付勢するばねと、
前記弁体の軸方向への移動によって容積を増減させて前記弁体の移動を抑制するダッシュポット室とを備え、
前記弁体は、前記弁座に離着座する着座部を有して前記ハウジングに対して径方向への移動が規制される弁部と、前記ばねの一端を支承する弁体側ばね受を有して前記弁部に対して径方向へ移動が許容されて当接するばね受部とを有し、
前記ダッシュポット室は、前記ばね受部と前記ばね受との間で形成される
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記弁部と前記ばね受部との一方は、前記弁部と前記ばね受部との他方へ当接する当接端から軸方向へ向けて突出する凸部を有し、
前記弁部と前記ばね受部との他方は、前記弁部と前記ばね受部との一方へ当接する当接端に開口して前記凸部が径方向へ移動可能に挿入される凹部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブは、たとえば、ダンパに利用されており、ダンパの伸縮に伴う作動油の流れに抵抗を与えてダンパに減衰力を発揮させるものがある。このようなバルブは、たとえば、複筒型ダンパにおけるシリンダとシリンダとの間にタンクを形成する外筒の双方の端部に嵌合してシリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドを軸支するロッドガイドに組み込まれたり、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に挿入されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンに組み込まれたりして使用される。
【0003】
このようなバルブは、たとえば、ロッド側室とタンクとを連通する弁孔を有するロッドガイドをハウジングとして、当該ハウジングと、弁孔の内周に設けた環状弁座と、弁孔内に軸方向に移動自在に挿入されて環状弁座に離着座する弁体と、弁体を環状弁座側へ向けて付勢するコイルばねとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複筒型ダンパは、ピストン側室からロッド側室へ向かう作動流体の流れのみを許容する逆止弁と、リザーバからピストン側室へ向かう作動流体の流れのみを許容する吸込弁を備え、伸長しても収縮してもシリンダ内から弁孔を介してタンクへ作動流体を排出するようになっており、いずれにしてもバルブでシリンダ内からタンクへ向かう作動流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-13120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来のバルブにあっては、弁体がコイルばねによって付勢されており、このコイルばねの初期荷重によって開弁圧が調節されるとともに、コイルばねのばね定数によって複筒型ダンパにおける減衰特性を調節することができるようになっている。
【0007】
しかしながら、このようにコイルばねで弁体を付勢する減衰バルブにあっては、複筒型ダンパが高速作動を呈するとシリンダ内の圧力変動によって弁体の軸方向振動が励起されて発振し、複筒型緩衝器が発生する減衰力が安定せず振動的となってしまう問題がある。
【0008】
そこで、従来のバルブでは、コイルばねを支持するばね受に弁体が出入りするとともに弁体とともにダッシュポット室を形成する筒状のケースを設けている。ダッシュポット室は、弁体の外周とケースの内周との間に僅かな隙間を通じてケース外へ連通されており、弁体がケース内に侵入すると圧縮されるダッシュポット室内の作動油が抵抗を受けながら前記隙間を通過する。そのため、従来のバルブは、弁体が環状弁座から後退してケース内へ移動すると、ダッシュポット室の圧力を上昇させて弁体の移動を妨げる力を発生し、弁体の軸方向振動を抑制できる。
【0009】
しかしながら、従来のバルブでは、弁体が弁孔に設けられた内径が小径な部位に摺動自在に挿入されるガイド軸を備えて、ハウジングによって弁体が軸方向への移動が案内される構造となっている。そのため、従来のバルブでは、弁体をハウジングとケースとの双方に対して同心に配置しなければならず、高度な加工精度が要求され、寸法誤差が大きいと組み立てが難しい場合があるが、ダッシュポット室を設けなくては弁体の振動を抑制できない。
【0010】
そこで、本発明は、高度な加工精度を要求されることなく弁体の振動を抑制できるバルブの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のバルブは、中空であって内周に弁座を有するハウジングと、ハウジング内に軸方向へ移動可能に収容されるとともに弁座に離着座可能な弁体と、ハウジング内に設けられるばね受と、弁体とばね受との間に介装されて弁体を弁座へ着座する方向へ付勢するばねと、弁体の軸方向への移動によって容積を増減させて弁体の移動を抑制するダッシュポット室とを備え、弁体は、弁座に離着座する着座部を有してハウジングに対して径方向への移動が規制される弁部と、ばねの一端を支承する弁体側ばね受を有して弁部に対して径方向へ移動が許容されて当接するばね受部とを有し、ダッシュポット室は、ばね受部とばね受との間で形成されている。
【0012】
このように構成されたバルブは、弁体が弁座に離着座するとともにハウジングによって径方向に移動が規制される弁部と、弁部に対して径方向への移動が許容されるとともにばねの一端を支承するばね受部との2部品で構成されているので、ばね受部が弁部に対して径方向へ移動可能であるから、弁部とばね受部とが別々に調心されるような場合であって、ばね受部を弁部に拘束されずにハウジングやばね受に調心できる。
【0013】
また、弁部とばね受部との一方は、弁部とばね受部との他方へ当接する当接端から軸方向へ向けて突出する凸部を有し、弁部とばね受部との他方は、弁部とばね受部との一方へ当接する当接端に開口して凸部が径方向へ移動可能に挿入される凹部を備えてバルブが構成されてもよい。このように構成されたバルブによれば、バルブの弁体の組み立ての際に凹部に凸部を挿入することによって、弁部に対してばね受部の径方向のある程度の位置決めを可能としてバルブの組み立てが容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバルブによれば、高度な加工精度を要求されることなく弁体の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態におけるバルブが適用されたダンパの回路構成を示した図である。
図2】一実施の形態におけるバルブの断面図である。
図3】一致実施の形態のバルブにおける弁体の分解斜視図である。
図4】一実施の形態の第1変形例におけるバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、本発明を説明する。一実施の形態におけるバルブVは、図1および図2に示すように、ダンパDにおけるシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3をハウジングとしてダンパDに適用されている。バルブVは、弁孔3aを有して中空とされて弁孔3aの内周に弁座としての環状弁座3bを有するハウジングとしてのピストン3と、ピストン3内に収容される弁体20と、ピストン3内に設けられるばね受21と、弁体20とばね受21との間に介装されて弁体20を環状弁座3bへ着座する方向へ付勢するばね22と、弁体20の軸方向への移動によって容積を増減させて弁体20の移動を抑制するダッシュポット室23とを備えて構成されている。
【0017】
一実施の形態におけるダンパDは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ1内に移動可能に挿入されてピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに仕切るピストン3と、タンク4と、ピストン3に設けられた弁孔3aによって形成されて伸側室R1と圧側室R2とを連通するリリーフ通路と、前記リリーフ通路に設けられたバルブVと、ピストン3に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側減衰通路5と、伸側減衰通路5に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰弁6と、圧側室R2とタンク4とを連通する圧側減衰通路7および吸込通路8と、圧側減衰通路7に設けられた圧側減衰弁9と、吸込通路8に設けられたチェック弁10と、伸側室R1とタンク4とを連通する伸側リリーフ通路11と、伸側リリーフ通路11に設けられた伸側リリーフ弁12とを備えている。
【0018】
また、伸側室R1と圧側室R2には液体として作動油が充填されるとともに、タンク4には、作動油のほかに気体が充填されている。液体は、作動油以外にも、水や水溶液を使用することも可能である。なお、タンク4内は、特に、気体を圧縮して充填することによって加圧状態とする必要は無いが、加圧状態としてもよい。
【0019】
以下、バルブVおよびバルブVが適用されるダンパDの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって、図1中右端が蓋13によって閉塞され、図1中左端に環状のロッドガイド14が取り付けられている。ピストンロッド2は、ロッドガイド14の内周を介してシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、図1中左端をシリンダ1の外方へ突出させている。
【0020】
また、このダンパDは、シリンダ1の外周を覆う外筒15を備えている。外筒15の図1中左端と右端は、シリンダ1と同様に、蓋13およびロッドガイド14とで閉塞されており、外筒15とシリンダ1との間の環状隙間でタンク4が形成されている。
【0021】
そして、ピストンロッド2の図1中右端である先端は、シリンダ1内に挿入されたピストン3に連結され、ピストンロッド2の図1中左端である基端は、ロッドガイド14の内周を介してシリンダ1外へ突出している。また、ピストンロッド2の図1中左端である他端と、シリンダ1の右端を閉塞する蓋13には、図示はしないが、このダンパDを設置箇所へ取り付けることができるようにブラケットが設けられる。
【0022】
ピストン3は、バルブVのハウジングとして利用されており、ピストンロッド2に先端に取り付けられている。また、ピストン3は、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、外周をシリンダ1の内周に摺接させてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。ピストン3には、圧側室R2と伸側室R1とを連通する弁孔3aによって形成されるリリーフ通路と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側減衰通路5と、リリーフ通路に設けたバルブVと、伸側減衰通路5に設置される伸側減衰弁6とが設けられている。
【0023】
伸側減衰通路5は、伸側室R1と圧側室R2とを連通しており、途中には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容し、かつ、作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰弁6が設けられている。この伸側減衰弁6によって伸側減衰通路5は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、伸側減衰弁6は、本実施の形態では、上流側である伸側室R1の圧力が下流側である圧側室R2の圧力より高く、両者の差が開弁圧に達すると開弁して伸側減衰通路5を開放して伸側室R1を圧側室R2に連通させる調圧弁とされている。調圧弁である伸側減衰弁6は、開弁圧に達すると開弁して、開弁後の通過流量の増加に伴って前述したバルブVに比較して高い割合で圧力損失が増加する流量圧力特性を備えており、流量の増加に応じて上流側の圧力を上昇させて減衰力を大きくする。
【0024】
バルブVのハウジングとしてのピストン3は、図2中で圧側室R2に面する右端から開口して伸側室R1に面する左端へ通じる弁孔3aを備えている。弁孔3aは、途中で内径が拡径しており図2中左端側の内径が右端側の内径よりも大径となっていて、小径部3a1と内径が小径部3a1より大径な大径部3a2とを備えている。このようにピストン3の中空な弁孔3aの内周には、小径部3a1と大径部3a2との境の段部が形成されており、ハウジングとしてのピストン3は、弁孔3aの内周に前記段部で形成される環状弁座3bを備えている。
【0025】
バルブVは、ピストン3の中空部を形成する弁孔3a内に収容される弁体20と、弁孔3aの大径部3a2内に設けられるばね受21と、弁体20とばね受21との間に介装されて弁孔3a内に収容されるコイルばねでなるばね22と、弁体20とばね受21との間に形成されるダッシュポット室23とを備えている。
【0026】
弁体20は、弁孔3a内に軸方向となる図2中左右方向へ移動可能に挿入されており、軸方向の途中で弁部24とばね受部25との2つの部品に分割されている。弁部24は、図2および図3に示すように、弁孔3aにおける小径部3a1の内周に摺動可能に挿入される先端部24aと、先端部24aの後端に連なって環状弁座3bに対向する環状の着座部24cを備えた円盤状のフランジ24bと、フランジ24bの後端の中心部に設けられた凹部24dとを備えている。先端部24aは、円柱状であって、側部に先端から後端にかけて形成される切欠24a1を備えており、弁孔3aの小径部3a1内に摺動可能に挿入されている。弁部24は、小径部3a1内に先端部24aが摺動可能に挿入されることによって、径方向への移動が規制されており、小径部3a1の内周でガイドされて弁孔3a内を軸方向へ軸ぶれすることなく移動できる。
【0027】
フランジ24bは、円盤状であって先端部24aの後端に連なっており、先端部側を向く環状の端面を着座部24cとして環状弁座3bに軸方向で対向させており、着座部24cを環状弁座3bに当接させると弁孔3aにおける小径部3a1と大径部3a2との連通を断つことができる。また、フランジ24bの図2中左端となる後端の中心部には断面円形の凹部24dが設けられている。フランジ24bの図2中左端は、後述するばね受部25と当接する当接端となっており、凹部24dは、フランジ24bにおける当接端に開口している。
【0028】
そして、弁部24は、フランジ24bにおける着座部24cが弁孔3aの内周の環状弁座3bに着座すると、先端部24aが完全に小径部3a1内に挿入されて弁孔3aを閉塞して、弁孔3aによって形成されるリリーフ通路による圧側室R2と伸側室R1との連通を断つ。反対に、着座部24cが環状弁座3bから離間した状態では、先端部24aの切欠24a1が大径部3a2内に臨むので、小径部3a1と大径部3a2とが切欠24a1を介して連通され、弁孔3aによって形成されるリリーフ通路によって圧側室R2と伸側室R1とが連通される。
【0029】
ばね受部25は、図2および図3に示すように、弁部24のフランジ24bの反先端側の端面に当接する円盤状の弁体側ばね受25aと、弁体側ばね受25aの図2中左端側から軸方向へ突出してばね22の内周に嵌合される円柱状の嵌合部25bと、嵌合部25bの図2中左端側から軸方向へ突出してばね22の内周に挿入される円柱状のばねガイド25cと、ばねガイド25cの図2中左端側から軸方向へ突出する円柱状のロッド25dと、弁体側ばね受25aの弁部側端の中心部に設けられて弁部24へ向けて軸方向へ突出する凸部25eとを備えている。
【0030】
弁体側ばね受25aは、円盤状あって弁部24のフランジ24bと軸方向で対向しており、弁部24に当接する当接端である弁部側端の中心部に弁部24へ向けて軸方向へ突出するとともに外径が凹部24dの内径よりも小径な凸部25eが設けられている。凸部25eの軸方向長さは、凹部24dの軸方向の長さよりも短く、凸部25eの全体を凹部24d内に挿入できる。よって、ばね受部25の弁体側ばね受25aを弁部24のフランジ24bに正対させて、凸部25eを凹部24d内に挿入すると、弁体側ばね受25aの弁部側の端面とフランジ24bのばね受部側の端面とが当接する。また、凸部25eの外径が凹部24dの内径よりも小径となっているので、凸部25eを凹部24d内に径方向へ移動可能に挿入でき、凸部25eの外周と凹部24dの内周との間に形成される隙間分だけ、ばね受部25と弁部24とが当接したままの弁部24に対してばね受部25が径方向へ変位できる。このように、ばね受部25は、凸部25eの凹部24d内への挿入によって移動量に制限はあるものの弁部24に対して径方向への移動が許容されている。
【0031】
ばね受21は、円柱状であって外周が螺子溝を備えてピストン3の弁孔3aにおける大径部3a2の図2中左端側に設けられた螺子部3a21に螺合する螺子部21aと、螺子部21aの図2中右端から弁体20側へ向けて軸方向へ突出する筒状のケース21bとを備えている。
【0032】
螺子部21aは、外周の一部に切欠21a1を備えており、弁孔3aの大径部3a2内に固定されても切欠21a1を介して弁孔3a内と伸側室R1とを連通させる。ケース21bは、内径が弁体20のばね受部25におけるロッド25dの外径よりも大径となっており、ばね受21を弁孔3aに螺子結合して固定すると内方にロッド25dが挿入される。このように、ケース21b内にロッド25dが挿入されると、ケース21bの底部とロッド25dの先端との間の空間でダッシュポット室23が形成され、ダッシュポット室23は、ケース21bの内周とロッド25dの外周との間の僅かな隙間を介してケース21b外に連通されている。そして、ケース21bの内周とロッド25dの外周との間の隙間によって、ダッシュポット室23に出入りする作動油の流れに抵抗を与える制限流路を形成している。通過する作動油の流れに抵抗を与える制限流路を介してダッシュポット室23とケース21bの外方とが連通されているので、弁体20がピストン3に対して弁孔3a内で軸方向へ移動する際に、ダッシュポット室23とケース21b外とで作動油が行き来できるとともに、ダッシュポット室23の圧力が変動する。そして、弁体20が弁孔3a内で軸方向へ移動し、ケース21b内にロッド25dが出入りしてダッシュポット室23が拡縮するとダッシュポット室23の圧力が上昇或いは下降して、ロッド25dに対してケース21bに対する移動を抑制する力が弁体20に与えられる。このようにダッシュポット室23は、弁体20のピストン3に対する軸方向への移動に抵抗を与えて弁体20の急激な変位や振動を抑制する。
【0033】
ばね22は、コイルばねとされており、ばね受部25の弁体側ばね受25aの図2中左端とばね受21の螺子部21aの図2中右端との間に圧縮された状態で介装されており、弁体20を環状弁座3bへ向けて付勢している。ばね22は、一端がばね受部25の弁体側ばね受25aに支承されるとともに、嵌合部25bの外周に嵌合される。また、ばね22の一端側の内周には、ばね受部25のばねガイド25cが挿入されており、ばねガイド25cによってばね22の圧縮時における径方向への偏心が防止され、ばね22の一端側の大径部3a2の内周への干渉が防止されている。また、ばね22は、他端がばね受21の螺子部21aに支承されるとともに、ケース21bの基端の外周の大径部分の外周に嵌合される。ばね22の他端側の内周には、ばね受21のケース21bが挿入されており、ケース21bによってばね22の圧縮時における径方向への偏心が防止され、ばね22の他端側の大径部3a2の内周への干渉が防止されている。なお、ばね22は、ばね受部25とばね受21との間に介装されて制限流路を閉塞しなければコイルばね以外のばねとされてもよい。
【0034】
バルブVにおける弁体20は、弁部24の先端部24aの断面積を受圧面積として圧側室R2の圧力を受けて圧側室R2の圧力によって図2中左方へ向けて押圧され、弁孔3aの小径部3a1の断面積からロッド25dの断面積を除いた面積を受圧面積として伸側室R1の圧力を受けて伸側室R1の圧力によって図2中右方へ向けて押圧されている。よって、バルブVは、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高くなり、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差が所定圧(開弁圧)に達すると、圧側室R2の圧力によって弁体20を図2中左方へ押す力が伸側室R1の圧力とばね22の付勢力によって弁体20を図2中右方へ押す力を上回って、弁体20を環状弁座3bから離間させて開弁し、弁孔3aを開放し作動油の通過を許容する。弁部24は、環状弁座3bから離間した状態では、環状弁座3bから離間すれば離間するほど、先端部24aにおける切欠24a1が大径部3a2内と対向する度合いを大きして流路面積を大きくする。よって、バルブVは、作動油の通過流量が増えると開弁度合を大きくして圧力オーバーライドが大きくならないように設定されている。
【0035】
他方、バルブVは、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差が開弁圧未満の場合、圧側室R2の圧力によって弁体20を図2中左方へ押す力が伸側室R1の圧力とばね22の付勢力によって弁体20を図2中右方へ押す力より小さいので弁体20が環状弁座3bに着座した状態となって、弁孔3aを遮断して作動油の通過を阻止する。また、バルブVは、ダッシュポット室23を備えているので、弁体20のピストン3に対する軸方向への移動に抵抗を与えて弁体20の急激な変位や振動を抑制できる。なお、バルブVの開弁圧は、ばね22のばね定数および自然長、弁体20の圧側室R2と伸側室R1との圧力を受ける受圧面積の設定によって設定できる。
【0036】
そして、このように構成されたバルブVでは、弁体20における弁部24は、ピストン3によって調心されて軸方向へ移動する。他方、ダッシュポット室23は、ばね受部25とばね受21との間に形成されており、ばね受部25とばね受21との間にダッシュポット室23の内外を連通する制限流路を形成する関係上、ばね受部25はばね受21に対して調心しなければならない関係にある。本実施の形態のバルブVは、弁体20が環状弁座3bに離着座するとともにハウジングとしてのピストン3によって径方向に移動が規制される弁部24と、弁部24に対して径方向への移動が許容されるとともにばね22の一端を支承するばね受部25との2部品で構成されているので、弁部24がハウジングであるピストン3に調心されても、ばね受部25が弁部24に対して径方向へ移動可能であるからばね受部25をピストン3に調心される弁部24に拘束されずにばね受21によって調心できる。したがって、本実施の形態のバルブVによれば、従来のバルブのように弁体がハウジングとダッシュポット室を形成するためのケースとの双方に対して同心に配置しなければならないといった制約がなくなるので、弁体20、ハウジングであるピストン3およびばね受21に対して高度な加工精度が要求されず、寸法誤差が大きくとも容易にバルブVを組み立て得る。
【0037】
なお、本実施の形態では、弁部24に凹部24dを設け、ばね受部25に凸部25eを設けて、バルブVの弁体20の組み立ての際に凹部24dに凹部24dの内径よりも外径が小径な凸部25eを挿入することによって、弁部24に対してばね受部25の径方向のある程度の位置決めを可能としてばね受21のケース21b内へのばね受部25のロッド25dの挿入作業を容易にしている。凹部24dに凸部25eを挿入することによって、弁部24に対するばね受部25の径方向への最大移動量が凹部24dと凸部25eとの間の隙間の広さによって決定されるが、前記最大移動量は、ダッシュポット室23を形成するケース21b内へロッド25dを挿入の障害にならないように設定されればよい。
【0038】
また、弁体20が弁部24とばね受部25との2部品で構成されるが、ばね受部25が弁体20を環状弁座3bへ向けて付勢するばね22の一端を支承する弁体側ばね受25aを備えているので、常時、ばね受部25が弁部24に向けて押圧されるため弁部24とばね受部25とが離間してバラバラになることもない。よって、弁部24の凹部24dとばね受部25の凸部25eを廃止して、弁部24のフランジ24bのばね受部側の端面とばね受部25の弁部側の端面とを軸方向に対して直交する平坦面として、平坦面同士を当接させるようにしてもよい。さらに、弁部24に凹部24dを設けてばね受部25に凸部25eを設けているが、反対に、弁部24に凸部を設けてばね受部25に凹部を設けてもよい。そしてさらに、凹部24dの断面形状と凸部25eの断面形状を共に円形としているので、前記した弁部24に対するばね受部25の最大移動量の設定が容易となるとともに、凹部24dの内周面に凸部25eの外周面が当接しても互いに傷つけあうこともないが、前述したように組み立て性の向上を図る上では弁部24に対してばね受部25のある程度の径方向への移動を許容できる限りにおいて凹部24dと凸部25eの断面形状を円形以外の形状としてもよい。
【0039】
ダッシュポット室23をケース21bの外方に連通する制限流路は、前述したところでは、ばね受部25のロッド25dの外径より、ロッド25dが挿入されるケース21bの内径を大きくして、ロッド25dとケース21bとの間に形成される隙間とされているが、ロッド25dをケース21b内に摺動可能に挿入する場合、ロッド25dの外周或いはケース21bの内周に制限流路として機能する溝或いはダッシュポット室23の内外を連通する孔によって形成されてもよい。
【0040】
さらに、ロッド25dの側面を図2中左端となる後端側が小径になるようにテーパ面とするか、或いは、ケース21bの内径が図2中右端側となる先端側が大きくなる円錐面としてもよい。この場合、弁体20におけるロッド25dがケース21b内に侵入する度合いが進むと徐々に制限流路の流路面積が減少する。このようにバルブVが構成される場合、弁体20が環状弁座3bから着座した状態から弁孔3a内を図2中左方へ移動する際に、弁体20の移動し初めはダッシュポット室23による抵抗が少なく弁体20は速やかに環状弁座3bから離間でき、環状弁座3bからの弁体20の離間が進むとダッシュポット室23による抵抗が大きくなって弁体20の移動を緩慢にできる。よって、このように構成されたバルブVでは、開弁圧に達すると応答性よく開弁でき、開弁度合が大きくなると弁体20の移動を緩慢にして弁体20の急激な開弁度合の変化を抑制するとともに弁体20の振動を抑制できる。
【0041】
つづいて、蓋13には、圧側室R2とタンク4とを連通する圧側減衰通路7と吸込通路8と、圧側減衰通路7に設けられた圧側減衰弁9と、吸込通路8に設けられたチェック弁10とが設けられている。
【0042】
圧側減衰通路7は、圧側室R2とタンク4とを連通しており、途中には、圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れのみを許容し、かつ、作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰弁9が設けられている。この圧側減衰弁9によって圧側減衰通路7は、圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、圧側減衰弁9は、本実施の形態では、上流側である圧側室R2の圧力が下流側であるタンク4の圧力より高く、両者の差が開弁圧に達すると開弁して圧側減衰通路7を開放して圧側室R2をタンク4に連通させる調圧弁とされている。調圧弁である圧側減衰弁9は、開弁圧に達すると開弁して、開弁後の通過流量の増加に伴って圧力損失も前述したバルブVに比較して高い割合で増加する流量圧力特性を備えており、流量の増加に応じて上流側の圧力を上昇させて減衰力を大きくする。また、圧側減衰弁9の開弁圧は、バルブVの開弁圧よりも僅かに大きな圧力値に設定されている。
【0043】
吸込通路8は、圧側室R2とタンク4とを連通しており、その途中には、タンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェック弁10が設けられている。吸込通路8は、このチェック弁10によってタンク4から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。チェック弁10は、殆ど抵抗を与えずに作動油の通過を許容する。そして、ダンパDが伸長作動する際に作動油が吸込通路8を介してタンク4からシリンダ1内に供給され、ダンパDの伸長作動時における体積補償が行われる。
【0044】
ロッドガイド14には、伸側室R1とタンク4とを連通する伸側リリーフ通路11と、伸側リリーフ通路11に設けられた伸側リリーフ弁12とが設けられている。伸側リリーフ弁12は、伸側室R1の圧力がタンク4の圧力より高く、伸側室R1の圧力とタンク4の圧力との差が所定圧力以上になると開弁して伸側リリーフ通路11を開放し、伸側室R1からタンク4へ向かう作動油の通過を許容する。伸側リリーフ弁12は、伸側室R1の圧力がタンク4の圧力よりも高くても伸側室R1の圧力とタンク4の圧力との差が所定圧力未満の場合、および伸側室R1の圧力がタンク4の圧力以下の場合には、閉弁して伸側リリーフ通路11を遮断して作動油の通過を阻止する。このように、伸側リリーフ弁12は、伸側室R1の圧力とタンク4の圧力との差(開弁圧)が所定圧力以上になると開弁して伸側室R1内の圧力が予め設定される上限値を超えないようにする。
【0045】
以上のように構成されたダンパDの作動について説明する。まず、ダンパDが伸長作動する場合のダンパDの作動を説明する。ダンパDが伸長作動すると、ピストン3がシリンダ1内を図1中左方へ移動して伸側室R1を圧縮して圧側室R2を拡大させる。圧縮される伸側室R1内の作動油は、伸側減衰弁6を押し開いて伸側減衰通路5を通過して圧側室R2へ移動する。ダンパDの伸長作動時には、シリンダ1内にピストンロッド2が退出するので、圧側室R2内でピストンロッド2がシリンダ1内から退出する体積分の作動油が不足するので、この不足分の作動油は、チェック弁10が開弁して吸込通路8を介してタンク4から圧側室R2に供給される。
【0046】
よって、圧側室R2の圧力は、タンク4の圧力とほぼ等しくなる一方で、伸側室R1の圧力は、伸側減衰弁6によって圧側室R2の圧力よりも高くなる。ピストン3の図1中で左端面には伸側室R1の高圧が作用するとともに、ピストン3の図1中で右端面にはタンク圧が作用するので、ダンパDは、ピストン3のシリンダ1に対する図1中左方への移動を妨げる減衰力、つまり、ダンパDの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。ダンパDが非常に高い速度で伸長して、伸側室R1の圧力が伸側リリーフ弁12の開弁圧である所定圧に達すると、伸側リリーフ弁12が開弁して伸側室R1の圧力上昇を抑制し、ダンパDの伸長作動時に発生する減衰力が過剰となるのを防止する。
【0047】
つづいて、ダンパDが収縮作動する場合、ピストン3がシリンダ1内を図1中右方へ移動して圧側室R2を圧縮して伸側室R1を拡大させる。圧縮される圧側室R2の圧力と拡大される伸側室R1の圧力との差がバルブVの開弁圧に到達しない状態では、バルブVおよび圧側減衰弁9は閉弁したままとなって、圧縮される圧側室R2の圧力が上昇するとともに、拡大される伸側室R1の圧力が下降する。
【0048】
そして、ダンパDの収縮作動が進んで圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差がバルブVの開弁圧以上になると、バルブVが開弁して弁孔3aで形成されるリリーフ通路を介して圧側室R2内の作動油が伸側室R1内へ移動するようになる。なお、圧側減衰弁9は閉弁状態を維持する。
【0049】
さらに、ダンパDの収縮作動が進んで圧側室R2の圧力とタンク4の圧力との差が圧側減衰弁9の開弁圧以上となると、圧側減衰弁9が開弁して圧側減衰通路7を通じてシリンダ1内に侵入するピストンロッド2の体積に見合う体積の作動油が圧側室R2からタンク4へ排出される。
【0050】
このダンパDの収縮作動の初めから圧側減衰弁9の開弁までに要するシリンダ1に対するピストン3の移動距離は、極僅かであるが、ダンパDの収縮作動時にはバルブVが先に開弁した後につづいて圧側減衰弁9が開弁する。このように、バルブVは、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差(開弁圧)が所定圧力以上になると開弁して圧側室R2内の圧力が予め設定される上限値を超えないようにする。
【0051】
そして、このようにダンパDの収縮作動時には、作動油がバルブVを開いて圧側室R2から伸側室R1へ移動するが、バルブVが弁体20とばね受21との間にダッシュポット室23を備えており、弁体20のピストン3に対する軸方向の移動を抑制できるのでバルブVが急激に開弁して減衰力が急変するのを抑制できる。また、ダンパDでは、ダッシュポット室23を備えることで弁体20のピストン3に対する軸方向の移動を抑制できるので、バルブVが急激に開弁して圧側室R2の圧力を急激に減少させて当該圧力をバルブVの開弁圧より低下させ、直ぐにバルブVが閉弁して、再び、圧側室R2の圧力が開弁圧よりも上昇してバルブVが開弁するという動作を繰り返して圧側室R2の圧力変動が振動的になってしまう事態を防止できる。よって、バルブVにおける弁体20の振動を抑制でき、ダンパDの減衰力の大きさが振動的に変化するのを防止できる。
【0052】
そして、前述したように、本実施の形態のバルブVは、中空であって内周に環状弁座3bを有するピストン(ハウジング)3と、ピストン(ハウジング)3内に軸方向へ移動可能に収容されるとともに環状弁座(弁座)3bに離着座可能な弁体20と、ピストン(ハウジング)3内に設けられるばね受21と、弁体20とばね受21との間に介装されて弁体20を環状弁座(弁座)3bへ着座する方向へ付勢するばね22と、弁体20の軸方向への移動によって容積を増減させて弁体20の移動を抑制するダッシュポット室23とを備え、弁体20は、環状弁座3bに離着座する着座部24cを有してピストン(ハウジング)3に対して径方向への移動が規制される弁部24と、ばね22の一端を支承する弁体側ばね受25aを有して弁部24に対して径方向へ移動が許容されて当接するばね受部25とを有し、ダッシュポット室23は、ばね受部25とばね受21との間で形成されている。
【0053】
このように構成されたバルブVは、ダッシュポット室23を備えているので、弁体20のピストン3に対する軸方向への移動に抵抗を与えて弁体20の急激な変位や振動を抑制できる。そして、本実施の形態のバルブVは、弁体20が環状弁座3bに離着座するとともにハウジングとしてのピストン3によって径方向に移動が規制される弁部24と、弁部24に対して径方向への移動が許容されるとともにばね22の一端を支承するばね受部25との2部品で構成されているので、弁部24がハウジングであるピストン3に調心されても、ばね受部25が弁部24に対して径方向へ移動可能であるからばね受部25をピストン3に調心される弁部24に拘束されずにばね受21によって調心できる。したがって、本実施の形態のバルブVによれば、従来のバルブのように弁体がハウジングとダッシュポット室を形成するためのケースとの双方に対して同心に配置しなければならないといった制約がなくなるので、弁体20、ピストン(ハウジング)3およびばね受21に対して高度な加工精度が要求されず、寸法誤差が大きくとも容易にバルブVを組み立て得る。
【0054】
なお、本実施の形態のバルブVでは、弁座を環状弁座3bとし、環状弁座3bに離着座する着座部24cを環状としてるが、弁座および着座部24cは環状に限られず、弁座が着座部24cに着座した際にできる形状であればよい。
【0055】
また、本実施の形態のバルブVでは、弁部24とばね受部25との一方は、弁部24とばね受部25との他方へ当接する当接端から軸方向へ向けて突出する凸部25eを有し、弁部24とばね受部25との他方は、弁部24とばね受部25との一方へ当接する当接端に開口して凸部25eが径方向へ移動可能に挿入される凹部24dを備えている。本実施の形態のバルブVでは、バルブVの弁体20の組み立ての際に凹部24dに凸部25eを挿入することによって、弁部24に対してばね受部25の径方向のある程度の位置決めが可能となるので、バルブVの組み立てが容易になる。
【0056】
なお、本実施の形態のバルブVでは、ばね22がコイルばねであって、ばね受21が弁体20へ向けて突出するとともにばね22の内周側に配置されるケース21bを有し、弁体20におけるばね受部25がケース21b内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド25dを有し、ダッシュポット室23がケース21bとロッド25dとによって形成されている。このように構成されたバルブVによれば、ばね22の内側にダッシュポット室23を設けるようにしているので、ダッシュポット室23を設けても弁体20のばね受部25を小型にでき、弁体20の慣性を小さくして開弁応答性を向上できる。
【0057】
なお、図4に示した一実施の形態の第1変形例のバルブV1のように、ケース26bをばね受部26に設けて弁孔3aの大径部3a2の内周に摺接させてダッシュポット室23を形成してもよい。第1変形例のバルブV1では、弁体20は、バルブVと同様の構成の弁部24と、弁部24に当接するばね受部26との2つの部品で構成されている。
【0058】
ばね受部26は、弁部24のフランジ24bの反先端側の端面に当接する円盤状の弁体側ばね受26aと、弁体側ばね受26aの図4中左端の外周から軸方向へ突出してばね22の外周に配置されるとともに弁孔3aの大径部3a2の内周との間に環状隙間を介して対向する筒状のケース26bと、弁体側ばね受26aの弁部側端の中心部に設けられて弁部24へ向けて軸方向へ突出する凸部26cとを備えている。凸部26cの軸方向長さは、凹部24dの軸方向の長さよりも短く、凸部26cの全体を凹部24d内に挿入できる。よって、ばね受部26の弁体側ばね受26aを弁部24のフランジ24bに正対させて、凸部26cを凹部24d内に挿入すると、弁体側ばね受26aの弁部側の端面とフランジ24bのばね受部側の端面とが当接する。また、凸部26cの外径が凹部24dの内径よりも小径となっているので、凸部26cを凹部24d内に径方向へ移動可能に挿入でき、凸部26cの外周と凹部24dの内周との間に形成される隙間分だけ、ばね受部26と弁部24とが当接したままの弁部24に対してばね受部26が径方向へ変位できる。このように、弁部24とばね受部26とは、凸部26cと凹部24dによって制限はあるものの互いに径方向への移動が許容されている。
【0059】
また、ばね受27は、円柱状であって外周が螺子溝を備えてピストン3の弁孔3aにおける大径部3a2の図4中左端側に設けられた螺子部3a21に螺合する螺子部27aと、螺子部27aの図4中右端から弁体20側へ向けて軸方向へ突出してばね22の内周に嵌合する嵌合凸部27bとを備えている。ばね受27は、弁孔3aの大径部3a2に螺着されると弁孔3aの伸側室側の開口を閉塞する。
【0060】
ばね22は、弁体20のばね受部26の弁体側ばね受26aとばね受27との間に圧縮された状態で介装されて弁体20を環状弁座3bへ向けて付勢している。ばね22の図4中右端は、ばね受部26のケース26b内に挿入されて弁体側ばね受26aに支承される。また、ケース26bの内周であって弁体側ばね受側の内径がケース26bの内周のその他の部位よりも小径となっており、ばね22の図4中右端外周がケース26bの内周の小径部分に嵌合されている。さらに、ばね22の図4中左端の内周には、ばね受27の嵌合凸部27bが嵌合されている。ばね22の外周側には、ケース26bが配置されているので、ばね22の大径部3a2の内周への干渉が防止されている。なお、ばね22は、ばね受27とケース26bの端部との間に介装されてもよく、制限流路を閉塞しなければコイルばね以外のばねとされてもよい。
【0061】
このように、弁体20がケース26bを備えたばね受部26を備えることで、ケース26b内がケース26bと弁孔3aの大径部3a2との間に形成される制限流路を通じてケース26b外へ連通される以外は、ケース26b内は弁孔3aに取り付けられたばね受27によって閉鎖され、ばね受部26とばね受27との間にダッシュポット室28が形成される。
【0062】
本実施の形態のバルブV1は、弁体20が環状弁座3bに離着座するとともにハウジングとしてのピストン3によって径方向に移動が規制される弁部24と、弁部24に対して径方向への移動が許容されるとともにばね22の一端を支承するばね受部26との2部品で構成されているので、弁部24がハウジングであるピストン3の弁孔3aにおける小径部3a1に調心されても、ばね受部26が弁部24に対して径方向へ移動可能であるからばね受部26を小径部3a1に調心される弁部24に拘束されずにピストン3の弁孔3aにおける大径部3a2に調心できる。このように、本実施の形態のバルブV1によれば、弁体20の弁部24とばね受部26とがハウジングであるピストン3の異なる部分によって別々に調心される場合であっても、弁部24に対してばね受部26が径方向へ移動でき、従来のバルブのように弁体がハウジングとダッシュポット室を形成するためのケースとの双方に対して同心に配置しなければならないといった制約がなくなる。よって、第1変形例のバルブV1によれば、弁体20、ピストン(ハウジング)3に対して高度な加工精度が要求されず、寸法誤差が大きくとも容易にバルブVを組み立て得る。
【0063】
バルブV1では、弁体20にケース26bを設けており、弁孔3aの大径部3a2とケース26bとの間に制限流路を設けているので、弁孔3aの大径部3a2でリリーフ通路としての流路面積の確保が難しい。そこで、ピストン3の内周から大径部3a2へ開口するポート3cと、ピストン3の伸側室側端に設けた溝3dと、ピストンロッド2に設けられてポート3cと溝3dとを連通するピストンロッド通路2aとを設けて弁孔3aによる圧側室R2と伸側室R1との連通を確保している。なお、ピストン3のみに弁孔3aの大径部3a2を伸側室R1に連通する通路を設けるスペースがあれば、ピストンロッド2にピストンロッド通路2aを設けなくともよい。
【0064】
また、ばね受部26の軸方向への移動を弁孔3aの大径部3a2の内周でガイドさせたい場合、ケース26bの外周を大径部3a2の内周に摺接させるとともに、ケース26bの外周或いは大径部3a2の内周にダッシュポット室28をケース26b外へ連通する制限流路として機能する溝を設けるか、或いは、ばね受27にダッシュポット室28を伸側室R1に連通する制限流路として機能する孔を設けてもよい。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
3・・・ピストン(ハウジング)、3b・・・環状弁座、20・・・弁体、21,27・・・ばね受、22・・・ばね、23,28・・・ダッシュポット室、24・・・弁部、24c・・・着座部、24d・・・凹部、25,26・・・ばね受部、25a,26a・・・弁体側ばね受、25e,26c・・・凸部、V,V1・・・バルブ
図1
図2
図3
図4