(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044950
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】往復運動を一方向の回転運動に変換する機構
(51)【国際特許分類】
F16H 35/00 20060101AFI20240326BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16H35/00 G
F16H19/04 G
F16H19/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022163548
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】595147962
【氏名又は名称】橋本 達鋭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達鋭
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB03
3J062AB05
3J062AC07
3J062CA16
3J062CA17
(57)【要約】
【課題】 往復運動又は揺動運動をする物体の動きを一方向の回転力に変換伝達機構
【解決手段】 複数個のギヤと2個のワンウェイクラッチと該ワンウェイクラッチに勘合して、一方向に回転を伝達される回転出力軸から構成される一方向回転伝達機構
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動または、揺動する物体の動きを、少なくとも複数の歯車と、2個のワンウェイクラッチと該ワンウェイクラッチに勘合して、一方向に回転を伝達される回転出力軸から構成される一方向回転伝達機構
【請求項2】
請求項1の構成であって、該複数の歯車の内、ひとつはラックで、該ラックに噛合う歯車はピニオンギヤであって、該ピニオンギヤに該ワンウェイクラッチは回転軸に同一方向に咬み込む向きで、圧入されて一体となっており、かつ、該回転出力軸の長手方向に、並んで該2個のピニオンギヤが勘合されており、該ラックの2個は其々の噛み合いに干渉しないで、対面する点対称の位置にお互いの長手方向の両端部で固定され、一体的にスライドできるようにしたことを特徴とする一方向回転伝達機構
【請求項3】
請求項1の構成であって、該複数の歯車は傘歯車の組合せによる回転伝達機構からなることを特徴とする一方向回転伝達機構
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体が往復運動する時の力を一方向の回転運動に変換する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、往復運動を一方向に回転する機構としては、代表的なものとしてレシプロエンジンのクランク機構がある。また、いろいろな装置が考案されている。
【先行技術文献】
【0003】
特許文献1では、2対の歯車と2対のスプロケットとチェーンと2個のワンウェイクラッチの組合せで、往復運動を一方向回転運動に変換している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、チェーンによる駆動伝達の手段を用いているので、チェーンのたるみやスプロケットとの噛み合いガタ等で伝達効率が落ちる。従って、比較的緩やかで、移動量の大きい往復動の場合での一方向回転への変換は有効であると考えられるが、微少な往復動では、変換効率が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ギヤとワンウェイクラッチの組合せと出力軸への回転伝達のみで、一方向の回転に変換できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この構成により、海の波のような緩やかなうねりや、道路の橋脚等の車の通過による振動を、装置の揺動又は往復動入力部に連結することで、往復移動のいずれの方向の移動力でも、一方向の回転力に変換することができるので、回転式発電機を回す動力として有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】は長手方向の端部を外して内部をみた右側面図である。
【
図5】は正面図で以下の図がどの位置の断面図かを示す図である。
【
図9】は入力軸の軸を縦割にした
図8におけるCC断面図である。
【
図10】本発明の第二実施例の使った発電機の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施例の外観図である。
図2は長手方向のセンターの断面を下から見た図である。1はラックである。2はピニオンギヤで。3はワンウェイクラッチで、4は軸で一方向回転の出力軸である。
図3は長手方向から見た図で、内部の構成を説明する。上下のピニオンギヤ2は回転中心に図示せぬそれぞれワンウェイクラッチ3が同じ回転方向の時だけ、軸4咬み込む向きで圧入されている。ワンウェイクラッチ3が、中心の軸4に勘合して上下に配置されている。
【0009】
軸4はフレーム5に支えられた図示していない軸受けで、上下を回転自在に軸支されている。以下の説明においては、
図3の上から見て、右方向にワンウェイクラッチ3が回転するときに、軸4が右方向に回転させられることになる。
【0010】
ピニオンンギヤ2は歯21とピッチ円径の円筒部22からなる。また、右側のラック1は、歯11とピニオンギヤ2の噛み合い、ピッチ円円筒部22に接する凸部12と、噛み合わない上のピニオンギヤ2の歯をよける凹部13から成る。また、左側のラック1は上のピニオンギヤ2と下のピニオンギヤの中間点で点対称の一に配置されており、右側のラック1とは反対に、上のピニオンギヤ2の歯と歯が噛合い、ピッチ円円筒部22に接する凸部12と、噛み合わない下のピニオンギヤ2の歯を凹部13はよけている。
左右のラック1は長手方向の両端部でラック固定14にて一体になっている。6はツバ付きのコロで、フレーム5の上側に4か所、下側に2か所、左右を3点支持になる様、回転自在に軸支されており、ラック1を、前後方向にスライド自在に支えている。
【0011】
次に動作を、説明する。一体となったラック1が手前に移動すると、上のピニオンギヤ2は左回りに回転するので、ワンウェイクラッチ3は軸4に咬まずにフリーで回転する。一方、下のピニオンギヤ2は右回りに回転するので、ワンウェイクラッチ3は軸4に咬み込んで、回転を伝える。
【0012】
今度は一体となったラック1が奥側に移動すると、上のピニオンギヤ2は右回りに回転するので、ワンウェイクラッチ3は軸4に咬み込んで、回転を伝える。一方、下のピニオンギヤ2は左回りに回転するので、ワンウェイクラッチ3は軸4に咬まずにフリーで回転する。このように、ラック1が前後する度に、其々のピニオンギヤ2の回転方向が変わり、軸4に咬み込んで、回転力を伝えるピニオンギヤが交代する。往復動差中の方向が切り替わる時以外は、常に軸4を右回転方向に回すこととなる。
【0013】
図4は第二実施例の外観図である。
図5は側面図で、
図6は
図5で示すAA断面図で、
図7は
図5で示すBB断面図である。
図4で1は外装で、2は蓋で、蓋2は外装1と一体に固定される。3は後述するセンターで噛み合う複数の傘歯車と一方向に回転する軸を回転自在に軸支するギヤボックスである。
図6で、ギヤボックス3は左右対称形状で、図示しないネジで結合されている。31はギヤボックス3の後述する傘歯車を回転自在に軸支する摺動面である。また、24は後述するギヤユニットの軸を回転自在に軸支する摺動面である。
【0014】
外装1の内の円筒部と垂直な面には歯数48枚の傘歯車11が形成されている。外装1の12はギヤボックス3を回転自在に支持する摺動面である。蓋2の21はギヤボックス3を回転自在に支持する摺動面である。4は前述の傘歯車11と噛み合う歯数12の傘歯車41とギヤボックス3の摺動部32で回転軸支される軸部42と、後述する傘歯車と噛み合う歯数12傘歯車43から成る、ギヤユニットである。
【0015】
5は前述のギヤユニット4の傘歯車43と噛み合う歯数16の傘歯車54と、外円筒部53から成る傘歯車で、左右2つある傘歯車5の円筒内部にはワンウェイクラッチ6が同じ右回転方向で軸7を咬み込む向きで圧入されている。円筒外周部はギヤボックス3の円筒摺動部31に回転自在に軸支されている。この時、この傘歯車5はギヤボックス3のセンターに対して、向かい合う様に配置してあるので、ギヤユニット4の傘歯車43の左右両側で噛み合い、同時に両方の傘歯車5に互いに対し、逆方向に回転を伝達する。
図7に有るように、傘歯車5に対し、ギヤユニット4の傘歯車は43は4方向から噛み合っている。
【0016】
次に動作を説明する。外装1は回転しないように、外部に固定されている状態で、ギヤボックス3に揺動力を入力する。
図4の矢印右回り揺動の時、ギヤユニット4の傘歯車41は噛み合った傘歯車11が固定されているため、
図6の上側から見て、左回りに、ボックス3の揺動角度に対し4倍(48歯数÷12歯数)の角度で揺動回転する。すると、傘歯車43と噛み合う左側の傘歯車5は右回りに0.75倍(12歯数÷16歯数)の角度で揺動回転する。この時の右回り回転なのでワンウェイクラッチ6が軸7を咬み込んで、ギヤボックス3の揺動角に対し、3倍(4×0.75)の角度で右回りに揺動回転する。
【0017】
一方、右側の傘歯車5のワンウェイクラッチ6は左回りなので、軸7に咬まずにフリーで回転する。
今度は、
図4の矢印左回り揺動の時、ギヤユニット4の傘歯車41は、
図6の上側から見て、右回りに揺動回転し、傘歯車43と噛み合う左側の傘歯車5は左回りに揺動回転する。この時の左回りなので、軸7に咬まずにフリーで回転する。一方、右側の傘歯車5は右回りなので、ギヤボックス3の揺動角に対し、3倍の角度で右回りに揺動回転する。
このようにして、ギヤボックス3が揺動する動きで、軸7は右方向に回転を続ける。実施例では外装1を固定し、ギヤボックスを入力手段としたが、ギヤボックス3を固定し、外装1を入力手段としても同じ結果が得られる。
【0018】
図8、
図9は第三実施例で傘歯車方式であって、第二実施例と同じ機能のものは、同じ番号で説明図に記載している。外装1と一体の傘歯車11の歯数を多くして、高増速にした場合、ギヤユニット4の傘歯車41の歯数が少ないと、噛み合い率が少なくなるので、噛み合い率を上げる機構を説明する。
【0019】
32はギヤボックス3に固定されたアイドル軸で、
図8のようにギヤユニット4を含め、各30度となる様に、アイドル軸32は中心の出力軸7に向かって、かつ、ギヤユニットの軸線と同平面上に配置されている。33はアイドル軸32に回転自在に軸支された傘歯車4、1と同じ外形をしているアイドル傘歯車である。従って、ギヤボックス3と外装1のいずれかが、揺動すると、アイドル傘歯車33は傘歯車11に噛み合っている為、回転する。
【0020】
図9において、111は対向する傘歯車11と同じ形状のフリー傘歯車であり、34はギヤボックス3に回転自在に支持された、4個のツバ付きコロである。これは出力軸7とフリー傘歯車111が同軸でかつ回転自在に支持され、かつ傘歯車41やアイドル傘歯車33との噛み合いが逃げないようにツバで支持する。
【0021】
次に動きを説明する。ギヤボックス3と外装1が相対的に回転すると、下側の傘歯車11と噛み合った、4個の傘歯車41回転させる。同時に、8個のアイドル傘歯車33も回転させる。すると、上側のフリー傘歯車111がそれら計12個の歯車によって、ギヤボックス3の回転と逆方向に回転移動する。この時、4個の傘歯車41は他端部の傘歯車を回す為に負荷がかるので、回りづらくなる。
【0022】
一方、負荷の掛かっていない8個のアイドル傘歯車33で、上側のフリー傘歯車111を回すことで、4個の傘歯車41に回転力を伝えることになる。つまり、出力軸7を回転させる元の4個の傘歯車41は上下両側からの噛み合いで回転力が伝えられるので、負荷変動があってもスムーズに揺動力を一方向回転に増速変換できる。
【0023】
図10は、傘歯車方式の本発明の入力側揺動部に不釣り合いの重り付けた発電機の使用例を示す。101は本発明機構である。102は入力部に付けた不釣り合いの重りで、103は回転式発電機で、出力軸と発電機の回転軸と直結して有る。104は装置全体を支持するフレームである。この装置を車や船や電車等の乗り物に搭載したり、人や動物の身に付けたりすると、それらの動きで、入力部の不釣り合いの重りが、揺動することで、出力軸が一方向に増速回転して、発電機軸が回り、電気を発生することができる。
【0024】
とは言え、揺動や往復動では必ず、移動方向の向きが変わる瞬間に回転力が発生しない。このときの出力回転を変動しないようにするためには出力軸にフライホィールを追加するとよい。揺動や往復動が間隔をおいて発生するようなもので、フライホィールでは間に合わないような場合は、ぜんまい式の回転力を貯める装置と組み合わせて、一定のぜんまいの巻きが貯まってから、間欠的に回転力を放出ようにすると、その時だけは一定の回転力が得られ、安定して発電が出来る。
【0025】
実施例では、傘歯車方式で、ワンウェイクラッチの圧入された出力傘歯車を回転させるギヤユニットは4個であるが、駆動の伝達がスムーズならば、1個でも2個でも3個でもよい。また、ワンウェイクラッチと勘合する出力軸の少なくとも勘合面は、軸受け炭素鋼やステンレス鋼など、硬く剛性のある材質が耐久的に望ましい。ワンウェイクラッチは、スプリングクラッチ等のクラッチもあるが、ローラークラッチが軸に咬み込まない側に回る時の負荷が非常に少ないので、好ましい。
【0026】
また、ローラー式ワンウェイクラッチであれば、出力軸を長い出力軸に容易に交換することができるので、この機構を複数個差し込み、其々の機構に連結した揺動手段がバラバラに動いてもこの機構は機能するので、例えば、海の防波堤等で、外海のうねりを浮体で複数個所揺動運動に変換して、この機構に入力すれば、回転トルクを増やすことができる。
【0027】
さらに、原理的に、揺動の向きが変わる位置が毎回変わっても一方向への回転ができるので、特に、傘歯車方式であれば、構造上、方向変換する前段階で増速出来るため、ゆったりしたうねりから、振動とよばれるような比較的周波数の高い往復動であっても機能を果たす事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、この装置は往復動や揺動する物体の動きを一方向回転運動に変換できるので、特に波のようなうねりや、自動車やバイク等の車体とタイヤ間のショックアブソーバーの往復動や、子供の遊具であるブランコやシーソーなどの揺動を、装置の揺動部又は往復動部に連結すれば、回転式発電機の有効な動力源となる。
また、傘歯車を使った実施例で、入力部に不釣り合い重りをつけた回転式発電機と組み合わせたものでは、動くものに搭載すると、姿勢や角速度の変化で、一方回転力が増速して得られるので、動きのあるあらゆるもので、発電が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
第一の実施例
1 ラック
2 ピニオンギヤ
3 ワンウェイクラッチ
4 軸
5 フレーム
6 軸受け
第二の実施例
1 外装
11 傘歯車
3 ギヤボックス
4 ギヤユニット
5 出力傘歯車
6 ワンウェイクラッチ
7 出力軸
第三の実施例
33 アイドル傘歯車
34 つば付きコロ
111 フリー傘歯車