(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044953
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タイル外装材の脱落防止定着金物の製造方法。
(51)【国際特許分類】
E04F 13/14 20060101AFI20240326BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240326BHJP
E04B 2/94 20060101ALI20240326BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04F13/14 103A
E04F13/14 103F
E04F13/08 101V
E04B2/94
E04C2/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022163551
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】308031337
【氏名又は名称】株式会社オリオンセラミック
(72)【発明者】
【氏名】古賀 謙一郎
【テーマコード(参考)】
2E002
2E110
2E162
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB06
2E002NB07
2E002XA01
2E110AA48
2E110AA50
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BA13
2E110BB07
2E110BC02
2E110BC07
2E110BC15
2E110CA04
2E110DC25
2E110EA09
2E110GA26X
2E110GA33X
2E110GA34W
2E110GB23X
2E110GB26W
2E110GB28W
2E162CA08
2E162CA11
(57)【要約】
【課題】 タイル付き先付けプレキャストコンクリートパネルの、コンクリート躯体壁面に、タイル材を定着金物で固定し一体化させる技術を、低コストで供給する。
【解決手段】 該大判タイル3のタイル裏面3aに穿設した加工穴3bに、エポキシ樹脂接着剤5を塗着し、埋め込み金物4を取り付ける。この埋め込み金物4はナット4a、シール4bと座金4cから成り立ち、エポキシ樹脂接着剤5にてタイル層と強固に接着する。コンクリート躯体とタイルを一体化させる定着用アンカー7は、皿ボルト7aにナット7b、座金7cを取付けた埋め込み金物4の、ナット4a部分に挿入し一体化せる。この定着金物が、大判タイル3とコンクリート躯体を強固に一体化することが出来る。これらの部材は、市販の汎用品を使用することにより、低コストで製造し、タイル付き先付けプレキャストコンクリート部材用のタイル材を低コストで提供することができる。
また、ナット4aの替わりに、フランジ付きナット4dに替えることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のコンクリート躯体壁面にタイルを取付け一体化させる場合に、該タイル裏面に定着金物を固定させる為、該タイル裏面側に穿設を設け脱落防止金具の取付け方法を、低コストで製造することを特徴とするタイル外装材。
【請求項2】
該タイル裏面に穿設した加工穴にエポキシ樹脂接着剤を塗着し、穿設した穴にナットを埋設した、埋め込み金具のタイル外装材。
【請求項3】
低コストで、タイル先付けプレキャストコンクリート部材のコンクリート躯体とタイル材を結合する、埋め込み金具を低コストで提供する。
【請求項4】
低コストでタイル先付けプレキャストコンクリート部材のタイルとコンクリート躯体を結合する、定着用アンカーを低コストで提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル付きプレキャストコンクリート工法(PCa工法)のコンクリート躯体とタイル部材を一体化させる、定着金物を低コストで提供する施工方法。
【背景技術】
【0002】
従来、PCa工法はモザイクタイル(45×45、45×95)主に四丁掛(227×120)までを基本にタイルの裏面に凸凹の裏足を設け、この凸凹面にコンクリートが附着し、この接着力でコンクリートとタイルを一体化させるPCa工法がある。しかし、300×300mm以上の大判タイルについてはいまだ打ち込み方法が確立されていない。
【非特許文献1】参照
【0003】
近年、タイルの大型化が進みこの大判タイルをPCa工法で使用することが多くなって来た。
この大判タイルの場合、裏面の凸凹の裏足が小さくコンクリート躯体への付着力が小さく、また、外気の影響を受けやすく、熱膨張による変形や風圧の影響が四丁掛(227×120)以下のタイルよりも生じやすい。
【0004】
非特許文献2については、石材301をPCa部材に先付けしたカーテンウォール工法である。
PCa部材に先付けされる石材301の厚みは、25mm~40mm厚が多く採用されている。しかし、25mm厚み以下の場合は、シアコネクター302と言われる、定着金物を取り付けることが困難となる、また、安全性や耐久性も低下する。
【非特許文献2】参照
【0005】
大判タイルは、大判タイル厚みが7mm~20mm程度で耐久性も兼ね備えている。
大判タイルをPCa部材として使用する品質基準が、非特許文献1でのタイルとしての品質基準が無いため、非特許文献2の石先付けPCa部材の品質基準が採用されている。
【0006】
大判タイルのPCa打ち込みの場合、石先付けPCa部材と同様に、大判タイル裏面3に裏面処理剤6を施し、タイル裏面3に取付け定着金物7を取付け、コンクリート躯体と一体化させる工法が取られている。
【0007】
特許文献1では、大判タイル裏面3aに取付け支持金物101の取付け方法は、大判タイル裏面3aに相対するスリット溝部102aの切れ込みを入れ、そのスリット溝部102aに支持金具101を挟み込み固定する方法が取られている。
特許文献1 参照
【0008】
このスリット溝部102aは、長さ100mm深さ7mm程度に、大判タイル裏面3aに斜めに切り込み部102bを入れている為、大判タイル3への物理的負荷が大きく作用して、大判タイル3に割れや破損が生じやすい。
【0009】
スリット溝部102aへ支持金具101を挿入するが、大判タイル3に角度45~55°に深さ7mmに切り込み部102bへ取付け支持金具101の屈曲部を挿入し大判タイル3と結合させている。大判タイル3を傾斜した挿入溝部を形成されているが、取付け支持金具101に多少の負荷が生じた場合に、大判タイルの切り込み部102bに割れが発生しやすい。
【0010】
特許文献1の支持金物101は、取り付け支持金具101は曲げ加工、溶接加工等の、特殊な加工方法で加工している為、コスト高となっている。
【0011】
特許文献2では、石材、タイル3の裏面3aに加工穴3bを穿設し、その加工穴3bにエポキシ樹脂接着剤5を塗着し、ボルト204を穿設する方法が取られている。
特許文献2 参照
【0012】
なお、大判タイルのタイル先付けPCa工法に用いるプレキャストコンクリート工法の製造は、複数の業者が介在している。大判タイルを輸入するタイル業者と、その大判タイルを供給されて加工するタイル加工業者、タイル加工業者から供給された大判タイル材を用いてPCa部材を製造するPCa製造業者が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2020-016082
【特許文献2】特開平7―180269
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】日本建築学会 「建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 陶磁器質タイル張り工事」2012改定(第4次) 5節タイル先付けプレキャストコンクリート工法 P208~P264
【非特許文献2】日本建築学会 「建築工事標準仕様書・同解説 JASS9 張り石工事」 2009改定(第3次) 7節 石先付けプレキャストコンクリート工法 P131~P142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記、特許文献1に記載された大判タイル裏面3aに取付け支持金物101の取付け方法は、大判タイル裏面3aに並列するスリット溝部102aの切れ込み部102bを入れ、そのスリット溝部102aに支持金具101を挟み込み固定する方法が取られている。
このスリット溝部102aは、長さ100mm深さ7mm程度に、斜めに切り込み部102bを大判タイル裏面3aに入れる為、大判タイル3への物理的負荷が大きく作用し、大判タイル3に割れや破損が生じやすい。
スリット溝部102aへ支持金具101を挿入するが、大判タイル3に角度45~55°に深さ7mmに切り込み部102bに取付け支持金具101の屈曲部を挿入し、大判タイル3と結合させている。大判タイル3を傾斜に切り込み部102bを形成されているが、取付け支持金具101に多少の鉛直負荷が生じた場合に、大判タイルの切り込み部102bの材質強度が弱くなり割れが生じる。この為、非特許文献2の品質基準を満たすことが難くなる。
また、取り付け支持金具101は曲げ加工や溶接加工等特殊な加工方法で加工している為、コストが高くなっている。
【0016】
上記、特許文献2に記載の大判タイル3は、タイル裏面3aに加工穴3bを穿設し、その加工穴3bにエポキシ樹脂接着剤5を塗着してボルト204のボルト先端部204aを差し込み、大判タイル3と一体化させる大判タイル付きPCa盤の製造方法である。
この大判タイル3とボルト204を一体化させた大判タイル3を、PCa部材として使用して、大判タイル付きPCa盤の製造方法が記載されている。
しかし、タイル付きPCa盤の製造には、大判タイル3を輸入するタイル業者、大判タイル3に加工穴を明けるタイル加工業者、大判タイル3を使用し、PCa盤を製造するPCa製造業者に分かれており、大判タイル3に加工穴3bに、エポキシ樹脂接着剤5を塗着しボルト204を差し込み硬化させ、大判タイル3と一体化させる作業は、PCa製造業者にとって慣れない作業と、また、多大な負担が生じる。
また、大判タイル3とボルト204を一体化させることをタイル加工業者が負担となると、大判タイル3にボルト204が突出しているため、大判タイル3を積み重ねることが出来ない。このために、PCa製造業者への輸送コストや手間が多大に増える。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記問題点を解決するため考案されたものであり、以下のものを提供する。
【0018】
大判タイル3の大きさは、例えば600mm角、600mm×1,200mm、1,500mm×3,000mm等がある。厚みは7mm~20mm程度である。
【0019】
本発明は、大判タイル3の裏面3aに円形状に穿設された加工穴3bを形成する。
特許文献1のように、タイル裏面3aの並列する長さ100mm深さ7mmのスリット溝部102aを成形すると、大判タイル3の強度が低下し、スリット方向に割れが生じやすい。埋め込み金物4は円形状に穿設された加工穴3bは、円形状に耐力が分散するためタイル材質への負荷が少ない。
【0020】
また、大判タイル3へスリット切り込み部102bの切り込み角度が45~55°深さ7mmの切り込みを入れると、タイルの切り込み部102bに鉛直に力が働いた場合、タイル材質の強度が低下しタイルが破損する。
本発明の、円形状に穿設された加工穴3bは、円形状に耐力が分散するためタイル材質への負荷が少ない。
【0021】
特許文献1に記載された、大判タイル裏面3aに取付けられた支持金物101図―5は、切断、曲げ加工、溶接加工等の、特殊な加工方法で加工している為、コストが高くなっている。
【0022】
上記問題を解決するため、埋め込み金物4をタイル裏面3aに穿設された円形状の加工穴3bにエポキシ樹脂接着剤5を塗着し、ナット4a底部にエポキシ樹脂接着剤5の漏れ防止4bを施し、タイル裏面3a表層部まで埋設させる。埋設したナット4aは、エポキシ樹脂材5がタイルの材質と強固に接着することで、固定耐力が増大する。また、ナット4aは市販の汎用品を使用することにより、低コストで提供するが出来る。
【0023】
大判タイル3をPCa盤のコンクリート躯体2に定着させる定着用アンカー7は、ネジやボルト状の物であれば、定着用アンカー金物7として使用することができる。
【0024】
特許文献2のタイル付きPCa盤1の製造は、大判タイルを輸入するタイル業者、大判タイルを加工するタイル加工業者、PCa盤を製造するPCa製造業者に分かれており、大判タイル3の加工穴3bにエポキシ樹脂接着剤5を塗着しボルト204を差し込み接着させ、石材と一体化させる作業は、PCa製造業者にとって慣れない作業と、多大な負担が生じる。
また、大判タイル3とボルト204を一体化させることを、タイル加工業者の負担なると、大判タイル3にボルト204が突出しているため、大判タイル3を積み重ねることが出来ない、このため、PCa製造業者への持ち運びや輸送コスト等が多大の負荷に増える。
【0025】
上記問題を解決する為に、大判タイル裏面3aに円形状の加工穴3bにエポキシ樹脂接着剤5を塗着しナット4を埋設させる。
【0026】
埋め込み金具4の、埋設したナット4aは、エポキシ樹脂材5がタイルの材質と強固に接着することで、固定耐力が増大する。また、埋設されたナット4は大判タイル裏面3aと同一面で加工されている為、大判タイルを積み重ねても問題は発生しない。
【0027】
上記の積み重ねた大判タイル3は、特許文献2の支持金物ボルト204が突出していない為、取り扱いや輸送コストを軽減することが出来る。
【0028】
外装大判タイルのPCa盤への打ち込み方法は、非特許文献1の陶磁器質タイル張り工事5節タイル先付けプレキャストコンクリート工法には記載が無く、非特許文献2の7節石先付けプレキャストコンクリート工法の基準が採用されている。
この基準によれば、取り付け金物の固定耐力は、シアクネクター302一本あたり最大耐力は、平均2,500N/本程度とされている。
本発明における定着用アンカー7の固定耐力は、2,597N~3,459N/本であった。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、タイル付きプレキャストコンクリートパネル1の外装大判タイル3の定着用アンカー7の固定具は、市販のネジ、ボルト・ナットで製造が出来るためコストダウンを図ることができる。また、取付け定着アンカー7の許容耐力も基準を超えており、安心、安全のPCa部材を供給する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係わるタイル先付けプレキャストコンクリート工法の外装大判タイル部材の断面図である。
【
図2】本発明に係わる埋め込み金具の断面図である。
【
図3】本発明に係わる定着用アンカーの断面図である。
【
図4】タイル先付けプレキャストコンクリート盤の断面図、姿図である。
【
図7】石先付けプレキャストコンクリート工法の定着金物断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、タイルプレキャストコンクリート工法の外装大判タイルとコンクリートを結合する支持金具を安価に供給する。実施形態について、以下、図面を参照に詳細に説明する。
【実施例0032】
本発明はタイル付き先付けプレキャストコンクリート工法の外装大判タイル3とコンクリート躯体2を一体化させる埋め込み金具4とその埋め込み金具4に取り付ける定着用アンカー7を、図―1~図―4に示すように構成される。
【0033】
請求項目1は、タイル先付けプレキャストコンクリート工法に使用する、薄型大判タイルは、タイル厚み7mm~20mm程度あるため、従来のシアコネクター302等の定着用アンカーの取付けは、タイルの厚みが薄い為に難しい。
【0034】
上記の問題を解決するため、特許文献1、特許文献2等が開発されてきた。
しかし、いずれもコストが高いことや取り扱い、輸送等の問題が発生している。そこで、低コストで供給する為に市販ステンレス製の部材を使用し、また、品質基準も確保することが出来る。
【0035】
請求項目2は、大判タイル2の寸法が、600mm×600mm厚み10mmの大判タイル裏面3aに、5mm深さの加工穴3bを穿設する。
【0036】
その加工穴3bに、ステンレス製の埋め込み金物4を埋設する。埋設する埋め込み金物4は、市販のナット4aを使用する。ナット4aの底部分には、エポキシ樹脂接着剤5の進入を防止するため、シール4bを張り付けられている。
【0037】
エポキシ樹脂接着剤5の進入を防止するためのシール4bは、市販のシールや粘着剤付きフィルム等であれば良い。
【0038】
ナット4aの上部には、ナット4aが大判タイル裏面部3aに沈み込むのを防止する事と同時に、高さがタイル裏面3aと同一面になるように座金4cを接着させる。
【0039】
大判タイル3の裏面3aにエポキシ樹脂剤接着剤5を塗着させ、上記埋め込み金物4を埋没される。このエポキシ樹脂剤接着剤5は、タイル層と強固に接着することで、埋め込み金物4に定着用アンカー7を取付けた場合、固定耐力が2,597N~3,459N/本と強固に固定する。
石先付けPCa工法の固定耐力基準である、2,500N/本を上回ることが出来る。
【0040】
請求項目3は、埋め込み金具4は市販の部材としてタイル付きプレキャストコンクリート部材の大判タイル3とコンクリート躯体2を結合する定着アンカー7を低コストで提供することができる。
【0041】
請求項目4は、定着用アンカーは全てステンレス製の皿ボルト7aの頭に座金7cをナット7bで皿ボルト7aに一体化させる。また、皿ボルト7aはネジ、六角ボルト、アイボルトなどを使用しても良い。
【0042】
定着用アンカー7は、皿ボルト7aの頭にナット7cを取り付ける、このナット7cがコンクリート躯体2との付着力が増し、定着用アンカー7の固定耐力が強固になる。
定着用アンカー7の大判タイル3への取り付け作業は、PCa製造業者がタイル裏面に裏面処理剤6を塗布後、定着アンカー7を取り付けているため、PCa製造業者の負担となっている。
本発明は、タイル付き先付けプレキャストコンクリート工法における大判タイル3部材を、コンクリート躯体2と強固に定着金物とし付着させることができ、低コストで供給することが出来る。