(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044977
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】トルクセンサ装置及び操舵装置
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20240326BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01L3/10 305
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037279
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022150247
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂山 智史
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC30
3D333CD06
3D333CD16
3D333CE16
(57)【要約】
【課題】重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制すること。
【解決手段】出力軸82bに固定されるステータ34と、内側に出力軸82bとステータ34とを配置するハウジング20と、出力軸82bをハウジング20に対して回転自在に支持する軸受60と、ハウジング20と軸受60との間に介在するリテーナー50と、を備え、軸受60は、外輪61と、内輪62と、外輪61と内輪62との間に配置される複数の転動体63とを有し、リテーナー50は、円筒状に形成される円筒部51を有し、円筒部51の内周面が軸受60の外周面64に対向し、円筒部51の外周面52がハウジング20の内周面22に対向し、円筒部51は、外輪61に対する軸受60の軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられ、ハウジング20は、リテーナー50における円筒部51の軸方向に面する面に当接する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに固定されるステータと、
前記ステータに対向して配置された円筒状の磁石と、
内側に前記シャフトと前記ステータと前記磁石とを配置するハウジングと、
前記シャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持する軸受と、
前記ハウジングと前記軸受との間に介在するリテーナーと、
を備え、
前記軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される複数の転動体とを有し、
前記リテーナーは、円筒状に形成される円筒部を有し、
前記円筒部の内周面が前記軸受の外周面に対向し、前記円筒部の外周面が前記ハウジングの内周面に対向し、
前記円筒部は、前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、
前記ハウジングは、前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接するトルクセンサ装置。
【請求項2】
前記リテーナーは、前記円筒部の軸方向における端部から前記円筒部の径方向における内側に延びる内側延長部と、前記円筒部の軸方向において前記内側延長部が配置される側の反対側の前記端部から前記円筒部の径方向における外側に延びる外側延長部とを有し、
前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記内側延長部の面が前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に当接することにより、前記円筒部は前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、
前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記外側延長部の面が、前記円筒部の軸方向に面する前記ハウジングの一部分である、リテーナー当接部に当接することにより、前記ハウジングは前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向を向く面に当接する請求項1に記載のトルクセンサ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記リテーナー当接部が前記リテーナーの前記外側延長部に当接することにより、前記リテーナーから前記軸受の前記外輪に対して前記軸受の軸方向の予圧を与える請求項2に記載のトルクセンサ装置。
【請求項4】
前記リテーナーは、前記円筒部の軸方向における端部から前記円筒部の径方向における内側に延びる内側延長部を有し、
前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記内側延長部の面が前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に当接することにより、前記円筒部は前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、
前記ハウジングは、内周面が前記リテーナーの前記円筒部の外周面に対向する大径部と、内径が前記大径部の内径よりも小さい小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続し前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に対向する接続部とを有し、
前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向における前記内側延長部が位置する側の端部に前記接続部が当接することにより、前記ハウジングは前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接する請求項1に記載のトルクセンサ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記接続部が前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向における前記内側延長部が位置する側の端部に当接することにより、前記リテーナーから前記軸受の前記外輪に対して前記軸受の軸方向の予圧を与える請求項4に記載のトルクセンサ装置。
【請求項6】
前記リテーナーの前記内側延長部の内径は、前記外輪の外径より小さく、前記内輪の外径より大きい請求項2または4に記載のトルクセンサ装置。
【請求項7】
前記円筒部は、前記外輪に圧入されることにより、前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられる請求項1に記載のトルクセンサ装置。
【請求項8】
前記円筒部は、前記外輪に圧入された状態において、前記円筒部の軸方向における一方の端部と前記外輪の端部との距離と、前記円筒部の軸方向における他方の端部と前記外輪の端部との距離とが互いに異なる請求項7に記載のトルクセンサ装置。
【請求項9】
前記軸受の外径は、前記ステータの外径以下である請求項1に記載のトルクセンサ装置。
【請求項10】
前記リテーナーの前記円筒部の外径は、前記ステータの外径より大きい請求項1に記載のトルクセンサ装置。
【請求項11】
入力軸と、出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーとを備えるステアリングシャフトと、
前記入力軸または前記出力軸のどちらか一方に取り付けられるステータと、
前記入力軸または前記出力軸のどちらか他方に取り付けられ、前記ステータに対向して配置される円筒状の磁石と、
内側に前記ステアリングシャフトと前記ステータと前記磁石とを配置する第1ハウジングと、
前記出力軸を前記第1ハウジングに対して回転自在に支持する第1の軸受と、
前記第1ハウジングと前記第1の軸受との間に介在するリテーナーと、
補助操舵トルクを発生する電動モータと、
前記出力軸に固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記出力軸に伝達するウォームホイールと、
前記第1ハウジングに対して前記ステアリングシャフトの軸方向における前記出力軸寄りに位置して前記第1ハウジングに連結され、内側に前記ステアリングシャフトと前記ウォームホイールとを配置する第2ハウジングと、
前記ステアリングシャフトの軸方向において前記ウォームホイールに対して前記第1の軸受が位置する側の反対側に配置され、前記出力軸を前記第2ハウジングに対して回転自在に支持する第2の軸受と、
を備え、
前記第1の軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される複数の転動体とを有し、
前記リテーナーは、円筒状に形成される円筒部を有し、
前記円筒部の内周面が前記第1の軸受の外周面に対向し、前記円筒部の外周面が前記第1ハウジングの内周面に対向し、
前記円筒部は、前記外輪に対する前記第1の軸受の軸方向における移動が規制されて前記第1の軸受に取り付けられ、
前記第1ハウジングは、前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接する操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トルクセンサ装置及び操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵装置が有する回転軸に加わるトルクを検出するトルクセンサ装置では、ハウジングと回転軸との間に軸受を配置することにより、ハウジングに対して回転軸を回転自在に支持している。回転軸を回転自在に支持する軸受としては、例えば、外輪と内輪との間に転動体が配置される、いわゆる転がり軸受が用いられる。しかし、転がり軸受は、外輪や内輪と転動体との間に隙間があるため、回転軸を転がり軸受によって支持した場合、車両の走行中における振動により転動体が外輪や内輪と衝突する音が発生することがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された電動パワーステアリング装置では、弾性板によって転動体に軸方向の予圧を与える。また、特許文献2に記載された動力舵取装置では、転がり軸受の外輪の上端面をハウジングの段部に当接させ、内輪の下端面をウォームホイールの芯金の上端面に当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-196932号公報
【特許文献2】特開2002-362387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のように軸受の外輪の外周にハウジングを当接させるので、ハウジングの形状に応じた外径の軸受を用いる必要がある。この場合、軸受で受ける荷重より必要とされる軸受のサイズに対して、ハウジングの形状に応じた大型の軸受を選定する必要があり、軸受の重量が増加してしまうことが考えられる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することのできるトルクセンサ装置及び操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のトルクセンサ装置は、シャフトに固定されるステータと、前記ステータに対向して配置された円筒状の磁石と、内側に前記シャフトと前記ステータと前記磁石とを配置するハウジングと、前記シャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持する軸受と、前記ハウジングと前記軸受との間に介在するリテーナーと、を備え、前記軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される複数の転動体とを有し、前記リテーナーは、円筒状に形成される円筒部を有し、前記円筒部の内周面が前記軸受の外周面に対向し、前記円筒部の外周面が前記ハウジングの内周面に対向し、前記円筒部は、前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、前記ハウジングは、前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接する。
【0008】
この構成によれば、ハウジングと軸受との間に介在するリテーナーは円筒部を有し、リテーナーの円筒部は、軸受の外輪に対する軸方向における移動が規制されて軸受に取り付けられる。また、ハウジングは、リテーナーにおける円筒部の軸方向に面する面に当接する。これにより、リテーナーは、ハウジングからリテーナーに対して付与される押圧力を軸受に付与することができ、軸受に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受に伝わった場合でも、軸受が有する外輪や内輪と転動体との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。また、ハウジングと軸受との間にリテーナーを介在させることによって軸受に対して予圧を与えるため、ハウジングの内周面よりも小さい軸受を選定でき、軸受の重量を増加させることなく軸受に対して予圧を与えることができる。これらの結果、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0009】
望ましい形態として、前記リテーナーは、前記円筒部の軸方向における端部から前記円筒部の径方向における内側に延びる内側延長部と、前記円筒部の軸方向において前記内側延長部が配置される側の反対側の前記端部から前記円筒部の径方向における外側に延びる外側延長部とを有し、前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記内側延長部の面が前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に当接することにより、前記円筒部は前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記外側延長部の面が、前記円筒部の軸方向に面する前記ハウジングの一部分である、リテーナー当接部に当接することにより、前記ハウジングは前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向を向く面に当接する。
【0010】
この構成によれば、リテーナーは、円筒部と外側延長部と内側延長部とを有し、外側延長部はハウジングのリテーナー当接部に当接し、内側延長部は軸受の軸方向における外輪の端面に当接する。これにより、ハウジングは、リテーナーにおける円筒部の軸方向を向く面に当接し、リテーナーは、軸受の外輪に対する軸方向における移動が規制されて軸受に取り付けられるため、ハウジングから外側延長部に対して付与される押圧力を内側延長部から軸受に付与することができ、軸受に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受に伝わった場合でも、軸受が有する外輪と転動体との衝突や、内輪と転動体との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0011】
望ましい形態として、前記ハウジングは、前記リテーナー当接部が前記リテーナーの前記外側延長部に当接することにより、前記リテーナーから前記軸受の前記外輪に対して前記軸受の軸方向の予圧を与える。
【0012】
この構成によれば、ハウジングは、リテーナー当接部がリテーナーの外側延長部に当接することにより、リテーナーから軸受の外輪に対して軸受の軸方向の予圧を与えるため、簡易な構成で軸受に対して予圧を与えることができる。従って、軸受に対して予圧を与える構造を設ける際の製造コストを抑えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0013】
望ましい形態として、前記リテーナーは、前記円筒部の軸方向における端部から前記円筒部の径方向における内側に延びる内側延長部を有し、前記円筒部の軸方向において前記円筒部が位置する側の前記内側延長部の面が前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に当接することにより、前記円筒部は前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられ、前記ハウジングは、内周面が前記リテーナーの前記円筒部の外周面に対向する大径部と、内径が前記大径部の内径よりも小さい小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続し前記軸受の軸方向における前記外輪の端面に対向する接続部とを有し、前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向における前記内側延長部が位置する側の端部に前記接続部が当接することにより、前記ハウジングは前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接する。
【0014】
この構成によれば、リテーナーは、内側延長部を有し、内側延長部が外輪の端面に当接することにより、リテーナーの円筒部は外輪に対する軸方向における移動が規制されて軸受に取り付けられる。また、ハウジングは、大径部と、小径部と、接続部とを有する段差部を有し、リテーナーにおける内側延長部が位置する側の端部に接続部が当接することにより、ハウジングはリテーナーにおける円筒部の軸方向に面する面に当接する。これにより、ハウジングからリテーナーにおける内側延長部が位置する側の端部に対して付与される押圧力を、内側延長部から軸受に付与することができ、軸受に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受に伝わった場合でも、軸受が有する外輪と転動体との衝突や、内輪と転動体との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0015】
望ましい形態として、前記ハウジングは、前記接続部が前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向における前記内側延長部が位置する側の端部に当接することにより、前記リテーナーから前記軸受の前記外輪に対して前記軸受の軸方向の予圧を与える。
【0016】
この構成によれば、ハウジングは、接続部がリテーナーにおける内側延長部が位置する側の端部に当接することにより、リテーナーから軸受の外輪に対して軸方向の予圧を与えるため、ハウジングに対して軸受のサイズが小さい場合でも、軸受に対して予圧を与えることができる。これにより、ハウジングに対して軸受のサイズが小さい場合に、軸受をハウジングに合わせて大型のものを用いることなく、ハウジングに対してサイズが小さい軸受のままで、軸受に対して予圧を与えることができる。従って、軸受に対して予圧を与える構造を設ける際の製造コストを抑えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0017】
望ましい形態として、前記リテーナーの前記内側延長部の内径は、前記外輪の外径より小さく、前記内輪の外径より大きい。
【0018】
この構成によれば、リテーナーの内側延長部の内径は、軸受の外輪の外径より小さく、内輪の外径より大きいため、外輪と内輪との相対回転を内側延長部によって阻害することなく、内側延長部から外輪に対して軸方向の押圧力を付与することができる。これにより、軸受の外輪と内輪とが相対回転をする際の抵抗が大きくなることを抑制しつつ、リテーナーによって軸受に対して予圧を与えることができる。この結果、ハウジングに対してシャフトが回転する際の抵抗が増加することを抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0019】
望ましい形態として、前記円筒部は、前記外輪に圧入されることにより、前記外輪に対する前記軸受の軸方向における移動が規制されて前記軸受に取り付けられる。
【0020】
この構成によれば、リテーナーは、円筒部が軸受の外輪に圧入されることにより、外輪に対する軸受の軸方向における移動が規制されて軸受に取り付けられため、リテーナーを容易に、軸受の外輪に対して軸方向における移動が規制される状態で取り付けることができる。このため、ハウジングの段差部が有する接続部をリテーナーの端部に当接させることによって軸受の予圧を与える際に、簡易な構成で軸受の予圧を与えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0021】
望ましい形態として、前記円筒部は、前記外輪に圧入された状態において、前記円筒部の軸方向における一方の端部と前記外輪の端部との距離と、前記円筒部の軸方向における他方の端部と前記外輪の端部との距離とが互いに異なる。
【0022】
この構成によれば、軸方向における両側で、円筒部の端部と、外輪の端部との距離を互いに異ならせることにより、円筒部が圧入された軸受において、ハウジングの接続部を当接させる側の円筒部の端部を容易に把握することができるようになる。このため、円筒部が圧入された軸受をシャフトに組み付ける際に、組み付ける向きを間違えないようにすることできる。これにより、軸受に対して適切に予圧を与えることができ、作動音を抑制することができる。
【0023】
望ましい形態として、前記軸受の外径は、前記ステータの外径以下である。
【0024】
この構成によれば、軸受の外径はステータの外径以下であるため、軸受の小型化を図ることができ、軸受の重量を抑えることができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0025】
望ましい形態として、前記リテーナーの前記円筒部の外径は、前記ステータの外径より大きい。
【0026】
この構成によれば、リテーナーの円筒部の外径は、ステータの外径より大きいため、内周面に対してリテーナーを対向させるハウジングの内径を、ステータの外径よりも大きくすることができる。これにより、ステータに対してハウジングを干渉させることなく、シャフトにハウジングを組み付けることができる。この結果、シャフトに対してハウジングを組み付けることを可能にしつつ、ハウジングのリテーナー当接部からリテーナーに付与する押圧力により、リテーナーから軸受に対して予圧を与えることができる。
【0027】
本開示の操舵装置は、入力軸と、出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーとを備えるステアリングシャフトと、前記入力軸または前記出力軸のどちらか一方に取り付けられるステータと、前記入力軸または前記出力軸のどちらか他方に取り付けられ、前記ステータに対向して配置される円筒状の磁石と、内側に前記ステアリングシャフトと前記ステータと前記磁石とを配置する第1ハウジングと、前記出力軸を前記第1ハウジングに対して回転自在に支持する第1の軸受と、前記第1ハウジングと前記第1の軸受との間に介在するリテーナーと、補助操舵トルクを発生する電動モータと、前記出力軸に固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記出力軸に伝達するウォームホイールと、前記第1ハウジングに対して前記ステアリングシャフトの軸方向における前記出力軸寄りに位置して前記第1ハウジングに連結され、内側に前記ステアリングシャフトと前記ウォームホイールとを配置する第2ハウジングと、前記ステアリングシャフトの軸方向において前記ウォームホイールに対して前記第1の軸受が位置する側の反対側に配置され、前記出力軸を前記第2ハウジングに対して回転自在に支持する第2の軸受と、を備え、前記第1の軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される複数の転動体とを有し、前記リテーナーは、円筒状に形成される円筒部を有し、前記円筒部の内周面が前記第1の軸受の外周面に対向し、前記円筒部の外周面が前記第1ハウジングの内周面に対向し、前記円筒部は、前記外輪に対する前記第1の軸受の軸方向における移動が規制されて前記第1の軸受に取り付けられ、前記第1ハウジングは、前記リテーナーにおける前記円筒部の軸方向に面する面に当接する。
【0028】
この構成によれば、第1ハウジングと第1の軸受との間に介在するリテーナーは円筒部を有し、リテーナーの円筒部は、第1の軸受の外輪に対する軸方向における移動が規制されて第1の軸受に取り付けられる。また、第1ハウジングは、リテーナーにおける円筒部の軸方向に面する面に当接する。これにより、リテーナーは、第1ハウジングからリテーナーに対して付与される押圧力を第1の軸受に付与することができ、第1の軸受に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が第1の軸受に伝わった場合でも、第1の軸受が有する外輪や内輪と転動体との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。また、第1ハウジングと第1の軸受との間にリテーナーを介在させることによって第1の軸受に対して予圧を与えるため、第1の軸受の重量を増加させることなく第1の軸受に対して予圧を与えることができる。これらの結果、重量の増加を抑えつつ、第1の軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示に係るトルクセンサ装置及び操舵装置は、重量の増加を抑えつつ、軸受に予圧を与えて作動音を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る操舵装置の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置の要部断面図である。
【
図3】
図3は、トルク検出部が有するマグネットとステータ及び集磁ヨークの概要を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すトルク検出部と軸受が配置されている位置の拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すリテーナー及び軸受の詳細模式図である。
【
図6】
図6は、リテーナーから軸受に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。
【
図7】
図7は、予圧付与部材を第1ハウジングに設けるトルクセンサ装置の模式図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すトルクセンサ装置の第1ハウジングを組み付ける状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置におけるステアリングシャフトに第1ハウジングを組み付ける前の模式図である。
【
図10】
図10は、
図9に示すステアリングシャフトに第1ハウジングを組み付けた状態を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置の要部断面図である。
【
図13】
図13は、リテーナーから軸受に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置におけるステアリングシャフトに第1ハウジングを組み付ける前の模式図である。
【
図15】
図15は、
図14に示すステアリングシャフトに第1ハウジングを組み付けた状態を示す模式図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置の要部断面図である。
【
図18】
図18は、リテーナーから軸受に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置の変形例であり、小径の軸受を用いる場合の説明図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置の変形例であり、小径の軸受を用いる場合の説明図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置の変形例であり、リテーナーの円筒部と内側延長部とが分割される形態についての説明図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置の変形例であり、軸方向におけるリテーナーの幅を軸受の幅と異ならせた形態を示す説明図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置の変形例であり、カシメ部も用いてリテーナーの円筒部を軸受に取り付ける形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0032】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る操舵装置80の模式図である。
図1に示すように、操舵装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、トルクセンサ装置10と、電動モータ91と、減速装置92と、ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備えピニオンシャフト87に接合されている。以下の説明においては、ステアリングシャフト82の中心軸AXに沿った方向を「軸方向」と称し、軸方向に交差(直交)する方向を「径方向」と称する。
【0033】
トルクセンサ装置10は、ステアリングシャフト82と、トルク検出部30と、を含む。ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bと、トーションバー(
図2参照)82cと、を備える。トルクセンサ装置10については、詳細に後述する。
【0034】
中間シャフト85は、ユニバーサルジョイント84とユニバーサルジョイント86とを連結している。中間シャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ユニバーサルジョイント84及びユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト85を介してピニオンシャフト87に伝わる。従って、中間シャフト85はステアリングシャフト82と共に回転可能である。
【0035】
ステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aと、ラックバー88bとを備える。ピニオンギヤ88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラックバー88bは、ピニオンギヤ88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aに伝達された回転運動をラックバー88bで直進運動に変換する。ラックバー88bは、タイロッド89に連結される。ラックバー88bが移動することで車輪の角度が変化する。即ち、操舵装置80は、ラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置である。
【0036】
操舵装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、車速センサ95と、を更に備える。電動モータ91、車速センサ95及びトルク検出部30は、ECU90と電気的に接続される。減速装置92は、電動モータ91に取り付けられる。トルク検出部30は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、操舵装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0037】
ECU90は、電動モータ91の動作を制御する。ECU90は、トルク検出部30及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ91へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ91の誘起電圧の情報または電動モータ91に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ91を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0038】
次に、トルクセンサ装置10について説明する。
図2は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10の要部断面図である。トルクセンサ装置10は、
図2に示すように、第1のシャフトである入力軸82aと、第2のシャフトである出力軸82bと、トーションバー82cと、トルク検出部30と、ハウジング20と、リテーナー50と、軸受60、68とを備える。入力軸82a、出力軸82b及びトーションバー82cは、同一の中心軸AXを有する。入力軸82aと出力軸82bとは、軸方向において連結され、トーションバー82cは、入力軸82aと出力軸82bの内側に配置される。
【0039】
入力軸82aは、例えば中実状のシャフトである。入力軸82aは、中心軸AXの軸回り方向に回転可能である。入力軸82aにおける出力軸82bに連結される側の反対側の端部には、スプライン軸部(図示省略)が形成されており、スプライン軸部にはステアリングホイール81(
図1参照)が直接または、他の軸を介して連結される。入力軸82aの径方向における内側には、出力軸82bに連結される側の端部から軸方向に延びる挿入孔82aaが形成されている。
【0040】
出力軸82bは、径方向における内側に、軸方向に延びる貫通孔82baと連結孔82bbとを有する筒状部材である。出力軸82bは、入力軸82aにおける挿入孔82aaが形成される端部が位置する側に入力軸82aに対して位置する。出力軸82bは、中心軸AXの軸回り方向に回転可能である。連結孔82bbは、貫通孔82baよりも内径が大きくなっており、出力軸82bにおける入力軸82aが連結される側の端部から、入力軸82aが位置する側の反対側に向かって所定の深さで形成されている。貫通孔82baは、出力軸82bにおける連結孔82bbの端部から、入力軸82aが位置する側の反対側に向かって延びている。連結孔82bbの内側には、入力軸82aの端部付近の部分が挿入される。
【0041】
電動モータ91(
図1参照)で発生した駆動力は、減速装置92が有するウォーム93とウォームホイール94を介して出力軸82bに伝達される。即ち、電動モータ91で発生した駆動力は、ウォーム93を介してウォームホイール94に伝達され、ウォームホイール94を回転させる。ウォーム93及びウォームホイール94は、電動モータ91で発生した駆動力の回転速度を減速し、トルクを増加させる。
【0042】
ウォームホイール94は、芯金部94aと、ホイール歯部94bとを有している。芯金部94aは、例えば、金属材料からなり、略円環状の形状で形成されている。ホイール歯部94bは、例えば、樹脂材料からなり、芯金部94aと一体となって芯金部94aの外周に配置される。ウォームホイール94は、ウォームホイール94は、芯金部94aが出力軸82bに圧入されることにより、出力軸82bに固定されている。ウォーム93は、ウォームホイール94のホイール歯部94bと噛み合っている。このため、減速装置92は、電動モータ91で発生した駆動力を、トルクを増大させて出力軸82bに伝達し、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。即ち、本実施形態に係る操舵装置80は、ステアリングシャフト82に補助操舵トルクが付与されるコラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置になっている。
【0043】
トーションバー82cは、軸方向に延びる中実状の弾性部材である。トーションバー82cは、軸方向における一方側の端部が、入力軸82aの挿入孔82aaに挿入される。トーションバー82cにおける入力軸82aの挿入孔82aaに挿入される側の端部には、径方向に貫通する貫通孔が形成される。また、入力軸82aにおける、軸方向においてトーションバー82cの貫通孔が形成される位置にも、径方向に貫通する貫通孔が形成される。トーションバー82cに形成される貫通孔と、入力軸82aに形成される貫通孔とは、互いに連通する。トーションバー82cに形成される貫通孔と入力軸82aに形成される貫通孔とには、ピン100が挿入される。これにより、トーションバー82cにおける入力軸82aの挿入孔82aaに挿入される側の端部は、ピン100を介して入力軸82aに固定される。
【0044】
トーションバー82cの軸方向における他方側の端部は、出力軸82bに形成される貫通孔82baに圧入される。これにより、トーションバー82cは出力軸82bに固定される。即ち、トーションバー82cは、一方側の端部が入力軸82aに固定され、他方側の端部が出力軸82bに固定されるため、入力軸82aと出力軸82bとは、トーションバー82cを介して連結される。
【0045】
ステアリングシャフト82は、少なくとも一部がハウジング20の内側に配置される。ハウジング20は、トルクセンサ装置10における筐体になっており、第1ハウジング21と第2ハウジング25とを有している。第1ハウジング21は、軸方向における入力軸82a寄りに位置し、第2ハウジング25は、軸方向における出力軸82b寄りに位置しており、第1ハウジング21と第2ハウジング25とは、軸方向において連結される。第2ハウジング25は、内側にウォーム93とウォームホイール94とを配置する空間を有しており、第2ハウジング25は、ギヤボックスとしても設けられている。
【0046】
ハウジング20とステアリングシャフト82との間には、軸受60、68が介在しており、ステアリングシャフト82は、軸受60、68によって回転自在に支持されている。軸受60は、出力軸82bを第1ハウジング21に対して回転自在に支持する第1の軸受として設けられている。軸受68は、出力軸82bを第2ハウジング25に対して回転自在に支持する第2の軸受として設けられている。
【0047】
軸受60と軸受68は、出力軸82bにおける、ウォームホイール94が固定されている位置の軸方向における両側に配置されている。軸受60は、出力軸82bにおけるウォームホイール94の芯金部94aが固定されている位置に対して、軸方向における入力軸82aが位置する側に配置され、軸受68は、ウォームホイール94の芯金部94aが固定されている位置に対して、軸方向における入力軸82aが位置する側の反対側に配置されている。即ち、軸受68は、軸方向においてウォームホイール94に対して軸受60が位置する側の反対側に配置されている。軸受60と軸受68とは、軸方向におけるウォームホイール94の両側からウォームホイール94の芯金部94aに対して内輪がそれぞれ当接している。
【0048】
なお、軸受60や軸受68の内輪は、軸方向における側面が出力軸82bに当接していてもよい。つまり、出力軸82bにおける、ウォームホイール94の芯金部94aが固定されている部分が1周に亘って径方向における外側に突出する凸部となって形成され、出力軸82bにおける当該凸部の外径が、軸受60や軸受68の内径よりも大きい場合は、軸受60や軸受68は、出力軸82bにおける当該凸部の軸方向の側面に対して内輪が当接していてもよい。軸受60と軸受68とは、これらのように、ウォームホイール94に内輪が当接したり、または出力軸82bにおける、1周に亘って径方向外側に突出する凸部の側面に内輪が当接したりすることにより、軸方向において互いに近付く方向への移動が規制される。
【0049】
リテーナー50は、これらのように出力軸82bを回転自在に支持する軸受60と軸受68とのうち、軸受60と第1ハウジング21との間に配置されている。即ち、リテーナー50は、第1ハウジング21と軸受60との間に介在している。
【0050】
トルク検出部30は、マグネット31と、ステータ34と、集磁ヨーク41と、回路基板44とを有している。このうち、マグネット31とステータ34とは、ステアリングシャフト82に固定され、集磁ヨーク41と回路基板44とは、ハウジング20に固定されている。
【0051】
図3は、トルク検出部30が有するマグネット31とステータ34及び集磁ヨーク41の概要を説明する模式図である。トルク検出部30が有するマグネット31とステータ34とは、一方が第1のシャフトに取り付けられており、他方が第2のシャフトに取り付けられている。第1実施形態では、マグネット31は、第1のシャフトである入力軸82aに取り付けられており、ステータ34は、第2のシャフトである出力軸82bに取り付けられている。このうち、マグネット31は、略円筒状の形状で形成されており、複数のN極とS極とが周方向に交互に配置された多極磁石になっている。なお、ステータ34とマグネット31とは、ステータ34が、入力軸82aまたは出力軸82bのどちらか一方に取り付けられ、マグネット31が、入力軸82aまたは出力軸82bのどちらか他方に取り付けられていればよい。ステータ34とマグネット31とは、入力軸82aと出力軸82bとのうち、互いに異なるシャフトに取り付けられていれば、ステータ34とマグネット31とが、入力軸82aまたは出力軸82bに取り付けられる際の組み合わせは問わない。
【0052】
ステータ34は、フランジ部35と、ティース部36とを有している。フランジ部35は、厚み方向が軸方向となる、円環状の板状の形状で形成されている。ティース部36は、円環状のフランジ部35の内周部分からフランジ部35の軸方向に向かって延出し、板の厚み方向がフランジ部35の径方向となる向きとなる板状の形状で形成されている。また、ティース部36は、複数のティース部36が間隔をあけてフランジ部35の周方向に並んで配置されている。
【0053】
このように形成されるステータ34は、同等の形状で形成される一対のステータ34である第1ステータ34aと第2ステータ34bとを有しており、第1ステータ34aと第2ステータ34bとは、それぞれフランジ部35とティース部36とを有している。即ち、第1ステータ34aは、円環状の第1フランジ部35aと複数の第1ティース部36aとを有しており、第2ステータ34bは、円環状の第2フランジ部35bと複数の第2ティース部36bとを有している。第1ステータ34aと第2ステータ34bとは、双方のフランジ部35が同軸上に位置し、且つ、フランジ部35が他方のステータ34から離れる方向に位置する向きで、いずれも同じ軸に取り付けられ、第1実施形態ではいずれも出力軸82bに取り付けられる。
【0054】
つまり、第1ステータ34aは、第1ティース部36aが第1フランジ部35aから第2ステータ34b側に向かって延出する向きで配置され、第2ステータ34bは、第2ティース部36bが第2フランジ部35bから第1ステータ34a側に向かって延出する向きで配置される。その際に、第1ティース部36aと第2ティース部36bとは、いずれも複数が間隔をあけて第1フランジ部35aや第2フランジ部35bに設けられるため、第1ステータ34aと第2ステータ34bとは、周方向において他方のステータ34のティース部36が位置しない部分に、自己のステータ34のティース部36が位置するように組み合わされる。
【0055】
入力軸82aに取り付けられるマグネット31は、このように組み合わされる第1ステータ34aと第2ステータ34bとの、径方向における内側に配置される。また、マグネット31とステータ34とは、軸方向が入力軸82aや出力軸82bの軸方向と一致する向きで配置される。これらのため、マグネット31とステータ34とは、マグネット31の外周面がステータ34のティース部36に対して対向する位置関係となる状態で、入力軸82aと出力軸82bとに取り付けられて配置される。マグネット31とステータ34とは、これらの位置関係で配置されることにより、入力軸82aと出力軸82bとの間でトーションバー82cを介してトルクが伝達されて入力軸82aと出力軸82bとが相対的に微小に回転をした際には、マグネット31とステータ34との相対的な位置関係が変化することに伴って、マグネット31からステータ34に作用する磁束が変化する。
【0056】
また、ステータ34の近傍には、トルク検出部30が有する集磁ヨーク41が配置される。集磁ヨーク41は、マグネット31からステータ34に作用する磁束の変化を検出するための部材になっており、ステータ34が有するフランジ部35の近傍に配置される。ステータ34としては、第1ステータ34aと第2ステータ34bとの一対が設けられているため、これに対応して集磁ヨーク41も、第1集磁ヨーク41aと第2集磁ヨーク41bとの一対が設けられている。即ち、集磁ヨーク41は、第1ステータ34aが有する第1フランジ部35aの近傍には第1集磁ヨーク41aが配置され、第2ステータ34bが有する第2フランジ部35bの近傍には第2集磁ヨーク41bが配置されている。
【0057】
一対の集磁ヨーク41は、ステータ34が有する2箇所のフランジ部35同士の間に位置しており、軸方向において隙間を有してステータ34のフランジ部35と重なっている。つまり、第1集磁ヨーク41aは、第1ステータ34aが有する第1フランジ部35aにおける第2フランジ部35bが位置する面側の近傍に配置され、第2集磁ヨーク41bは、第2ステータ34bが有する第2フランジ部35bにおける第1フランジ部35aが位置する面側の近傍に配置されている。このように、フランジ部35の近傍に集磁ヨーク41が位置することにより、集磁ヨーク41は、入力軸82aと出力軸82bとが相対的に微小に回転をした際における、マグネット31からステータ34に作用する磁束が変化を検出することが可能なっている。
【0058】
さらに、2つの集磁ヨーク41の間には、ホールIC43が配置されている。ホールIC43は、集磁ヨーク41におけるステータ34のフランジ部35の近傍に位置する部分から離れた位置で、集磁ヨーク41同士の間に配置されている。ホールIC43は、2つの集磁ヨーク41に作用する磁束密度の変化を検出し、検出した磁束密度の変化を電気信号に変換して電気信号として出力することが可能になっている。なお、ホールICに代えて、磁気抵抗効果やトンネル磁気抵抗効果を応用した磁気センサを用いることができる。要するに、集磁ヨーク41の間に生じる磁束密度の変化を、電気信号として出力することができればよい。
【0059】
図4は、
図2に示すトルク検出部30と軸受60、68が配置されている位置の拡大断面図である。マグネット31は、第1スリーブ32によって入力軸82aに取り付けられている。第1スリーブ32は、筒状の部材になっており、第1スリーブ32に対して入力軸82aを圧入することにより、第1スリーブ32は入力軸82aに取り付けられている。マグネット31は、第1スリーブ32の外周面に、例えば接着剤により固定されており、これにより、マグネット31は、入力軸82aと一体となって回転可能になっている。
【0060】
ステータ34は、第2スリーブ37とキャリア38とによって出力軸82bに取り付けられている。第2スリーブ37は、筒状の部材になっており、第2スリーブ37に対して出力軸82bを圧入することにより、第2スリーブ37は出力軸82bに取り付けられている。キャリア38は、筒状の部材になっており、射出成形により第2スリーブ37と一体に形成されている。このため、キャリア38は、第2スリーブ37が出力軸82bに取り付けられることにより、第2スリーブ37と共にキャリア38も出力軸82bに取り付けられる。
【0061】
第2スリーブ37によって出力軸82bに取り付けられるキャリア38は、第2スリーブ37に支持されることにより、出力軸82bから入力軸82a側に向かった位置に配置され、入力軸82aの径方向における外側の位置に配置される。さらに、キャリア38は、軸方向においてマグネット31が位置する位置と同じ位置に配置されており、マグネット31の径方向に外側に配置されている。
【0062】
ステータ34は、このように配置されるキャリア38に取り付けられている。詳しくは、第1ステータ34aと第2ステータ34bとのそれぞれのステータ34は、ティース部36がキャリア54の径方向における内側に位置し、フランジ部35が、キャリア54の径方向における内側から外側に向かって突出する形態で、キャリア54に取り付けられている。これにより、一対のステータ34である第1ステータ34aと第2ステータ34bはいずれも、軸方向においてマグネット31が位置する位置と同じ位置に配置され、マグネット31の径方向に外側に配置される。
【0063】
また、第1ステータ34aと第2ステータ34bとは、出力軸82bに取り付けられる第2スリーブ37と一体に形成されるキャリア38に取り付けられるため、出力軸82bと一体となって回転可能になっている。このように出力軸82bと一体となって回転可能に配置されるステータ34は、換言すると、出力軸82bの径方向における外側に突出するフランジ部35を備え、且つ、出力軸82bに固定されている。
【0064】
これらのように、マグネット31は入力軸82aに固定され、ステータ34は出力軸82bに固定されることにより、マグネット31とステータ34とは、入力軸82aや出力軸82bと共にハウジング20の内側に配置される。第1実施形態では、マグネット31とステータ34とは、第1ハウジング21の内側に配置される。
【0065】
一対の集磁ヨーク41は、センサハウジング40に配置されており、センサハウジング40は、第1ハウジング21に取り付けられている。これにより、集磁ヨーク41は、センサハウジング40を介して第1ハウジング21に固定されている。また、ホールIC43(
図3参照)は、回路基板44に実装されており、回路基板44は、一対の集磁ヨーク41の間にホールIC43が配置される位置で、センサハウジング40に配置されている。このため、回路基板44に実装されるホールIC43も、センサハウジング40を介して第1ハウジング21に固定されている。
【0066】
出力軸82bを回転自在に支持する軸受60と軸受68とは、いわゆる転がり軸受になっている。軸受60と軸受68とのうち、軸受68は、出力軸82bを第2ハウジング25に対して回転自在に支持する。即ち、軸受68は、内周面が出力軸82bに嵌合し、外周面が第2ハウジング25に嵌合することにより出力軸82bと第2ハウジング25との間に配置され、出力軸82bを第2ハウジング25に対して回転自在に支持する。軸受68が嵌合する第2ハウジング25の内周面26には、径方向における内側に突出する突出部27が形成されており、軸受68は、突出部27に対して軸方向に当接する。これにより、軸受68は、突出部27によって、第2ハウジング25に対する軸方向の相対移動が規制される状態で第2ハウジング25に嵌合する。
【0067】
一方、軸受60は、出力軸82bを第1ハウジング21に対して回転自在に支持する。即ち、軸受60は、内周面が出力軸82bに嵌合し、外周面が第1ハウジング21に嵌合することにより出力軸82bと第1ハウジング21との間に配置され、出力軸82bを第1ハウジング21に対して回転自在に支持する。その際に、軸受60と第1ハウジング21との間には、リテーナー50が配置されており、リテーナー50は、軸受60に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられている。軸受60は第1ハウジング21に対して、リテーナー50を介して嵌合する。
【0068】
図5は、
図4に示すリテーナー50及び軸受60の詳細模式図である。転がり軸受である軸受60は、外輪61と、内輪62と、外輪61と内輪62との間に配置されて外輪61と内輪62とにより保持される複数の転動体63とを有している。軸受60の外径は、出力軸82bに固定されるステータ34(
図3、
図4参照)の外径以下になっている。即ち、軸受60は、外輪61の外径が、ステータ34が有するフランジ部35(
図3、
図4参照)の外径以下の大きさになっている。
【0069】
リテーナー50は、略円筒状の形状で形成される円筒部51と、内側延長部56と、外側延長部55とを有している。円筒部51は、内径が、軸受60の外輪61の外径と同程度の大きさになっており、外径が、第1ハウジング21におけるリテーナー50が配置される位置の内径と同程度の大きさになっている。また、円筒部51の外径は、ステータ34(
図3、
図4参照)の外径より大きくなっている。即ち、リテーナー50の円筒部51の外径は、ステータ34が有するフランジ部35(
図3、
図4参照)の外径よりも大きくなっている。
【0070】
内側延長部56は、円筒部51の軸方向における端部51bに配置され、円筒部51の端部51bから、円筒部51の径方向における内側に延びる環状の形状で形成されている。換言すると、内側延長部56は、径方向における中心に孔があいた円板状の形状で形成され、円板の外径が円筒部51の径と同じ大きさとなり、円板の外周部分が円筒部51の端部51bに接続されている。また、内側延長部56の内径は、軸受60の外輪61の外径より小さく、軸受60の内輪62の外径より大きくなっている。
【0071】
外側延長部55は、円筒部51の軸方向において内側延長部56が配置される側の反対側の端部51aに配置され、円筒部51の端部51aから円筒部51の径方向における外側に延びる環状の形状で形成されている。換言すると、外側延長部55は、径方向における中心に孔があいた円板状の形状で形成され、円板の内径が円筒部51の径と同じ大きさとなり、円板の内周部分が円筒部51の端部51aに接続されている。
【0072】
リテーナー50は、円筒部51の軸方向がステアリングシャフト82の中心軸AX(
図2参照)に沿った方向となる向きで第1ハウジング21に配置される。第1ハウジング21は、軸方向におけるリテーナー50が配置される範囲内に、第1ハウジング21の一部分であり、軸方向に面してリテーナー50に当接する部分であるリテーナー当接部23を有している。リテーナー当接部23は、軸方向において第2ハウジング25(
図2参照)が位置する方向を向く面になっており、径方向における大きさが少なくともリテーナー50の外側延長部55の径方向における大きさと同じ大きさになる部分を含んで形成されている。
【0073】
リテーナー50は、外側延長部55が軸方向において第2ハウジング25が位置する側に位置し、内側延長部56が、軸方向において第2ハウジング25が位置する側の反対側に位置する向きで第1ハウジング21に配置される。第1ハウジング21に配置されるリテーナー50は、円筒部51の外周面52が、第1ハウジング21の内周面22に径方向において対向する。即ち、リテーナー50は、円筒部51の外周面52が第1ハウジング21の内周面22に嵌合する。また、リテーナー50は、外側延長部55における、円筒部51の軸方向において円筒部51が位置する側の面が、第1ハウジング21のリテーナー当接部23に当接する。換言すると、第1ハウジング21は、リテーナー50における円筒部51の軸方向に面する面である、外側延長部55における円筒部51が位置する側の面に当接する。これにより、リテーナー50は、軸方向において第2ハウジング25が位置する側の反対方向への第1ハウジング21に対する相対移動が、リテーナー当接部23と外側延長部55とによって規制される。
【0074】
リテーナー50は、軸受60に対しても径方向において対向する。即ち、リテーナー50は、円筒部51の内周面53が、軸受60の外輪61の外周面64に径方向において対向しており、リテーナー50の円筒部51の内周面53は、軸受60の外輪61の外周面64に嵌合する。また、リテーナー50は、内側延長部56における、円筒部51の軸方向において円筒部51が位置する側の面が、軸受60の軸方向における端面65に当接する。つまり、リテーナー50は、内側延長部56が、軸受60の外輪61における、軸方向において第2ハウジング25が位置する側の反対側の端面65に当接する。これにより、リテーナー50は、軸方向において第2ハウジング25が位置する方向への軸受60に対する相対移動が、軸受60の端面65と内側延長部56とによって規制され、リテーナー50の円筒部51は、軸受の外輪61に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。
【0075】
第1ハウジング21に対して出力軸82bを回転自在に支持する軸受60と、第1ハウジング21との間には、このようにリテーナー50が介在し、軸受60は、リテーナー50を介して第1ハウジング21の内周面22における内側に配置される。第1ハウジング21と軸受60の間に配置されるリテーナー50は、軸受60に対して予圧を与えることが可能になっている。軸受60に対して予圧を付与するリテーナー50は、第1ハウジング21から受ける圧力を、弾性体を用いて程よく軸受60に予圧を与えることができるように、リテーナー50の材料には、例えば、ばね鋼が用いられる。
【0076】
図6は、リテーナー50から軸受60に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。第1ハウジング21は、リテーナー当接部23がリテーナー50の外側延長部55に当接することにより、リテーナー50から軸受60の外輪61に対して軸受60の軸方向の予圧を与えることが可能になっている。
【0077】
つまり、軸受60は、内輪62が出力軸82bに嵌合しており、さらに、内輪62は、ウォームホイール94の芯金部94aに当接しているため、軸受60の内輪62は、軸方向において第2ハウジング25への移動が規制される。また、リテーナー50の内側延長部56は、軸受60の外輪61における、軸方向において第2ハウジング25が位置する側の反対側の端面65に当接している。
【0078】
一方、リテーナー当接部23がリテーナー50の外側延長部55に当接する第1ハウジング21は、出力軸82bに対するリテーナー当接部23の位置関係が、第1ハウジング21が第2ハウジング25に連結された状態において、リテーナー当接部23から外側延長部55に対して押圧力Fを付与することができる位置関係で形成されている。この場合におけるリテーナー当接部23から外側延長部55に付与する押圧力Fは、外側延長部55を、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ向かわせる方向の力になっている。
【0079】
第1ハウジング21のリテーナー当接部23からリテーナー50の外側延長部55に付与された押圧力Fは、リテーナー50全体に作用する。このため、リテーナー当接部23からリテーナー50の外側延長部55に付与された押圧力Fは、リテーナー50の内側延長部56から、当該内側延長部56が端面65に接触している軸受60の外輪61に対して作用する。これにより、軸受60の外輪61には、リテーナー50の内側延長部56から、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ外輪61を向かわせる方向の押圧力Fが作用する。
【0080】
リテーナー50の内側延長部56からの押圧力Fが作用した外輪61は、軸方向における押圧力Fが作用する方向に押圧力Fによって移動し、外輪61と内輪62とによって保持して径方向における外輪61の内側に位置する転動体63に接触する。これにより、転動体63には、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ転動体63を向かわせる方向の押圧力Fが外輪61から作用し、外輪61は、転動体63に対して予圧を与える状態になる。
【0081】
外輪61から押圧力Fが作用した転動体63は、軸方向における押圧力Fが作用する方向に押圧力Fによって移動し、径方向における転動体63の内側に位置する内輪62に接触する。これにより、内輪62には、軸方向において第2ハウジング25が位置する側への押圧力Fが転動体63から作用し、転動体63は、内輪62に対して予圧を与える状態になる。
【0082】
つまり、第1ハウジング21のリテーナー当接部23からリテーナー50の外側延長部55に対して作用し、外側延長部55から軸受60の外輪61に対し作用する押圧力Fは、外輪61を転動体63に接触させ、さらに転動体63を内輪62に接触させる状態にする予圧として作用する。即ち、第1ハウジング21からリテーナー50に対して付与する押圧力Fは、軸受60に対しては、軸方向における第2ハウジング25が位置する側、及び径方向における内側に向かって、外輪61から転動体63に作用し、転動体63を内輪62に作用する予圧として作用する。これにより、軸受60は、外輪61と転動体63、及び転動体63と内輪62とが接触する状態が維持され、外輪61や内輪62と転動体63との間の隙間が無くなってガタが解消された状態が維持される。
【0083】
また、出力軸82bと第2ハウジング25との間に配置される軸受68(
図4参照)は、第2ハウジング25より予圧が与えられる。詳しくは、軸受68は、軸受60と同様に、外輪68aと、内輪68bと、転動体68cとを有する転がり軸受になっている。このように形成される軸受68の外輪68aに対して、第2ハウジング25の突出部27(
図4参照)が、軸方向においてウォームホイール94が位置する側の反対側から当接している。また、軸受68の内輪68bに対しては、軸方向において第2ハウジング25の突出部27が位置する側の反対側から、ウォームホイール94の芯金部94a(
図4参照)が当接している。このため、軸受68には、外輪68aと内輪68bに対して、第2ハウジング25の突出部27とウォームホイール94の芯金部94aとから、軸方向において互いに反対方向の力が作用する。
【0084】
つまり、軸受68の外輪68aには、第2ハウジング25の突出部27から軸方向においてウォームホイール94が位置する側への押圧力が作用し、軸受68の内輪68bは、軸方向において第2ハウジング25の突出部27が位置する側の反対側からウォームホイール94の芯金部94aが当接することにより、軸方向の移動が規制される。ウォームホイール94の芯金部94aによって内輪68bの軸方向への移動が規制される軸受68に対して、第2ハウジング25の突出部27から、軸方向においてウォームホイール94が位置する側に作用する押圧力は、軸受68に対しては予圧として作用する。即ち、軸受68に対して軸方向に作用する押圧力は、外輪68aと転動体68cの間、及び転動体68cと内輪68bとの間に作用する予圧として軸受68に作用する。これにより、軸受68は、外輪68aと転動体68c、及び転動体68cと内輪68bとが接触する状態が維持され、外輪61や内輪68bと転動体68cとの間の隙間が無くなってガタが解消された状態が維持される。
【0085】
次に、操舵装置80の作用について説明する。操舵装置80が搭載される車両の運転時に、ステアリングホイール81が操作をされた場合は、ステアリングホイール81に付与された操舵力は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に伝えられる。ステアリングシャフト82に伝えられた操舵力は、操舵トルクとしてステアリングシャフト82から中間シャフト85に伝達され、中間シャフト85からピニオンシャフト87を経てピニオンギヤ88aに伝達される。これにより、ピニオンギヤ88aを有するステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aから伝達された回転運動を、ラックバー88bの直線運動に変換し、タイロッド89を動作させる。
【0086】
また、第1実施形態に係る操舵装置80は、運転者の操舵をアシストする補助操舵トルクを発生させる電動モータ91を有している。電動モータ91は、ステアリングシャフト82の入力軸82aと出力軸82bと間に亘って配置されるトルク検出部30により検出した操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生する。
【0087】
トルク検出部30は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に付与された操舵トルクを、入力軸82aと出力軸82bとが相対回転した際における相対回転の角度に基づいて検出する。即ち、入力軸82aと出力軸82bとは、トーションバー82cを介して連結されているため、ステアリングシャフト82の入力軸82aに操舵トルクが付与された際には、入力軸82aと出力軸82bとの間では、トーションバー82cを介して操舵トルクが伝達される。その際に、トーションバー82cが僅かに捩じれることにより、入力軸82aと出力軸82bとは、相対回転をする。
【0088】
トルク検出部30は、マグネット31が入力軸82aに取り付けられ、ステータ34が出力軸82bに取り付けられることにより、入力軸82aと出力軸82bとが相対回転をした際には、トルク検出部30が有するマグネット31とステータ34も、相対的に回転をする。マグネット31とステータ34と相対回転の角度は、入力軸82aと出力軸82bとの間で作用する操舵トルクが大きくなるに従って相対回転の角度が大きくなる。
【0089】
マグネット31とステータ34とが相対回転した場合は、マグネット31からステータ34に作用する磁束が変化する。ステータ34の近傍に配置される集磁ヨーク41は、マグネット31からステータ34に作用する磁束の変化を検出することが可能になっている。このため、入力軸82aと出力軸82bとの相対回転に伴ってマグネット31とステータ34が相対回転をした際には、ステータ34の近傍に配置される集磁ヨーク41は、マグネット31からステータ34に作用する磁束の変化を検出することができる。
【0090】
このように、集磁ヨーク41で検出する、マグネット31からステータ34に対して作用する磁束は、マグネット31とステータ34と相対回転の角度に応じて変化する。ホールIC43は、集磁ヨーク41によって検出したマグネット31とステータ34との相対回転の角度に応じて変化する磁束を、ホール素子で検出すると共に出力回路で電気信号に変換し、トルク検出部30からの出力信号としてECU90に伝達する。つまり、トルク検出部30は、マグネット31からステータ34に作用する磁束の変化を集磁ヨーク41とホールIC43とで検出することにより、入力軸82aに付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクを電気信号としてECU90に伝達する。
【0091】
ECU90は、トルク検出部30から伝達された電気信号に基づいて電動モータ91を作動させ、電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。つまり、トルク検出部30のホールIC43からECU90に伝達された電気信号は、マグネット31とステータ34との相対回転の角度に応じて変化し、入力軸82aと出力軸82bとの間で作用する操舵トルクに基づいて変化する。このため、ECU90は、トルク検出部30のホールIC43から伝達された電気信号を、入力軸82a及び出力軸82bに作用する操舵トルクによって変化する情報として使用し、ホールIC43から伝達される電気信号に基づいて電動モータ91へ供給する電力値を調節し、電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。
【0092】
即ち、ECU90は、トルク検出部30から操舵トルクの信号を取得し、車速センサ95から車両の車速信号を取得し、さらに、電動モータ91に設けられた回転検出装置から電動モータ91の動作情報を取得し、これらの動作情報と操舵トルクと車速信号とに基づいて電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。電動モータ91で発生した補助操舵トルクは、ウォーム93とウォームホイール94を介してステアリングシャフト82の出力軸82bに伝達される。これにより、運転者がステアリングホイール81に付与した操舵力は、電動モータ91で発生した補助操舵トルクによりアシストされる。
【0093】
また、運転者がステアリングホイール81を操舵した際には、ステアリングシャフト82の出力軸82bは、軸受60によって支持されながら回転をする。その際に、軸受60は、第1ハウジング21からリテーナー50を介して軸受60に付与される押圧力Fにより、軸受60には、外輪61と転動体63との間、及び転動体63と内輪62との間には、予圧が付与されている。
【0094】
このため、軸受60は、外輪61と転動体63、及び転動体63と内輪62とが、それぞれ接触した状態で維持されており、車両の走行時の振動が軸受60に伝わった場合でも、外輪61と転動体63や、転動体63と内輪62とが衝突しないようになっている。これにより、軸受60は、振動が軸受60に伝わった場合でも、外輪61や内輪62と転動体63とが衝突した際における作動音を発生することなく、ステアリングシャフト82を回転自在に支持することができる。
【0095】
また、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10は、第1ハウジング21と軸受60との間にリテーナー50を介在させることによって軸受60に予圧を与えるため、軸受60に予圧を与える構造をトルクセンサ装置10に設ける際に、トルクセンサ装置10を適切に組み立てることができる。
【0096】
図7は、予圧付与部材210を第1ハウジング21に設けるトルクセンサ装置200の模式図である。軸受60に対して軸方向の押圧力を付与することによって軸受60に予圧を与える構造としては、例えば、
図7に示すように、第1ハウジング21に予圧付与部材210を設けることによっても実現することはできる。
図7に示すトルクセンサ装置200では、第1ハウジング21に、内周面22から径方向における内側に突出する予圧付与部材210が形成されている。予圧付与部材210は、軸受60の外輪61の軸方向における端面65に当接することにより、外輪61に対して軸方向の押圧力を付与することができ、軸受60に対して予圧を与えることが可能になっている。
【0097】
しかし、軸受60が回転自在に支持をするステアリングシャフト82には、トルク検出部30のステータ34が固定されている。このため、第1ハウジング21の内周面22に予圧付与部材210を配置した場合には、第1ハウジング21を組み付けることができなくなる。
【0098】
つまり、トルクセンサ装置200の重量の増加を抑えるために軸受60の小型化を図る場合、軸受60の外径は、ステアリングシャフト82に固定されるステータ34の外径、即ち、ステータ34の第1フランジ部35aや第2フランジ部35bの外径よりも小さくなる。この場合、軸受60の端面65に当接する予圧付与部材210も、軸受60の外径に応じて小さくなる。これにより、予圧付与部材210の内径は、ステータ34の外径よりも小さくなる。
【0099】
図8は、
図7に示すトルクセンサ装置200の第1ハウジング21を組み付ける状態を示す模式図である。ステアリングシャフト82に対して第1ハウジング21を組み付ける際には、ステアリングシャフト82に嵌合している軸受60に対して、第1ハウジング21に配置される予圧付与部材210を軸方向において当接させる方向から組み付ける。つまり、第1ハウジング21は、ステアリングシャフト82に対して、軸受60から見てステータ34が配置されている方向から組み付ける。
【0100】
しかし、第1ハウジング21に配置される予圧付与部材210は、内径がステータ34の外径よりも小さいため、第1ハウジング21をステアリングシャフト82に対して、ステータ34が配置されている方向から組み付けた場合、予圧付与部材210がステータ34に干渉してしまう。このため、第1ハウジング21に予圧付与部材210が形成される場合は、第1ハウジング21をステアリングシャフト82に組み付ける際に、予圧付与部材210がステータ34に干渉することにより、第1ハウジング21はステアリングシャフト82に組み付けることができなくなる。
【0101】
これに対し、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10では、リテーナー50を用いて軸受60に予圧を与えるため、軸受60に予圧を与える構造を確保しつつ、ステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けることができる。
図9は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10におけるステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付ける前の模式図である。第1実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第1ハウジング21をステアリングシャフト82に組み付ける前に、軸受60にリテーナー50を組み付ける。リテーナー50は、リテーナー50の円筒部51に軸受60の外輪61を嵌合させ、外輪61の軸方向におけるステータ34が位置する側の端面65に、リテーナー50の内側延長部56を当接させる状態にする。
【0102】
リテーナー50は、リテーナー50が組み付けられた軸受60を、ステアリングシャフト82に対してステータ34が位置する側の反対側から嵌合させることにより、リテーナー50が組み付けられた軸受60をステアリングシャフト82に嵌合させることができる。または、ステアリングシャフト82にステータ34を取り付ける前にステアリングシャフト82に対して軸受60を嵌合させ、ステアリングシャフト82に嵌合した軸受60にリテーナー50を組み付けた後、ステアリングシャフト82にステータ34を固定してもよい。
【0103】
第1ハウジング21は、これらのようにリテーナー50が組み付けられた軸受60が嵌合し、ステータ34が固定されたステアリングシャフト82に対して組み付ける。
図10は、
図9に示すステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けた状態を示す模式図である。第1ハウジング21は、軸受60に組み付けられるリテーナー50の外側延長部55に第1ハウジング21のリテーナー当接部23を軸方向において当接させる方向から、ステアリングシャフト82に対して組み付ける。つまり、第1ハウジング21は、ステアリングシャフト82に対して、軸受60から見てステータ34が配置されている方向から組み付ける。
【0104】
第1実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第1ハウジング21の内周面22には、ステータ34の外径よりも径が小さい部分は形成されていないため、第1ハウジング21は、ステータ34に干渉することなく、リテーナー当接部23をリテーナー50の外側延長部55に当接させることができる。これにより、リテーナー50は、第1ハウジング21から付与される押圧力によって軸受60に対して予圧を与えることができ、トルクセンサ装置10は、軸受60に予圧を与える構造を確保しつつ、ステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けることができる。
【0105】
以上のように、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10及び操舵装置80では、第1ハウジング21と軸受60との間に介在するリテーナー50は円筒部51を有し、リテーナー50の円筒部51は、軸受60の外輪61に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。また、第1ハウジング21は、リテーナー50における円筒部51の軸方向に面する面に当接する。これにより、リテーナー50は、第1ハウジング21からリテーナー50に対して付与される押圧力Fを軸受60に付与することができ、軸受60に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受60に伝わった場合でも、軸受60が有する外輪61と転動体63との衝突や、内輪62と転動体63との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。
【0106】
また、軸受に予圧を付与して作動音を抑制するにあたって、第1ハウジング21と軸受60との間にリテーナー50を介在させることにより、軸受60に対して予圧を与えることができる。これにより、第1ハウジング21の内周面22よりも小さい外径の軸受を選定でき、軸受の重量を増加させることなく、リテーナー50によって軸受60に対して予圧を与えることができる。これらの結果、重量の増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0107】
また、リテーナー50は、円筒部51と外側延長部55と内側延長部56とを有し、外側延長部55は第1ハウジング21のリテーナー当接部23に当接し、内側延長部56は軸受60の軸方向における外輪61の端面65に当接する。これにより、第1ハウジング21は、リテーナー50における円筒部51の軸方向を向く面に当接し、リテーナー50は、軸受60の外輪61に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられるため、第1ハウジング21から外側延長部55に対して付与される押圧力Fを内側延長部56から軸受60に付与することができ、軸受60に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受60に伝わった場合でも、軸受60が有する外輪61と転動体63との衝突や、内輪62と転動体63との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0108】
また、軸受60の外径は、ステータ34の外径以下であるため、軸受60の小型化を図ることができ、軸受60の重量を抑えることができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0109】
また、リテーナー50の円筒部51の外径は、ステータ34の外径より大きいため、内周面22に対してリテーナー50を径方向において対向させる第1ハウジング21の内径を、ステータ34の外径よりも大きくすることができる。これにより、ステータ34に対して第1ハウジング21を干渉させることなく、ステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けることができる。この結果、ステアリングシャフト82に対して第1ハウジング21を組み付けることを可能にしつつ、第1ハウジング21のリテーナー当接部23からリテーナー50に付与する押圧力により、リテーナー50から軸受60に対して予圧を与えることができる。
【0110】
また、リテーナー50の内側延長部56の内径は、軸受60の外輪61の外径より小さく、内輪62の外径より大きいため、外輪61と内輪62との相対回転を内側延長部56によって阻害することなく、内側延長部56から外輪61に対して軸方向の押圧力を付与することができる。これにより、軸受60の外輪61と内輪62とが相対回転をする際の抵抗が大きくなることを抑制しつつ、リテーナー50によって軸受60に対して予圧を与えることができる。この結果、第1ハウジング21に対して出力軸82bが回転する際の抵抗が増加することを抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0111】
また、第1ハウジング21は、リテーナー当接部23がリテーナー50の外側延長部55に当接することにより、リテーナー50から軸受60の外輪61に対して軸受60の軸方向の予圧を与えるため、簡易な構成で軸受60に対して予圧を与えることができる。従って、軸受60に対して予圧を与える構造を設ける際の製造コストを抑えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0112】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0113】
図11は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10の要部断面図である。第2実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第1実施形態と同様に出力軸82bを回転自在に支持する軸受60と第1ハウジング21との間にはリテーナー150が配置され、軸受60は、リテーナー150を介して第1ハウジング21の内側に配置される。また、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第1実施形態とは異なり、第1ハウジング21の内周面22には段差部24が形成されており、リテーナー150は、第1ハウジング21の段差部24に配置されている。
【0114】
図12は、
図11に示すリテーナー150及び軸受60の詳細模式図である。第2実施形態に係るトルクセンサ装置10においても、リテーナー150は、円筒部151の軸方向における端部151bから円筒部151の径方向における内側に延びる内側延長部156を有している。一方、第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、リテーナー150は外側延長部55(
図5参照)を有していない。
【0115】
内側延長部156を有するリテーナー150は、内側延長部156における、円筒部151の軸方向において円筒部151が位置する側の面が、軸方向における外輪61の端面65に当接して軸受60に取り付けられる。これにより、リテーナー150の円筒部151は、軸受60の外輪61に対して、軸方向において内側延長部156が位置する側の反対側への相対移動が規制され、外輪61に対する軸受60の軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。さらに、リテーナー150の円筒部151は、軸受60の外輪61に圧入されている。リテーナー150は、このように円筒部151が軸受60の外輪61に圧入されることによっても、外輪61に対する軸受60の軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。
【0116】
また、第1ハウジング21においてリテーナー150が配置される部分である第1ハウジング21の段差部24は、大径部24aと、小径部24bと、接続部24cとを有している。大径部24aは、内周面の内径がリテーナー150の円筒部151の外径よりも僅かに大きくなって形成されており、第1ハウジング21でリテーナー150を保持する際に、内周面がリテーナー150の円筒部151の外周面152に対向する部分になっている。軸方向における大径部24aの幅は、軸方向における円筒部151の幅とほぼ同じ大きさになっている。
【0117】
小径部24bは、軸方向において大径部24aよりもウォームホイール94が位置する側の反対側に位置しており、内径が大径部24aの内径よりも小さくなって形成されている。具体的には、段差部24の小径部24bの内径は、トルク検出部30(
図12参照)が有するステータ34の外径及びリテーナー150の内側延長部156の内径より大きく、且つ、リテーナー150の円筒部151の外径より小さくなっている。
【0118】
接続部24cは、軸方向においてウォームホイール94が位置する側に向く円環状の面になっており、径方向に延在して形成されることにより、段差部24の大径部24aと小径部24bとを接続する部分になっている。また、接続部24cは、第1ハウジング21でリテーナー150を保持する際に、リテーナー150の軸方向における、内側延長部156が位置する側の端部151bに対向して形成される。
【0119】
第1ハウジング21でリテーナー150を保持する際には、リテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに段差部24の接続部24cが当接することにより、第1ハウジング21は、リテーナー150における円筒部151の軸方向に面する面に当接する。これらのように、第1ハウジング21と軸受60との間にリテーナー150を介在させることにより、第2実施形態においてもリテーナー150は、軸受60に対して予圧を与えることが可能になっている。
【0120】
図13は、リテーナー150から軸受60に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。第1ハウジング21は、段差部24の接続部24cが、リテーナー150における円筒部151の軸方向における内側延長部156が位置する側の端部151bに当接することにより、リテーナー150から軸受60の外輪61に対して軸受60の軸方向の予圧を与えることが可能になっている。
【0121】
つまり、軸受60は、実施形態1と同様に内輪62が出力軸82bに嵌合しており、さらに、内輪62は、ウォームホイール94の芯金部94aに当接しているため、軸受60の内輪62は、軸方向において第2ハウジング25への移動が規制される。また、リテーナー150の内側延長部156は、軸受60の外輪61における、軸方向において第2ハウジング25が位置する側の反対側の端面65に当接している。
【0122】
一方、段差部24の接続部24cが、リテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに当接する第1ハウジング21は、出力軸82bに対する接続部24cの位置関係が、第1ハウジング21が第2ハウジング25に連結された状態において、接続部24cからリテーナー150の端部151bに対して押圧力Fを付与することができる位置関係で形成されている。この場合における接続部24cからリテーナー150の端部151bに付与する押圧力Fは、リテーナー150を、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ向かわせる方向の力になっている。
【0123】
第1ハウジング21の接続部24cからリテーナー150の端部151bに付与された押圧力Fは、リテーナー150全体に作用する。このため、接続部24cからリテーナー150に付与された押圧力Fは、リテーナー150の内側延長部156から、当該内側延長部156が端面65に接触している軸受60の外輪61に対して作用する。これにより、軸受60の外輪61には、リテーナー150の内側延長部156から、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ外輪61を向かわせる方向の押圧力Fが作用する。
【0124】
リテーナー150の内側延長部156からの押圧力Fが作用した軸受60の外輪61は、押圧力Fが作用する方向に移動することにより転動体63に接触する。これにより、転動体63には、軸方向において第2ハウジング25が位置する方向の押圧力Fが外輪61から作用し、外輪61は、転動体63に対して予圧を与える状態になる。外輪61から押圧力Fが作用した転動体63は、押圧力Fが作用する方向に移動することにより、内輪62に接触する。これにより、内輪62には、軸方向において第2ハウジング25が位置する方向の押圧力Fが転動体63から作用し、転動体63は、内輪62に対して予圧を与える状態になる。
【0125】
つまり、第1ハウジング21の接続部24cからリテーナー150に対して作用し、リテーナー150から軸受60の外輪61に対し作用する押圧力Fは、外輪61を転動体63に接触させ、さらに転動体63を内輪62に接触させる状態にする予圧として作用する。このように、第1ハウジング21は、接続部24cがリテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに当接することにより、リテーナー150から軸受60の外輪61に対して軸受60の軸方向の予圧を与えることができる。これにより、第2実施形態においても軸受60は、外輪61と転動体63、及び転動体63と内輪62とが接触する状態が維持され、外輪61や内輪62と転動体63との間の隙間が無くなってガタが解消された状態が維持される。
【0126】
これらのように構成される第2実施形態に係るトルクセンサ装置10は、リテーナー150を用いて軸受60に予圧を与えることにより、第1実施形態にと同様に、軸受60に予圧を与える構造を確保しつつ、ステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けることができる。
図14は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10におけるステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付ける前の模式図である。第2実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第1ハウジング21をステアリングシャフト82に組み付ける前に、軸受60にリテーナー150を組み付ける。リテーナー150は、リテーナー150の円筒部151に軸受60の外輪61を嵌合させ、外輪61の軸方向におけるステータ34が位置する側の端面65に、リテーナー150の内側延長部156を当接させる状態にする。
【0127】
リテーナー150は、軸方向において内側延長部156が位置する側が、軸受60をステアリングシャフト82に嵌合させた際にステータ34が位置する側に位置する向きで、軸受60に組み付ける。換言すると、リテーナー150が組み付けられた軸受60は、軸方向において内側延長部156が位置する側が、ステータ34が位置する側に位置する向きでステアリングシャフト82に嵌合させる。
【0128】
リテーナー150が組み付けられた軸受60は、ステアリングシャフト82に対してステータ34が位置する側の反対側から嵌合させる。これにより、リテーナー150が組み付けられた軸受60をステアリングシャフト82に嵌合させることができる。または、ステアリングシャフト82にステータ34を取り付ける前にステアリングシャフト82に対して軸受60を嵌合させ、ステアリングシャフト82に嵌合した軸受60にリテーナー150を組み付けた後、ステアリングシャフト82にステータ34を固定してもよい。
【0129】
第1ハウジング21は、これらのようにリテーナー150が組み付けられた軸受60が嵌合し、ステータ34が固定されたステアリングシャフト82に対して組み付ける。
図15は、
図14に示すステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けた状態を示す模式図である。第1ハウジング21は、軸受60に組み付けられるリテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに、段差部24が有する接続部24cを軸方向において当接させることができる方向から、ステアリングシャフト82に対して組み付ける。つまり、第1ハウジング21は、ステアリングシャフト82に対して、軸受60から見てステータ34が配置されている方向から組み付ける。
【0130】
第1ハウジング21は、段差部24が有する小径部24bの内径がステータ34の外径よりも大きいため、第1ハウジング21は、ステータ34に干渉することなく、接続部24cをリテーナー150の内側延長部156が位置する側の端部151bに当接させることができる。これにより、リテーナー150は、第1ハウジング21から付与される押圧力によって軸受60に対して予圧を与えることができ、トルクセンサ装置10は、軸受60に予圧を与える構造を確保しつつ、ステアリングシャフト82に第1ハウジング21を組み付けることができる。
【0131】
以上のように、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10では、リテーナー150は、内側延長部156を有し、内側延長部156が外輪61の端面65に当接することにより、リテーナー150の円筒部151は外輪61に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。また、第1ハウジング21は、大径部24aと、小径部24bと、接続部24cとを有する段差部24を有し、リテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに接続部24cが当接することにより、第1ハウジング21はリテーナー150における円筒部151の軸方向に面する面に当接する。これにより、第1ハウジング21からリテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに対して付与される押圧力Fを、内側延長部56から軸受60に付与することができ、軸受60に対して予圧を与えることができる。従って、車両の走行時における振動が軸受60に伝わった場合でも、軸受60が有する外輪61と転動体63との衝突や、内輪62と転動体63との衝突を抑制でき、これらの衝突に起因する作動音を抑制することができる。この結果、重量の増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0132】
また、第1ハウジング21は、接続部24cがリテーナー150における内側延長部156が位置する側の端部151bに当接することにより、リテーナー150から軸受60の外輪61に対して軸方向の予圧を与えるため、第1ハウジング21に対して軸受60のサイズが小さい場合でも、軸受60に対して予圧を与えることができる。これにより、第1ハウジング21に対して軸受60のサイズが小さい場合に、軸受60を第1ハウジング21に合わせて大型のものを用いることなく、第1ハウジング21に対してサイズが小さい軸受60のままで、軸受60に対して予圧を与えることができる。従って、軸受60に対して予圧を与える構造を設ける際の製造コストを抑えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0133】
[第3実施形態]
次いで、第3実施形態に係るトルクセンサ装置10について説明する。第2実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第2実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0134】
図16は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置10の要部断面図である。第3実施形態に係るトルクセンサ装置10では、第2実施形態と同様に出力軸82bを回転自在に支持する軸受60と第1ハウジング21との間にはリテーナー250が配置され、軸受60は、リテーナー250を介して第1ハウジング21の内側に配置される。また、第1ハウジング21の内周面22には、第2実施形態と同様に段差部24が形成されており、リテーナー250は、第1ハウジング21の段差部24に配置されている。
【0135】
図17は、
図16に示すリテーナー250及び軸受60の詳細模式図である。第3実施形態に係るトルクセンサ装置10においても、リテーナー250は、略円筒状の形状で形成される円筒部251を有している。一方、第3実施形態では、第2実施形態とは異なり、リテーナー250は内側延長部156(
図15参照)を有していない。つまり、第3実施形態では、リテーナー250は、全体が略円筒状の形状で形成される部材になっている。
【0136】
リテーナー250は、円筒部251が軸受60の外輪61に圧入されることにより、外輪61に対する軸方向における移動が規制されて、軸受60に取り付けられる。つまり、第3実施形態では、リテーナー250は、第2実施形態のように内側延長部156が用いられずに、略円筒形の形状で形成されるリテーナー250が軸受60の外輪61に圧入されることにより、外輪61に対する軸方向における相対移動が規制されて軸受60に取り付けられる。即ち、第3実施形態では、略円筒状に形状で形成されるリテーナー250が軸受60の外輪61に圧入されることによる嵌合力によってのみ、リテーナー250は、軸受60の外輪61に対する軸方向における相対移動が規制される。このように、軸受60の外輪61に圧入されるリテーナー250は、軸受60と同様の材料からなり、例えば、鋼やステンレス鋼が用いられる。
【0137】
第1ハウジング21でリテーナー250を保持する際には、リテーナー250の軸方向における一方の端部251bに段差部24の接続部24cが当接することにより、第1ハウジング21は、リテーナー250における円筒部251の軸方向に面する面に当接する。即ち、段差部24の接続部24cは、リテーナー250における、軸方向においてウォームホイール94や第2ハウジング25が位置する側の反対側の端部251bに当接する。
【0138】
これらのように、第1ハウジング21でリテーナー250を保持して第1ハウジング21と軸受60との間にリテーナー250を介在させ、第1ハウジング21の接続部24cをリテーナー250の端部251bに当接させることにより、第3実施形態においてもリテーナー250は、軸受60に対して予圧を与えることが可能になっている。
【0139】
図18は、リテーナー250から軸受60に対して予圧を与える際の力の伝わり方についての説明図である。第1ハウジング21は、段差部24の接続部24cが、リテーナー250における円筒部251の軸方向における一方の端部251bに当接することにより、リテーナー250から軸受60の外輪61に対して軸受60の軸方向の予圧を与えることが可能になっている。
【0140】
つまり、軸受60は、内輪62が出力軸82bに嵌合しており、さらに、内輪62は、ウォームホイール94の芯金部94aに当接しているため、軸受60の内輪62は、軸方向において第2ハウジング25への移動が規制される。
【0141】
一方、段差部24の接続部24cが、リテーナー150における、軸方向においてウォームホイール94が位置する側の反対側の端部251bに当接する第1ハウジング21は、出力軸82bに対する接続部24cの位置関係が、第1ハウジング21が第2ハウジング25に連結された状態において、接続部24cからリテーナー250の端部251bに対して押圧力Fを付与することができる位置関係で形成されている。この場合における接続部24cからリテーナー250の端部251bに付与する押圧力Fは、リテーナー250を、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ向かわせる方向の力になっている。
【0142】
第1ハウジング21の接続部24cからリテーナー250の端部251bに付与された押圧力Fは、リテーナー250全体に作用する。このため、接続部24cからリテーナー250に付与された押圧力Fは、リテーナー250が圧入される軸受60の外輪61に対して作用する。即ち、接続部24cからリテーナー250に付与された押圧力Fは、リテーナー250の円筒部251が軸受60の外輪61に圧入されることによる円筒部251と外輪61との間の摩擦力により、リテーナー250から軸受60の外輪61に対して作用する。これにより、軸受60の外輪61には、リテーナー250の円筒部251から、軸方向において第2ハウジング25が位置する側へ外輪61を向かわせる方向の押圧力Fが作用する。
【0143】
リテーナー250の円筒部251からの押圧力Fが作用した軸受60の外輪61は、押圧力Fが作用する方向に移動することにより転動体63に接触し、転動体63は、さらに押圧力Fが作用する方向に移動することにより、内輪62に接触する。これにより、リテーナー250から押圧力Fが作用する軸受60の外輪61は、転動体63に対して予圧を与える状態になり、転動体63は、内輪62に対して予圧を与える状態になる。
【0144】
つまり、第1ハウジング21の接続部24cからリテーナー250に対して作用する押圧力Fは、軸受60の外輪61を転動体63に接触させ、さらに転動体63を内輪62に接触させる状態にする予圧として作用する。これにより、第3実施形態においても軸受60は、外輪61と転動体63、及び転動体63と内輪62とが接触する状態が維持され、外輪61や内輪62と転動体63との間の隙間が無くなってガタが解消された状態が維持される。
【0145】
以上のように、第3実施形態に係るトルクセンサ装置10では、リテーナー250の円筒部251は、軸受60の外輪61に圧入されることにより、外輪61に対する軸受60の軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられる。これにより、リテーナー250は、軸受60の外輪61に対して容易に軸方向における移動が規制される状態で取り付けることができる。このため、第1ハウジング21の段差部24が有する接続部24cをリテーナー250の端部251bに当接させることによって軸受60の予圧を与える際に、簡易な構成で軸受60の予圧を与えることができる。この結果、製造コストの増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0146】
また、軸受60は、外輪61にリテーナー250を取り付けた上で第1ハウジング21に配置するため、製造コストを抑えることができる。つまり、大型な軸受60は高価になるが、軸受60の外輪61にリテーナー250を取り付けた上で第1ハウジング21に配置することにより、安価である小型な軸受60を採用することが可能になる。これにより、製造コストの低下を図ることができるため、製造コストの増加を抑えつつ、軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0147】
[変形例]
なお、上述した第1実施形態では、リテーナー50の外側延長部55と内側延長部56とは、それぞれ環状の形状で形成されており、第2実施形態においても、リテーナー150の内側延長部156は環状の形状で形成されているが、外側延長部55や内側延長部56、156は、環状以外の形状で形成されていてもよい。外側延長部55や内側延長部56、156は、例えば、周方向において断続的に円筒部51、151から径方向に延びて形成されていてもよい。外側延長部55は、第1ハウジング21のリテーナー当接部23からの軸方向の押圧力を受けることができ、内側延長部56、156は、軸受60の外輪61に対して軸方向の押圧力を付与することができれば、その形状は問わない。
【0148】
なお、内側延長部56、156が周方向において断続的に形成される場合は、軸受60の外輪61や内輪62と比較する内側延長部56、156の内径は、径方向における内側延長部56、156の内側の端部と円筒部51、151の軸心との距離を半径とし、円筒部51、151の軸心を中心とする円周の径を内側延長部56、156の内径として扱う。換言すると、リテーナー50、150の内側延長部56、156は、径方向における内側延長部56、156の内側の端部と円筒部51、151の軸心との距離が、軸受60の外輪61の外径の半径より小さく、内輪62の外径の半径より大きくなっている。
【0149】
また、リテーナー50、150、250の円筒部51、151、251の内径は、軸受60の外径に応じて設定されるのが好ましい。
図19は、第1実施形態に係るトルクセンサ装置10の変形例であり、小径の軸受60を用いる場合の説明図である。
図20は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10の変形例であり、小径の軸受60を用いる場合の説明図である。ステアリングシャフト82の出力軸82bを回転自在に支持する軸受60に、外径が小さい軸受60を用いる場合は、
図19や
図20に示すように、リテーナー50、150の円筒部51、151の内径を、軸受60の外輪61の外径に合わせて小さくするのが好ましい。リテーナー50、150の円筒部51、151の内径を、小径の軸受60の外径に合わせて小さくすることにより、外径が小さい軸受60においても、リテーナー50、150から軸受60に対して軸方向の押圧力を付与することができる。これにより、出力軸82bを回転自在に支持する軸受60に、小径の軸受60を用いて重量の軽減を図ることができると共に、小径の軸受60を用いた場合においても、リテーナー50、150から軸受60に予圧を与えて作動音を抑制することができる。
【0150】
また、上述した第2実施形態では、リテーナー150は円筒部151と内側延長部156とが一体に形成されているが、円筒部151と内側延長部156とは、一体に形成されていなくてもよい。
図21は、第2実施形態に係るトルクセンサ装置10の変形例であり、リテーナー150の円筒部151と内側延長部156とが分割される形態についての説明図である。リテーナー150は、
図21に示すように、円筒部151と内側延長部156とが分割されて形成されていてもよい。即ち、リテーナー150は、第3実施形態のリテーナー250の円筒部251のような円筒部151と、円環状の内側延長部156とより形成されていてもよい。この場合、円環状の内側延長部156は、例えば、
図21に示すように、外径が円筒部151の外径と実質的に同じ大きさで形成される。
【0151】
このように、リテーナー150の円筒部151と内側延長部156とが分割される場合における、軸受60へのリテーナー150の組み付けは、まず、円筒部151を軸受60の外輪61に圧入する。次に、円環状の内側延長部156を、円筒部151における、軸方向においてウォームホイール94が位置する側の反対側の端部上に配置する。次に、第1ハウジング21が有する段差部24の接続部24cを、内側延長部156における、円筒部151が位置する側の反対側の面に当接させる。これにより、第1ハウジング21の接続部24cから内側延長部156に付与される押圧力は、内側延長部156を介してリテーナー150の円筒部151と軸受60の外輪61とに付与される。
【0152】
さらに、リテーナー150の円筒部151に付与された押圧力は、円筒部151が軸受60の外輪61に圧入されることによる円筒部151と外輪61との間の摩擦力により、円筒部151から外輪61に付与される。これにより、円筒部151と内側延長部156とが分割されたリテーナー150は、軸受60に対して予圧を与えて作動音を抑制することができる。また、分割されたリテーナー150の円筒部151は、円筒状の形状で形成され、内側延長部156は円環状の形状で形成されるため、それぞれ簡素な形状で形成されることになる。このため、リテーナー150の加工を行う際における加工コストを削減することができ、軸受60に予圧を与える構造を実現する際における製造コストを抑えることができる。
【0153】
また、上述した第3実施形態では、リテーナー250は、軸方向における幅が、同方向における軸受60の幅と同程度の大きさになっているが、リテーナー250の幅は、軸受60の幅と異ならせてもよい。
図22は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置10の変形例であり、軸方向におけるリテーナー250の幅を軸受60の幅と異ならせた形態を示す説明図である。軸方向におけるリテーナー250の幅、即ち円筒部251の幅は、
図22に示すように軸受60の幅よりも狭くし、円筒部251を軸受60の外輪61に圧入する際に、軸方向における円筒部251の両側で、円筒部251の端部251a、251bと外輪61の端面65との軸方向における距離を異ならせてもよい。つまり、リテーナー250の円筒部251は、軸受60の外輪61に圧入された状態において、円筒部251の軸方向における一方の端部251aと外輪61の端部との距離と、円筒部251の軸方向における他方の端部251bと外輪61の端部との距離とが互いに異なっていてもよい。
【0154】
例えば、円筒部251の両側の端部251a、251bのうち、第1ハウジング21の接続部24cが当接する側の端部251bは、軸方向における位置を外輪61の端面65と同じ位置にし、反対側の端部251aは、軸方向における位置を外輪61の端面65からずらしてもよい。この場合、円筒部251は、軸受60の外輪61に形成される、転動体63が入り込む溝部61aが形成される軸方向の範囲全体を含んで、外輪61に取り付けられるのが好ましい。
【0155】
このように、軸方向における両側で、円筒部251の端部251a、251bと、外輪61の端面65との距離を互いに異ならせることにより、円筒部251が圧入された軸受60において、第1ハウジング21の接続部24cを当接させる側の円筒部251の端部251bを容易に把握することができるようになる。このため、円筒部251が圧入された軸受60を出力軸82bに組み付ける際に、組み付ける向きを間違えないようにすることできる。
【0156】
つまり、軸受60に付与する予圧は、第1ハウジング21の接続部24cを円筒部251の端部251bに当接させて接続部24cから円筒部251に対して押圧力を付与することによって付与するため、接続部24cを当接させる側の円筒部251の端部251bは、配置位置が重要になる。このため、円筒部251の両側で、円筒部251の端部251a、251bと外輪61の端面65との位置関係を互いに異ならせ、接続部24cを当接させる側の円筒部251の端部251bを容易に把握できるようにすることにより、接続部24cを当接させる側の端部251bを適切な位置に配置することができる。これにより、軸受60に対して適切に予圧を与えることができ、作動音を抑制することができる。
【0157】
また、上述した第3実施形態では、リテーナー250は、円筒部251が軸受60の外輪61に圧入されることにより、外輪61に対する軸方向における移動が規制されて軸受60に取り付けられているが、外輪61に対する円筒部251の取り付けは、圧入以外の手段を用いてもよい。
図23は、第3実施形態に係るトルクセンサ装置10の変形例であり、カシメ部257も用いてリテーナー250の円筒部251を軸受60に取り付ける形態を示す説明図である。リテーナー250の円筒部251は、軸受60の外輪61に対して圧入し、さらに、
図23に示すように円筒部251の端部251a、251bと外輪61の端面65とを、カシメ部257によって連結してもよい。
【0158】
リテーナー250の円筒部251の端部251a、251bと、軸受60の外輪61の端面65とをカシメ部257によって連結することにより、外輪61に圧入されている円筒部251が外輪61からずれることを抑制することができる。これにより、第1ハウジング21からの押圧力を、リテーナー250を介して軸受60の外輪61に対して適切に付与することができ、軸受60に対して適切に予圧を与えることができるため、作動音を抑制することができる。
【0159】
図24、
図25は、
図23に示すカシメ部257を形成する手法の一例を示す説明図である。カシメ部257によってリテーナー250の円筒部251と軸受60の外輪61とを連結する際には、円筒部251の軸方向における両側の端部251a、251bに、それぞれカシメ用部材257aを設ける。カシメ用部材257aは、円筒部251と一体に形成する。まず、このように両側の端部251a、251bにカシメ用部材257aが形成された円筒部251を、軸受60の外輪61に圧入する(
図24(a)、
図25(a))。
【0160】
その後、円筒部251の軸方向における両側からカシメ機300でカシメ用部材257aをプレスすることにより、カシメ用部材257aをカシメ機300で加締めて、円筒部251の端部251a、251bと外輪61の端面65とを連結するカシメ部257を形成する(
図24(b)、
図25(b))。
【0161】
その際に、カシメ機300における、カシメ用部材257aをプレスしてカシメ部257を形成するカシメ面310は、
図24に示すように、軸方向において円筒部251から離れる方向に凹んだ凹部状に形成されていてもよく、
図25に示すように、カシメ用部材257aを外輪61側に倒すことができる斜面状に形成されていてもよい。これらのように、カシメ機300を用いてカシメ部257を形成し、リテーナー250の円筒部251と軸受60の外輪61とをカシメ部257によって連結することにより、外輪61に圧入されている円筒部251の、外輪61からのずれを抑制することができる。
【0162】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0163】
10、200 トルクセンサ装置
20 ハウジング
21 第1ハウジング
22、26 内周面
23 リテーナー当接部
24 段差部
24a 大径部
24b 小径部
24c 接続部
25 第2ハウジング
30 トルク検出部
31 マグネット
32 第1スリーブ
34 ステータ
34a 第1ステータ
34b 第2ステータ
35 フランジ部
36 ティース部
37 第2スリーブ
38 キャリア
40 センサハウジング
41 集磁ヨーク
43 ホールIC
44 回路基板
50、150、250 リテーナー
51、151、251 円筒部
51a、51b、151b、251b 端部
52、152 外周面
53 内周面
55 外側延長部
56、156 内側延長部
60、68 軸受
61、68a 外輪
62、68b 内輪
63、68c 転動体
64 外周面
65 端面
80 操舵装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82aa 挿入孔
82b 出力軸
82ba 貫通孔
82bb 連結孔
82c トーションバー
84、86 ユニバーサルジョイント
85 中間シャフト
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオンギヤ
88b ラックバー
89 タイロッド
90 ECU
91 電動モータ
92 減速装置
93 ウォーム
94 ウォームホイール
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 ピン
210 予圧付与部材