(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044946
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】軸力表示機能付きボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 31/02 20060101AFI20240326BHJP
F16B 31/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16B31/02 E
F16B31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022163544
(22)【出願日】2022-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ 令和3年9月22日に職業能力開発総合大学校総合課程機械専攻卒業研究中間発表会 会場:3号館3109室(階段教室)9:00~16:00 及び オンデマンド発表「変位拡大機構を利用したねじの軸力表示装置に関する研究」(予稿集あり)にて発表 ▲2▼ 令和4年2月 9、10日に職業能力開発総合大学校総合課程機械専攻卒業研究発表会 会場:オンデマンド発表「変位拡大機構を利用したねじの軸力表示装置に関する研究」(予稿集あり)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】521550138
【氏名又は名称】笹川 宏之
(71)【出願人】
【識別番号】521549774
【氏名又は名称】定成 政憲
(72)【発明者】
【氏名】笹川 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正人
(72)【発明者】
【氏名】都築 光理
(72)【発明者】
【氏名】定成 政憲
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍征
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボルトのゆるみ、締め付けの過不足により機械システムが破損することを防止することを目的としている。
【解決手段】通常、外見では見えないボルトの軸力をボルト頭の剛性をスリット等により低下させ、そのスリット等の幅などの変位を拡大し、さらに機械的変位拡大機構を用いて表示させることによりボルトの軸力が適正かどうか目視で判断する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト頭部の剛性を低減させることによりねじの軸力状態の把握を可能としたボルト
【請求項2】
ボルトの頭部にスリットを入れることとそのスリット幅を測ることによるねじの軸力状態の把握を可能としたボルト
【請求項3】
上記スリットに変位拡大装置を用いることによる目視により軸力状態の把握を可能としたボルト
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ボルトの軸力(締結力)を(計測器を使わず)機械的にボルト単体で表示するシステム
【背景技術】
【0002】
ボルトは、ゆるんだ場合、あるいは、生産現場・保全現場で締めつけが不適切な場合などでも外観からは見分けがつかない。そのため、ボルトの頭部の変形により軸力を計測する技術はいくつかの文献で発表されている。しかしながら、頭部の変形量は非常に小さく実験室における高精度の計測でしか測れなかった。今回、ボルトの頭部形状を変えることにより、生産現場、あるいは保全現場において容易に軸力の適切性を知ることが可能になった。
【先行技術文献】
【0003】
【0004】
【非特許文献1】 新田勇,松崎良男, 阿部正信,宮島敏郎:「ボルト頭部頂面の変形に基づいた軸力測定方法の基礎研究」,日本機械学会論文集 C編,73巻,733号pp.2612-2618 清水 伸二,小林 康記,岡部 眞幸:「六角穴付きボルトの軸力検出法に関する研究」,精密工学会誌,56巻,3号,pp.497-502
【発明の概要】
【0005】
ボルト締結体に様々な外力が加わると,時間経過とともに緩みが発生すること、あるいは、破損することがあり.または、初期締め付け不良により,ねじやボルトのゆるみや破損による輸送機器や遊具の事故が数多く発生している.
【0006】
本発明においてはボルトの頭にスリット等入れることにより剛性を低下させ、変位を拡大し、さらに機械的な変位拡大機構を用いることにより目視で軸力の値を把握することを可能とした。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ボルトが機能するために必要とする力は
図1のように締め付け時に発生する軸力である。
本発明では,軸力管理のために,計測等用いることなく、従来のボルトとほぼ互換性のある形状において、目視により軸力を判断できるシステムを構成することを課題としている.
【課題を解決するための手段】
【0008】
ボルト頭部形状を変更することにより、頭部の剛性を落とし、締結時のボルトの頭の変位を拡大するとともに、ボルトの頭に設けた機械的変位拡大機構により目視可能なまで変位を拡大する。
【0009】
軸力の発生に伴い
図2に示すボルトの頭のスリットの幅が小さくなる。
このイメージをを
図3に示す。軸力の発生に伴い締結部材からの荷重によりボルトの頭が変形し、同時にスリット幅が減少する。
【0011】
具体的な変形量(スリット幅の変化)の値は
図4のようになる。(M16ボルトの場合)
【0012】
図4お変位を、
図5の変位拡大装置により拡大する。
図中Xがスリットの変位であり、てこ1を支点2を中心に回転することにより、てこ1の終端3の変位は X×b/a となる。
さらに、てこ4が支点5を中心に回転することにより変位はd/cに拡大される。
すなわち、最終的な変位Yは以下の様になる。
Y=X × b/a × d/c
【0013】
図6が最終的な形状である。結果データは
図7である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】 ボルトの締結図。ボルトを締めると軸力4が発生すると同時に非締結物は5の力で圧縮される。ぼるとの頭は5の力の反力の力で押される。
【0015】
【
図2】 今回用いるボルトは頭1に、剛性低下のためにスリット2が切ってある。
【0016】
【
図3】 ボルトの頭は締結に伴う非締結部材3からの反力3により変形する。スリット4はボルトの頭の変形に伴い狭くなる。
【0016】
【
図4】 ボルトの軸力(M16の場合)とスリット幅の減少量の関係。
【0017】
機械的な変位拡大装置の図。
【
図5】 2を支点とするてこ1と5を支点とするてこ4により変位Xが増幅され、増幅された変位Yが得られる。
【0018】
【
図6】 ボルト1が締め付けられて軸力が発生するとスリット2の幅が狭くなります。そのため、部材3がてこ4を押します。さらにてこ4の先端の部分がてこ5を押しててこ5の先端は目盛り6の部分で大きく変化します。この目盛りで軸力を読み取ることが可能です。(なお、この目盛りは非線形になる場合もあります)
【0019】
【
図7】 ボルトの軸力(M16の場合)とスリット幅の減少量を増幅させたメモリとの関係。
【発明を実施するための形態】
図2のサンプルは通常のボルトに対して、スリットを設けてある。
(この場合実用的な強度はほとんど同じである。実用的な強度が落ちた場合でもボルトの場合強度区分がいくつも設定してあり、強度区分を1段階アップしたものを用いれば問題ない強度が得られる。)
【実施例0020】
図6の例をもとに説明する。軸力の増加に伴いスリット幅が小さくなっているデータが
図3のデータである。変位拡大前の数値データが
図4であり機構による変位拡大後は
図7である。