(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044947
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】集積回路用高抵抗
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L27/04 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022163545
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】522397178
【氏名又は名称】合同会社DXsharecom
(72)【発明者】
【氏名】中里 和郎
(72)【発明者】
【氏名】只木 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】梅村 晋一郎
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AV06
5F038AV17
5F038AV18
5F038CA02
(57)【要約】
【課題】ばらつきが小さく、寄生容量の小さな、集積回路用の高抵抗を提供する。
【解決手段】外部電圧により抵抗値が可変な単位抵抗R
1, …, R
k並列接続により回路抵抗Rを構成する。同じ単位抵抗R2
1, …, R2
mの並列接続により制御抵抗R2を構成する。制御抵抗R2の制御電圧ctrlは基準抵抗R1を元にオペアンプopにより制御される。制御抵抗R2と基準抵抗R1には同一の電流Isが流れ、端子間の電圧も同一となるように制御することにより、制御抵抗R2と基準抵抗R1は同じ抵抗値となる。制御電圧ctrlを回路抵抗Rの制御電圧とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電圧により抵抗値が可変な単位抵抗を1個もしくは複数個並列接続した回路抵抗と、既単位抵抗を1個もしくは複数個並列接続した制御抵抗と、基準抵抗と、オペアンプから構成され、既制御抵抗の抵抗値が既基準抵抗の抵抗値に許容範囲内で等しくなるように既制御抵抗の制御電圧をオペアンプで制御し、既制御電圧を既回路抵抗の制御電圧とすることを特徴とする抵抗
【請求項2】
前記単位抵抗はMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の抵抗
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さな寄生容量、小さなばらつき、高い抵抗値を持つ半導体集積回路用の抵抗に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の構成素子として、寄生容量が小さく、ばらつきの小さな高抵抗が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-007138
【特許文献2】特開平02-285668
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.Tajali,Y.Leblebici and E.J.Brauer,“Implementing ultra-high-value floating tunable CMOS resistor,”Electronics Letters 28th February 2008 Vol.44 No.5
【非特許文献2】Asai S., Ueno K., Asai T., and Amemiya Y., ”High-resistance resistor consisting of a subthreshold CMOS differential pair,” IEICE Transactions on Electronics, vol. E93-C, no. 6, pp. 741-746 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くのセンサ回路の初段回路では
図1のソースフォロワ回路が用いられている。同図においてRはNMOSの動作点を定めるための抵抗、Csはノードnに付く寄生容量である。その周波数特性を
図2に示す。低周波の信号を通すにはRを大きくし、増幅率を大きくするにはCsを小さくする必要がある。
【0006】
典型的なRの抵抗値1MΩの場合、抵抗素子として用いられる標準の抵抗素子のシート抵抗1kΩ/□で1MΩを実現するには抵抗パターンのサイズが非常に大きくなり、寄生容量が大きくなる。特許文献1および特許文献2にシート抵抗の高いポリシリコン抵抗を製造する方法が記載されているが、そのための製造プロセスを追加する必要があり、抵抗値の制御性が悪く、温度依存性が強いため、制御性が要求される高抵抗素子には用いることができない。
【0007】
標準の抵抗素子を用いる代わりに、抵抗値を設計できる抵抗回路としてサブスレッショルド領域のトランジスタを用いる方法が非特許文献1~2に示されている。サイズが小さくなり、低寄生容量の高抵抗が実現できるものの、トランジスタの閾値ばらつきにより、抵抗値の制御性が得にくい欠点がある。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決し、高抵抗、低寄生容量、ばらつき小の集積回路用の抵抗を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図3に本発明の基本構成を示す。外部電圧により抵抗値が可変な単位抵抗R
1, …, R
kの並列接続が回路抵抗Rとして用いられる。同じ単位抵抗R2
1, …, R2
mの並列接続が制御抵抗R2として用いられる。制御抵抗R2の制御電圧ctrlは基準抵抗R1を元にオペアンプopにより制御される。制御抵抗R2と基準抵抗R1には同一の電流Isが流れ、端子間の電圧も同一となるので、同じ抵抗値となる。制御電圧ctrlを回路抵抗Rの制御電圧とする。回路Rの抵抗値はm×R1/kで与えられる。この抵抗値は理想的な場合で、用途により誤差を許容するように設計しても良い。単位抵抗の並列接続数m、kは両方もしくはどちらかが1でも良い。
【0010】
外部電圧により抵抗値が可変な単位抵抗としてMOSFETを用いることができる。その場合、移動度が低く、より高抵抗を実現しやすいP型MOSFETが適しているがN型MOSFETを用いても良い。MOSFETが線形領域で動作するとき、その抵抗値は強反転領域ではVGS-VTHに、弱反転領域(サブスレッショルド領域)ではexp(-q|VGS-VTH|/nkT)に比例する。ここにVGSはゲート・ソース間電圧、VTHは閾値、qは素電荷量、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、nはサブスレッショルドスイングパラメータである。強反転領域・弱反転領域いずれもVGSにより抵抗値を設計できるが、抵抗値は閾値のばらつきの影響を受ける。
【0011】
抵抗値のばらつきを小さくするため、Rは単位MOSFETを1個もしくは複数個(
図3ではk個)並列接続して構成し、R2は単位MOSFETを1個もしくは複数個(
図3ではm個)並列接続してRに近接して設ける。閾値ばらつきはロット間で0.12V程度と大きく、抵抗のばらつきは、強反転領域では40%、弱反転領域では4600%と非常に大きい。近接したトランジスタの間では閾値ばらつきは0.03Vに抑えられ、抵抗のばらつきは、強反転領域では10%、弱反転領域では260%と小さくなる。
【発明の効果】
【0012】
高抵抗Rは1個もしくは数個の単位抵抗からなり、寄生容量を小さくでき、制御電圧ctrlを調整することにより高い抵抗値が得られる。近接して同一の単位抵抗で構成した制御抵抗R2を設け、その制御電圧をR2の抵抗値が標準抵抗R1の抵抗値と等しくなるように制御することにより、抵抗値のばらつきを小さく抑えることができる。R1は制御性の高い素子で形成することができ、そのサイズが大きくなって大きな寄生容量が付いても、Rの寄生容量とはならない。更にR2を構成する単位抵抗の並列数を増やすことにより、基準抵抗R1の抵抗値を小さくすることができ、R1のサイズを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を望ましい実施の形態に基づいて説明する。本件発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本実施例を変形した変形例等も本発明の権利範囲に含まれる。
【実施例0015】
以下、400kΩの抵抗を本発明で作成した例を説明する。本実施例では0.5μmの標準CMOSテクノロジーを用いた。
図4に回路図を示す。単位抵抗となるP1,P2
1,P2
2,P2
3,P2
4はゲート長2.4μm、ゲート幅1.2μmのPMOSFETを用いた。基準抵抗R1はシート抵抗1kΩ/□のn型ウエル抵抗を用い100kΩを形成した。P6、P7,N1,N2,N3,N4はオペアンプop、N5,N6はレベルシフト回路を構成する。電源電圧としてDDに3.3Vを、直流バイアスとしてGGに2.8Vを、バイアス電流IsとしてR3を調整して1μAを供給した。この条件ではP1,P2
1,P2
2,P2
3,P2
4は強反転領域で動作する。
図5にレイアウトを示す。基準抵抗R1は大きな面積を占有した。
図6に周波数特性を示す。抵抗値は1GHzまで400kΩを示し、寄生容量は9fFと小さい。n型ウエル抵抗で400kΩを形成した場合には、寄生容量は1pF程度となり、本発明により寄生容量が1/100に低減された。
本発明は初段にソースフォロワ回路を用いたセンサ回路や低周波領域まで通すバンドパスフィルタ回路等において、バイアス抵抗Rに精度を要する、もしくは寄生容量の効果を減らしたい集積回路デバイス一般に有効である。